鬼舞辻無惨

登録日:2017/03/20 Mon 14:49:00
更新日:2024/04/21 Sun 21:52:27
所要時間:約 74 分で読めます


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いともたやすく行われるえげつない行為 まさに外道 エゴイスト クソ上司 コメント欄ログ化項目 チート ド外道 パワハラ パワハラの呼吸 パワハラ上司 ブラック上司 ラスボス 不条理 不死身 人類の敵 元人間 全部こいつのせい 共存不可能 十二鬼月討伐数No.1 名悪役 因果応報 変幻自在 外道 始祖 存在してはいけない生き物 小物界の大物 平安貴族 所要時間60分以上の項目 改心 最強の肉体 極悪人 極悪非道 死んで尚他人に不快感を味わわせる男 残忍 残虐 殺戮 汚いモモタロス 清々しいまでの外道 滅ぶべき存在 災厄 無様曝してもひたすら生き抜いた男 狡猾 理不尽 生きている者の敵 癇癪 相互理解不可 純粋悪 絶対悪 腐れ外道 自信過剰 自己中 自己中の極み 自己中心的 自己愛 自業自得 身勝手 逃亡系ラスボス 邪悪 関俊彦 鬼滅の刃 鬼舞辻無惨




───その男は暴力的な生命力に満ち溢れていた───

───火山から吹き出す岩漿を彷彿とさせる男だった───

───ぐつぐつと煮え滾り全てを飲み込もうとしていた───


私には何の天罰も下っていない

何百何千という人間を殺しても私は許されている

この千年神も仏も見たことがない



()()(つじ) ()(ざん)とは、『鬼滅の刃』の登場人物の一人である。

CV:関俊彦
演:佐々木喜英(舞台版鬼滅の刃)


◆プロフィール

  • 身長:179cm
  • 体重:75kg
  • 趣味:輸入される物品、外国語、新しい機械などを学ぶ
  • 死地:市街地

人間時代の名前は不明。

◆概要

1000年以上前に最初にになった全ての鬼の始祖で、炭治郎の家族を惨殺した最大の宿敵。

その血は鬼を作り出す能力を持ち、鬼を増やしながら暗躍する彼との交戦記録は戦国時代に一度のみ。
鬼殺隊の(少なくとも現在の)でさえ接触したことが無く、炭治郎が自分の家の惨状での犯人の臭いを憶えていた為、偶然街中で探り当てた。
それ以外は殆どの情報が出回らず、炭治郎が入隊するまで「名前」と「唯一鬼を生み出せる存在」であること以外全くの謎に包まれていた。


◆外見

見た目こそ普通の人間のようだが、老若男女問わず変幻自在に姿と気配を変えられる。
初登場時の外見は小洒落た黒い洋服を着込んで白い帽子を被り、黒髪をオールバックに纏めた美青年。付いたあだ名がマイケル・ジャクソン
後述の様にその容姿は様々に変わる。
共通してどの姿でも美形であり、色白の肌と紅梅色の瞳に猫の様に縦長な瞳孔が特徴。
なお、部下と対峙した際は女性だろうが少年だろうが元々の声なのか成人男性の声をしている。


◆人物像

間違った意味の天上天下唯我独尊を体現した、究極ともいえるエゴイスト
己が生きながらえる事以外に何の執着も示さず、「変化」を「劣化」と捉えて忌み嫌い、完璧な状態で永遠に変わらない「不変」を好む。
息をするように人を殺し、あるいは鬼に変え、「死ねば終わり」という理屈から殺してきた犠牲者を一切記憶せず、何の感慨も抱かない。
自分が成した全ての悪行を「天災」「自然の摂理」と称して「自分こそがこの世の道理」であると罪の意識を微塵も持たない生粋の冷血漢。
  • 罪のない人間を自分の欲望の為に犠牲にして一切顧みない
  • 鬼化した際に発生する極度の飢餓状態を伝えていなかった上に鬼の食人衝動に負けて家族を殺してしまった相手には「逆恨みも甚だしい」「家族を手に掛けたのはお前自身だから私は微塵も悪くない(意訳)」と主張
  • 犠牲者の敵討ちを願って戦う鬼殺隊を「異常者」と評し、自分は被害者であると心の底から信じて辟易する
  • 鬼に家族や仲間を殺された相手に「死んだ人間はもう生き返らないのだから、死んだ人間の事など忘れて日々を慎ましく生きればいい。人間とはそういうものなのに何故しない?(要約)」真顔で言い放ち、復讐のために戦う鬼殺隊を批判する
などその畜生発言にはいとまがない。
作者によれば人間的感性の持ち合わせがないため共感能力が著しく欠如しており、「人間というより昆虫に近いのかもしれない」とのこと*1

そういった言動の数々から最終決戦で対面した炭治郎は「存在してはいけない生き物」「腹の底まで厭悪が渦を巻く」と嫌悪した。
元側近として無惨を知る珠世には「臆病者」「いつもなにかに怯えている」「死ねば良かったのに!!生き汚い男!!」と罵倒した。
作中でも屈指の愛情と優しさを持つこの二人からの評価が全てを物語っている。

おまけに読者からは総じて「無惨様のパワハラと呼ばれるほどの徹底的な「実力」「結果」「成果」至上主義者
時には配下の鬼をおだてて忠誠を得ようとするが、自身を慕う部下であろうと使えなければ容赦なく使い捨てる。
鬼が徒党を組んで反逆しないように共食いの性質を与えて組織的行動をさせず、自分の名前を少しでも喋ったり情報を漏らそうとすれば自動的にその鬼を抹殺する仕組みまで用意している*2

その基準はその時の無惨自身が納得できるか否かであり、最強の手駒であろうと、どれだけ頑張っても、ある程度の成果を挙げたとしても、そんな事は関係ない
成長に伸び悩んだり、地位に胡坐をかいて努力を怠ったり、自分の求める成果を上げられなければ平然とパワハラ会議で罵倒し、場合によっては惨殺する
中には依怙贔屓お気に入りの鬼もいるが、気に入った鬼とそうでない鬼との扱いは雲泥の差*3、ただし実力至上主義の根本は変わっておらず、階級の優遇等はしない。
ガイドブックによればこれでも1000年以上かけて落ち着いたらしく、人間時代は妻を5人ほど娶りながらも、毒舌でいびり倒して全員自殺に追い込んでいる。
人間の負の心理を読むことに長けた酷たらしいほどの毒舌家であったとの話だが、劇中以上の酷さとなるとまさに想像を絶していたのだろう。


