虹色定期便(1997年度)

登録日:2024/06/24 Mon 22:14:00
更新日:2025/03/03 Mon 18:04:46
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「悩みも苦しみもせず、ただ人の言葉どおりに動いていれば、それはそれで幸福である」

「悩み苦しんでも、自分の信じる未来に向けて努力し続けることが、本当の幸福なのだ」

悩み苦しむのが幸福なのか? 悩み苦しまないのが幸福なのか……?



『祈り込めて……歴史よ、変われ!』


虹色定期便」とは、1997年度から2005年度まで、NHK教育テレビ(現・Eテレ)で放送された、小学生向けの道徳ドラマ番組である。
本稿目では、このうちの初年度、1997年度版について解説する。


【概要】

多くの人がご存じだろうが、教育テレビ・Eテレには「道徳」をテーマとしたドラマ番組が古くからある。
算数や理科をテーマにした同局の番組と同じく、基本的には「小学校で、道徳の時間にみんなで見ること」を前提として作られている番組である。

恐らく最も知名度が高いのは、1987年から2006年までの長期にわたって放送された「さわやか3組」だろう。
それ以外にも、「はばたけ6年」「あしたへジャンプ」など、世代によって思い出深く残っている番組がきっとあるだろう。

これらの番組は、いずれもドラマ仕立てで、現代日本を舞台として、年度ごとに同じ小学校を主な舞台としつつも、毎回主人公・登場人物が変わるオムニバス形式である(後述するように例外もある)。
「道徳」がテーマなので、小学生が出会う身近な題材を扱いながらも、いじめ、友情、命の大切さ、ルールとマナー、情報リテラシー、共同体と個人、時には戦争や差別・社会的弱者といった重いテーマに到るまで、道徳に関係するさまざまなテーマをストーリーに絡めて展開される。
テーマは重くても、そこは教育番組なので、あくまで小学生にもわかりやすく伝わるように工夫が凝らされている。
なお、たまにトラウマ級のバッドエンド回があったりするのも有名である。


……しかし、教材用の教育番組、それも道徳となると行儀よかったり説教臭かったりで、子どもたちからは敬遠されるもの。
当然製作陣も子供たちの興味をそそろうとあの手この手で試みるのだが、長い道徳ドラマの歴史の中には、試行錯誤が滑って問題作・怪作と呼ばざるを得ないものもあるのが事実。
その筆頭格こそが、この1997年度の「虹色定期便」である。



【虹色定期便】

それまで放送していた『はばたけ6年』と1996年度放送の『きっと明日は』に代わって、1997年度から小学校高学年向けの道徳ドラマとしてスタートした『虹色定期便』。
道徳ドラマとしての初年度放送となる1997年度の『虹色定期便』は、『きっと明日は』の「一家族を舞台とした連続ドラマ路線」を継承してか「ある少年とその周辺」を主役としたドラマとなり、
テーマ曲*1の名前から「プロジェクト・エデン編」と称してこの時点でぶっとんでいる、以下のようなストーリーが繰り広げられた。


東京の虹ヶ崎市に住む主人公の小学生・忠夫と唯の兄妹は、ある日、コスプレのような奇妙な姿で街を徘徊する少女・アスラと、彼女を追う謎の集団を目撃する。
特撮ドラマの撮影かなんかだろうと思った忠夫たちだったが、実はアスラの正体は西暦3000年の未来からやってきた未来人で、精神病原体「キルケウイルス」の発生を食い止めるために20世紀にやってきたのだった。
1000年後の世界ではほとんどの人間がキルケウイルスに感染して死亡しており、生き残った少数の人間たちはミレニアム帝国(さすがにこのネーミングセンスはどうかと思う)の統治のもと、人々が悩みも苦しみも持たない、一見すると理想郷のような世界を作り上げていた。

「悩みも苦しみもないなんて羨ましい」という唯に、アスラは言い放つ。



ミレニアム帝国の統治に疑問をもったアスラは、過去にさかのぼって全ての元凶であるキルケウイルスの発症を食い止めようとしていた。
しかし、そのことを察知したミレニアム帝国は、彼女に追っ手を差し向ける。
かくして忠夫と唯は、人類の未来をかけた壮大な戦いに巻き込まれていくのであった……




