東京メトロ丸ノ内線

登録日:2023/03/23 Thu 14:27:08
更新日:2023/04/19 Wed 23:41:24
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東京メトロ丸ノ内線(まるのうちせん)とは、東京地下鉄(東京メトロ)の地下鉄路線である。
東京都豊島区の池袋駅と杉並区の荻窪駅を結ぶ本線と、途中の中野坂上駅から方南町駅を結ぶ支線(方南町支線)が存在する。
ラインカラーはスカーレットで、路線記号は本線が「M」、方南町支線が「Mb」。
鉄道要覧における路線名は「4号線丸ノ内線」(本線)、「4号線丸ノ内線分岐線」(方南町支線)。


概要

池袋から大手町・東京方面を経由して荻窪まで、カタカナの「コ」の字を描くように結び、新宿から荻窪までは青梅街道に沿って走行する。
池袋〜荻窪はJR経由だと20〜30分ほどで行けるのに対し、こちらは約50分ほどかけて同区間を走行する。

よく「丸内線」と表記されることがあるが、正式な表記は「丸内線」である。

計画そのものは戦前の1925年、当時の内務省が告示した東京の地下鉄計画5路線のうち、新宿~大塚間を結ぶ「第4号線」がルーツ。
この路線の免許自体は当時の東京市が取得したものの、いざ建設という段階で財政悪化を懸念した内務省と大蔵省が反対したことで頓挫してしまい、その後免許は東京高速鉄道*1に譲渡される。
1941年の営団地下鉄成立後は緊急建設路線として新宿~東京間の建設が決定され、1942年に四谷見附~赤坂見附間が着工されるが、太平洋戦争の戦局悪化により1944年に中止される。

終戦後の1946年、先の内務省告示を改正した戦災復興院の告示によって第4号線は現在に近い「池袋~新宿」間に変更され、免許の変更を経て1951年に本格着工。
ルート変更を経て*21954年に池袋~御茶ノ水間が開業し、1959年までに順次新宿まで開業した。この一方で後述する荻窪線も建設が行われ、1961年から1962年にかけて全線が開通している。

建設は池袋〜御茶ノ水、御茶ノ水〜銀座、銀座〜新宿の3区間に分けて行い、当初はこの池袋〜新宿間が「丸ノ内線」と呼ばれていた。
残りの新宿〜荻窪間及び中野坂上~方南町間は当初「荻窪線」と呼ばれており*3、1972年に荻窪線が丸ノ内線に編入されたことで現在の路線網が形成された。

銀座線と同じく、標準軌1435mmで第三軌条方式を採用している。
銀座線と比べてトンネル断面には余裕があるため、車両は銀座線のものよりも約2m長い18m級、車体幅も230mm広い2780mmとなっている。このため、銀座線の車両は丸ノ内線に乗り入れることが可能で、中野や茗荷谷への車両基地への回送に加え、臨時列車が運行されることもあった*4

方南町支線の路線記号は当初はmだったが、アルファベットの大文字と小文字には発音上の区別がないことから、2016年の放送更新に合わせて「Mb」(丸ノ内線の支線を表す”Marunouchi branch”より)と改められた。

2010年5月までに全線でワンマン運転、ATOによる自動運転化が完了している。
今後は日本の地下鉄では初となる無線式列車制御システムのCBTCが2024年度から導入される予定で、2022年11月から走行試験を開始している。


運行形態

朝夕のラッシュ時はかなりの過密ダイヤ。かつては最短間隔が110秒だった時期もあったくらい。
一方、日中は2022年のダイヤ改正で減便されてしまい5分間隔に。車両が小さいのもあってさらに混雑が激しくなってしまった……。
日中は池袋〜荻窪の全線通しの列車が毎時10本、池袋〜方南町の支線直通列車が毎時2本となっており、朝夕は入出庫などの関係で茗荷谷・中野富士見町・新宿三丁目・新宿・中野坂上発着の列車が設定されている。

方南町支線では長らく3両編成の専用車両によるピストン運用を主体とし、中野富士見町〜方南町は3両編成の車両のみ乗り入れていた。
これは方南町駅が物理的には6両の入線に対応していたものの、他の駅よりも有効長が短く過走余裕がなかったためである*5
その後、2019年1月に方南町駅のホーム拡張と6両対応のホームドア設置が行われ、同年7月より6両編成の列車の乗り入れを開始した。
2022年8月のダイヤ改正で全列車が6両に統一され、3両編成の列車が消滅した。


