日本語表記/英語表記(遊戯王OCG)

登録日:2012/05/18 Fri 16:25:01
更新日:2025/04/21 Mon 21:26:19
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原作開始から25年以上が経過し、遊戯王OCGは今や世界一売り上げたカードゲームの座を不動のものとした。
現在では世界的に展開しており、日本語でない言語で先に発売され、後から日本語版が輸入されることすら今日では珍しくない。*1

だが年が経つに連れ、日本と世界の言語・文化の差異から、どうやっても表現出来ないカード名が生まれ始めた。


この項目では基本となった日本版と英語版のカード名について述べる。




◆日本語の特異性について
日本語は、ひらがな、カタカナ、漢字でほとんどの言葉を表記できる。
カード名にも日本語以外の言語が使用されることもある、日本はかなり自由な国であるため、
諸外国では控えられる単語も平気でカード名に使っている。

特に海外では、兵器などの暴力的な単語、差別用語、宗教用語は避けられており、別の単語に置き換えられることが多い。
この中でも、宗教用語は歴史背景もあり特に影響が大きい上例外は日本だけである。

日本では世界宗教が文化に根付いていないため、こうした規制の影響を受けにくいのだ。
しかし、宗教が根強く浸透している諸外国ではそのままでは販売できない。
ときに戦争をも起こす宗教の概念を使うことは日本以外では控えられ、宗教的な単語は全て別の単語に代えられるか、丸ごと削除されている。

この影響が特に顕著なのは「」の表記だろう。
これは、日本人にとっての「神」とキリスト教でいう「God」が全く違う概念であるため。
そもそも「God」を「神」と訳すのは不適当という論説もあるほどである。日本は実質の多神教だしね。

日本以外のカードでは「God」にあたる単語を使わないようになっており、
原作でそう表記されていた三幻神ですら属性、種族含め一切「God」という単語は使われていない。
対して「神」が特別な存在ではない日本では、三幻神やホルアクティのような例外を除いても、神と名の付くカードは相当数存在する。 

よって、日本語名の『神』に当たる部分は「God」ではなく
「Immortal(不死の存在、超越者)」「Divine(神性)」「Deity(神格)」といった単語が用いられている。
「地縛神」なんかがそのひとつで、これらは英訳では「Earthbound Immortal(大地に縛られし不滅の超越者)」というイカした名前をつけられている。
逆に「沼地の魔神王」→「King of the Swamp(沼地の王)」のように単純に「神」部分を取っ払って格下げされているようなものも見受けられる。

Goddesは女神なので例外的に昔より使用されている他、近年は多少緩和されているようで、11期以降では「God」も使用されるようになった

またアニメの海外版では三幻神をEgyptian Gods(エジプトの神々)と呼称しており、キリスト教のGodとは別物だと明確にすることでセーフにしている。後にTCGでも《Egyptian God Slime(日本語名:神・スライム)》が登場している。


日→英の珍訳・迷訳

ローマ字日本語表記、妙な単語を直訳、といった力技感あふれる英訳が多い。
特に、初期のカードはその傾向が顕著にある。

きのこマンが「Mushroom Man」。
で、マタンゴは「Mushroom Man #2」。
初期のカードには多かった投げっぱなしネーミングの一つ。
なのだが、エメラルドドラゴン/Luster Dragon #2のように、先に出たのに「#2」をつけられる可哀想なヤツもいる(ちなみに、サファイアドラゴンが「Luster Dragon」である)。

  • 鬼神の連撃/Oni-Gami Combo
先に上げた、「神を名に含むカード」のひとつ。
こういうのは普通「神」の部分をkami、jinなどの表記にするのだが、こいつは「Oni-Gami Combo」。
どうして中途半端に翻訳しようと思ったのか。

  • 水魔神スーガ/Suijin
  • 風魔神ヒューガ/Kazejin
  • 雷魔神サンガ/Sanga of the Thunder
この手の翻訳による被害が大きいことで有名なカード。

水魔神スーガ→Suijin(スイジン)

これはまだいい方で、

風魔神ヒューガ→Kazejin(カゼジン)

スイときたら普通フウだろう……

雷魔神サンガSanga of the Thunder

統一性も何もあったものではない。
雷はともかく神(ジン)はどこいった!?

