アットウィキロゴ

FA(プロ野球)

登録日:2026/02/20 Fri 00:00:00
更新日:2026/06/18 Thu 06:23:24
所要時間:約 15 分で読めます




カープが…大好きなので…辛かったです…
広島東洋カープ・新井貴浩
(2007年のFA宣言時の記者会見より)


本項では、日本のプロ野球(NPB)におけるフリーエージェント(FA)について記述する。


【概要】

プロ野球における移籍方法の一つで、選手が一定期間出場選手登録(一軍登録)されることで、選手の自由意志による移籍が可能になる権利を得る。
これを一般的に「選手がFA権を取得する」と表現する。
CSも含めて出場選手登録145日を1年として換算し、7~9年経過することで国内外の他球団に移籍する権利を取得できる。
ただし、145日を超えて登録されてもカウントされるのは145日まで。また、登録日数が145日に満たないシーズンが複数ある場合はそれらを合算して満145日ごとに1年として計算される。途中で所属球団が変わっても引き継いで計算される。

大前提として、NPBにおいて*1FA権を取得しない限り、選手自身の希望によって他球団に移籍することは原則的に不可能である。
球団が認めれば戦力外通告を受けて自由契約*2になることもできるが、もちろん「移籍したいから自由契約にしてくれ」なんてことはよほどの理由がなければ認められない。

+ ドラフトと所属球団
日本においてプロ球団に入る時は殆どがドラフト指名によるものだが、これは本人がプロ志望届を出した後*3は「指名するのは球団側」「どの球団が交渉権を獲得するかはくじ引きないしは順位に応じた指名順」と言う制度。
つまり選手本人の希望する球団に入るには、「その球団が自分を指名」してかつ「(ドラフト1位なら)くじ引きで交渉権を獲得」或いは「希望球団の前に他球団が自分を指名しないこと」が条件。
ぶっちゃけ仮に選手側に希望球団があったとしてもそれが通らない事の方が圧倒的に多い制度である。
しかも多少実績上げたとてプロ野球協約によって所属球団が契約優先権を独占しているため、一般的なサラリーマンのように転職と言うわけにもいかない*4

これはプロ野球が興行であることと戦力の均衡をある程度保つため*5にはやむを得ないと言う事情もあり、結果的に選手の意思は二の次とならざるを得ないのが実情*6
実質その救済として設けられた制度がFAとなる。ドラフトで拘束された選手が、初めて自分の意思で職場を選べるようになる唯一の機会と言っても過言ではない。


国内FA権は高校生入団の場合は8年・大学や社会人入団の場合は7年、海外FA権は全選手が9年経過することで取得可能になり、日本シリーズ終了翌日から7日以内にコミッショナー宛に申請することで行使可能。8日目の午後3時にコミッショナーより「FA宣言選手」として公示され、翌日から国内外全ての球団と契約交渉を行うことが可能になる。

日本国籍を有さない外国人選手もFA権を獲得することが可能で、FAを取得した外国人選手は行使の有無にかかわらず翌年からは外国人枠から外れ、日本人扱いで起用することが可能となる。
これに関しては郭泰源やランディ・メッセンジャー、現役だとリバン・モイネロのような、「NPB入り後はリーグ内で移籍していない」選手の方が有名かもしれない。

「故障者選手特例措置制度」「投げ抹消による先発投手特例」など、一定の条件を満たせば登録扱いされるケースもある。
一度行使した選手は4年経過することで再び取得可能。この場合は海外FAになる。


【歴史】

日本における制度導入は1993年のシーズンオフだが、それ以前の1947~1975年には『10年選手制度』という制度が存在した。
これはプロ入りから10年間同一チームに在籍した選手は自由に移籍が認められるというFA制度の前身とも言えるものであった。この制度を利用した代表的な選手としては400勝投手・金田正一などが挙げられる。

プロ野球選手会は「職業選択の自由」を訴えて本制度の導入を提言したが、球団側は年俸の高騰を招くとして反対する状況が続いていた。
しかし、1993年にJリーグが発足し、サッカーに押されて野球人気が低下してしまうのでは、と危機感を抱いた球団側も渋々了承する形で導入された経緯がある。

