Marvel's Spider-Man: Miles Morales
【まーべる すぱいだーまん まいるずもられす】
ジャンル
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アクションアドベンチャー
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対応機種
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プレイステーション5 プレイステーション4
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発売元
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ソニー・インタラクティブエンタテインメント
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開発元
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Insomniac Games
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発売日
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2020年11月12日
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定価
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Standard Edition: 6,490円(税込) Ultimate Edition: 8,690円(税込)
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プレイ人数
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1人
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レーティング
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CERO:C(15才以上対象)
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判定
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良作
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ポイント
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主人公がピーターからマイルズへと交代 高い完成度と爽快感は健在 「続編」というより「スピンオフ」に近い作品
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Marvel Comics関連作品シリーズ
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PlayStation Studios作品
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概要
SIE発売、Insomniac Games開発のPS4用ゲーム『Marvel's Spider-Man』の続編。
タイトルが示す通り、本作の主人公はピーター・パーカーからマイルズ・モラレスへと交代。
本作はマイルズ・モラレスのスパイダーマンを主人公とした史上初のゲームとなっている。
PS4版はPS5版への無料アップグレードに対応しており、セーブデータもPS4版から引き継ぐことが可能。
Ultimate Editionには前作のPS5版『Marvel's Spider-Man Remastered』がセットになっており、Standard Editionでもゲーム内メニューから前作のリマスター版を購入可能である。
特徴
基本的なシステムは前作を踏襲している。以下は本作での変更点。
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主人公がピーター・パーカーからマイルズ・モラレスへと変更された
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ストーリー・時間軸は前作の続きとなっており、最初に前作のネタバレが含まれる。そのため、前作プレイ済み推奨。
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原作コミックではスパイダーマンの交代理由がピーターの死亡によるものや、「新スパイディ」マイルズが黒人キャラであること等で何かと物議を醸した交代劇だったが、本作では交代理由がピーターが海外へ出かけるため単独で街を守ることを任されたという流れであり、主人公交代劇としては自然かつ無難な流れである。
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マイルズのパワー
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ヴェノム・パワー
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生体電気を増幅させ体に纏わせた攻撃により、敵に大ダメージを与えつつ防御力ダウン+行動停止させたり、特定の敵の装備を破壊することができる。
L1ボタン+特定のボタンで使用可能で、バトル以外にもバッテリー等に電気を充電したり、逆に電気エネルギーを吸収したりして道をひらくステージの謎解きも存在する。
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ちなみに、電気なのに「ヴェノム(毒液)」と名付けられているのは、触れた相手を麻痺させる能力を毒に例えたため。ヴィランの方の「ヴェノム」とは無関係。
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カモフラージュ
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方向キーの上を押すことで一定時間透明となり、周りから気づかれなくなる。
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画面右上の「カモフラージュゲージ」が残ってる間だけ透明になれる。カモフラージュ中に攻撃するとゲージが一気に減って解除されてしまうため、透明のまま一方的に攻撃するということはできない。最終盤ミッションのみこれが無効な敵も存在し、強力なぶん使い所を考える必要がある。
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JJJのファクトニュースに加えて、今作ではダニカのポッドキャストである「ダニキャスト」が追加された
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ダニカはJJJと違いスパイダーマンを応援してくれる。スパイダーマンの悪口を言われることが嫌な人は、JJJの方だけオフにしよう。
