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シャドウゲイト」を以下のとおり復元します。
*シャドウゲイト
【しゃどうげいと】
|ジャンル|アドベンチャー|&image(http://www.suruga-ya.jp/database/pics/game/174000226.jpg,height=160)|#center{&image2(shadow_01.gif,width=160)&br;「しんのゆうしゃ」の冒険が始まる。}|
|対応機種|ファミリーコンピュータ|~|~|
|メディア|2Mbit+64kRAMROMカートリッジ|~|~|
|発売元|ケムコ(コトブキシステム)|~|~|
|原語版開発元|ICOM Simulations|~|~|
|発売日|1989年3月31日|~|~|
|定価|6,200円|~|~|
|配信|バーチャルコンソール&br;【3DS】2014年4月30日/514円|~|~|
|判定|BGCOLOR(MistyRose):''バカゲー''|~|~|
|ポイント|「&color(red){''ざんねん!! わたしの(ry''}」&br;謎解きは難解だが海外では高評価|~|~|
|>|>|>|CENTER:&bold(){ケムコアドベンチャーシリーズ}&br;[[ディジャブ]]/''シャドウゲイト''/[[悪魔の招待状]]|
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#contents(fromhere)
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**概要
当時の国内では珍しかった、ファンタジーRPG風の世界観を持つコマンド選択型アドベンチャーゲーム。「真の勇者」を名乗る主人公を操作し、魔王ワーロックを討つべく魔王の住む城シャドウゲイトに乗り込み謎を解いていく。~
ストーリー回りやパッケージ絵の雰囲気からは王道的なカラーが色濃く垣間見えるのだが、実際はコメディ要素の強い内容になっており、特にちょっとした行動によってすぐ死んでしまう主人公の存在により、「バカゲー」と評されている。

本作は1987年にICOM社から発売されたPCゲームをケムコ&コトブキシステムがローカライズしたものである。ケムコはこの他にも同社の『[[ディジャブ>ディジャブ 悪夢は本当にやって来た]]』、『[[悪魔の招待状]]』をローカライズしており、本作はローカライズ三部作の第二弾にあたる。~

**特徴
基本的には画面上で調べたい箇所をクリックしたり、使うアイテムを選択したりして進むアドベンチャーゲームである。のだが…

本作は一言で言うと「''即死ゲー''」である。~
かの『[[スペランカー]]』や『[[GUNDAM 0079 The War For Earth]]』並みに死にやすいのだが、その死に方が妙にマヌケだったり、あまりにもバカバカしいものだったりするのである。

#region(例えば)

-松明(たいまつ)の火が消えると、''真っ暗な中で転んで頭を打って死亡''。
--行動回数によって松明は徐々に火が小さくなり最後には消えてしまうため、新しい松明を城内で補充しながら進んでいく必要があるが、謎解きに苦戦して行動回数を浪費してしまうとストック切れで詰む。

-井戸のロープを使おうとしたらロープがほどけ、''慌てた拍子に井戸に落ちて死亡''。
-窓に向かって移動すると''窓から飛び降りて死亡''。
--火の中・(サメがいそうな)水の中・溶岩の中などにも自分から移動できる。もちろん死亡。

-「セルフ(自分自身)」というコマンドがあるのだが、「使う→武器→セルフ」と入力すると「武器を主人公自身に使う」と解釈され、''その武器を自分の心臓に突き刺して死亡''。装備コマンドのないゲームでこれは…。
--なぜかマント、メガネ、手袋は同じ手順で普通に装備してくれる。
---ちなみに原作PC版だと「つかう→アイテム→セルフ」は、「Operate(薬はConsume)→アイテムクリック→Thyself」。
--たいまつを「セルフ」で使うと、1回目には軽い火傷を負い、2回目には激しい火傷を負い、3回使用すると''全身に火が回って焼け死ぬ''。
--セルフを単体で選ぶと自分自身について口にする。もう分かるとは思うが、ここで出てくるセリフが「''わたしこそ しんの ゆうしゃだ!!''」。ひどい自画自賛。
--ちなみに、「ほうき」をセルフで使用すると「クリン クリン クリン クリン…。おでかけですか?」…''レレレのおじさん?''

