田口清隆

登録日:2018/03/06 Tue 00:02:46
更新日:2024/07/07 Sun 10:37:28
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田口(たぐち)清隆(きよたか)とは、日本の映画監督・特技監督である。


【経歴】

1980年5月7日、北海道室蘭市生まれ。
幼少期は『ウルトラQ』『ウルトラマン』の深夜再放送、中高生時代は「ゴジラVSシリーズ」「平成ガメラシリーズ」「平成ウルトラシリーズ」を見て育つ。
中でも高校生の時に観た『ガメラ2 レギオン襲来』に大きな衝撃を受け、映画監督になる事を強く決意したという。

中高で自主製作映画を撮ったりした後、1999年に上京し日活芸術学院入学に入学。実習生として映画製作に参加するも、翌年に中退。
その後、専門学校の同期の武居正能氏の後継で『ウルトラマンコスモス』に助監督として参加。
ゴジラシリーズや仮面ライダーにスタッフとして関わりつつ、自主製作の怪獣映画『G』を完成。
なお、ゴジラには助監督や美術、仮面ライダーにはVFX(CGなどの合成の事)で参加している。
後述する監督作の巧みな合成は、ここでの経験が活かされているといえよう。

2009年には樋口真嗣氏の製作総指揮の下、『長髪大怪獣ゲハラ』を監督。『MM9』にも監督として参加している。

そして2011年の『ウルトラゾーン』にドラマパートの監督で参加し、高い評価を得る。
『ネオ・ウルトラQ』を経て、2014年の『ウルトラマンギンガS』ではウルトラマンの本流シリーズに監督としては初参加。
翌年の『ウルトラマンX』及びその次の『ウルトラマンオーブ』ではメイン監督に抜擢され、第1話・最終回および劇場版などを担当。

映画『劇場版 ウルトラマンオーブ 絆の力、おかりします!』では他の監督と共にカメオ出演し、怪獣をスマホで撮っていたら瓦礫に潰されて死亡する役を演じた。

ウルトラマンジード』から『ウルトラマンタイガ』までは各シリーズ2~3回の登板だったが、2020年の『ウルトラマンZ』では久々にメイン監督に。その後、2023年の『ウルトラマンブレーザー』でもメイン監督を担当。
さらに『Z』では吹原幸太氏、『ブレーザー』では小柳啓伍氏と共同でのシリーズ構成も兼任している。

東映作品には美術やVFXスタッフとしてのみの参加だったが、『魔進戦隊キラメイジャー』の第32話・第33話に監督として初参戦し、2022年には『仮面ライダーBLACK SUN』で特撮監督を務めた。
さらに、2024年には『仮面ライダーガッチャード』の第28話・第29話を監督。ウルトラマン・スーパー戦隊・仮面ライダーの3大特撮ヒーローでの本編監督を、坂本浩一監督に続き成し遂げた。


【作風】

田口氏の監督作品には際立ったいくつかの特徴が見られる。
後述するタグチップを含めてこのような描写があると明言がなくても「あっ、今回田口監督担当か」とファンに気付かれる。

①長回し
「長回しで色んな要素をつめ込むのが好き」とのことで、氏の監督作には1カットが数十秒続く長回しが多く見られる。
代表例としては、映画『劇場版 ウルトラマンX きたぞ!われらのウルトラマン』では、3体の怪獣とウルトラマン、3機のマスケッティ、生身の山瀬アスナ隊員が戦闘に参加する、見所満載の長回しカットがある。

②実景合成
ミニチュアセットではない、実際に撮った風景に怪獣などを合成する手法は古くから見られるが、氏の監督作では技術の進歩もあり、目新しい合成の仕方が見られる。
  • 固定された視点ではなく、手持ちカメラのような「ぶれる」視点に怪獣などが合成され、人間パートと巨大パートが同時進行する
  • 奥はミニチュアセットだが、手前には本物の建物や小物が合成され、ミニチュアか実景かが曖昧に感じられる
……など。『劇場版 X』の際には特にこだわった手法を取っている。

③オマージュ
川北紘一監督の作品を観て育ち、また樋口真嗣氏を師匠とする田口氏は、川北氏の光線が飛び交うド派手なテイストと、樋口氏のリアリティを重視したテイストのハイブリッドの作風を得意とする。

例えばザイゴーグ怪獣は殴り合いと光線が強ければ十分というコンセプトは、川北氏が監督した『ゴジラVSスペースゴジラ』のスペースゴジラへのリスペクトが強いとコメントされている。

また、川北氏がよく用いていたスモークを焚き、被写体を後ろから照らす事でシルエットが浮かび上がらせる演出も好んで用いる他、
『オーブ』最終回ではウルトラマンオーブが『ガメラ2 レギオン襲来』ばりのスライディング着地をかました。

