名探偵コナン 銀翼の奇術師

登録日:2015/11/14 Sat 12:39:32
更新日:2025/04/20 Sun 13:25:25
所要時間:約 18 分で読めます





挑め!上空1万フィートの

絶体絶命(クライム)サスペンス。


監督:山本泰一郎
脚本:古内一成
主題歌:愛内里菜「Dream×Dream」

『名探偵コナン 銀翼の奇術師(マジシャン)』とは、劇場版名探偵コナンシリーズの第8作目のタイトルである。2004年4月17日公開で上映時間は107分。興行収入は28億円。

【概要】

怪盗キッドが登場する劇場版作品の2作目。前半は夜の摩天楼を舞台にコナンとキッドが激しい対決を繰り広げ、後半は飛行機内で殺人事件が発生してコナンが解決に導くという二段構造となっている。
ラストにかけては飛行機が墜落の危機に瀕するため、コナンとキッドが共同戦線を張ってこのピンチを切り抜けているのも特徴。
またキッドの影に隠れがちだが、今回は『瞳の中の暗殺者』とは逆パターンで、蘭が新一に告白するシーンがある。
終盤の展開によるものか、終了後に「この作品はフィクションです」というテロップが流されている(詳しくは後述)。


【音楽】

世紀末の魔術師』の劇伴の再録や挿入歌「ぼくがいる」の高山みなみverなど音楽面の特徴は多め。しかし『魔術師』の時よりもサスペンス曲が多く、前後の劇場版作品のそれよりもTV版への使用回数は多かった。
TV版への楽曲導入は翌年9月の『完全半分犯罪の謎』からスタートした。劇場版の楽曲の導入がほとんどなかった時期ではあったが、前後の劇場版作品よりは定着した楽曲もあり*1、中には原曲こそ使われなかったものの、2007年のリニューアル以降から使われるようになったものもある。


以下、ネタバレにご注意ください。


【ストーリー】

ある日、毛利探偵事務所に女優の牧樹里とマネージャーの矢口真佐代が依頼を持って訪れる。
今朝彼女の下に、怪盗キッドから彼女の所有する「運命の宝石」と呼ばれるスターサファイアを狙うとの予告状が届けられたらしく、小五郎にその宝石の警備の依頼をするために事務所を訪れたのだという。
樹里に問題の予告状を見せてもらった小五郎は、彼女が出演している舞台『ジョゼフィーヌ』の公演中に犯行を行うと推理し、夕方に汐留ビュータワー内にある劇場「宇宙(そら)」へコナンたちを連れて向かう事に。
そこでは中森率いる警察が厳重な警備体制をしいており、そこで何と新一に扮したキッドも登場する。
コナンは逃がすまいとキッドを終始マークし、彼が観客席から離れると急いで後を追う。
そしてビルの屋上へキッドを追いつめ、夜の汐留を舞台に激しい追走劇を繰り広げるが、あと1歩のところで捕り逃してしまった。

数日後、コナンたちは宝石を守り切ったお礼として、函館の樹里の別荘で行われる劇の打ち上げパーティーに招かれる。
当のコナンはキッドがあっさり引き下がった事に疑問を抱いていたが、劇に出演した役者が集合する空港ロビーで何者かの殺気を感じる。
その頃、函館に先回りしてキッドを待ち伏せしていた中森は、樹里の別荘内で怪しい人影を見つけ、それをキッドだと確信して踏み込むのだが……?

スカイジャパン航空の函館行き865便に乗り込み、一行は函館に到着するまで空の旅を楽しむ。
離陸前の探偵団の他愛無い会話から、コナンはこの飛行機の中でキッドは犯行を行うと推理。
宝石を身につけている樹里を静かに監視していたが、そんな中、チョコレートを口にした樹里が突然苦しみ出し、スターサファイアの指輪をはめた手を伸ばしてそのまま絶命する。
当初は現場の状況から、チョコレートが入っていると考えられたが、チョコに毒が入っていたなら同じくチョコレートを食べた小五郎もただでは済まないはず。なのになぜ樹里だけが絶命したのか。その後小五郎は、毒は田島天子が樹里にあげたビタミン剤に入っていたと推理を訂正して彼女を犯人だと名指しする。
その一方でコナンはいつもどおり冷静な推理をして犯人を導き出すが、その裏で予想だにしない恐怖が彼らに忍び寄っていた……