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余談だが、ピーターがJJJのファクトニュースを聞いていることについて、マイルズも本作で苦言を呈している。
PS4版とPS5版の相違点
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PS5版は高速SSDによってロード時間が大幅に短縮されている。
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特に大きいのがゲーム起動時からタイトル画面までのロード時間。PS4版はメーカーロゴの表示を含めて1分以上かかるのに対し、PS5版は初回起動時以外メーカーロゴの表示を省略してくれるため、10秒くらいしかかからない。
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PS4版ではゲーム中にロードが挟まるため、ファストトラベルで地下鉄に乗るスパイダーマンが見れたり、ゲーム開始時のロード中に操作方法などのTipsが表示されたりする。これらはPS5版では全く表示されない。
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PS5版はPS5特有の機能にも対応。
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光の表現がよりリアルになるレイトレーシングと4K解像度に対応している。設定次第で60fps動作も可能。
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DualSenseの機能であるハプティックフィードバック、アダプティブトリガーにも対応。
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3Dオーディオに対応。対応したヘッドホンを用意すればあらゆる方向から音が聞こえてくる。
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概要にも書いたが、PS4版はPS5版への無料アップグレードに対応している。
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PS5版はStandard EditionからUltimate Editionへ有料でアップグレードすることもできる上、PS4版からのセーブデータの引き継ぎが可能となっている。PS4版を買った人がPS5版を買った人よりも損をすることがないように、最大限配慮されている。
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PS5版はアップデートで、PS5 Pro Enhancedに対応。
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PS5 Proで動かせば4K解像度・レイトレーシング・60fps動作が同時にできるようになった。
評価点
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相変わらずのウェブ・スイングの爽快感
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前作と同じくウェブ・スイングの爽快感は健在。マイルズでも思う存分ビルの合間を高速で飛び回ることができる。
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よく見ると前作のピーターとマイルズではウェブ・スイング時のモーションがかなり異なる。
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洗練されて無駄のないピーターに対し、マイルズはどこか雑で、かつスイングを最大限楽しんでいるような描写で飽きが来ない。
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エアトリックの種類が激増しており、さらにトリック後通常のスイングに移行するモーションも新規に描き起こされているため必見。□ボタンを押しながら左スティックを適当にガチャガチャするだけでも楽しい。
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オリジナルのストーリーも良質
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前作から1年が経過しており、主人公がピーターからマイルズへと変わったこともあって、ピーターのスパイダーマンしか知らない人なら、新鮮な気持ちでストーリーを楽しむことができるだろう。
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今作のストーリーの特徴として、メインヴィランの正体が早々に判明することが挙げられる。ネタバレになるため詳しくは書かないが、一概に悪とは言い難いヴィランたちと対立することで、マイルズのヒーローとしての責務や葛藤が丁寧に描かれているのが見どころ。ラストまで熱い展開が続く。
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マイルズと何かと関係のあるヴィラン「プラウラー」の正体も早々に明かされる。これは本作発売から1年ほど前に公開されたアニメーション映画『スパイダーマン:スパイダーバース』で正体が明かされたためと思われる。
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逆にその映画を未視聴の方が本作を先にプレイすると、映画のネタバレになってしまうので注意。
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他にもスパイダーマンの中ではマイナーなヴィラン「ティンカラー」が登場するが、正体が意外な人物となっており、マイルズと深く関わることになる。
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進化した戦闘システム
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マイルズのパワーであるヴェノム・パワーとカモフラージュを上手くゲームに落とし込んでおり、戦闘に深みが増した。
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ヴェノム・パワーは上手に使えばガードの硬い敵や大勢の敵を一掃することができ、戦闘の爽快感も向上している。
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カモフラージュはステルスで大いに活躍してくれるが、終盤はそれに頼り切りというわけにもいかないようにしていることもあり、ゲームバランスを壊していることはない。
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また拠点攻略のサイドミッションでは強制的に戦闘態勢になることがなくなった。最後までステルス状態を保ってクリアした際の実績もある。