使用車両

現行車両

  • 2000系
02系置き換えおよびCBTC導入に向けて開発され、2019年に登場した。
車端部の丸窓を含め、車両デザインには「丸」が多く取り入れられている。
塗装は後述する300形のものを再現しているが、側面のサインカーブはホームドア設置の関係から窓上に配されている。
また環境面への配慮から前頭部以外は塗装ではなく全面ラッピングとなっている。
フリースペースが全車両に設置されており、一部のスペースにはモバイルコンセントも設置されている。
  • 02系
1988年に登場。
銀座線で活躍していた01系をベースに設計され、前面形状や車両規格以外はほぼ01系に準拠している。
初期編成は非冷房で登場したが、1990年以降に落成した編成は最初から冷房装置を搭載し、非冷房編成も順次冷房化改造を受けた。
2009年からはチョッパ制御車として落成した編成に順次更新工事(B修繕)が施され、VVVFに換装されたほか、300形からの伝統であるサインウェーブが復活した。
それ以前にも2003年には丸ノ内線池袋 - 御茶ノ水間開業50周年を記念して300形の塗装を再現した編成も登場している*6
前述のCBTCに対応できないため、修繕車も含めて2023年度末までに全編成が2000系に置き換えられる予定である。

過去の車両

  • 300形・400形
1954年の池袋〜御茶ノ水間開業に伴い登場。
赤色の車体に白帯と銀のサインウェーブ帯*7という斬新なデザインが話題となり、丸ノ内線=赤い電車という車両イメージを確立させた名車中の名車。
技術的に見てもWN駆動方式や電磁直通ブレーキ、両開きドアを本格導入し、以後の鉄道車両技術の礎となった。
特徴的な鍵穴型のライトは現在の主力車両である2000系のほか、有楽町線副都心線用の車両である10000系にも受け継がれている。
400形は屋根や台車の形状を改良し、軽量化を図ったマイナーチェンジ車。
  • 500形・900形
1957年の東京~西銀座(現・銀座)間開業に伴い登場。
本形式から片運転台となり、増備途中から前面方向幕の形状も変更されたため全体的にすっきりした外観となった。
増備に次ぐ増備で番号は800番台まで伸びた。
そのため運転台なしの中間車は900形を名乗っている。
日本が舞台となった映画『007は二度死ぬ』では、丹波哲郎演じる工作員・タイガー田中のプライベート車両として料亭やラウンジが設置された観光列車トンデモ車両が登場する。

これらの形式は1996年までに全車が引退したが、一部車両がブエノスアイレスに譲渡された。
その後技術伝承の教材および地下鉄開業90周年記念事業の一環として東京メトロが500形4両を里帰りさせることとなり、うち3両*8を動態保存可能な3形態(ブエノスアイレス・引退時・デビュー時)に復元して2017年に公開された。
また、地下鉄博物館には300形の301号車が保存展示されている。

  • 100形
方南町支線用の車両で、1962年に同線の開業に際し銀座線から転属してきた。
画像を検索していただきたいが、戦前生まれの車両のため重厚な外観をしており、
これに赤と白帯(サインウェーブなし)という派手な塗装を施したため、中の人にまで年寄りの厚化粧と呼ばれる羽目に。
車両規格の関係でホームとの間に隙間が生じるので、ドアにステップが設置されていた。

  • 2000形
こちらも方南町支線用の車両で、100形置き換えのため銀座線から転属してきた。
車両規格の(ry

  • 02系80番台
方南町支線用の車両で、1996年に新造導入された車両である。
誤乗防止のため、本線用の02系とは異なり赤と黒のラインが入った帯を纏っていた。
コストカットを図るため、内装は本線用の02系と比べて簡素な作りになっており、行先表示器も幕式となっていた。
2022年8月のダイヤ改正に伴い全車引退。これにより方南町支線専用の車両が消滅した。


駅一覧

本線(池袋〜荻窪)

ナンバリングは荻窪から順に割り振られているが、ここでは起点である池袋より解説する。

  • M-25 池袋
有楽町線副都心線、JR山手線埼京線湘南新宿ライン東武東上線西武池袋線乗り換え。
起点駅にして世界第3位の利用者数を誇るターミナル駅。

  • M-24 新大塚
隣の池袋駅とは1.8kmと実は距離がある。
ターミナル駅の隣という性質故か、利用者数は東京メトロ全130駅中116位(2021年)で支線以外の丸ノ内線の駅としては最も少ない。
東上鉄道(現在の東武東上線)は当初の計画ではこの付近が起点となる予定だった。

  • M-23 茗荷谷
拓殖大学や筑波大学のキャンパスが近い。お茶の水女子大学および同学の附属教育機関は御茶ノ水ではなくここが最寄り駅となっている。
一度発車メロディが導入されたが、沿線住民からの苦情が入った関係でブザー式の発車サイン音(通称『営団ブザー』)に戻された*9
ホーム荻窪寄りは地上になっており、隣の後楽園駅の先まで地上区間となっている。
当駅付近に中野検車区の分室が設置されている小石川車両基地がある。