致命的に運が無いのと癇癪持ちなだけで、時折見え隠れする異常な狂気や周到さは「悪役」を否応なく感じさせる。
だが特徴だけを列挙していくと「底の浅い人間性」「器の小ささ」「どうしようもない愚かさ」が浮き彫りになる
頭の良さは良好な部類だが、自分の性格的な問題点を一切省みず改善の意志も全くないので、反省というものができない。
そのせいか1000年以上人間社会に紛れ込んで生きている割には短気で傲慢な気性が原因で大きな墓穴を掘りまくる
そんな致命的な欠点を抱えるので、ラスボスらしい「カリスマ性」「美学的要素」「超越的な要素」など殆ど見せない、偏執的で、むしろ人間らしい

一応フォローすると一から十まで全てにおいて考えなしの脳筋というわけでもなく、「決断力」「判断力」「思考力」はかなり高い。
とりわけ「自身の生存」が関わる時のそれはずば抜けており、自身の敗北の可能性が僅かにでも生じた場合、例え長時間に及ぶ戦いの最中であったり遙か格下が相手であっても、プライドを捨て一目散に逃げ出すことに一切の抵抗がない。
これは無惨を厄介たらしる要因の1つである。
その上一度撤退を決めれば例えどんなに口汚く煽られたり挑発されようとも、苛つきこそすれど全力で逃走に徹し、どんな形であろうと絶対に逃げ切る。
非戦闘時には擬態や無限城を駆使して安全圏に位置取りながら鬼殺隊との交戦を徹底的に避け、呪いで機密を漏らせない部下を用いてきた。
過去に自身を討伐寸前に追い込んだ縁壱の場合は、恥も外聞も捨てて逃げ出した後に縁壱が寿命で死ぬまで雲隠れし続けるという不老不死を最大限活用した反則技を取ってまで再戦を拒否。
縁壱が死んだ後も日の呼吸を知る者を黒死牟と共に殺して回るという念の入れようである。
このように生きる為ならプライドを捨ててどんな手段でも使う在り様は、「生きることだけに固執している生命体」と例えられた。

一方で、
  • 炭治郎に遭遇してトラウマが発動し、通行人を一人だけ鬼化させて逃走
  • 酔っぱらいに絡まれた時は謝って去る気だった
  • 妻子諸共自爆した産屋敷耀哉にドン引き
  • 感情がないのに感情があるフリをする童磨を苦手に感じる
など、妙に現代的な感性も持つ。
また鬼になっても大なり小なり人間時代の記憶や過去に囚われ、時には所業や在り方を悔いて配下が自滅するなかで、無惨にはそういった感受性は存在しない
自分の過去や人間性に恥を憶えず、そんな心の機微など微塵もなく、自分本位極まりない最悪の精神性は(メタ的に見ても)極めて驚異。
何しろ猗窩座のように全てを失ってなお迎えに来てくれる人も、黒死牟のように生き恥を知る矜持や誇りすらなく、童磨のように空虚から来る脆さもない。
そもそも生まれた時から自分以外全てがどうでもいいと考えているため、人間性が原因で自滅する要素がない
一部読者には「底辺と思っていた株が更に下がって恥知らずになる事に比例して脅威度が増していく」と斬新な評価までされた。

まさに全ての鬼の頂点に立つ存在である。


癇癪


私の顔色は悪く見えるか

私の顔は青白い(・・・)か?病弱(・・)に見えるか?長く生きられない(・・・・・・・・)ように見えるか?死にそう(・・・・)に見えるか?

違う違う違う違う

私は限りなく完璧に近い生物だ

無惨の抱える人格面における致命的な問題点。
恐ろしいほど自己中心的で、尚且つとんでもなく短気で気難しい癇癪持ちであり、最早理不尽の域に達している。
その名の通り怒りの沸点が異様に低いため、逆鱗に触れてキレる要素が数多いのである
酔っ払いの一般人が「青白い顔」と無惨を小馬鹿にした際は、それまで争いを好まないかのように大人しかった態度を180度変えて素手で殴殺。
更に上記のように執拗に自分が「死にそうに見えるか」と血走った眼で淡々と問い詰め続けてから惨殺するという異様さを読者に見せつけた。
ちなみにこの狂気発言、公式に癇癪である。

劇中でキレた要因としては
  • 自身の命令が中々遂行されない
  • お気に入りの十二鬼月のメンバーが死ぬ
  • 一般人に「病弱そう」と言われる
  • 下弦が柱に何度も殺され入れ替わる情けない姿を晒す*5
  • 部下が心の中で自身への不平不満を言った
  • 別の部下が嘘をついて自分の言葉を否定した
  • 更に別の部下がパワハラ制裁中にビビって逃げ出した
  • 配下に指図された
  • メインの命令が達成されてないのに、敵である鬼殺隊の柱*6を殺したことを報告される
  • 何百年も目的のものが見つからず、鬼殺隊も滅ぼせていない
  • まだ裏付けの取れていない不確定情報をプレゼンされる
  • 治療の効果が中々出ない
  • 弱体化しているとはいえ、ただの蛇に攻撃を見切られる
  • 喰った相手の細胞から色々聞き出そうとして逆に煽られる

これらが現在までに無惨の逆鱗に触れた要因、まさしく生きた地雷原と呼ぶに相応しい。
…というか、過去の経歴からして分かる通り、この癇癪が原因で鬼としての弱点の解決方法が分からなくなってしまっている。

当然逆鱗に触れれば最高位レベルの配下である上弦の鬼のように換えの効かない人材でも無い限り確実に処刑一直線である。
一応お気に入りの鬼であれば処刑されないこともあるが、その場合は大抵拷問を伴う制裁が課される。
これは上弦の鬼であろうと例外では無い
下弦の入れ替わり問題に関しては、現役の下弦達にこれまで死んでいった前任の下弦達の全責任を押し付けて問答無用で処刑が始まった
現役の下弦達にとっては完全に蚊帳の外の話であり、特に『下弦の陸』釜鵺は入れ替わったばかりで理不尽なことこの上ない。


他者との関係

配下の鬼に関して

誰にも自身に関わることを伝えず、部下の鬼に対してもお気に入り以外には理不尽かつ横柄に接する文字通りの暴君。
数多の鬼を生み出していたのは、手駒を増やすと同時に太陽光を克服できる稀有な特異体質の鬼を探す人体実験の一環でしかない。
そのため同族を増やすこと自体が千年間目的を果たせない屈辱と嫌悪の証でしかなかった。
実際劇中では鬼の存在を「増やしたくもない同類」とまで言い切っている。
つまり鬼へのブラックな仕打ちは、単純に「鬼の存在そのものが嫌いだから」でしかないのだ。
よってお気に入りでない鬼には地獄のような苛烈さを加えるが、お気に入りの配下には甘言を用いる事も多い。
が良心の呵責を感じていると「お前は悪くない。悪いのは周りなのだから、もっと自信を持て(要約)」とアフターケアに足を運んでいる。
また堕姫を「特別な鬼だ」と激励したり、打ち首寸前の半天狗を優しく勧誘する姿を見せている。
ただし、無惨の本心が鬼という種への嫌悪に染まっていることを考えると、真に特定の鬼を気に入っていたかは微妙な所。

