DQNネーム

登録日:2010/12/28 Tue 17:42:37
更新日:2025/01/28 Tue 04:39:05
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DQNネームとは、人名におけるDQNな名前、つまり一般社会の常識と照らし合わせると明らかに逸脱した名前のことである。
発祥は不明だが、いつ頃からか自然発生的に誕生し、そのまま定着した。




概要

類語に「キラキラネーム」がある。
こちらは命名した当事者にとってはポジティブな意味合いとなり、マスメディアではこちらが使われる。要するに言葉をマイルドにしただけ

だが、どの道多分に皮肉を含んだ表現であるのには変わりはない。
「蔑称」としてのニュアンスが極めて強く、安易な使用や認定はトラブルの元になるので注意が必要。
最近ではキラキラネームの方がよりストレートに馬鹿にした感じがするという意見もある。


タイプ

大きく分けて「字の使い方」か「名前の由来」のどちらか、または両方に原因がある場合が多い。
なお、後述するように実際にいる名前をDQNネームの具体例として出すのはいじめでしかないため、架空人物の例のみ取り上げる。
また、当項目では、例に挙げている人物名を否定する意図はない。

字の使い方

これが原因で起きた騒動が、1990年代の「悪魔ちゃん命名騒動」である。

親に理由を聞くと「これからは海外に通じる名前にしないと〜☆」とかいう返事が返ってくるぞ。


  • 『読めるか阿呆!』と言いたくなるほどに無理矢理な当て字


ぶっちゃけ「心愛」はかなりマシな部類に入る。iPhoneの予測変換にも出るぞ!
近年は実在する人物でも使用されており、名付けのサイトなどでも掲載されていたりする。*4
賛否両論ありつつも時代の変化とともに受け入れられているとも言える。

作中では「優」と省略されて呼ばれることがほとんど。本人も田中優と名乗っている。
ちなみに苗字がありふれているので、変わった名前にしようという意向の元に名付けられた。

  • 明らかに本人の性別とは逆の名をつける
    • 例: 「吉永さゆり(ニックネーム: ヒゲゴジラ)」、「藤波竜之介」等
女の名前なのに、なんだ男か*5
※「かおる」、「つかさ」、「なぎさ」、「まこと」、「ひろみ」等の男女兼用名は除外。また、「○美」という名前が男の子に付けられることもままある。

かのピカソのフルネーム「パブロ・ディエゴ・ホセ・フランシスコ・デ・パウラ・ホアン・ネポムセーノ・チプリアーノ・デ・ラ・サンティシマ・トリニダード・ルイス・ピカソ」も、聖人や縁者の名前を並べまくった結果である。


名前の由来

由来にもいろいろあるが、実際には由来がどうであれ自然な名前であれば問題は無い。
  • 漫画やアニメやゲームのキャラクターからそのまんま引用する
  • 人間ではなく動物のキャラクターの名前をつける
  • 国際的な人に育ってほしいからと、外国人っぽい(あくまで“それっぽい”)名前をつける
  • かわいいからと、ペットのような名前をつける
  • 外国の単語を意味も分からず持ってくる or 完全に誤用する
  • 個性ある人に育ってほしいと、変にひねくれた名前を付ける
  • 音の響きを重視し、使う漢字の意味を全く考えない
等々…様々なタイプが存在する。

ここ十年の明治安田生命の子どもの名付けランキングをみると、どうみても新しいエロゲーかギャルゲーか特撮ヒーローの登場人物一覧か何かかと疑いたくなる光景が広がっており、特に女児の名前は概ねパソコンかテレビのモニター越しに会った彼女達から付けたであろう名前が連なっている。

アニメ・ゲームなどの創作キャラクターの場合、個性的なネーミングにすることでそのキャラの名前を覚えてもらいやすくしたり、悪役なので現実で同じ名前の子供がいじめられないように……等の理由で奇抜な名前がつけられることは珍しいことではない。
ただしそれはあくまでも創作に登場する架空の人物だから許される話であり、その名前を親が真似して自分の子供に付けてしまうというのは正直なところあまり褒められた行動とは言えない。
それが「翼」などの現実でも珍しくない名前ならともかく、「月(ライト)」のようなDQNネームを付けてしまうというならなおさらである。

DEATH NOTEにおいて、原作者の大場つぐみは、
殺人を犯す悪人が主人公のストーリーなので同じ名前の子どもがいじめられないように
という理由で非現実的な名前を数多く登場人物に名付けたが、その後「月」やら「キラ」やらの名付けが増えたらしい。大場先生の配慮が台無しである。*6

