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打順(野球)

登録日:2026/04/30 Thu 11:50:00
更新日:2026/08/08 Sat 18:59:21
所要時間:約 8 分で読めます




1中 打順とは
2右 野球に
3左 おける
4一 攻撃時に
5三 打席に
6二 立つ際の
7遊 選手の
8捕 順番の
9投 ことである。


【概要】


野球は9人で行うスポーツであり、守備側が3アウトを取ると自チームの攻撃に移行することができる。
この攻撃の際に打者が打席に立つ順番が打順である。9人目の打者(9番打者)が打席を終えると1番打者がもう一度打席に立ち、その1番打者が打席を終えると2番打者が打席に立つ…という風にこれを繰り返していく。

打順は試合の開始前に決め、試合中にスタメン同士の順番を変更することはできない。守備位置などには全く関係なく、自由に指定できる。
選手を試合中に交代した場合、交代で入った選手は、交代させられた選手の打順を引き継ぐ*1。代打という概念を鑑みれば当たり前だが。
特に守備固めのために選手を交代する場合、代えたい選手の打席が近いか遠いかを考慮する必要が出てくる。

なお、DH制を適用している試合でDHを解除した場合、投手は解除に伴いベンチに下がった野手の打順に入る。
例えばDHの選手を下げた場合はそのままDHの打順に入り、DHの選手を守備に就かせた場合はその代わりで下げられた選手の打順に入る。

オークランド・アスレチックスMLB)にてGMを務めたビリー・ビーン氏の『野球は27個のアウトを取られるまで終わらない競技』との言葉通り、攻撃側は3アウトを取られない限りは攻撃を継続でき、同じ安打数でも打線が「繋がる」かどうかで得点が激変するのが野球であるため、打順の組み方というのはチームの得点力・勝敗に直結する非常に重要な要素である。

プロ野球であろうとアマチュア野球であろうと、自チームの持てる戦力の中から最も得点効率が高い打順(順番)を考えるのは監督(首脳陣)の大きな仕事の一つである。

もっとも、「攻守交代により打順が1番にリセットされる」といった措置があるわけではなく、2回以降は「前回攻撃時の最後に打撃を終えた打順の次打者から始まる*2」ため、「1〜3番が凡退して、4番が先頭打者になる」「下位打線の7〜9番から攻撃が始まり、それぞれ出塁してチャンスで1番に打順が回る」といった、後述するような打順の一般的なセオリーから外れる状況も頻繁に発生するため、打順への固定観念に捉われすぎず、状況に応じたバッティングや作戦を取ることも重要となる。
そのため極論を言ってしまえば「パワプロで言うオールAのような万能選手を9人揃える」ことが打順を組む上での最大の理想であるのだが、例え国際試合の代表チームであってもそんな規格外の面子だけを都合良く召集するのは非現実的であるため、個々の選手の能力や適性を考慮して打順を組むのが基本となる。

こうした野球の構成要素としてのウエイトの大きさから、プレイだけではなく野球文化とも切っても切り離せないものとなっており、チームの打者陣営そのものを指して「○○打線」との愛称で呼ばれることも多い。
球団名などを付けて「○○打線が爆発」「○○打線をゼロに抑える」といったような使われ方もするが、特に優勝チームなど印象的な活躍をした打線には固有の愛称が付けられることが多い。圧倒的な火力を誇った近鉄の「いてまえ打線」や西武の「山賊打線」、切れ目なく単打を繋ぐ横浜の「マシンガン打線」あたりは有名だろう。

逆にメンバーが固定されず、試合ごとに打順や出場選手が変わる場合は「日替わり打線」「猫の目打線」等と呼ばれる。大抵はチーム状況や采配が安定していない様子を揶揄する文脈で使われるが、2005年のロッテでボビー・バレンタインが行ったように、相手投手との相性や選手のコンディションなど綿密な分析に基づいて組まれる場合もあるし、そうでなくても「特定の守備位置だけ猫の目」のケースは意外と優勝したようなNPBチームでもよく見られるものである。
例えば「いてまえ打線」では投手との相性の都合から有田修三・梨田昌崇の猫の目捕手システム「ありなしコンビ」が採用されていた*3し、オリックス・ブルーウェーブの「ブルーサンダー打線」ではイチロー、田口壮加入前の外野手や打線晩年の二塁手・三塁手が有力候補のポジション被りにより猫の目システム導入状態となっていた。

ただ、Mr.FULLSWINGなど創作作品で登場した「ダブルチャンス打線*4」については実際には論ずるに値しないというレベルで物凄いツッコミが為されている。
これはダブルチャンス打線に色々な難点があるにも関わらず、さも欠点が無く素晴らしいものかのように作中のキャラが言っているのが問題なのであり、組むこと自体は問題ではない。要は勝てばいいのである。
なお同作中のダブルチャンス打線については、主力の負傷退場も重なって完全に機能不全に陥っていたことは留意しておく。勝ったからいいけど。

