紙巻き煙草

登録日:2012/02/08 Wed 06:19:28
更新日:2024/12/19 Thu 14:20:49
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当記事は喫煙を勧める内容ではありません!!
喫煙は健康被害などのリスクがあります。
また、20歳未満の喫煙は法律で禁じられています。

紙巻き煙草とは煙草(たばこ)の種類の一つ。
刻んだタバコ葉を紙で巻いた製品である。



■煙草と紙巻き煙草

煙草自体はかつては、アメリカ大陸のインディアン達が宗教の儀式として使っていた。
1492年にコロンブスが持ち帰ったことでヨーロッパに広まり、それからわずか130年程でほぼ全世界に広まっていった。驚異的な伝播速度である。
日本では1543年に鉄砲と共に大陸から伝わり、煙管での喫煙が広まった。

現在の紙巻き煙草が広く広まったのは20世紀になってからである。
とはいえ紙巻きに限らなければ、刻み煙草をトウモロコシの葉などで巻いたものが原産地のアメリカでも古来から存在していたという。


■概要

煙管等とは違い、喫煙器具を使わなくても吸え、なおかつ吸うのに特別なコツがいらない為*1、世界中で主流となっている。
日本でも煙草と言えば大体は紙巻き煙草を指す。

かつての日本は先進国の中でも特に喫煙率が高く、成人男性の9割以上が喫煙していた時期もある。
それに応対するように、かつては路上はもちろん電車や飛行機、映画館やデパート等あらゆるところで煙草が吸えた。

庶民の嗜好品というイメージが強く、コンビニやスーパーなどでも(成人であれば)購入できる。
煙草製品を扱う専門店も存在しており、珍しい銘柄も販売されている。

日本国内での値段は一箱(20本)430円~640円(2023年現在)くらいの物が主流であるが、
『ザ・ピース』(20本1000円)、『中華 ソフトパック』(20本1000円)、『トレジャラー・ブラック』( 20本3000円 )等の高級銘柄もある。
高額な煙草は喫煙者への贈答品として使用される事が多く、隣国の中国でも似た文化がある。

著名人にも喫煙者が多く存在しており、煙草がトレードマークになっている人物も多い。
業界ではドライバーや看護師、アニメ製作スタッフ、プロ野球選手など、ストレスやプレッシャーを感じやすい環境の人に喫煙者が多いとされる。

煙草を吸う事により、体内に存在するニコチン受容体にニコチンが付着することで神経伝達物質の放出が促され、放出された神経伝達物質の効果によってストレス解消や多幸感を得られる。
更に赤ちゃんがおしゃぶりをくわえたがるように人間には口唇要求という、口に物をくわえたがる本能があり、それも満たされる。

また、お酒と同様にコミュニケーションツールとしての側面も強く、「タバコミュニケーション」という言葉もある程。
喫煙所という限られたスペースに「喫煙」という共通点がある人が集まる為、立場や年齢に関わらず会話のきっかけを作りやすいのである。
アニヲタ諸君の中にも、喫煙所の会話がきっかけで、友人が増えた人や仕事に繋がった人もいるのではないだろうか?

一方で、ニコチンやタールを始めとする様々な有害物質が含まれており、喫煙は健康を害する要因の一つとなる。
先述した効果が見込めるとはいっても、喫煙習慣はより大きな悪影響を及ぼす可能性が否定できない。
また、副流煙などによる周囲への悪影響、臭い、ヤニ汚れ、吸い殻のポイ捨て、タバコ休憩*2による業務の効率悪化など、周囲にも悪影響を及ぼす事から、世界的に禁煙運動が盛んになっている。
日本においても、禁煙スペースは年々増加しており、更に生涯喫煙しない事を誓約させる学校や喫煙者を採用しない企業なども出てくるようになった*3
その影響で喫煙者の比率も年々減少傾向にある。


■形状

銘柄にもよるが大体は直径約6~7mm、長さは7〜10cmが一般的。

巻紙(シガレットペーパー)は普通の紙と違い葉に適度な酸素を与え、尚且つ葉と同じペースで燃える紙が使用されている。
ライスペーパーとも呼ばれるが食用のそれとは違うので間違っても生春巻とか作らないように。
フリじゃないぞ!