そうでなくとも初見殺しのトラップも多く、あまりに唐突な即死っぷりに驚くことになる。

-置いてあるアイテムを取ろうとすると、床が抜けて「ふかいふかーい」闇の中へ転落して死亡。
-置いてあるアイテムを取ろうとすると、足元が崩れて沼に落ちワニのエサになって死亡。
-移動しようとすると、上から巨大な石の塊が落ちてきて死亡。
-ハシゴづたいに降りようとしたらハシゴが無く、思わず足を踏み外して死亡。
-穴に入ろうとしたら突然出てきた魔物に首を飛ばされ苦しむ間も無く死亡。
-鏡を壊すと''なぜか宇宙への魔法のゲートが開き吸い出されて死亡''。
#endregion

そして死亡時の主人公の台詞は''妙に冷静な実況であったり無駄に詩的や漫才っぽい言い回しになっていたりして味わい深い''([[参考動画>http://www.youtube.com/watch?v=pNCMUURSIjI]])。~

#region(以下抜粋)
-「わたしは さけびごえを あげ ほのおの なかへ''ホップ ステップ ジャンプ…かーるいす!!''((カール・ルイス(アメリカの元陸上競技選手)の誤植かダジャレか。)) わたしは もえつきてしまった。」
-「わたしは なにを ちまよったか いきなり ようがんの なかへ とびこんだ!! (中略)''どうして こんなことを させるんだ!!'' わたしは わたしの いしには はんして じさつこういを はかった。」
-「わたしは はなを つまみ あぶらのなかへとびこんだ。あづーっ!! わたしは とけてしまった。 ''ああ!! わたしは ゾンビにも なれないのか…。''」
-「''よみの くにへの きっぷを てにしてしまった''」
-「さいごに わたしが みたものは あんこくの なかで あやしく ひかりを なげかける ほしの またたきだった。」
-「''ああっ わたしは…。 こうきしんの だいしょうを いのちで はらうことに なってしまった…。''」
-「グイッ!! さめだ!! もうれつな ちからで わたしの あしを ひっぱっている!! おろかにも じぶんの にくたいを えさとして さめに ささげてしまった。 わたしが さめの いぶくろに はいりきるころには ここは ちのいけに なっているだろう」
-「ギャー!! おおごえを あげながら とびこんだ。たにぞこへ むかいながら わたしの めに うつったものは…!! しにがみだ!! わたしを とらえようと まちうけている。…しろい はを ちらつかせながら…。」
-「いどのなかに からだを なげいれた。''ふかい!! どこまで おちるんだ!! ドシーン!! ギャーッ!!'' いどは おもっていたよりも ふかかったようだ。 わたしは… からだじゅうの ほねを おって しんでしまった。」

#endregion

そしてゲームオーバー画面ではやけに生々しい死神の顔がアップになり、「''ざんねん!! わたしの ぼうけんは これで おわってしまった!!''」と表示される。~
この場面はAAになるぐらい有名。あと「ゲーム界屈指の多忙な死神」としても。

|&image2(shadow_gameover.gif,width=200,http://www26.atwiki.jp/gcmatome?cmd=upload&act=open&pageid=2133&file=shadow_gameover.gif)|

-原作のPC版では、ゲームオーバー時のメッセージ表記は"IT'S A SAD THING THAT YOUR ADVENTURES HAVE ENDED HERE!!"(残念だが、君の冒険はここで終わりだ)である。三人称のナレーターがプレイヤー自身に語りかけるという形になっており、「主人公=プレイヤー」というRPGならではの図式で描かれている。
--だがローカライズに際し、''主人公自身が''プレイヤーに語りかけるというメタ的な描写に改められたことで、より一層ネタ性が増したと言えるだろう。~
日本語の表現力の多様性を活かしたこれらおもしろテキストの数々こそ、本作最大の魅力である。

死に際ばかりがクローズアップされるが、その他にもマヌケなところが多い。
-主人公は「しんのゆうしゃ」を名乗っているくせに、幽霊を見ると「''怖くて近づけない''」と発言する(幽霊自体は何もしてこない)。
-それだけでなく、モンスターと出くわすたびに「ぎゃあー!!」「うげえ!! でかい!!」「ヒッ…ヒイッ!!」「ひいっ でっ でた!!」「ひえええっ!! でっ でた!!」「どうしよう? どうしたらいいんだ?」などと、やたらとビビり怯えまくる。魔物を目の前にして「あれこれ考えているうちに」身体を食いちぎられてしまうことも。
-女好きなのか「おっ!! いいおんな…。」とおもわず呟く場面もある。その正直な反応には親しみが沸かなくもない?

