多層建て列車

登録日:2012/09/27(木) 03:32:06
更新日:2025/04/17 Thu 02:19:55
所要時間:約 5 分で読めます






Zzz…。はっ!
あれ、寝てた。さっき東岸和田だったからそろそろ日根野かりんくうタウンのはず…

「次は、和泉砂川です。」

…え?どこここ?


多層建て列車とは、2つ以上の別の列車を一定の区間中に併結して運行する運行形態のことである。

概要

「多層建て列車」…と言われてもさっぱり分からない人が多いだろう。

具体的に言えば、一つの列車が二つに分かれて別々の終着駅を目指す、と言った運転方法である。
東北新幹線の「やまびこ・つばさ」や「はやぶさ・こまち」と言えば分かりやすいかもしれない。

途中の駅で切り離しを行って、切り離した車両がその駅で終点となる場合は厳密には多層建て列車ではない。
(例、阪神なんば線の快速急行、南海高野線の快速急行など)

専門的には2方向へ向かうものを「2階建て」、3方向へ向かうものを「3階建て」と言うが、別に車両がMaxのように二階建て車両と言う訳ではない。二階建て車両も一部やってたことがあるけど。
少々紛らわしい言葉である。

また、変則的なパターンとして、切り離した車両がその駅で終点扱いになった後、後続のその駅始発列車に化けるパターンもある。

長所と短所

この運用方式の長所として…

  • 乗り換えなしで目的地へ向かう事が出来る
  • ダイヤに余裕がない時、一つの列車に纏めれば線路の容量を有効活用できる
  • 需要に差がある幹線と支線で編成の長さを変えることによる輸送力の適正化

などがある。一方、短所として…

  • ダイヤの調整が難しく、一度ダイヤが狂うとたくさんの列車に影響が及んでしまう
  • 列車を切り離したり連結する際の手間が多く、停車時間が長くなってしまう
  • 間違えて別の目的地に到着してしまうお客さんが出てしまう
  • 分割併合を行う駅では特別な設備や余計な人員が必要となる。

というものがある。
また、国鉄当時はこういった運用を行うものは客車列車の他に、気動車列車が目立っていた。
乗り入れる支線の多くが非電化だったのもあるが、編成を自由に組める柔軟性が大きかったのも理由だろう。
そのため、電車による運転もあったのだが比較的少なく、
こういった運用を想定して581系や583系、485系に取り付けられた貫通扉は多くがお荷物となってしまった*1

その後、新幹線の開業などで一時こういった多層建て列車は減少したのだが、JR以後はこのような運用を前提にした車両が多く造られる事となる。
先程取り上げた貫通扉も、JRの臨時列車などで有効活用された例も多い。


代表的な列車

◎現役の代表的な多層建て列車

  • やまびこ&つばさ
    はやぶさ&こまち
路線 東北新幹線(東京〜福島〜仙台〜盛岡〜新青森)
北海道新幹線(新青森〜新函館北斗)
山形新幹線(福島〜山形〜新庄)
秋田新幹線(盛岡〜秋田)
運行区間 (やまびこ)東京〜福島〜仙台
(つばさ)東京〜福島〜山形・新庄
(はやぶさ)東京・仙台〜盛岡〜新青森・新函館北斗
(こまち)東京・仙台〜盛岡〜秋田
現在の多層建て列車の代表格。ミニ新幹線への乗り入れのため、東北新幹線の列車と併結運転を行う。

つばさは福島駅でやまびこと、こまちは盛岡駅ではやぶさ*2とそれぞれ併結を行う。

福島駅や盛岡駅での連結・切り離しの様子をじっくりと見た人も多いかもしれない。

なお、つばさ・やまびこの併結だが、福島駅の構造上上記のデメリットの1つ目が致命的となっている。*3

  • 踊り子
路線 東海道本線(東京〜熱海〜三島)
伊東線(熱海〜伊東)
伊豆急行線(伊東〜伊豆急下田)
伊豆箱根鉄道駿豆線(三島〜修繕寺)
運行区間 (伊豆急下田発着)東京〜熱海〜伊豆急下田
(修繕寺発着)東京〜熱海〜修繕寺
伊豆急下田行と修善寺行が東京から熱海まで併結運転。熱海駅では増解結作業が見られる。
1949年運転開始の準急『いでゆ』を祖に持つという、かなり歴史のある多層建て列車。