人徳が皆無と思いきや、一部の高位の鬼からは忠誠を誓われているのもまた事実。
  • 無慈悲な自他への仕打ちに感動し忠誠を露わにした魘夢や玉壺
  • 出逢いの感動の余り、無惨を教団の現人神として熱心に崇拝した童磨
  • 無惨を主君と定めて忠誠を誓い、思考の読み取りによる恐怖政治すら「気を遣わなく済んで楽(要約)」と気楽に感じて許容していた黒死牟
などがチラホラいる。

ただし基本的に配下の鬼はあまり忠誠を示しておらず、 下弦の肆のように敵前逃亡をする鬼 がいたり、配下の鬼からはあまり慕われていない様子が窺える。
無惨のために鬼狩りを倒しているというより 自分の私利私欲(「強くなりたい」とか「復讐がしたい」など)や、無惨に処されるのが嫌だから という理由で鬼狩りを倒してる鬼が多い。
もっとも無惨から選ばれることを光栄に思ってる節はあるので、最低限の敬意自体はあると思われるが。

敵対している人物に関して

断片的に関わっている人間からは軒並みボロカスに言われている
元部下で無惨と関わりのあった珠世は上記の通り散々に酷評し、自身を殺そうとした鬼にさえ同情する炭治郎が一切同情の余地を持たなかった。
無惨と同じ血筋を持つ鬼殺隊のトップである産屋敷耀哉は、「一族唯一の汚点」と無惨への怒りと憎悪を向けている。
無惨自身も珠世や産屋敷一族には敵意を向けており、部下達に抹殺を指示している。
一方で人間に擬態している際の周囲からの評判は軒並み良く、身を隠す為とはいえ外面を良くする事は可能だし抵抗もない。

なお、炭治郎と同じ花札の耳飾りを付けた剣士にはとりわけ強烈な敵意を向けている。
これは戦国時代に己の頚を斬り落とす寸前まで至った、その剣士への恐怖から来るもの。
この時の体験はほとんどトラウマと言って良く、殺されかけた記憶が細胞レベルまで刻まれている
無惨の血を多く得ている十二鬼月のメンバーも無惨同様に同じ耳飾りを持つ炭治郎を警戒し、同時に存在自体が癪に障るという。
他の鬼よりも多くの血を受けた上弦の鬼に至っては、断片的に無惨の中の剣士の記憶を垣間見てしまうほど。
ただし、この記憶も恐怖でかなり誇張されたものであることがその剣士の回想で明らかになっている。

剣士がつけていた耳飾りは今もなお無惨の逆鱗に触れるようで、現在の持ち主の炭治郎に対しては度々刺客を送り込んでいる。
そんな行動が、因果応報とばかりに巡り巡って自分を少しずつ追い詰め、十二鬼月が切り崩されている
結果的に無惨の置かれた状況は盛大な自業自得ともとれる。


◆戦闘能力

人格面での欠点は多いが、戦闘能力は紛れもなく劇中最強格。
現代の鬼殺隊総戦力と一通り戦った上で尚「本来なら何の意味もない」「どの鬼狩りもあの男には劣る」「無駄な攻撃」と冷たく一蹴するほどに隔絶した力量差がある。
そして鬼の始祖らしく、鬼の細胞を破壊することで日輪刀を使わずとも鬼を唯一殺害できる特性を持つ。

肝心の基本戦術は技巧にも血鬼術にも頼らない『鬼』という種族特性と、筋力・スピード共に規格外の身体スペックに任せての力業のみ。
だが作者に「最強の肉体」と評されたほどの身体能力は、技術も糞もない「腕と触手を振り回すだけのゴリ押し」だけで痣と赫刀を発動させた柱5名を中核とした現代の鬼殺隊の全戦力を終始圧倒し続けた。
五感も人間離れしており、周囲の風切音や土煙の舞い方を僅かな時間観察するだけで体が透明化した者の人数・居場所を簡単に見抜いて攻撃を命中させることすら行なっている。

太陽」と「後先考えない短気な性格」以外に明確な弱点は存在せず、単行本解説でも「太陽光以外で殺すことはできない」と明言。
最終決戦で鬼殺隊が無惨と正面から戦えたのは縁壱が刻んだ赫刀の後遺症、耀哉と珠世が自分の命を捧げて無惨に重篤な弱体化を齎したからに他ならない。
もしこれが無ければ鬼殺隊側の勝ち目は間違いなく存在しない。
本編の最終決戦は大幅な弱体化後の戦闘であったため、完全態の無惨のスペックは未だ未知数*7。おまけに本来なら敗北の切っ掛けになった珠世の4種の薬も時間さえあれば全て無効化できていたという。
劇中では鬼殺隊の全戦力が死力を尽くして無惨の手駒を削り、無惨を無限城から叩き出し時間稼ぎをした事で、漸く炭治郎は無惨と正面対決ができる土俵に立てていた。

これほどの力を持ち、自身を「限りなく完璧に近い存在」と評して、それでもなお更なる高みを目指す 向上心の塊 でもある。
ただし自分が死ぬと全ての鬼が死滅するという欠点はある。


なお無惨は「死の淵を垣間見て生き残った生き物はより強靭になる」「死を回避する為に通常生きていく上では不必要だった感覚や力の扉が開かれる」という持論を持っている。
人間時代は産まれながら常に死と隣り合わせの病弱な肉体を持っていた反動で、今の最強の鬼の肉体を得たのかもしれない。


肉体操作

血鬼術の域にまで高められ、解説でも「能力」と明言されるまでに昇華された鬼の基本技能。
無惨の肉体は変幻自在であり、元の体積を上回るほど肉体を瞬時に変容させることができる。
姿形だけでなく気配、性別、衣服さえ別物にできる程の高度な擬態と変身を行える。
よって無惨の存在を固定された姿で認識した場合、思わぬ反撃を喰らってしまう。

なお動く素振りすら見せず一瞬で下弦の参や上弦の伍・玉壺の頚を斬り落としもぎ取る超常的な力を有している
…と思われていたが、後の描写から踏まえると異能でも何でもなく、単純に上弦の鬼すらも知覚できない速さで腕を伸ばして頭をもぎ取っていただけだったと考えられる。*8



擬態

肉体操作能力を応用した変装であり、その姿は青年、女性、幼子と変幻自在。
人間社会に潜伏し、資金源にしたり、人脈を情報収集に利用している。
無惨自身の手掛かりを残さないため、鬼殺隊が無惨を追えない最大の要因にもなっている。
人間社会に潜り込んで潜伏する行動方針も含めて、無惨の厄介さを支える能力の1つである。
共通して瞳は鬼特有の異形のもので、肌が病的に青白い。
また過去現在を通してペイズリー柄の着物や洋服を好んで着込んでいる。