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一般人のステルスパート、即死QTEの削除
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前作で不評だったMJなどのステルスパート、失敗すると即ゲームオーバーになるQTEは本作には存在しない。QTE自体も数がかなり抑えられており周回プレイもやりやすくなった。
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トークンシステムの簡略化
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トークンは6種類あった前作から2種類へと減らされた。
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前作では「配分を間違えるとトロコンが難しくなってしまう」「装備を開放するために該当するトークンを取得する必要がある」という問題点を抱えていたが、本作ではトークンの種類が減ったことにより、多少緩和された。
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ローカライズも良好
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前作と同じく日本語吹き替えも用意されており、声優陣も前作と同じキャストが続投されている。
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ちなみに前作の不満の声を受けてか、日本語字幕+英語音声の組み合わせもできるようになった。
賛否両論点
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戦闘の難易度の高さも相変わらず
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本作も前作と同じく最序盤から一対多で袋叩きにされやすいバランス。スキルや体力が少ない序盤ほど難関なのも変わらず。
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一応、前作ではスキルポイントを消費して取得する必要があったいくつかのスキルが最初、あるいは最序盤から使用可能になっている。
また本作では最初から最低難易度「FRIENDLY NEIGHBORHOOD」が選べるようになっているなど、多少は緩和されている。
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操作方法の変更
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前作と違いヴェノム・スキルが使えるようになったことから、前作から操作方法が変わっているものがある。前作をやり込んでいる人ほど慣れるまで時間がかかる。
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スーツパワーも廃止され、大勢の敵を相手にするにはヴェノム・パワーとカモフラージュを活用することが求められる。
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今作でもガジェットは使用できるが、豊富だった前作と比べると数は4種類と減った。
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スーツのバリエーションが減った
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スーツデザインが非常に充実していた前作と比べると、本作のスパイダーマンのスーツの種類は少なめ。アップデートによりスーツは追加されているが、それでも前作の数には及ばない。
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これに関しては、「ピーターのスパイダーマン」と「マイルズのスパイダーマン」では積み重ねてきた歴史が圧倒的に違うので、致し方ないともいえる。
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スパイダーマン(ピーター)の初出は1962年なのに対し、マイルズ・モラレスの初出は2011年。実に半世紀近くの差である。
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原作コミックに登場したハンドメイドスーツや、マイルズが主人公を務めたアニメ映画『スパイダーマン:スパイダーバース』を催したデザインのスーツも用意されているなど、決して手を抜いているわけではない。
あくまでもピーターと比べると再現元となる母体数の時点で差があるだけとも言え、その制限の中では最大限頑張っている方である。
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前作のスーツの中にはピーター・パーカーではないスパイダーマンのスーツも少なくなかったため、その点では小ネタ満載だった前作と比べると、どうしても見劣りしがち。
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もっとも、仮に原作ファンにも見覚えがないオリジナルのスーツで数を水増しされても、それはそれで一概に良いとも言えないのだが…。
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主人公交代による弊害
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あくまでも本作はマイルズを主人公にしたシナリオなのでしかたのないことだが、終盤のかなりピンチなシーンでもピーターは現れないことに、前作で「この街を守れるのは僕しかいない」と責任感を強く感じていた彼が好きだったファンは少なからず違和感を覚える。
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一応、何度か助けに戻るというピーターの提案をマイルズが断るシーンは存在するし、あくまでもマイルズを独り立ちさせるための物語であることは序盤から強調されているが、終盤のとあるシーンではここでピーターが現れた方がシナリオ上も違和感がなくピーターらしさも演出できるのにと言われているシーンなどもあり、賛否両論。
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以下ネタバレ注意
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物語の最終盤、ラスボス戦のあとにティンカラーと共に空高く飛び上がったマイルズが、かなりの上空から受け身もウェブスイングもなくそのまま落下するも、奇跡的に生還するというシーンがある。
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流石にラスボス戦前にピーターが現れて一緒に倒したのではマイルズの成長物語にならないかもしれないが、ラスボス戦後のこのシーンなら「上空から落下しても平気でした」の違和感もなく、ピーターの(手助けを断られてもつい助けてしまう)責任感も演出できたのではという声が多い。
