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ジェームズ・モリアーティ

登録日:2026/09/01 Tue 23:02:02
更新日:2026/09/02 Wed 00:04:10NEW!
所要時間:約 13 分で読めます





「あいつは犯罪界のナポレオンなんだよ、ワトスン君。
この大都会で起きる悪事の半分、そして表沙汰にならない犯罪のほとんどは、あの男が仕組んだものだ」
――『最後の事件』



概要

スペルは“Professor James Moriarty”
アーサー・コナン・ドイルの推理小説『シャーロック・ホームズシリーズ』に登場する架空の人物であり、同シリーズ最大の悪役。

表の顔は、若くして数学界に名を轟かせた元・大学数学教授
裏の顔は、ロンドンの暗黒街に君臨し、自らはいっさい手を汚さぬまま無数の犯罪を設計する巨大犯罪組織の首領
この二枚看板を持つ男こそ、名探偵シャーロック・ホームズが「宿敵」と呼んだ唯一の存在である。

……と、ここまで読むといかにも超大物ラスボスなのだが、実は原作における出番は驚くほど少ない。
正典*1のうち、彼が本人として姿を現すのはたった1篇、それも数ページである。
にもかかわらず、彼は「知能派の黒幕」「悪の組織のボス」というキャラクター類型そのものの元祖として、100年以上にわたり後続のフィクションに影響を与え続けている。
少ない出番でここまで爪痕を残した悪役も珍しい


人物

生年、出生地、どちらも不明。
ホームズいわく「良家の生まれで、優れた教育を受けている」とのこと。

生まれつき驚異的な数学の才能に恵まれており、弱冠21歳で「二項定理」に関する論文を発表、ヨーロッパ中にその名を知られる存在となる。
この実績を買われてイギリスのとある大学で数学教授の座を得ると、さらに『小惑星の力学』(The Dynamics of an Asteroid)なる論文を発表。これは純粋数学の専門家ですら書評を書けないほど難解な代物であったという*2

ところが、この頃から彼にはよからぬ噂がつきまとうようになる。
結果として教授職を追われた彼はロンドンへ出て、army coach――軍関係者を対象とした教師――として糊口をしのぐことになった*3

そしてこの「教師」という肩書きこそが、彼にとって完璧な隠れ蓑だった。
表向きは学究肌の紳士として振る舞いながら、その裏で彼は天才的頭脳を犯罪の設計に投入し、いつしかロンドン犯罪界の帝王へと登り詰めていたのである。

なお『恐怖の谷』ではホームズの口から「彼は独身だ」と語られている。
また同作では、教授の年俸が700ポンドであることに触れつつ、彼が趣味としてジャン=バティスト・グルーズの名画『子羊を抱く少女』を所有していることが指摘される。一介の教師の給料ではどう考えても買えない絵であり、ホームズはここから彼の裏収入の存在を看破している。
脱税の摘発みたいなノリで正体を暴かれる犯罪王

容貌

『最後の事件』において、ホームズは彼の外見を次のように描写している。

  1. すこぶる長身で、痩せぎす*4
  2. 白い額がカーブを描いて前へ突き出している
  3. 両目は深く落ち窪んでいる
  4. 髭はきれいに剃られ、顔色は青白く、苦行僧のよう
  5. 長年机に向かい続けたせいでかなりの猫背
  6. 顔を前に突き出し、爬虫類のように左右へゆらゆらと揺れ続けている

老人男性としては割とよくある造形だが、どことなく得体の知れない不気味さが宿った容貌。
とりわけ最後の「爬虫類のように揺れる」というワンフレーズが強烈で、後世の映像化・漫画化においてもこの所作を再現する例は多い。

犯罪組織の首領として

モリアーティの恐ろしさは、個人の腕っぷしではなく「システム」にある。

彼自身は決して現場に出ない。悪事を企む者が彼のもとを訪れて相談すれば、たちどころに完璧な計画が組み上げられ、適任の実行犯が手配される。
仮に計画が失敗しても、実行犯は組織の末端に過ぎないため、中枢にいるモリアーティにまで捜査の手が及ぶことは絶対にない。
ホームズはこの構造を、「千本の糸を張り巡らせた蜘蛛の巣の中央に、身じろぎもせず座っている蜘蛛」と表現した。

