不動明王伝
【ふどうみょうおうでん】
ジャンル
|
アクション
|
|
対応機種
|
ファミリーコンピュータ
|
発売元
|
タイトー
|
開発元
|
トーセ
|
発売日
|
1988年3月29日
|
プレイ人数
|
1人
|
定価
|
5,900円
|
判定
|
良作
|
ポイント
|
ファミコン初の3メガカセット 影の伝説から引き継がれたスピードと躍動感 多彩なアイテムと術の数々 ノーアイテム状態はまさに裸同然
|
概要
1988年3月にタイトーから発売されたアクションゲーム。
全体的なアクション等システムは1985年にアーケードで登場し1986年にはファミコンでも発売された『影の伝説』をベースに構成されている。
ただし正式な続編という扱いではない。また主人公アシュラナータは忍者ではなく密僧である(見た目としては『飛龍の拳』の龍戦士っぽい)。
ファミコン初の3メガロムカセットを活かし、多彩なステージやキャラクターを要しており、発展形というべき形に仕上がっている。
ストーリー
日本中が物の怪に取りつかれたように戦乱の火の手が各地で上がろうとしていた時代。
数々の武将らが古代印度羅から伝わる霊宝の「七支刀」と「宝珠」を手に入れようと魔手をのばしていた。
「七支刀」と「宝珠」とは、邪馬台の時代に卑弥呼の側近アグニが、印度羅へ三蔵として渡り、修行の末シャークムニから授かった霊宝なのだ。
そして、それらにはある不思議な力がそなわっていると言う伝えがあった。それはシャークムニの生誕の日、訶梨帝女の血をひく巫女が「五黄、六白、八白」の方角に宝珠をかざし
「慈救呪」と呼ばれる呪文を唱えると「三宝荒神」が現世に蘇り、立ちはだかる者すべてを消滅させる力を手にすることが出来るという言い伝えなのである。
宝珠の持つ力を封印する力を持つ七支刀は宝珠とともに4つに分割し比叡山「明王堂」に奉納され何人も近づけぬように守られていた。
しかし、天下支配を謀む「黒翁(くろおきな)」は「十二邪鬼」をあやつり、宝珠を奪い取ってしまったのだ。時を同じくして訶梨帝女の血をひくという巫女「小夜」が連れ去られてしまう。
破軍の野望を打ち砕くため、不動明王の血をひく若者「アシュラナータ」は、「小夜」の救出と宝珠を取り返すため今立ち上がった。
内容
-
ゲーム性としては上記『影の伝説』の特徴を引き継いでおり、8方向操作(ジャンプ含む)で移動し、刀と投擲武器で戦う。
-
ステージは全4ステージでラストステージ以外は4エリア構成になっている。
+
|
ステージの構成。
|
()内はボス。
-
ステージ1「明王堂」
-
エリア1「竹やぶ」(般若)
-
エリア2「魔僧兵」(魔僧兵)
-
エリア3「墓地」(仁王)
-
エリア4「凶王寺院」(妖魔大僧正)
-
エリア1「火炎山」(火具土)
-
エリア2「鐘乳洞」(幽鬼)
-
エリア3「幽鬼」(雪女)
-
エリア4「天狗塔」(天狗)
-
エリア1「底無し沼」(武蔵)
-
エリア2「城壁」(武士)
-
エリア3「石垣」(妖魔大将軍)
-
エリア4「城内」(紅姥)
|
+
|
「自動アイテム」画面中に現れるアイテムを取るとストックされ必要な時に自動的に使用される。
|
-
かわり身の術
敵の攻撃がヒットしてしまった時、身代わりになって死んでくれる。後述の連暴凶術を使った時は身代わりになってくれない。 このゲームの生命線とも言える最も重要なもの。
-
黄金の孔雀
アシュラナータが底のない落し穴に落ちた時、孔雀が舞い下りて助けてくれる。
-
磐若門の鍵
ステージ内にある磐若門へ入ることが出来る。中は地獄界と天国界に分かれている。
天国界は後述の「単発アイテム」がタダで1つもらえる(1回のみ)地獄界は、中に小ボスがおり、これを倒すことで「単発アイテム」が得られる。
|
+
|
「セレクトアイテム」ボス敵をやっつけると出現し、取るごとに新しい攻撃を憶える成長アイテム。投擲武器。
|