【登場人物】

事件関係者

  • 牧樹里(まき じゅり)
CV:戸田恵子
舞台女優。37歳。
座長を務める舞台『ジョゼフィーヌ』では主役の「ジョゼフィーヌ・ド・ボアルネ」を演じる。
キッドから「運命の宝石」を頂くとの予告状を受け、小五郎に警護の依頼をする。
典型的な女王様タイプの人物であり、いつも自分が中心でないと気が済まない。
俳優仲間などの身内にも厳しく接し、端役に至っては眼中にすらない模様。
それでも実は元CAであり、今回搭乗した飛行機の機長たちとは顔見知りだったりする。
スキューバダイビングが趣味だがやり始めて日は浅い。
銀座で売られている高級チョコレートが好物で、出かける際にいつも真佐代に携帯させている。
だが今回はそのチョコを口にした途端、それに仕込まれた毒によって殺害される。

  • 矢口真佐代(やぐち まさよ)
CV:久川綾
樹里のマネージャー。32歳。
彼女もなかなかの美人だが、樹里とは対照的に大人しく幸薄そうな女性。
要領が悪く気の利かないため、人前で樹里によく恥をかかされていたらしい。
彼女が買って来たチョコを食べてすぐに樹里が死亡したため、小五郎に最初犯人だと疑われる。

  • 酒井なつき(さかい -)
CV:氷上恭子
ヘアメイク。26歳。
樹里の専属ヘアメイクであるが、彼女もまた美人でかわいい。
真佐代と違って気の利く性格なため、樹里から気に入られている。
だが内心はわがままな樹里にいつも振り回されてばかりでうんざりしているらしく、他の仕事をしたいと思っていた時に邪魔された事もあると不満を漏らす場面もあった。

  • 成沢文二郎(なるさわ ぶんじろう)
CV:森功至
舞台俳優。34歳。
舞台『ジョゼフィーヌ』では「ナポレオーニ・ボナパルト」を演じる。
実は樹里の元夫で3年前に協議離婚している。だがまだ樹里に未練があるらしく、何度も復縁を迫るもその都度冷たくあしらわれているらしい。
舞台終了直後にキッドと間違われ小五郎たちに取り押さえられるが、函館に行く際にそれを笑って許してくれたいい人。

  • 田島天子(たじま てんこ)
CV:島津冴子
舞台女優。36歳。
舞台『ジョゼフィーヌ』では「テレジア・タリアン」を演じる。
樹里とは古くからの友人で仲はいいものの、夫の伴が彼女に頭が上がらない事だけは我慢がならず、そのためたまに樹里に対しきつく接する事もある。
飛行機の離陸前に樹里にビタミン剤を与えていた事から、小五郎に樹里を毒殺した犯人だと決めつけられてしまう。

  • 伴亨(ばん とおる)
CV:柴田秀勝
演出家兼舞台俳優。45歳。
舞台『ジョゼフィーヌ』では「バラス・ド・ポール」を演じる。
樹里に女優の才能を見出し、一流の女優に育て上げる。
だが現在は樹里に演出の口出しをされる事が多く、今回の舞台に至っては演出のほとんどを樹里が1人で行っていた。
その事に関して度々夫人の天子にきつくなじられる事もあった模様。

  • 新庄功(しんじょう いさお)
CV:三木眞一郎
舞台俳優。28歳。
舞台『ジョゼフィーヌ』では「イポリット・シャルル」を演じる。
樹里の現在の恋人だが、なつき曰く「もう飽きられている」らしく、何度も「誰か他にいい男がいないか」と相談されていたらしい。
体調不良を理由に今回の打ち上げは欠席する予定だったが、体調が戻ったらしく急遽参加する事を決める。
そして終盤で飛行機がトラブルに見舞われた時に大胆な行動に出るのだが……?
なお、担当声優の三木氏は本編では萩原研二を演じている。