さて、アニヲタWikiにあんまり関係ない項目に思われるだろうが、我々には俺の嫁というのがいる。
名前自体は普通の名前でも、もし俺の嫁の名前を子どもにこっそりつけてそれがリアル嫁にバレたら……
これは「加奈の悲劇」としてよく知られているので調べてみよう。*7

西洋の名前の方についても、殆どは聖書に出てくる聖人や偉人の名前を引用しているため、安直にマリアとかジョンとかジェームズとか付けると、そちらの国の人から「なんでクリスチャンでもないのに聖人の名前つけてんの…?」と思われたりするとか。
例えるならブッダ神父やニチレン牧師みたいな感じか。
※なお、マリアにちなんで「まり」「まりえ」「まりか」等とつけるという事は割とある。

単純に見た目と名前の響きがミスマッチという問題もある。
読者の皆も、金髪碧眼のアメリカ人が太郎とか花子という名前だったら驚くだろう。つまりそういう感じである。*8


何故DQNネームがつけられてしまうのか?

原因のひとつに、親世代が自分の親(祖父母世代)と疎遠である場合が挙げられる。
普通の親であれば子どもにとんでもない名前を付けはしないし、間違って付けようとしてもその上の親が止めてくれる。
しかし、核家族化が進むにつれて親世代と祖父母世代の交流が少ない家庭も増え、親がマタニティハイの状態のまま誰も止めずに名付けてしまうことがまま見られる。
また、場合によってはその祖父母世代ですら脳内お花畑で反対どころか賛成してしまうこともあるといい、一歩離れた立ち位置にいる故に冷静に判断できる(子供から見た)叔父・叔母が反対して家族会議になってしまうこともあるとか。

また、由来にも挙げた通り「個性的な名前や国際的な名前を!」と変な名前をつけることを煽る一部の無責任な育児雑誌の存在も大きい。

海外は海外で「Google」や「Excel」などを届け出る親がいたり*9、中国では漢字でなくアルファベットを使おうとするなどの例がみられ、各国で問題視されている。

また近年のインターネットやSNSの発達でそうした例が目につきやすくなり、かつ個々の事例を一覧にしてまとめやすくなったのも問題視されるようになった要因の一つに挙げられる。
この手の事例をまとめたサイトというのは広告収入目当てで「プログラムで自動的に生成し、不適切なものを校閲しないまま注意書きや謝罪文を小さく載せておく」というものも多く、そういったところに無頓着な人だと「本来は問題視されている文脈からプログラムが肯定的に拾ったもの」なんかに騙されてしまうこともある。
実際名前について調べると、その文字についてあることないこと書いてあるサイトがよくヒットする。

ありふれた名字の場合、変にありふれた名前をつけるとそちらの方が支障をきたす、というのもこの手の奇妙な名前をつける手助けになる。
たとえば2007年のNHK朝ドラ「ちりとてちん」の主人公は和田喜代美というのだが、引っ越した先で和田清美という同姓同名の人とバッティングしてしまう。
クラスメイトが困ってしまい、「A子」「B子」と呼ぼうと提案し、自分がB子でいいと言ってしまったところから劣等感に苛まれ~というところにつながるのだが、こういった同姓同名問題を避ける際にDQNネームとはかなり便利なのである。
自分の子どもというのは親にとって特別である。誰だってB子やサブプラン扱いされたくはない。
クラスに同姓同名の人物がいるために「眼鏡のヒロシ」「チビのヒロシ」と悪口ともとれる呼ばれ方をされるケースも往々に発生してしまうし、元々多い苗字の人は命名時にまずその点を心配してしまう。
そんなもんなので、田中さんや高橋さんの場合、それを避けるという大義名分が成り立ってしまうし、田中や高橋がいいなら俺だっていいだろう、ってわけ。

何故かDQNネームをつけてしまう親は極端に教養がないか、逆に教養がありすぎる人間が多い。
前者は単に目立つことやノリで考えるからだろうが、後者においては自分の教養を示したいという欲求が強すぎたのだろう。

教育関係者や児童福祉関係者の間では、DQNネームの子どもは虐待される確率が高いことがよく知られている。
最近報道された虐待死亡事件でもDQNネームは少なくない。
子どもをモノやペットのように扱う親にDQNネームをつける傾向があるらしい。

