機動戦士ガンダム(小説版)

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機動戦士ガンダム(小説版) - (2020/12/11 (金) 21:49:42) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2017/11/09 Thu 22:55:00
更新日:2024/04/25 Thu 14:13:40
所要時間:約 45 分で読めます


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本項目では、ファーストガンダムの小説版を解説する。
舞台は当然一年戦争

放送当時の1979年にソノラマ文庫から刊行されたのが初出で、後に角川スニーカー文庫に版元が変わった。どちらも上中下の三巻構成。
後者は2017年時点でも新品の購入が可能であり、現在最も入手しやすいと思われる。
著者はTVシリーズ監督も務めた富野由悠季氏。


ガンダムシリーズの小説版は、登場人物や勢力が映像作品では描かれなかった別の顔を描くことが少なくない*1。作品によってはキャラの名前さえ違う*2こともザラである。すごい時には展開そのものが変わっていたりもする*3
FGの小説版である本作品もその例に漏れず、映像作品とは相違点が多い。

で、そのアニメ版・劇場版との相違点についてだが……





全部である。



全 部 で あ る 。



全 部 で あ る 。





けっこう大事なことなので三回言いました。
全部だ……全部だ!



そう、この「小説版ガンダム」はテレビ版劇場版とは全部違うのだ。共通項を探す方が難しいぐらいである。
誇張抜きで名前ぐらいしか一致しないと言っていい。
ある意味で冒険王版といい勝負である(ベクトルは違うが)。
ちなみにZガンダムも小説版があるが、もちろんそれにも続かない。


もう「どこそこが違う」と比較するほうがややこしいので一から解説してみよう。

というわけで、ネタバレ注意!!




【ストーリー】



宇宙世紀0079、ジオン公国は地球連邦政府に独立戦争を開始。
圧倒的な国力差を誇る連邦政府に対して、ジオン公国軍は新型兵器モビルスーツを用いて連邦艦隊を撃破。
開戦初頭の大虐殺により地球人口の半分は死に絶えた。
しかしこの大敗を受けた連邦軍もまたモビルスーツの研究と実用化を進め、九月ごろの現在、サイド7近郊でMS運用母艦、ホワイトベース級ペガサスがコアファイター搭乗員の訓練をしていた。
このペガサスが、ホワイトベースに相当する船なのである。
しかし、そのサイド7にはジオン公国軍の軽巡洋艦ムサイが迫っていた。ムサイから発した二機のMS『ザク』は、その指揮官であるシャア・アズナブル少佐の命で密かにサイド7に侵入した……。


というところから始まるが、この時点ですでにアムロ・レイ、カイ・シデン、ハヤト・コバヤシ、リュウ・ホセイが軍人として登場する。あともう一人シアン・クランクという同期もいる(が、すぐに腸をまき散らして死んでしまう)。
つまりリュウはもちろんとして、アムロたちが最初から連邦軍の士官候補生として登場しているのだ。
当然、軍人なのでシゴキも食らっており、直属の上官であるラルフ中尉から怒鳴りつけられビンタを食らっている。


そして侵入したザク二機は、シャアを「若造の上司」と嫌うデニムの独断*4により、ペガサスに納入中の連邦軍MS部隊を攻撃。ジーンも続く。
サイド7の住民も巻き添えにする攻撃に対して、連邦軍も逆上してコアファイターで迎撃するが、コロニーの中で航空機を飛ばすのは自殺行為にほかならず、避難する住民や一部の軍人も巻き添えにしてしまう。
五人目の同期だったシアンもコアファイターの破片を食らって死んでしまう。

そこで、リュウたちとともに避難しようとしていたアムロが逆上してガンダムに飛び乗り機動、ジーンのザクを斬って撃破。驚いたデニムはガンダムを放置してサイド7を脱出する*5


【ガルマ散る】


ザク二機の攻撃で正規クルーの大半が死傷し、またアムロの幼馴染みであるフラウ・ボウや軍の通信班にいたセイラ・マス(このヒトも軍人ということになる)らを収容したペガサスはサイド7を出ると、ルナツーに向かおうとする。
しかしシャアのムサイの妨害を受けてジオン公国軍の宇宙拠点キャリフォルニア・ベース(巨大な人工衛星のようなもの)のガウ部隊に待ち伏せされることとなる。その指揮官はガルマ・ザビ大佐であった。


