なんだこれは!?
そう、それは芸術の巨人「タローマン」である!
NHK製作の特撮ドラマ『TAROMAN 岡本太郎式特撮活劇』
*1に登場する「芸術の巨人」(
肩書きは他にも山ほどある)。
タロウではなく、タロ
ーである。
地球から300万
デタラメートル離れた位置に存在する「太郎系第3惑星・シュールレアリズム星」から、特に目的もなくやって来た。
つまりタローマンとは彼らにとっての太陽である恒星「太郎」を象った頭をした、そのまんま太陽の使者を意味する名前という事だろうか
1972年、日本に奇獣・
森の掟が突如現れ人々を大混乱に陥れた際、宇宙から落ちてくるように日本人の前に出現。
以降、奇獣が暴れる度に呼応して登場するようになる。かと思えば、明らかに奇獣が関係ない場面でも割と出てくる。
実在する芸術家・
岡本太郎(おかもと たろう)の「ことば(≒精神≒生き方)」を行動原理とし、
それにそぐわないと判断した人・物・言動、特に「
マンネリ」「
予定調和」「妥協」「保身」といった
安穏な考え方を決して許さない。
奇獣を前にしてもヒーローらしく素直に正面から立ち向かったり取っ組み合うことは稀で、
でたらめな行動で他を圧倒し(困惑させ)、予測不能のタイミングでべらぼうな必殺技を放つ、エキセントリックな戦闘スタイルを取る。
普通はヒーローにとって力になる民衆からの声援はおろか、
敵に勝利することそのものまでを「型通りでつまらない」と考え、
逆にやる気を失くす原因になってしまうという
めんどくさい特性がある。
そう、特撮ヒーローというお約束まみれのジャンルと相性が悪い巨人、タローマンである!
じゃあどうしてこんな特撮番組作った!?言え!なんでだ!
他にも一度は墜落から救ったパトロール機を「人助けの巨人」と称するナレーションを嫌ったのか放り捨てたり、
ビルの破壊に躊躇するどころか遊び道具にしたり、本来は戦うべきであろう奇獣と
鬼ごっこで遊んだりする、
タローマンの窮地に手を差し伸べた自分そっくりの「
タローマン2号」を拒絶し
奇獣もろとも
爆殺したこともあるなど、
岡本太郎らしさに反する行動に対しては人間にも奇獣にも、ましてや自身に対してすら関係なく制裁を下す。
公式のアナウンスでも
「正義の味方ではない」と明言されてしまっている始末。
黄金の太陽のようなその顔は岡本太郎氏の作品「若い太陽の塔」
*2、
銀色基調に赤い線が入った体は同じく岡本氏による「
太陽の塔」を模している。
そのギラギラした外見に加えて、
常に暗黒舞踏を思わせる奇怪な動きを続けており、何もせずそこにいるだけで画面がうるさく感じてしまう。
そのエキセントリックさは概ね「巨大化したドアラ」と考えれば、意味不明さと傍迷惑さ含めて大体合っている
「ことば」を「体現」する存在であるためなのか、技名以外では掛け声すら発さず、自分の考えについて何かを語ることは一切無い。
タローマンの行動の意味は、あくまでもそれを見た他者(ナレーション含む)による推測に過ぎないのである。
……代わりに奇妙な動きを交えつつ、割と分かりやすいボディランゲージも取ってくれるが。
必殺技も岡本氏の作品をモチーフとしており、放つ度に
岡本太郎氏の肉声で叫ぶ。
とどめの一撃として放つ
「芸術は爆発だ!」は、放てば奇獣も
地球も関係なく極彩色の絵具状に分解して爆散させる文字通りの必殺技。
「
その瞬間瞬間に全存在を懸けて、いのちを燃焼する行為」であるため、乱発はできないらしいが、片手間に撃つ描写もあり真偽は不明。
この他にも矢尻状の光線「コントルポアン」を始め、「千手」「雷人」「
明日の神話」といった岡本作品をモチーフとした数々の技を持つが
*3、
いずれも中々まともに奇獣相手に使ってくれない。
前述の通り安易な模倣には大変厳しいと理解されているため、ネット上でタローマンをネタにした動画は、
最後に突如エントリーしたタローマンに芸爆オチされるのがほぼお約束となっている。SCPか何かか?
元ネタ(4:42~)
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そんなに人間が嫌いになったのか、タローマン
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実際、作中でもタローマンの絵画を描いた画家やタローマンの人形を作ったファンの少年などは特に被害に遭っていない。
むしろ「安易な模倣を安易に爆発四散せしめるのがタローマンなのだ」というステロタイプをこそ彼は嫌っている。
……のではないかと思われるが、
「半端な知識で解ったような口を利くほど傲慢なことはない」、そう岡本太郎も言っていた。
タローマンが何者なのかなど、無理に解ろうとしなくても良いのかもしれない。
「人生の目的は悟ることではありません。生きるんです。人間は動物ですから」……そう、岡本太郎も言っていた。
どこまでも自由で、
でたらめで、
べらぼうな存在……
そう、それは芸術の巨人、タローマンである!