要するにこれは「顧問探偵ホームズの完全な鏡像」であり、ホームズが困った依頼人に解決策を授けるのと同じ手つきで、モリアーティは困った悪党に犯罪計画を授けている。
両者が「唯一の好敵手」たり得たのは、能力が拮抗していたからというより、同じ商売を善悪の反対側でやっていたからと見ることもできるだろう。

しかも彼の対外的な評判は極めて良好である。
『恐怖の谷』では、ロンドン警視庁のアレック・マクドナルド警部が「教授を犯罪者扱いするホームズのほうが気の毒がられている」と語り、実際に教授を訪ねた警部自身も「厳しい世間へ出ていく息子を見送る父親のようだった」と好印象を抱いて帰ってきてしまう。
ホームズ本人も「彼を犯罪者呼ばわりすれば、こちらが名誉毀損で訴えられて負ける」と理解していた。
シャーロキアンの中には、『最後の事件』でワトソンがモリアーティの名すら知らなかったのはこれが理由だとする説を唱える者もいる


略歴


『恐怖の谷』(1914~1915年発表/作中年代は1888年)

発表順では最後だが、時系列上はここが最初。
教授本人は一度も登場しないにもかかわらず、事件の黒幕として圧倒的な存在感を放つ。

アメリカから逃れてきたジョン・ダグラスの殺害計画を立案し、実行犯に授けたのはモリアーティであった。
実行犯が失敗すると、彼は自らの手下を差し向けて改めてダグラスを始末するという念の入れよう。
組織の内通者ポーロックからホームズへ暗号文による密告があったものの、ホームズは黒幕の存在を知りながら手出しできず、正典において唯一、モリアーティがホームズに勝利した事件となった。

『最後の事件』(1893年発表)

『ストランド・マガジン』1893年12月号掲載、短編集『シャーロック・ホームズの思い出』収録。短編56篇のうち24番目の発表作にあたり、モリアーティ教授が唯一“出演”する作品である。

1891年4月24日、ホームズは開業医となっていたワトソンのもとへ突然現れ、モリアーティ一味の壊滅が目前に迫っていること、そのために自分の命が狙われていることを告げる。
この時ホームズが回想する形で、同日朝にベイカー街を訪ねてきた教授との対面が語られる。
「手を引け」と迫る教授と、それを撥ねつけるホームズ――正典で二人が直接言葉を交わす、最初で最後の場面である。

その後、ホームズとワトソンは大陸へ逃亡。警察はロンドンで一味を一斉検挙するが、首魁である教授だけを取り逃がしてしまう。
そして1891年5月4日、スイス・マイリンゲン郊外のライヘンバッハの滝
偽の急患を装った呼び出しでワトソンを引き離された*5ホームズは、単身で追ってきたモリアーティと対峙し――二人はもつれ合ったまま滝壺へと姿を消した。

現場に残されていたのは滝へ向かう2組の足跡と、争いの痕跡、そしてホームズが遺した1通の手紙だけであった。

なお、この『最後の事件』におけるホームズの行動には不自然な点が多く、あたかも追跡されることを期待しているように見えるという指摘は古くからある。
ここから平賀三郎らは「警察が教授を取り逃がす事態を織り込んだうえで、ホームズが自ら決着をつけるべく仕組んだ罠だったのではないか」という「モリアーティ謀殺説」を唱えている。

『空き家の冒険』(1903年発表)以降

『最後の事件』から約3年後*6、ホームズはバリツを使ってモリアーティだけを滝壺へ落とし、生き延びていたことが明かされる。
そして本作でホームズは彼を「ジェームズ・モリアーティ教授」とフルネームで呼ぶ。正典で教授のファーストネームが示されるのは、この一箇所きりである。

