概要
SNKの2D対戦型格闘ゲーム。 略称は『龍虎』『AOF』など。
海外版のタイトルは 『ART OF FIGHTING』。 『初代』『2』『外伝』の3作品がリリースされている。
『外伝』を最後にシリーズの展開は停止しているが、設定は『
餓狼伝説』などに引き継がれている。
続編製作の予定もあったようだが、旧SNKの倒産により実現していない。
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真偽不明の情報だが |
2ちゃんねるのVIPに「当時のプロデューサー」と名乗る人物が降臨。
それによると「2で完結する予定だった」との事。
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1992年9月にSNKが発売した、『餓狼伝説』に続く2番目の対戦格闘ゲームシリーズ。
『餓狼伝説』『
サムライスピリッツ』と共に90年代前半のSNKの躍進を支えた。
過剰なまでに濃く男臭い(美女も結構いるが)雰囲気と形容し難い独特の中毒性が特徴で、
古き良きゲーセンを愛するオールドゲーマー達から絶大な支持を得ている。
龍虎の拳を語る上で外せないのは、このゲームが今の対戦格闘では常識となった、
などなど、現在の殆どの対戦格闘ゲームで採用されている多数の重要システムを生み出したという点である。
また演出面においても
- 凝ったストーリー展開
- 聴き応えのあるBGM
- よく喋るキャラ
- ド派手な必殺技
- ステージ間演出
- 画面の拡大縮小
- 「龍虎音」と呼ばれる独特の爽快感溢れるSE
など、後の格闘ゲームに与えた影響は計り知れない。
『
ストリートファイターII』が現在の格闘ゲームの形を作った祖とすれば、『龍虎』はシステム・演出を劇的に進化させた影の功労者と言える。
また1993年には地上波でアニメ『バトルスピリッツ 龍虎の拳』も放映された。
ただし内容はかなりアレンジされており、原作とかけ離れた物となっている。
色んな意味でアクが強い作品なため忘れられがちだが、本作にも『ストリートファイター』シリーズのパロディが各所に見られる。
リョウの見た目や名前、技が
リュウに酷似している事、
ライバルキャラの
ロバートが
ケンと同じような設定である事(ただし、金持ち設定はロバートが先行で、ケンは『龍虎』発売以降に追加された後付け設定)、
対戦後のボコボコになった顔など。
『
THE KING OF FIGHTERS』シリーズでは
ユリが色々やらかしている。
これらは『ストI』と同じプロデューサーが製作を担当した事の影響が大きいと言われる。
後にカプコンもこれに対する意趣返しとして、『龍虎』のエッセンスをふんだんに取り入れた
ダンを投入。
『
CAPCOM VS. SNK』『
SNK VS. CAPCOM』でも両社のパロディが多数用意されるなど、
メーカーの垣根を越えた場外乱闘もファンを楽しませた。
龍虎の拳
リョウ・サカザキ
さらわれた妹を捜すため、危険な街
サウス・タウンに乗りこむ…
ロバート・ガルシア
リョウの親友、そしてライバル
リョウと供にサウス・タウンへ
サウス・タウンで彼らを待ち受ける者は…
1992年9月にMVS(業務用NEOGEO)で稼動。100メガショック第1弾。
ROM容量102Mbit(MbitはMBの8分の1の単位で、8Mbit=1MBとなる)。
数メガ~精々10数メガが当たり前だった当時に100メガ超えというぶっ飛んだ容量で殴り込みをかけ、
ぶっ飛んだゲーム内容で格ゲーマー達の度肝を抜いた。
特にCMや宣伝にかけては当時からSNKは凝った演出を施しており、新プロジェクトとして「THE 100MEGA SHOCK!」という売り文句と、