レギュラー陣

ご存知主人公。
キッドと対等に渡り合うために、事前にパラグライダーを用意して激しい対決を繰り広げる。キッドを逃した後どのようにして電車から降りたかは不明。
終盤で飛行機が急降下した際は、「ハワイで父親に教わった」セスナの操縦技術で飛行機の操縦桿を握り、何とか水平飛行を保った。が、たとえ技術があったとしても実際は多分こううまくはいかない。
本編に出てくる新一はキッドの変装のため、本当の新一はコナンの蝶ネクタイ型変声機による変声や背後のイメージ、蘭の回想シーンぐらいである。

ご存知月下の奇術師。
大胆にも新一に変装して捜査に混ざっていたが、新一と顔立ちが似ていたためばれる事はなかった。
だが本物の新一(コナン)の前に関わらず、ドヤ顔でオヤジギャグをかましたり、阿笠級のダジャレクイズを出題するなど好き放題に振舞っていたため、コナンに呆れられる。
コナンは飛行機内で彼が犯行に及ぶと推理していたが……

ご存知蘭姉ちゃん。
新一(に変装したキッド)といきなり対面し戸惑うが、その仕草から彼がいつもの新一とは違う事を感じ取っていた。
終盤では飛行機の操縦という重要な役目を任される羽目になり……

ご存知迷探偵。
キッドが舞台で犯行を行うと睨み、中森と一緒に出演者に紛れて張り込む。
樹里と一緒のチョコを食べ、彼女が毒で倒れた時には口をあんぐり開けて顔が真っ青になった。
コナンシリーズ全体においても数少ない顔芸である。

ご存知哀ちゃん。
コナンに対し「鼻をつまみ耳抜きをする顔は特に異性には見せたくないものよ」と教え、それが殺人事件解決のヒントとなる。
滑走路の長さや地盤を考慮し、飛行機が着陸できそうな場所をコナンと共に考える。

ご存知天才発明家。
殺人事件の犯人が自供していた時にある言葉をかけ、優しく諭す。
今回はコナンのために、リュック型のパラグライダーを用意していた。

ご存知少年探偵団。
個々に際立った活躍はないものの、飛行機がトラブルに見舞われた際に歩美と光彦は役立つ情報を思い出しコナンをサポートする。
元太はいつもの食いしん坊な仕草が、殺人事件解決の糸口になった。

ご存知蘭の親友。
蘭が操縦を任された際、彼女をサポートを出来るのは私しかいないと率先して残る事を決意する。

ご存知法曹界のクイーン。
蘭の計らいで飛行機に乗り合わせるが、小五郎との関係はまだまだ険悪なまま。それでも機内で事件が起きた時は協力して解明に努める。
今回はコナンの麻酔針が誤って命中してしまい、やむなくコナンは彼女を探偵役に推理を披露。
起きた後で推理を披露したことに対して疑問を感じたかどうかは不明だが、この後起きる大事件でそれどころではなくなったものと思われる。

警視庁捜査二課の警部。
『世紀末の魔術師』で小五郎に顔をつねられて以来犬猿の仲となり、再会した時は大人気ない意地の張り合いを見せる。

ご存知捜査一課の警部殿。
終盤になってようやく登場。
札幌出張の帰りに室蘭に寄り、白鳥大橋(はくちょうおおはし)を「しらとりおおはし」と間違える。
そこで数十台のパトカーを目撃し、ついていった結果大事件に巻き込まれる羽目に。……なんで?

ご存知御曹司警部。
室蘭にある白鳥大橋を眺め、「いつか美和子さんとここに…」と思いを馳せる。

ご存知高木君。
こちらは白鳥大橋を眺めながら「ここは絶対ペケだな…」とデートプランから外していた。
飛んでくる飛行機にいち早く気づく。

  • 西村京兵*2
北海道警の警部。
以前『上野発北斗星3号』で事件の捜査を担当していた。
今回はエピローグにて犯人の身柄を引き取りに現れるが、声の出演はなし。

  • 田村刑事
北海道警の刑事。
西村の部下で同じく『上野発北斗星3号』に登場していた。
彼も西村と一緒に登場するが、こちらも声の出演はなし。


その他

  • 大越(おおこし)
CV:井原啓介
スカイジャパン航空865便の機長。
樹里と面識があり、舞台を真似て彼女の手の甲に口づけをする。
その後、なぜか息苦しさを感じ、そして……

