多頭

登録日:2018/07/10 Tue 19:13:57
更新日:2025/03/12 Wed 16:41:18
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多頭とは、神話で頻繁に見られる特徴の一つ。


【概要】

本来なら一つしかない頭を二つ持って生まれる奇形は古今東西多く存在する。
それらの特徴から連想されて、「多くの首や頭を持つ超越的存在」は数多くの神話に採用される特徴となっている。
善なる存在とされることもあれば、邪悪な存在とされることもある。ただ、近年はどちらかというと悪寄りの特徴とみなされがち。
なお、双頭の奇形は生物的にはかなり弱い存在なのだが、神話では「生命を象徴する首を多く持つ」ということで、非常に強大な存在として描かれることが多い。


【現実における多頭動物】

ハッキリ言っておくと、現実において多頭の動物「種」は存在しない。
ただ、奇形による双頭生物や放射能汚染による遺伝子異常などで、ごくごくまれに蛇など双頭の生き物が生まれることはある。
先述の通り、生物としては強力どころかむしろ虚弱体質なためそのまま死んでしまうケースも少なくない。
なお、極めて珍しいケースだが結合双生児の中に「二頭体」というものがあり、このケースがいわゆる「多頭」に近い。
現在確認できているのはアメリカで一例、ブラジルで一例である。


【創作における有名な多頭】

以下では、「(首から上の)頭部が複数ある」もののみを記載し、一つの頭に複数の顔を持つ ―いわゆる“多面”― 例は扱わないものとする。

八岐大蛇

日本で有名な多頭の怪物。
八本の首を持ち、八つの山と谷を越えるほどの巨体を持つとされる。
最後は神舎に祀られた酒に酔いつぶれている隙にそれぞれの首を掻っ切られた。
ヒドラもそうだが、蛇というのは生命力の象徴でもあるのと、現実にも稀に多頭蛇が出現するので、多頭との相性がいい部分がある。

ヒドラ

西洋の八岐大蛇
頭の数は文献によってまちまちなものの、中央の首は不死、それ以外の首を刎ねられると切断面から新たな首が2本生えてくるというすさまじい能力の持ち主。頭の数がまちまちなのもこの能力のせいでどんどん増えていくからのようだ。
ただし、再生する首は患部を焼く火には弱く、不死の首は岩の下敷きにすることでヘラクレスに退治され、その血は毒矢に利用される事になった。
ちなみに同じくヘラクレスに退治された仲間に百の首を持つ竜「ラードン」がいる。
ヒドラの兄だが、ヒドラの方が有名すぎてこっちはあまり出番がない。

ケルベロス/オルトロス

ケルベロスは三つ、オルトロスは二つの首を持つ魔犬。
共にギリシャ神話に登場する。

・イルルヤンカシュ

ヒッタイトの神話に登場する水神であり竜神。多数の首を持つ蛇として描かれる。
「酔わせたところを討ち取られる」など八岐大蛇伝説と妙に共通点がある。八岐大蛇も大洪水のメタファーとされることが多いし。

・双頭の鷲

多くのヨーロッパ系文化圏で用いられるシンボルの一つ。
アルバニアの国旗に使われていることで有名。他にも、ロシアやモンテネグロの国章も双頭の鷲である。
ただし、具体的にどのような神話の元に生まれたのかはよくわかっていない。最古の使用例は紀元前13世紀のヒッタイトであり、それ以降もローマ帝国などで広く用いられていたようである。

黙示録の獣

ヨハネの黙示録に登場する謎の獣。「からやってきて10の角と7つの頭と7つの冠を持つ」という想像しがたい姿をしている。
獣の数字「666」が非常に有名で、この数字を刻まれていないものは買い物ができないようになった、とされている。
なお、現在に至るまで多くの考察がされている存在であるが、当時の隠語からすると、恐らくは「七つの丘と七人の皇帝を抱く街」、すなわち当時キリスト教を迫害していたローマのことを指しているとされている。

・オシツオサレツ

イギリスの児童文学「ドリトル先生」シリーズに登場するヤギのような変な動物。
オシツオサレツ自身の言葉によるとユニコーンと血縁関係にあるようだ。珍獣というよりかは幻獣や神獣の類なのかもしれない。
ノアの方舟が過去に本当に起こっていたり、月に飛ばされ不老不死の巨人となった人物がいたり月と地球を行き来することのできる巨大な蛾や宇宙空間でも人間の生存を可能とする酸素を供給できる不思議な花がいたりする世界観なので……。
双頭系の動物では珍しく、身体の前後に一つずつ頭があるという変わったスタイルをしている。
性格は極めて温厚。ドリトル先生一家の金蔓大事な仲間である。
ちなみに原語では「Pushmi-pullyu(私を押して、あなたを引いて)」。このハイセンスな和名には脱帽するしかない。

キングギドラ

怪獣界を代表する一つ、金色の三つ首のドラゴン。
ソ連映画『豪勇イリヤ 巨竜と魔王征服』に登場した三つ首竜「ズメイ・ゴルイニチ」がモデルとも。
八岐大蛇をモデルにしているような部分もある。
類似怪獣としてデスギドラカイザーギドラがいる。

・ドードー・ドードリオマタドガスナッシー・ジヘッド・サザンドラ他多数

ポケモン界の多頭ポケモンたち。それにしてもどうして初代組がやたらと多いんだ
頭が3つあるグループは多くが「トライアタック」を習得可能。
ちなみにサザンドラは三つ首(正確には両手にも口がある)だが、背中の翼のデザインも頭のように見え、シルエットは八本首に見えるという小ネタがある。
レアコイルダグトリオのような例もあるが、レアコイルは「コイルが3体連結しているだけ」でダグトリオは「地中でどうなっているかは誰も知らない」ため、厳密には多頭というにはちょっと違うかもしれない。
他にも小さい方の頭の養分を吸って成長するチェリンボ尻尾に小さなを持つ頭がついたキリンリキなどの変わり種もいる。