この作品でホームズが対決するのは、教授の右腕であったセバスチャン・モラン大佐。
教授の死後、組織は帰還したホームズによって完全に駆逐されており、組織戦という点においてはモリアーティの完敗に終わった。

その次作にあたる『ノーウッドの建築業者』の冒頭では、ホームズがしみじみと「モリアーティを失って以来、この街はつまらなくなったよ」と漏らしている。
散々あいつを倒すために命懸けてたので燃え尽き症候群みたいになってしまった

このほか『スリー・クォーターの失踪』『高名な依頼人』『最後の挨拶』でも彼の名が言及されており、正典で教授が登場ないし言及される作品は計7篇となる*7


人間関係


  • シャーロック・ホームズ
言うまでもなく宿敵。ホームズが知力において自分と同等と認めた唯一の人物である。
ただし前述の通り、ワトソンは一度も教授と直接顔を合わせていない*8ため、読者が知る教授の人物像はほぼ全てホームズの語りを経由したものということになる。
そのため「モリアーティなど実在せず、コカイン中毒のホームズが生み出した妄想だったのでは」という身も蓋もない説まで存在するが、じゃあ裁判で裁かれたモリアーティの組織の関係者達はなんだったんだという話にもなるので…

  • セバスチャン・モラン大佐
元インド駐留軍人にして世界屈指の猛獣ハンター、そして組織の参謀格。
音のしない空気銃を操る狙撃の名手で、ホームズをして「ロンドンで2番目に危険な男」と言わしめた。『空き家の冒険』における実質的なラスボス。

  • ポーロック
組織の一員でありながら、ホームズに情報を流していた内通者。『恐怖の谷』で暗号文による密告を行う。
直属の部下に裏切られている時点で組織の完全性に若干の疑問符が付く

  • フォン・ヘルダー
盲目のドイツ人技師。モラン大佐が使用した空気銃の製作者。

  • ジェームズ・モリアーティ大佐
教授の兄弟。そして教授と同じ名前。
『最後の事件』の冒頭でワトソンは、「ジェームズ・モリアーティ大佐が兄弟の名誉を弁護する投書をした」ことを執筆の動機として挙げている。
原文では単に "his brother" とあるのみで兄か弟かは不明であり、日本語訳でも訳者によって「兄」「弟」「兄弟」と解釈が分かれている。

  • 駅長の弟
『恐怖の谷』でホームズが「教授の弟はイングランド西部で駅長をしている」と語る人物。
こちらは原文で "his younger brother" と明記されているため弟であることは確定しているが、名前は不明。

この「ジェームズが多すぎる問題」はシャーロキアン最大級の難問となっており、
  1. 「ジェームズ・モリアーティ」自体が複合姓であり、兄弟全員が「○○・ジェームズ・モリアーティ」というフルネームを持つとする説(鈴木利男ほか)
  2. ヴィンセント・スターレットやジョン・ベネット・ショウによる「兄弟は3人おり、全員がジェームズという名前」
  3. レスリー・S・クリンガーによる「大佐が兄、駅長が名無しの弟」説
  4. そもそも兄弟などいなかったとするイアン・マックイーンの説

……などが提唱されている。
後述する『憂国のモリアーティ』の三兄弟設定は、この複合姓説を踏まえたものと見られている。


誕生の経緯とモデル

モリアーティがこれほど強力な敵役として造形された理由は身も蓋もない。ドイルがホームズシリーズを終わらせたかったからである。

歴史小説家を志向していたドイルにとって、人気ばかりが先行するホームズものは重荷になりつつあった。
そこで「ホームズを道連れにできるだけの実力者」として急遽用意されたのがモリアーティだったのだ。
つまり彼は最初から「ホームズを殺すためだけの装置」として生まれており、必要以上の設定が用意されなかったのも当然といえば当然だった。

ところが『最後の事件』でホームズを殺した結果、読者からは抗議が殺到。ドイルは長らく復活要求を拒み続けたものの、最終的に『空き家の冒険』でホームズを蘇らせることになる。
そして皮肉にも、この「死と復活」がホームズを伝説的存在へと押し上げ、同時にモリアーティの知名度をも決定的なものにしてしまった。