吸い口にはフィルターの付いたものが主流になっておりニコチンやタールを吸着する役目がある。
日本では活性炭を加えたチャコールフィルターが多い。
また、コンビニ等でプラスチック製のフィルターも売られている。

両切りや口付きというフィルターの付いていない煙草もある。

・両切り

煙草の両端まで葉が詰められている。
フィルター付きに押され現在は種類が少ないが、ピース(10)等が現在も製造されている。
そのまま吸うと口の中に葉が入る為、机の上でトントンして葉を詰めるか、フィルターやシガーホルダーを使用すると吸いやすい。


・口付き

吸い口の部分が空洞になっている。
日本では消滅してしまったが海外にはまだ残っている。
シガリロにもそこそこ見られる。


■喫煙方法

1.吸い口の部分をくわえ、吸いながら火を着ける。
2.適度なタイミングで火を消す。多くは2/3程吸ったら火を消し捨てる。
これだけ。
この手軽さから広及したと思われる。

現在でこそ煙を肺まで入れる「肺喫煙」が主流となっているが、煙を肺まで入れない「口腔喫煙(いわゆる吹かし)」で吸っても構わない。
むしろ、口腔喫煙の方がタバコの温度が上がりにくく、味や香りを感じやすいとされる。
また、紙巻き煙草に形が似たリトルシガーは口腔喫煙で吸う物とされる。
ただし、すべてのタバコに言える事であるが、口腔喫煙だからと言って害がないわけではない。

中にはもったいないとフィルターぎりぎりまで吸ったり、吸い殻(シケモク)をもう一度吸う人も居る。
しかしシケモクは風味が落ちる為あまり好まれない。

解して別の紙に巻き直したり、煙管を使う人も居る。

こぼれ話として、戦時中に物資不足でたばこの葉はあるが巻紙がないという事態に陥った際に
辞書を破いてたばこを巻いて急場をしのいだという話がある。
実際に試してみた人の感想として、「たき火の煙を吸っているようだった」と決してうまいものではないらしい。


■紙巻き煙草に近い煙草及び代替品

ここでは紙巻き煙草に近い煙草及び代替品を紹介する。

+ 長いので折りたたみます。

・手巻きタバコ

刻んだたばこ葉(シャグ)、巻紙(シガレットペーパー)、フィルターを別々に買い、自分で紙巻き煙草を巻いた物。
タバコ葉をブレンドしたり、好みの巻紙やフィルターを選んだりと組み合わせが豊富なのが特徴で、1本あたりのコストも安いと言われる。
また、通常の紙巻き煙草や葉巻を解体して巻きなおす人もいる。
紙巻き煙草が高額な海外での人気が高く、日本でも専門店に行けば売られている。


・リトルシガー

紙巻き煙草に似た形状だが、巻紙にもタバコ葉を混ぜた物を指す。
税法上は葉巻に分類され、計測方法の関係でニコチンやタールの表記が無く( 実際はニコチン・タール共に含まれる )、
葉巻なので口腔喫煙で吸うものだが、肺喫煙で吸う前提で作られている銘柄もある。

銘柄によってはコンビニやスーパーには無く、専門店でないと買えない銘柄も多い。
しかし、紙巻き煙草とは税率が違う事を利用した安価な銘柄が紙巻き煙草の代替品として勢力を伸ばしつつあり、
コンビニなどでも買えるリトルシガーが増えている。

チェリーやバニラ等の着香がされた銘柄も多く、こちらを好む人も多い。
着香された銘柄でなくても副流煙の匂いが独特なので、喫煙スペースであっても周りの空気を読んで喫煙した方が良いだろう。