特に1990年代後半は豊富な資金力で巨人がやたらにFA選手を獲得していたことから「巨人が有利になるためにFA制度を作った」と揶揄されていたが、上述の経緯からこの説は大きな誤解であることが明らかだろう。
つまり「選手のために作られた制度だったが、当時のルール設計の甘さと資金力の差によって、結果的に巨人が最もその恩恵を享受できる形になってしまった」というのが歴史の真実である。
尤も、2000年代後半以降になると様々な理由で巨人のブランドイメージが下がったことからかつてほどの勢いはなくなり、以降はソフトバンクのほうがFA補強に積極的な状況が続いている。

その一方、広島のようにFA補強に消極的なチームも存在し、制度導入から既に30年以上が経過しているが2026年現在でFA選手を獲得した事例が皆無であるのは広島のみである*7*8貧乏球団と呼ばれることが多く選手への待遇に問題があり消滅した近鉄でさえも2001年オフにオリックスから加藤伸一を獲得しているという実績がある。


【移籍の扱い】

NPB他球団に移籍した場合、FA選手を獲得した球団は古巣に対して「金銭補償」か「人的補償」を行う義務が生じる。
当初は全てのFA選手に適用されていたが、2008年からは当該選手の古巣での年俸が3位以上はランク、4位~10位までがランク、11位以下はランクと3段階に分類され、このうちBランク以上の選手に適用されるようになった。

前者を選択した場合、当該選手の旧年俸の6割(Aランクは8割)を支払う。後者を選択した場合、当該選手の旧年俸の4割(Aランクは5割)に加えて特定の支配下選手1人を人的補償選手として獲得する。ただし、「プロテクト(優先保有)した28人の選手」「外国籍選手(FA権を取得して日本人扱いになった選手を含む)」「直近のドラフトで獲得した新人選手」「育成契約選手」は選択できない。

また、万が一人的補償選手が移籍を拒否した場合は、その選手は資格停止選手の処分を受け、さらに金銭補償が行われるが、2026年現在までそのようなケースは発生していない。*9*10
FA選手の翌年の年俸は現状維持が上限だが、契約年数や出来高払い(インセンティブ契約)、2年目以降の年俸の上昇に制約はない。

海外の球団に移籍した場合は国内と違って補償は生じないが、例外として2年以内に帰国してNPB他球団へ移籍した場合は最後に在籍した日本の前球団への補償が必要になる。ただし、海外FAによる補償制度は一度も発生していない。


【FA権について】

選手がFA権を行使する理由

選手がFA権を行使し国内他球団に移籍する理由は、純粋に契約条件や年俸を重視したものもあれば、
  • 現所属チームが弱小チームであるため、強豪球団に移籍することで優勝や優勝争いがしたい。
  • 少年時代の憧れだったチームに移籍したい。
  • 現所属チームでは出場機会を確保しにくいため、レギュラーで出場できるチームに移籍したい。
  • 地元や故郷、もしくはそこに近いチームでプレーしたい。
  • 家族と一緒に生活したい。
  • トレード人的補償で放出された場合など)愛着のある古巣に復帰したい。
  • 一緒の球団でプレーしたい人物がいる球団に移籍したい。
  • 現所属チームでは首脳陣との関係が芳しくない。
  • もう一方のリーグに挑戦したい。
…などなど、選手によって千差万別と言える。

なお、FAを行使したが移籍には至らなかった場合、あるいは行使はするが最初から移籍しないケースもあり、特に後者を指して「宣言残留」と呼ばれる。この場合でも行使した扱いになるため、選手側としては「再取得までの4年間はこのチームで働きます」というアピールになる。
それを見越して球団側でも新たに4年以上の契約を結ぶケースが多く、功労者報酬という意味も含めて年俸も上昇する傾向にあるが、資金力に乏しい球団特に広島東洋カープではこれを嫌って認めない場合も見られる。
また、近々FA取得を控えた選手が「1年で勝負したい」などとあえて単年契約を結ぶケースも多い。

ごく稀にではあるが、移籍を視野に入れてFA宣言したのにどの球団からも声がかからないという状況に陥るケースがある。ましてや宣言残留を認めない球団だったり、獲得すべきか微妙な成績だったりすればなおのこと移籍先が決まらずに交渉期限を過ぎかねない。この場合来年は無所属になってしまうために『セルフ戦力外』などと揶揄されてしまう。

なお、建前上はFA前からの交渉は禁じられているが、実際には移籍先がスムーズに決まる場合が多く、ある程度下交渉した上でFA宣言に至ると噂されている(タンパリングと呼ばれる。少なくともNPBでは文面上は禁止だが、実際には黙認・タンパリングによる移籍先決定をしたうえでの宣言がほぼ前提とされているとする意見が主流*11)。

また、球団から来期の構想外と判断されたFA権保有済みの選手が、表向きはFAをし退団を余儀なくされるという実例も存在している。


FA権は諸刃の刃?

