超魔神イド(遊戯王OCG)

登録日:2023/07/09 Sun 11:07:30
更新日:2025/04/20 Sun 12:11:54
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超魔神イド

効果モンスター
星6/闇属性/悪魔族/攻2200/守 800
このカードがカードの効果によって破壊され墓地へ送られた場合、
次のターンのスタンバイフェイズ時にこのカードを墓地から特殊召喚し、このカード以外の自分フィールド上に存在するモンスターを全て破壊する。
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、自分はモンスターを通常召喚・反転召喚・特殊召喚する事ができない。
「超魔神イド」は自分フィールド上に1枚しか表側表示で存在できない。

《超魔神イド》とは、遊戯王OCGのカードである。
2008年8月21日発売の「ザ・ヴァリュアブル・ブック11」の付属カードとして収録されており、2023年現在は再録されていない。


概要

2つの効果*1を持つ上級モンスター。

1つ目は効果破壊された場合の自己蘇生効果。
ヴァンパイア・ロード》と似た内容で、自分のカード効果で破壊されても効果を発動する。
ただし自己蘇生に付随して自分のモンスターをすべて破壊するため、かえって戦線を弱化させるリスクが高い。
再生タイミングも次のスタンバイフェイズとやや遅いのもネック。

2つ目は召喚阻止のデメリット効果。
このカードがフィールドにいる限り、特殊召喚に限らず通常/反転召喚/セットすら封じるため、EXの素材はおろかアドバンス召喚の素材にして解除もできない。
攻撃力も低く、デメリットに等しい1つ目の効果しか持っていない《超魔神イド》だけを前線に置くのは余りにも頼りない。

総じて、上級モンスターながらデメリット効果を2つも抱えた酷いカードになる。
上級モンスターでありながら攻撃力も低い時点で、デメリットアタッカーと呼ぶことも無理がある。

一応、攻撃力を補う全体強化カードを使い、さらに《古の森》など能動的に破壊できるカードを使うことで活かすことはできなくはない。
《古の森》ならバトルフェイズ終了時にこのカードを破壊し、メインフェイズ2に何かしら壁を出す動きはできる。
このカードの自己再生時に破壊された時の効果を持つモンスターを巻き込むコンボも可能ではある。

しかし、それを狙うなら相手モンスターも巻き込んで破壊する上に攻撃力も高い《炎王神獣ガルドニクス》を使う方が遥かに楽であろう。
こちらは自己再生と破壊までワンセットであり、《スキルドレイン》で無効化されることなく自分のモンスターを破壊できるメリットはあるが、そこまで必要な状況はそうない。


【イドロック】

この通り「自分が使用する」には微妙過ぎるカードだが、このカードはむしろ全く違う運用が注目された。

それは「自分が使う分には嫌なカード」を相手にプレゼントすることで「相手に嫌な思いをさせる」運用法。
相手にデメリットモンスターを押し付ける、いわゆる「送りつけ」である。


なにせこのカードがフィールドにいる限り、特殊召喚のみならず通常や反転召喚、さらには裏側守備表示でのセットによる召喚すら封じるため、
EXモンスターの素材はおろかアドバンス召喚の素材にして解除もできない。
よく似た召喚封じ効果を持つ《異星の最終戦士》は「モンスターのセットは許してしまう」ため、新しいモンスターを出させないという点ではあちらを上回っている。
これにより《No.86 H-C ロンゴミアント》をも上回る特殊召喚封じが実現する。

古くからあるのが《終末の騎士》などで墓地に落として《ギブ&テイク》でロック、というパターン。

ギブ&テイク
通常罠
(1):自分の墓地のモンスター1体と、自分フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。
対象の墓地のモンスターを相手フィールドに守備表示で特殊召喚し、
対象のフィールドのモンスターのレベルはターン終了時まで、
その特殊召喚したモンスターのレベル分だけ上がる。

闇属性故に墓地に送る手段はいくらでもあり、そのまま《ギブ&テイク》で相手に送りつければ凶悪ロック……

と、言いたいところだが、コンボそのものは注目されども、残念ながらネタの域を出ないカードだった。

  • 送りつけ手段が安定しない
闇属性ゆえに《超魔神イド》本体のサポートは豊富なのだが、肝心の「使用権を渡すカード」が難点。
墓地から渡す《ギブ&テイク》にしろ、フィールドで交換する《強制転移》にしろ、当時はサーチ手段が無いに等しい。

  • 成立しても攻撃力2200のアタッカーを相手に渡してしまう
上級モンスターにしては低いが、下級モンスターを普通に殴り倒せるスペックはある。
もちろん、ロックしている隙にこちらが強力なモンスターを呼べば問題ないのだが…

  • ロックしてる限りビートダウンに持ち込めない
ある意味最大の難点がコレ。
《超魔神イド》より強いモンスターをこっちが立てると自爆されてロックが崩れる。
かといって延々守勢に回っててもそれだけでは勝ち目がない。