・クレテック

タバコ葉にクローブや香料などを添加した紙巻き煙草の亜種。
インドネシアで盛んなタバコであり、日本国内でもグダン・ガラム(通称ガラム)やジャルムなどが販売されている。

扱いは紙巻き煙草に準じるが、お香のような独特の香りが特徴であり、喫煙場所には注意が必要。
また、通常の紙巻き煙草に比べて高いニコチンとタール値を持つ*4


・シガリロ

紙巻き煙草サイズの葉巻。
サイズによってミニシガリロやクラブサイズなど細かく分ける事もある。
葉巻としては湿度や温度を管理する必要のないドライシガーに分類され、湿度管理が必須のプレミアムシガーとは区別される*5
葉巻と言っても形や吸い心地を整えるために紙やフィルターを併用した製品も多い。

葉巻同様に口腔喫煙で吸うものであり、ニコチン・タールの表記が無い( こちらも実際はニコチン・タール共に含まれる )のが特徴。
プレミアムシガーの廉価版といった物から着香された物まで、様々な銘柄が存在する。
紙巻き煙草よりも高額な銘柄が多く、コンビニやスーパーでの取り扱いは少ない。
こちらも専門店での購入が主になるだろう。

副流煙の匂いが独特なので、喫煙場所には注意。


・加熱式タバコ(IQOS、glo、Ploom S、ヴェポライザーなど)

専用機器を使い、紙巻き煙草に似た形状の専用タバコ(又はシャグ)を加熱して吸う物。
燃焼させて煙を出すのではなく、加熱してエアロゾルを生成するという点で紙巻き煙草と異なる。
特にIQOS、glo、Ploom Sは、有名銘柄と同ブランドで販売されており、より安全で悪臭が少ないという宣伝文句の影響もあり、
紙巻き煙草から移行する人が多い。
ただし、 有害物質や臭いは0ではなく、通常の紙巻き煙草と同等のマナーを求められる
シャグや通常の紙巻き煙草を利用できるヴェポライザーも加熱式タバコの一種といえる。
なお、液体式電子タバコ(VAPE)と混同されやすいが、全くの別物。


・プルームテック

JTが発売する低温加熱式タバコ。
気化したリキッドをタバコ葉に通過させる事でニコチンを付与するという仕組み。
実態としては液体式電子タバコ(VAPE)に近いのだが、日本国内ではニコチン入りリキッドを販売できない為、
このような仕組みになっている。
臭い、有害物質が段違いに少ない事を宣伝しているが、0ではないので相応のマナーは求められる


・無煙たばこ(スヌース、嗅ぎタバコ)

鼻や口に直接タバコを含んで味や香りを楽しむ物。
専門店に行けば売られており、日本ではスヌースとスナッフが入手可能。

スヌースはスウェーデンで生まれた嗅ぎタバコであり、上唇と歯茎に挟んで使用する。
JT等から日本人向けの銘柄が出ている他、専門店に行くとスウェーデンの銘柄も売られている。
ただし、スウェーデンの銘柄は日本人には強い物もあるので注意が必要。

スナッフはタバコ葉の粉末を鼻に吸い込むという物。
鼻の粘膜からニコチンを摂取し、鼻の中に残る香りを嗜む。

いずれも煙が出ず、喫煙が不可能な場所でもニコチンを摂取できる事から、近年需要が高まっている。
ただし、相応のマナーが求められ、怪しい物をしていると勘違いされないように注意が必要。

(特にスヌースは)紙巻き煙草よりも害が少ないとされるが、当然ながら無害ではない。
肺がんのリスクこそ減るが、口腔や鼻腔に関するがん等のリスクが高まると言われている。

また、吸収された有害物質が汗などに交じって周囲に排出される「三次喫煙」の懸念も指摘されており、
完全禁煙の場や「三次喫煙」を気にする人がいる場では使用を控える等の配慮も必要だろう。