はいここで違和感を覚えた人。
そう、ガルマは宇宙にいるのである。さらにガウは宇宙空母、ドップは宇宙攻撃機。さらに連邦軍のフライ・マンタも宇宙戦闘機なのだ(セイバーフィッシュとかじゃ駄目だったんだろうか)。
しかもこの時点でペガサスはルナツーにすら入っていない。
だがこんなのは序の口。
正面から三隻のガウ、背後からシャアのムサイに挟まれたペガサス隊だったが、猛烈な反撃でガウ二隻はあっさりと爆沈。逆上したガルマが自らのガウをフルバーストで前進させるが……

「ガルマ! よせ!」

シャアはガルマを謀殺しない。謀らない。
て言うか出撃前は、ガウからの砲撃に巻き込まれる危険も承知の上でペガサスに肉薄してガンダムと戦い、しかも、

「友情に報いるためには、そんな危険がなんだというのだね? ドレン中尉。わたしは、一発でも多く木馬にバズーカを撃ち込み、ガルマを助けたい。彼を飾り物にしないためにもな」

……だれこのヒト?
上記の「よせ!」という絶叫も本心。
ただし、同時にシャアの心の中では(あいつだってザビ家の一員だ……むしろ木馬が仇討ちをしてくれるのを、目撃できるだけでも僥倖だ……!)という思いも同時に沸いてはいたようだが、さすがにそれをもって悪意があったと言うのは酷であろう。

そしてこの時点で、もっぱら地の文でだがシャアとセイラの正体を全部明かされている。

つまり二人が兄弟で、ジオン・ダイクンの子供たちで、ザビ家は仇で、エドワウ・マスとセイラ・マスと名を変えて、ジンバ・ラルに育てられて、シャアは仇を討つべくジオンに入隊して、セイラは復讐させようとするジンバと決裂して、サイド7に流れたことが、第一巻の半分いかないところで全部明かされてしまうのである。

そして、宇宙でガルマを殲滅してムサイも退却させたペガサスは、一路ルナツーに入る。
……が、ここまでがまだテレビ版に最も近かった時期である。


【ルナツー→テキサス攻防戦】


ルナツーに入ったペガサスは、ルナツー基地司令官であるワッケイン大佐と、宇宙軍総司令官であるレビル大将に引き合わされ、賞賛される。
そして、ペガサス隊はワッケイン大佐が指揮する第十三独立戦隊に組み込まれ、レビル大将指揮する主力艦隊の陽動として、テキサスコロニー方面への進行を命じられる。

……そう、いきなりテキサスコロニーである。
レビル大将までルナツーにいるのはともかく、ペガサスは一度だって地上に下りないのだ。
すなわちテレビ版六話から三十話までの地上編がまるまるカット。
そして一気に三十七話相当のテキサスまで飛んでしまう。
ついでに途中ギレンの国葬とかデギンとドズルとキシリアの確執だとかザビ家側の革命史だとかさりげなくサスロの言及だとかダルシア・バハロ首相の立ち位置だとかが濃密に描かれる。
あとシャアはガルマを守りきれなくて左遷されたが、すぐに(国葬時点ですでに)キシリアのもとに引き抜かれていて、中佐の位とザンジバル級機動巡洋艦までもらっている。更にはサイド6にてニュータイプ部隊とエルメスとサイコミュとフラナガン機関まで任される。ララァ・スンまで登場する。
冗談でなく展開が早い。
ちなみにララァはサイド5「ルウム」出身で、インド出身のアースノイドではない。

他方ペガサスはルナツーを出た後、第十三独立戦隊に所属、ワッケインの旗艦「ハル」を中心としてテキサスコロニーを攻撃。
これはグラナダ艦隊への陽動であり、レビル大将の率いる本隊はグラナダもしくはソロモンをたたくと言う作戦。
一方グラナダ艦隊は偵察と迎撃のため艦隊を広く分散させていた。その内の一つであるマ・クベ大佐の攻撃中隊はテキサスに派遣されていた。テキサスコロニーの中にはシャアとララァのいるザンジバル、そしてエルメスも停泊している。
もちろん、このワッケイン隊もマ・クベ隊もそれぞれの全軍からすれば一部の動きに過ぎない。

そしてこのテキサスからの一連の戦闘により、
  • リュウ・ホセイ、ワッケイン、マ・クベが戦死
  • ペガサス撃沈、ザンジバル撃沈。クルーは脱出成功
  • エルメス撃墜。ララァ・スン戦死
  • シャアザク大破。シャアは脱出
  • ガンダム大破。コアファイター脱出しアムロは放流
  • テキサスコロニー完全崩壊
  • おまけのようにフラナガン博士も死亡
と一気に起きる。

