バランワンダーワールド

Etad noitertsiger (登録日):2023/06/23 Fri 22:46:30
Etad etadpu(更新日):2025/04/15 Tue 15:15:37
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どんな時間も、無駄ではなかった



バランワンダーワールド』(BALAN WONDERWORLD)とは、スクウェア・エニックスの新規IPによる「ミュージカル」をテーマとした2021年3月26日発売の3Dアクションゲーム。
同社が新たに立ち上げたアクションゲームブランド「BALAN COMPANY(バランカンパニー)」の初タイトルでもある。

ディレクターとキャラクターデザインにそれぞれ『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』シリーズで知られるフェラーリのおじさん中裕司、大島直人を起用。
元セガのスタッフが多数関わっている、大島が代表を務める開発会社アーゼストが開発。



Weivrevo(概要)

心象世界「ワンダーワールド」を冒険して、ネガティブな感情に偏りつつある世界のバランスを取り戻すために、闇に囚われた人々が変貌した最深部に潜むボスを倒してボスと化した人々を救う…というのが大まかな流れ。
ステージ中にある世界の住人の力を宿した「衣装」を取ると、それに応じたパワーアップができるマリオみたいなシステムもあり、その数なんと80種類以上。
さすがスクエニゲーとあって、世界観やキャラクターデザインは秀逸で、BGMやグラフィックもとても豪華。



Yrots(ストーリー)

物語の舞台は、人々の心の中の幸せな記憶や想い(ポジティブ)と、
満たされない悩みや不安(ネガティブ)とが入り混じった、
不思議な心象世界「ワンダーワールド」。

謎のマエストロ、バランによってワンダーワールドへと導かれた
少年レオと少女エマは、この世界で「大切なモノ」を探す旅に出ます。

失われた「心のバランス」を取り戻し、現実世界へと帰るために……。
(公式サイト「STORY」より引用)

Retcarahc(登場人物)

  • 男の子主人公(レオ)
CV:土屋神葉
頭に身につけた青いヘッドバンドがトレードマークの少年。
ワンダーワールド内での名前は『ストリートのビート』。
ダンサーになる事を志しているが、数年前に親友と喧嘩別れしてしまってからは他人と群れる事を嫌うようになり、周りから声をかけられても無視するようになってしまった。
小鳥のティムに導かれ、『バラン劇場』に迷い込む。

  • 女の子主人公(エマ)
CV:Lynn
スポーティな見た目で、耳の特徴的な形の耳飾りがトレードマーク。
ワンダーワールド内での名前は『戦う少女』。
屋敷のメイド達など周囲の人々に妬まれ、陰で悪口を言われていると思い込んでしまい、耐えられなくなって屋敷を飛び出してしまう。
ティムに(ry

  • バラン
CV:鈴村健一
レオとエマをワンダーワールドへと導く、顔が隠れるほど目深に被った真っ白なシルクハットがトレードマークのシルクハットの化物マエストロ。
『バラン劇場』の支配人で、ネガティブな感情に傾きつつあるワンダーワールドの秩序を回復すべく、レオ/エマに試練を与える。
ちなみに名前の由来は「バランス」から。なおエンディングでは素顔が見れる。

  • ティム
CV:木野日菜
ヒヨコのような小鳥で幸せな感情の化身のような存在。個体差が激しく、体色は様々で中にはうさ耳や猫耳がついた個体も存在。
ポジティブ感情が減るとティムの数も減ってしまう。

  • ネガティ
人間の心の弱さなどが具現化した敵キャラ。雑魚ネガティは模様の入った黒い体と仮面のような白い顔をしている。

ボスクラスになると主人公よりもはるかに大きい異形の怪物と化す。詳細は後述。

  • ランス
CV:櫻井孝宏
ネガティの親玉。なかなかかっこいい。
バランそっくりな見た目だが背中に黒い触手を生やしており、ワンダーワールドの住人をネガティ化させている。
名前の由来はバランと同じ。


Negati Ssob(ボスネガティ/世界のもととなった住人達)

各世界の奥底に潜む、心象世界のもととなった住人の心の慣れの果ての姿。
元々の人物の特徴が色濃く片影された見た目をしており、様々な攻略パターンがあり、それに応じてスタチュー(後述)が手に入ることも。

  • ハウリングウルフ(第1章)
オオカミ型ネガティ。
高速回転して竜巻を起こしたり、ヒップドロップや杭に上ってからの火炎弾などで攻撃してくる。


  • ジェリードルフィン(第2章)
イルカとクラゲを合わせたような見た目。
水流や電流を生かした攻撃を行う。


  • ブリリアントワーム(第3章)
CV:佐藤美由希
芋虫に様々な昆虫のパーツが合わさった姿のネガティで鎌やクモの糸による攻撃をしてくる。すっげえキモいデザインだな!