入手した次のステージのボスに有効な事が多く、どの武器も使いどころは必ずあるように調整されている。
|
+
|
「即効アイテム」特定の方法で敵をやっつけると出現する。取った瞬間から一定時間効力を発揮する。
|
-
龍神変化
龍に変身して無敵になる。 変身中は空中を上下左右自由に飛ぶことができる。
-
風車斬り
刀攻撃ボタン押しっぱなしで、高速で刀を振り続けバリアのような役目を果たす。
-
チビ影分身
小さなアシュラナータ4人に分裂する。 これは時間ではなく、敵の攻撃を受けるごとに1人ずつ減り1人に戻ると効力が切れる。 これが有効な間は投擲武器が使えず攻撃は刀のみ。また、木登りができない。
-
分身の術
半透明な2人のアシュラナータに分身して敵の攻撃には無敵。
-
影分身
何人もの影を残しながら無敵になり自在の攻撃が出来る。 「分身の術」と違って、投擲武器も3倍放てる。
|
+
|
「単発アイテム」ゲーム中特定の場所に置いてあったり、磐若門の敵をたおすと出現し、これを取るとストックされる。このアイテムは1回使用するとなくなる。
|
-
飛翔の術
一定時間内自由に空を飛ぶことができる。やられると効力がなくなる。
-
風神の術
竜巻と共に画面内の敵を一掃することが出来る。
-
護神火の術
アシュラナータの周りを火の玉が回り、敵から身を守る事が出来る。
-
念縛の術
画面内すべての敵の動きを一定時間止める事が出来る。
-
脱却の術
地獄門から緊急に脱出しなければならない時にこれで脱出することが出来る。
-
雷神の術
画面内全ての敵にダメージを与える事が出来る。
-
排魔の術
一定時間、アシュラナータの周りに敵が出現しない。
-
極光の術
アシュラナータの向いている方向へ光線を発射出来る。
-
連暴凶術
アシュラナータが自爆して、残機と引き換えに敵に大ダメージを与える事が出来る。
|
-
これらアイテムを駆使して戦い、各エリアボスを倒すことでクリアとなる。
-
エリアボスを倒すとクリアとなり宝珠(上記の「セレクトアイテム」)を取り戻すことになる。
-
1ステージ(4エリア)をクリアすると七支刀の一部を取り戻すことになり、アシュラナータの刀が長くなる。
-
アイテム(特に「かわり身の術」)を集めるためには、ガンガン戦ってザコ敵を倒しまくる必要がある。
-
ただ一定の場所に長く滞在すると、STGで言うところの永パ防止キャラである「ドクロ忍者犬」がうじゃうじゃ大量に現れる。これが本作中でもトップクラスの俊敏さを誇るのでかなり厄介。ある意味ゲーム中最強の敵である。
-
しかも、こいつは絶対にアイテムを落とさないので、頑張って倒す意義が薄い。
これが現れたら移動するか磐若門が近くにあるなら、そこに入って出直せば、いなくなっている。
評価点
-
『影の伝説』を踏襲したスピーディーで躍動感あるアクション。
-
スピードがあり、また上下も含めたスクロールは非常に滑らか。しかも手裏剣に値する投擲武器が8方向に自在に投げられ、空中でも襲い掛かってくる幾多の敵をなぎ倒すことができるのは非常に壮快なものであり、良い部分はしっかり引き継いでいる。
-
上記の通り設定上は忍者ではないのだが、いい意味でそれと混同しやすい。
-
多彩な術やアイテムによる攻撃。
-
それぞれが個別の強みを持っているので攻め手に困らず、選択の幅が広い。
-
上記のように影の伝説での躍動感あるアクションに加えてこれが+αになっている。
-
また、それに頼らなくても連打やコントロール等プレイヤー自身の技量でもある程度は切り抜けられる。
-
上記単発アイテムによる攻撃技のアクションは非常にダイナミックなものが多く『影の伝説』にはない本作ならではの魅力といえるだろう。
-
3メガの大容量を活かした美麗なグラフィックや重厚なサウンド。
-
背景やクリア時のグラフィックなど、非常に鮮明で描き込まれている。
-
BGMも多彩で、それぞれの雰囲気に非常にマッチしている。
-
ボスはそれに相応しいタフさと、それぞれ個性を持っている。
