機装兵 バロン
[解説]
この機装兵が誕生することになった発端は、聖華暦810年まで遡る。当時都市同盟中央情報局の報告によりもたらされた、聖王国のエース用最新機装兵シュヴァリエル、アルカディア帝国の第七世代機兵レギンレイヴの性能に関する情報。そこに記されたスペックの高さは、とある都市同盟軍タカ派高官を恐怖させていた。そしてタカ派軍高官は、シュヴァリエルおよびレギンレイヴに匹敵する超高性能機装兵の開発を決意する。
しかしタカ派軍高官の意図は、彼の更に上役の手で頓挫する。当時都市同盟軍は重機兵フォートに執心しており、同盟の専守防衛と言うドクトリンに合致しない機体に注ぎ込む金は無いと、そう言う事であったのだ。タカ派軍高官は、歯噛みしたがどうにもならない。已む無く彼は、しばしの雌伏に入る。様々に根回しを行い、彼が新型機の開発計画を再始動させたのは、聖華暦821年の事であった。
計画の再始動にあたり、タカ派軍高官はあちこちの機兵製造販売会社に声をかけまくる。それに応じたのは、自由都市同盟の防衛にあまりに偏った軍備の配備状況を、少しなりと是正したい思惑があったシームド・ラボラトリーズだった。そしてタカ派軍高官に対しシームド・ラボラトリーズが新型機のベース機として提示したのが、シームド・ラボラトリーズが傭兵協会へ供給している名機、機装兵スパルタクスであった。
そしてシームド・ラボラトリーズとタカ派軍高官の挑戦が始まる。まず最初に、要求仕様の確認である。タカ派軍高官の要求は多岐に渡ったが、結論付けると「とにかく強い機体を!」と言う事であった。聖華暦822年、シームド・ラボラトリーズ側ではそれに対する回答として、同時期に独自で計画していた蜃気楼計画(シムラクルム・プロジェクト)の軽機兵……後にS90と命名されるソレで予定されていたプランの1つを原型にした物を提示する。軽機兵S90は高い汎用性を持つ本体に、ミッションパックと呼ばれるオプション装備を追加する事で、様々な用途に特化した機体を現場で構築できる仕様であった。シームド・ラボラトリーズはその中でも、超高機動で高破壊力を持つパターンの機体構成を提示したのである。
無論、それの実現には数々の難題が待ち受けていた。まず第一に、機装兵スパルタクスは第五世代機兵と同じくモノコック構造の機体であり、近代化改修や度重なる改良による性能向上で第六世代機兵と認められてはいたが、流石にこれ以上の超高機動力を持たせるのは困難であった。これを解決するためシームド・ラボラトリーズは、蜃気楼計画の軽機兵に用いられる予定のフラタニティ・フレームの流用を考えた。このフレームは、設計をアイオライト・プロダクションより高値で購入した物であったが、購入後の使用に関する制約は一切かけられていなかった。だが軽機兵用のフレームを機装兵用に大型化し、なおかつ高機動戦闘用としての特質を付け加える様に軽量かつ高剛性に調整するには、設計元であるアイオライト・プロダクションの手がどうしても必要である。
第二の問題として、それほどの高機動を実現するにはどうしても、エーテリック・アクセラレーターを魔導炉に搭載した、第七世代機兵として機体を建造する必要がある事だ。だがこれは、タカ派軍高官の手によりあっさりと解決する。手練手管を尽くした彼の働きにより、都市同盟軍研究所が機装兵ライト・フォートに使用するエーテリック・アクセラレーター搭載魔導炉の設計を譲渡してきたのだ。そしてこれは更に、第一の問題の解決にも繋がった。この魔導炉を蜃気楼計画の軽機兵用に転用する事で、蜃気楼計画の予算が大きく浮き、その分の資金をもってアイオライト・プロダクションに、前述の軽機兵用フレーム大型化と最適化の処置を依頼する事が叶ったのである。
それ以外にもこの機体の開発には、高性能の大型バーニアなどの補器も必要になるが、それこそ蜃気楼計画からのスピンオフ技術で全て間に合う。そしてこの機装兵バロンは、シームド・ラボラトリーズ初の第七世代機兵として産声を上げたのだ。
そうして完成した試作一号機だったが、機体の採用を賭けたコンペティションにて事故を起こし操手が重傷を負うなど、色々ケチが付く。だが聖華暦833年~834年のバフォメット事変にて、その操手が同じ試作一号機で多大な戦果を上げてみせた事で見直され、少数ではあるが生産が決定された。残念ながらその結果をもたらした当の操手は、バフォメット事変での無理がたたり、一年後に亡くなっている。
