サムライジャック


"They call me Jack."

(人呼んでジャックと申す)

ゲンディ・タルタコフスキー氏が手掛けたアメリカのアクションカートゥーン『サムライジャック』の主人公。
日本語吹替声優は 宇梶剛士 氏。素晴らしいっ!!少年時代は久保田恵女史。

遥か昔、邪悪の化身「アク」*1に世界が襲われ、さる王国が滅ぼされた際、ただ一人生き延びた王子は、
世界を遍歴して数多の武芸を修めた後に帰還を果たし、退魔の剣を手にアクを後一歩の所まで追い詰める。
しかしアクはその魔力によって王子を遙かな次元の彼方、アクによって支配された暗黒の未来へと吹き飛ばしてしまったのだ。
右も左も分からぬ中、王子はアクの支配に立ち向かい苦しめられた人々を救いながら、元の次元に戻る事を目指し戦いを始める。
自身がアクを討てなかった事がこの暗黒の未来を生み出した、その責任を果たすために。
そして王子は、場末の酒場で「Hey Jack(よう、あんちゃん)」と呼ばれた事を切っ掛けに、こう名乗る事にした。
「人呼んで、ジャックと申す」────即ちサムライ・ジャックと。

髷を結い着流しに刀を差し、下駄を履いている日本人の。やや無口だが義侠心溢れる性格。
武道全般に優れており、普段は刀を使うが状況に応じて弓・槍なども使い分ける。また、素手での格闘技にも長けている。
さらに最大の敵である「アク」との戦いのために弓矢等の武具を自分で作るなど、意外と器用。
彼の持つ刀は正義の力が宿った魔刀であり、凄まじい切れ味を誇ると共に決して折れたり刀こぼれする事は無い。

『サムライジャック』は主線を極力用いない簡素化されたディフォルメカートゥーン風のタッチでありながら、
それを最大限に活用して豪快なアクション、幻想的な風景、コメディからシリアスまで多種多様なエピソードでジャックの冒険を描いた事で、
エミー賞を受賞するなど、アメリカカートゥーン界に凄まじい影響をもたらした、2000年代を代表する傑作アニメシリーズである。
2001年から2004年まで52話のエピソードが制作されたもののそこで一時期中断し、長らく物語は未完のままであったが、
2017年から完結編となるシーズン5全10話が制作され、全62話で堂々の完結を迎えた。
日本では2002年から放映開始されたが、残念ながらシーズン5については未放送のままとなっている。

+ シーズン5のあらすじ(ネタバレ注意)
"Fifty years have passed, but I do not age.
 Time has lost its effect on me. Yet the suffering continues."

(50年が経った…。だが、某は、時に影響されない…。苦難は続く)


シーズン4から50年後。そこには髪と髭を無精に伸ばして兜鎧に身を包み、武装バイクにまたがり、銃器や槍で戦うジャックがいた。
実は50年の間にアクを倒すのに必要な退魔の刀を無くしてしまい、長年の戦いによって精神をすり減らし、サムライとしての志を失っていたのだ。
一方、アクもジャックが過去に戻る手段を全て破壊し、後はジャックが年老いて死ぬのを待つだけという算段だったが、
未来に飛ばす過程でジャックの老化プロセスが変化してしまい実質不老状態になるというアクも想定していなかった誤算が生じ、
戦いは半ば膠着状態に陥っていた。
そんな中、アクを崇拝する邪悪な教団で生まれ、ジャックを倒すために育てられた7人の姉妹「アクの娘」達が、
ジャック討伐のために出撃する所で物語は動き出す。

+ 時空を超えた戦いの結末(ネタバレ注意)
長きに亘る戦いの末、とうとうジャックはアクによって囚われ、退魔の剣を奪われた上に公開処刑にされてしまう。
アクは残酷な趣向として、自らの娘でありながらジャックと心を通わせた「アシ」にジャックを殺すよう命ずる。
父とジャックの間で揺れ動くアシは、しかしそれでもジャックを処刑しようとするが、そこにジャックの仲間達が駆け付ける。
今までの旅路で多くの人々を助けてきたジャックは、最大の窮地で彼らによって救われたのだ。

幾度となくジャックと共闘したスコットマンから彼の娘達を紹介されたジャックは、持ちかけられた縁談を丁重に断り、
自らの最愛の人としてアシを紹介、そして戦いの中でアシに愛を告白、とうとう彼女に結婚を申し込む。
これによってついにアクの呪縛から解き放たれたアシは、アクから取り戻した退魔の刀を用いてワープポータルを展開。
何をするつもりか気付いたアクが恐怖の叫びを上げる中、ジャックとアシはポータルに飛び込んで時空を超越する。

そこは遥か昔、壮絶な戦いの末にアクが王子を未来へと送り出した瞬間、即ち『サムライジャック』の第一話
いずれ王子と再会した時にどう料理してやろうかと目論んでいたアクは、ポータルから現れたジャックの姿に驚愕し目を見開く。

"You're back already!?"
(もう帰ってきたのか!?)

限界まで追い詰められた末に王子を未来に飛ばしたアクは既に満身創痍で、未来で対峙するまでに身に付けた強大さは無い。
対するジャックは暗黒の未来での戦いを切り抜けて、かつてよりも遥かにその強さと凄みを増している。
もはやアクに勝ち目は無く、激戦の末に退魔の刀はアクを両断し、逃げ惑うアクの影の最後の一片を貫いた。

"No More!!"