《超魔神イド》を残したまま勝つ手段として、ビートダウン以外の勝ち筋が必要になる。
例えば【ロックバーン】のギミックが有用だが、時はシンクロ時代。
手軽な除去手段がバンバン登場した結果ロック戦略の信頼性が崩れつつあり、そのロックも従来の「攻撃を封じる」から「効果を封じるorアタッカーそのものを除去する」方向に向かっていた。

しかし送りつけた《超魔神イド》相手にそれをやるとせっかくのロックが台無し。
「効果を残したまま攻撃だけ封じる」カードが必要だが、それらは普通のデッキには通用しない。
「《デモンズ・チェーン》より《拷問車輪》を優先した結果、《氷結界の龍 ブリューナク》《ブラック・ローズ・ドラゴン》《氷結界の龍 トリシューラ》に何もできない」なんてのがザラである。

ようするにイドロックは「ロック自体は成立すれば強いが、デッキ単位の安定性・対応力が低い」という扱いだった。



転機


分かつ烙印

通常罠
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
(1):自分フィールドの融合モンスター1体をリリースし、
お互いの墓地のモンスター及び除外されているモンスターの中から、融合モンスター以外のモンスター2体を対象として発動できる。
そのモンスターをお互いのフィールドに1体ずつ特殊召喚する。
アルバスの落胤」を融合素材とする融合モンスターをリリースしてこのカードを発動した場合、代わりに対象のモンスター2体を自分フィールドに守備表示で特殊召喚できる。

転機となったのがPOWER OF THE ELEMENTSにも収録された《分かつ烙印》。
融合モンスターをコストにすることで「お互いの墓地・除外」のモンスター2体を特殊召喚できる。
これにより相手の場に《超魔神イド》を、自分の場には適当なモンスターを出すことで《超魔神イド》のロックが成立。

他の送り付けカードと異なり「烙印」カテゴリに属しているためサーチとサルベージが容易で、コンボ成立の難度が低い。
加えて高速化に伴い「1ターンロックできれば十分勝てる」という発想で、ロックを維持する必要がなくなったのも大きい。

「融合モンスターをリリースする」というコストが一見重く見えるものの、烙印デッキであれば《デスピアの導化アルベル》1枚から完成する。
大雑把にルートを説明すると、以下の通り。
  1. 《デスピアの導化アルベル》の効果で《烙印融合》をサーチ
  2. 《烙印融合》の効果により《烙印竜アルビオン》と《神炎竜ルベリオン》を経由して《氷剣竜ミラジェイド》を融合召喚
    この時融合素材として《超魔神イド》を「《烙印融合》にてデッキから墓地に送る」または「《神炎竜ルベリオン》の効果で手札から除外する」
  3. 《氷剣竜ミラジェイド》の効果でEXデッキから《烙印竜アルビオン》を墓地に送り、更に《烙印竜アルビオン》の効果で《分かつ烙印》をセット
  4. 相手ターン開始時に《氷剣竜ミラジェイド》をコストに《分かつ烙印》を発動、自分の墓地または除外場所にいる《超魔神イド》を相手に贈呈

《分かつ烙印》による送り付けを狙う場合、「《烙印融合》でデッキから墓地に落とせる光or闇属性モンスター」であれば良いため以下のモンスターがライバルとなる。

ラーの使徒

効果モンスター
星4/光属性/天使族/攻1100/守 600
(1):このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時に発動できる。
手札・デッキから「ラーの使徒」を2体まで特殊召喚する。
(2):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、自分は「ラーの使徒」の効果でしかモンスターを特殊召喚できず、
このカードは「オシリスの天空竜」「オベリスクの巨神兵」「ラーの翼神竜」のアドバンス召喚以外のためにはリリースできない。

ギミック・パペット-ナイトメア

効果モンスター
星8/闇属性/機械族/攻1000/守2000
このカードは自分フィールド上に表側表示で存在するエクシーズモンスター1体をリリースして手札から特殊召喚できる。
この方法による「ギミック・パペット-ナイトメア」の特殊召喚は1ターンに1度しかできない。
この方法で特殊召喚に成功した時、
自分の手札・墓地から「ギミック・パペット-ナイトメア」1体を選んで特殊召喚できる。
また、このカードが特殊召喚に成功したターン、
自分は「ギミック・パペット」と名のついたモンスター以外のモンスターを特殊召喚できない。

この2枚も高潔なギブ&テイクを実現できるカードであり、属性が属性なので《烙印融合》でデッキから墓地に送る役としても適している。
《超魔神イド》の場合はロック範囲が広いこと、場にいる限りロックが永続することが優位点となる。
ただし破壊されたときにこちらに牙をむく点、また《ギミック・パペット-ナイトメア》は場から消えても効果が残るなど、これら二枚の利点も存在する。


欠点

時代の変化により新たな可能性が開けたものの、対策手段も当然増えた。

《超魔神イド》の排除・無力化

《超魔神イド》自身を排除・無効化してしまえばこのロックは破綻する。
そのため自分のカードを除去するカードを阻止できなければ水の泡となってしまう。
ブラック・ホール》などの「破壊」であれば、ロックを解除されるばかりか、自分が《超魔神イド》の効果で更地+ロックを受けてしまう。
それでなくとも、自分のカードを能動的に破壊するギミックは近年では珍しくない。