また、メディアやネットコミュニティでは何らかのテーマに沿った語句や固有名詞を挙げて序列を作る際、かつては相撲になぞらえて「○○番付」として表現されていたが、現在ではネットユーザーを中心に「○○で打線組んだ」という表現がもうひとつの主流として上がってきている。
ちなみに最上部の簡略的な説明で使った「センターが1番」「レフト、ファースト、サードあたりがクリンナップ」「ショートとキャッチャーが下位打線」はこの「打線組んだ」でよく見られる守備位置の割り振りでもある。このあたりは「4番がスーパースター」「1番はわかりやすい選手、2番は派手さは無くても技術的に優れた選手」「7・8番は花形性よりもみんなをサポートする方が得意な、『脇役の専門家』的な良さを持った者」といった打順へのそれだけではなく、ポジションの一般的なイメージの影響も強い。
もちろん、作った人の世代と打順にしてみた題材によっては、阿部慎之助あたりを反映して4番がキャッチャーだったりもする。
+ もうちょい詳しく
あくまでも一般的なコピペとしての組み方だが、
  • 派手系の選出メンバーは1番と3~5番。ただしDHなしで組むことがほとんどのため、実際には最も派手寄りの選出メンバーは「9番・投手」に指名することがほとんど*5。逆に2番、6~8番は手堅い系のメンバーを置く。
  • 1番は詳しくない人でもわかりやすい即効的なメンバーを、3~5番はある程度ジャンルに理解があるのが前提の場合に最も高い能力があると判断されるだろうメンバーを置く。後述する実際の打順決定と同様、3番がバランス型・4番が最高火力として最後に5番を決定するといいだろう。
  • 2番は万能選手系のメンバーとするとバント型・強打型どちらにも取りやすい。
  • 6・7番は「派手ではないが押さえておかないと語れない」系のメンバーを置くのが基本。8番が最後まで決まらなかった候補となることが多い。
  • 投手を除くと、パワーキャラ的なメンバーは一塁手・三塁手・左翼手、スピードキャラ枠は中堅手、バランスキャラは二塁手・遊撃手・右翼手、守備系キャラは捕手とイメージされていることが多い。
    • もちろん先述の阿部のようにこういったイメージにとらわれない実在選手は多く、守備位置の決定については、知識がある場合は自分の好きな野球選手でベストナインを組んで、そのイメージを当てはめていったほうが作りやすいかもしれない。上で挙げたものでも「ライトはバランスキャラ」はイチローの、セカンドは山田哲人あたりの影響があるだろう。

基本的に1番打者から5番打者までを『上位打線』、6番打者から9番打者までを『下位打線』に分類されることが多く、3番打者から5番打者までの打者は塁上の走者を返す役割が多いことから『クリーンナップ(clean-up、一掃する)』と呼ぶ(ちなみにこれは日本独自の用法で、アメリカではクリーンナップと言うと4番のみを指す)。
各打順には特徴があり、その特徴を下記に説明していく。
つまり打順は選手の評価でもあり、里崎智也は自身のYouTube動画において、プロはバッテリーを除けばアマチュア時代から1番かクリンナップを打っている選手が相場としており「アマチュア時代にバントするような(打順の)奴はプロには入れません!」と説明している。

なお、打順毎の特徴に合う選手を配置するのが定石であるため、「同一の選手が現役時に全ての打順で本塁打を放つ」という記録は珍しかった*6。…のだが、2010年代末期辺りから達成者が急増している。
これに関しては2番打者のイメージの変化や、そもそも従来ほど打順のイメージに捉われない起用法が多くなったのも影響しているのかもしれない。


【各打順の特徴】


1番打者

一番最初に打席に立つ打者で、『トップバッター』、『リードオフマン』、『切り込み隊長、『核弾頭等とも呼ばれる。
後続には優れた打者が続くことになるため、何より出塁してチャンスを作るチャンスメーカーの仕事を要求され、長打よりも高出塁率を求められる傾向が強い。

ファウルで粘り四球を選ぶことで出塁とともに相手投手の消耗を誘ったり、相手投手の特徴を後続打者に伝える役割を要求されることも多い。
また、チーム内でも特に俊足の選手が座ることが多い打順である。出塁した際に盗塁でチャンスを広げられること、それに伴って出塁するだけで相手にプレッシャーをかけられるといったメリットがあり、そもそもとして俊足な方が出塁率も高くなることが多い。そのためこの打順に足が速くない強打の選手が入ることは珍しい*7。担当する守備位置も中堅手等の外野手、二塁手遊撃手といった機敏さや捕球範囲の広さが要求されるポジションが目立つ。
また、右打者よりも立ち位置がファーストベースに近いことにより到達の距離を稼げるため、左打者が多いのも特徴。無論、ロッテ時代の荻野貴司のように右打者であっても十分な俊足や出塁能力を持ち合わせていれば一番打者に抜擢されるケースもある。