  • M-22 後楽園
南北線都営地下鉄大江戸線都営地下鉄三田線乗り換え(都営は春日駅)。ニチアサのCMではおなじみのフレーズ「後楽園遊園地で僕と握手!」のあの後楽園である。
東京ドームシティ、小石川後楽園最寄り駅。東京ドームでの試合開催日は特に混雑する。
駅ビルの2階にある高架駅で、荻窪方面に少し走ると再び地下に入る。

  • M-21 本郷三丁目
都営地下鉄大江戸線乗り換え。
東京大学本郷キャンパス最寄り駅で、有名な赤門は当駅が最も近い。
なお駅の住所は本郷二丁目だが、開業当時は三丁目だったためこの駅名になっている。

  • M-20 御茶ノ水
JR中央快速線中央・総武緩行線乗り換え。
明治大学日本大学順天堂大学東京医科大学最寄り駅で、駅周辺は日本有数の学生街として知られる。楽器屋もたくさん。
先述の通り、お茶の水女子大学最寄り駅はここではなく茗荷谷駅または有楽町線護国寺駅である。
荻窪方面行き列車は当駅発車後、一旦地上に出て神田川を渡る。

  • M-19 淡路町
千代田線(新御茶ノ水駅)、都営地下鉄新宿線(小川町駅)乗り換え。
都営新宿線小川町駅は至近距離であるため乗り換えは容易だが、一方で千代田線は位置の関係上小川町を経由することになるため、非常に時間と手間がかかる。

  • M-18 大手町
東西線半蔵門線・千代田線、都営地下鉄三田線乗り換え。
丸ノ内線のみ「サンケイ前」の副駅名を持ち、副駅名の通り東京サンケイビルと直結している。
駅周辺は日本有数のオフィス街で、大手企業の本社が多数集まる。箱根駅伝のスタート地点とゴール地点もこのあたり。
ちなみに東京メトロの大手町駅は4路線とも千代田区大手町にあるが、三田線の駅は千代田区丸の内にある。さらに言うと丸の内にある東京メトロの駅は千代田線の二重橋前駅である。丸ノ内線が丸の内じゃないのかよと言ってはいけない
東京メトロの4路線は全て改札内で繋がっているが、全ての路線で改札外乗り換えが可能となっている*10

東海道東北上越北陸山形秋田新幹線・JR山手線・京浜東北線東海道線上野東京ライン(宇都宮高崎常磐線)・中央快速線・横須賀線総武快速線京葉線乗り換え。
言わずと知れた日本の鉄道交通網の中心地で、日本を代表するターミナル駅。その中で唯一、丸ノ内線は私鉄として「東京駅」に乗り入れている。

  • M-16 銀座
銀座線・日比谷線乗り換え。
日本有数の繁華街・銀座へのアクセス駅で、有楽町や八重洲などのオフィス街も徒歩圏内にある。このため、東京メトロでは利用者数第5位となっている。
「三越・松屋前」または「松屋・三越前」という副駅名があるが、丸ノ内線では案内されない。

  • M-15 霞ケ関
日比谷線・千代田線乗り換え。
駅周辺は中央省庁やその関連施設が集まる官庁街。地下鉄サリン事件では多数の被害者が出た。

  • M-14 国会議事堂前
千代田線乗り換え。
千代田線ホームとはかなり高低差があるが、連絡通路があるので乗り換えはそこまで苦ではない。というか、千代田線と丸ノ内線の相性が悪すぎる。特に淡路町と新御茶ノ水な……
駅名の通り国会議事堂に直結している。
千代田線の先で溜池山王駅に繋がっているため、南北線や銀座線にも乗換ができるが、銀座線は隣の赤坂見附駅が向かい合わせなのに対し、こちらは高低差+移動距離約500mなので推奨されない。

  • M-13 赤坂見附
銀座線・有楽町線・半蔵門線・南北線乗り換え(銀座線以外は永田町駅)。
丸ノ内線池袋方面⇔銀座線浅草方面、丸ノ内線荻窪方面⇔銀座線渋谷方面がそれぞれ対面乗り換え可能で、両者の連絡線も設置されている。
ただし車両規格の関係上、直通できるのは銀座線の車両のみとなる。

  • M-12 四ツ谷
南北線、JR中央快速線、中央・総武緩行線乗り換え。
迎賓館、上智大学、雙葉学園の最寄り駅。
地上駅ではあるが、地形の関係でホームは地下1階にあるという扱いになっている。