また、進学や就職においてもDQNネームというだけでハネられることもある等不利に働くこともあり得る。
本人に問題がなくても親が…、周囲の環境が…という訳である。

さらに最近ではSNS全盛期になったことで、「気に入らない人の実名を晒すことで報復をする」という、デジタルタトゥーに関係する問題が出てくる。
この時にありふれた名前だとすぐに忘れてもらえるのだが、奇妙な名前だと「何をやったかは具体的に忘れたけれど悪いことをしたことは覚えている」と、いつまでも忘れてもらえなくなってしまう。
たとえばノーベル賞を受賞した「江崎玲於奈(れおな)」を覚えている人はいるだろうが、それはかなりの特例。
悪いことをしなければいいと言うが、名前を晒す側が正義とは限らない。
相手が逆恨みをしてきたり精神を患っていても、受ける被害は同じだし保険だって降りない。
悪目立ちしないことに越したことはないのだ。

間違っても自分に子供が出来ても「愛歌と書いてラブソングと名付けたい」とか言ってはいけない。

因みに名前を付けるのはお役所仕事なので、「ビチグソ」とか「肉便器」とか酷すぎる名前でなければあっさり通る。
名前は出生届で届けられるが、名前を理由に出生届を不受理とした場合、役所としては守るべき子どもを把握できなくなりかねない。これについては闇の子問題も参照。
そのため、名前を理由に突っ返す訳にはいかないという面がある。*10

名前に使える漢字は決まっているが、戸籍や住民票にそもそも読み仮名はなく、出生届では事務処理上の理由で「よみかた」を書く必要はあるものの、漢字をどう読ませても良いし、後で自発的に読み方を変えるのも自由。
ただし漢字の音・訓・字義などに全く関係ない読みの場合は受理できないというのも戸籍法にあり、漢字の読みから豚切りレベルでも字義から連想ゲームレベルでもいいので、出生届では漢字に基づいた読みは最低限求められる。
代表例として、「高」と書いて「ひくし」と読ませるのは意味が逆なので不受理になる。

ちなみにドイツでは子供に名前を付ける際、かなり厳格な規制があるという。
具体的には「名前で性別を識別でき、尚且つ子供に悪影響を与えない名前であること」という条件があり「適切でない」と判断されると却下されることもある。

他にもアイスランドでは子供につけて良い名前のリストがあり、それ以外の名前をつけようとする場合には政府に申請する必要がある。そのため大抵の親はリストから選ぶとか。*11

フランスではフランス革命の時に子供にとんでもない名前をつける親が続出し、その結果「子供には歴史上の人物などの名前でなければならない」という法律ができた。

日本では1951年に新生児の命名に際し、当用漢字以外の使用が禁止された時、「命名権は基本的人権であり、漢字を制限するのは憲法違反だ」という主張が出て、国会に「戸籍法の一部改正案」(漢字制限の撤廃)が提出されたことがあった。
それを止めたのが、当時の官房副長官であり、後に文部大臣にもなった「剱木 亨弘」(けんのき としひろ)であった。
彼は、自由党国対委員長の小沢佐重喜に対し、
私の下の名前が読めますか? 生まれてから今日まで、誰からも一度も正確に読んでもらったことはありません。
親は自分の子供だからといって、人から読まれない名前を勝手に付けてよいのでしょうか?
と懸命に訴えた結果、法案採決自体が取りやめになったという。
小沢も「佐重喜」(さえき)の名前をなかなか正確に読んでもらえず、大臣の任命式の際に昭和天皇が総理に対して「この名前はどのように読むのか」と質問したというエピソードが残っている人物であるため、名前による苦悩が理解できたと思われる。
同時に、息子である小沢一郎が絶対に間違えようのないシンプルな名前になった理由でもあると言われている。
難読の人が、更なる難読が発生するのを止めたわけである。

なお、2023年2月に法制審議会がまとめた「戸籍法等の改正に関する要綱案」ではDQNネームへの規制策として、すでに戸籍がある人も含め、すべての国民が氏名の読みがなを届け出することが義務付けられることが明記されている。

2024年度内には戸籍法が改正され、漢字と読みの意味がきちんと通じるものを名前として届け出なければならなくなり、グレーゾーンな名前は行政がきちんと監査を行うようにする予定だそうだ。
そのため、行政の匙加減次第で、よっぽどの当て字系や無茶苦茶な読みの子供は今後減っていくものと思われる。


それは本当にDQNネームなのか?