-呪文をいくつか覚えるのだが、その名称がとてつもなく安直なものばかりである。
#region
--「レナニゼカ」…カゼニナレ(風になれ)の逆さ読み。
--「ミチヨヒラケ」「ヒカレタイヨウ」…何のひねりも無い。
--「テラヨテラ」…テラは「地球」、すなわち「地球よ地球」と呼びかけているもの。
--「プーロ」…ロープを逆にしただけ。その場にあるロープを伸ばして穴を脱出するための呪文。
---これは原作自体がそんな感じであり、「HUMANA(人間)」「Mortari(臼砲)」「Illumina(照明)」「Terrakk(地球)」「EPOR(ロープの逆綴り)」の安直感を忠実に再現している。
--「ミガルナール」なんていう薬品も登場する。ドラえもんのひみつ道具を彷彿とさせるネーミング。
---こちらは原作では薬品名がなく、移植スタッフのオリジナルである。

ちなみに、「プーロ」は脇道のショートカットに使うが、使用しなくてもクリア可能。~
「プーロ」が習得できる部屋には''カタカナででかでかと「プーロ」と書かれている''。あまりにもシュールすぎる。

#endregion

とにかく油断をするとすぐに死ぬゲームだが、本作ではそこにネタ性が付属することで「しんのゆうしゃ」の死にざまを見ることが最大の醍醐味(?)として成り立っている。1度も死なずにクリアできた人は最強の運の持ち主であると同時に、最強の不運者かもしれない。

**問題点
-ハマリルートがあるので一部のアイテムやセーブした場所によってはクリア不可能となる。話自体は短めなので、やり直しになってもあまり困らないのが幸いか。

-ノーヒントの謎解きが多い。ただし、本作の謎解きはファンタジー系・アドベンチャー系のゲームではお約束のものが多いので、ある程度は自力で何とかなる。
--目立つ場所に重要そうなアイテム(=手前に罠)、腐臭がする(=この先危険)、行き止まりに動くが取れないアイテム(=隠しスイッチ)、カーペット(=下に何か隠されている)など。
--「スリング(投石紐)」を「パチンコ(スリングショット)」と訳した結果、パチンコを投石紐のようにぶんぶん振り回したりするので、原文ではヒントになるような表現がどこかにあるのかもしれない。
//当時の日本語ではパチンコという単語がスリングショットの意味でも使われていた。「スリング」で投石器をイメージできる人よりも「パチンコ」でイメージできる人のほうが多かったはずで、意訳には違いないが誤訳だとは思い難い。
//確かに誤訳は極端かも。なおして見ましたがどうでしょうか。英語が読める方に原文を確認してもらえると一番いいのですが…。
--セレクトボタンを押すとヒントが表示される。重要なヒントが出る場合もあるのだが、「あきらめるな!」としか出ないことの方が多い。
//--難しいのは、「一度くっついているアイテムを取った後でまた調べないとヒントが出ない」「取れない本があるが『開く』のが正解」「フタがあるように見えないバケツを『あける』」など。見落としやすい。
//解法を書くのはいかがなものかと。

-コマンド指定時のカーソルの移動速度がやや遅い。
--PCゆえにマウス入力であった原作を踏襲しているため入力の仕方にもクセがありイライラさせられやすい。


**評価点
-ファミコン後期に発売されただけあって、全体的な画面デザインは凝っている(前作とほぼ共通)。

-主人公の(能動的に取れる)自由自在な死にざまからもわかるように、行動の自由度が非常に高い。
--ADVとしては、行動の自由度は選択肢の多さによる煩わしさを伴いがちなものなのだが、本作は個性的なテキストと主人公の死にざまのこれでもかというほどのバカバカしさにより、楽しみ方のひとつして昇華されるに至っている。(この点は翻訳のセンスによるところが非常に大きい)
--死亡時を含めテキストはギャグとしては非常に面白いセンスだと評価できる。積極的に死亡させて随所の死亡テキストを楽しむという一風変わった遊び方が成立しており、死亡パターンを集めた動画が製作されるほどである。

-日本人には(テキスト訳のセンスも手伝って)バカゲーとして見られがちだが、海外では高い評価を得ている。
--後述のように、海外と日本ではテキストアドベンチャーの作風自体が大きく異なっているため、コメディ要素の強さは海外ならではという一因もあるかもしれない。