一方、単純に一番打席が回ってくる回数が多いことからチーム内で最も優れた打者を置くべきという意見も根強く、近年のその象徴例はクリーンナップ級の打力と俊足を兼ね備えたご存じ大谷翔平である。
また、鈍足かつ「振って当たればホームラン、当たらなければ三振」タイプではあるが、選球眼も兼ね備えることから「低打率・高出塁率・高OPS」という特徴的なスタッツを残す選手が1番打者として起用されることもあり、かつてはアダム・ダン、現在ではカイル・シュワーバーがこうした起用をされる選手として有名である。
他にも、中軸打者がシーズン終盤にタイトル争いの勃発やシーズン記録の更新を狙える状況になった場合、少しでも打席数を増やすために1番起用されるというケースもある。

  • 代表的なプロの1番打者

現役

OB
  • イチロー松井稼頭央福本豊(元阪急)石井琢朗(元横浜&広島)青木宣親(元ヤクルト&MLB)赤星憲広(元阪神)


2番打者

1番打者とクリーンナップを繋ぐ潤滑油的な役割を要求される打順で、求められる役割は1番打者と似ている。
実際のところ1番打者がどれだけ優れていようと出塁率はいいとこ4割ちょっと、つまり半分以上の試合では先頭で出塁できていないので、1番が出塁できなかった時に代わりに出塁するという役割を第一として求められることが多い。

1番打者とは役割の類似性や、文字通り打順のツートップを張るところから「1・2番コンビ」と一括りで形容されることも多い。
その1番打者との最大の違いは、昭和時代の応援歌で「1番が出塁、2番が送りバント*8、3番がタイムリー、4番がホームラン」と歌われていたように、1番打者やその前の下位打線が出塁していれば犠打やランナーを進める打撃などチームバッティングに徹し、より得点しやすい形で次に控えるクリーンナップに託すことを要求されるという点にある。

…と言うのはぶっちゃけ日本球界での一昔前までの認識である。
近年ではセイバーメトリクスにより「犠打は損」という考えが強くなり、1番に次いで打席数の多いこの打順に犠打に頼らない強打者を置くべきだという意見も主流になりつつある。
こうした風潮により、1番に代わっての出塁はもちろんのこと、1番が出塁できた際には犠打を狙うよりも自分も立て続けに出塁してチャンスを広げたり、あわよくば長打を放ってそのまま1番をホームに返してしまうと言った立ち回りが有力視されるようになった。
強いて言えば「1番・2番どちらにも適性がありそうな選手が2人いる」ときにバントの上手い下手を考慮することはありうる、くらいか*9

こうした日本球界における認識の変化については、古田敦也選手兼監督時代のヤクルトで強打者のアダム・リグスを2番打者に置いたことから始まり、小笠原道大(日本ハム時代)やカルロス・ペゲーロ(楽天時代)の成功が影響していると思われる。そのため一昔前に比べると強打の外国人選手やクリーンナップを打てる打力の強打者といった、いわゆる『バントをしない恐怖の二番打者』がこの打順に座ることも多くなっている。

ただし過渡期には、広島監督時代のマーティ・ブラウンが出塁率を重視して前田智徳を2番に起用したことがあったが、前田が打撃不振に陥ってしまったため半月ほどで取りやめている。
当時はまだ2番=チームバッティングといった風潮が根強く、前田がそういったイメージに囚われてしまったことも不振の一因とされている。
逆にこういった認識が広まる以前の成功例としては阪急時代の蓑田浩二が挙げられる。バントや故意の空振りで福本の進塁を援護してもよし、強攻策でも十分長打で応えられるという双方の役割をこなす万能型打者と紹介できるだろう。
これで球団スタッフ側の「イジり」が過激なものでなければ…*10

なお「NPBでは巨人に限っては 2020年代になっても異様なまでに『送りバント特化の2番打者』に拘る傾向にある」という一部での言説は、近年のスタメンデータベースと犠打数のランキングを確認すれば 思い込みによるデマ だと簡単に分かる。
「巨人に求められる成績」を残せていないのはまあ否定しにくいが、これについてはヤクルトが池山新監督で急速に復活したこと、阪神があまり戦力的な低下をしないままにシーズンを迎えたこと*11など他球団の事情も大きい。

MLBではマイク・トラウト(ロサンゼルス・エンゼルス)のような強打者をこの打順に置くのはほぼ常識と言っていいぐらいに浸透しており、エンゼルス時代はオーダーによっては先述した大谷が2番のことも見られた。