ただ、最初に披露したのは炭治郎に見つかり、囮を生み出してすぐにその場から姿を眩ませた後。
まだ下っ端の戦力でしかない主人公との戦闘力の差を考えるとここまで変容させるのは慎重を通り越して臆病と言え、読者からは臆病者と認識される原因となっている。
なお、姿を変えること自体は身バレの有無は特に関係なく定期的に行い、人間関係を築くことに利用している模様。



瞬間再生

鬼は種族特性として高い不死性と再生能力を持ち、強さが上がるに比例して高まっていくが、無惨の場合肉体操作同様不死性と再生力は上弦の鬼を凌駕して異能の域に達している。

肉体の耐久性こそこれまで登場した上弦の鬼達ほど硬くは無いものの、日輪刀で幾ら無惨の頚を斬ろうと滅ぼせない。例え無惨の身体を斬ったとしても斬られた瞬間から傷口が瞬時に癒着・再生して無傷の肉体へと戻る。
このため傍から見ると斬った筈なのに切断されていないように見えてしまう。
例え、
  • 産屋敷邸を粉微塵に吹き飛ばすほどの爆炎を伴う撒菱混じりの自爆
  • 浅草の青年の血鬼術により体内に無数の棘が食い込んだ状態
  • 珠世作の「鬼を人間に戻す薬」の投与
をほぼ同時に受けて弱体化された状態で全身を粉々に砕かれても瞬間レベルの超高速再生が可能。
その為、無惨の身体をばらばらに刻んで動きを封じるといった戦術は不可能。
おまけにこれほどの強力な再生を行なっておきながら無惨側には一切の体力消費が発生しない。

無惨の再生力を完全に妨害するには何らかの手段で切断面を切り離すか、肉体そのものを物理的に粉砕するしかない。*10
そんな常識の埒外というべきしぶとさを誇るが、赫刀で斬られた時のみ再生力が鈍り、斬られた部位の再生が始まるまで多少の間が生じる。

かつて縁壱に全身を斬り刻まれた際にはさらに効果覿面で、再生のために意識を集中させても全く再生が進まず、最終的には肉体分裂で逃げざるを得なかった。



鬼化

前述の通り、人間に己の血を注ぐことで鬼に変えることができる。
注ぎ方は相手の身体に指などを突き刺すことで、そこから注入を行う。
追加で血を注ぐことで更に鬼の能力を向上させることも可能であり、鬼たちにとってはご褒美な様子。
ただし血を過剰に投与されても順応できなければ人間であろうと鬼であろうと無惨の細胞に受ける側の肉体が耐えられず、摂取した者の全身が崩壊して死ぬ
劇中では過剰に注がれた人間がどろりと溶けて惨たらしく死ぬ描写が描かれている。
なお全集中の呼吸を習得した剣士を鬼に変えるためには通常よりも多くの血が必要となり、強い剣士であればあるほど鬼と化すまでに要する時間は長くなる。

ファンブックによると太陽光を克服できる細胞の持ち主を求め、これまで鬼にした人間と異なる血質・体質の人間や、今まで上弦になれた鬼と類似した体質の人間を標的に鬼に変えてきた模様。

戦闘では細胞崩壊の性質を攻撃に転用する。
攻撃全てに鬼化に必要な量を超えた多量の血を混ぜており、無惨の攻撃で傷を負った場合体内に多量の無惨の血が侵入。相手の細胞を崩壊させ死に至らしめる
その毒性の猛威は傷一つで死ぬ程であり、無惨の血に対し何らかの対抗手段がない限り人類はかすり傷一つ負う事も許されない
柱クラスの呼吸の使い手や痣を発現させた者にはやや効果が薄いものの、即死にならないだけで肉体が激痛や脈の狂いに蝕まれていき、約20分程度で死に至る。


呪い


喋ってはいけない

私のことを誰にも喋ってはいけない

喋ったらすぐにわかる……

私はいつも君を見ている

無惨が配下の鬼に刻む呪縛。 死にスキル
「人間の前で鬼舞辻無惨の名前を口にする」行為や、「自身の情報を漏らすと判断した事」をトリガーとして発動し、鬼の中にある無惨の細胞が野太い巨大な腕に変化。
名前を口にしてしまった鬼の身体を突き破るように体内から無数の腕が生え、その者を徹底的に破壊し抹殺する。
この時口から腕が生えるため、犠牲者は死ぬまでの間一言も言葉を発することは出来ない。
この腕には鬼の細胞を壊す性質があるため、呪いによって殺された鬼は再生できずにそのまま死ぬ。
一方、あくまで外に名を知られないようにする為に発動する呪いであるため、鬼同士の会話や心の中で呼ぶだけならば特に問題はない。
ただし鬼であっても珠世のように支配から逃れた者に対して名を言ってしまった場合は例外として発動する。
機密保持の為と言っても、鬼殺隊であれば全員「鬼を生み出している黒幕の名は鬼舞辻無惨」と知っているので、わざわざそんな呪いを用意しておく必要があるのかは甚だ疑問である。


  • 知覚掌握
鬼に刻んだ呪いの1つ。
鬼が知覚する様々な情報を自身も共有することができる。
共有できる情報の程度は距離が近くなるほど強くなり、どれだけ離れていても位置を把握することだけは可能。
特に視界に映る範囲ならば思考まで完全に読み取られる為、面と向かって嘘をつくことは不可能。当然、心中の些細な不平不満であっても容赦する事はない。
よって無惨と接している間は配下の鬼はどれほど理不尽な仕打ちを受けようと不平を漏らすどころか心の内で不満を抱くことすら許されない。
ここまで来ると暗黒を通り越してディストピアである。

また視界ジャックも可能で、配下の視覚を通じて遠方を見ることが可能。
鬼の項目で述べた呪いの一環であり、鬼化症状の変容によって把握を外すことができるが、外さない限り追跡効果から逃れることはできない。
鬼殺隊もこの能力は把握しておらず、炭治郎の処遇を決める柱合会議では禰豆子も産屋敷邸へ連行したため、危うく本拠地の場所がばれるところだった。
ただし視覚支配も完璧ではなく、対象の視覚が外部から操作されている場合、覗き見た視野も変質してしまう。


  • 念話
部下に対して無惨が行う命令方法。恐らく呪いを応用したと考えられる。
念力のようなもので、離れた場所にいる配下にも直に言葉による指示を送る行為。
時折血を注いだ者の精神を言葉責めで苛み、行動や思考に呪縛を掛けているシーンも見受けられ、無惨の生前からの性格を考えると本質はかなりえげつない。


鬼の吸収

自身の細胞から生まれた鬼を己の肉体に取り込み吸収する能力。
鬼由来の力であれば何でも吸収できるのか、物理攻撃系の血鬼術すらも吸収の対象内。
加えて吸収した相手の細胞を介してその者の残留思念と会話したり、生前の記憶を読み取る使い方もできる。
悲願である太陽光の克服も、この能力で禰豆子を吸収することで達成しようと目論んでいる。