・茶葉タバコ、ハーブタバコ

タバコ葉ではなく、茶やヨモギなどの葉を使用した煙草状の製品。
タバコという呼称はなるべく避けられ、主に茶葉スティックといった名称で販売されている*6
加熱式たばこで使用するスティックと紙巻き煙草同様に火を付けて吸う物の2種類がある。

たばこ税の影響を受けず安価であり、ニコチンを含まないとされる為、節煙及び将来的な禁煙を目指す人によく利用される。
ただし、加熱や燃焼といった過程を経る関係上、タールなどの有害物質が発生し、副流煙や匂いも発生するので、禁煙の場所では吸ってはいけない。

法律上のたばこ製品ではないが、20歳以上の使用を前提としており、未成年者の所持・使用はトラブルの原因になるので控えよう。
また、法律上の定義が曖昧故に、品質や安全性が製造・販売企業の良心に委ねられているという実情もある。


・ネオシーダー

紙巻き煙草に似た形状の咳止め薬。使用方法も紙巻き煙草とほぼ同じ。
原材料は、ヤマアジサイの葉を使用し、塩化アンモニウム、安息香酸、カンゾウエキス、ハッカ油、香料などが添加されている。
注意書きには、微量のニコチンやタールが含まれる為、禁煙具として使用してはいけない旨、未成年者や非喫煙者も使用してはいけない旨が記されている。
特に未成年者の所持・使用はトラブルの原因になるので控えよう。


・液体式電子タバコ(VAPE)

ここでは紙巻き煙草や加熱式たばこから移行する人向けの説明をする。
VG*7、PG*8、香料等からできたリキッドを気化させて吸う物。
リキッドを気化するアトマイザー*9、バッテリーを入れて操作を行うMODと呼ばれる部分に分かれている物が主流。
日本国内の現行法では喫煙具でないが、多くのショップ、商品が20歳未満への販売を自主規制している。

VAPEという用語は知らなくとも、
「電子パイポ」「SMOOTH VIP」「myblu」「FLEVO」「Frienbr」「DR.VAPE」などを店頭や宣伝で見た事ある人は多いだろう。
これらも全てVAPEの一種である*10
近年では「電子シーシャ」「ミニシーシャ」と呼ばれることも増えているが、本来のシーシャとは仕組みが全くの別物である。

海外セレブの影響やカスタマイズ性も高く*11、趣味やファッションとしての人気が高まっている。
爆煙の(大量の煙が出る)物、味が出る物、見た目がオシャレな物まで様々。

趣味として始める非喫煙者もいるが、大多数は元喫煙者(または並行して嗜む人もいる)。
紙巻き煙草や加熱式たばこよりも安全とされ、たばこ税もかからない為、こちらに移行する人も増えてきた。
禁煙、減煙目的であれば、複雑な機構の物は必要ないかもしれないが、せっかくであれば趣味の1つとして始めるのも一興だろう。

なお、 VAPEの安全性に関しては研究段階であり、安全性を巡って肯定的な意見から否定的な意見まである
日本国内ではニコチン入りリキッド(通称ニコリキ)を販売できない上にリキッドの成分も食品グレードの物*12であり、
一般的な使用方法内であれば(通常のタバコや加熱式タバコよりも)安全性は高いと言われている。
ただし、法律上の定義が曖昧故に、品質や安全性が製造・販売企業の良心に委ねられているという実情もある。

煙や匂いはタバコとは性質が異なるが、禁煙の場では控えよう
また、機種やリキッドによっては大量の煙(いわゆる爆煙)が出たり、甘い香りがしたりする為、喫煙所でも目立つ。


・タバコ型菓子

紙巻き煙草の外見を模したお菓子。箱だけでなく中身の包装も一本一本それらしく見せていたりする。
材料はチョコだったりココアやハッカだったり。なのでシガレットチョコ、ココアシガレット等とも呼ばれる。
棒状のお菓子をタバコに見立てることもあり、こうしたお菓子を悪戯に使った経験を持つ人は多いのではなかろうか?