まず、読みにくいというだけではDQNネームとは言えない。
例えば「裕」という名前を初見で正確に読めるか?
「ゆう」「ゆたか」「ひろし」「ひろ」など色々通常の読み方があり、聞かなければ分からないだろうが、DQNネームという人はいないだろう。
聞かなければ分からない読みだからDQNネームだというのであれば、これもDQNネームになってしまう。

更に、歴史的な由来も考える必要がある。
「融」→「とおる」、「主税」→「ちから」など、実際知らないと読みにくい名前だが、「百官名」とよばれる奈良時代の役職名にちなんだ由緒ある名前である。*12
こうした歴史的に名前に使われてきた名前を認める要請があるからこそ、「亮」のように常用漢字以外の人名漢字が認められているのだ。

漢字の意味が多義的なことも留意する必要がある。
「悪」なら「強い」「勇猛である」、「醜」なら「たくましい」、「負」なら「頼る」「担う」、「鬼」なら「大きい」「精魂込める人」*13といった具合である。
逆に現在ではいかにも快刀乱麻を断つようなかっこいいイメージがある「斬」は、本来は非常にグロテスクなニュアンスの文字だったという。
中国や日本の歴史上の人物の名前に、現代からすれば「えっ」と思うような漢字が使われているのも、現代人がすぐに考える意味とは違う意味でつけられているものが少なくないのだ。
もちろん、現代においてその解釈を主張することはいかがなものか、という批判は考えられる。
だが、漢字の意味や名前の意味を知らないままにDQNネームと認定し嘲笑するのは、逆に自分に教養がないことを嘲笑される結果となる可能性がある。

時代の変遷まで考える必要がある。
更に当時は珍しい名前だったかもしれないが、時代が下るにつれて珍しくなくなるというパターンもある。
有名なのが「ナオミ」「マリア」あたりで、これは元々聖書の登場人物からとられたものだが、
日本語の漢字をあてがうにあたり「直」や「真理」「毬」などの文字が使われるようになり、日本語として自然になったから。
今では特定宗教と無関係の家庭、クリスマスを祝って初詣に行って葬式はお坊さんに来てもらうような家庭でも普通につけられている名前である。
令和のご時世で直美さんや真利亜さんをDQNネーム呼ばわりしていたらそっちの方が「時代が昭和40年あたりで止まってるのかな?」と返されても仕方がない。

もう少し言うと、例えば「翼」や「」などは昔は相当な奇名だと扱われていた。元ネタとなる作品からとられているからだ。
今では雫ならまだしも、翼をDQNネーム扱いする人はいないだろう。
逆に昔は珍しくなかったかもしれないが、時代が下ったせいで珍しくなってしまうというパターンもある。男性の「丸」あたり。
これは決してDQNネーム扱いにはならないだろうが、名前の珍しさからそちらで呼ばれることが増える。

他の考え方としては、日本語としてはまったくおかしくない名前だが、その名前が持つ特別な意味が問題になることがある。
たとえば「球児」。野球選手の藤川球児が有名だが、単に親が野球ファンでつけられた球児さんはサッカーをやっているだけで笑いものにされてしまう。*14
もっというと運動音痴だとそれだけで笑いものになる。しかし球児という言葉自体にはまったくネガティブな意味はない。

このように日本の名前は比較的自由につけることができ、さらにその性質から漫画の登場人物の名前をキラキラさせることが当然のように行われている。
そのため、それこそ「月(らいと)」のようなあまりにも逸脱した名前でもない限り、DQNネームかどうかを決めるのはその人の感性によるところが大きい。
そして「月(るな)」ならダメだけど「瑠奈(るな)」ならいい、など人によっていくらでも基準は変わるし、
「比奈(ひな)は雛に通じ、雛とは生まれたばかりの鳥のことだ。いつまでも雛鳥のままでい続けさせるのか?親はバカなのではないか?」のようなこじつけを述べる人もいる。

話はかなり逸れるが、DQNネームを否定的に騒ぐ世代というのはだいたい、小学校ランドセルが黒(男)か赤(女)で、この色が違うとそれだけで目立ったような時代だった。*15
しかし最近では黄色や紺色、水色といったカラフルなランドセルが大流行しており、いまだに黒や赤以外を認めないなんて言っていると笑いものにされてしまう。
時代が流れれば、珍しいものも変わっていく。
これとまったく同じで、今でこそ珍しい名前も時代が下ればありふれていて、そしてその「珍しい名前」を持っている人がさらに珍しい名前を批判している。
そんなことも起こりうるのかもしれない。というかたぶん起こる。

結局のところDQNネームかそうでないかを決めるのは、最終的には当人の好き嫌いになってしまう。
それが決められるのはその名前を認める人が多いか、認めない人が多いか、その差にすぎないのである。
逆に言えば、このあたりのバランス感覚を間違えてしまった名前がDQNネームなのだろうが、認定者がバランス感覚を間違えない保証などどこにもない。
間違えたまま人を嘲笑するような行為は、ハラスメントと言われても仕方ないのである。


改名で解決できるか?