第1弾・龍虎の拳というこの二つのキーワードのみで発表した。
発売日が近付くにつれ、パンフレットに2人の主人公:リョウ・サカザキとロバート・ガルシアのイラスト、そして舞台は『餓狼伝説』と同じサウスタウン、
というこれまた限定したキーワードのみを公表、それ以外は一切伏せたまま発売日直前まで通した。
そして発売日直前、ゲーム雑誌などで一気に情報公開され、それまでの対戦格闘ゲームでは考えられなかった新機能、
新システムを余す所無く公表し、待っていたプレイヤー達の高揚感を一気に煽った。
画面からはみ出さんばかりの異常なキャラの大きさ、尋常でない技の重さ、一度聞いたら忘れない独特の効果音。
迫力という点では現在もこの初代龍虎に勝る格闘ゲームは無いと言っても過言ではない。
システムや演出も『ストII』のわずか1年半後に登場したとは思えないほど先進的なアイデアが詰め込まれており、
巷に出回り始めた二番煎じのゲームとは確実に一線を画す代物だった。
主人公は
リョウ・サカザキ。 CPU戦はストーリーモードになっており、リョウと
ロバート以外は使えず、対戦順も固定である。
リョウの名ゼリフ
「武器をもった奴が相手なら 「覇王翔吼拳」を使わざるを得ない」はニコニコ動画でもお馴染み。
初代『餓狼』同様どちらかというと
CPU戦に比重を置いているため、正拳一発で吹っ飛んで気絶したり、
本当に必殺な必殺技、超必殺技に至っては即死寸前の威力など、対戦格闘ゲームとしてはいささか無茶な作り。
操作面も
コマンド入力受付が非常に長いため(約1秒近くは受け付ける)、変な
暴発や誤認識があるなど癖が強く、
慣れなければ
波動コマンドも出しづらい。
かといって、ゲームバランスは極端かというとそうでもなく、必殺技自体も挑発をする事で意図的に強さを調節出来たり、
技の出し方の工夫で牽制や攻め込みといった読み合いも出来る、また飛び道具の相殺がタイミングさえ合わせれば簡単に出来るため、
飛び道具持ち有利という状況にもなりにくい。
カドは強いが対戦ツールとしてもそれなりな楽しみ方が出来る。
そして何より「リアルな殴り合い」という意味では本作の再現率は極めて高いと
言わざるを得ない。
このカドがありすぎる独特のゲーム性がコアな人気を獲得し、現在も根強いファンが非常に多い。
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ストーリー
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アメリカの田舎町で暮らす兄妹。
兄の名はリョウ・サカザキ、極限流空手伝承者。彼は「無敵の龍」の異名を持つストリートファイター。
幼い頃から極限流空手師範の父タクマ・サカザキと厳しい稽古の日々を過ごすが、
10歳の時に事故で母を失い、続いて父も行方不明となってしまう。
妹ユリとの2人きりの生活の中で、リョウは妹に貧しい思いをさせたくない一心で、
ストリートファイトの世界に身を投じたのだった。
一方、「最強の虎」と呼ばれる格闘家ロバート・ガルシアは、裕福な実業家の家庭に生まれ育ち、
父アルバートから帝王学を学ばされた過去を持つ。
しかし、彼は後継ぎとしての将来に反発し、自らの力で生きようと決心。
家を出てタクマ・サカザキの門下生となり、リョウと共に厳しい稽古に励んだ。
そして、数カ月後ロバートは単身修行の旅に……。
数年後リョウとロバートが再会したのは、皮肉にもユリ誘拐事件の現場だった。
彼女は何者かの手によって、欲望渦巻く危険な街「サウスタウン」へと連れ去られてしまったのだ。
一体誰が?何のために? ──果たして、リョウとロバートはユリを無事に救いだせるのか!?