  • レアメタル・ソルジャー/Roboyarou
「ロボ野郎」。
ちなみに、こいつを融合素材にする「レアメタル・ナイト」というカードもあるのだが、そっちは「Super Roboyarou(スーパーロボ野郎)」。
……もはや何も言うまい。

  • 海/Umi、草原/Sogen、闇/Yami
「Ocean」とか「Sea」とか「Grassland」とか「Dark」でよかった気もするが……うん、まあ、いいんじゃないかな。
同期の「山/Mountain」「森/Forest」「荒野/Wasteland」は普通の訳なのにどうしてこうなった。

  • サンダー・ボルト/Raigeki
  • ファイヤー・ボール/Hinotama
何故元から英語だったカード名をわざわざ外国語(日本語)にし直したのか。
英語チームは「Raigeki」という語感か字面が余程気に召したのか、こういったローマ字そのままな英語名がほぼ見られなくなった第三期に登場した《サンダー・ブレイク》がRaigeki Break(雷撃ブレイク)に、第五期の《宝玉の祈り》もCrystal Raigeki(宝玉の雷撃)になっている。

  • 人造人間-サイコ・ショッカー/Jinzo
何を思ったか、「人造」だけをローマ字翻訳する暴挙に。
いちおう、英語では「サイコ」が使えないのでそのまんま翻訳はできなかったのだが、それにしたって……

ちなみに、人造人間7号は「Jinzo #7」。
なので、サイコ・ショッカー登場15年後に「人造人間」がカテゴリされた際、奇跡的にエラッタを逃れた

  • 魔力吸収球体/Maryokutai
「吸収」と「球体」どこ行った。
こちらもサイコ・ショッカーと同じく文章を構成する一部が消し飛んでいる。

  • 闇魔界の覇王/King of Yamimakai
  • 闇魔界の戦士 ダークソード/Dark Blade
  • 闇魔界の竜騎士 ダークソード/Dark Blade the Dragon Knight
  • 闇魔界の契約書/Dark Contract with the Yamimakai
キングオブヤミマカイという時点でだいぶネタ臭が凄いが、固有名詞であると考えればギリギリ筋は通る。
しかし何故かダークソード関係ではYamimakai成分が消失、ただのDark Bladeになった。
そして時を空けて登場した闇魔界の契約書ではKONAMIが闇魔界=Yamimakaiであることを思い出したのか再びYamimakai成分が復活した。
もし「闇魔界」がカテゴリ化しようものならエラッタは不可避であろう。
なお闇魔界の契約書にはダークソードのイラストが描かれているのだが、英語版ではYamimakaiではないDark Bladeさんが何故かいるという不思議な事態になってしまった。

  • カクタス/Akihiron
あまりにも謎すぎる単語が宛がわれてしまった例
当然、英語にこのような単語はない。
そのまま「カクタス」だとサボテンになってしまうため変えるのはおかしくないのだが、何も謎の言葉にしなくても……
一応、TCGでは未発売で遊戯王オンライン等で設定された英語名ではあったのだが……

見た目は単眼の得体の知れない化け物なのだが、まさか名前まで得体のしれないものになるとは思うまい。

なお、後に出てきた「メメント・カクタス」はもちろん「Mementotlan Akihiron」。
こちらはTCGも出ているため、完全に正式名となった

  • 魔物の狩人/KOJIKOCY
カクタス以上に謎言語を宛がわれてしまった例
KOJIKOCYなんて言葉は当然英語にはなく、まだ一応アキヒロンなカクタスと違い意味すら不明。マジでなんだこの名前。

「beast hunter」など*2ではダメだったのだろうか……?

  • バビロン/MEOTOKO
大きな目を持つ怪物なのだが、見たまんまの名前を付けられてしまった。
そもそも元が「バビロンって何?」って言いたくなるモンスターではあるのだが……

ちなみに色違いの「悪魔の偵察者」は「Hiro's Shadow Scout」で、悪魔=Devilが使えないためまた変な名前が入っている。
一応、コザッキーの関連者らしいが……

  • ナイル/Misairuzame
ミサイルを腹にくっつけた魚、と言うことで見たまんま英語化……じゃなくてなぜかローマ字で訳された
しかもサメだけではなくミサイルの方までローマ字
「missireshark」じゃダメだったのだろうか?

そもそもコイツ、日本語版ではサメと明記されていないジャンジャジャ~~ン!!英語版で発覚する衝撃の真実ゥ!