一度決まった名前を改名するのは家庭裁判所の許可が必要で、「改名するに足る理由」が必要。
名前をあまりころころと変えられると、周囲も「この人誰だっけ?」となりやすく迷惑するし、時には悪用される可能性もあり、簡単に変えさせないことがルールになっている。

改名するに足る理由としては
  1. あまりにも奇妙な名前
  2. 読みが難しすぎる
  3. 身近に同姓同名がいるなどの理由で不便である
  4. 性別が紛らわしい
    • 女性なのに「●男」「●雄」「●太」など。「●美」「●香」など、男女とも使う名前では困難。
  5. 外国人と紛らわしい
    • 外国人が日本に帰化した場合などもこれになると思われる。
  6. 出家して僧となり、僧としての名前を名乗りたい
    • 逆に還俗(僧から一般人に戻ること)で普通の名前に戻るのもあり。
  7. 何年も通称の名前で暮らしてきており、周囲にも通称の名前が本名と知れ渡っている
    • 芸能人の芸名や営業名など、その中でも特に多いのが力士であろうか。
    • また、出生届に書き間違いがあり、自分で本名と思って長い間使ってきた氏名と戸籍がずれている場合などもある。
      • ちょっと違うが、西郷隆盛がこれに近い。彼は本当は隆永という諱だったのだが、政府が官位を与える際に本人が不在だったため知人に問い合わせたところ、普段から幼名(吉之助)で呼んでいたため思い出せずに「確かこれだった」と思って父親の諱を伝えてしまったが、本人は気にせずそれ以降隆盛を名乗ったという。
  8. 同姓同名の犯罪者などがいて、差別・いじめが発生してしまっている
    • これを理由として改名が認められた有名な例に、田中角栄(子ども)がある。
      • 総理大臣の田中角栄にちなんで田中さんが子どもに「角栄」と名付けたら、田中総理がロッキード事件で有罪になり、田中角栄(子ども)がいじめの対象となったので改名できたというもの。

いわゆるDQNネームは1.と2.に当てはまる可能性が高く、申請すれば改名自体は認められる可能性が高い。
とはいえ、最後は裁判官が決めることであり、緩い裁判官に当たるとあっさり改名できるのに頑固な裁判官に当たるとなかなか改名が認められないことも少なくないとか。
また、15歳以上でないと自分では名前の変更ができないため、親がDQNネームに固執し続けて「そんなの許さない!お前は一生この名前であるべきだ!」となると子どもとしてはお手上げになる。
15歳以上になったとしても、親元で暮らしている限り親が拒否すれば改名が難しいのは変わらないだろう。

従来は「どうやって手続きをしたらいいのかわからない」と途方にくれてそのままになっている人も多かったが、2010年代以降、ネットの普及に伴い改名する方法や必要な書類の情報がテンプレート化されて広められ、そのおかげで普通の名前を得られた喜びの体験談もいくつか投稿されている。
2019年、「王子様」という名前を母親につけられた18歳の男性が改名した経緯をTwitterに写真付きで投稿し、新聞やニュースサイトでも取り上げられ大きな話題となった。

また、あまりに読みにくい名前をつけて失敗したと考えた親御さんは、放置せずできる限り早く家庭裁判所に行って改名の手続きを取ってあげること。
子どもが大きくなって幼稚園・学校に通い始めると改名はどんどん難しくなるし、また改名できたとしても子どもに負担を強いることになる。


実は昔からあった?