モデルとされる人物

“犯罪界のナポレオン”という異名を含め、モデルとされているのが実在の犯罪者アダム・ワースである。
1844年プロイセン生まれ。5歳で家族とともに渡米し、南北戦争の第一次ブルランの戦いで戦死扱いとなったのを機に姿を消して犯罪者となった人物。
1869年にはボストン最大の銀行だったボイルストン国法銀行に対し、「無関係の隣家を借り、そこから穴を掘って金庫室に侵入する」という手口で15万~20万ドルを強奪している。どこかで聞いたような手口だと思ったら『赤毛連盟』の元ネタとも言われている
その後ヨーロッパへ逃亡してロンドンに窃盗団のネットワークを築き、当時スコットランドヤードの犯罪捜査部門を率いていたロバート・アンダースンから "the Napoleon of the criminal world" のあだ名を奉られた。

なお、名前そのものについてはドイルの母メアリの綴りをもじったものとする説もある。

二項定理と『小惑星の力学』

「21歳で二項定理の論文を書いてヨーロッパ中に名を轟かせた」という設定には、そもそも二項定理はニュートンが完成させており、それを超える成果など出しようがないという致命的なツッコミどころがある。
一説には、ドイル自身が数学を苦手としていたためこの設定になったとも言われる

一方の『小惑星の力学』については、SF作家アイザック・アシモフが『黒後家蜘蛛の会』シリーズの一篇「終局的犯罪」において、
「これは小惑星“群”を作り出す力学、すなわち惑星(=地球)を爆砕して無数の小惑星に変える方法の研究だったのではないか」という大胆な解釈を提示している。
スケールが跳ね上がりすぎである


後世への影響

モリアーティが遺した「一匹狼の名探偵を組織力で圧倒する悪の権力者」「決して正体を現さず、自らは手を汚さない犯罪立案者」という類型は、その後のミステリ・冒険小説・特撮・漫画に至るまで、あらゆる「黒幕系ラスボス」の原型となった。
もっとも当のモリアーティ本人は、最後には正体を現したうえで滝つぼでの一対一の殴り合いに突入しているのだが

正典での出番の少なさにもかかわらず彼が人気キャラとして定着した背景には、俳優ウィリアム・ジレットが脚色・主演した舞台版(1899年)の存在が大きい。
この舞台でモリアーティの出番が大幅に増やされたことで、「ホームズにはモリアーティという宿敵がいる」というイメージが世間に浸透していったのである*9


パスティーシュ・派生作品

正典での設定が薄い=解釈の余地が広大ということでもあり、映像・漫画・ゲームを問わず膨大な数の翻案が存在する。

海外の映像作品

  • 『シャーロック・ホームズの素敵な挑戦』(1976年) 演:ローレンス・オリヴィエ
元はホームズの家庭教師だった善良な人物が、コカイン中毒のホームズの妄想によって犯罪王に仕立て上げられているという異色作。

「ジム・モリアーティ」名義。原作と異なり30代の風貌で、退屈しのぎに悪をなすソシオパスとして描かれる。

1作目では顔を見せず、アイリーン・アドラーを操る黒幕として暗躍。続編でついに姿を現し、ライヘンバッハの滝でホームズと直接対決する。

  • 『エレメンタリー ホームズ&ワトソン in NY』 演:ナタリー・ドーマー
史上初の女性版モリアーティ。シーズン1中盤でホームズの恋人アイリーン・アドラーを殺した犯人とされていたが……。

  • 『新スタートレック』(1988年) 演:Daniel Davis
第29話「ホログラムデッキの反逆者」および第138話「甦ったモリアーティ教授」に登場。
ホロデッキ上の人格プログラムでありながら、その天才的知性ゆえに自分がプログラムに過ぎないと悟り、外の世界へ出ようとするという、ホロデッキの抱える問題を突きつける話になっている。

  • 『ミス・シャーロック/Miss Sherlock』(2018年) 演:斉藤由貴
日本製作の女性版モリアーティ。心理カウンセラーとして登場し、最終回では「ライヘンバッハビル」からシャーロックとともに転落する。