  • 斬リ番/You're Finished
  • BBS/That's 10!
キリのいい訪問カウンターを無視されてご立腹な電脳世界のスケバンと、その数刻前のキリの良い数字に喜んでいる様子。
2000年代の日本におけるインターネット文化「キリ番」、および「キリ番報告」や「踏み逃げ」を題材にしたシリーズなのだが、海外にはそのような文化は存在しない。
ということで前者はイラストイメージから「テメェは終わりだ」といった感じのカード名になり、後者もイラストの状況を直訳した感じの内容となっている。

いや正体バレとるがな。
確かに見た目が元になった人物そのままではあるが、モロにウィンダと書かれたらもう隠しようがない。


英→日の珍訳・迷訳

英→日で妙な翻訳になるケースも散見される。
主に、アメリカのUpperDeck社によって英語版の先行販促カードが販売されたあと、英→日に翻訳された、というものが多い。
これだけでも一苦労なのだが、よせばいいのにKONAMIは日本語の汎用性を悪用して生かして無茶な邦訳をし、ネーミング被害者が続出することとなる。 

  • スクラップ・デスデーモン/Scrap Archfiend
「このカードなんて言うんだ?」
「これは《Scrap Archfiend》というんですよ。海外先行カードで9月になれば使えますよ」
Scrap→スクラップ
Archfiend→デーモン*3
なので日本語では《スクラップ・デーモン》以外ありえないだろう。……とおもーじゃん?
で、迎えた9月。
《スクラップ・デスデーモン》
どっから湧いたその単語!?スクラップは「デス」の単語とは無縁なカテゴリだろうが!?
いや、まぁ、フレムベル・デスガンナーとかはいたけど……。

  • アレキサンドライドラゴン/Alexandrite Dragon
英名を見てもらえばわかるが、teにあたる部分が抜け落ちている。
太平洋のどこかに「ト・」の字を落としてきたのだろうか?

  • オーシャンズ・ーパー/Ocean's Keeper
どう見てもわかるレベルの誤植を直されなかったまま日本語化。
KONAMIはこの件について完全に開き直ったようで、この後登場した《Abyss Keeper》を《アビス・ーパー》と訳する始末。

そのまま「トーテム・ドラゴン」とかでよかったんじゃ……。
とはいえ、そもそものカードイラストがTHE・民芸品といった感じのキモカワデザインなので、「『ミンゲイドラゴン』って名前、よく見るとピッタリじゃね?」という形で再評価される向きもあり、そこまで酷いネーミングでもなさそうである。

この手の話題でよく槍玉に挙げられるカードのひとつ。
元名は「Tour Guide From the Underworld(冥界より来たりしツアーガイド)」という名前だったのだが、
日本に来る際に「魔界発現世行きデスガイド」という猛烈にダサいネーミングにされたことで話題になった。
とはいえ、「バスガイド」に引っ掛けられている分マシ、そもそもデスデーモンに引っ張られて巻き添え的に叩かれただけで元々そんなにダサくもないという意見もある。
KONAMIはやっぱり開き直ったらしく、
「魔界の警邏課デスポリス/Beat Cop from the Underworld」
「魔界特派員デスキャスター/Muckraker From the Underworld」
という関連カードも出している。これらはバスでもなんでもないので完全に「デスガイド」に引っ掛かっている。

迷訳というよりはニュアンスの大幅な変化が起きたパターン。日本語名はシリアスなのに対し、初出の英語名はとてもコミカル。
元々このテーマは唐突なUMAとの遭遇を由来としており、遭遇者の驚く様子をそのままカード名にしているというものだった。
例えば「未界域のチュパカブラ」なら、向こうでは「Danger! Chupacabra!(げっ!チュパカブラが出てきたぞ!)」という感じ。
「未界域の歓待」なら「You're in Danger!(今、とてつもなくヤバい状況!)」、「未界域の危険地帯」なら「Danger! Zone(すっごく危ない場所!)」と、終始真面目な日本語訳版とは裏腹に原語版ではとにかくはっちゃけまくっている。

こちらも迷訳というよりはニュアンス変化。日本語訳は元の名前の直訳なのだが、元々の英語名は秀逸な言葉遊びとなっていた。
このテーマは「英単語の一部には一般的読みと異なる変な読み方がある」という事を皮肉った「Ghoti(フィッシュ)」を由来としており、それに因んでモンスター名も世界各国の「魚」に関連する単語のアナグラムが使われていたのだ。
「Fish」→「Sifh(シフ)」、「Opsarion(ὀψάριον)」→「Arionpos(アリオンポス)」、「Mulgogi(물고기)」→「Guoglim(グオグリム)」、「Sakana()」→「Askaan(アスカーン)」と、実は結構凝ったネーミングである。


面白い英訳

日英で同じシャレを成立させていたり、ちょっと味のある訳し方をしていたり……
という、思わず唸るような訳し方をされたものもある。

  • 弱肉一色/The Law of the Normal
英語における「弱肉強食」にあたることわざ「The Law of the Jungle(ジャングルの掟)」をもじった英語名。
通常モンスターに関するカードなので、このカードは「The Law of the Normal(通常モンスターの掟)」としてある。