◆活躍

初登場

作中で初めて全体の姿を現したのは13話。
浅草の街の中、妻と娘を連れて街を歩いている所を自身の匂いを偶然嗅ぎ付けて追ってきた炭治郎と遭遇。
当初は一般人の振りをして誤魔化しつつ、目くらまし代わりに妻子の死角に居た適当な人間へ血を注いで鬼化
鬼化した一般市民への対処に追われることになった炭治郎を嘲笑うかのように姿を眩ますも、その直前彼の耳飾りを見て過去に交戦した同じ耳飾りの剣士を思い出し豹変。
姿を消した後は妻子に言い訳をして単独行動になると、自身に絡んできた無辜の酔っぱらい家族3人を癇癪で殺害し、炭治郎及び、自身の素性を知る珠世抹殺の為に刺客として朱紗丸と矢琶羽の2匹を送り込んだ。

自身が直接戦わないのは恐らく目立って鬼殺隊への手掛かりを残したり、この姿での社会的地位を捨てたりしたくなかった、あるいは耳飾りの剣士の関係者だと考えて警戒したなど、いくつか考えられる。
しかし、囮の鬼を生み出した後に耳飾りを見た瞬間に血相を変え、炭治郎の抹殺を刺客の鬼に丸投げしたことが読者から無惨がチキン呼ばわりされる原因の1つとなった。

この頃はまだ恐ろしい敵という印象があったのだが、癇癪を起こす炭治郎から即座に逃げるといった愚行の片鱗は見せている。


那田蜘蛛山篇


頭を垂れて蹲え 平伏せよ

釜鵺(無惨様だ…無惨様の声 わからなかった 姿も気配も以前と違う 凄まじい精度の擬態)

零余子「も、申し訳ございません お姿も気配も異なっていらしたので……」

誰が喋って良いと言った?
貴様共のくだらぬ意志で物を言うな 私に聞かれた事にのみ答えよ

私が問いたいのは一つのみ『何故に下弦の鬼はそれ程まで弱いのか』

十二鬼月に数えられたからと言って終わりではない そこから始まりだ

より人を喰らい より強くなり 私の役に立つための始まり

炭治郎に刺客を放ってしばらくは姿を全く見せなかったが、下弦の伍・累が討伐されたことで残る下弦全員を強制的に集めて初っ端から憤怒し再登場。
ただし芸妓の女性の姿で
上記の擬態の初披露であり、気配すら全く変わっていた。肝心の匂いがどうなっているかは不明。
面立ちが整っているため綺麗ではあるのだが、鬼そのものである性格は大体そのままで声も変えてないらしい。

その次の回では丸々1話でメインとなり、謎が多かった恐るべきその能力を存分に振るった。
…ただし、十二鬼月・下弦の鬼達に対して
結果、下弦達のあらゆる弁明も全て無慈悲に退け、召集された下弦5名のうち4名が惨殺される事態に
理由としては「弱いから要らない」を主軸として、
  • 下弦の陸・釜鵺:心の中で文句を言ったから
  • 下弦の肆・零余子:嘘をついて自分の言葉を否定したから
  • 下弦の参・病葉:(前2人への凶行に恐れて)逃げ出したから
  • 下弦の弐:轆轤:出来もしないことを言った挙句、配下の分際で「血を分けてくれ」と自分に指図したから
である。
唯一殺されなかった下弦の壱・魘夢は遺言を問われた際に「敬愛する鬼舞辻様が直々に殺してくれる。しかも夢みたいな時間をくれてありがとう(要約)」と宣った結果、気に入られてひとまず難を逃れたが、それも自身の血を大量に送り込んで強制的に強化させるという行為を踏まえてのもの。
上述の通り、無惨の血は摂取した場合耐えられる素質のない者は肉体が崩壊して死ぬ劇薬であり、ぶっちゃけこれも生き残れるチャンスが少しあるだけの遠回しな死刑宣告である。
漫画的にはまだ序盤でありながら、敵幹部12人(正確には13人)のうち4人を首領自ら殺すという前代未聞の展開に読者驚愕である。



無限列車篇〜刀鍛冶の里篇

67話で久々の再登場を果たしたと思いきや、部下へのハラスメントは上弦の鬼に対しても健在であった
柱の1人煉獄杏寿郎を抹殺することを報告した猗窩座に対しても、無惨にとって柱を殺すことは鬼としてはわざわざ語るまでもない当然の行為でしかなく、むしろ自分の目的である『青い彼岸花』を未だに発見できないことや煉獄と一緒に居た鬼狩りの3名を殺し損ねた(特に炭治郎を、であろうか)ことに対して逆に激怒
塵を見るような目で猗窩座の全身から血を噴出させる程の制裁を科し、「上弦の参も堕ちたものだ」「お前には失望した」と一方的に通告。
猗窩座のプライドと自負を完膚なきまで引き裂いている。*12
最早、向上心なぞ関係ないブラック企業も真っ青なディストピア企業。
……と思いきや、新たなお気に入りと思わしき上弦の鬼・堕姫には猗窩座とは対照的に、彼女に対して微笑み非常に寵愛する姿を見せる。
お気に入りとそうでないかとではやはり対応の差が激しいのかもしれない。

今回はなんとハラスメントで猗窩座が発奮したため、無惨様の愚かさ具合よりはクソ上司アピールの方が読者の印象に残る。
おまけに甘言で堕姫のモチベーションも上がるという奇跡のような展開である。
これに限らず、無惨は弱い人間や愚かな人間の心の隙を突くのが極めて上手い


そして98話にて妓夫太郎の死を受け、残る全上弦の鬼を無限城に呼び出し再び出現。

妓夫太郎の敗北を薄々予期していたことを語りながらも、漫画的にアウトすぎるチキン戦法*13を取らなかった妓夫太郎を酷評。
「何百年経っても、青い彼岸花発見と鬼殺隊殲滅のどちらも成し遂げられない上弦の存在意義が分からなくなってきた」
と下弦抹殺時のように怒りのボルテージが溜まる中、玉壺が無惨の目的達成に関する情報を伝えようとする。
しかし、その瞬間「未確定情報を嬉々として伝えようとした」という理由で腹の虫が収まらないイライラの余り玉壺の頚を切断
そのまま頚だけとなった玉壺に持論を語り、「上弦というだけでお前らを甘やかしすぎていた。今度からもっと死に物狂いで働け(要約)」と伝え、情報が確定したら半天狗と共に出撃するよう強制出張の命令を下し姿を消した。
前回の猗窩座への言動も含め相変わらずの悪鬼ぶりだったが無惨にとってはまだ甘く扱っていたという認識だった模様*14
なお妓夫太郎の戦法を酷評した無惨であったが、批判自体は結構穏やかなものであり、妓夫太郎の死に対しどこか未練めいた感情がうかがえる。


柱稽古篇〜無限城突入



ついに太陽を克服する者が現れた…!!よくやった半天狗!!