  • ライオットプレーン(第4章)
飛行機型のネガティ。プロペラ飛ばしやキューブによる攻撃を多用。なお鼻部分が弱点。


  • クレイジーバード(第5章)
巨大な鳥のネガティ。卵産み、巣箱たたきつけといったモチーフにぴったりな攻撃をしてくる。


  • ファットキャット(第6章)
化け猫。腕のロケットパンチ文字通りの腹時計で時間停止攻撃を使用する。


  • キングフォートレス(第7章)
小型の王様型の個体と巨大な要塞型の個体からなる。
要塞型個体からチェス駒や巨大なナックル、ミサイルを放ってくるが、王様の個体は戦闘力がなくあたりを逃げ回るのみ。王様の個体が弱点になっている。


  • テラーリーパー(第8章)
死神を彷彿とさせる姿をしたネガティ。
氷の世界が舞台なだけに氷攻撃を得意としており、他には大量の棘のついた棒を回転させて攻撃してきたりする。


  • ナイトメアプリンセス(第9章)
舞台装置の魔女っぽい姿のネガティ。
着地時の衝撃波や、大量の大砲で攻撃してくる。


  • ペインクラーケン(第10章)

タコと絵筆を合わせた姿のネガティ。
ペンキや額縁や自らの分身を飛ばして攻撃してくる。また、ステージが回転するので画面酔いに注意。


  • ドラゴンハイドランド(第11章)

消火栓とドラゴンを合わせたような姿。
しかしその攻撃手段は炎や溶岩という矛盾した奴。また、溶岩は水をかけると固めることができる。


  • インビジブルフーパー(第12章)

掃除機とドラゴンを合わせた姿のネガティ。
爆弾や電撃系の攻撃だけでなく、吸い込んだ足場をガラクタの塊に変え吐き出してくる。



…これだけを見れば結構な良作と思うかもしれない。
しかし、この作品は「ファミ通」などでの評価はそれなりに高いにもかかわらず2021年のクソゲーオブザイヤー据え置き部門大賞という不名誉に輝いている。

プレイヤー間では「スーパーマリオ オデッセイをクソゲーにした感じ」などと評価される他、翌年発売の星のカービィ ディスカバリー、果ては1996年発売スーパーマリオ64などがよく比較対象に上がる。*4

前述したようにこのゲームのテーマはとても秀逸で、キャラデザやBGMも素晴らしい出来である。
四八(仮)」のように進行不能バグがあるわけでもなく、「トランスフォーマー コンボイの謎」のように極端におかしい難易度でもない。
さらに「黄金の絆」のように完成度が低いわけでもないにもかかわらず、クソゲーといわれる所以は…


Melborp(問題点)


  • ストーリー・システム共に説明不足
本作の最大のウリであるはずのキャラクターの詳細、なぜ旅をするのか、ランスなど敵の目的といったプレイヤーが知りたいであろう情報がゲーム内でほとんど説明されない。
というか台詞らしい台詞があるのはバランのみ、その台詞も両手で数えられるかどうかという数。
バランからティムをもらった後「心のかけらを探せ」と言われるOPムービーが終わるとエントランスにあたるティムズエリアに放り出されるのがこのゲームの導入部分。

上で記した「ホセ」「フィオナ」といった登場人物の名前は作中でほとんど表示されず、公式HPを見るなどしないと分からない。
このゲームの名誉のためにも説明するが、このゲームを基にした小説が発売されている。
こちらはキャラクターの心理描写などが詳細になされておりとても分かりやすいのでおすすめ。
どうして肝心のゲーム内でそういった部分を描かなかったのかという話であるが。

また、システム面においても、衣装部屋への入り方や、後ろをついてくるティムは何の役に立つのか、道中にマリオのコイン的に配置されているドロップを集めたらどうなるか、後述のAIシステムの説明も一切なされない。