念のためにもう一度言っておくが、これは「小学校向けの道徳番組」です。


なんでこんなバリバリの特撮SF路線に!?と、道徳の時間にこれを見せられた子供たちも先生たちも驚愕した。
一応、上記のアスラの第1話のセリフに本作のテーマは明確に表現されており、要するに『「人間らしく生きる」とは、どういうことなのだろうか?』というテーマをやりたかったのは分かる。
確かに重要な問いではあるだろうが、いかんせん小学校向けの番組で扱うには重すぎるテーマであろう。
また1997年当時、民放では「土曜グランド劇場」(日本テレビ系)枠・「月曜ドラマ・イン」(テレビ朝日系)枠の一部ドラマや「木曜の怪談」(フジテレビ系)等ティーン向けのファンタジックなジュブナイルドラマが複数展開されており、その流行に乗った可能性はある。
+ 余談:1997年当時の民放ジュブナイルドラマ事情
◇土曜グランド劇場
  • 冬クール:『サイコメトラーEIJI』(超能力者が主役の猟奇事件ドラマ)
  • 春クール:『FiVE』(5人の少女が主役のクライムサスペンスアクション)
  • 夏クール:『D×D』(予備校生と関西人少年の霊能力アクション(探偵もの風味))
  • 秋クール:『ぼくらの勇気未満都市』(パンデミックで大人が全滅し、感染拡大を阻止するため極秘封鎖された都市で苦闘する少年少女の物語)
◇月曜ドラマ・イン
  • 春クール:『ふたり』(死んだ姉の霊が守護霊のように目の前に現れた少女の道行きを描くゴーストヒューマンドラマ)
  • 夏クール:『ガラスの仮面』(演劇の世界へと足を踏み入れた少女の苦闘を描いた物語)
◇木曜の怪談
  • 『タイムキーパーズ』(未来からの襲撃を受けた少年と未来からの守護者を描く時間ジュブナイル)
  • 『悪霊学園』(突然霊能力者だった祖母の霊が現れた少女の学園オカルトドラマ)
  • 『妖怪新聞』(学園妖怪探索ドラマ)
  • 『魔法じかけのフウ』(自分の描いたキャラが不思議マスコットとして具現化した社会人主人公のファンタジックコメディ)
  • 『爆裂!分身娘』(突如もう一人の自分が出現してしまった少女の物語)

…このように妙にファンタジー作品や少年・少女主演ものが多めで、特に『タイムキーパーズ』は虹色定期便の直前に放送されたタイムスリップと歴史に纏わるドラマだった。
だがやるにしても、一応当時の子供達が『天才てれびくん*2や背景がライトSFな教育番組『このまちだいすき』*3を観てNHKでもSF・ファンタジー慣れしていた世代*4で、
1996年3月には救いの無いSF小説『クラインの壺』を教育テレビのジュブナイルドラマとして実写化していたとはいえ、道徳ドラマをシリアス特撮SFに方向転換する必要はなかったんじゃないだろうか。


こうして、子供たちも学校関係者も置いてけぼりにして、教育テレビが午前中にやるような話ではないような番組が1年間、水曜日10:45 - 11:00、木曜日11:15 - 11:30、金曜日11:00 - 11:15の時間帯*5で続いたのだった。


放送リスト

サブタイトル ゲスト 初回放送日 Eテレタイムマシン(見逃し配信)
未来から来た少女 清原たかゆき 1997年4月9日 2024年7月24日(7月29日)
幸福な世界 1997年4月23日
3つのホクロ 小野
田代まきお
1997年5月14日 2024年8月14日(8月19日)
それぞれの正義 1997年5月28日
争いの後で… 1997年6月11日 2024年8月21日(8月26日)
切り裂かれた絵 斉藤真奈美
上野裕美子
1997年6月25日
ライバル 1997年7月9日 2024年8月28日(9月2日)
あやうし少年野球団 虹ヶ崎少年野球チーム 1997年8月27日
勝敗の行方 1997年9月17日 2024年9月4日(9月9日)
遠すぎる家 木島宏美
木島美子
木島宏
1997年10月1日
こわれた家族 1997年10月15日 予定無し
あたたかい食卓 1997年10月29日
未来からの逃亡者 バルドル博士
正代
1997年11月12日
謎のマイクロディスク 1997年11月26日
意外な感染者 1997年12月10日
秒読みは始まった - 1998年1月7日
わかれ道 1998年1月21日
将軍あらわる 1998年2月4日
時間切れ 1998年2月18日
新しい明日へ 1998年3月4日


【登場人物・用語等】

※作品の結末・重要な部分に触れるネタバレをしているので、注意。

  • アスラ(演:増岡優)
未来世界からやって来た主人公の少女で、帝国と戦うレジスタンスの1人。
20世紀末の日本で、忠夫と唯の協力を得ながらキルケウイルスの根絶を目指す。20世紀では「明日香」を名乗る。
機能的な黒いサバイバルを身につけており、まだ年端もいかぬ少女でありながらも帝国に追われる反乱者の身のため、神出鬼没であり、現れる時には空中回転して登場するなど、身体能力の高さやサバイバリティの高さもうかがえる。
また、会話は敬体のみだが、単身時代を超えてやってきた強い人間に相応しい信念と説得力がある。
しかし、大好きな飲み物はココアであったりと、子供らしい一面もある。