-
『影の伝説』よりも非常に強化され、かなり攻撃をあてなければ倒せなくなり、よりボスらしくなった。
-
般若門の小ボスも含めて、それぞれが個性を持っており、使い回しは一切なくなった。
-
攻撃は相当激しい上に、落下死ポイントも多いが「かわり身の術」や「黄金の孔雀」により切り抜けられるのでゲームバランスは絶妙で良くできている。
-
そのため、存分に躍動感あふれるアクションの爽快感を堪能できる。
-
ただ前者は特に死ぬアクションが入るので見た目死にゲーのように見えてしまう一面も。加えて空中でやられると操作できずに真下に延々と落下していくアクションが入るのでテンポが削がれる。
-
また、根気さえあれば序盤で大量にストックして進めることも可能で、初心者の対しての救済にもなっている。
-
後半ステージほど敵の攻撃も激しくなるが、ステージクリアによりアシュラナータ自身の七支刀も長くなり攻撃を弾きやすくなっていく。
-
扱いやすいパスワード。
-
文字数27文字と割かし少なめで使われている文字のバリエーションも33種類と少ない。
-
その中身はアルファベット26文字と「!」「?」「*」「+」「-」「■」「▲」という構成で書き写しのミスがしにくい。
-
そもそも、これを使わなくても充分クリアーできるので初心者の救済的な位置付けと言えるだろう。
問題点
-
『影の伝説』と違って敵の攻撃を刀で振り払えないことが多い(特に初期状態など短い場合)。
-
そのため、少々打たれ弱すぎ感が否めないため特に「かわり身の術」は生命線となる。
-
「かわり身の術」が無ければ即死ゲームになりがちで、ゲーム開始時にはスタート地点付近で慎重な雑魚狩り作業をしなければならず、「かわり身の術」を順当にストックすることも少々運が絡むので、時間がそこそこかかってしまう。
-
動きが早いうえに、いきなり落下してきたり出現と同時に弾を撃つなど、敵の攻撃をかわしづらいこともあり、余計にアイテム稼ぎに慎重にならざるを得ない。
-
画面内に表示できるアイテムが1つのみ。
-
アイテムが出ている状態で他の敵を倒して別のアイテムが出現すると同時に、それまで出ていたアイテムは消えてしまう。
-
かと言って、上記の通り自力での防御が心許ないこともあって倒さざるを得ない状況になることも多い。
-
パスワード再開時の不便さ。
-
書写しミスのリスクは低いもののゲームオーバーにならないとパスワードが表示されない仕様のせいで再開時は「かわり身の術」か「黄金の孔雀」のストックがゼロとなるため、また集めなおさないといけない。
-
「かわり身の術」は出現率は高いが消費しやすく、「黄金の孔雀」は消費は少ないが出現率が低く、どちらも一長一短。
上記の通りパスワードに頼らず通しプレイでのクリアもさほど難しくないので、あまり気にならないのが幸いか。
-
最終面などは落とし穴がなく「黄金の孔雀」を消費できず、パスワードを得るには「かわり身の術」を全消費することになる
-
「連暴凶術」を使えば「かわり身の術」を残したまま残機を減らせるので、いずれも残してゲームオーバーになる事も出来る。
-
阿修羅の術が不便。
-
8方向に飛ばせると言いつつ、同時に8方向に飛ぶわけではなく、実際は4方向ずつ。それも、ななめ4方向と上下左右4方向が交互になるため、狙いが非常につけづらい。
-
正面の敵に連続ヒットさせることができないため、特にボス戦では、効果が残ったままだと、邪魔にしかならない。
また、同じ方向に連続で飛ばないということは、連射速度が半減するも同然なので、ザコ相手でも危険が増える。
-
そもそも、「影の伝説」の同名術ではちゃんと8方向に同時に飛ばせていたので、劣化しているとしか言いようがない。
-
無敵になる術。
-
チビ影分身の術は一定回数しか耐えられず、効果中は剣しか使えないため、分身・影分身の下位互換に近い。そのままボス戦に入ってしまうと、邪魔でしかない。また、効果中は木登りができないため、場面次第では逆効果になってしまう。