  • 代表的なプロの2番打者

現役
  • 近藤健介SB)、菊池涼介(広島)牧秀悟横浜DeNA)、源田壮亮(西武)中野拓夢(阪神)等、

OB
  • 川相昌弘新井宏昌(元阪急&近鉄)蓑田浩二(元阪急&巨人)平野謙(主に元西武)井端弘和(元中日&巨人)アダム・リグス(元ヤクルト)カルロス・ペゲーロ(元楽天)


3番打者

1・2番で作った塁上の走者を返すと共に、4番以降のためにチャンスを継続・拡大するという役割も担うことから、巧打・長打・走力を兼ね備えた攻撃面でのオールラウンダーであることが要求され、クリーンナップトリオの中では一番俊足の選手が配置される傾向にある。
もっとも、走力は1番・2番打者ほど重視される能力ではなく、巧打力と長打力を兼ね備えていれば足がそこまで速くなくとも三番に起用されることも多い。
MLBでは2番と並んでここに一番の強打者が置かれることがセオリーなのもあってか*12、NPBでもチームの主軸打者として同格の日本人選手と外国人選手がいる場合*13、外国人打者の方が3番・日本人打者が4番の形とされることも多い。

古典的な野球漫画で3番打者は「4番打者の前座で、走者なしならセーフティーバントや四死球などどんなセコい手でも4番打者のお膳立てをする」という描き方がされたが、現代では「その分自分が打てば良くね?」と正論で否定されている。


  • 代表的なプロの3番打者

現役
  • 鈴木誠也(MLBカブス)吉田正尚(MLBレッドソックス)森下翔太(阪神)西川龍馬オリックス)、小園海斗広島)等。

OB
  • 鳥谷敬糸井嘉男王貞治(元巨人)小笠原道大(元日ハム他)若松勉(元ヤクルト)ランディ・バース(元阪神)タフィー・ローズ(主に元近鉄他)等。


4番打者

1~3番打者によって走者が溜まりやすい(それぞれ順調に出塁していれば満塁で打席が回ってくる)ため、走者を一掃して得点に還元するべくチームで一番パワー(長打力)があり、本塁打をコンスタントに放てる強打者を配することが推奨される打順。
ちなみに野球の打順を指す場合には「よんばん」ではなく「よばん」と呼ぶのが一般的。
日本野球では長打力も含めた「チーム最強打者」を置く傾向が根強く、打順における花形と言える。読み方が違うせいもあるだろうが、「4」は「死」を連想させるため忌み数として避けられることが多い日本文化において、逆に賞賛されている珍しい事例ともいえる。
特に読売ジャイアンツ(巨人)のこの打順についた選手は「第〇代四番打者」と、まるで総理大臣か何かのように大きく取り上げられ神聖視されることで有名。歴代出場数ランキングには川上哲治(7代)、長嶋茂雄(25代)、王貞治(28代)、原辰徳(48代)、岡本和真(89代)といった超ビッグネームが名を連ねる。
当然相手投手から最も警戒される打順となるので、他の打順以上に相手投手から厳しく攻められやすく、三振、四死球、敬遠といった記録は他の打者と比べると多くなる傾向にある。

MLBでは前述のように打率も兼ね備えた最強打者は2番に置くことが主流であるため、こちらは打率は低くても長打力特化の大砲タイプとなりやすい。そのため継続的に4番を担えることは球団一のパワーヒッターの証ではあるが、NPBほど特別な意味合いはない。
(これは「外国人枠のルールが一切ない」「そもそもある意味では日本以上に『プロスポーツの場なのだから人種差別はご法度、それの肯定は無期失格にも匹敵するガチガチの危険思想と見なされている』」という背景もあるが)松井秀喜は体調*14や他メンバーの調子とも相談しつつヤンキースの4番に座ることが多々あったし、村上宗隆はチームが投打ともに崩壊状態故に「実力は未知数だけど他の選手より打てそう」という本来ならあってはならない*15事情からいきなり4番に座ることになった*16など、「本人の状態やチーム事情との兼ね合いで」もしくは「能力と適応度さえあれば」という枕詞こそあれ日本人4番も出てきている。

アマチュア野球では打撃でも突出した能力を持つエース級の投手がこの打順に座る『エースで四番』が珍しくない。
これは身体能力に最も優れた者が投手に指名されることが基本であるため、結果的に「エースができるくらい身体能力が高いから、打つのも得意」という理屈が現実的に成立するため。無論、プロレベルになると(大谷のような例外中の例外を除いて)ありえない話である。
アマとしても著名な選手で言えば松坂大輔の横浜高校時代なんかが実例*17。フィクションで言えば『MAJOR』茂野吾郎の高校野球編までなんかがわかりやすいだろう。糸井嘉男も関西大学リーグ(近畿大)までは投手であった。
逆に「投手が4番じゃない甲子園本戦出場校」はそれだけの強打者を別に用意できているということである。清原和博(PL学園)や松井秀喜(星稜)はこちらにあたる。