  • 余計なお世話のAIシステム
マリオやカービィのような感覚でザコを倒しながら進んでいると、ザコがどんどん硬くなっていることに気づくかもしれない。
というのも、プレイヤーの腕に相応な難易度の敵をスポーンさせるAIが存在し、敵を倒せば倒すほど強い敵が出現してしまうことになる。
例えると、クリボーワドルディを倒しすぎると通常エリアに中ボスが出てくるような感じである。
なお一回でも攻撃を食らうとAIはリセットされるのだが。
一応フォローしておくとこのシステムそのものに問題があるわけではない。
プレイヤーの実力に合わせた難易度調整が自動で行われるゲームというのは昔から存在しており、有名なのは
  • ロマンシング サ・ガ』のラスボスであるサルーインは特定のターンまで無敵化しており、そこまでに与えたダメージで強さが変動する
  • スーパーロボット大戦シリーズ』はマップ毎に設定された「SRポイント」と呼ばれる熟練度を獲得する条件を満たすことでマップが高難易度化
  • 朧村正』でのボス戦は経過時間でゲージの削れ具合が変化し、アクションが苦手な人のように一定時間以上かかる場合はごっそりゲージを削れるが、上手い人は長時間戦えるようにゲージの削りが少なくなる
という感じで調整が入る良作、佳作は結構存在している。
あくまでも本作の仕様と噛み合ってないのが問題だったというのは留意されたし。

  • 衣装の使い勝手が悪い(操作が単純すぎた)
「80種類もの衣装があり、様々なアクションができる」のは事実である。
しかし、「1衣装、1アクション」のせいでかなりテンポの悪い出来になってしまっている。
「え、ファイアマリオもファイアボールだけだし、プロペラマリオも大ジャンプだけだろ?」と思ったそこのアナタ。


ご丁寧にも「ジャンプ」もアクションに含まれています。



要は、パワーアップする(衣装を交換する)と衣装によってはジャンプ能力を失う可能性があるというもの。
このゲーム、SwitchではABXY,ZL,ZRどのボタンもすべてが同じアクションに固定されてしまっており、素の状態ではどのボタンを押してもジャンプになってしまいダッシュも、しゃがむことも、壁キックも、スライディングもできない。
衣装交換すると衣装次第ではこれらのボタンに衣装の能力が割り当てられるのでジャンプができない…という事態が発生してしまう。
ネット上では「ファイアフラワーを取るとジャンプできなくなるマリオ」という表現が広く知れ渡っている。*5

ジャンプが出来なくなる衣装もあるのに、ステージの構造はほぼジャンプ前提のものだし、ザコ敵との戦闘も、前述のAIシステムのことから敵はスルーした方が楽なことが多いし、律儀に戦闘しようとしてもジャンプしての踏み付けで倒せる敵も多い。

ほかにもジャンプはできるものの勝手に衣装の能力が暴発してしまうものもある。
例を出すならば「ボックスフォックス」という衣装は一定間隔で鉄の箱に変身でき、変身中は無敵になれるストーンカービィじみた能力だが、能力が勝手に発動するので発動タイミングが悪いと落下死してしまう可能性がある。

また、「衣装を3個までしかストックできない」という制約があるため例えばインベントリで前から順にA、B、Cの衣装を持っている際に新たにDの衣装を獲得した場合に入手したDの衣装が一番前に送られ一番後ろのCは衣裳部屋送りになってしまう仕様がある。この仕様はインベントリに含まれているものと同じものをとった場合でも適用され、場合によっては同じ衣装が2個存在することになってしまう。衣裳部屋はセーブポイントなどにしかないうえそこでしか衣装ストックを交換できない。

さらに衣装は一度入手すれば永続的に解放されるものではなくストック制で、挙句の果てに残機的な扱いなので、ダメージを受けたりステージから落下するとその時に着用していた衣装がなくなってしまい、ステージをやり直すなどしないと再入手不可なのでノーミス攻略が求められる。
それでいて、他のステージから衣装を持ち込まないと入手できないスタチューもあるので、その道中で失おうものならストレスがマッハである。


例えばカービィだって一度入手したコピーをステージ中でまたいつでも使えるようになるわけではないが、
カービィは1つの能力にこだわらなければそこら中にいる敵を吸い込めばとりあえず何らかの能力は得られるだろうし、近年では謎解き部分では付近に必要なコピー持ちの敵が配置されていることも多いし、ゲームを進めれば任意のコピーをすぐ入手できるスポットが解放される作品もある。