-
分身と影分身にしても、いちおう若干の違いはあるにせよ、無敵アイテムという点では効果がかぶっている。さらに、龍神変化を入れると、無敵アイテムは3種になる。同じような効果のアイテムが複数種類あるのは、便利な反面、ゲーム的には無駄が多いのではなかろうか。
-
ボスと小ボスについて。
-
画面外に出ると、向こうからは絶対戻ってこないため、こちらから近づかざるを得ず、不利。
-
ただ、あえて距離をとることで、体勢を立て直す時間を作ることはできる。
-
アイテムが見にくい。
-
出現したアイテムは小さいため、マークがわかりづらい。
-
ストックアイテムは何が増えたか見ればわかるからまだいいが、即効系がわかりづらいのは、いらないアイテムを取ってしまう怖れもあり、困る。
-
操作面。
-
ジャンプ中十字ボタンの逆方向を押すと、ジャンプを止めてその位置で落下するが、その落下中は一切の空中制御ができないため、敵の的になるし、途中の足場にも移れない。
-
十字ボタンの下はしゃがみだが、足場から下りる操作も兼ねている。上下移動が簡単な反面、暴発しやすく、実質最下段かすり抜けられない足場以外ではしゃがみ不可。
-
ボス戦が長い。
-
どいつも攻撃チャンスも多くなく、しかも耐久力も高い。そのくせ動き回るため、どうしても長丁場になってしまう。さらに、弱点が体の一部しかかったり、ノーマル攻撃は玉が効かない(剣のみ有効)ボスもいる。
-
ステージ2-3は、敵の弾が背景の色に混ざって非常に見にくい。
-
ただ、ボスによっては、パターンに入れることもできる。
-
1UPする浮遊仏のアイテム。
-
般若門で特定の条件を満たしたうえで特定の行動をとらないと出現しないのだが、その条件がなかなか満たされないため、いくらプレイしても1つもお目にかかれないこともあり、全く頼れない。といって、他に残機を増やす方法も無いため、結局はかわり身頼りになる。
総評
『影の伝説』の魅力だったスピーディーで躍動感あふれるアクションはより磨かれ完成度の高いものになり、多彩なアイテムが導入されてプレイスタイルの幅も大幅に広がった。
更に「ファミコン初の3メガ」という触れ込みに恥じない洗練されたグラフィックにより描かれた壮大な世界。キャラクターもまた非常に細かく描かれ、主人公アシュラナータ共々、ハイスピードで躍動する姿はまさに壮快で胸躍るものがある。
加えて多彩な曲調のBGMもまた非常に高い次元で完成されており、その世界観の魅力を存分に引き出している。
発売が社会現象にまでなった『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』のすぐ後だったことや、アクションにしても早くから注目を集めていた『スーパーマリオブラザーズ3』に話題をかっさらわれた不遇もあって当時は過小評価されてしまっていたが、当時は勿論のことファミコン全体でもハイレベルなクオリティを誇る紛れもない正統派な名作に間違いない。
余談
-
本作のタイトル「不動明王」とは主人公アシュラナータそのものである。
-
サンスクリット語で「アチャラ」=「不動」、「ナータ」=「守護者」で「不動明王」=「動かざる守護者」。
-
また発音の微差でなんとなくピンと来るとは思われるが「アチャラ」とは6本腕で有名な「アシュラ(阿修羅)」と同義語である。
-
本作のヒロイン「小夜」は「奇々怪界シリーズ」からのゲスト出演であり、訶梨帝女の血を引く巫女として登場する。
-
本作では八頭身の美女だが、上記シリーズで登場する本来の「小夜」はコミカル路線のような低頭身キャラである。
-
パスワードは適当に入力しても、結構な確率で通る事が多い。何面でアイテムがどれぐらいあるかはお楽しみ。
-
DSの『影之伝説』では、本作をプレイした経験者がニヤリとできる演出とステージがある。
最終更新:2024年07月07日 20:40