走力はあるに越したことはないがとにかく何よりも長打力やチャンスの強さが求められるため、結果的に鈍足であることも多い。守備位置としても負担や運動量が比較的軽い一塁手三塁手左翼手、あるいは守備に就かず打撃に専念する指名打者が入る傾向が強い。
「3番・ショート」のイメージに代表される完璧超人を求めるMLBの主砲の起用指針と異なり、NPBでは「プロ野球は、打って勝つ!」を信条とする里崎智也が日頃から主張するように「一軍レベルの最低限の守備力があれば、打つ奴から順番に使われる」のが主砲の起用の実情である。
一方チームに突出した長距離打者がいない場合は四番打者を単なる4番目の打者として打線を繋げることに長けた中距離打者を置く場合*18もある。
フィクションだと『実況パワフルプロ野球』のするめ大学やときめき青春高校が比較的この「安定した4番打者の不在」に近いチーム状態であるため、作品によってはもっともパワーに優れた鮫島・鬼力*19を5番に回し、比較的高レベルでバランスのいい打撃能力を持った九州・稲田を4番としていることもあった。

  • 代表的なプロの4番打者

現役
  • 村上宗隆(MLBホワイトソックス)岡本和真(MLBブルージェイズ)柳田悠岐(SB)佐藤輝明(阪神)等。

OB


5番打者

3番、4番と並びクリーンナップトリオの一角で、1番からこの打順までを『上位打線』と呼ぶ。
主に4番打者が返し損ねた走者を返す役割が求められる。
4番打者が期待通りにホームランで走者を一掃する可能性もあり、走者が居ないことも多くなるため、重要性は格段に下がるのだが、5番打者が貧弱だと肝心の4番打者が簡単に敬遠されやすくなってしまうため、可能な限り4番打者に匹敵する力量、特に打率などの確実性を持つ打者が座ることが望ましい。
同じクリーンアップの3番と比べると4番同様、走力は求められずチャンスで打席に立つ機会が多いため、得点圏での勝負強さが求められ強豪チームだと打点を稼ぐのに長けた打者*20が座っていることが多い。
また、それとは別に上位打線で打撃が期待できるセンターラインの打者が多いほどチームとしての打力は高くなり、打線の厚みが増す。
まあアマチュアとはいえ、間違ってもこんなところに打撃に定評のない投手を置いたりはしないだろう。

2026年時点でのMLBでは2番打者が最強と位置付けられており、次に1番打者が重要である(偶にチーム次第でこの序列が変わる場合もある)。そして、序列3番目と4番目の枠に、チーム事情に合わせて3番打者、4番打者をはめ込む。最後に上位打線で一番の格下として5番打者という序列となる。

  • 代表的なプロの5番打者

現役
  • 山川穂高(SB)宮崎敏郎(横浜DeNA)大山悠輔(阪神)等。

OB
  • 前田智徳和田一浩(元西武&中日)衣笠祥雄(元広島)岡田彰布(元阪神)等。


6番打者

この打順から『下位打線』に分類され、1番から5番まで比べると打力への期待値はやや下がると見られることが多い。とは言え次の7番打者と比べると差があるのも事実*21で、この打順にクリーンアップを打てる強打者が座ることも珍しくなく、6番に他球団ならクリーンナップを打てる選手を置ける余裕があることはそのチームが強打のチームであることの象徴とみられることも多い*22
打力は高いがプレッシャーに弱いスラッガーを気楽に打たせて力を引き出すために敢えて6番打者に据えるケースもある。

筑波大学の研究データによると、この打順は四番の次にチャンスで回る確率が高いであることから打ち損じの少ない巧打者を入れるのが理想とのこと。また普段クリーンナップを打っている選手が不振の際にあえて負担を減らすことで、復調を目的としてリフレッシュさせる際に入ることも多い打順である。

またこの打順以降だと入れ替わりが激しいことが多く、上位打線のような『不動の~番打者』というようなフレーズはあまりきかなくなる。6番での先発出場がNPB歴代で最も多い選手は、中日、楽天で活躍した山崎武司、2位は主にSBで活躍した松田宣浩である。


7番打者

スタメンの中でも比較的打力が劣る選手がつく打順で、プロでは打力より走力&守備力が武器のタイプの選手がつくことが多いが、この打順に打率や出塁率は低いが一発がある、あるいは成績自体は平凡だがクリーンアップにも引けを取らない程勝負強いといった意外性のある選手がつくことが多い。稀に6番打者同様にクリーンナップを打ってもおかしくない選手が座ることもあり、その場合は『恐怖の七番打者』と呼ばれることもある*23