  • ガエル・サンデス/D.3.S. Frog
「デスガエル/Des Frog」三匹で融合召喚できる融合モンスター。
「Des」の「E」を逆さの「3」にして表記する、という遊び心の感じられるカード。

  • 異界の棘紫竜/Interplanetarypurplythorny Dragon、異界の棘紫獣/Interplanetarypurplythorny Beast
やけに英語名が長いが、これは「Interplanetary(異界の)」・「Purply(紫)」・「Thorny(棘)」の3つの形容詞を繋げた掛詞。
これを日本語にすると「異界の棘紫」で全部表せてしまうのが日本語のすごいところである。

  • 代打バッター/Pinch-Hopper
日本語は「バッタ」と「代打バッター」の掛詞だが、英語も同様に「Hopper(バッタ)」と「Pinch-Hitter(代打バッター)」が掛かるようになっている。

  • ギョッ!/Oh F!sh!
「Oh F!」で「うおっ!?」「sh!」で「クソッ!」といった意味で、
意訳すると「クソっ、びっくりさせやがって!」といった感じになる。
で、!をiと見立てれば「Oh Fish!」(うおっ、魚だ!)とも読めるようになっている、二重仕掛けのネーミング。

  • 「カラクリ」モンスター
「カラクリ」は「カラクリ小町 弐弐四(ニニシ)」のように、九九と掛けたようなネーミングが特徴的。
これを英語ではどう表現するのか?が注目されたが、その答えは
「カラクリ小町 弐弐四/Karakuri Komachi mdl 224 "Ninishi"」。
数字部分を「mdl*4」…「型番」として表記し、読みである「ニニシ」を機体名のように扱うという個性的なネーミングとなった。
意訳するなら、「カラクリ小町224号『ニニシ』」といった感じである。

  • 青天の霹靂/A Wild Monster Appears!
「青天の霹靂」という意味の慣用句は英語にもあり、これは英語では「Out of the Blue」になるのだが、このフレーズはすでに「急転直下/Out of the Blue」という別のカードに使われている。
で、「青天の霹靂」に当てはめられたのが「A Wild Monster Appears!」なのだが...
これは訳すると「あっ! やせいの モンスターが とびだしてきた!」という意味。
英語版のポケモンで有名なフレーズであり、それを意識したものだろう。

英語名について、英単語は一切ない。
「亀は神であった」「神は亀であった」という意味を示すようにラテン語のみを用いて表記されている。

  • マインド・ハック/Mind Haxorz
後半の「HAxorz」だが、これは「Leet語」と呼ばれる暗号の一種。
検閲を回避する伏せ字のようなもので、ハッカーの文化圏で使われていた表記法である。
こう書くと何やら高度な事をやっているかの様だが、要は文字を崩して別の文字を当てるという英語版ギャル文字と言うべきものである。

寿司な軍艦という異食異色のテーマ。
寿司/Sushiと船/Shipを掛けたネーミングは洒落が効いている。
Gunkan表記しているのにわざわざ原語にないSushipが追加されているのも異色なポイント。

「Tractrix(牽引線)」をベースに、「Trap(罠)」と「-trix(女性の行為者を表す接尾辞)」と「Trick(策略)」と三重の名称のを掛けた掛詞。
余談だが、「Trap」は「男の娘」という意味としても使われるし、植物の多くは基本的に雌雄同体なので、セラたんやフレシアたんはうわ何をするやめr

おどろおどしい和風ホラーテーマの蕾禍だが、英語名は北欧神話における世界終末を指す「Ragnarok」とかけ合わせた造語となっている。
イラストでも黄昏時の合戦場に立つモンスターが多いので、「神々の黄昏」という意味のラグナロクと合わせたのだろうか。

「強制的な支配」を意味するジャックにオーディオ機器のジャック端子をかけた名前のテーマだが、英語名は一見すると「機械の騎士」と言わんばかりの直訳。
しかしこちらも中々に凝った名前で、実はイスラム教における聖地「Makkah(メッカ)」のつづりを取り入れたもの。
「機械」と「聖地」の騎士、2つ合わせて「機界騎士(Mekk-Knight)」という事なのだろう。

そんな上記ジャックナイツが闇落ちして怪物化したテーマがこちら。「トロイの木馬」と「Nightmare(悪夢)」を合わせた名前。
英語名は元になったジャックナイツも意識したのか、「Knight」と「Nightmare」のかばん語となっている。
シンプルながらも語呂が良く、背景もわかりやすい秀逸な翻訳。