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もっとも、ピーターの外出先であるシムカリアでニューヨークに戻ってこられない程にとんでもない事件が起きていた可能性や、それが次回作で描かれる可能性もあるが。
問題点
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前作の時点でボリュームが少なめと評されていたが、本作ではさらにボリュームが減ってしまった。
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通常版は前作の発売当初の定価(税込7,452円)よりも安くなっているため、ボッタクリというほどではないが、やはり気になる点。
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Ultimate Editionなら前作がDLC込みで実質2,200円(税込)でついてくるため、前作を未プレイかつPS5を所持しているのであれば、お得ではある。
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前述した通り、時間のかかりやすいステルスパートが削除されたことも、ボリューム不足に感じる一因と思われる。
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放置されたままの前作の伏線
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前作で放置されたノーマン・オズボーンに関係する伏線はそのまま。今作ではほとんど登場することはない。
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とはいえノーマンとの因縁はマイルズよりもピーターの方にあるため、マイルズ主体のストーリーで登場させるのは難しかったと思われる。
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ヴィランの数もさらに減った
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前作でヴィランが少ない、ヴィランを出し惜しみしていると言われていたが、本作では有名ヴィランがほとんど出てこない。
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メインストーリーに関わってくるヴィランについては前述のプラウラーとティンカラーに加えて前作からライノが続投されるだけで、合計3名。前作の半分以下となってしまった。
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ただし、その分ヴィランの存在感は増している。前作のメインストーリーに登場したシニスター・シックスの大半が単なるボスキャラとして済まされたのに対し、本作のヴィランはストーリーにがっつり関わってくる。
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特にティンカラーとプラウラーの存在感は強め。
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一応サイドのストーリーを進めているとピーターが用意した特訓用ホログラムとして再現されたバルチャー(声もピーターが担当)、獄中から密かに部下に指示を出していたキングピンが映像で少しだけ登場する。
総評
前作と比較すると全体的にボリュームが減少しており、メインストーリーもマイルズを主軸として進んでいくため、往年の有名ヴィランもあまり登場しない。
そのため、本作を評するなら「前作の正当続編」というよりは「マイルズを主人公としたスピンオフ」といった方がしっくりくるだろう。
実際他所のレビューでも「2ではなく1.5」「大型DLCのような存在」という意見も少なからず見受けられる。
回収されずに放置された前作からの伏線も多く、前作の伏線が回収されると思って続きを楽しみにしていた人からするとガッカリしてしまう可能性もある。
とは言っても、ウェブ・スイングの爽快感や完成度の高い戦闘など、前作で良かったところは本作でも引き継がれており、メインストーリーも短めではあるが良質なものである。
決して出来の悪い作品ではないため、スピンオフとして割り切れるのであれば、十分良作と呼べる内容となっている。
余談
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本作のピーター・パーカーは前作(PS4版)から顔が変わっている。
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ピーターの顔は前作のPS5リマスター版で変わっており、本作のPS4版でもそれに合わせて顔が変わっている。
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ゲームとは関係ない話のため詳細は省くが、海外ではピーターの顔が変わったことについて問題になった。
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前作でカメオ出演したスタン・リー氏は本作開発前に逝去したため、流石に本作では登場しない…と思いきや、とある場所にスタン・リー氏をモデルとした銅像が設置されている。
その後の展開
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2021年9月に本作の続編『Marvel's Spider-Man 2』が発表された。対応機種はPS5で、2023年10月20日に発売された。
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『2』ではマイルズ・モラレスとピーター・パーカーのW主人公となり、ヴィランにはスパイダーマン最大の宿敵であるヴェノムが登場する。
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なお、この『2』と同時にスパイダーマンと同じMarvel Comicsのヒーローである『X-MEN』のウルヴァリンが主人公となる『Marvel’s Wolverine』もPS5向けに発表された。
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開発は本作と同じくInsomniac Gamesが担当し、内容としては本作と異なりバイオレンスなものになる模様。まだ開発初期段階らしく発売時期は不明。
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2022年11月19日には本作のWin版がSteam/Epic Games Storeにて配信開始。Win版移植は『Marvel's Spider-Man Remastered』のWin版移植を担当したSIE傘下のNixxes Softwareが引き続き担当している。
最終更新:2025年02月12日 11:18