またデビューしたてのルーキーや若手がプロ初スタメンになる際には上位打線と比べるとプレッシャーが比較的軽いこの打順か8番に座ることが多い。7番での先発出場がNPB歴代で最も多い選手は、中日、阪神で活躍した矢野輝弘、2位はヤクルトで活躍した後に横浜の監督も務めた大矢明彦である。
もっとも矢野に関しては攻撃力面に課題を抱えている球団であれば十分に上位打線が打てるくらいの打棒自体はあったため、どちらかと言えば「強打ではあったが3~5番に席が無かった」と紹介した方がいいかもしれない。

基本的にDH制ありにおいて、MLBでは7番打者相当辺りからがレギュラー当落線上となる。7番打者から9番打者の打力の選手ならMLBには掃いて捨てるほどいるので、少し調子が悪くなれば代わりの上がり調子の選手と入れ替えにレギュラー落ち、そして少なからずの場合はそのままマイナー降格となる。


8番打者

(序列を考えれば当たり前だが)言ってしまえば6番や7番、起用次第では9番以上に存在感の薄い打順。
DH制を採用していない(2026年までのセ・リーグ等)場合はスタメンで一番打力が劣る野手がつくのが基本となる打順である。また、DH制無しの場合は投手の前という都合上、敬遠されることがクリーンナップの打者並に多くなることも珍しくない。
DH制を導入しているパ・リーグ等でも、9番打者には俊足巧打タイプの選手を置く傾向が強いため、ただでさえ守備の負担が大きく打力や走力は目を瞑られがちな捕手が入る場合が多い。

こうした事情から、自然とこの打順に座るのは守備負担が大きい&守備力重視のポジションである捕手遊撃手になりやすい。そのためパワプロのサクセスのオート育成で守備重視型を「8番打者タイプ」となんか無理矢理感の否めないくるしいフォローがなされていた。
ただし遊撃手は大抵俊足を備えており、打撃技術が伴えば1~2番、それでなくても9番に据えたいケースも多いため、打力があろうがなかろうが守備に集中してほしいポジションである捕手の方が多い。
実際、8番での先発出場がNPB歴代で最も多い選手は、横浜・中日で活躍した谷繁元信、2位は西武一筋で活躍した伊東勤と共にリーグに関わらず捕手であり*24、どちらも打率は通算平均2割4分台、全盛期は本塁打も二桁に乗るくらいとそれなりに打てる部類であった。
古田は「自軍の監督が投手に代打を出すかどうかで相手の捕手心理がわかりやすく球を読みやすい」という理由で8番を理想の打順としており、自身が8番打者として起用された1991年シーズンに首位打者のタイトルを獲得したことを根拠としている…が「8番は理想の打順」のソース自体が大阪のオッサンとしての古田の色も強め若干虚実の入り混じる『フルタの方程式』なので…

逆に、打撃面の期待値が低いというイメージを覆す例外が木浪聖也(阪神)。彼の場合は守備が期待されての8番起用だったが、いきなり打撃に開花したという珍しい経緯を持つ。しかし、それでも首脳陣は木浪を8番から動かさなかった。
その理由は現状の打線で安定しており、8番の彼を無理に動かす必要がないと考えたからと言われている。お陰で敵チームに「今日は1番、2番、8番にやられた」と言われることも。
遊撃手争いをしている小幡竜平も打撃に優れていながらも8番で出ることが多い。
他にもヤクルトはどの打順でも打ってくれる長打力のあるヘンスリー・ミューレンスを8番打者に置き「恐怖の8番打者」として名を馳せた例もある。

少年野球のような競技レベルが低い環境下では、チームで特に下手な選手は右翼手で8番が定位置になりがち。俗に『ライパチ』と呼ばれ、吉森みき男氏の漫画『ライパチくん』により広く普及した。現在ではイチローなどにより右翼手のブランド性が高まったせいかほぼ死語になっているが。

非常に稀なケースとして、DHが無い時代のセ・リーグの場合、打撃も得意な先発投手が9番ではなく8番に入り、完全な守備型選手のスタメン選手を9番に使う戦術もあるといえばある。
例として横浜DeNA時代のジョー・ウィーランド*25は他のスタメン次第で9番・投手になったり8番・投手になったりしていた。


9番打者

9番打者は最後に打席に立つ打順で一番打席に立つ回数が少ない打順であることから、特にDH制がない場合はほぼ先発投手が座る打順である。
プロレベルになるとほとんどの投手はスタメンで最も打力が低い選手であるし、投球に専念してもらう意味でも望ましい。
先述の大谷のようなケースでなければ打者としての観点ですら途中交代する可能性が高いため、最も攻撃力に影響が少ない9番が投手の打順(あるいは代打を出し、攻撃イニングが終了したら守備要員を務める選手と交代することを前提としている打順)として都合がいい、などもある。