鏡餅を餅ーフ……じゃなかった、モチーフにしたカードだが、英語圏には鏡餅はおろか餅さえ普及していない地域も多く、「餅」を使ったネーミングは厳しい。
ということで、このカードの名前は「これマジで超ヤバい」という意味の俗語「Totally Awesome」に、「ヒキガエル」を意味する「Toad」を含めることで、「マジで超ヤバいカエル」という名前が成り立つようになっている。
もっとも、その「マジで超ヤバい」性能のおかげで禁止カードになってしまったわけだが……

  • 赤酢の踏切/Sour Scheduling - Red Vinegar Vamoose
日本における「開かずの踏切」をモチーフにしたカード。
開かずの踏切とは、電車と電車の間隔が狭すぎてほとんど空いている時間がない踏切のことを指すのだが、これは電車のダイヤが超過密な日本ならではの社会問題であり、英語圏ではやっぱり通じない。
なので英語名では、やたらめったら長い貨物列車のせいで踏切が上がるまで延々と待たされる様子にたとえて「酸っぱい時刻表 - 走り去る赤酢」といった感じの訳がなされている。前半の「Sour」は、酸味を表すだけでなく「不愉快な」という意味もあるので、「赤酢の貨物列車の、不快感をもたらす時刻表(ダイヤ)」という意味にもなる。

英海軍のキングジョージV世級戦艦が「His(Her) Majesty's Ship(国王(女王)陛下の艦)」に因む「HMS King George V」、米海軍のアイオワ級戦艦が「United States Ship(合衆国艦艇)」に因む「USS Iowa」と呼ばれるのと同様のいわゆる艦船接頭辞というやつで、B.E.S.も「Bacterian Empire Ship(バクテリアン帝国戦艦)」の頭文字を取ったもの。
このテーマ、KONAMI製のシューティングゲーム「グラディウス」に登場する敵キャラがもとになっており、「バクテリアン帝国」という"いかにも"な名前はそこに由来する。

  • 悪魂邪苦止/T.A.D.P.O.L.E.
「悪魂邪苦止」と書いて「おたまじゃくし」と読ませる、日本語ではあるあるなネーミング。
が、翻訳家にとってはしばしば悩みのタネになるトピックでもある。というのも、日本語は表意文字ゆえに「意味の詰め込み」がしやすい上に当て字でルビを振ることができてしまうため、英訳する際にその意味をすべて拾い出そうとすると長くなってしまうのである。(例を挙げれば、上記の「異界の棘紫竜」なんかがそれにあたる)
このカードに関しては苦心の末にネーミングを諦めてしまったらしく、おたまじゃくしの英名である「tadpole」を無理やりアクロニムっぽくした「T.A.D.P.O.L.E.」というヤケクソネーミングとなってしまっている。
英訳者を泣かせたらしき痕跡のあるカードは他にもあり、
「天霆號」を「Divine Arsenal」「Sky Thunder」としつつも「神の否定(ネガロギア)」が消えている《天霆號アーゼウス》などがある。

  • 鉄獣戦線 凶鳥のシュライグ/Tri-Brigade Shuraig the Ominous Omen
  • 鉄獣戦線 徒花のフェリジット/Tri-Brigade Ferrijit the Barren Blossom
  • 鉄獣戦線 銀弾のルガル/Tri-Brigade Rugal the Silver Sheller
  • 鉄獣戦線 塊撃のベアブルム/Tri-Brigade Bearbrumm the Rampant Rampager
鉄獣戦線のリンクモンスター達。全て二つ名が同じイニシャルから始まる韻を踏んだ二文となっている。
更には「凶兆(Ominous Omen)」「徒花(Barren Blossom)」「銀の砲撃手(Silver Sheller)」「制御不能の暴れん坊(Rampant Rampager)」と日本語名ほぼそのままの意味か、近い意味になる言葉がチョイスされているという芸コマっぷり。

  • 蕾禍ノ武者髑髏/Ragnaraika Skeletal Soldier
  • 蕾禍ノ御拝神主/Ragnaraika Mantis Monk
  • 蕾禍ノ玄神憑月/Ragnaraika Selene Snapper
  • 蕾禍ノ鎖蛇巳/Ragnaraika Chain Coils
  • 蕾禍ノ大王鬼牙/Ragnaraika Stag Sovereign
韻踏みシリーズその2。色々と鉄獣に似たテーマである蕾禍だが、リンクモンスターの命名規則も同じようなもの。
特に秀逸なのは蕾禍ノ玄神憑月の英語名である「Selene Snapper」。SnapperはカミツキガメでSeleneは月の女神なので、意味合いとしては神月亀(カミツキガメ)といったところだろうか。