元々は喫煙者の口元の寂しさを紛らわせる為の菓子だったらしい。
無論、火をつけるものではないし、煙だの何だのの吸引も無い。
ニコチン等も入っていないので子供でも安全安心だが、糖分などを含むため食べ過ぎに注意。

創作でも、喫煙がはばかられる状況(未成年者だったり、火気厳禁の場所、本人が禁煙中など)において「ああこれ?タバコチョコだよ」というやり取りが登場したりする。


・ジョイント

大麻
海外では厳しいルールの元に合法化・非犯罪化*13されてる所もボチボチあり*14、煙草とは別の専用の喫煙スペースや行政の許可を得た販売店もあったりする。
だが日本では許可無しの所持・使用の時点で犯罪なのであり、吸ってはいけない(戒め)
2024年に大麻取締法から麻薬取締法で管理される物質となり、それに伴って使用罪が適用されるようになった。


■たばこと広告

主に製品を紹介するものと喫煙マナーの啓発を狙った2種類に大別される。
日本では古くは江戸時代から広告が存在し、歌舞伎役者の浮世絵に煙草を持たせた浮世絵が残されており、これは日本最古となるタレントを用いたCMとされている。

かつては民放の21時以降の時間帯でテレビCMが頻繁に放送されており、
  • パッケージに合わせ、山や雪原など世界の白い景色を流した「マイルドセブン」
  • 人気ハリウッドスターを起用して30秒で映画並みのストーリーを作り上げた「LARK」
  • ニューヨークの夜景をバックにAORの楽曲を流す「パーラメント」
など、今なお評判の高い名作CMも数多く輩出した。
深夜番組でCMをみて煙草にあこがれた人も多いのではないだろうか。

なお、日本のタバコCMは時間帯に加え「若年層に人気のタレントを使わない」という珍妙な規制が存在した。
これはキャビンのCMに俳優の三浦友和を起用したところ、アイドルかどうか参議院の予算委員会で審議の対象になったのが理由。
これらは1998年4月の自主規制により姿を消したが、2021年に配信サービスで一部復活したものもある。

また、モータースポーツのスポンサードとしてもおなじみで、WECや二輪のロスマンズ、F1のマルボロ、インプレッサの555等各選手権でチャンピオンを取るなど活躍を残した車両も多い。


■有害性・禁煙の効果

※ご自身の健康問題については、専門の医療機関に相談してください

煙草のパッケージにも書いてある通り、煙草を吸うことで肺がんをはじめとする様々な病気になるリスクが高くなる。
個人差や別の要因による差もあるが、喫煙者と非喫煙者の寿命の差は4年にも及ぶ。
小谷野敦氏や養老孟司氏は「自動車の排気ガスの方が有害だ」と反論しているが、産業技術総合研究所のデータでは排気ガスによる余命損失が国民1人辺り14日なのに対し、受動喫煙では134日にも及ぶとされている。

「喫煙率が低下しているのに肺がん患者は増えてるから煙草と肺がんは関係ない」という反論もあるが、これはあくまでも医療技術の進歩で肺がんを発見しやすくなったのと高齢化社会により高齢者の割合が増えた結果であり、肺がんの年齢調整死亡率は1996年をピークに減少している。
また、煙草を吸ってすぐ肺がんになるわけではなく、煙草をやめてもすぐに今までのダメージが消えるわけでもなく、数十年程度のラグがあるので、煙草の全盛期だった昭和40年頃の世代が今肺がんになっているともいえるのだ。
先述の養老氏が「肺が黒くなるのは年をとれば誰でもそうなる」とも言っているが、養老氏が現役だった頃は男性の9割以上が喫煙者かつあらゆる所で喫煙できたため、受動喫煙を受けることも今より非常に多く、そもそも「ほとんどの人が煙草の影響を受けていた」時代である。