-実は死ぬこと自体のペナルティはあまりない。死んでも1つ前からコンティニューできるうえにセーブもどこでも可能なので中断も楽。

-BGMは耳に残るものが多く、不気味な雰囲気作りに大きく貢献している。特にスタート直後から流れる曲(「メインテーマ」と呼ばれる)は有名である。


**総評
ファンタジーRPG的な世界観を舞台にしたシリアスな世界観がアドベンチャーゲームとしては新鮮…と思わせつつ、実際は豊富な量のコミカルなテキストが用意されたコメディ色の強いゲームであった。~

もともと海外のADVは謎解き・物語重視の日本製ADVと異なって、本作のように高い自由度を持ちプレイヤーの行動に即した反応を返してくれる多様なテキストを楽しむスタイルが主流であり、本作のコミカルさも原作のスタイルをローカライズ移植の上でもしっかりと踏襲している結果である。~
しかし、珍妙な翻訳によってテキストの性質が若干おかしな方向性に走ってしまいネタ性がより強まった結果、バカゲーと化してしまった。

複雑な謎解きやゲームシステムについて行けなかった人やコメディテイストに馴染めない人にとっては面白味が感じられないかもしれないが、~
主人公の死に様に関する誇張されたギャグ的表現やバカバカしい描写などのコメディ要素をジョークとして笑える人にとっては楽しい「バカゲー」と言えるかもしれない。 

**余談
-本作の題名は「シャドウゲイト」だが、ゲーム本編中ではすべて「シャドウゲート」と表記されている。
--単に誤植なのか意図したものなのかは不明。言語の発音に近いのは「ゲイト」だが、日本語では「ゲート」と表記するのが一般的である。
--『伝説のクソゲー大決戦』では「いきなり城の名前を間違えている」と茶化された。

-第1作『ディジャブ』と第3作『悪魔の招待状』他の2作も本作同様に即死ゲーなのだが、本作に比べるとインパクトは薄い。やはり王道ファンタジー的な世界観の物語の主人公がコミカルな言葉とともに死にやすいという点が受けたのだろうか。
--しかし死にパターンの多さや、「''なーんちゃって! こんなことでへこたれるぼくじゃないヨ! コンテニューでもういちどチャレンジしょう!''」「''(プレイヤーへ向けて)きみのせいでぼくはしぬんだ''」などのケムコ&コトブキシステムの怪訳センスは『悪魔の招待状』でも健在である。
--ちなみに今作でフルートを吹いた時に流れる曲は『ディジャブ』のBGMの出だしである。そして『悪魔の招待状』では洋館内で蓄音機を調べると本作の「メインテーマ」が流れるという小ネタがある。

-原作PC版のマニュアルには、「Open→Thyself」(あける→セルフ)は''「自分自身を引き裂いて自殺したりはしない」という補足がある''。

-1999年に本作の移植版である『シャドウゲイトリターン』(GBC)と続編((実は本作のエンディングでは最後に「だい1わ  おわり」と表示されている。))『Beyond Shadowgate』(TurboGrafx-16)と『[[シャドウゲイト64 Trials of The Four Tower]]』が(N64)が発売された。
--『シャドウゲイト64』ではハーフリング族((『指輪物語』で言うところの「ホビット族」にあたる種族。『ダンジョンズ&ドラゴンズ』において権利関係上の代替えとして、全く同じ特徴を持った別名種族として作られたという経緯がある。現在では本家のホビットから離れ独自の設定をもった種族として確立されている。))の主人公となってシャドウゲイトの謎を解いていくのだが、残念ながら(?)割と普通の作品に仕上がっている。
---『シャドウゲイトリターン』ではヒントボタンで表示されるヒントの数が増え、松明が消えるまでの行動数も増加して行動に余裕が出来たりと難易度が下げられている。しかし、テキストは一部修正されており「かーるいす」や「おでかけですか」が無くなっている。

-本作の原作と同様、ストーリーではなくテキスト重視のADV作品には「ゾーク」シリーズや「LIFE and DEATH」などがある。
--古すぎて入手困難なうえに動作環境の敷居も高いものばかりだが、本作で海外のテキストADVに興味を持ったプレイヤーには是非様々なタイトルに触れてみて頂きたい。

-…そして、遂に2014年4月30日より、''[[ニンテンドー3DSバーチャルコンソールでの配信が開始された。>http://www.nintendo.co.jp/3ds/eshop/vc/td4j/]]''
--価格は514円。ボリュームを考えると少しお高い買い物だが、しんのゆうしゃの辞世の句を聞きたいならぜひどうぞ。

-steamでグラフィック等を大幅刷新した英語リメイク版が配信販売されている。これはオリジナル版の制作者が携わった正真正銘のガチなリメイクであり、3Dグラフィックを用いた本格的な作品になっている。

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