自由に移籍が可能になるFA権だが、元千葉ロッテで活躍した捕手である里崎智也氏によれば『FA権は諸刃の刃』だという。
FA選手は高額年俸を貰っていることが多く、移籍してきて結果を残せなければそのチームでの風当たりが強くなる可能性も高くなる。
『愛着ある古巣に復帰したい』あたりのケースではファンや選手も温かい目で見てもくれるだろうが…。
また、前述のセルフ戦力外のようなリスクもゼロではない。
つば九郎が(ジョークとして)FA宣言した時の6さまこと宮本慎也のイジりコメント「ヤクルトを出てみたいって決めたのはつば九郎でしょう?FA宣言して出ていくんなら、それはアイツの自己責任なんですから勝手にどうぞ」なんかも、裏を返せばこういう「厳しい見方」が存在することを前提とした言い回しと言える。
なお実際には多数のオファーを受けたにもかかわらず宣言残留し、それどころか球団広報・つば九郎としてオファーが来た団体の一部とのコラボを取り付けた。

仮に成功を収めたとしても、前所属球団のファンからは『裏切り者』などと心ない野次が飛ぶこと*12もしばしばある。
NPBにおいてはFAやトレードによる移籍は限定的なケースであり、原則的には所属した球団が絶対という価値観が強く根付いていること、
特に「FA権を得られる選手」は自然と「長年にわたって球団に貢献してきた愛着ある存在」なことが多く、なまじ行使しない選択肢はあることも、そうした風潮を加速させる要素と言える。

とはいえ、一般的な価値観で考えれば職業選択の自由が認められない方がおかしいわけであるし、
ルールとしても選手が厳しい球界をリタイアせず生き抜くことで「勝ち取った」、紛れもなく正当な権利である。
したがってFA権を行使し他球団移籍を試みた選手を裏切り者と断ずるのはお門違いであると言える*13ただ流石に両者のライバル関係が特に根強い巨人阪神間でのFA移籍はFA制度誕生から30年以上経過した現在でも皆無である。*14

少なくとも、選手の間ではFA移籍者のことを『裏切り者』と考える選手はほぼいないようである。


【歴代FA移籍者リスト・NPBでFA権を取得した外国人選手】










【余談】

  • これまでのFA流出人数が(消滅した近鉄も含めて)一番多い球団は西武である。これは本拠地の西武ドームや選手寮が不便な立地であること*18、年俸の上がり方が渋い(現在は改革されてそうでもないとはされているが)…等が理由とされる。
    • 中村剛也、栗山巧の扱いが大きいのは、この時期を能力の最盛期として経験しているにもかかわらずFAによる移籍を行わなかったのもあるなど、やはり流出に次ぐ流出はファンにも重く受け止められていると言える。
  • 星野仙一は生前に遺した自らの著書において、このFA制度を真っ向から否定していた。星野曰く「今まで自分の事を応援してくれたファンに対する裏切り行為なのではないか」との事。まあ、生きてきた時代を鑑みればこうした考え方も持っているだろう、というわかりやすい例だと言える。
+ 「○○式FA」
「○○式FA」
  • ポスティング制度などを利用してメジャーに挑戦した後、短期間で帰国→渡米前の所属球団とは異なる球団と契約することで、本来FA権取得に要する期間よりも早く国内移籍出来るという抜け道を利用すること。ネット上では「○○(選手名)式FA」と呼ぶことがある。
    • もちろん正式なFAではないし、性質上揶揄を含むスラング的な表現であるため安易な使用は控えたほうがよい*19
    • ポスティングは球団の判断であり、最終的には短期移籍の可能性も含めて認めた球団の責任である。しかしこの手段を濫用されれば球団はポスティングに対して慎重になってしまい、その結果として後進の選手たちがメジャーに挑戦する機会を奪われてしまう可能性もある。
    • 現行制度には違反していないとはいえFAの趣旨に大きく反する行為であり、球団-選手間の信頼を損ねかねない行為でもあるため、一部で制度や契約の在り方について見直しを求める声もある。
      だが実際の所は各球団の立場の違いに加えて、選手会・MLB等の思惑が複雑に絡み、なかなか議論は進んでいないのが実情。いずれにせよ将来の選手が不利益を被る事態だけは避けて欲しいものである。