日本のアニメ・ゲーム作品

緻密な計画立案能力と非情さを併せ持つが、「殺人はしない」「ここぞという場面でドジを踏んでホームズにしてやられる」などかなりコミカルにアレンジされている。
翌1985年には、教授が部下のトッドとスマイリーを相手に犯罪学を講義するサウンドドラマ『モリアーティ教授の犯罪学講座』まで発売された。完全に主役扱いである

本人は劇場版に登場。TVシリーズには子孫の「森・アーティ」(声:高城元気)が登場する。

  • 『シャーロック ホームズ』(2014年) 声:江原正士
三谷幸喜によるNHKの人形劇。ビートン校の教頭先生という配役で、左右でバランスの異なる顔を持ち、マイペースなホームズを目の敵にしている。
ちなみにホームズ役は山ちゃん

新宿のアーチャー」として登場。『小惑星の力学』についてはアシモフの解釈(=惑星破壊の論文)を採用しており、惑星破壊計画をめぐって主人公たちと共闘・敵対を繰り返す。
後に青年期の姿でも登場し、作中世界の「ライヘンバッハの滝」でホームズと相まみえたり、さらにその後にはダンテと漫才コンビを結成したりしていた
アラフィフを自称するあの胡散臭い人である

劇中ゲームの登場キャラクター。切り裂きジャックを手下として使い、自分は劇場の客席から高みの見物を決め込むという、原典に忠実な“手を汚さない”スタイルを披露した。
腹心のモラン大佐を伴い、当初はその馬車の御者に変装してコナン一行を試すが、自分こそがモリアーティと見抜いたコナンらを認め、手を離れて暴走し始めたジャックの逮捕に協力する。
コナン(新一)は、「あくまで創作のキャラとして」モリアーティはお気に入りらしい。
なお『名探偵コナン 時計じかけの摩天楼』の森谷帝二は、名前の由来がモリアーティ教授である。

『憂国のモリアーティ』

原案:コナン・ドイル/構成:竹内良輔/漫画:三好輝による漫画作品。声(アニメ版):斉藤壮馬。

『ジャンプSQ.』にて2016年9月号から2023年1月号まで第一部を連載(単行本全19巻)。
その後、小説版のコミカライズ『憂国のモリアーティ -The Remains-』(2023年4月号~2024年8月号)を経て、2025年1月号より第二部が連載中である。

19世紀末の大英帝国を舞台に、階級制度に縛られた社会を変革するため「犯罪卿」として暗躍するダークヒーローという大胆な再解釈を施した作品。
モリアーティはウィリアム(次男・主人公)、アルバート(長男)、ルイス(三男)の三兄弟として描かれており、前述の複合姓説を踏まえた構成となっている。

2018年「全国書店員が選んだおすすめコミック」一般部門2位。
2020年10月~12月・2021年4月~6月に分割2クールでTVアニメが放送されたほか、舞台化・ミュージカル化もされている。
近年の日本におけるモリアーティ人気は、本作とFGOによるところが極めて大きい。