禁じられた一滴

速攻魔法
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
(1):自分の手札・フィールドから、このカード以外のカードを任意の数だけ墓地へ送って発動できる。
その数だけ相手フィールドの効果モンスターを選ぶ。
そのモンスターはターン終了時まで、攻撃力が半分になり、効果は無効化される。
このカードの発動に対して、相手はこのカードを発動するために墓地へ送ったカードと元々の種類(モンスター・魔法・罠)が同じカードの効果を発動できない。

特に致命的なカードが、こちら《禁じられた一滴》。
自分の場のカードを「コストで」墓地に送ることで《超魔神イド》のロックを解除できてしまう。
これはカウンター効果で《禁じられた一滴》の「効果」を無効にしても、払ったコストは戻らないという性質を逆利用した形。

他にも、《超魔神イド》自身の効果を無効にすることでロック解除が可能。
昔は《月の書》や《禁じられた聖杯》が天敵だった。


送りつけの妨害

送りつけそのものを邪魔されるのも当然危険。
《分かつ烙印》を前提にするなら、融合素材にすることで《超魔神イド》が一旦墓地に行くため、そのタイミングで墓地メタカードを受けてもコンボが止まる。
単に《超魔神イド》を除外されるだけなら《分かつ烙印》で帰還できるため問題はないが、デッキバウンスや効果無効が問題になる。

特に除外と同名カードの無効化を同時にこなす《墓穴の指名者》が天敵。
元々手札誘発の対策として採用ケースが多いため遭遇率が高く、あっさり《超魔神イド》のロックも無力化されてしまう。
他にも《分かつ烙印》を無効にする《レッド・リブート》など、このコンボを潰す手立ては多い。

一度自分フィールドに出してから送りつける場合も同様。
送りつけを邪魔されると、手数を潰された上で召喚妨害のデメリットを引き受けることになってしまう。


総評

現在、実用性の観点から【イドロック】≒《分かつ烙印》ギミックといっていいような状況にあるが、
デッキとしての【烙印】ではあくまで数ある選択肢の一つ。

前述の通り妨害する手段は多いため、「イドロックが決まる=普通の【烙印】ルートでも十分な勝てる」ことになる。
そのため、かつての《虚無空間》と同様「1枚で相手を完封できるカードではなく、妨害の一手段」ぐらいの立場となる。

通常召喚も封じるカードがその程度のポジションになるあたりは本当に時代である



余談

また、ここまで相方として紹介した《分かつ烙印》だが、海外環境及びマスターデュエルでは禁止指定されている。
上述の《超魔神イド》ロックのほか、【BF】にて《魔王龍 ベエルゼ》と《ブラックフェザー・アサルト・ドラゴン》を絡めた1ターンキルに使用されたことが原因とされている。
シンクロ召喚テーマの【BF】だが、《ドロドロゴン》を経由することで「烙印」コンボを再現したため達成できた方法である。

その後、マスターデュエルには《分かつ烙印》と類似した効果を持つ《真炎竜アルビオン》が実装。送り付けでのロック要員として【烙印】に採用されるケースが見られた。

そして2024/08/08。《分かつ烙印》禁止から1年余りが経ち、【烙印】も環境の第一線から退いて久しいタイミングで《ギミック・パペット-ナイトメア》共々、一気に禁止カードに指定。
この唐突な規制は、同年9月に控えていた「Yu-Gi-Oh! World Championship 2024」本戦での悪用を警戒してのものという説がある。



アニメにおいて

5D's第18話において、フォーチュンカップ予選の敗者復活戦、龍可の対戦相手になったゴドウィンの刺客フランク(CV:関俊彦)という男が使用。
CVとあいまってドイ先生というあだ名が付けられている
サディスティックな性格で龍可を苦しませ精霊世界を汚染しようとするが、《エンシェント・フェアリー・ドラゴン》の逆鱗に触れてしまう。
後々の活躍から振り返って「アニメの《エンシェント・フェアリー・ドラゴン》は封印されてたこの時が一番強い」とか言われる

アニメ版の《超魔神イド》は召喚封じのデメリットはなく、自軍の他のモンスターを永続効果で破壊、破壊されたらエンド時に復活という効果で、明らかにOCGより取り回しがよかった。
「何度でも復活する厄介なモンスター」として描かれているが、戦術の一環として自爆特攻によりバーンカードのトリガーになるなど、過労死要員だった節がある。
攻撃名は「バイオレント・エゴイズム」

最終的に龍可が《妖精の風》でロックを破り、《クリボン》と《オベロンの悪戯》のコンボで効果ダメージを両方に発生させたことで引き分けたため、最後までフィールドに残り続けていた。

イドとは精神分析学の一つで「無意識」を指す。「エス」とも言われる。
フランクは他にも《L⇔R ロールシャッハー》というモンスターを使用しており、精神や心理学用語に関わるカードを用いている。


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最終更新:2025年04月20日 12:11

*1 ただし、現行テキストのフォーマットに合わせた場合「1枚しか存在できない」効果も含まれるため実質3つ