追記、修正は、FA権行使者を安易に裏切り者と断じない方にお願いします。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/
最終更新:2026年06月18日 06:23

*1 と言ってもNPBだけが異常に厳しいとかではなく、MLBなどでも制度は大差ない。

*2 なお、本来「フリーエージェント」というのは文字通り「自由契約になった選手」を指す言葉となるが、今日ではその意味では使われない。

*3 社会人野球の場合はプロ志望届は不要。それ故に2009年に中日から6位指名された諏訪部貴大(入団拒否。プロ入りせず2012年に現役引退。)や、2024年にロッテから4位指名された立松由宇(当初は入団拒否の意向だったが周囲に説得されてロッテに入団。)のように、プロ入りの意志が無いにも関わらず強行指名されてしまう例も存在する。

*4 一応独立リーグ等を経て一度契約を解除すると言う手もないではないが、短い選手生命の中で1年を棒に振る&希望球団と相思相愛が続く前提でありほぼ例はない。

*5 特にドラフト制は、拘束を強くしないと「最初の契約の間だけ我慢して出ていく」が弱小球団での最適解になるので、ドラフトの意味がなくなってしまう。

*6 これはあくまでもNPBの方針であり、MLBのように「戦力を揃えられないのは球団の自己責任の範疇となる」の方針で運営しているリーグも海外には存在する

*7 ただ、2010年オフに内川聖一がFA宣言した際には獲得に名乗りを上げている。

*8 海外FAを行使してMLB挑戦後にNPB復帰を希望した選手を獲得した事はある。特に秋山翔吾は外様選手を積極的に獲得した数少ない例となり、間接的なFA選手獲得と言えなくもない。

*9 ただしFAによるケースではないが、過去に巨人で活躍していた定岡正二が近鉄へのトレードを拒否して引退した実例は存在する。こちらは資格停止処分ではなく任意引退扱いだが。

*10 移籍を直接拒否した訳ではないが、ベテラン選手が移籍することになったら即座に引退することを仄めかして実質拒否したケースはあるとされる。いずれのケースもやたら時間をかけたのに金銭が選ばれたり、短期間で情報が錯綜した挙句本来ならプロテクトされてそうな中堅が指名され、後日不釣り合いなトレードがなされるなど、第三者目線では不自然な措置が取られているのが共通している。もっともあくまでゴシップ紙の噂レベルの報道であり、正確性のあるソースはない。

*11 後述する山川穂高のケースにおいて、素行不良の発覚前の時点で(偶然ではあるが)「FAによる移籍を前提にソフトバンクと交渉がまとまった」のを肯定するような雑談がカメラに撮られてしまった事例などが根拠とされている。この時は山川本人ではなく柳田悠岐と浅村栄斗によるものだった(オールスターゲームであったため同じベンチにいた)。

*12 有名な例として、2007年オフに新井貴浩が広島から阪神に移籍した際に、翌2008年の広島市民球場での一戦で凄まじいブーイングを浴びた。2023年オフの山川穂高に至っては自らの不祥事によって17試合の出場に終わりながらFAでソフトバンクに移籍したことで、ただでさえFA流出の多い西武とはいえ禊もなく移籍したことがファンの強い怒りを買い、2024年のベルーナドームでの試合で地鳴りのような大ブーイングを浴びせられた。

*13 上述の新井の場合、FA宣言時の会見で「カープが大好きなので(FA宣言するのは)辛かったです」「僕のことを野次るファンよりも僕の方がカープを愛してる」などファン感情を逆撫でする発言をしたのが憎まれる原因となった。

*14 創作物ではライバル性の高さを説明するためにこのような選手を登場させることは稀に見られる。

*15 北京原人に似ていることから、当時監督であった長嶋茂雄も『河野』と呼ばずほぼ『ゲンちゃん』と呼んでいた。

*16 アメリカ人の父を持ち、マイケル=フィリップ=ピーターソンという米国人名をもつことから。

*17 頓宮裕真は一応今でも捕手登録ではあるようだが、事実上はコンバートされている。

*18 選手としての生活だけではなく、「引退後」を考慮しての社会経験にも不便(プロ野球と関わりの深いメディア企業が近隣に無いなど)…という背景もある。

*19 具体的な名指しは避けるが、そもそもこのスラング自体が「当該選手がNPB復帰したところ、こちらでも通用しない(ファンの目にも明らかなほど不調に陥った)」という背景もある。つまり行動とは別に選手としてもヘイトを集めていたことに注意する必要がある