「喫煙率の高い日本が平均寿命が世界で最も高い」という反論もあるが、そもそも平均寿命といううのはその年に生まれた赤ちゃんが後何年生きられるかを予想した数値であり、煙草の有害性が明るみに出る前は喫煙率と平均寿命の因果関係をほぼ考慮しておらず、有害性が発見されて以降喫煙率が減っている以上将来的に煙草を吸う子供も減ると考えられ、煙草関係なく平均寿命が低くならないのは当然である。

また、脳への悪影響も指摘されており、その最たるものが「ニコチン依存症」。
煙草に含まれるニコチンは「依存性物質」であり、ニコチン依存症になるとニコチン切れによって集中力が低下したりイライラを感じさせる。
こうなると喫煙によって解消するのは「ニコチン依存性によるニコチン切れのストレス」でしかなく、集中力や落ち着きに関しても「煙草で吸う事で一時的に誤魔化している状態」に過ぎない。
禁煙が難しいと言われる所以も、「ニコチン依存症」にあると言われている。
更に喫煙という不自然な形でドーパミンを出し続けることで、普段のドーパミンの放出量を減らしてしまうリスクも否定できない。

また、人体に対して直接的な影響があるわけではないが、タールによって壁や家具等に汚れや臭いが付着したり、精密機械を破損させる恐れがある。
賃貸住宅に住んでいる人や精密機械を触りながら喫煙している人は注意をした方が良いだろう。


受動喫煙の影響

誰もが一度は聞いたことがあると思うが、「副流煙*15」や「吸出煙*16」にも有害物質が含まれる*17
これを、意図せずに吸い込んでしまう事を「受動喫煙」と呼び、受動喫煙による健康被害への懸念が問題となっている。
更に近年になると、衣類や身体、壁等に残った有害物質を吸引してしまう「三次喫煙*18」の危険性も指摘されるようになってきた。
健康増進法の27条にも「喫煙禁止場所以外の場所において喫煙をする際、望まない受動喫煙を生じさせることがないよう周囲の状況に配慮しなければならない」とあり、 法律上でも望まない受動喫煙を生じさせてはいけない事が明確にされている

「受動喫煙の有害性の実験は密閉された場所で行われており、現実的にそのような状況で副流煙を吸うことはない」と反論もあるが、
職場で受動喫煙対策がされていないと肺がんのリスクが1.2倍~1.8倍、脳卒中が1.3倍、虚血性心疾患が1.2倍、SIDSに至っては4.7倍のリスクがあるとされ、厚生労働省の発表では受動喫煙で年間1万人以上が亡くなっていると言われている。

また、最近では胎児~幼少期に受動喫煙の影響を受けると、ADHDやうつ病、不安障害といったリスクが高くなるという研究結果がでており、周囲に未成年者や妊婦がいるような環境での喫煙は特に注意が必要である。
「過去にはそこらじゅうで煙草が吸われていたが特に発達障害の人など周りにいなかった」という反論もあるが、精神疾患に対しては今よりも研究が進んでおらず、発見も難しかった上に認められる例も今より少なかったという面は忘れてはならない。

また、受動喫煙はペットにも悪影響を及ぼす可能性が指摘されている。
犬や猫などのペットを飼育する人や動物と触れ合う機会のある人は注意が必要だろう。

喫煙によって様々な悪影響が周囲にも広がっているという事実も忘れてはいけない。
分煙、禁煙化が世界各地で進んできており、より一層の配慮が求められる事だろう


禁煙の効果

禁煙することで、体調に好ましい影響を与え、様々な疾病のリスクを減らすことができる。
また、禁煙することで煙草代が減り節約ができる他、周囲の人物を副流煙に晒してしまう恐れも減る。