小説

  • 『犯罪王モリアーティの生還』『犯罪王モリアーティの復讐』(ジョン・ガードナー)
モリアーティを主人公に据えた連作。

  • 『ドラキュラ紀元』(キム・ニューマン)
パラレルワールドを扱った小説。モリアーティが重要な役どころで登場する。

  • 『千里眼を持つ男』(マイケル・クーランド)
モリアーティを主人公とし、ホームズと共闘させるという趣向の推理小説。

  • 『アンデッドガール・マーダーファルス』(青崎有吾)
ライヘンバッハの滝から生還したという設定で、主人公たちの前に立ちはだかる。

  • 『モリアーティ』(アンソニー・ホロヴィッツ)
コナン・ドイル財団公認のパスティーシュ。「最後の事件」直後のライヘンバッハから幕を開ける。

モリアーティがモチーフのキャラクター

  • ラティガン教授(『オリビアちゃんの大冒険』)
ディズニー映画に登場する「ロンドンの犯罪王」たるネズミ。

  • マキャヴィティ(ミュージカル『キャッツ』)
詳細は後述。

杉下右京のロンドン研修時代の相棒。滝に身を投じるという『最後の事件』のオマージュが展開される。

  • 「プロフェッサー」(『LOST JUDGMENT 裁かれざる記憶』)
本編とは別に進行するユースドラマに登場する、高校生を非行に誘い込む人物。


余談

犯罪王、猫になる

T・S・エリオットの詩集『キャッツ - ポッサムおじさんの猫とつき合う法』(1939年)に登場する猫マキャヴィティは、モリアーティをモデルとして創られたキャラクターである。
エリオットは熱心なホームズ愛読者で、1929年には『シャーロック・ホームズ短篇全集』の書評まで書いている人物。
詩の中でマキャヴィティは“The Napoleon of Crime”(犯罪界のナポレオン)とそのまま呼ばれており、外見描写にもモリアーティの面影が色濃い。
名前自体もニッコロ・マキャヴェッリ+ジェームズ・モリアーティの合成である。

さらに、アメリカの国際ミステリ愛好家クラブが主催するミステリ賞「マカヴィティ賞」はこの猫にちなんだ名称であるため、
回り回ってモリアーティの名を冠したミステリ賞が存在していることになる。犯罪者が賞の名前になっていいのか

星になった宿敵

アリゾナ州ローウェル天文台のエドワード・ボーエルが発見した小惑星のうち、(5048) モリアーティは彼にちなんで命名されている。
ご丁寧なことに、隣接する番号は(5049) シャーロック(5050) ドクターワトスン三人まとめて星になった。
『小惑星の力学』などという論文を書いた男が小惑星の名前になるあたり、なかなか味わい深いものがある。

宿敵はルパンではない

「ホームズの宿敵は誰か」と問われてアルセーヌ・ルパンと答えてしまう人が一定数いるが、これは『ルパン対ホームズ』というモーリス・ルブラン側の作品に由来する誤解である。
ルパンの作者であるモーリスは『ルパン対ホームズ』という名前でホームズとルパンが戦う公式クロスオーバーものを何本か書いているのだが、それとごっちゃにしてしまう読者が一定数いるのだろう。あと一般的によくイメージされる服装を、作中で実際にはしていないという繋がりも
もちろん、それらの小説群における主人公はルパンなのでホームズは出し抜かれる側である。

だが、ドイルの小説にルパンの姿はない。
ドイルが書いたホームズ譚における宿敵は、あくまでモリアーティただ一人。



モリアーティ「……いいかね、この項目から手を引きたまえ」
Wiki篭り「断る」
モリアーティ「実に残念だ。追記・修正は、蜘蛛の巣の中央でお待ちしているよ」


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最終更新:2026年09月02日 00:04

*1 =ドイル本人が書いたホームズ譚のこと。長編4篇と短編56篇からなる。

*2 勤務先の大学は作中で明言されていないが、「地方の小規模な大学」という記述からダラム大学ではないかとする説がシャーロキアンの間で唱えられている。

*3 この "army coach" の訳語は日本のシャーロキアンの間で論争の的になっている。従来は「陸軍軍人相手の家庭教師(個人教師)」と訳されてきたが、植村昌夫は当時の英国の教育事情から「陸軍士官学校の受験予備校講師」と訳すべきだと主張。これに対し平山雄一が「当時は家庭教師形式も存在したので既訳が誤りとは言えない」と真っ向から反論している。

*4 「痩せて骨ばっている」の意。「痩せすぎ」の誤記ではない。

*5 滝の近くのホテルに「危篤のイギリス人女性がいる」という嘘の伝言がもたらされ、医師であるワトソンだけがその場を離れてしまった。

*6 リアルタイムでは約10年後。

*7 数え方によって「6篇」とする資料もある。

*8 教授らしき人物とすれ違う場面はある。

*9 なおドイルも共作者に名を連ねるこの舞台では、教授は「ロバート・モリアーティ教授」と呼ばれている。