バフォメット事変直後の当初、都市同盟軍としてはこの機装兵バロンを20機ほど調達するつもりであった。だが事後の調査で、バフォメット事変で南部諸国連合にあったシームド・ラボラトリーズの生産拠点が大打撃を受けている事がわかる。結局のところこの機体は、試作一号機を含めて5機のみの生産となった。その5機はエース級操手や、機体がもったいないと思わなくも無いが都市同盟軍の一部高官に配備、そして1機だけではあるが、何故か冒険者組合庶務第三課に寄贈された。どの様な裏取引があって冒険者組合庶務第三課がこの機体を手に入れたのかは、一切不明である。
この機体の特徴として、背部に装備された大型バーニアがある。これによって、聖華暦800年代に量産された装兵の中では、群を抜く機動力を発揮できる。ただし並の操手には扱いきれない、ピーキーな操縦特性となってしまっている。採用コンペティションでの事故も、この操縦性の悪さによるものだ。
本来シームド・ラボラトリーズではS90の様に機装兵本体は汎用性が高く、それにミッションパック方式でバーニア他の装備追加をする形式を勧めていた。しかし依頼主であったタカ派軍高官がどうしても本体のカタログスペック面で一歩も譲らず、武器の破壊力も超高機動力も全て本体に盛り込んで開発する羽目になり、それが操縦性の悪化に繋がったのである。
頭部には鶏冠型のアンテナが付いており、さすがにシステムHanni-BalやBARCAまでとはいかないが、非常に高い通信性能を持つ。顔は聖華暦600年代に名機として名をはせた、聖王国の機装兵ノヴレスにやや寄せてある。
この機体は聖華暦834年のハウゼンシュトリヒ攻防戦にも3機投入され、大きな戦果を上げた。
[武装]
[レオン魔導砲]
スパルトイⅡ型の時代から存在し、スパルタクスにも使用されている、信頼性のある魔導砲。冒険者組合やその下の傭兵協会御用達の品であるが、泥水に浸けてもまともに稼働するほどの信頼性を評価し、古い設計のこれをあえて使っている軍の部隊も存在する。フルオートとセミオートに切り替えも可能である。
スパルトイⅡ型の時代から存在し、スパルタクスにも使用されている、信頼性のある魔導砲。冒険者組合やその下の傭兵協会御用達の品であるが、泥水に浸けてもまともに稼働するほどの信頼性を評価し、古い設計のこれをあえて使っている軍の部隊も存在する。フルオートとセミオートに切り替えも可能である。
[パイルバンカーシールド]
特務強襲中隊所属のアレン・ウィリアムズ特務大尉専用機のみに装備されている特殊武装。パイルバンカー、ルーン式フラム・バヨネット、高出力使い捨てフラム・ラブリュスの付いたシールド型のウェポンラックであり、魔剣を懸架する事も可能である。
特務強襲中隊所属のアレン・ウィリアムズ特務大尉専用機のみに装備されている特殊武装。パイルバンカー、ルーン式フラム・バヨネット、高出力使い捨てフラム・ラブリュスの付いたシールド型のウェポンラックであり、魔剣を懸架する事も可能である。
[魔剣エルヴァンリッグ]
アレン・ウィリアムズ機に装備されている魔剣。聖華暦600年代前半の第三次聖帝戦争の頃に作られた物だと考えられる。この魔剣は強制的に周囲の魔素を吸収し、それ自体の出力を強化するという霊剣としての力も持っている。
アレン・ウィリアムズ機に装備されている魔剣。聖華暦600年代前半の第三次聖帝戦争の頃に作られた物だと考えられる。この魔剣は強制的に周囲の魔素を吸収し、それ自体の出力を強化するという霊剣としての力も持っている。
[ドルフ重魔導砲]
火の魔石をカートリッジとして弾丸を発射する大型の魔導砲。初速・貫徹力共に高く、機装兵級の装甲を撃ち抜く事が可能で、場合によっては致命傷を与えることも有り得る。ただし一回撃つ度に銃身を三分程冷却しなければならず、十数発撃つと銃身が焼け切れる欠点があり、予備の銃身を装備している機体もある。又、重たくて取り回しも悪いため、高出力の機体以外だと七面鳥扱いになってしまう。
火の魔石をカートリッジとして弾丸を発射する大型の魔導砲。初速・貫徹力共に高く、機装兵級の装甲を撃ち抜く事が可能で、場合によっては致命傷を与えることも有り得る。ただし一回撃つ度に銃身を三分程冷却しなければならず、十数発撃つと銃身が焼け切れる欠点があり、予備の銃身を装備している機体もある。又、重たくて取り回しも悪いため、高出力の機体以外だと七面鳥扱いになってしまう。