これでもう青い彼岸花を探す必要もない クククッ
永かった…!!しかしこの為 この為に千年

増やしたくもない同類を増やし続けたのだ

十二鬼月の中にすら現れなかった稀有な体質 選ばれし鬼

あの娘を喰って取り込めば私も太陽を克服できる!!


そして次なる登場は127話。
討伐された半天狗の視界を通じて太陽光を克服した禰豆子の体質を知り大望が叶う切っ掛けを得たことに歓喜。
127話にて劇中で初めて部下を手放しで賞賛。歓喜に打ち震える自身に話しかけようとする母親役の女性の頭を片手間で血煙に変え、更に変貌する己の姿を見た女中の上半身を消し飛ばすなど息をするように惨殺。
禰豆子に標的を絞り、つけ狙わんとする無惨の姿が映された。

しかしながら自らの愚行により下弦を、刀鍛冶の里で玉壺と半天狗の二人の上弦を失ったのはあまりにも痛く、最終決戦の準備をする際に完全に鬼側の機能が停止
具体的には鬼が全く出なくなったのである。
これにより鬼殺隊は時間的に余裕ができ、柱稽古により下階級の隊員含めて超強化されるというパワーバランスの崩壊を起こした
当然ながら、この柱稽古による強化が無限城決戦における無惨の作戦の瓦解につながることになる。
無惨の致命的なまでの計画性のなさがここにきて突き刺さったのであるが、無惨はそんなことに気が付く、否気が付ける者ではない

そして鳴女の能力で全鬼殺隊員の位置と産屋敷の家を探り当てると、遂に宿敵・産屋敷耀哉の目の前に突如として出現。
病が末期症状に至り死の寸前まで弱った耀哉の存在を嘲笑い罵倒しながら抹殺を試みるも、耀哉の自分の命を囮にした捨て身の策に嵌り、更に幾重にも張り巡らされた足止め作戦を受けた結果全柱と炭治郎に接近を許し追い詰められることに。
しかし、この展開は無惨の望む展開でもありまんまと柱全員と炭治郎を無限城に叩き落とすことに成功。

これで私を追い詰めたつもりか?貴様らがこれから行くのは地獄だ!!
目障りな鬼狩り共 今宵皆殺しにしてやろう!

地獄に行くのはお前だ無惨!絶対に逃がさない必ず倒す!

やってみろ!できるものなら!
竈門炭治郎!!

落とされてもなお自身への殺意を揺るがさない炭治郎に啖呵を切り、自らも毒を食らわせた珠世と共に無限城に落ちてフェードアウト。そのまま無限城最奥で珠世を巻き込みつつ肉の繭に自身を包み、自身に注入された薬を解毒するべく休息することとなる。

この産屋敷耀哉との問答から始まる一連の流れを見ても、最後の無限城落としの一瞬は別として風格のあるボス要素はほぼ出てこない上に、愚かさだけが強調されてしまっている。





最終決戦篇


千年以上生きていると 喰い物が旨いという感覚も無くなってくるが

餓えていた今の食事は実に美味だった……

私の為にわざわざ食料を運んできたこと 褒めてやろう産屋敷

そして180話にて遂に完全復活を遂げる。
髪の毛は白色に変容し、肉体は返り血を浴びたように赤く変色し所々血管のような紅い紋様が浮かび、各所に禍々しい牙を生やした口を備えた邪悪な姿を露にした。
その風貌はこの世全ての人間を喰い物としか見ていない無惨の精神性を如実に体現するかの如き悪鬼そのもの。
なお、自信満々で第二形態感がすごいが、単に解毒完了しただけなので最初に姿を見せた時とスペック自体に大差はないと思われる。人間に擬態する必要のない状況での姿という意味では、戦闘形態・臨戦態勢と表現した方が近いだろうか。

復活後は周囲にいた鬼殺隊の一般隊員を全員食い殺し、前述の言葉で産屋敷輝利哉を煽って鬼になることを上から目線で勧誘。
また、「珠世の投与した薬は効かなかった」と珠世の捨て身の努力を頭ごなしに全否定し、肉体が取り込まれ頭だけになってしまった珠世を握り砕いて殺害・捕食した。
「十二鬼月を含めた全ての配下が自分の役に立たなかった(要約)」と不快感と不満を隠す事なく露としながら、遂に自ら鬼殺隊の完全抹殺を行うことを宣言する。

だが自身が薬を解毒するまでの間、柱を含めた全鬼殺隊員を足止めしていたのは「役に立たなかった」と身勝手に酷評した配下の鬼達である。
しかも無限城内で鬼殺隊の配置を制御しているのは唯一健在の上弦である鳴女であり、この台詞を言いながらも部下に頼っていることを完全に棚に上げている。
こんな時でも身勝手極まりない自分本位の考え方を露にする辺り安定のブレなさといったところか。

そして鳴女の琵琶の音色に合わせ、遂に冨岡と炭治郎と再び邂逅する。
無惨の犠牲になった仲間や家族を想起させ怒りに震える2人だったが、
無惨は、「自分は大災と同じなんだから、殺された身内の仇討ちなど考えず、元の生活を続ければいいだろう」(要約)
というさも自分が被害者或いは常識人であるかのように心底呆れ返ったかような理不尽極まりない持論を語り出し、鬼殺隊は異常者の集まりだと結論づけた。


無惨 お前は 存在してはいけない生き物だ

他者を犠牲にする事に全く感慨のない己こそが異常だと気付いていない無惨と人間との、決定的な価値観の違いを知らしめさせられた炭治郎の顔からは完全に感情が喪失
永遠に分かり合えない両者の最終決戦の幕が開く。

無限城内ではその凄まじい速度で駆動する腕で炭治郎たちを翻弄し、炭治郎の片目を潰して追い詰める。
しかし、無限城を維持している鳴女が愈史郎に支配されかける事態となり、無惨は炭治郎たちと戦いつつ遠隔操作で鳴女の支配権を取り戻す戦いを強いられる。
最終的に支配権を取り戻すのは難しいと考えたか、無惨は鳴女を呪いで殺害。
その結果制御不能に陥った無限城は崩壊、戦闘は地上戦にもつれ込む。

だが地上戦になろうとも無惨の戦闘能力は依然として脅威であり、攻撃に含ませた血の毒が回ったことで炭治郎は死亡寸前に陥る。愈史郎により救われたので無惨の宣告は外れたが
残る柱の面々も上記の渦、無数の触手を繰り出し迎撃し、奥の手ともいえる超高速の触手で戦闘不能になるダメージを与えて撃退してしまう。
しかしそこに死の淵から舞い戻り、血の記憶を元に日の呼吸を完全に習得した炭治郎が現れる。