一方DH制環境下においては「捨てる打順」という概念がないため、1番打者の1つ手前の打順という点を考慮し、1番打者への繋ぎ、第ニの1番打者として上位打線に次ぐ俊足巧打型の選手が座ることが多い。日ハム一筋で活躍した金子誠はキャリアを通して9番がほぼ定位置であり、珍しい不動の9番打者という選手である。
また8番打者の項目でも触れたように、打撃に期待できなくとも出塁さえできれば俊足を活かせるという理由で遊撃手が入るケースが目立つ。それを差し引いても打てない場合は捕手が入ることも多いが。
稀にセ・リーグでもDeNA監督時代のアレックス・ラミレスが行ったように、8番に投手を入れ9番打者には1番打者への繋ぎを期待して野手を配置するという戦法も見られる。
9番での先発出場がNPB歴代で最も多い選手1位は上述の金子、2位はロッテ等で活躍した水上善雄である。

一方、パワーのインフレが進むMLBでは 普通に9番打者が定位置の捕手も「150試合出られればシーズン15本塁打は全然打てる」時代 になっており、上記のような昔ながらのNPBの常識はもはやまったく通用しないと言っていいだろう。


【打順を間違えてしまうと?】


打順と違う打者がバッターボックスに入ることは反則である。
この際、どのタイミングで打順の間違いに気付いた(または気付かなかったか)によって、3パターンに分岐する。
※正しい打順が A男→B太→C郎だが、A男の代わりにB太がバッターボックスに立ったと仮定する。

1. 間違った打者の打席中に気付いた場合

正しい打者(A男)が打席に入って続行。
ボールカウントはそのまま引き継ぎ、特にペナルティ等は無し。
この場合は攻撃側、守備側のどちらが申し出てもよい。
ただ、後述の理由から、守備側は気付いていても指摘をしない方が得な場合が多い。

2. 間違った打者が打席を完了した後に気付いた場合

次の打者(C郎)に1球投じられる、または牽制球その他のプレイがなされる前のタイミング。
攻撃側はもはや間違いを取り消すことができない。
ここで守備側から指摘(アピール)されれば、B太の打撃は無効となって*26、結果は巻き戻される。
(正確にはこちらの項目にもある通り、「無効にできる」である。無効にしなかった場合は次項に進む。)
そして、本来打席に立つはずだった打者(A男)がアウトになり、アウトカウントが1進む。
1.で「守備側は気付いていても指摘をしない方が得な場合が多い」といったのは、これがあるため。
B太が例えホームランを打っていて無効にできるし、もしダブルプレー等のより有利な状況が発生していればそのまま確定させる…という状況の選択が出来るため。
ただし、打撃の結果でない進塁(盗塁やボーク等によるもの)は巻き戻されないため、場合によっては1.の状況で指摘した場合が得なことも無い訳ではない。

3. 打順の間違いに気付かず*27、次の投球が開始された場合

間違った打者(B太)の打席がそのまま有効になる。
例えその打者がチャンスで併殺や三重殺をやらかしてしまった場合でも攻撃側が取り消してもらうことはできない。
したがって、この後に打席に立つべきは間違った打者の次の打順の打者(C郎)になる。



追記、修正は打順について詳しい方に補足、修正して頂けると助かります。


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最終更新:2026年08月08日 18:59

*1 守備位置については引き継いでも引き継がなくてもどちらでもよい。このためNPBだと選手交代の都合で終盤イニングには「6番投手」「9番三塁手」といったスタメンでは基本的にないような打順と守備位置の組み合わせが見られることがある

*2 前攻撃回のスリーアウト目が走者の牽制アウトで取られた場合は、その時点の打者は打撃を終えていないため、次回攻撃時に再び打席に立つ(三振ゲッツーや三振トリプルプレイで終わった場合を除く)。これが問題になったのが金本知憲の連続試合出場が途切れたあの試合(ルール処理上は金本の打席が完了しなかった。連続試合出場を続けさせるためには1/3イニングだけでいいので守備に就かせなければならなかった)

*3 有田は投手においバカむざむざ打たれに行く気かコノヤローとグイグイ物申すタイプ、梨田はふんふんうむうむホナそうしてみようやないかと投手の意見をまず優先してみるタイプ。当時のイメージに反し、実際には悪いと思ったらはっきりその配球は悪いと言ってくれるパートナーを求めていた鈴木啓示が捕手有田を希望していたのが著名。

