翠の海 -midori no umi-

【みどりのうみ】

ジャンル 真実の欠片を探すサスペンスADV
対応機種 Windows XP/Vista/7
発売・開発元 Cabbit
発売日 2011年10月28日
定価 8,800円
レーティング アダルトゲーム
配信 FANZA:2011年12月2日/4,800円
判定 なし
ポイント ミステリアスな館での共同生活
極上の雰囲気だが、色々と説明不足


青い鳥はここにいる。私たちの楽園はここにある──そう信じて。




概要

合資会社スカイ・フィッシュの新設ブランド「Cabbit」の処女作。

ストーリー

――翠の、海。木々に囲まれた深い森の中。 決して出られないその場所で、俺たちは出会った――
森の中心には綺麗な湖。そして12人が暮らしている広い洋館。
図書室にはたくさんの本があり、音楽室には楽器もあり、何の不自由もなく生活できるその場所……
少年少女たちは、記憶を失ってこの場所にやってきた。
決して外には出られない。それは言うなれば樹海。決して出られない深い闇。
出て行ってもかまわない。けれど……、外に出られる保証はない。
その場所を、美しくも儚いこの場所を、彼女は “楽園” と呼ぶけれど……
確保されたライフライン。消えた少年。
ゆっくりと思い出される自分の過去……
自分は、どうしてここにいるのか……
知りたいけれど、知ろうとしてはいけないと忠告される。
知ってしまったら……、どうなるのだろうか……?
――何も知ろうとしなければ幸せが約束されているのに、翠の海に閉ざされた楽園で、空を望めば――?
(公式サイトから抜粋)

特徴

  • 選択肢で展開が変わるノベルゲーム。
    • 5章構成で、16のエンディングに分岐する。
    • 特定のヒロインと交流を深める、いわゆる個別ルートもこの16の中に含まれている。
  • 「最初からはじめる」を選択して、過去に経由した章から開始できる。
    • 1章からははじめると、選択に応じて16種類のエンディングに分岐するが、5章から辿り着けるエンディングは5種類である。
    • このように章が進むにつれて辿り着けるエンディングの種類が減っていく。
  • おまけシナリオ
    • 本編と同じ舞台を茶化したギャグシナリオ。ヒロインとのエンディングを迎えることで解禁される。
    • 後半に登場するキャラも出演しているので、一通りクリアしてからの閲覧を推奨する。

評価点

  • 抜群の雰囲気と掴み
    • 樹海で目覚め、ヒロインに館に案内されたところでオープニングムービー「翼を持たない少女」が流れる。
      • 霜月はるかの高い歌唱力と演出が相まって期待が高まる。
    • 湖と館、これらを取り囲む樹海が舞台であり、木々の中にポツンと建っている館の異質さがよく表れている。
      • 水や木々のグラフィックがミステリアスな雰囲気を強めている。一部の水CGは自然にアニメーションする。
+ OPムービー

  • シナリオ
    • 記憶喪失故に、どのキャラクターとも初対面でありプレイヤーとの目線が一致している。
    • 選択肢により、プレイヤーの思った通りに事を運びやすく、主人公の行動の変化がどのような影響を及ぼすかを探る楽しみがある。
    • 館の住人は見ず知らずの者同士で築き上げられたコミュニティである。物語中盤の住人の死や「どうしたって……、一緒に生きていけない人はいるの。わかるでしょう?」といった発言から、閉鎖コミュニティにおける人間関係について考えさせられる。
    • 矛盾点は多いものの、バッドエンドからグッドエンドまで種類は多彩で、インパクトの強いものもある。
  • 個別ルートにおけるキャラ萌え
    • 重い要素も多いものの、意外なキャラクターのデレ描写が光り、清涼剤として機能している。
  • カードモード
    • 本編での右クリックやエクストラモードで閲覧できる。
    • 16枚のタロットカードにエンディングを迎えるためのヒントが書かれており、到達したエンディングも分かる。
    • 抽象的な説明文が、雰囲気に合致しつつもヒントとしても機能している。
    • 尤も総当たりでクリアできるため、存在に気が付かなくてもあまり支障はない。

問題点

  • 構成
    • 樹海にポツンと建った館なのに食糧が供給される・蛇口からは水が出る・深夜の住人の怪しい動き等の多くの謎が、一つのルートで概ね分かってしまう。
      • 特に館の正体を追う緊張感は1ルートで消滅してしまう。館に深く関わるキャラほど終盤に攻略することになるが、プレイヤーは既に知っている、予定調和な部分が多いためカタルシスに欠ける。
      • また、殺人者の行動が一貫しておらず、制裁もされない。重要な場面において不自然なエロシーンが挟まる等、多くのプレイヤーが最後に見るであろうルートがあまり練られていない。
    • 序盤がピークと評されやすいのはこの構成によるところが大きい。
  • 舞台設定
    • ファンタジー要素ではなく、現実的な理由で館の生活が成り立っているが、説明に色々と無理がある。
+ 個別ルートのネタバレ
  • 館の住人は記憶を喪失させられたうえで、送り込まれている。
  • 送り込んだ人間が資金を提供し、特殊な組織が食料を送り、館の住人の一部が食料を受け取っている。
    • 何故そんなことをしたのか? という理由がろくに説明されない、あるいは説明されても理屈が通っておらず、ご都合主義とされやすい。
  • 早い段階で、脱出手段があると明らかになってしまうため、ミステリアスな雰囲気が一気に薄れてしまうのも大きな難点。
  • 説明不足や後付けが多い
    • キャラクターの思想や物語への理解が深まるにつれ、「あのキャラは殺されるほど酷いことをしたか?」という疑問が浮き上がる。確かに目を引く展開ではあったが、その説明は不十分であった。
    • あるルートでだけ行方不明になるキャラクター、学力が認められての館からの脱出、SF要素の介入等々、1ルートだけに使われる後付け設定が多く、全体を通した整合性に欠ける。
      • 解釈が委ねられているのではなく、投げっぱなしと捉えられやすい。
    • 結果的に、情報開示が少ないバッドエンドの方が矛盾が少なくまとまっている。
  • システム
    • CG鑑賞モード等の画像切り替え時などに、僅かだが読み込み時間がかかる。
    • 選択肢で右クリックが利かなくなる。セーブするにはコンフィグボタンを左クリックするか、Sキーを押す必要がある。

総評

ミステリアスな舞台とBGMの相乗効果で、雰囲気ゲーとしては極上。
しかし一つの個別ルートでほぼ全容が分かってしまう構成や、説明不足な数々の要素によりサスペンスとしては難がある。
とはいえ、独特なテーマや情報開示の上手さから序盤においては名作の片鱗を感じさせ、全体的には佳作といえるだろう。


余談

  • 発売後に行われた人気投票1位のキャラのifストーリーSSが公式サイトに掲載されている。
    • ネタバレを含むため、プレイ後の閲覧が推奨されている。
  • メインヒロインはモチーフがいると考察されている。
    • OPムービーやキャッチコピーに出てくる青い鳥からメーテルリンクの『青い鳥』を連想させる「みちる」、作中でそのまま「デウス・エクス・マキナ」に例えられる「真希奈」などは分かりやすい。
  • 体験版が配信されている。
    • タイトル画面が製品版とは異なる。序盤と予告ムービーを体験できる。
  • 2019年1月24日にSteamで200円で配信開始。タイトルは『Endless Jade Sea -Midori no Umi-』に変更されている。日本語はサポート対象外。
  • アダルトゲーム雑誌「メガストア2019年7月号」の付録DVDに本作が収録された。

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最終更新:2020年06月21日 00:12