  • 富士回遊&かいじ
富士急河口湖行きと甲府方面行きが大月まで併結運転。
国鉄時代にも同じ区間を走る急行『かわぐち』『かいじ』で多層建てだったことがあり、その復活とも言える。

路線 成田線(成田空港〜成田〜佐倉)
総武本線(佐倉〜千葉〜東京)
横須賀線(東京〜品川〜横浜〜大船)
山手線(品川〜新宿)
運行区間 (大船発着)成田空港〜東京〜大船
(新宿発着)成田空港〜東京〜新宿
東京駅で新宿方面と横浜・大船方面に分かれる。 深くにある地下4階の総武線ホームで行う。
かつては池袋発着と中央線高尾発着も存在した。

  • ひだ
路線 東海道本線(名古屋〜岐阜〜大阪)
高山本線(岐阜〜高山)
運行区間 (名古屋発着)名古屋〜岐阜〜高山
(大阪発着)大阪〜岐阜〜高山
名古屋方面と大阪方面からの列車が岐阜駅で併結。
キハ85系の貫通先頭車が大いに活用されていた。
現在の使用車両であるHC85系も貫通先頭車のため、以前と変わらず活用されている。
この大阪発着のひだはかつて運行されていた急行たかやまの末裔。

  • はしだて&まいづる
  • きのさき&まいづる
路線 山陰本線(嵯峨野線含む)
(京都〜綾部〜福知山〜豊岡)
京都丹後鉄道宮福線(福知山〜宮津)
京都丹後鉄道宮津線(宮津〜天橋立〜豊岡)
舞鶴線(綾部〜東舞鶴)
運行区間 (はしだて)京都〜綾部〜天橋立・(宮津線経由)豊岡
(きのさき)京都〜綾部〜福知山・(山陰線経由)豊岡
(まいづる)京都〜綾部〜東舞鶴
京都駅~綾部駅間で併結し、はしだては福知山駅から京都丹後鉄道経由で天橋立駅および同宮津線経由で豊岡駅、きのさきは福知山駅および山陰線経由で豊岡駅、まいづるは東舞鶴駅へ向かう。
車両は287系電車と京都丹後鉄道KTR8000形気動車が使用されるが、電車と気動車の併結運転は行われない。
なお、KTR8000形は豊岡発着のはしだてが非電化区間を走る都合上、JR区間しか走行しないまいづるにも使用される*4

路線 本線(東京〜神戸)
山陽本線(神戸〜岡山〜倉敷)
宇野線(岡山〜茶屋町)
本四備讃線(茶屋町〜宇多津)
予讃線(宇多津〜高松)
伯備線(倉敷〜伯耆大山)
山陰本線(伯耆大山〜出雲市)
運行区間 (サンライズ瀬戸)東京〜岡山〜高松
(サンライズ出雲)東京〜岡山〜出雲市
東京駅~岡山駅間で併結し、岡山駅からそれぞれ高松駅と出雲市駅へ向かう。
ちなみに下記のしおかぜ&いしづちおよびかつて実施されていた南風(後述)と異なり、サンライズ瀬戸は短絡線を経由するため宇多津駅を通らない。

  • しおかぜ&いしづち
路線 宇野線(岡山〜茶屋町)
本四備讃線(茶屋町〜宇多津)
予讃線(高松〜宇多津〜松山)
運行区間 (しおかぜ)岡山〜宇多津〜松山
(いしづち)高松〜宇多津〜松山
宇多津駅または多度津駅~松山駅間で併結し、しおかぜは岡山駅、いしづちは高松駅へ向かう。
お盆などの多客時には多層建ては行われずすべてしおかぜとなり、高松〜宇多津間はリレー列車が運行される。