*4 3・4番と8・9番に強打者を置き、間の打者でチャンスを作っていくことで得点の機会を増やす…というもの

*5 DHありで作った場合は投手を先発・中継ぎ・抑えの3人選ぶことが多い。この場合は定番系を先発、とにかく瞬間的なパワーに長けたものを抑え、3候補で残ったのを中継ぎとするのが普通。これは日本だとセットアッパー(中継ぎエース)の立ち位置が抑えよりも低い影響もある

*6 2026年までDH制無しを貫いていたセ・リーグでは1973年に島谷金二(中日)が最後の全打順本塁打達成者となっている。なお、DH制導入前のパ・リーグでは翌1974年に山崎裕之(ロッテ)が達成している。

*7 ただ事例が全くないわけではなく2002~2003年の星野監督時の阪神・今岡誠、2007年巨人の高橋由伸、下記のダンやシュワーバーなどの例もある。

*8 年度によってはヒットエンドラン

*9 これについては学生野球や社会人野球などでトーナメント制大会、つまり「統計どうこうではなく試合に負けたら終わり」の形式が採用されることが多いこと、また国土の広さから州大会がアマチュアの最上位大会となることが基本のアメリカと異なり、基本的には全国大会が存在することでアマ大会の重要性が高めという事情があることなどから、日本では得点期待値よりも得点成功確率が重視されうるため、戦術の流行りとしてバントが想定されやすい背景もある。ただし近年では打球の統計データに基づいた極端な守備シフトの対抗策として「いないところにセーフティバントで転がす」戦術がMLBで採用されはじめており、現在主流であるデータ野球に対してのカウンター策としてはアメリカでも復権しつつあるようでもある

*10 過剰すぎるネタに蓑田が激怒していたのは事実。ただし「それで不仲になったため巨人への放出をふたつ返事でokした」については蓑田本人も否定はしていないものの、ソース不明ではある

*11 これに加えてドラフト1位の立石正広などの新戦力組も割と戦力化に成功しているのもある。立石は1軍の打者と考えるとちょっとケガ・コン不の類が多いのが懸念ではあるが

*12 例えば、「野球の神様」ことベーブ・ルースは3番をメインに打っており、後輩のルー・ゲーリッグが4番打者である。

*13 具体例として1985年阪神優勝時のバース&掛布、2001年近鉄優勝時のローズ&中村紀洋

*14 MLB移籍後は何度かケガをしていたため、回復明けの際に下位打線に回って体調回復を優先することもよく見られた。

*15 MLBはある意味ではNPBに比べて戦力均衡が重視されておらず(移籍がしやすいため有力選手は強豪球団に集中しやすい、など)、記事制作時点ではホワイトソックスとコロラド・ロッキーズが「有力選手自体を欠いているような成績数値」「162試合中100敗以上している」状態にあった。また村上の入団自体かつての大谷やイチローの移籍時に近いかそれ以上の鳴り物入りでの入団で、それどころか一部では「こんな旨い話がある訳ない(日本側による怪我の隠蔽などがあるのでは?)」と困惑すらされていたという。一方でホワイトソックスは村上の加入以降かなり持ち直してきていることには留意。

*16 直近では先述した「最強打者は2番」などMLBのセオリーにそって他の打順に入ることも出てきている

*17 フィクションへの登場を含めれば『ドカベン プロ野球編』で打撃も得意なのを期待しての奇策として「東尾監督はDH不使用を選択、松坂も打順の中に入れてメンバー表を提出」というエピソードがあったにはあった(大谷ルール成立前の当時でもこの形であればルールブックやアンパイア裁定の上では可能)。

*18 具体例として1998年横浜優勝時のロバート・ローズ、2005年ロッテ日本一時のサブロー、今江敏晃、2010年に打点王に輝いた元日ハムの小谷野栄一等。

*19 作品によっては大空も。鮫島は弾道が低い上にミートD止まり、鬼力と大空に至ってはミートF~Gと明確に打率面で不安を抱える

*20 具体例として巨人時代中期の清原和博、2005年阪神優勝時に打点を荒稼ぎした今岡誠等

*21 2アウトまでは走者が3人まで存在できるルール上、6番打者が打席を迎えたときの走者は、必然的に1番から5番までの5人から出てくる。走者に上位打線と下位打線が混ざることはないという意味では、割と重要な打順だといえる。

*22 具体例として後述の山崎武司(中日時代)、松田宣浩(SB時代)、江藤智(巨人時代前半)等

*23 具体例として1996年中日の大豊泰昭、2001年ヤクルト優勝時のアレックス・ラミレス等。

*24 名捕手は他のポジションより定位置で長く重宝されやすい、という事情もあるが。

*25 代打で成績を残せるほど打撃が得意であり、特に広島戦を「打者として」得意としていた。5回7失点ながら4打点で勝ち投手になった2017/10/1の試合が好例。

*26 記録上も

*27 あえてアピールしなかった場合も含む