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キャラクター
- 2P対戦モードで使用可能なキャラクター(ストーリーではCPU専用)
※Mr.BIGとMr.カラテはCPU戦中にそれぞれのステージで乱入対戦した時のみ使用可能
システム
- 操作方式
- レバー+4ボタン(A:パンチ、B:キック、C:特殊・投げ、D:挑発)
- ダッシュ
- レバー前を素早く2回入力で前方ダッシュ、レバー後ろを素早く2回入力で後方ダッシュ。
ランではなくステップ型。
- 気力システム
- 体力ゲージの下部にあるゲージ。 ビルトアッパー以外の必殺技に影響する。
このゲージの残量によって技の威力や形態が変わり、ゲージが少ないときは威力が低下、
ヒット数が減少、飛び道具なら出した瞬間消滅、使用不可といった具合に弱体化する。
現在の一般的なゲージとは違いMAXからスタート。
必殺技を使ったり挑発されると減少し、時間経過や「気力回復」で回復する。- 挑発
- 気力回復
- 超必殺技
- 「覇王翔吼拳」が史上初の超必殺技として有名。 気力ゲージMAX時に使用可。
コマンドが複雑で非常に出が遅く打ち消しも可能だが、それに見合った破壊力を持つ。
CPU戦ではボーナスステージ「超必殺技伝授」を成功させるまでは使用出来ない。- 隠し超必殺技
- 龍虎乱舞が史上初の乱舞技として有名。 体力1/4かつ気力ゲージMAX時のみ使用可能。
当初は存在自体が明かされておらず、コマンドを見付けて応募すると
先着順で特製トランプがもらえるというキャンペーンが行われた。
- 画面のズームイン・ズームアウト
- 相手との間合に応じてキャラクターの大きさが二段階に変化。
- 飛び道具打ち消し
- タイミング良く通常技や必殺技を出す事で、超必殺技を含む全ての飛び道具を打ち消す事が出来る。
- 特殊ボタン (C)
- 状況に応じて以下のように役割が変化する。
- 強攻撃
- 直前にAを押していれば強パンチが、Bを押していれば強キックが出る。
- 同時押し攻撃 (一部キャラは不可)
- ACorBC同時押し (Cを押しながらAorBを押すとが出やすい) で特殊攻撃が出る。
Aはボディブロー(キャラによっては中段)、Bはローキック(下段)。
- 投げ技 (一部キャラ限定)
- 空中後ろ蹴り (一部キャラは不可)
- ジャンプ中に押すと背後に攻撃する。 めくり専用技。
- 三角蹴りor三角跳び (一部キャラは不可)
- 後方ジャンプ中・画面端で押すと、ニュートラルかレバー下要素が入っていれば三角蹴り
それ以外では三角跳びが出る。
- 中段技(一部キャラ限定)
- 脱衣KO (キングのみ)
- 必殺技を地上で当ててKOすると発生。 単なるサービスではなく、ストーリー演出の一環として採用された。
- その他
- ダメージによって試合中に顔グラフィックが変化。
- キャンセルという概念が無いため、連続技は存在しない。
- 飛び道具系必殺技のレバー入力後、ボタンを押すまでの微妙な長さで飛ぶ速さが変化。
この仕様の為にコマンド入力受付時間が長くなっている。
- ジャンプ中は何度でも攻撃が出せる。
ただし攻撃のモーションが大きいため実際に出せるのは2回が限界、キャラによっては1回のみ。
- ラウンド開始時は相手とほぼ密着状態からアナウンスと共に互いにバックジャンプして画面端まで開いて開始する。
『CVS』でのリョウとリュウの特殊イントロの元ネタでもある。
ただ、冒頭デモを飛ばさずに見ると、最初から間合いが開いている事と、「FIGHT」のアナウンスと同時に動けるため、
CPUがフライング気味に攻撃してくる場合もある。
- 基本プレイヤーとして使えるリョウとロバートは基本性能にそれぞれ特徴が付けられている。
リョウは「やや必殺技の受付にクセがあり、技が出るまでに若干の隙があるが威力は大きい」、
ロバートは「必殺技の受付反応や技が出るまでは素早いが出した後の隙が若干あるのと威力がややリョウより劣る」
という区別がされている。
ストレス無く必殺技が出したい場合にはロバートがお薦めである。