+ 実は…
実はフレイヤの実娘であり、ミレニアム帝国における貴族階級という高貴な身分の身であったが、帝国の管理社会のやり方に疑問を持ち反逆。
普段の黒いサバイバル衣装とは一転し、後述のキルケウィルスに弓でワクチンを投与する際の姿は彼女の高貴な身分を感じさせる点を感じる。

彼女は、未来世界において次なるミレニアム帝国を率いる指導者となるべく、母親であるフレイヤが預けた皇帝陛下の元で英才教育を受けており高い身体能力やサバイバルでの技術、大人顔負けの説得力などといった、彼女の「子供らしくなさ」は、全てそれに由来し裏切る事さえ無ければ、帝国を率いるに相応しい完全無比の女帝として相応しい逸材であったと言えよう。

しかし、彼女の憧れは、実は子供らしい生活を送る事であったようであり、それと「人間らしい“自由”」を得たいがためにレジスタンスの元へと寝返ったのである。

過去改変後は実母のフレイヤと未来から観光客として訪問する。恐らく改変後の未来では実母のフレイヤとの関係も良好であるだろうし、何よりも本来の子供らしさを得ている事に違いない。


戦闘シーン(道徳番組なのに戦闘シーンとかある時点でもうどうかと思う)では変身するのだが、問題は通常時の黒いサバイバル衣装はともかく、変身後のコスチュームがテレビ朝日某古代人戦隊ヒロインの私服のそれとそっくりな事。
これについては、スタッフがコスチューム制作会社に「〇〇みたいな感じでお願い」と頼んだら、そのまんまのものが出来上がってきたらしい。
今だったら大問題だっただろう。

ちなみに、変身後に使う技は「キルケウイルス保持者に弓でワクチンを投与する」というもの。
テーマ的・予算的に、さすがに派手なバトルアクションはできなかったのだろうが、ワクチン投与のために変身する特撮ヒロインというのも珍しい。
弓のデザイン・カラーリングもコスチューム元にそっくりなだけで無く、良く見ると左腕には某激走戦隊のアクセルなチェンジャーを付けておりチェンジャーのスイッチを押すことで弓のパーツが出現している。

演者は劇団東俳に所属していた。


  • 中山忠夫(演:伊藤大輔)
現代の小学6年生。語り部であり、もう一人の主人公。
何の特殊能力もない一般小学生だが、アスラサイドの手数が少ないこともあって、要所要所で結構活躍する。
当初よりアスラに対して友好的だった唯と異なり、忠夫はかなり邪険的・非協力的であったがそれは「小学生の手に負える問題じゃない」という真っ当な考えから来るものであった。
しかし、徐々に積極的に関わるようになる。
物語はアスラより中山兄妹視点で進む上、語り部まで担当し、最終決戦での活躍を鑑みると真の主人公と言える。
ちなみに演じた伊藤氏は成人後、芸人コンビ「千葉チューセッツ」の一員として活動している*6


  • 中山唯(演:三上博美)
忠夫の妹で小学5年生。
彼女が1話冒頭で兄と一緒に撮ったプリクラ(時代ですねえ)から、全ての物語が始まる。
地顔が笑顔のためよく笑っており、忠夫にしょっちゅう注意されて唯自身もコンプレックスとなっている。
忠夫「そんなこと笑いながら言うなよ」
唯「笑ってないよ!」
というやりとりはもはや恒例。

+ 実は…
実はキルケウイルスの生みの親であり、終盤には発症に伴いウイルス発症者特有のホクロが出現したが他と異なり赤色のホクロであった。

忠夫は唯の笑顔を揶揄し続けたことが唯の心の歪みとなりキルケウイルスを生み出したと類推しており、あの一見すると何気も無い恒例のやりとりが伏線に繋がっていたのである。
なお演じた三上氏によれば唯役のオーディションに受かったのは「笑顔が良いから」とのこと。
唯の笑顔は物語の重要なファクターとして製作開始前から決められていたようだ。



大御所に何やらせてんすかその1。???「お願いです!人類支配なんてやめてください!隊長!」
ミレニアム帝国軍の最高司令官であり、アスラの妨害に全力を挙げ、20世紀とは、タイムマシンの原理を応用した3Dのホログラム画像で交信している。
終盤には自ら20世紀の時代へと降り立つ。
仮面ライダー剣から遡ること7年。早すぎた?悪の軍団サイドの森次氏である。