路線 小田急小田原線
(新宿〜(代々木上原)〜相模大野〜小田原〜箱根湯本)
東京メトロ千代田線(綾瀬〜(代々木上原))
小田急江ノ島線(相模大野〜片瀬江ノ島)
運行区間 (はこね/メトロはこね)
新宿/綾瀬〜相模大野〜箱根湯本
(えのしま/メトロえのしま)
新宿/綾瀬〜相模大野〜片瀬江ノ島
「はこね」と「えのしま」のうち、相模大野で分割併合がある列車には、貫通扉を持つ30000系(EXE)が使用される。加えて千代田線に直通する列車には60000系(MSE)が使用されている。

  • 東武特急リバティ&アーバンパークライナー
春日部(アーバンパークライナー)、東武動物公園(リバティけごん&リバティりょうもう)、
下今市(リバティけごん&リバティきぬorリバティ会津)で併結・分割が実施される。

  • 関空・紀州路快速/直通快速
路線 大阪環状線(天王寺〜京橋〜大阪〜天王寺)
阪和線(天王寺〜日根野〜和歌山)
きのくに線(和歌山〜御坊)
関西空港線(日根野〜関西空港)
運行区間 (関空快速)環状線1周・京橋〜日根野〜関西空港
(紀州路快速)環状線1周・京橋〜日根野〜和歌山・御坊
大阪方面から日根野まで併結し、日根野で関西空港方面と和歌山方面に分かれる。
また、朝の上りのみ運行される直通快速も同様に、和歌山および関空方面からの列車が日根野で併結し、大阪方面へ向かう。

なお、使用車両には貫通扉はあるが幌はなく、走行中に双方を行き来することはできない。

指定席がない一般列車かつ空港方面と分割するため、多数の訪日外国人を和歌山送りにしてしまい一時問題視された。
ただ、これでも昔よりはマシで、現在は前4両が関空快速、後4両が紀州路快速だが、1999年から2008年のダイヤ改正までは5+3の編成だったため、ダイヤによってどっちがどっちかはまちまちであった。
更に日根野での連結時も、必ず3両側が大阪方面に来ないといけなかったため、先に5両側が到着した場合出待ちを喰らうことがままあった。
出待ちは2008年の組み替え直後もどういうわけか発生しており、必ず紀州路快速が大阪方にくるようなダイヤとなっていた。

ちなみに1994年から1999年の6+2両時代には、関西空港〜天王寺間まで並走し、天王寺で6両が大阪・京橋方面、2両が大和路線JR難波行きとなる多層建て運用が存在していた。
マイクロエース社の鉄道模型のHPカタログに「6+2の関空快速」という不思議な編成の223系があるのもこれが理由。
わざわざ近鉄や南海、地下鉄の難波より不便なJR難波からリムジンバスにも乗らずに関空を目指す人は少なく*5、ついでに鳴り物入りのO-CATでの事前チェックインや指定席も当時は理解を得られず*6にさっさと廃止と、このころの関空快速は今の「基本的に大阪環状線内の時点で満員」では信じられないほどガバガバ施策だらけだった。

  • 大和路快速
路線 大阪環状線(天王寺〜大阪〜天王寺)
大和路線(天王寺〜王子〜奈良)
和歌山線(王子〜五条)
運行区間 (奈良行き)環状線1周→王子→奈良
(五条行き)環状線1周→王子→五条
大阪方面から王寺まで併結し、王寺で奈良方面と五条方面に分かれる。
しかも関空・紀州路快速ともども大阪環状線をぐるっと一往復して回るため、日本人でも気が付くと和歌山or奈良送りという悲劇に見舞われることがある。特に夜は注意。
寝過ごしが怖い人はオレンジの塗装がある車両に乗りましょう。
なお、多層建てとしては珍しく一方のみの運転で、大阪方面行きの列車は存在しない。

  • みどり&ハウステンボス
路線 鹿児島本線(博多〜鳥栖)
長崎本線(鳥栖〜江北)
佐世保線(江北〜早岐〜佐世保)
大村線(早岐〜ハウステンボス)
運行区間 (みどり)博多〜早岐〜佐世保
(ハウステンボス)博多〜早岐〜ハウステンボス
博多駅から早岐駅まで併結し、早岐駅で次駅かつ終点の佐世保駅およびハウステンボス駅へそれぞれ向かう。