- 余談としてリョウとロバートが全く同じタイミングで龍虎乱舞を出してぶつかり合うと、必ずリョウが勝つようになっている。
- 気合いが続く事と、技の出が早いという条件付きではあるが、一画面中に何発でも気弾が出せる。
ただしこの条件に当てはまるのはキングとMr.カラテのみ。
NEOGEO以外でのコンシューマ移植ではスーパーファミコン、PCエンジン、メガドライブがある。
とはいえ、当時はどの機種もNEOGEOの高スペックにはとても及ばない機種だったため、
画面の拡大縮小の簡素化、キャラクターモーションや音声の削減等での苦肉の策が多く、
それを補うための要素を付け加えたアレンジもされている。
スーパーファミコンでは機能の簡素化(街中を移動する場面が無いなど)、モーションや音声の削減の代わりに、
原作ではリョウとロバートのみに付いていた龍虎乱舞に相当する隠し超必殺技が対戦に限り、
全てのキャラに付いており、使用する事が出来る。
藤堂竜白の「盟王武雷陣」もこのスーパーファミコン版での隠し超必殺技である。
あと、オリジナル版だと妙な所で終わっていたEDに続きが存在し、そこで物語の真相(ただし『龍虎2』以後とはパラレル関係)が語られる。
またBGMアレンジも好評で、リー・パイロンや大胆アレンジとなったMr.BIGが有名である。
余談として、SFC版龍虎の移植は、SFC版『餓狼伝説スペシャル』や『サムライスピリッツ』を手掛けた、
当時NEOGEOのサードパーティであった「モノリス」という会社である。
なお、現在任天堂の子会社で
『ゼノ』シリーズを制作したモノリスソフトとは無関係の別会社である。
PCエンジンでは当時のコンシューマ機としては最大の18Mbit(2.3MB)のRAMを搭載した、
「ARCADECD-ROM²」専用ソフト第二弾として登場した。
全面的なSNKの協力監修もあり、当時としては一番NEOGEOに近い移植度を誇る。
しかし、CD-ROMドライブが等倍速という事で長い読み込み時間がある事、効果音が弱いという弱点もある。
また、アーケードカード未使用の場合表示される警告画面は、EDのやり取りを再現していたり、
それを数回リセットすると、なんと
ボーナスステージを模したミニゲーム
「大根切り」が遊べるという要素が笑いを誘う。
PCエンジンの警告画面は簡易ボイスドラマや図鑑機能がついていたりお遊びに事欠かないのは有名だが、遊べる要素があるというのは中々珍しい。
ユリちゃんの専用ボイスも相まって妙に芸が細かい。 起動前にしばらく遊ばざるを得ない
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メガドライブ版は元々海外向けに作られた物であり、ゲーム内容もOPからして全く別物なアレンジとなっている。
画面の拡大縮小排除、
キャンセルから
コンボが繋がるという、『龍虎』だが普通の対戦格闘の要素が入ったアレンジになっている。
龍虎の拳2
1994年2月にMVSで稼動。ROM容量178Mbit。
連続技の導入、全体的な攻撃力の低下など、対戦ツールとしての完成度が上がった。
全キャラでストーリーモードが出来るようになり、まさかの
ユリ参戦や
藤堂だけがリストラされた事が話題になった。
また、隠しボスとして若き日の
ギース・ハワードが登場する事が話題に。
これは『餓狼SP』に登場した
リョウのようなただのゲスト出演ではなく、両作品のストーリーを繋げるものとなっている。
しかし、ただでさえ直感的な強弱攻撃の使い分けが難しいにもかかわらず先行入力が異常に効きすぎるという仕様で、とてもシビアなボタン入力が求められ、
前作より対戦ツールを意識した調整をした結果、通常技や必殺技の威力の減少、投げに対しても受け身が実装され、
気力を溜める重要性といった逆転要素も乏しくなり、更にそのゲーム性に追い打ちをかけるかのように、
CPUの難易度が異常に高すぎた事などが原因でゲームとしての敷居は非常に高く、
前作のカドが無くなった事を「『龍虎』らしさが失われてしまった」と残念がる声が多い。
一方で演出の進化や、CPU戦の