かの有名な「徒然草」の第百十六段を開くと、

お寺の名前や、その他の様々な物に名前を付けるとき、昔の人は、何も考えずに、ただありのままに、判りやすく付けたものだ。
最近になって、よく考えたのかどうか知らないが、小細工した事を見せつけるように付けた名前は嫌らしい。
人の名前にしても、見た事のない珍しい漢字を使っても、全く意味がない。
どんな事も、珍しさを追求して、一般的ではないものをありがたがるのは、薄っぺらな教養しかない人が必ずやりそうな事である。

といった内容の文がある。
どうやら700年昔の鎌倉時代の人々も似たような思考だったらしい。
流石兼好と言うべきか、人の営みは700年経っても変わらないと言うべきか…


時代は下って、江戸時代の国学者・本居宣長の随筆「玉勝間」巻十四には、

最近の人の名前には、名前にふさわしくない字を使う事が多く、読み方も普通ではないものが多い。
最近の名前は、特に奇妙な字や奇妙な読み方が用いられていて、非常に読みづらいものを多く見かける。
全ての名前は、よく知られている文字で、読み方も分かりやすいものが良い。

という内容の文がある。
江戸時代でもそれなりにいたようだ。

  • 「とうり」(糸瓜or唐瓜)を「へちまうり」(と=「いろはにほへちりぬるを」の「へち間」)と呼び変えたり
  • 酒屋に「春夏冬二升五合」(秋無い升升半升=あきないますますはんじょう=商い益々繁盛)と書いてあったり
  • 歯の絵と逆さになった猫の絵で箱根(はこね)をあらわしたり
  • 麻と書いて魔-鬼=ことわざ「鬼の居ぬ間に洗濯」で洗濯と読んだり
  • 十と五を組み合わせた嘘字(創作漢字)で元服と読んだり
  • 武士である「高梨」家の分家が本家と字を変える際に「小鳥遊」(小鳥が遊ぶ=鷹無し=たかなし)にしたり
  • 武士である「山梨」家の分家が「月見里」(月がよく見える里=山無し=やまなし)にしたり
……こういうノリの言葉遊びが流行していたせいもあるが。

実際、本居宣長の門下生の名前も
「稽古」なので「けいこ」かと思ったら「とほふる」(「稽=とどこほる・古=ふる」に読みを寄せつつ「稽古=刀振る」)だったとか、フリガナ無しには読めない名前が何人も居たという。

著名人の例では、森鴎外が我が子達につけた名前がDQNネームであると指摘されることが多い。
理由については前述のDQNネームがつけられる主な理由の一つとして挙げられていた「国際的な名前を付けたいから」というもの。
ただしこれは鴎外自身は本名である「林太郎」を海外ではなかなか覚えてもらえず苦労したという苦い経験が原因だったりする。


子供のその後

付けられた子供はどう思うのか?

現在ほど多くない(かもしれない)とはいえ、兼好の言うとおりDQNネームをつけたがる親というのは昔からいるので、その名前を持った人が成人している場合もある。
そういう人たちがインターネットなどで書き込んだ、その名前に対する思いだが、『恥ずかしい』『いじめられた』というのがほとんどである。
「外国人のような名前を付けられても、見た目が純日本人なんだから似合うわけないに決まっている」「変な名前だから絶好のからかいの対象にされた」など、もう被害者としか言い様のない声が探せばいくらでも出てくる。
DQNネームを付けるような親に言っても仕方ないかもしれないが、子どもは親の所有物でもペットでもなく、親と同じ人間なのである。
そんなこともわからないのなら、そもそも子どもを作るべきではない。

まれにだが珍しい名前が役に立つ例があり、俳優の下條アトム(芸名ではなく本名!)は「アトム」繋がりで『鉄腕アトム』の作者手塚治虫と対面出来たという。
ただし大抵レアケース中のレアケースなので、期待はしないこと。大抵は不利益の方が多い。

ちなみに、DQNネームを付ける気満々な母親の子どもを不憫に思い、『付ける予定という名前+ママ』というあだ名でその母親を呼び続け、その恥ずかしさに気付かせてDQNネームを付けるのを止めたというママ友の話がある。
こういう人がもっと増えればDQNネームも、その名前で苦しむ子どもも減るかもしれないが、未だ全く聞かなくなるまでには至らないのが現状である。ままならないものだ。

そして2000年9月、53歳の男が「女の名前を付けられたせいで人生がうまくいかなかった」として73歳の父親を包丁で刺すなどして失血死させるという事件が起きた。
父親が名付けて字が難しくて女みたいなのでイジメられたと本人が恨んだ名前は「鼎(かなえ)」で、30代になって「要(かなめ)」に改名していた。
裁判では、こうした男性の主張は「逆恨み」と断ぜられ、懲役14年となっている。*16