大御所に何やらせてんすかその2。
フェンリル将軍の部下であり、アスラ捕獲の現場責任者として部下を引き連れ現代に出現、20世紀で青雲塾虹ヶ崎校の塾長「村瀬涼子」に成りすまして潜伏する。帝国軍での階級は中佐
将軍にアスラ抹殺許可を求めたかと思えば、アスラには貴族の娘として、サーベルでのフェンシングによる決闘で決着を付けさせようとしたり愛憎入り交じったような行動を取る。

+ 実は…
実はアスラの実母であるが、胎児期に既に帝国から娘が将来の指導者となり得る才能を保証されており、出産後アスラを皇帝陛下の元へ預けてしまった事により事実上の母親としての育児を放棄したため、幼少期から絶縁関係となっていた。
それが明らかになると、アスラ捕獲の任務を率いる隊長の座をロキに譲らされたりと帝国軍内部での立場が危うくなる。
その後、新型ワクチンのデータディスクをアスラに手渡し、結果的に彼女は軍人の本分に反する事となり、囚われの身にとなってしまった。
なお、バルドル博士とは実弟。


中の人的には、ウルトラセブンの配下になって人類支配をもくろむセーラーマーズ。
ちなみに演者は若手時代の80年代前半『おしん』への出演と教育番組『うちのひと がっこうのひと』でのお姉さん役でNHK番組に顔出し参加経験があり、この2年後には深夜特撮『ボイスラッガー』でも敵方女幹部を演じている。


  • ロキ(演:有薗芳記)
フレイヤの部下であり、青雲塾虹ヶ崎校の副塾長「岩間武」になりすまして忠夫の学習塾に潜伏している。
お世辞にも切れ者には見えず、ドジ役ばかりが目立つのだが、これでも階級は青い巨星蒼き鷹超力戦隊のリーダーと同じ大尉なので一応、軍でなんらかの功績を積み重ねてきた実力派なのだろう。
典型的な参謀タイプかつ短気な性格であり、冷酷・冷徹な敵であるのだが、
当初は「元の時代に戻れるかどうか分からない上に、実験で多くの犠牲者が出ているから、20世紀の時代にタイムスリップしたくなかった」(第1話)と任務に対して不平不満を露わにする事も多かったが、
だが、後になぜかたこ焼きが気に入ってしまった模様*7で、シリアスめなシナリオでの憎めないコメディリーフと化す。
シグルトと車の中から先祖と思われる木島宏を偵察して、「自分でも似てると思うぜ。気味が悪いよ。」と発言するお遊びのシーンがある(第10回)
しかし、物語が佳境に入ってくると、いよいよ帝国将校の本性を表し、坊主頭にし、フレイヤに代わって念願の隊長に就任する。
だが、未来に帰ったら一緒にたこ焼き屋を始める「相談」をシグルドに持ち掛けていた事もあってか、過去改変後はたこ焼き屋になっている。
演者はNetflixの「Jimmy〜アホみたいなホンマの話〜」で吉本新喜劇の座長の岡八朗を演じている。また本作から20年後、若手時代ある映画の吹き替えに参加していた事が判明した。


  • シグルド(演:楠木涼香)
フレイヤの部下であり、青雲塾虹ヶ崎校の進路主任「佐藤かすみ」になりすましている。
ショートカットが特徴で現代でOLをやっていても全然違和感のないお姉さんという感じだが、階級はあの鬼教官と同じ軍曹であり、軍曹らしくロキ達が使う工作員の世話などを行なっている。
まあ、ロキがドジ役なので、相対的にしっかりして見えるのかも知れないが。過去改変後も登場。
なお、演者はVシネマ「女とむらい師 べに孔雀」で豊満なバストを披露している。ティーアーティストに所属していたが2000年頃に引退した模様。


  • 工作員(演:千田悟、浅木信幸、溝口敦、川名智幸)
フレイヤたちと共に20世紀にやってきた階級無しの部下4名。ロキ等の命令のみに忠実に行動し、自主性とか主体性といった言葉とは無縁の「生きるロボット」と化しており、命令を与える事は「インプット」と称される。
これを見る限り恐らく帝国に管理されている側の感染者だろうが、ミレニアム帝国が掲げる「悩みのない世界」の実態は、彼らのようにただ上の命令に従うだけの人々が多くを占め、自由を奪われて奴隷のように扱われる「極端な選民思想による管理社会」であるとも読め、「幸福な社会」とは実に程遠い名ばかりのものだとうかがえる。