みどり&ハウステンボスは大半の区間を連結走行するため、片側がノーズありでもう片側が貫通扉付きという列車を2編成用意して運行しており、貫通扉付きの部分を連結して中を行き来できるようになっている。*7
編成は必ず貫通形先頭車が向かい合うようになっているが、ダイヤが乱れた場合はなりふり構わずに「貫通+非貫通」になったり、挙句逆編成の非貫通同士面が連結したりとカオスなことになる。

1992年から2011年まで、これに「かもめ」を加えた当時日本唯一の三方面へ向かう「三階建て列車」として運用されていた。
かつては「かもめ」と「みどり」が連結運転を行っており、そこに「ハウステンボス」が加わった形となる。
その後「かもめ」が抜け「みどり&ハウステンボス」での運行となったが、一時期「有明&かもめ」で「かもめ」も二階建てになった。
それと1回非貫通どころか旅客ですらない貨物列車と併結を行い、前代未聞の貨客混合3層建ての「かもつ&みどり&ハウステンボス」が行われたことがある。*8

  • 天理教祭典日直通列車(近鉄)
特定日に走ることが告知されている臨時列車。
尼崎から大和西大寺まで併結し、大和西大寺で奈良行きと天理行き臨時急行に分かれる。
急行に化けるのは橿原線に快速急行がないためだが、臨時とはいえ現役唯一の種別ごと変更する多層建て列車。
公式に案内している中ではだが


廃止された代表的な多層建て列車

  • 京王線特急・急行
かつて京王帝都電鉄(現京王電鉄)のダイヤは、平日ダイヤ・土休日ダイヤの他特定月(主に行楽期)の土休日に設定されるシーズンダイヤの3種類があった。
シーズンダイヤでは新宿~京王八王子・高尾山口の特急列車と新宿~高尾山口・多摩動物公園の急行列車が運行され、併結・分割はいずれも高幡不動駅で行われていた*9

  • 東武快速・区間快速
リバティけごん&リバティ会津の前身で、あちらと同様下今市で併結・分割が実施される。
浅草発会津田島行きは私鉄の一般列車で最長区間を走っていたことでも知られる。
しかし、使用していた6050系が老朽化していたこともあり、リバティへと置き換えられる形で廃止された。

  • 近鉄特急
阪伊特急&京伊特急(大和八木~賢島)、京奈特急&京橿特急(京都~大和西大寺)などの併結が実施されていた。
黎明期には同じ経路の同じ行先同士で分割併合するという珍列車があった。*10

古市駅で一部が橿原神宮前と富田林で併結・分割されていた。
現在は案内こそされないが、朝夕のラッシュ時などに古市駅で吉野・橿原神宮前方面の準急または急行(いわゆる化け急)と河内長野方面行きまたは御所行きで併結・分割されている。
やっていることは変わらないどころかむしろエスカレートしてるが、橿原神宮前&富田林以外は複数方向への方向幕も対応してる反転フラップ式発車標もないため仕方ない。

  • なは・あかつき
京都駅~鳥栖駅間で併結し、鳥栖駅からそれぞれ熊本駅と長崎駅へ向かう。
「あかつき」は時代によって熊本や佐世保発着の編成、さらに「明星」や「彗星」と併結していたこともあり、特急として登場以来廃止まで全ての期間で多層建て運転を行っていた。

  • さくら・はやぶさ
東京駅~鳥栖駅間で併結し、鳥栖駅からそれぞれ長崎駅と熊本駅へ向かう。

  • 富士・はやぶさ
上記2列車のうち「さくら」廃止時に「はやぶさ」は残存したため、単独運行していた富士と東京駅~門司駅間を併結し、門司駅からそれぞれ大分駅と熊本駅へ向かう。

  • 北近畿&エーデル丹後、有明&オランダ村特急
実は上述した485系の多層建て列車自体はこれらが存在する。
「北近畿」は現在の「こうのとり」。新大阪で新幹線との乗り換え需要を受けとめたのち、福知山線を通って豊岡や城崎温泉へ向かう(「こうのとり」一部はいわゆるホームライナーに該当するため途中の福知山まで)。併結当時は途中宮福線に分かれて天橋立へ向かう「エーデル丹後」を連結。
「有明」は新幹線が通る前の鹿児島本線(西回りルート)特急で、併結対象となったのは門司港~熊本の便の下り1本。佐世保へ向かう「オランダ村特急」を門司港~博多で併結した。