ちなみにタローマンはあくまで「岡本太郎のことば」を先鋭化させた存在であり、岡本氏本人をモチーフにしているわけではない。
現実の岡本氏ご本人は生真面目で繊細な性格だったが、
自身を追い込むために敢えて空気を読まなかったり、大言壮語を放つような人物だったそう。
岡本氏の活動を皮切りに破天荒な芸術家キャラが創作界隈で表立つようになり、
氏を代表することばの「芸術は爆発だ!」のリスペクトは
漫画、
ゲーム、
特撮など枚挙に暇がない。
実際は芸術的な爆発(物理)してるキャラばかりなのは内緒だ!
本作は後に「第49回放送文化基金賞」エンターテイメント部門の優秀賞を授与され、藤井監督と一緒に贈呈式に登壇したのだが……。
そう、パントマイムに定評のある巨人、タローマンである!
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MUGENにおけるタローマン
タローマン本編の奇獣を単独で網羅したべらぼうな製作者であるカーベィ氏が、期待を裏切ることなくタローマンも完成させた。
怪獣以外はそこまで興味の無い氏は本来作る予定は無かったとのことだが、
「タローマンも奇獣なのでは?」という意見によって製作を決断したとのこと
(実際、公開後に放映された『タローマン大統領』でも、タローマンも奇獣として扱われているようなナレーションがあった)。
スプライトはふうりん氏と共作した
歓喜の
超必殺技で使用されたものをベースに、SpriteStudioで仕上げたもの。
番組の画像を用いた
カットインもふんだんに取り入れられており、イントロでは
第1話の初登場シーンをアニメーションで再現しているという力の入れよう。
作り込み故か
115MBというキャラ単体としてはべらぼうな容量なので導入には注意。
原作でのでたらめな奇行に合わせ、変なアクションが多数取り入れられており、
中でも様々な動作が
ランダムにコロコロ入れ替わる
ニュートラルポーズは必見。
技に関しても、
飛び道具「コントルポアン」や
森の掟と対峙した際の妙なダンス、
駄々っ子との戦いで
自滅するために使った「拘束光線」など、原作の動作がしっかり落とし込まれている。
超必殺技として、
太陽の塔との戦いで
その場の思い付きのように繰り出した3種類の技も使うことができ、
「雷人」は一定時間攻撃力を1.5倍に上昇させる強化技、「千手」は相手を追尾する飛び道具を無数に発射する技、
「明日の神話」は
実質ガード不能の全画面攻撃となっている。
代名詞でもある「芸術は爆発だ!」は
一撃必殺技として実装されており、
ガード不能の全画面攻撃で、いくらでも無条件に使えるというべらぼうな性能になっている。
同梱テキストでも
「いつでも使えるので戦闘に飽きたら使いましょう(原文ママ)」と紹介されている。
ちなみにカーベィ氏曰く、
技ではなく挑発らしい…。
7P~11Pは特殊カラーとなっており、上記「雷人」の効果が常時適応される。
AIはデフォルトで搭載済み。
流石にでたらめな戦い方をするということはなく、的確な
立ち回りで堅実な強さを見せる。
…が、
プレイヤー操作では記述の関係上不可能な
コンボを狙ってくるなど、でたらめさが顔を出すことも割とある。
12Pを選ぶと行動パターンが変化し、「芸術は爆発だ!」だけを連発してくるようになる。
また、前述のタローマン2号も同時に公開されている。
性能面ではタローマンに準ずるが、キャラクター性の違いに合わせて半数近いアクションが専用のものに差し替えられているなど、
こちらも力の入った造りである。もちろん芸爆の性能も相変わらずである
こんにちの芸術とは、うまくあってはならない。
きれいであってはならない。
ここちよくあってはならない。
-TARO-
出場大会
出演ストーリー
*1
2022年から開催の『展覧会 岡本太郎』の宣伝のはずが、何をどう間違えたのか特撮番組と化してしまった本作。
「1972年に放送された巨大ヒーロー特撮番組」の現存している映像の再放送という体裁を取っており、
少年隊員や
テンガロンハットの謎の風来坊、唐突に現れる味方ヒーローなど当時の作風再現に始まり、特撮の監修には円谷プロが協力。
「1970年代の特撮番組の再現性の追求」と「OPから終劇まで岡本太郎のことばを全力で伝える」という姿勢に対して
一切の妥協をしない番組となっている。
PR動画。マイナスに飛び込め!タローマン!