禁煙を開始すると、数十分後から血圧や脈拍が正常化し、禁煙から1年後には肺機能が回復、5年以上経つと肺がんのリスクも下がる。
ただし、あらゆる疾病のリスクが非喫煙者レベルに近づくには10年~15年の期間がかかると言われている

近年は、病院に禁煙を支援する「禁煙外来」が出来ており、禁煙を検討しているであれば受診する価値はあるだろう。
「35歳以上1で日に煙草を吸う回数×煙草を吸っている年数が200を越える」という条件を満たせば保険適用で禁煙治療を受けることができ、35歳以下ではこの条件を満たさずに保険を受けられる。

禁煙時の年齢が若ければ若いほど効果は大きいが、かといって遅すぎるということもない。
禁煙を強制するものではないが、健康のため、家族・友人・知人・ペットのために禁煙を選ぶのも選択肢の1つである。


■喫煙のマナー

先述の項で述べた通り、喫煙可能な場所であっても望まない受動喫煙を生じないように喫煙場所に配慮する必要がある。
喫煙自体は成人であれば自由に認められた権利だが、喫煙によって周囲に悪影響を及ぼすという事実も忘れてはいけない。

煙草の火は約700〜800度近い温度になる。
万が一、人に当たってしまえば、火傷失明させてしまう危険性が高い。
なので、歩き煙草は絶対にやめて、喫煙可能なスペースか喫煙所で吸おう。
歩きタバコを条例で禁止している区域も多く、携帯灰皿を使っているからといってどこでも吸えるわけではない。

また、子供・認知症患者・ペットなどが煙草(吸い殻含む)を誤飲しないように注意すること。

また、有害物質以前に、タバコの匂いや煙を苦手とする人も多く、 服や髪等に残った臭いや口臭のケアもマナーといえる
喫煙禁止になっている場所では勿論、人通りの多い場所や煙草の煙や匂いが苦手な人の前での喫煙は避けよう。


■禁煙ファシズム

煙草の規制、禁煙運動を非難する言葉。
禁煙運動に反対して喫煙の自由を謳う者、禁煙運動との折衷案として分煙を提案するような者まで多岐に渡る。

(当時)大学准教授である千葉雅也氏は、「非喫煙者が煙に触れない権利があるのと同様に、喫煙者には、非喫煙者が煙に触れていない状態と同じく心地よく喫煙しつつ飲食する権利があるから答えは分煙か店舗の種類を分けることで、禁煙のみが主張されることはおかしく、人権論として不平等だ。」と主張している。

作家・評論家の古谷経衡氏は「酒や塩分、食品添加物、もっというと放射線廃棄物だって有害なのに受動喫煙防止法で煙草だけ規制するのは不公平だ(要約)」と主張している。

一方で、「禁煙ファシズム」という言葉自体が的外れであるという批判も根強い。
近年の禁煙運動は、上記の有害性は勿論の事、それ以外に路上喫煙やポイ捨て等のマナーの悪い喫煙者が要因であることも忘れてはならない。
弁護士の伊佐山芳郎氏は「歴史認識のない人間による言葉の誤用」であり議論に値しないと一蹴している。


■たばこ税

国税に地方税など様々な税金がかかっており、消費税を含めると実に6割以上が税金となっている。
紙巻き煙草は本数あたりで税額が決まっており、葉巻などは1gを紙巻き煙草1本分に換算して計算されている。

たばこ税による税収は年間2兆円にも及び、「喫煙者は国に貢献している」というジョークもあるが、実際には煙草の健康被害による医療費や吸い殻の清掃費用、喫煙所の設置費用等による経済損失の方が大きいと言われている。

煙草が年々値上がりしているのは、たばこ税が増税されている影響が大きい。


■創作における煙草

大人や不良を示す記号として、創作作品においてもよく登場する。
ルパン三世のルパン次元ONE PIECEサンジ魔人探偵脳噛ネウロ葛西善二郎等、煙草を咥えた姿がトレードマークと言えるキャラクターは数多い。
禁煙・分煙が盛んになってからはそのような記号として用いられることは減る一方、「作中の時代では共有空間で喫煙もザラだった」という様な時代描写として用いられるようになった。