かくしてアクは完全に滅びた。
しかしそれは未来で作られたアクの娘である、アシの消滅も意味していた。
平和を取り戻した祖国でのアシとの結婚式のさなか、アシは王子の腕の中で消えていってしまう。
悲しみに暮れる王子だが、ある時どこかアシを思わせる一匹のテントウムシ*2が自分の傍らに止まっている事に気が付く。
アクは滅びた。全宇宙は救われ、暗黒の未来は決して訪れないだろう。
希望を胸に立ち上がる王子を祝福するように、世界には美しい光が差し込んでいた。

なお「ジャック」と言う名前は、上記の通り偽名であり、本名は不明である
余談だが、「航空機乗っ取り」を意味する「ハイジャック」の語源も同じだと言われている
(禁酒法時代のアメリカで、
 ギャングが他のギャングの密造酒を乗せたトラックの運転手に対し「Hi Jack」と銃を突きつけて強奪していたのが語源だとされているため。
 なので本来はバスや船が相手でも「Hijack」である。勘違いされがちだが「Hight Jack」ではない)。

(以上、Wikipediaより一部引用・改変)


MUGENにおけるサムライジャック

PockeFreeman氏が製作したものが存在していたが、現在はサイトの閉鎖により入手不可。
ドットは2003年に発売された日本未発売のGBAソフト『Samurai Jack: The Amulet of Time』のものを使用している。

操作方法はシンプルな4ボタン方式。
技は原作ゲームを再現したものとなっており、刀や弓矢等を駆使して戦うが、
やたらと演出がグロいのでそういった描写が苦手な方は注意。

この他、WlanmaniaX氏による手描きステージ「Future of Aku」も存在する。

出場大会



*1
実際の発音は「アクー」と語尾が伸ばし気味になっている。マクーは多分関係無い。コスモポリスの敵の方となんてもってのほか
日本語の「悪」が「Aku」と母音のウで終わるので、そこを意識しているのだと思われる。

なお、アクの日本語吹き替えは大御所俳優の菅原文太氏が担当。主人公共々やたら豪華である。
なお菅原文太氏とジャック役の宇梶剛士氏は師弟関係にあった事でも知られる。
原語版でアクの声を演じたのはマコ岩松氏で、『コナン・ザ・グレート』の魔術師アキロ、『ロボコップ3』のカネミツ社長などで知られる名優。
残念ながらマコ氏は2006年に亡くなったため、シーズン5ではマコ氏は「過去のアク」としてクレジットされ、
新たにグレッグ・ボールドウィン氏がアクの声優として配役された。
菅原文太氏も2014年に亡くなっており、日本でシーズン5の吹替版が放送されるなら声優は変更されるものと思われる。
宇梶剛士氏も今やすっかり大御所俳優になっているため、声優の一新は免れないかも知れない

*2
中国にはテントウムシと愛に纏わる伝承があり、テントウムシは真実の愛の象徴として扱われる事が多い。
そのためこの場面は「王子とアシは真実の愛で結ばれており、幾度生まれ変わっても必ずまた出会って愛し合う」運命にある事を示唆している。
加えてこの時王子が佇んでいた木は、未来でアクによって破壊された木で、アシが父の所業を知る切っ掛けとなった場所である。
しかしアクが滅ぼされたため木は美しいまま保たれ、王子とアシの戦いが無駄ではなかった事を意味している。

ちなみにアシの消滅する場面で
空っぽの衣装だけが残る部分は『恐竜戦隊ジュウレンジャー』のメイン主人公の兄・ブライの死のオマージュであり、
ラスボスを倒した結果として結婚式中に消滅してしまう部分は『天元突破グレンラガン』のヒロイン・ニアの消滅の影響が強いとされている
(ただし両者ともタイムパラドックスとは無関係。
 ブライは事故で死んでいたのを魔法で誤魔化していた所謂亡霊と言うかゾンビであり、最初からタイムリミットが存在した
 一方でニアはラスボスの監視端末が自我を持ったものであり、ラスボスが倒された時点で消滅する運命だったものの、全員それを承知で結婚式に臨んでいた)。

+ もう一つの結末(ネタバレ注意)
2020年に発表された3Dアクションゲーム『サムライジャック:時空の戦い』では、
タイムポータルで過去に跳躍する際、未来のアクの妨害を受け、ジャックとアシが別次元に飛ばされてしまう物語が描かれる。
さらにアクはジャックの祖国の紋章を自らの力で汚染し、これを自分を繋ぎ止める楔としてあらゆる時空にばら撒いてしまう。
ジャックはアシを見つけ出し、全ての紋章を打ち砕く事で、過去と未来両方のアクを滅ぼす事を決意する。


様々な時代や世界を渡り歩き、今まで出会った仲間達の力を再び借りてアクと戦い続けるジャックは、
「自分同様に他の姉妹も救って欲しい」というアシの懇願を叶えられず姉妹共々アシを殺してしまうという絶望的な幻覚に苛まれながら、
ついに本物のアシと再会し、絶望の幻覚を振り払って、本来は果たせなかったはずの未来世界のアクを滅ぼす事に成功する。
さらにそこからタイムポータルを用いて再び過去に跳躍した二人は、今度こそ過去のアクを消滅させ、暗黒の未来の到来を完全に阻止する。

これにより「未来のアクを倒してから、過去のアクを倒した」結果、アシの父殺しのタイムパラドックスは発生せず、
王子とアシは平和を取り戻した世界で結婚式を挙げ、ついに幸せを手にするのだった。


最終更新:2024年07月01日 13:52