ただし「エーデル丹後」「オランダ村特急」ともに展望構造のディーゼルカーを専用運用しており、結局貫通扉は何の役にも立たなかった*11

結局「エーデル丹後」は需要が多かったため天橋立行特急は単独運用に変更、「オランダ村特急」はハウステンボス開園に伴う系統見直しで廃止(上述した特急ハウステンボス)と成績が悪くなかった割には長続きしなかった。
明確に多層建てと呼べるのは上のかもめ・みどりとこれら程度か*12

  • 国鉄時代のかもめ
国鉄時代の特急かもめはキハ82系投入後、宮崎行と長崎行を京都から小倉まで連結して運行していた。
このかもめは双方の行先に食堂車が連結されており、担当する会社も別々だったので味付けやメニューの違いから中には食べ比べをする乗客も居たという。
同じように食堂車を2両組み込んで担当する会社が異なるという事例は白鳥とつばさでも存在し、何れもキハ82系での運転だった。

  • 草津&水上
新特急として登場した2列車も多層建て運転を行っており、水上が臨時列車へ格下げされても草津との連結運転は守られていた。
しかし、2012年3月のダイヤ改正で水上が臨時列車よりも運転日数の少ない季節列車へ格下げされたため、連結運転が廃止された。

  • ひだ&北アルプス
路線 高山本線(岐阜〜(鵜沼)〜美濃太田〜高山)
東海道本線(名古屋〜岐阜)
名鉄犬山線((新鵜沼)〜犬山〜(枇杷島分岐点))
名鉄名古屋本線((枇杷島分岐点)〜新名古屋(現:名鉄名古屋))
運行区間 (ひだ)名古屋〜美濃太田〜高山
(北アルプス)新名古屋〜美濃太田〜高山
名古屋鉄道の高山本線直通特急北アルプスは、キハ8500系の登場後は高山本線内でJR名古屋駅発着の特急ひだと美濃太田から先の高山線内で併結運転を行っていた。
JRの車両と私鉄の車両が日常的に併結運転を行っていた珍しい事例である。

ちなみに特急北アルプスのルートは、美濃太田駅出発後、鵜沼駅手前で名鉄・JRを結ぶ「鵜沼短絡線」に入り、新鵜沼駅を横目に犬山線に合流。その後新名古屋駅まで走るルートであった。

  • アルプス&かわぐち
1962年に大月から富士急行線に乗り入れて河口湖を目指す急行かわぐちが設定された際、新宿-大月間は急行アルプスに併結された。
この区間は当時から既に電化されていたが、アルプス号は電化されていない中央本線甲府以西を走行するため、併結相手との兼ね合いもあり、電車会社の富士急行も国鉄キハ58系と同等の車両を発注した。
その生き残りのうち1両は有田川町鉄道公園で保存されている。
ちなみに、一時期はアルプス・かわぐち・白馬・八ヶ岳の4階建て列車が走っていた。

  • きのくに
路線 紀勢本線(新宮〜和歌山(旧,東和歌山)〜和歌山市)
阪和線(和歌山〜天王寺)
南海本線(和歌山市〜難波)
運行区間 (天王寺発着)新宮〜和歌山〜天王寺
(難波発着)新宮〜和歌山〜難波)
上記の「かわぐち」と似た事例で、こちらは南海電鉄が気動車を保有、天王寺発着の列車と和歌山(旧、東和歌山)で分割併合していた。このルーツは戦前の「黒潮号」にまで遡り、国鉄が大阪和歌山間の路線を有していなかった頃の名残りでもあった。
後期には気動車運転の「きのくに」で統一されていたが、それ以前は客車列車も存在し、南海線内は電車併結で運転されていた。白浜や新宮までの列車がほとんどだったが、最長では名古屋行普通(もちろん夜行)が存在した。