何という醜い姿だ これでは

どちらが鬼か 分からないな竈門炭治郎 ……虫唾が走る

終わりにしよう 無惨


「透き通る世界」に至り、赫刀に至った炭治郎だが満身創痍であり、徐々にスピードが落ち始める。
しかし無惨自身もまた同様に減速し始めており、炭治郎を殺しきれない。

実は珠世の投与した薬は「鬼を人間に戻す薬」だけでなく、「老化する薬」「分裂逃走を阻害する薬」「細胞を破壊する薬」の四種、しかも「鬼を人間に戻す薬」を解毒する際に他の薬の効果がより強まる細工までされていたのである。
珠世の細胞から記憶を読み取った無惨は、この時点で肉体が実に9000年分の老化を起こしていたと把握。
無惨の髪の変色もこの薬の効果だったが(つまりただの白髪である)、無惨は身体機能が低下するまで気がつかなかった。

刻一刻と弱体化していく上に奥の手の分裂逃走もできず、細胞破壊により肉体の崩壊すら始まり、触手や吸息、空気弾、衝撃波と言った広範囲攻撃も連発が利かなくなり、鬼殺隊を倒し切ることは不可能になってしまった。
更に夜明けが近づき時間がなくなって来たことを悟った無惨は迷うことなく逃走に移る

鬼殺隊にとっては逆に「夜明けまでこの場に無惨を留めれば勝ち」という千載一遇の機会であり、立ち上がった生き残りの隊士共々決死の時間稼ぎに出る。
無惨も少しでも生き残るための時間を稼ごうと肉体を肥大化させ赤子の形の肉の鎧を構築し、近くにいた炭治郎を巻き添えに飲み込んで暴れながら抵抗。

鬼殺隊は後方支援の隠たちも総動員した足止めと、重症ながらも動ける柱たちによる攻撃で無惨の体力を削り、最後は体内に取り込んでしまった炭治郎の赫刀による攻撃が止めとなり、
動きを封じられた無惨はなす術なく太陽に灼かれ、肉の一片も残らず消滅。
鬼の首魁である鬼舞辻無惨は死んだ。







◆余談

『鬼滅の刃』の前身である『過狩り狩り』には「時川」という名前の服装がよく似た人物が登場している。

ジャンプの敵の首領とは思えないほどのとんでもない小者臭さ、堂に入りすぎたクソ上司ムーブもあり当初は賛否両論であったが、
ブレることなく徹底的に小者要素とクソ上司要素を追求したキャラ造形の結果なのか異色の敵首領として一際キャラが濃く、読者からも人気を博した珍しいボスキャラと言える。
タグ一覧などを見てもらえればわかる通り、大体の評価は罵倒だが…。
その無謀極まる行動による因果応報はファンから「頭が無惨様」と罵倒されることは序の口で、ラスボスとは思えぬ愚行について困惑する初見さんに「無惨様だから」という説明で済むなど、もはや鬼舞辻無惨という一ジャンルとして扱われている節もある。
アニメでの演者の関俊彦氏も、無惨について「自分が悪役を演じる時はそのキャラに同情や共感できる点を重視しているが、無惨だけはほんっとうに悪い奴」と称している。

因みに「無惨」という言葉は「残酷」「罪を犯しながら心に恥じないこと」を意味している。名は体を表すといっても過言ではない。

そして2019年度の節分の日では猗窩座に続いて公式Twitterで無惨の「アイコン画像(圧が凄いセリフ入り)」が配布された。
……が、その内容はこれまでのパワハラ語録をひとまとめにした鬼にとても厳しい画像の宝庫だった。
おまけに公式も「このアイコンにすれば他の鬼が寄り付かなくなるかも…?ぜひご活用ください!」とまで書いてある。
鬼の首領なのに鬼除けに効果的とは一体……

その人気(?)ぶりと映画化された無限列車編が日本映画史上希に見る大ヒットを叩き出した相乗効果もあってか、
2020年ネット流行語大賞ではなんと無惨が1位に選出されたのであった*23





なぜ私がお前の指図で項目を編集せねばならんのだ 甚だ図々しい 身の程を弁えろ

轆轤「……!違います!!違います!!私は」

黙れ 何も違わない 私は何も間違えない

全ての決定権は私に有り 私の追記・修正は絶対である

お前に拒否する権利はない

私が“正しい”と書いた事が“正しい”のだ

お前は私に指図した 死に値する











































死の間際に、無惨は自らが死産で生まれたことを思い出す。
無惨の背中には、ずっと死がへばり付いていた。
人間は脆い。鬼とは違ってあっけなく死んでしまう。

だからこそ無惨は「永遠なる生存」のみに執着し、「完璧な生命」になる、その為だけに千年生き続けた。
しかし、人の思いは継承され続け、より強く永遠に受け継がれていく。
産屋敷耀哉は正しかった。

人の思いこそが永遠であり、その永遠は鬼となった無惨すらも打ち倒すのだ。

無惨は、死ぬ間際でありながらも感動していた。超上から目線だったが

そして、人の思いが永遠であるように、無惨もまた、鬼狩りを滅ぼす思いを目の前の少年に託すことにした。

無惨は炭治郎に残された力を全て注ぎ込み、最強の鬼…鬼の王へと変えたのだった。
いくら感動したとは言っても、やっていることは今までと同じ相手の思いを無視した鬼化であり、最期まで無惨らしく、傍迷惑極まれりである。

果たして、鬼の王となった炭治郎の才能は凄まじいものであった。
心肺停止した状態から蘇り、失った手や目を再生させ、暴走を始め、すぐに太陽までも克服
死傷者多数で満身創痍の鬼殺隊は歯が立たず、善逸と伊之助はあまりのショックに攻撃する事すらできなかった。

人間へ戻った禰豆子の呼びかけとカナヲによって注入された鬼を人間に戻す薬により、炭治郎の精神はかろうじて戻り始めた。

そして、
あの世か、精神世界か、あるいはそのどちらでもない場所か、醜悪な無惨の肉塊の中、薬の効果で炭治郎は覚醒。
無惨の細胞は炭治郎を逃すまいと、自身の所業を棚に上げて煽り、嘘で絶望させようとするも、仲間や家族からの想いで支えられてきた炭治郎には全く効果はなく、
禰豆子の両腕に引き上げられ、思いを残した人達に押し上げられ、禰豆子に続いて間に合った今を生きている人達の願いの手に引き上げられ、炭治郎は現世に帰還した。

今まで全てを利用してきた無惨。
己の意志を何よりも重んじた無惨。
だが、その意志は炭治郎にとっては何一つ価値のないものにすぎなかった
確かに人の思いは永遠だ。だがその永遠は受け継ぐものの意志あってこそ。他者を尊重せず、できず、しようともしない無惨は、当然他者から尊重されることもなく、何も残せず消え去る他はない。

つまり「永遠」を手に入れるためという視点で見れば、無惨の千年、無惨の魂、無惨の意志、そして無惨の存在そのものにすら、何の意味も価値もなかったのだ。*24


炭治郎


炭治郎行くな!!