カービィで言ったら『銀河にねがいを』のコピーのもとデラックスがダメージを受けるとロストし、また該当のステージまで取りに戻らなければいけないということになるか。

もっと言うと、「ギアプリンス」「アマデウス」のように「特定ギミックでしか使い道がない衣装」も存在するので、これで衣装インベントリの枠を一つ食ってしまう。


また、衣装チェンジ時にはその場で立ち止まりクルクルと回る演出が入るのもテンポが悪くなり、しかもその間は無敵なので戦闘面で悪用できてしまう。
このゲームが取り戻すべきなのは心のバランスではなく、戦闘やシステムのバランスだったのではないだろうか。

  • バランスタチュー
金のバラン像で、マリオ64のスターやカービィWiiのエナジースフィアのようなアイテム。
スタチューによっては入手困難な位置にあるほか、ボスを特定の方法で倒したりバランチャレンジ(後述)でしか得られないものも。
そのためスタチュー回収用の衣装を用意しないといけないので面倒。

  • バランチャレンジ
おそらく最大の問題点。
内容としては、「ムービー中に画面端から出現する残像がバラン本体に重なる瞬間にタイミングよくボタンを押し、迫り来る障害物を破壊していく」というQTEで一部のバランスタチュー入手に必要。タイミングには「Excellent」「Great」「Good」「Miss」の4段階の評価がある。

演出が無駄に長い、その割にムービーの使いまわしが目立つなどといった問題点があるのだが、何よりも、

判定が妙に厳しいくせに1回でもGreat以下を出してしまうと、スタチューを取り逃がしてしまう点である。

もしかしてバランもプニキみたいな高潔な勝負師精神を持っているのか…?
それでいて、QTEのアクションには竜巻旋風脚や画面奥からの高速ヒップドロップなどExcellent取らせる気があるか疑わしいものも。


さらに、一回受注したバランチャレンジは、そのエリアのボスを倒さないと復活しないというなかなかハードな仕様。
オートセーブなので少しでもテンポよく再チャレンジしようと思ったら、Great以下が出た瞬間リセットという手段を取らざるを得ない。



Noissergid(余談)

  • 作中の言語は「バラニーズ」という架空言語で、英語のスペルを逆にしたものである。
    OPムービー冒頭の「ようこそ!(welcome→emoclew(エモクリュー))」
    バランチャレンジリザルトの「テネレスケ!(excellent→tnellecxe)」「ティエルグ!(great→taerg)」あたりが分かりやすいか
    この項目でも一部採用している。

  • 前述した通り2021年クソゲーオブザイヤー据置部門大賞。スクエニ作品では初の屈辱となってしまった。*6
    また2022年KOTY大賞は該当なし、さらに2023年以降の活動が停止してしまったので、現状最後のKOTY大賞作である。

  • 開発したアーゼストは、元々大島らが設立したアートゥーンという会社が前身の開発会社。
    アートゥーン設立当初はソニックの大島が在籍ということで注目されていたのだが、
    鳴り物入りのGBAロンチソフト「ピノビィーの大冒険」から、KOF EX NEO BLOOD、ヨッシーの万有引力にヨッシーアイランドDS、ヨッシーNewアイランドと製作したゲームはあまり評判の良くないものが多い*7
    そしてこのバランが3Dアクション初挑戦だったわけで……




Elcitra siht tcerroc ro dda esaelp.(追記・修正お願いします。)

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最終更新:2025年04月15日 15:15

*1 一見すると作中で一番しょうもない動機に見えるが、ハオユーが「人力飛行機による初めての海峡横断達成」という夢を持っていることが小説版で説明されている。

*2 車に轢かれてしまったのか否かはぼかされている。

*3 キャスがバラン劇場に入ったのは、アッティリオがそこに行く10年前だった。つまりバラン劇場は時間を超越した場所なのだが、EDでキャスは子供の姿のままというミスをやらかしている

*4 2020年代でも未だにRTAが大盛況なマリオ64がバケモノすぎるだけだって?

*5 厳密には、ファイアマリオは不可逆なので、「スーパーマリオとジャンプができないファイアマリオを切り替えられるマリオ」といった方が正確か。

*6 スクエニ発売のノミネート作自体は何作かあるが、いずれもヨンパチショック以前のゲハ臭い「気に入らないゲームをとりあえずクソゲーとして挙げておけ」時代のノミネート

*7 「Hey! ピクミン」など、悪くない出来の2Dアクションゲームもあるにはある