  • プランキッズ・ウェザー/Prank-Kids Weather Washer
  • プランキッズ・ロケット/Prank-Kids Rocket Ride
  • プランキッズ・ハウスバトラー/Prank-Kids Battle Butler
  • プランキッズ・ミュー/Prank-Kids Meow-Meow-Mu
  • プランキッズ・ドゥードゥル/Prank-Kids Dodo-Doodle-Doo
  • プランキッズ・バウワウ/Prank-Kids Bow-Wow-Bark
  • プランキッズ・ロアゴン/Prank-Kids Rip-Roarin-Roaster
韻踏みシリーズその3。プランキッズもEXモンスターは全て韻を踏んだ名前。
特に様々な動物に擬態するリンクモンスターの名前は文字通りやかましい仕上がり。

  • 夢幻吸収体/Neverending Nightmare Absorber
オマージュ元ともいえる魔力吸収体は先に述べた通りだが、こちらはしっかりと意味のある英文。意味合いとしては「終わらぬ悪夢を集める者」だろうか。
しかもこいつ、イラストを見てもわかるように「星杯の妖精リースが機械の身体で復活しようとしている」という非常に不穏な一枚*5で、そこにこの英語名称が加わることでさらなる胡散臭さを醸し出している。
リースと関係の深いトロイメアは上記のように「Knightmare(ナイトメア)」という英語名なので、「Nightmare(ナイトメア)」が名前に入っているのも偶然ではないだろう。

  • ヴェルズ/lswarm
ルール上、「インヴェルズ/Steelswarm」はすべて「ヴェルズ/Evilswarm」にも属する、という特殊な事情を抱えたカテゴリ。
本来、「ヴェルズ」のカテゴリ名は「Evilswarm」なのだが、インヴェルズを含ませるために「Steelswarm」「Evilswarm」と、後半の文字列だけをカテゴリ指定して対応している。
訳者の芸の細かさが垣間見えるネーミング。



カテゴリ名の都合や名称の違いで問題になったカード

遊戯王は仮にもカードゲームなので、「カテゴリ名」の範囲は日英できちんと統一されていなければならない。
たとえば、「ガエル」というカテゴリは「鬼ガエル」を含むが、同じガエル関連カードの「粋カエル」は含まれない。
つまり、「鬼ガエル」に「Swap Frog」、「寝ガエル」に「Flip Flop Frog」という英語名を使ったら、「ガエル」ではない「粋カエル」や「サシカエル」には「Frog」という単語を使ってはいけないのだ。
この辺も翻訳者泣かせなところで、中にはこのカテゴリ名の都合で英語名が変更されたものもある。
ちなみに、「カエル」の英語名はヒキガエルを意味する「Toad」を使い、「粋カエル/Ronintoadin」、「サシカエル/Tradetoad」としてある。

  • HERO
主人公・十代も使っていた超有名カテゴリ。
この時既に「オシロ・ヒーロー/Oscillo Hero」という無関係なカードも存在していたので、日本語では「HERO」としていたところを「Elemental Hero*6またはDestiny Hero*7」という指定の仕方をしていた。
それが、覇王十代が使った「E-HERO」の追加を皮切りに、「M・HERO」、「V・HERO」とHEROがどんどん追加されたせいで、「Elemental HeroまたはDestiny HeroまたはEvil Hero*8または...」と書く羽目に。
とうとう耐えきれなくなったKONAMIはHEROカード全てのカード名を修正する大規模エラッタを敢行
現在では大文字で「HERO」と書かれたもののみをHEROとして扱い、先述の「オシロ・ヒーロー」は「『Hero』なのでHEROには含みません」という形に落ち着いた。
※補足するとここでいう大文字とはフォントサイズが頭文字と同じという意味合いであり、オシロ・ヒーローの英名表記自体は「OSCILLO HERO」だが、頭文字のOとH以外のサイズが小さくなっているというものである。

  • ウィジャ盤/Destiny Board、死のメッセージ/Spirit Message
「D」「E」「A」「T」「H」のカード5枚全部を揃えて「DEATH」にすると特殊勝利できるカード群。
ただ、英語ではなぜか「DEATH(死)」の代わりに「FINAL(終わり)」となっている。
日本語と英語でまるっきり内容が違う上に、どちらにも含まれる「A」が全く別のカード扱い*9なので、一時期はこの「ウィジャ盤」一式に限り、日本語版と英語版を混ぜてはいけないという特殊ルールが設けられていた。