  • 皇帝陛下
ミレニアム帝国の皇帝で、過去へと逃げたアスラの追跡をフェンリル将軍率いる帝国軍に命じた。
台詞のみで存在が語られるのみで、劇中には出てくる事は無く、容姿はもちろん、30世記の未来でどのような統治を行なっているかどうかも不明。(そもそも30世紀の未来自体がどのような雰囲気なのか描写が少ないのだが……)
しかし、現代社会に於いてはあまり見られない貴族階級という身分の概念がある事や感染者に対する扱いを見れば、古代・中世のような厳格な身分社会を取っていると思われる。


  • 清原たかゆき(演: 小川勝久)
第1、2回のゲストキャラクター。
忠夫たちと同じ塾に通う小学生で成績は優秀。唯曰く「ガリ勉」。
塾での成績が1位から転落したことで自殺を考えるほど絶望に囚われていた。
作中で描写されるキルケウイルス感染者第1号であり、アスラやミレニアム帝国は当初、清原こそがキルケウイルスの生みの親と判断していた。
なお本作が放送された1997年は同姓のプロ野球選手が西武ライオンズから読売ジャイアンツに移籍して話題になっていた時期でありそれを意識したセリフもあった。


  • 小野(演:高橋和希)、田代まきお(演:砂野潤)
第3、4、5回のゲストキャラクター。
虹ヶ崎小学校6年生で同じクラスの二人。小野は忠夫たちと同じ塾に通っている。
小野は成績優秀、スポーツ万能、性格は明るく品行方正という完璧超人。いじめられっ子だった田代を救っており、忠夫も実は尊敬していると述懐している。
しかし、田代の変わろうとしない態度に小野は絶望しキルケウイルスに感染。守ったはずの田代をいじめるようになる。
田代もかつて救ってくれた小野からのいじめで絶望し感染してしまう。


  • 斉藤真奈美(演:山中麻由)、上野裕美子(演:清水香里
第6、7回のゲストキャラクター。
虹ヶ崎小学校6年生。
二人とも同じ幼稚園の頃からの幼馴染みで美術クラブに属している。
共に絵を描き切磋琢磨してきたが、上野裕美子の絵が評価され斉藤真奈美は嫉妬や絶望からウイルスに感染・発症する。
なお、上野裕美子を演じた子役はこの翌年に声優デビューし、このwikiで個別項目が立てられるくらい有名な声優となった。


  • 虹ヶ崎少年野球チーム(撮影協力:川崎市麻生区少年野球連盟の皆さん)
第8、9回のゲストキャラクター。
チーム名は虹ヶ崎リバース。
キャプテンの秋山達也(演:高野剛)が厳しく指導していたが、楽しく野球をやりたい他の武藤小百合(演:下川摩梨香)などのチームメンバー全員は着いてこれず秋山への不満からウイルスに感染した。
ガチ勢とエンジョイ勢の温度差というやつだろう。

因みにスタッフの発注ミスなのかあるいは発注する余裕がなく既存ユニフォームをそのまま流用したのかは不明だが、ユニフォームは「虹ヶ崎市」ではなく、「川崎市」表記である。

  • 木島宏美(演:山本はるか)、美子(演:上楽敦子)、宏(演:有薗芳記)
第10、11、12回のゲストキャラクター。
忠夫の同級生の女の子とその両親。
宏はロキの先祖らしく、演者も同じ。
宏美はゲームセンターで補導される。


第13、14、15回のゲストキャラクター。
ミレニアム帝国きっての科学者。ある重要情報を記録したマイクロディスクを携えて現れた。

+ 実は…
実はフレイヤの実弟でもあり、アスラの叔父であった。



第13、14、15回のゲストキャラクター。
年輩の女性。
最近孫を事故で失った喪失感からキルケウイルスに感染していた。

+ 実は…
実はその孫はバルドル博士と瓜二つであり、タイムパトロールとの交戦で傷ついたバルドル博士を助ける事になる。



  • 虹ヶ崎市
物語の舞台となる東京近郊の都市。ロケ地は神奈川県川崎市。
メモリアルブックによれば忠夫たちの団地は川崎市宮前区宮前平で、プラネタリウムはかわさき宙と緑の科学館(川崎市青少年科学館)とのこと。
その他、通学路の看板には小さく虹ヶ丘と映っているのが見えるため川崎市麻生区虹ヶ丘もロケ地に入っているようだ。
虹ヶ丘をもじって虹ヶ崎にした可能性も考えられる。