子供に限らず自分が名前をつける側に回ったとき、それが本当にいい名前か考えたいものである。

自分の子でないにせよ、「それはちょっと…」と思う機会があったら声を上げよう。余計なお世話と言われても、それで子供の将来を守れるのなら安いものだろう。

また、稀にだが名付けた当初は普通の名前だったはずなのに、年代が下った結果DQNネームに見えてしまったというパターンもある。
光宙(みつひろ)と名付けられた推定40代ほどの人がピカチュウと名付けられたと勘違いされたという小噺だとか、
あるゲームキャラクターと同姓同名になってしまった話だとか。*17

とある小児科医からは、「常識的な名前でないと救急時に名前の読みを間違えて患者のIDが複数できてしまい、患者の取り違えが起きる!」というDQNネーム批判がされた。
一刻を争う救急現場では、本人が名前を話せず持ち物などから氏名を推定したり、救急隊員の電話越しの説明で記録を作らざるを得ないことも多い。
そんな中で名前が読めないと患者の管理に支障をきたし、手続の煩雑化による一刻を争う手術の遅れや患者取違えリスクの増大が指摘されたのである。


DQNネーム批判に対する批判

他方で、安易なDQNネーム認定や批判も考え物である。

どんな名前であれ、本人が気に入っているかもしれないのだ。
傍目に見れば奇抜でもバカバカしくてもあるいは普通でも、自分の名前に誇りを持っているという人に対して、それ以上言うべきこともないだろう。

それだけでなく、DQNネーム批判は、時に現実にDQNネームをつけられてしまった子どもたちを辱めてしまうという側面もある。
DQNネームを付けるのは親の問題であり、それによって不便を被った子どもたちは被害者である。
DQNネーム批判の過熱は子どもたち自身にとってそれこそ追い討ちに等しく、当の子どもたちの立場を危うくしてしまうことは忘れてはならない。
名付けでやらかした親についても、子どもたちにとってはかけがえのない親である。名付けの失敗以外では愛情を注いできちんと養育している場合も多いだろう。
名前を慎重に付けることは確かに大切であり、珍妙な名前をつけることは子どもに悪影響があると呼びかけるのも重要なことかもしれない。
だが、呼びかけるのに、今生きている子どもの具体的な名前を出して、その名前を持つ人とその両親を笑いものにし、その心を傷つけることが必要なんだろうか?

はっきり言おう、それはいじめでしかない。例え言っている側にいじめるつもりがなくともである。
そもそもDQNネーム自体、DQNネームに目をつけていじめを行う人物さえいなければ、特に社会問題にもならないことである。
実際、読み方が複数ある名前は別に社会問題にはなっていない。
名前を理由に目をつけていじめる人物と名付けで失敗した親。どう考えたって親よりいじめる人物が非難されるべきだろう。

そういったことを意識できずにDQNネームを笑いものにするような人物に、DQNネームをつけた両親を批判する資格はない。そういう人物こそ本物のDQNであると言えよう。
大勢の前でその話をするとき、周りにDQNネームの人がいないと言えるだろうか?
DQNネームをネタにするのは、アニメや漫画の世界だけにしておくべきであろう。

先述の医療現場の取り違えリスクの指摘についても、「医療現場の苦境を訴えた主張」として評価する声は大きくニュースにも取り上げられたが、
反面「DQNネーム抜きでも外国人や難読名字、読みのパターン複数の場合もある」「これに対応できない医療現場のシステム不十分こそが問題」という批判意見も上がった。
役所からも、親の真剣に考えた命名に外部から口を出すべきではないとして苦言を呈されている。
なお、当該医師もその後通話表導入などの工夫を行ってリスク軽減に努めたことを記しておく。


ちなみに。
読むのこそ大変なDQNネームだが、名簿入力というもっとも名前と深く関わる仕事の場合はDQNネームの方が仕事が楽になりミスを防げるというメリットがある。
こういう仕事は大量の手書きの名前をいちいち読みながらキーボードをたたいて変換キーを押してそれをチェックして……ということをしなければならないのだが、
この時たとえば、2000年以降に流行し始めた「キラキラネームにならない程度に漢字を少し変えて*18個性をアピール」みたいな名前だと変換にものすごく時間がかかってしまう上にミスが増える。
変換ソフトに登録されているかどうかも分からないので、数秒かけてチェックして「ないじゃん!」と嘆きながら打ち直しになるのだ。
しかし「眼蛇夢」のような名前の場合は「がんきゅう」「へび」「ゆめ」と打ってチェックして終わりなので絶対にミスも起こさない、とむしろめちゃくちゃ楽なのである。
場所が変われば評価も変わる。ただこちらはこちらで暴走しまくってる名字に苦しめられるのだが……。