・金目・銀目

ライトノベル『デュアン・サーク』シリーズに登場した「双頭の魔術師」。
大柄な一つの身体に炎系魔法使いの金目(グリ・モーグ)と氷系魔法使いの銀目(グラ・モーグ)、2人分の頭が生えており、現実で言う結合双生児にあたる。
ちなみに彼らの家系には過去にも双頭で強い魔力を持つ人間が存在していたそうな。

青眼の究極竜(ブルーアイズ・アルティメットドラゴン)

遊戯王』に登場する三つ首のドラゴン。モデルはキングギドラだろうか。
原作では3回行動という強力な特性を持っていたが、OCG版ではその特性は「真青眼の究極竜(ネオ・ブルーアイズ・アルティメットドラゴン)」まで待つことになった。
このカード以外にも『遊戯王』では融合素材の数と同じだけの首を持つモンスターが多い。

オストガロア

モンスターハンタークロスに登場する双頭の古龍
ファンタジーではあっても、生物の常識は超えない」というのが基本であるモンハンシリーズでは珍しく、「双頭」という通常なら考え難い特性を持ったモンスターだが……?

ちなみにオストガロアそのものとは無関係だが、ハンター大全などに載っている開発段階のイラストでは、ミイラのような双頭のドラゴンの設定イラストを確認できる。

魔神三つ首

電人ザボーガー』に登場した恐竜軍団の支配者。
三つの首を持つ巨大な竜。

変身超獣 ブロッケン

ウルトラマンA』に登場した超獣の1体。
両手が単眼の顔になっている。
これでもウルトラ怪獣における多頭の元祖。
ちなみに「顔が複数ある」怪獣の元祖は『ウルトラセブン』の双頭怪獣パンドンで、1つの頭の両脇に顔がある*1
より「多頭らしい」ウルトラ怪獣は『ザ☆ウルトラマン』の爬虫怪獣ジャニュールⅢ世、特撮作品では『ウルトラマン80』の三つ首怪獣ファイヤードラコまで待たねばならない。
多頭怪獣で印象に残りやすそうなのはフィンディッシュタイプビーストイズマエルか。本来の首の他、左右の肩に2つずつ、腹・右膝・左膝に1つずつの合計9つの顔を持つ。

Gulool Ja Ja

ファイナルファンタジー11に登場する獣人国家の1つ、マムージャ蕃国の僭主。
マムージャは生物学的にも別種の多様なリザードマン(カエルと半魚人含む)の多民族国家なのだが、
ジャジャは戦士タイプの種族と魔法使いタイプの種族の頭がそれぞれ生えており、しかもそれぞれに独立した意思を持っている。

○○ヘッド・ジョーズシリーズ

アサイラム配給のサメ映画シリーズ。頭がたくさんあるサメが主役。
シリーズを追うごとにダブルヘッド→トリプルヘッド→ファイブヘッド→シックスヘッドと頭の本数が増えていく。*2

サーチマン

ロックマン8の8大ボスの1人。
警備用ロボットの頭を2つにすることで索敵範囲の拡大を図ったが、上下関係ができてしまったようで戦闘時以外は仲が悪くお互いを監視し合っている。
ロックマンエグゼ版は普通のイケメンである。

三頭の騎士

アーサー王伝説に登場する騎士。3つの頭と3つの人格を持っており、口喧嘩は絶えないが最終的にティータイムの前に目の前の奴を殺すことで意見が一致するという、仲が良いんだか悪いんだかよくわからない連中。
三頭の騎士に遭遇した、円卓の騎士の中でも特に勇敢なロビン卿は口喧嘩している最中に勇敢に尻尾を巻いて逃げて行った。
余談だが三頭の騎士もロビン卿も映画「モンティ・パイソン ホーリーグレイル」にしか出てこない。

赤蛮奇

東方輝針城 ~ Double Dealing Character.で初出の、ろくろ首の妖怪。
平時は人間の少女のように見えるが、一部のスペルカードの時に頭が増える(最大9個)。しかも胴体から分離する。

ダブルロック

マシンロボ」シリーズで登場した双頭の悪の岩石超人。

【余談】

日本語ではこうした怪物を「3つ首」などと呼んだりするが、もちろん「首だけが複数あって頭や顔が1つしかない」という微妙なデザインの妖怪が日本に居たわけではない。
これはもともと「首」という言葉に「首から上の頭部全体」という意味があったためである。
「その首、貰い受ける!」と言われたからといって、ご丁寧に首だけを持っていくことはない。
現代では滅多に頭を首ということはなくなったが、「首を突っ込む」という慣用句などにその名残がある。
首だけを突っ込み、頭を突っ込まないのは至難の業であろう。
ちなみに「頭と胴体を繋ぐ細い部分」(英語の「neck」)だけの場合は「頸」「頚」と表記される。頸動脈とかの頸。



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最終更新:2025年03月12日 16:41

*1 元々は「首が2本ある」怪獣の予定だったが、当時の未熟な操演技術では実現不可能だったらしい。これのリベンジが『平成ウルトラセブン』のネオパンドン。

*2 クァッドヘッドが飛ばされているが、「ファイブヘッド・ジョーズ」ではまず4つ首のサメが登場しその尾びれが頭に変化することでファイブヘッドジョーズが完成する。