  • キルケウイルス
30世紀の未来で蔓延しているウイルス。
発症するとやる気や生きる意欲を失ったり逆に常軌を逸した攻撃的行動をとるようになり、劇症化すれば高熱により為す術なく死に至る。
そのため未来では人口の大半*8が死に絶え、わずかに残ったウイルス耐性者が帝国を作り感染者を管理・支配するディストピアとなった。
感染者は ∴ のような黒いホクロが出現する。
このウイルスは20世紀末の一人の人間の心の闇から発生した突然変異ウイルスと判明したため、発生源を治癒して未来を変えたいアスラとそれより先に発生源を確保したいミレニアム帝国の戦いとなる。
物語開始時点で既に舞台となった街にある程度感染が広まっていたが、キルケウイルスは蜂や蟻同様女王を中心とした社会性の性質を持つため女王ウイルスの駆除(=ウイルスの生みの親の治癒)が出来れば他のウイルスは自然と死に絶えウイルス根絶となる。
発症の速度には個人差があり重症感染者が出てくる一方でウイルスの生みの親となった人物の発症は遅かった。
なお、ウイルスの生みの親は発症時に赤いホクロが出現した。
フレイヤ達はウイルス感染者を発見する度にその人物がキルケウイルスの生みの親かどうかを調査・監視していたが、赤いホクロの情報を知っていればそんな苦労も無かったであろう。
名前の由来は「死に至る病とは絶望のことである」と説いた哲学者セーレン・キェルケゴールだろうか*9


  • キルケアサシン
アスラが持つキルケウイルスのワクチン。
平時は茶筒程度の大きさのグリップ型アイテムだが使用時には上下にパーツが出現し弓の形になり、治療薬は光の矢として投与される。
ただ投与しても治癒には至らず、感染者が少しでもやる気を出さなければならない。
感染者の絶望の理由を知り心の救済、生きる希望を見出させる点もまるで道徳番組のように物語に絡んでくる。
なお、忠夫が借りた際は弓の形とならずそのまま使用した。


  • ミレニアム帝国
30世紀の未来を支配する帝国。
キルケウイルスに対しての耐性を持った僅かな者たちが築き上げ、「悩みも苦しみも無く、 争いも起きない幸福社会」という名の元で感染者達を管理している。
だが、アスラのようにそのような管理された社会を否定する一部のウイルス耐性者たちは反帝国派のレジスタンスを結成、抵抗している。
国民は何かの管理の為の印なのか、目元が赤いのが特徴。
アスラやフレイヤ達は赤いアイシャドウ程度だが工作員達は隈のようになっており、これも恐らく耐性のある者と感染者を区別するための印かもしれない。
20世紀人に擬態時は目元は赤くない。
ちなみにネームドキャラの名前の由来は北欧神話から。


  • アスラのスカーフ
アスラが首に巻いている赤いスカーフ…っていうかバンダナ。
通常時は全身黒の衣装のためワンポイントカラーとなっている。
とある場所の木の枝に巻いておくことで中山兄妹からアスラへのウイルス発見を知らせる連絡手段となった。
最終決戦後には忠夫の手元に残り、その後とある人物に渡された。


  • 青雲塾虹ヶ崎校
中山兄妹らが通う塾。完全実力制のため、勉強の出来る下級生が上級生のクラスで授業を受けることも可能。
フレイヤはこの塾の経営権をどうやったものか乗っ取り、塾長に就任、ロキを副塾長、シグルドを進路主任に就かせた。


  • スーパーマーケット
中山兄妹の両親が経営している。兄妹も手伝っている。


  • ロキらのおんぼろ車
ロキ等が作戦に使用した、左ハンドル仕様のライムグリーンのジープ。(恐らくは三菱・ジープ*10のJ37型だと思われる。)正式に買ったものなのか、盗難車か不明だが、エンジンのかかりが悪いおんぼろ車。


  • タイムマシン
アスラと、フレイヤ達が未来から現代に来る為に使用したものだが、約1000年経った30世紀の技術を持ってしてもまだ不完全なところがあるのか、物によっては満月以外では動作が不安定だったり、100年単位でしか行き来出来ないなどの欠陥を抱えてしまっている。
さらにロキ曰くその実験の際に、多くの犠牲者が出てしまったと言及されている点を鑑みると、タイムマシンを使っての時空移動は非常にリスキーのある行為となっている模様である。同じ30世紀でも全く違うどころか、約7世紀前の時代では既にタイムマシンが当たり前の物になっているのに……。
なお、タイムマシンの装置にも様々な種類があり、人の体を取り囲むフープ状のものや、大容量の変電装置らしき物に囲まれた大掛かりなもの、スピードスキーのヘルメットをバイオニックにしたような機械、最終話に登場した陸上競技場を埋め尽くすような大型タイムマシンなどある。
しかし、過去改変が為された後は観光目的に気軽に使用されており、これを見る限り改変前よりも安全性などが格段と進歩していると思われる。
50年後の時点ですでに高額なだけでわりとお気軽にレンタカーできるあの作品みたいな感じなのだろうか。
この事から「人類ほぼ滅亡」というハンディの大きさを端的に示していると言えよう。*11