  • 中屋(なかや)
CV:中村大樹
スカイジャパン航空865便の副操縦士。
大越と同じく樹里と面識があり、彼もまた彼女の手の甲に口づけをする。
そして大越と同じく体調が悪くなり……

  • 三沢千秋(みさわ ちあき)
CV:伊倉一恵
スカイジャパン航空865便のCA。
機内では飲み物やお菓子で客をもてなし、コックピットにコーヒーとお菓子を運んだ。

  • 進藤玲子(しんどう れいこ)
CV:引田有美
スカイジャパン航空865便のCA。
機内で事件が発生した際に、小五郎に大越の伝言を伝えた。

  • 由紀(ゆき)
CV:百々麻子
スカイジャパン航空865便のCA。

  • 島岡(しまおか)
CV:菅原正志
函館空港にいた機長。
管制コントロール室からコナンたちと連絡を取り合い、彼らに着陸の手順を説明する。

  • 上杉(うえすぎ)
CV:金尾哲夫
函館空港管制部長。
スカイジャパン航空865便に連絡をとり、その無線を上杉に取り次ぐ。

  • 石田(いしだ)
CV:藤城裕士
医師。
スカイジャパン航空865便にたまたま乗り合わせていた乗客で、大越と中屋の診断を行う。

  • 刑事
CV:松本保典
警視庁捜査二課の刑事で中森警部の部下。
キッドを逮捕するため、総動員して樹里の別荘に先回りしていた。


【劇中劇『ジョゼフィーヌ』について】

ナポレオンの最初の妃「ジョゼフィーヌ・ド・ボアルネ」の生涯をモデルにした舞台演劇。

バラス(伴)が開いたパーティで、ジョゼフィーヌ(牧)はナポレオーニ将軍(成沢)と出会い、スターサファイアの指輪をもらう。
愛しあう2人だが、ジョゼフィーヌはイポリット中尉(新庄)との恋に落ち、ナポレオーニの怒りを買う。(マリー・ルイーズと結婚することを話したのかジョゼフィーヌは気絶する。)
その後、 最期の時を迎えたジョゼフィーヌはベッドで輝かしい過去に思いを馳せ、「ボナパルト、ローマ王、エルバ島」と呟き、スターサファイアの指輪をはめた手を伸ばし息絶える。
舞台は最も輝かしかった戴冠式の出来事に移り、ジョゼフィーヌとナポレオーニが「未来は私たちのもの」と高らかに宣言して幕が下りる。

  • あれこれ
おおよそ史実通りだが、この劇では名前の変化が少しばかり適当である。詳細は各自で調べて頂きたい。
ジョゼフィーヌとイポリットの関係やキス、最期は後半にも繋がる部分がある。

【余談】

また、キッドは汐留ビュータワーの警備員にも変装しており、その警備員を演じたのは本編で松田陣平を演じている神奈延年氏である。
新庄功にもキッドが変装していたことを踏まえると、警察学校組の面々を演じた声優二人のキャラにキッドが成り済ましていたということになる。

「フィクションです」と表示されるのは、元客室乗務員とはいえ単なる乗客に過ぎない人物が、コックピットに入ったシーンがあることが原因と思われる。
特に2001年のアメリカ同時多発テロ事件(9.11テロ)以降、旅客機のコックピットへの立ち入りはクルー以外は例え運航を担う航空会社の社員であっても固く禁じられているケースがほとんどである。
しかも本作は9.11テロ事件の後である2004年に制作されているため、本来であればコックピットへの出入りなどできないはずである。


追記・修正は、持っている辞書に「不可能」の文字が無い方にお願いします。


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最終更新:2025年04月20日 13:25

*1 『コナンと警備員』『機上のサスペンス1』など。

*2 下の名前は、2024年に公開された『100ドルの五稜星』で判明する。