超反応を掻い潜ったりスコアを競うという点では前作以上の楽しみを見出す事も出来るが、
超反応攻略についてはシビアかつ単調なハメに終始するというプレイになりがちで、賛否の分かれる一作となっている。
『2』のキャラクター
CPU戦では選択したキャラクターで1~4戦目までは固定、5~11戦はランダム順、12戦目は必ずMr.BIGになる。
Mr.BIGを倒すまでの全ての勝利した試合でストレート勝ちだった場合は隠しボスである若き日のギースと対戦出来る。
※若ギースを使用出来るのはSFC版のみ
『2』のシステム
前作からの変更点のみ下記。
- 攻撃の強弱
- AorBを押し続ける時間よって攻撃の強弱が変化するようになった。
- 特殊ボタン(C)
- 直前に押したボタンの後に出る攻撃が弱攻撃に変更
- Cを押し続ける事でも気力回復が可能に
- 三角蹴りが削除され、レバーの入力に関係なく三角跳びが出る
- 空中後ろ蹴りの削除
- 受け身
- 殆どの投げ技は喰らった時、接地する瞬間にA、B、Cのどれかで受け身を取ってダメージを軽減出来る。
- 脱衣KO
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真・隠し技
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実は『龍虎2』には、デバッグネオジオでDIPスイッチをいじる事で出せるさらなる隠し技が存在していた事が判明している。
稼動からなんと15年後に発見された訳だが、実用価値は皆無(全てダメージ1ドット)なため開発途中のボツ技のようなもの…
なのだが、明らかにスタッフが狙って作ったとしか思えないようなのが混じっている。
特筆すべきは 「どないしたんや?」を連発しながら有り得ない姿勢で跳ねるロバート、
「ローリングアッパー」と言いながらちっちゃい自分の分身を飛ばすミッキー、
一見気合を溜めているだけだが、よく見ると なんか一瞬だけ色化けしたMr.BIGのようなものが出現し、この部分に攻撃判定があるテムジン、 前屈みの姿勢から 頭が光り出し、その光が前方に飛んでいくMr.BIGなどが見所。
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家庭用ではスーパーファミコン版が存在。
何とか『龍虎2』らしさを再現しようと操作感などを極力似せているが、
根本的なハード性能のため、やはり全体的にどことなくぎこちない移植となっている。
また、タイトルロゴで隠しコマンドを入力する事でギースの使用が可能。
ART OF FIGHTING 龍虎の拳外伝
1996年3月にMVSで稼動。ROM容量298Mbit。現時点でのシリーズ最終作。
海外版のタイトルは 『THE PATH OF THE WARRIOR -ART OF FIGHTING 3-』。
前回の大会からしばらくしてロバートは幼馴染みのフレア・ローレンスと偶然再会する。
フレアをサウスタウン近郊のグラスヒルバレーまで送る事になるが、彼女は何者かに狙われていた。
一方、海外修行から戻ったリョウは出迎えたユリと共に襲われる。
相手は極限流の使い手と一緒にいる女性を連れて来るように依頼されたという。
リョウとユリはロバートの危機を察し、彼を探すべく行動を開始する。
外伝という事で主人公は
ロバート。 大幅にキャラクターが入れ替えられ、前作からの続投はロバートと
リョウのみ。
当時2D格闘を凌ぐ勢いを見せていた3D格闘の要素が取り入れられ、
- モーションキャプチャーによるドットの描き起こし
- コンビネーション攻撃(ラッシュ)
- 空中コンボ
- 多数の中段技
- さばき
など意欲的な新システムが導入された。
しかしこれが完全に裏目に出てしまい、ラッシュと空中コンボの強い攻めに特化したシステムによって「さばき」は形骸化、
しゃがめば決まらない「投げ」も実質形骸化と、単調かつ大味な試合になりがちで、
何よりその浮かせた相手にラッシュをかける絵面、モーションキャプチャーの動きにはぎこちない部分もあるなど、