【評価・知名度等】

本作、「かつて教育テレビでやべー道徳ドラマがあった」ということで語り草となっており、知名度自体は結構高い。
だが、そもそも「学校の道徳の時間に見せる番組」なので1年間最後まで通して見ていた人があまりいなかったらしく(小学生が学校にいる時間帯に放送される番組だし、教材として使おうとしていた先生たちも1話目で「これはアカン」と判断して切ったケースが大半だと思われる)、あまり内容については語られることが少ない。
実際、正直言って特撮としてもSFとしても出来がいいとは言いづらい(低予算だっただろうしね)のだが、他の道徳番組で扱われる「いじめ」「モラル」といった問題を、どうにか本筋のアスナvsミレニアム帝国の戦いに絡めようと努力はしており、1話冒頭のプリクラが終盤で重要な伏線となるなど、それなりに工夫されている部分はあった。
とはいえ、それができるならなんでわざわざ未来世界とかを持ち出して特撮SFにせなアカンかったん?としか言いようが無いのも事実ではある。

実際、初年度がやりたい放題すぎたのを流石に反省したらしく、次年度以降は他の道徳番組と同じく、日常を舞台にしたごく普通の道徳番組へと、大幅に路線変更した
この後、2005年度までとそれなりに長く放送されたため、「虹色定期便」といえばこの路線変更以降のイメージで覚えている人も多いかもしれない。

ただ2024年現在、『プロジェクトエデン』フルバージョン等劇中音楽を収録したサウンドトラック『プロジェクト・エデン 虹色定期便97 サウンドトラック』は電子配信されているものの、
初年度含め本番組映像のソフト化・NHKオンデマンド・番組公開ライブラリーでの配信などはされておらず、こんな番組を録画していた人もほとんどいないと思うので現在では視聴困難。


一応楽曲は配信されており、NHKアーカイブスの「虹色定期便」のページにある紹介とダイジェスト映像はこの「プロジェクト・エデン」なので、封印されたとか黒歴史というわけではないらしい。
そんな中、2024年7月24日から過去のNHK教育テレビの番組を再放送する『Eテレタイムマシン』内で一部回の再放送*12も決定したので(ただし本来1話15分のものを2話まとめて25分にしてあるため一部シーンがカットされている)、本作の異質ぶりを見てみたい方はどうぞ。



【余談】

こんなとんでもない設定のものはこれくらいであるが、教育テレビ・Eテレの道徳ドラマ番組…というか道徳教育番組には、
「過去からタイムスリップしてきた人物が登場する」
「幽霊など、超常的な存在であると示唆される人物が登場する」
「というか主人公以外全員が超常的な存在」*13
のように、ごくたまに非日常的な要素のある回がある番組もある。
もっと低年齢層向けのだと「明確にウルトラシリーズ」という珍品なのに本編はシリーズマニアすら唸らせる内容のものまである。*14

特に「さわやか3組」の後続番組としてスタートした「時々迷々」は、現代日本の日常を舞台にしたオムニバスといういつもの形式に則りながらも、語り部である片桐はいり氏の怪演や、他の番組以上に後味の悪い回が多いこと、また近年の番組なので、インターネットや冤罪などの現代的な問題を取り上げていることもあって、「世にも奇妙な物語」にも通じる雰囲気を醸していた異色作であった。

他にこの局の道徳番組の異色作としては、ドラマではなく人形劇『あつまれじゃんけんぽん』シリーズの一つであるが、「戦争」というテーマを真正面から扱った1999年・2000年度の「ほのぼの村のウータン」が存在。
「戦地に住んでいた親友が、戦争を避けて疎開する途中で戦闘に巻き込まれて亡くなったため、周囲に心を閉ざすようになった避難民の少女」とかが出てくる。
…一応他に動物と恐竜が人類滅亡後の知的生命体となった未来の砂漠地球を舞台にした人形劇(特番でだけ明示される設定で、普段の放映ではなかば裏設定に近いが)があるとはいえ、その前に遭難した宇宙人双子と異文化交流していたかわいい動物人形劇でやるような話か……?
(一応フォローしておくと、毎回そんな話だったわけじゃなくちゃんと小学生同士や親子の人間関係が中心です)