  • M-11 四谷三丁目
荻窪方に非常時や臨時列車運転時などに使用できる渡り線がある。
隣の四ツ谷駅と違い、駅名に「」は入らない。ややこしい。

  • M-10 新宿御苑前
駅名が示す通り新宿御苑の最寄り駅で、桜の時期は花見客で混雑する。
東京厚生年金会館も近い。

  • M-09 新宿三丁目
副都心線、都営地下鉄新宿線乗り換え。
隣の新宿駅との距離はわずか300mほどで、徒歩で移動することができる。
都営地下鉄新宿線は新宿駅での連絡運輸の扱いがないため、当駅での乗り換えが必要になる。

JR山手線・埼京線・湘南新宿ライン・中央快速線、中央・総武緩行線、小田急線京王線、西武新宿線(西武新宿駅)乗り換え。
利用者数世界一の大ターミナル駅にしてヨドバシカメラの本拠地。
都営地下鉄大江戸線及び都営地下鉄新宿線の新宿駅とは距離があるため連絡運輸は行っておらず、都営大江戸線は新宿西口駅、都営新宿線は先述の通り新宿三丁目駅で乗り換えとなる。
荻窪寄りに引き上げ線があり、平日朝ラッシュ時に池袋方面への折り返し列車がある*11

  • M-07 西新宿
周辺地区の再開発に伴い1996年に開業した駅。「東京医大病院前」の副駅名がある。
利用者数は東京メトロ全130駅中43位*12と、丸ノ内線の単独駅としては最多。

  • M-06 中野坂上
方南町支線、都営地下鉄大江戸線乗り換え。
構造の関係で2番線のホームが2つ存在する不思議な駅。
深夜帯に2本運転されている荻窪発中野富士見町行き電車は当駅でスイッチバックをして方南町支線に入線する。

  • M-05 新中野
鍋屋横丁と杉山公園の中間に位置し、どちらもアクセスは良好。
荻窪線開業時の終着駅であった。

  • M-04 東高円寺
元々建設される予定はなかったが、都電杉並線の廃線による沿線住民の要望を受けて急遽作られた駅。
新駅設置を想定したトンネル構造にはなっていたため、1964年1月の建設工事着手から8ヶ月後の9月18日に開業した。

  • M-03 新高円寺
当駅付近からJR中央線高円寺駅までの間に高円寺ルック商店街・高円寺パル商店街がある。

  • M-02 南阿佐ヶ谷
杉並区役所最寄り駅。
周辺には税務署、警察署などの官公署が集中している。

  • M-01 荻窪
終着駅。JR中央快速線、中央・総武緩行線乗り換え。
都内でも有数のラーメン店激戦地として知られる杉並区荻窪エリアの中心駅で、バンダイナムコフィルムワークスの最寄り駅。
これより先に線路を伸ばせないのは戦時中の不発弾が大量に埋まっているから、という都市伝説が存在するとかしないとか。
一時期はここから埼玉県の朝霞まで延伸する計画があったが消滅した。

方南町支線

中野新橋駅より順に解説する。

  • Mb-05 中野新橋
港区にある新橋駅と区別するため、駅名に「中野」を冠している*13
1967年公開の映画『007は二度死ぬ』のロケ撮影に使われた。

  • Mb-04 中野富士見町
中野検車区最寄り駅で、ラッシュ時には当駅発着の列車が設定されている。

  • Mb-03 方南町
支線の終着駅で立正佼成会本部最寄り駅
狭い場所に建設されたことから長らくバリアフリー設備が無かったが、2017年にエレベーター・エスカレーターが新設されて新しい出入り口の使用を開始。
戦隊ヒーロー風の格好をした「ベビーカーおろすんジャー」なる人物のボランティア活動の拠点となっており、この活動は世界のメディアでも報道されている。


追記・修正は荻窪〜池袋を一度に乗り通したことがある人にお願いします。


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最終更新:2023年04月19日 23:41

*1 現在の東京メトロ銀座線の前身。

*2 当初は神田経由で着工したが、後に予算や技術、工期の問題から大手町経由に変更された、

*3 なお当初よりこれら丸ノ内線及び荻窪線は一体的な運行が行われていた。

*4 後者はホームドアが設置されたため、現在は不可能となっている。

*5 他の駅が120mないし140mであったのに対し、方南町駅は110mだった

*6 当初は完全再現だったが、後にロッテガーナチョコレートのタイアップとなり商品ロゴが追加されている。

*7 ステンレス製。

*8 1両は予備車扱い。

*9 ここに導入された発車メロディは方南町駅に流用されている

*10 改札外乗り換えを利用しない場合、丸ノ内線⇔東西線の乗り換えには半蔵門線と千代田線のホームを歩かなければならず、かなり遠回りとなってしまう。

*11 かつては日中にも折り返し列車があったが、2019年7月から方南町発着に変更された。

*12 2020年度の順位。2021年度は45位。

*13 由来となった新橋も、架け替えに合わせて2011年6月に「中野新橋」に改名している。