明らかに『龍虎』らしくないゲームが出来上がってしまい、シリーズのファンには到底受け入れ難いものとなってしまった。
早々にゲーセンから撤去され、ストーリーも中途半端なままにシリーズを打ち切りに追いやる事態に。
ただし洒落たBGMなど演出関係に定評はあり、特にNEOGEO-CD版のアレンジCDは一時高額取引されていた時期もあった。
また、ボタン強弱が削除されレバー入れ入力主体になり、CPUのアルゴリズムも改善し遊びやすい面もあり、
対戦においてもやり込んだ上級者同士ではマニアックな駆け引きが熱いという声もある。
だがそれを加味しても、ゲームとしての評価は高いものとは言えない。
決して遊べない出来という訳ではないのだが、新機軸や新システムに凝るあまり、
前2作までの『龍虎』ならではの味を完全に失ってしまい、ユーザーが離れてしまったのは致命的と言わざるを得ないだろう
(尤も、だからこその「外伝」というタイトルなのだろうが、このゲーム性では…)。
「3D対戦格闘ゲームのスタイルを2Dで再現」したかったのだろうが、「空間の奥行き」が無い2Dでは無理が大きく
(『
痛快GANGAN行進曲』や『
ナックルヘッズ』など、フィールドに奥行きを持つ2D対戦格闘ゲームはあるにはあったが、
3Dならではの広がりとスピード感を持たせる事は出来なかった)、
この翌年からSNKは
「2Dに向いた基板で無理矢理3Dを作る」という乱心に近い迷走を始める。
半ば黒歴史と化していた作品だが、現在は『
THE KING OF FIGHTERS』常連となった
香澄や、
某サイトの影響で一躍人気を得た
すごい漢のおかげで多少認知度は上がっている。
『
鉄拳』シリーズが好きなプレイヤーには、連携コンボや必殺技の組み込み概念で似た雰囲気や操作感覚がある等、
駆け引きのやり方が似ている面もあり、割と楽しめるかもしれない。
余談だが、この『龍虎外伝』の開発チームが次に手掛けた格闘ゲームが『
月華の剣士』である。
『外伝』のキャラクター
隠しキャラの二人はMVS本体カレンダー1996年4月26日以降から使用可能になり、キャラ選択画面で左右に隠れている。
1Pモードでも使用可能だがストーリーは無し。
また使用キャラクターではないが、ストーリー上でリョウに同行しているユリは頻繁に対戦イントロに登場し、戦う場面もある。
※使用キャラクターによっては、ワイラー戦が前倒しになり、ストーリー関連の最終戦がある
『外伝』のシステム
『2』からの変更点のみ下記。
- 通常技の強弱の概念廃止
- ぶっ飛ばし攻撃
- Cボタンの特殊ボタン関連の動作が一括削除され、ヒットした相手を吹き飛ばす攻撃に変更された。
- 喰らい判定
- 攻撃を喰らって宙に浮いた状態や、ダウン中でも喰らい判定が残っている。
これにより空中コンボやダウン追撃が可能に。
- 追い討ち攻撃
- ダウンしている相手の近くでレバー前方斜め下+AorB。
この操作で専用の追い討ち攻撃が出るが、それ以外の技でも追い討ちは可能。
- 中段攻撃
- レバー前方斜め下+AorB。 追い討ち攻撃の条件を満たさない場合に発動。
- 気合溜め
- 攻撃ボタン長押しの他、CD同時押しで攻撃や挑発を経由せずに直接ゲージを溜める事が出来るようになった。
- ラッシュ攻撃
- レバーとボタンを特定の組み合わせでタイミング良く入力すると連携攻撃が出せる。
要するにコンビネーション攻撃。 キャンセルの概念は無くなった。
- さばき動作
- 投げ間合いでレバー後ろ+C。 地上通常技のみ取る事が出来る全キャラ共通の当て身技。
ダメージはないが、ダウンを奪うため追い討ちが確定する。
- しゃがみ途中攻撃
- しゃがむ瞬間にAorB。 各キャラ専用の特殊技が出る。
- 起き上がり無敵キック
- 起き上がり時にタイミングよくB。 名前の通り起き上がりながら完全無敵の蹴りを出すリバーサル専用技。
- ヒートモード
- 体力が1/4以下になると身体が赤く点滅し、攻撃力が20%上昇する。
- 超必殺技
- 体力が1/4、気力ゲージ3/4以上で使用可能に変更。 隠し超必殺技はなくなった。
- アルティメットK.O.
