美汐が言うには、彼女の正体は祐一が昔飼っていた キツネが化けたものであるという。
彼女はまだキツネだった頃怪我をしたところを幼い頃の祐一に拾われて半月あまり共に暮らしていたが、
怪我も治り祐一が自分の故郷へ帰ることになったときにかつて拾われたものみの丘へ返された。
彼女はそのことを怨んではいたものの、祐一という家族と過ごした暖かい日々を忘れることが出来なかったのか、
祐一に再び合うために彼女は仲間達の力を借りて奇跡を起こし、自らを人間の姿に変えた。
しかしその代償として自らの記憶と命を削ったために、彼女は人間になったもののすべてを忘れてしまった。
最初は祐一に毎晩のように「復讐」していたものの、日を追うごとに体力も知力も衰えていく。
徐々に人間としての生活すら困難になり、会話すら不能な状況にまで陥ってしまう。
祐一達は衰えていく彼女を見守ることしか出来ず歯噛みするも、やがて来る「終末」まで本当の家族として扱うことを選ぶ。
それはたった数日という短い時間しかなかったが真琴にとっては何よりも求めていた時間であり、
共に過ごした祐一に見守られながら沢渡真琴としての幸せな人生を全うする事が出来たのであった。
彼女のエンディングはこのゲームで唯一、ハッピーエンドと言えない結末になっている。
彼女にもたらされた奇跡とは人になって祐一と再会すること、そして一度は消滅寸前までいったが一時的に回復したことである。
どのみち人間になった時点で消滅は避けられない運命にあり、本人のルートにおいてもその運命を変えることは出来ない。
栞ルートと大筋では似ているがこの部分が決定的な違いになっている。
非常におとぎ話的な物語なのだが、人生の幸福とはなんなのか、といった
やや哲学的なストーリーであるため様々な考察がなされている。
しかし『真琴の消滅=死』とは決まった訳ではなく、
シナリオのラストでCGと共に僅かながら復活の可能性が示されており、全く救いがない訳でもない。
事実、アニメ版においてはどちらの版でも精神体のような姿で短時間ではあるが現れていたりする。
ただ、そのCGの後すぐスタッフロールに移行してしまうため、実際に復活したのか、
それともただのイメージ画像なのかは定かではない。
この辺りの解釈は人によって物凄く意見が分かれており、二次創作でも復活していたりしていなかったりする他、
復活した要因も 奇跡によるもの、待ち望んだ春がきたから、 挫けずに信じて待ち続けたからなど様々である。
また復活時の状態についても場合によって異なり、ほぼ末期状態から復活して 徐々に成長したり、
普通の人間として再起した場合も中盤ぐらいのやや大人しい性格だったり、
復讐を図ろうとしていた初期状態の覇気で復活したり、
最も強い場合は「狐」と「人間」両者の記憶と力を完全に取り戻し、初期状態を上回る妖狐となって帰ってきたりと様々である。
ちなみに「沢渡真琴」とは幼少期の祐一が憧れていた女性の名前であり、真琴はその名を借りているだけである。
また、京アニ版のアニメではゲストという形でこの「沢渡真琴」さんが登場している。
その姿形はまさしく大人になった真琴そのもの(CVも同じ)。
しかし彼女が現れたのは真琴の故郷であるものみの丘であったり、
一晩宿を借りた翌朝には既にいなくなっていたりと本物の「沢渡真琴」さん本人であるかは怪しい部分も多い。
真琴ルートにしか登場しない 天野美汐はれっきとした人間の筈なのだが、
祐一と同じようにかつて同じように人として化けた狐と仲良くなり、そしてまた同じ運命を歩んだのだという。
真琴の正体も早くから気づいていたが、だからといって何が出来るわけでもないため、
祐一にはその終末を仄めかしつつも一定の距離を置いていた。
また、京アニ版では 舞も真琴の本質を見抜いているような発言をしていたりする。
なおエンディングでの美汐の憶測とその解釈には不可解な点も多く、ファンの間でも明確な結論は出ていないとか。
『Kanon』の他のキャラクター達は祐一が助けなければ、
「 奇跡」が起こらなければほぼ死ぬであろう危機に瀕している一方で、
サブキャラが単独で頑張ってくれる可能性と、死んだ際起こるはずの問題が他ルートで発生しないというメタ的事情により、
ルート非選択時に他の要因で生存する可能性が僅かながら存在しており、
それ故にアニメ版等のメディアミックスでは不自然無く生存することが多い。
…が、ルート選択時ですら燃え尽きてしまう彼女の場合、日常パートで必ず出会うから 「無かったこと」にできないわ、
身元不明だから非生存時の影響が無いわ、サブキャラの天野美汐は「助けたい」ではなく「どうやっても助からない」と言ってくるわで、
ルート非選択時の生存フラグが 狙ったように皆無であり、どちらのアニメ版でも唯一の退場者となってしまった
(森嶋プチ氏の漫画版では、 個別シナリオ分をほぼ全部削り落とすという凄まじい荒業で生存させた)。
不自然が少ないなけなしの仮説としては、美汐の最後の憶測が「客観的に見てほぼ事実」であり、
それを知っている美汐が妖孤である場合が考えられる
( 強大な力を持つ妖狐については作中で言及があり、 美汐曰く「真琴はそのような強大な存在ではない」とのこと)。
この場合、天野美汐の性格や行動、そして『余りに情報を知りすぎている』点などは説明できるが、
シナリオ全体の意味が覆ってしまうためやはり多少の無理がある。
他の説としては、真琴に懐いている猫の「ぴろ」の正体が美汐の言う所の強大な力を持つ妖狐もしくはその関係者であり、
その力を以て真琴を救ったというものがある。
これは関連書籍に掲載されたシナリオライターの伏字だらけのコメントがそう解釈することもできるのが由来になっている
(名前が入りそうな部分はひらがな2文字なので、ぴろ以外だとあゆや舞など真琴に関係無いキャラになる)。
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