「将来の夢」

大きくなったら総理大臣になります。
そして、子どもに変な名前をつけちゃいけないっていう法律を作ります。
変な名前だと子どもはイヤです。
大人は、子どもがイヤなことをしたらいけないと思います。
子どもに変な名前をつけた大人は罰金にします。
それから、変な名前の人は自分で変えてもいいっていう法律を作ります。

○年○組 
   レンジシ
○○恋獅子


子供の将来をよく考えてから追記・修正をお願いします。

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最終更新:2025年01月28日 04:39

*1 ちなみに彼の通う高校は超最強(グレイテスト)学園である。

*2 一応ジョージやマリアやアンナなど、比較的まともなのもある。

*3 作中でも「月…?つき君かな…変わった名前…」と初対面の人物が正しい読みを把握できなかったシーンがある。

*4 豚切りであるという注釈もあるが。

*5 これはかつてはギャグとして扱われていたが、中には「男(女)が欲しかった」という理由でつけて教育するのが問題になることもある。DQNネームというより、最近流行のジェンダーとかポリコレの方にも関わってくるのでなかなか危ない。

*6 高田清美という現実的な名前のキャラも居るが、これは元々1シーンだけのモブキャラの予定だったため。メインキャラやストーリーの都合上大量に登場する犯罪者の名前は「金欲銀造」といった非現実的な名前になっている。

*7 他にも、小学校の授業で「自分の名づけの由来を調べてくる」というものがあり、正直に伝えたところ運悪く発表の日が授業参観。実の娘が「世界一かわいくなるように『ゆかり』と名前を付けられました!」と発言し、由来を全部理解した他の保護者が必死で笑いをこらえていた…なんてコピペもある。このケースは普通に女の子の名前として不自然では無く、声優の田村ゆかりを知らなければそもそも意味が理解できないため、相当マシな部類であろうが……

*8 日本の神戸牛に感動した父親に名付けられたコービー・ブライアント(元NBA選手)のように、自国の発音にしてしまえばそう感じられない、ということは有り得るだろうが。

*9 どちらも商標登録であり、商標権違反として裁判沙汰にある可能性がある。

*10 上述の悪魔くんのケースでも、「亜区馬」や「阿久魔」に字を変えても「読み:あくま」は不可であると役所は不受理にしたが、裁判では受理するように判決が出てたりする。そもそも、悪も魔も名前には使えるので倫理的にはともかく法的には何らおかしいものでもない。ただし役所は上告したが親が「阿久」で届け出て受理されて終わったので、「漢字:悪魔」や「読み:あくま」に最終的な決着は付いていない。余談だが、この父親は後に覚せい剤所持や窃盗により逮捕されている。

*11 これはアイスランドの命名法が、現在も「○○(父親)の息子・娘」という風になっていることも由来している。たとえば2021年のアイスランドの首相「カトリーン・ヤコブスドッティル」は、ヤコブスの娘カトリーンという意味で、本人はカトリーンとしか呼ばれない。この時にわけの分からない名前にすると呼ぶときにめちゃくちゃ不便な上、それが男性だったら子供にまで被害が及ぶのである。

*12 前者は平安時代の貴族である源融、後者は元Jリーガーの藤本主税や将棋プロ棋士の阿久津主税など。

*13 「仕事の鬼」という言葉を思い出してみてほしい。

*14 ちなみに藤川氏は、父親の草野球でのノーヒットノーラン達成を記念して名付けられたようだ。

*15 これは奇妙な色のランドセルを背負っていると、誘拐犯などに非常に目をつけられやすくなってしまうというかつての世相もあったようだ。

*16 「鼎」そのものは三脚の器で権力の象徴とされることもあり、それ自体は別段悪い意味はない。それに、どんな理由があろうと殺人は許されない行為である。

*17 アイドルマスターの「佐藤心」と同名の作家がいる話が有名だが、ここでまずいのが当時2~3歳だった佐藤心さんである。まったく関係ないのに親がオタクだと思われてしまうことにつながるのだ。

*18 Google IMEで名前を変換すると出てくるような、ちょっと「ずれた」字を使った名前である。