- 相手の残り体力が1/8以下の時に超必殺技でとどめを刺すと、取得ラウンド数にかかわらず試合終了となる。
- 脱衣KO
- 今回はアルティメットK.O.時に破れる。 ワイラーだけ脱がない(と言うか脱ぐものが無い)。
- 勝利セリフ選択
- 対人戦で勝利した際、ボタンを押しっぱなしにする事で勝利デモのセリフが変化する。
A: 尊敬、B: 通常、C: 余裕、D: 挑発 となり、ボタンを押さない場合は「尊敬」になる。
- 誕生日パワーアップ
- 各キャラに設定された誕生日にそのキャラでプレイすると、常にヒートモードとなる。
ただし、このシステムはMVS版のみにしかなく、家庭用(AES版)は内蔵時計機能が無いため、同システムは削除されている。
実質、家庭用機での移植は長らくされていなかったが、
2006年になってようやく、PS2で『龍虎の拳~天・地・人~』として、上記2作と共に収録、移植された。
なお、AES版がベースだが、PS2に内蔵時計機能があるためか、誕生日パワーアップもしっかり搭載されている。
『龍虎』シリーズ3作がかなり完全に近い形で移植され、『外伝』がNEOGEO及びNEOGEO-CD以外でプレイ出来るのは同作が初となる。
ただし『1』と『2』のセーブデータリンクシステムは再現されず、『1』『外伝』のボスは使えるが『2』のギースは使えないまま。
MUGENにおける龍虎シリーズ
『龍虎』キャラはリョウやロバートを始め数多く作られており、ニコMUGEN動画でも頻繁に見かけるが、
実は
原作再現でチームを組む事が困難なゲームという側面を持つ。
動画に登場するキャラは大抵『KOF』シリーズ及び『
NBC』参戦時のものであり、『龍虎』シリーズ再現キャラは出番に恵まれない。
よく見かける
師範と
ターナー氏、
テムジンにしても、
この三者はいずれも「グラフィックが『龍虎』のもの」というだけで、気力システムは採用されていない
(Tin氏の不破刃には気力システムパッチも存在するが)。
そもそも『KOF』に出ていないために『龍虎』の絵しか存在しないキャラばかりで、
「『KOF』にも出ているけど、敢えて『龍虎』の絵・システムで製作」というキャラは中々見かけない。
ただ、現在は動作・システムを忠実に再現した
カーマンや
シンクレアが活躍を見せている。
『龍虎』キャラが扱いづらい理由としては以下が挙げられる。
まず、CNSファイル内のキャラサイズを調整していないせいで最大拡大時の大きさになっているものが多く、
他のゲームのキャラと比べて
スプライトのサイズが不釣合いという点がある
特に大柄なジャックやビッグの場合だと、
ニュートラルポーズの時点で画面上部に頭が付きそうなほどデカい。
『1』か『2』のスプライトならxscaleとyscaleを「0.75」ぐらいに、
『外伝』なら「0.8」ぐらいにするといいだろう(前述のカーマンとシンクレアは「0.9」なので
アークゲー並みに大きい)。
また、『龍虎』は
「一撃必殺」に重点を置いており、
コンボゲー勢に対して差し合いで重い一撃を当てていくスタイルが噛み合いにくい点も挙げられる。
そして最大のポイントは、「気力ゲージ」による必殺技の変化である。
龍虎では気力が減ると一部を除き必殺技の性能が落ちるため、常にベストな状態を維持すべく隙あらば気力を溜める試合展開になる。
しかし、他作品勢から見れば気力溜めは単なる「格好の的」であり、かといって溜めなければ必殺技が使い物にならず、まともな試合にならない。
挑発で相手のゲージを減らせるとか、攻撃力が異常に高いならこれでもバランスの取りようがあるかもしれないが、
MUGENのシステムでは相手の技ゲージをいじくるのは難しいし、攻撃力が高いと言っても『ストI』や『サムスピ』ほど極端でもない。
……つまり、完全に
原作再現した場合、まともに他作品キャラと戦えない場合が多いのである。
また、一部を除けばキャラクターの知名度が極端に低いという根本的な問題もあり、
マイナーなものはそもそも原作再現キャラが作られているのかさえよく分からない。
ただ、そんな不遇な作品とはいえ、今では『外伝』も含め一通りのキャラが製作されている辺りは流石と言える。
MUGENでの活躍が、不遇な『龍虎』シリーズの知名度向上に繋がる事を切に願って止まないものである。
最終更新:2023年12月03日 15:26