  • デーモン/Archfiend
「堕落/Falling Down」等で指定されている大規模カテゴリ。
ただ「デーモン」が悪魔系モンスターによく使われる頻出名詞だったばかりに「日本語ではデーモンだが英語ではデーモンじゃない」というカードが多く、混乱する海外プレイヤーが続出。
一時は「デーモン」に含まれるカードを集めた専用のリストが海外で作られ、それを見て判断するという荒療治が取られたこともあった。
現在は「※このカードは『Archfiend』と名の付いたカードとして扱います」という注記が足された為、見分けることができるようになっている。
ちなみに、「悪魔」は単純に訳すと「Devil」だが、デーモンの訳語として使われている「Archfiend」は「高位の鬼」という意味である。

上記デーモンと同じパターンで、コナミの苦労が察せられる。
まずガーディアンはとあるサポートカードがわざわざ「5枚もの『○○を除く』」という特例的な別途指定を記述することで対応。
魔人はエクシーズ以外を、魔導はレベル3以外を全てハブにすることで対応。
究極宝玉神は漢字の部分を略してカード化したせいで日本との裁定の違いが生じたばかりか後からのカードの追加に対応できないという自体になったので、左記のカテゴリ名を後付けすることによって急遽対応。
Vampireに至っては一部適当にVampireと付けていたカードがあったため、日本がそれに配慮してカテゴリ名+闇属性指定をかけておいたのに、よりにもよって海外先行カードで属性指定を取っ払っちゃったので結局先の一部カードをエラッタして対応。




カテゴリに含まれてそうなのに含まれていないカード


遊戯王には、名前がすごく似ているのにそいつ自身はカテゴリに入ってないというなんともややこしいカードがいくつか存在する。
ただのネーミングミスだと済ませられたらよかったのだが、実際のところはパロディであえて似せた名前にしたとか、そいつを含まないことでバランス調整や世界観設定を表現しているとかいうちゃんとした理由でそっくりな名前になっていることが多い。
つまりは英語名表記においてもその原則を守らねばならないと言うことで、それゆえに翻訳者を泣かせたであろうカードも紹介する。


実はヴェノムには属していない毒蛇神様&毒蛇王様。
読みをそのままにしつつカテゴリから外すためにnを付け足して工面している。
なお《ヴェノム・スワンプ》の効果の範囲内になってしまうが、そこはそれぞれの耐性で食らわないようになっている。

  • ヌメロニアス/Numerounius
    • 元カテゴリ:ヌメロン/Numeron
実はヌメロンには含まれないナンバーズ。
こちらは、uでうまいことカテゴリから外している。

  • ブラックフェザー・ドラゴン/Black-Winged Dragon
    • 元カテゴリ:BF/Blackwing
シグナー竜の一角。
日本語だと「『BF(ブラックフェザー)』に『ブラックフェザー』は含まれません」という初見では超ややこしい裁定になっているが、
英語だとその差が幾分かわかりやすくなっている。カテゴリのほうがシンプルに「黒い翼」なのに対して、ドラゴンのほうは「黒い羽ばたき」といった感じ。
なお、漫画版の表記のイザコザの結果かブラック・フェザーと中黒が入っている決闘竜な玄翼竜の方の英名は「Blackfeather」となっている。

  • 青眼の銀ゾンビ/Blue-Eyed Silver Zombie
    • 元カテゴリ関連カテゴリ:ブルーアイズ/Blue-Eyes
社長の嫁とは特に縁もゆかりもないアンデット族。
「ブルーアイズ」は龍なので目が2つ、だから複数形の「Eyes」なのに対して、ゾンビは口の中にある単眼、つまり一個だけなので「Eyed」。
まあ、これ自体は元々のカード名がそうであり、それをそのまま英語表記した形なのであるが、
その後登場したストラクチャーデッキを元ネタとしたカード《青眼龍轟臨》がTCG化した際にはブルーアイズではない青眼を表現するために「Blue-Eyed」が再登場を果たしている。

  • 落とし大穴/Darkfall
    • 元カテゴリ関連カテゴリ:落とし穴/Trap hole
蟲惑魔のサポートを受けられそうで受けられない通常罠。「落とし穴」の英語名が「Trap hole」で「ホール」の英語名が「hole」なので、
どちらも含まない「fall(落ちる)」となっている。
なお、かつては「Dark Trap Hole」というカード名だったが、「落とし穴/ホール」のカテゴリ化に伴い、外された。