なお、本作には原作が存在しており、原作版「プロジェクト・エデン」は小学館刊行の「小6教育技術」で連載された。連載期間は1997年4月から、1998年3月まで。

ちなみに本作の後の1998年には、テレビ朝日系の深夜ドラマ「ウイークエンドドラマ」枠にてハイティーンの少女を主人公にした特撮ドラマ『サイバー美少女テロメア』と『美少女新世紀 GAZER』、
テレビ東京系で女子高生が変身ヒロインになる『仮面天使ロゼッタ』が放送されており、ある意味では早すぎた作品だったのかも知れない。



追記・修正はキルケウイルスを撲滅してからお願いいたします。

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最終更新:2025年03月03日 18:04

*1 作詞:由比京紀・作曲:田頭勉。JASRAC公式データベースやサウンドトラック配信サイトには製作者の名前のみの掲載だが、本編オープニングクレジットで「間宮レイ」なる歌唱者の名が記載されている。

*2 特に放送初期となる1993年~1997年頃は『バーチャル三部作』やジュブナイルホラー・SFドラマ等、本作の作風に近めの作品群を番組内で展開しており、本作と同じ97年には「救命戦士ナノセイバー」「妖怪すくらんぶる」と2つもジュブナイル作品が制作された。

*3 1992年~1999年放送。遥か遠い宇宙にて青野武演じる教授の元で学ぶ宇宙人学生が、卒業課題のため地球の街に居候して社会について学ぶ作品。異星人がフィールドワークのために居候する、という前提設定は現在の『コノマチ☆リサーチ』も該当…なんで岸田メル先生がレギュラーなんですかね……?

*4 ついでに障碍者児童向けの番組『グルグルパックン』内ではヒーローが普通の養護(現:特別支援)学校で怪人と戦う『ストレッチマン』コーナー(後に独立番組化)が展開されていた。

*5 NHK衛星第二(BS2)でも再放送週の翌週 4:00~4:15に放送されていた。

*6 伊藤氏の相方松戸正宏氏の公式X「千葉チューセッツ松戸」2024年7月17日投稿より。

*7 ロキ曰く、「20世紀にあるもので唯一、30世紀に勝るものだ」との事。(そう言うくらい恐らく30世紀の食べ物は20世紀のより美味しくないのかも?)たこ焼きをタイムマシンで未来に転送するほどでもあったが、たこ焼きの存在はおろか、生き物の「たこ」自体生き残っているのかどうか謎。

*8 西暦2045年までに人類の99%であり、恐らく文明崩壊まで陥ったものの約995年の間に帝国という管理体制の社会が築き上げられるまで復興出来たと推測すれば、後述のタイムマシンの開発などにも大きく影響している可能性も否めない。

*9 それと繋げてか、主題歌(フルバージョンでは2番部分)にも「イド」(自我)という単語が存在する。小学生じゃこの意味を教わってないのでは…。

*10 終戦直後当時、重工業の民間事業への転換を進めたかったアメリカ側…というかWW2もので出てくるほうのジープを作っていたフォード社がライセンス生産による民間用のクルマとして作るのを日本国内のメーカーに求めたことがあったため、当該のところがなんやかんやして出来た会社でもある三菱も「ジープ」を作っていた時期がある。実際の歴史ではこの作品の放映翌年に「排ガス規制が改められるのへの対応」「パジェロとキャラが被る」として生産を完全終了、2001年までは三菱側の在庫車のみとして販売していた

*11 推測する限り、改変前はキルケウィルスの影響で開発への意欲も沸く事が無くタイムマシンの技術開発が停滞、1000年経った30世紀の時代に於いても未だ未完成の段階で安全性等で欠陥を抱えていたが、過去改変によりキルケウィルスの感染爆発が無かった事になりタイムマシンへの技術開発が進み観光目的に使われるまで進歩したと読めよう。

*12 『Eテレタイムマシン』では過去にも本作と同じくソフト化もされていない2000〜2001年度放送の「ぼうけん!メカラッパ号」や、本来ならEテレ(教育テレビ)で放送された番組ではない関根務氏が務めていたBS2時代(1995年度)の「ハッチポッチステーション」といった、本作と同じように再放送の機会もあまり無かったような番組も選ばれたりしている。

*13 『バケルノ小学校ヒュードロ組』。ただしこれは『がんこちゃん』と同じ人形劇枠ということもあって、お話そのものは「食べられるものを好き嫌いするなよ」とかのけっこう王道な回が多い

*14 『かいじゅうステップ ワンダバダ』。他の円谷作品ネタが非常に多く、一発ネタながら『SSSS.GRIDMAN』を扱ったことすらある。確かにアカネちゃんやアンチに着目すれば道徳ドラマみたいな面あるけども…