私を置いて行くなアアアア!!



こうして何処までも続く闇の中に美しく咲き誇る藤の花の天蓋の下、自分のことしか考えられなかった愚かな鬼は、ただ一人「永遠」に取り残されながら今度こそ完全に滅び去った。

もっとも、炭治郎の精神力に加えてカナヲの片目が残っていたこと、しのぶの薬、それに禰豆子の血から無惨の細胞に対する抗体を取り込んだという奇跡が重なってギリギリ掴み取れた勝利ではあった。(どこまで厄介なんだ…)

その後『鬼殺隊見聞録・弐』の描きおろし漫画にて阿鼻地獄*25に落ちていたことが判明。姿は白髪と全身に走っている古傷という最終決戦時と同じものであった。
地獄に落ちてもなお効力を発している縁壱さんの赫刀よ
日の呼吸・ヒノカミ神楽の斬られ心地について「不快」と物凄く不機嫌な顔で答えており、全く反省していない。







追記・修正は主人公に思いを託してからお願いします。

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最終更新:2024年04月21日 21:52

*1 その昆虫でさえ、種によっては共生や慈愛ある行動をすることもあり、昆虫以下という見方もできる

*2 その為、配下の鬼達は自分が死なないよう、無惨の事を「あの方」と呼ぶ

*3 無惨がどういった理由で気に入ったかは現時点では不明

*4 回想のたった数コマしか登場しないが、ある意味この物語全ての元凶。ナレーションで善良とされているため悪意はないと思われるが、どこまで想定していたかは不明。読者内では人間に戻す前提で意図的に鬼化させた、あるいは同じ薬を投与しても無惨だけが特殊な体質から鬼化してしまった、または薬効効果のありそうなものを多数試していたら偶然鬼化させてしまったなど様々な推測がされている。アニメ版では回想が無惨の視点で描かれたため、胡散臭く見えるようになった。

*5 これまで死んでいった前任の下弦メンバーも当然の様にカウント

*6 鬼殺隊の最高戦力にして下弦の鬼すら太刀打ちできないほど強い。敵対組織の幹部を排除するのはどんな組織であっても基本的に大手柄として祝うべきであり、例えメインの命令を達成してなくても誉めるべき功績である

*7 少なくとも無惨が10000歳にならないと現行人類とは勝負にもならないのは分かっている。

*8 下弦の参の場合は逃走によりそれなりに距離が開いていたので、鳴女のアシストがあったのかもしれないが。

*9 後述するこの姿での役割を考えると、女声は出せるが出す必要がないので地声で話していると思われる。

*10 しかしそれでも傷口から切断された筈の部位が一瞬で再生し完全復元される為、この対処法もその場凌ぎにしかならない

*11 上記の釜鵺、零余子、病葉、轆轤と、後に上弦の肆となった鳴女の計五名。なお炭治郎は魘夢、妓夫太郎、半天狗の三名で、最終的に自死を選んだが頸を刎ねることには成功している猗窩座を含めても計四名。

*12 ただし、血をふんだんに分けた下弦の壱を使い捨てて負傷・疲労させたという有利な状況で猗窩座を投入したのに、当人は勧誘を優先してトドメを刺しきれず相打ちに持ち込まれかけた。という状況を考えれば叱責もむべなるかなである。

*13 「解毒できない毒を打ち込んで逃げる」というもの

*14 後にファンブックにて、猗窩座はお気に入り(忠実だから)、玉壺も割とお気に入り(壺が高く売れるから)であったことが判明。

*15 おまけに適当に鬼に変えたせいで術の詳細を把握できていない

*16 本人に自覚があるかは分からないが客観的に見ても無惨の戦闘力は異常に高く、よほどの罠にかからなければ問題にはならないので

*17 実際、無限城決戦中は輝利哉と禰󠄀豆子は同じ建物内にいて、元柱の二名(鱗滝含めれば三名)で護衛していた

*18 無限城決戦の時点で禰豆子には人間化の薬を投与されていたため、結果的には無限城に落として全滅狙いはそう悪くない手ではあるのだが、無惨はそんなことは知らなかったので単に運が良かっただけである。

*19 少なくとも、劇中描写から見て黒死牟は敵の力量を正確に見抜く目を持っているが、無惨が愚かすぎて意味がなかった。

*20 新生陸の獪岳に至っては敗因として「鬼になって早すぎたが故に血鬼術を十分に使いこなせてなかったこと」「1年後なら善逸と実質相打ちどころか善逸が初手即死してた」と愈史郎から断言されるレベル

*21 繭から出てきた時点での白髪は己の意思によるものではないにも関わらず、全く気に留める事なく戦闘を続けて9000年分も老化し、弱ってから「髪の色を戻せない事に気付くべきだった」と心中で漏らすというお粗末さである。

*22 劇中の無惨のように極端に強靭な肉体を持っていれば負けはしないだろうが、だからと言って勝てるわけでもない。実際に無惨はその強靭な肉体が薬で崩壊したことで敗れている

*23 参考なまでに比較すると、ヒロインである竈門禰豆子は10位、無限列車編のキーパーソンである煉獄杏寿郎も3位と、高順位にランクインしている。

*24 もっとも、無惨がそれを理解できる男ならこんな無意味な押し付けはしなかっただろうし、する必要もなかったのだが

*25 別名無間地獄。ありとあらゆる拷問が待ち構えている地獄の最深部であり、堕ちたら最後、途方も知れない呵責の時間が待っている。ただし到達まで2000年もの時間が必要とされてる場所なのだが、何故死んで間もないはずの無惨が阿鼻にいるのかは不明。鬼滅の刃の世界ではすぐに阿鼻地獄に堕ちるのかもしれないが…

*26 更に言うと、童磨や妓夫太郎など鉄火場でも冷静な戦術・戦略判断をできる能力を持った部下は存在していたし、黒死牟も元は戦国時代の武家の長男だったとあって戦事の教養はしっかり身に付けているはずなので、それを活かせなかった無惨の狭量さが余計に際立っている

*27 例えば「医者を癇癪で殺したら鬼になる」などという未来は、この状況に置かれれば無惨でなくとも予測不可能だろう

*28 上記の例なら、医者を殺せば鬼になることは予測できずとも、己を治療中の医者を殺害して状況が好転する可能性は限りなく薄いということは想定できる。別の医者を呼び寄せるなど、もっと穏当かつ問題解決に直結しそうな選択肢はあった

*29 そもそもそんな能力が欠片もないからこそ無惨は詰んだのだ、と言われればそれまでだが

*30 一応肉人形を作って不在を誤魔化すことはしていたようだが

*31 詳細な大正〇〇年かは不明

*32 それぞれ現在のJR仙石線と東京メトロ