一方で、禁煙・嫌煙運動が盛んな現在では、喫煙シーンを嫌う人や喫煙のきっかけになるという指摘も少なくなく、創作で扱う際も配慮が必要と言える。
また、実写作品や演劇の場合は、演者、スタッフ、観客などが煙に曝露することが避けられないので、細心の注意をしなければならない。
実際、喫煙描写を入れること自体にもメスが入ることも多く、過去(概ね1970年代まで)が舞台の作品でも喫煙者や喫煙シーンが登場しないという、逆にリアリティが失われた設定になった作品もしばしば。
日本は自主規制だが、国によっては法的な規制があることも。

多くの国で違法である未成年喫煙の描写については媒体によって扱いが異なる。
小説・漫画等では「作中の法制度では吸える年齢」「作中でも犯罪だと承知の上で吸う」といった描写も多いが、映像作品になると大抵は規制される。
なので「喫煙描写を無くすまたは変更する」(ヴィクトリカ・ド・ブロワ等)、「(喫煙シーンが必要な場合は)黒塗りで誤魔化す」(空条承太郎等)、「咥えているものをタバコ以外に変える」(サンジ等)、「年齢の方を誤魔化す」(ステイル=マグヌス等)といった形で規制に対応する事が多い。


■喫煙者のキャラクター



■余談

最後にもう一度書くが、 20歳未満の喫煙は法律で禁止されている
近年、成人年齢が18歳に引き下げられているが、煙草に関しては別の法律で20歳以上のままである。
勧められても喫煙してはいけないし、成人が喫煙を勧めてもいけない。

煙草の火種を身体に押し付ける「根性焼き」という行為がある。
不良の度胸試しやいじめで行われることが多い。
他者への根性焼き(強要することを含む)は傷害罪として処罰され得るので、絶対にやらないこと。
詳細は項目を参照。


喫煙はマナーを守って楽しみましょう!


追記・修正は喫煙マナーを守ってお願いします。

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最終更新:2024年12月19日 14:20

*1 葉巻やパイプ煙草などは、うまく吸うのにコツが必要である。

*2 喫煙のために席を外すこと。休憩時間に喫煙する場合は含まれない。

*3 ただし、これはこれで喫煙者の権利を侵害するとして批判が無い訳でもないが。

*4 例を挙げると「ガラム スーリヤ」はニコチン:2.1mg、タール:42mgである。

*5 ただし、ドライシガーも湿度管理をする事で風味が変わる事もあり、湿度管理が全くの無意味な物ではない。

*6 実際にお茶として使用できる物もある。

*7 ベジタブルグリセリン。

*8 プロピレングリコール。

*9 機種によってはカトマイザーやカートリッジとも呼ばれ、どれも定義が異なる。

*10 実態としては海外製品のOEMが多い。

*11 規格さえ合えばアトマイザーやMODを自由に付け替えれる物もある。

*12 PG(プロピレングリコール)、VG(ベジタブルグリセリン)、香料が主成分。リキッドによっては甘味料、清涼剤、着色料等が入れられる事もある。

*13 違法ではあるが事実上処罰されないこと。

*14 勘違いされがちだが、嗜好目的での使用を合法化している国家は少ない。また、合法化・非犯罪化されているからといって、安全性が担保されている訳でもない。

*15 煙草の先から出る煙。

*16 喫煙者が吐き出す煙。

*17 直接体内に吸い込む主流煙と比べて広範囲に広がる為、一概に比較は出来ないが、副流煙の方が有害物質が多いとも言われている。

*18 残留受動喫煙、サードハンドスモークとも呼ばれる。

*19 設定の食い違いであり、本来の設定ではタバコの臭いを嫌っている。