  • さんべ
山陰地方から九州まで乗り入れていた急行列車。そのうち1往復が、複雑な運転経路を有していた。

米子駅を発車した列車は、まず益田駅で小郡方面の列車を分割。
その後、長門市駅で再び二つに分かれ、それぞれ美祢線山陰本線を経由した後、なんと下関駅でもう一度連結し直し、九州方面へと向かうのである。
どちらのルートも距離がほぼ一緒という事で可能となったこの芸当は昭和50年代末まで続き、「再婚列車」とも呼ばれていた。
小郡方面の列車は切り捨てられたのだ…

  • しんじ
上記「さんべ」の別バージョン。こちらは山陰本線(長門市)経由と山口線(小郡)経由になっていて、やはり下関で合流して博多へ向かった。
ちなみに、この列車の始発駅は何と宇野。伯備線経由で、途中新見でも分割と併合を行っていた。果たして乗り通す人はいたのか…

  • 陸中
末期は三陸地方を走るローカル急行だったが、東北新幹線開業前は仙台からそれらの地域を結ぶ重要な列車であった。
ただ、その全盛期の運用は非常に複雑怪奇なものであった。
昭和43年時の運用を例にとると…

Ⅰ仙台~一ノ関間:「陸中(秋田行)・むろね(盛行)・くりこま(青森行)」
 三列車が連結して運転。

Ⅱ一ノ関~花巻間:「陸中(秋田行)・くりこま(青森行)・さかり(青森行)」
 一ノ関駅で盛駅へ向かう「むろね」が切り離され、逆に盛駅から来た「さかり」が連結。

Ⅲ花巻~盛岡間:「陸中(秋田行)」
 花巻駅から盛岡駅までの間は釜石線山田線経由で単独で運転。「くりこま・さかり」はそのまま東北本線を北上し、青森へ向かった。

Ⅳ盛岡~大館間:「陸中(秋田行)・みちのく(弘前行)」
 盛岡駅からは上野始発の急行「みちのく」と連結され、花輪線経由で大館駅まで向かった。

Ⅴ大館~秋田間:「陸中(秋田行)・むつ(秋田行)」
 そして大館駅でみちのくが分離、そこに青森駅から来た急行「むつ」が連結され、ようやく終着駅へと向かうのである。
ここまで旅の道連れにした列車数は5列車…お疲れさまでした。

ちなみに仙台~秋田間での所要時間は、かなりの遠回りをしたため13時間半と実に半日以上もかけて走っていた。
仮に単独運転で分割・併合による長時間停車を除いたとしても、12時間くらいはかかっていたのではなかろうか。
なお、最短の北上線経由で走っていた急行「きたかみ」が約4時間半で、この列車の3分の1程度しかかかっていない。


…ただ、こんな運用を取っていたのは陸中だけでは無い。

  • 急行みちのくは上野~鳴子・宮古・大館間という三方面の列車を途中駅まで連結して運用
  • 急行むつには途中駅まで急行「岩木」が連結

…当時の東北本線の気動車急行は、とにかく分割併合が頻発していたのである。
わけが分からないよ。
しかも、さらに年代が経つと運用はもっと複雑となり、「たざわ」「はやちね」「こまくさ」「千秋(せんしゅう)」など新手の急行列車が次々に加わり、
さらに途中まで普通列車となる区間も現れたりとカオス極まりない状況だったと言う。

結局これらの運用が解消されるのは東北新幹線開業まで待つ事となった。

ちなみに当然ながらダイヤが乱れれば列車の運休も起き、連結位置が変わったりもしたらしい。
どの列車もキハ58系だらけ、専用塗装も無ければヘッドマークすらないという状況で、当時の乗客は大変だっただろう。

流石に東北本線の陸中は特殊な事例…と言いたいところだが、紀勢本線も匹敵するカオスっぷりだった。興味がある人は調べてみてほしい。

  • 千秋&もがみ
上記の「陸中」の項にも登場しているが、この列車も特徴的。それぞれ秋田と羽後本荘を出ると、両方が交差する新庄で編成をシャッフル。千秋・もがみの仙台行と米沢行に組み替えて出発していた。当然、単純に分割併合するよりも手間と時間がかかっていた。
ちなみに、千秋は大曲まで仙台行(盛岡経由)の「たざわ」を併結していた。余計にややこしい。