近年では坂本浩一監督の手掛ける魅力的なヒーローの魅せ方を参考にしているという。
他にも、高校時代に『ウルトラセブン』を何度も観まくった事に起因して、ドラマパートでは実相寺アングルなどもしばしば用いられる。

④リアリティー・ミリタリー色濃いめな人間ドラマ
各作品に登場する防衛チームの描写においてはミリタリー色濃いめに描かれており、劇中ではライフル銃による銃撃戦が描かれている。
また、組織のしがらみや兵器運用におけるシビアな予算問題といった、現実的な問題が浮き出るリアルな描写もある。

その他のドラマ面については「細かな掘り下げや整合性よりも特撮ドラマの映像美などを重視する」という、良くも悪くも多少の粗が出ても勢いを重視するタイプであり、『オーブ』制作時途中段階でのビートル隊追加などにそれらが見て取れる。


【人物・エピソード】

「日常に現れ街を壊していく怪獣が好き」とのことで、例えば『スター・ウォーズ』より『宇宙戦争』が好きと発言している。

ウルトラシリーズに参加した当初は、怪獣に比べてウルトラマンにはあまり関心を抱けなかったとのことだが、ウルトラマンフェスティバルのショーを見て、子供たちの応援の力に感激。
『劇場版 オーブ』では観客に応援を呼びかけるようなシーンを取り入れ、ウルトラシリーズ初の応援上映も実施された。

田口氏が取り入れた、ミニチュアビルの破壊時に飛び散る細かく刻んだペットボトルなどの破片*1は現場で「タグチップ」と呼ばれている。
曰くお金がかからず効果的。空いている時間にスタッフ総出でゴミを切り刻んでいるらしい。

自主製作の短編『大怪獣ガサキングα 三和市場に現わる』では、イベント内にて観客がエキストラ撮影し、さらに特撮パートも客の見学のもと撮影、さらにその日のうちに編集して観客に上映するというスゴ技を見せた。
完成版はYouTubeで無料公開されている。

後進の育成にも積極的で、2014年からはイベント「全国自主怪獣映画選手権」を定期的に主催し、2015年からは雑誌『宇宙船』の連載企画「宇宙船自主怪獣映画道場!」の部長に就任。

『ウルトラマンX』の超全集では、「キミにも怪獣映画が撮れる!!」と称し、家庭でも身近な材料を使い、手軽に巨大特撮が撮れる指南を掲載した。誰向けなんだ……
こちらの連動動画もYouTubeで無料公開。

『吉田尚記dスタジオ』に出演した際に、田口氏が思うウルトラシリーズ最強怪獣を聞かれた際に、1位がゼットン、2位がキングジョー、3位がレッドキングと答えている。


ちなみに、田口氏が一番好きな怪獣は言うまでもないがゴジラ
『X』のとある回が11月3日のゴジラ生誕日と放送日が重なったため、思いっきりオマージュをぶち込んだほどである。

FPS・TPSが好きなことも公言しており、特に好きな作品としてCALL OF DUTYシリーズEDFシリーズを挙げている。
特に後者は小説版の帯にコメントを寄せたことがある他、『5』関連で対談インタビューに応じており、実写映画の企画案がないか聞かれると毎度「地球防衛軍やりましょう」と提案しているほどだとか。
ちなみに、EDFと同じD3パブリッシャー作品の『THE お姉チャンバラ』の実写映画にスタッフ(合成担当)として関与したことがある。


【監督作品】

映画

自主制作作品
  • 「傷だらけの天使」よ永遠に(2000年)
  • ある夏の戰い(2002年)
  • クライシス北の國から(2003年)
  • 大怪獣映画 G(2007年)
  • ZONE -絶対区域-(2014年)
  • 大怪獣ガサキングα 三和市場に現わる(2016年)
  • 女兵器701(2017年)
  • UNFIX(2019年)
  • 12人のイカれたワークショップ(2021年)

商業作品

テレビ



オリジナルビデオ

  • ロックドリルの世界〜地底世界の超機械巨神〜(2009年)
  • 怨霊塔 都市伝説全集の地獄(2011年)
  • 怨霊ノ家 呪界地獄入ルの恐怖(2011年)
  • 流出封印動画(2012-2015年)

その他




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  • ウルトラマンZ
  • ウルトラマンブレーザー
最終更新:2024年07月07日 10:37

*1 ビル内の書類やらガラスやらなにやらが飛び散るのを表現している。

*2 台湾のバンドのMVで、ウルトラマンネオスとダークバルタンが戦う内容

*3 サウジアラビア皇太子の政策の下作られたもの

*4 『怪獣娘~ウルトラ怪獣擬人化計画~』のキャラソンのMV。湯浅・清都のほか、ザンドリアスとノイズラーも着ぐるみで登場。