  • 祝福の教会-リチューアル・チャーチ/Ritual Sanctuary
  • 傀儡儀式-パペット・リチューアル/Puppet Ritual
    • 元カテゴリ関連カテゴリ:リチュア/Gishki
BFと同様、日本語名のほうが面倒くさくなっているケース。
不用意に「リチュア」という一般詞を使ってしまったばっかりに命名に「リチュア」を含まないようにリチューアルで統一しなければいけなくなった日本語名に対し、
「Gishiki(儀式)」という日本語読みを少しアレンジして使う解決方法をとった英語名ではシンプルに「Ritual」と表記できるようになっている。
因みにリチュアモンスターの儀式体は「Evil(イビル)(悪)」を接続した「イビリチュア」だが、英語表記は「Evigishki(イビギシキ)」。そこは「アクギシキ」とか「ワルギシキ」とかじゃないんか

  • シンクローン/Synkron
    • 元カテゴリ:シンクロン/Synchron
遊星が多用するチューナーモンスター群。
元々は単に「遊星が使うチューナーの集まり」だったのが後にカテゴリ化、「シンクロン」という名前自体に強さが生まれてしまったため、迂闊にシンクロンの名を冠させると二つ以上のカテゴリに属し、複数のサポートカードの恩恵を得られるようになるようになってしまった。
後にシンクロンから除外させる為に「シンクローン」という名称のチューナーが生まれ始めたのに対し、英語では逆にどちらも「シンクロン」な一方で綴りを微妙に変えるという形で差異を生じさせている。



大人の事情

冒頭で述べたように、海外では「神」を始めとした宗教用語を気軽に使うことが出来ない。
なので、意図的に原型を留めないような名前にされることもしばしば。
その他にも、現地での事情から名前が別物化する事もある。

カテゴリ名そのものは原型とあまり変わらないが、属するモンスター名が色々と工夫されている。
どちらも「邪悪の樹」に関連する名前を持ち、それぞれが「樹に対応する悪徳の種類」と「その悪徳を司る悪魔」の名を持つが海外ではキリスト教的タブーに引っかかってしまう。
そこでクリフォートはクリフォート・エイリアス→Qliphort Stealth(クリフォートのステルス機)やクリフォート・ツール→Qliphort Scout(クリフォートの哨戒機)という風に、イラスト通りかつ機体の種別・形式を指すような名前へと変更。
インフェルノイドも各国の数字を名に取り入れ、「インフェルノイド○○号」といった感じの名前へと変わっている。

  • マスター・ピース/Halfway to Forever
アニメZEXALのラストデュエルで登場した罠カードで、アニメ一期主題歌であるmihimaru GTの「マスターピース」を題材とした一枚。*10
一方で海外版ZEXALはアニメの為に結成されたTake a Chanceなるバンドの「Halfway to Forever」という別の曲が主題歌となっていた為、違和感が無いようにカード名もそちらに変更されている。


その他

  • 7(セブン)7
遊戯王史上初、日本語名も英語名も読み方も全く同一のカード。
カード名が英語のみのカード自体はこれ以前にも以降にも存在したが、それらは大文字小文字の違いがあったりルビが振られていないために読み方が違ったりと、完全に同一なカード名をしているのは長らくこの《7》のみだった。
後にTGのOCGオリジナルサポートカード群など、カード名がアルファベットのみのカードの中には同様の例が増えて来ている。


日・英語以外の変わった翻訳

  • らくがきじゅう-てらの/Doodle Beast - Tyranno
中国語版だと「涂yā兽-bào龙」。
らくがきじゅう関連は日本語だとひらがなで幼い感じを出しているが、中国語では漢字ではなく発音表記にすることで漢字のまだ書けない子供感を出しているという妙訳である。


追記・修正は日本語訳の予想を当ててからお願いします。


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最終更新:2025年04月21日 21:26

*1 例:バージェストマ、彼岸、ゴーティス、壊獣、未界域

*2 フレーバーテキストに沿うなら、人を襲う狩人という意味合いがわかる名前の方がよいかもしれないが。

*3 遊戯王においてデーモンの英訳に宛てられている。

*4 Modelの略

*5 かいつまんで言えばこのモンスターが星遺物関連ストーリーのメインヴィランにして全ての元凶。

*6 E・HERO

*7 D-HERO

*8 E-HERO

*9 日本語版の「A」=英語版の「N」、英語版の「A」=日本語版の「T」

*10 他にもこのデュエルではマスターピースの歌詞由来の召喚口上を持つモンスターが登場したりした。