  • 雷鳥&ゆぅトピア和倉
珍しい電車と気動車の多層建て列車で、国鉄では唯一の事例。ただし協調運転の技術はまだ無かったため、併結中は気動車のゆぅトピア和倉をトレーラーとして走行していた。ちなみに併結区間の停車駅が両者で違う(ゆぅトピア和倉だけ扉の開かない駅があった)という妙な特徴があった。
七尾線電化後も雷鳥・スーパー雷鳥・サンダーバードとして続いていたが、2015年の北陸新幹線金沢開業で多層建ては廃止に。

  • 南風&しまんと
  • 南風&うずしお
路線 宇野線(岡山〜茶屋町)
本四備讃線(茶屋町〜宇多津)
予讃線(高松〜宇多津〜多度津)
土讃線(多度津〜高知)
高徳線(高松〜徳島)
運行区間 (南風)岡山〜宇多津〜高知
(しまんと)高松〜宇多津〜高知
(うずしお)岡山〜宇多津〜徳島
2025年3月14日まで、南風は2列車との併結運転を行なっていた。
「しまんと」は宇多津駅または多度津駅~高知駅間で併結し、南風は岡山駅、しまんとは高松駅へ向かっていた。
「うずしお」は岡山~宇多津間で併結し、南風は高知駅へ、うずしおは高松駅経由で徳島駅へそれぞれ向かっていた。
同月15日のダイヤ改正に伴い、しまんとは減便、うずしおは岡山発着便が廃止となり、多層建て運用はそれぞれ廃止。

なお、このうずしおは上記のサンライズ瀬戸や快速マリンライナーのように瀬戸大橋線から直接坂出駅へ行かないため、宇多津駅と高松駅で2回方向転換(スイッチバック)を行っていた
日本の定期特急列車で2度方向転換するのはうずしおが唯一であった。


  • こうや&りんかん
路線 南海高野線(なんば〜橋本〜極楽橋)
運行区間 (こうや)全区間
(りんかん)なんば〜橋本
Q:え?多層建て?増結じゃなくて?
A:多層建てです。
2000年12月から2015年12月まで存在した運用。
上記の通り、どう見ても増解結としか言いようがないのだが、あくまでも別列車同士の併結である。*13
そんなこと言ったら八戸延伸前のやまびこ・こまちもただの増解結になるし…。
充当されていた11000系が特急泉北ライナーに充当されたことにより、この運用は2015年に廃止に。


急行「アイン」・「ツヴァイ」・「冥殿」 (追記~修正・お願い・します)

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最終更新:2025年04月17日 02:19

*1 一応「夜行臨時のため、万が一の避難の観点から貫通扉がある車輛の方が望ましい」として冬期スキー臨時に充当されたことがあるなど全く役立たずだったわけではない。とはいえこの観点から485系後期型は最初から扉のない前面で作られている。新津鉄道資料館の個体はこちら。

*2 運行当初は盛岡行きのやまびこだったが、延伸および新型車両の登場により一時期はやてに代わり、現在に至る。

*3 下り待避線の14番のりばにしか併結設備がないのと山形新幹線の線路が繋がっていないため、やまびこが2回下り本線を横断しなければならないため。

*4 きのさきには使用されない

*5 上述のように5年で乗り入れが廃止

*6 現在は関空快速にこそないもののA-SEAT、うれシートとしてほぼ同一の施策が行われており、こっちはちゃんと儲かっている

*7 元々は783系の固定編成だったが、リニューアルおよび専用編成への改造を行う際に編成組み換えを行い、さらに中間車の先頭車化改造が行われた。

*8 要するに故障した貨物列車の救援。ただ、「機関車どころか特急型」で、しかも「回送でもなく客を乗せて運行してる旅客列車」とツッコミどころしかないが。

*9 運行当時、特急は北野駅を通過していた。

*10 当時上本町駅のホームが短く、そのままではホームをはみ出してしまうためだったとか。

*11 もっと言えば、これらに充当された485系先頭車はそもそも新造時からなかった・使わないので溶接で埋めた・改造車なので備えていないなど物理的に扉が無い個体も多かった。

*12 増解結列車であれば「スーパー雷鳥」付属編成の延長運転など数多い。

*13 ご丁寧に号数も別であった。