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配信版ではカットされているが、番組の後半は
過去の再放送でファンになったと語るサカナクションの山口一郎氏が、
存在するはずのない当時のグッズを思い出と共に披露し、いるはずのない当時の出演者と語り合う狂気の振り返りコーナーが付いていた。
一過性のネタかと思われていた本作だが、そのべらぼうな影響力から早々に再放送が決まり繰り返し放送され、
展示企画では会場が変わる度に参考展示として知らない前番組のヒーロースーツが増えていく怪現象が発生。
レギュラー放送終了後に特別番組として放送された『歴史秘話 タローマンヒストリア』では、
歴史を振り返る割に番組内容の9割が完全新規映像(の癖に映像の劣化再現が本格的)だったり、
今度は
平成ガメラや『
シン・ゴジラ』で活躍した樋口真嗣監督にインタビューし当時の思い出を振り返らせるなど、
NHKによる歴史改変がじわじわと進行している。
オフィシャルファンブック『TAROMAN CHRONICLE』でも実際の70年代の時代背景の解説を申し訳程度に交えつつ、
大半が架空の設定で埋め尽くされているという徹底ぶり。
終盤で内容を区切って実際の制作内容にも触れられているのは最後の良心か。
また、放映当時は人気を博しており三井住友海上火災保険と提携しての防災教室ビデオなども制作されていた……として、歴史改変はますます進行している。
そう、どちらかと言えば災害側の巨人、タローマンである!
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「存在しないはずのもの」を「映像にする」という点では、巨大ヒーローとしてと番組そのものとしての二重の意味で「特撮番組」と言えるのかもしれない。
なお、本作では各話のゲスト
怪獣に岡本太郎氏の作品をほぼそのままの造形で登場させており、
テロップなどではこれらの怪獣を「奇獣」と銘打っているが、地球人からは
専ら怪獣呼ばわりされており、奇獣とは呼ばれない。
当初は「『奇獣』という名前は侵略者側の呼び名で、そもそも地球側の勢力は知らないのではないか」といった推測もあったが、
レギュラー放送後の新作では地球人からも「奇獣」と呼ばれており、本編で「奇獣」という語が使われなかったのは制作上の齟齬だった可能性が高い。
2025年にはとうとう劇場作品まで公開されてしまった。
上映期間中には「声出しOK!」「奇獣の応援OK!」「
ただしタローマンの応援、テメーは駄目だ(タローマンがやる気を失くすため)」
という「"応援してはいけない"応援上映」なるでたらめコンセプトの企画が好評を博し、万博開催地の大阪では連日開催されている。
ちなみにタローマンへのブーイング(「くたばれ!」「負けろ!」「帰ってくれ!」etc.)は
公式で許可されている。
べらぼうな予告編
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でたらめな公式MAD(一部ネタバレ注意)
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なお本劇場版、当初は最初から最後まで徹頭徹尾105分間でたらめが続くべらぼうな映画にしようと計画されていたのだが、
あろうことかタローマンをウルトラマンの一種だと勘違いし、純粋にヒーローとしてタローマンのファンになった子供がいる事が発覚。
これには流石にタローマンとスタッフも反省して、タローマンらしいヒーロー映画として製作される事になったという逸話がある。
そう、それは君が強く望めば渋々ながらも応えてくれる巨人、タローマンである!
*2
太陽の塔の胴部「現在」に似た顔と11本の炎で太陽を表現した金色のオブジェ。
高さ26mの愛知県犬山市の日本モンキーパークに建つ太陽の塔のプロトタイプともされる。
当時既に太陽の塔の製作が決まっていた岡本氏より懇意にしていた名古屋鉄道重役に贈られ、
大阪万博の前年のプレイベント「世界万国博とお国めぐり」にて名古屋鉄道も経営に携わっていた当時の犬山遊園に、
犬山市民によって岡本氏のタイルモザイク画「太陽の神話」をモチーフに建立された展望台の頂点に飾られた。
犬山遊園が名鉄犬山ホテルに改築されるに伴い日本モンキーセンターへ移築されるが、
ヒヒが不眠症を患うとして日本モンキーパークの小高い丘へ再移築。
日本モンキーパークのシンボルタワーながら遊園地のある中心部からは外れて長年放置され、
老朽化による倒壊の危険と丘のジャングル化により2003年から立ち入り禁止となっていたが、
2010年の岡本太郎生誕100年記念に限定公開され、修繕・整備を経て2011年から再公開されている。
ちなみに同作がタローマンのモチーフに選ばれたのは監督が上記したヒヒの逸話を面白いと感じたのが理由との事。
そう、ヒヒの眠りを妨げる巨人、タローマンである!
*3
なお、奇獣のモチーフも岡本太郎氏の作品だが、設定によるとタローマンの技の内いくつかは、
制作発掘・再放送されていないエピソードに登場する同名の奇獣から吸収したり受け継いだものとされている。
実際に
奇獣を吸収してしまうエピソードもあるため、これもタローマンの能力の一つということだろうか。
ちなみに「芸術は爆発だ!」以外の技名コールは、岡本氏ではなくたまたま氏に声が似ていた映像編集担当の奥本宏幸氏が代役で演じている。
最終更新:2025年10月20日 01:21