一気に起きる。


冗談でなく、第一巻ラストまでにペガサスとザンジバルとガンダムとエルメスが沈んで、ララァが戦死するのである。当然、ララァとアムロの交流は戦場のほんの一瞬のみであった。
一方、セイラはシャアとテレビ版通り再会するが、その後はニュータイプとしての強烈な覚醒で、クルーを沈むペガサスや崩壊するテキサスコロニーから脱出させることに成功する。
セイラさん覚醒の瞬間であった。テレビ版ではロクに覚醒しなかったのに

……この時点で、宇宙世紀0080。テレビ版では降伏調印がなされた日だが、「戦争は終わってはいない」……。


【グラナダの陥落とクスコ・アルの登場】


さて、テキサスコロニーは戦局全体から見ればほんの一部に過ぎない。
この間に連邦主力艦隊はグラナダに進行。
対するキシリアは、ワッケインらの陽動にまんまと引っかかり戦力を分散させすぎていた。
それがまずい結果となり、レビル主力艦隊が攻め込むとわずか三十分強でグラナダ艦隊は壊滅。
一方、ソロモン、ア・バオア・クーはレビル主力艦隊の動きを揺動だと見なしたことで援軍を送らず、グラナダはTV版のソロモンと逆に孤立無援に陥ってしまった。
最終的にキシリアは撤退を決意。しかしその撤退の根拠は援軍を出さなかったギレンやドズルへの感情的なヒステリーというのが本当のところらしかった。

かくして連邦主力艦隊はグラナダを占領しファーストステップと改名。
またファーストステップは月のうちア・バオア・クーに面した位置にあるため危険・無防備であるとして、その反対側(フォン・ブラウンあたり)にフロントバックという基地を設立し、そこに主力艦隊を再編することとなった。
敗退したキシリアはア・バオア・クーに逃げ延びることとなった。
そのア・バオア・クーでは、かろうじてパトロール中のムサイに救助されたシャアと再会。ララァ亡きあとのニュータイプ部隊のまとめ役を任されることになる。


さてその間に、テキサスコロニーで離散しかけたペガサス隊は十三独立艦隊の僚艦サフラン、シスコに救助されて、フロントバックに届けられた。
アムロとコアファイターは宇宙を放浪していたが、偶然サイド6の民間船に救助され、サイド6の連邦領事館を経て連邦軍に復帰する。
……このときの民間船は実はジオンの徴用船であり、ジオンのニュータイプ、クスコ・アルと接触を持つことになる。
しかしこれまでに実はニュータイプという発言は連邦側からも出ていた。アムロはこのイベントで初めて本格的に知ったと言うべきか。
ただ、アムロ側の事情もあってクスコ・アルとの接触は短時間で終わり、その後はフロントバックに届けられて仲間たちと再会。
彼らは新しい母船「ペガサスジュニア」と、撃破されたガンダム二号機に代わるガンダム三番機「G3」、補充された一機を含むガンキャノン二機ジム二機、さらにサラミス二隻やボール四機を含めた「第127独立戦隊」として再編成された。
近年のゲームでも時折「G-3は小説版FGで活躍したMSでもある」と解説されているのはこれが由来である。
ちなみに『トライエイジ』とかで触れられた忍者がどうのこうのは『Gの影忍』からのネタ。全く別の作品である

一方、シャアも「第300独立戦隊」の指揮官として、二番目のザンジバル級「マダガスカル」を受領。
新型MSリック・ドムやそのパイロットであるシャリア・ブルたち、そしてエルメス二号機を揃えて厳しい訓練に勤しんでいた。そのエルメス二号機のパイロットは、アムロと接触したクスコ・アルだった……。


とまあこんな具合で、サイド6以降のエピソードは映像作品と何一つ共通しなくなった。
さらにキシリアの拠点グラナダはテレビ中一度も戦場にならなかったのに、こっちではソロモンとは逆になる形で突破される(ついでにキシリア単独の采配も披露されたのだが……ドズルに比べると指揮官としては能力が低かったといわざるを得ない)。

そしてアムロたちだが、テキサスで死線を潜り抜けたことで精神的には大成長しており、テレビ版以上の団結力とさばけっぷりを見せている。というより、精神的にはア・バオア・クー以降の彼らといっていいかも知れない。
そして大人っぷりが加速しすぎて……

+ ネタバレ
アムロがセイラを口説き、ガチのベッドシーンにまでもつれこんだのである。
さすがに直接的なシーンはないが、かなり大胆に描かれる。
そのちょっと前には、セイラのほうからアムロに、セイラがシャアの実妹であること、二人がジオン・ダイクンの遺児であることを明かしている。

しかしやはり一連の行動は、特にセイラにとってはストレスでもあったらしく、ピロートーク交じりに「シャアを殺してくれ」とこぼしてしまう。
とっさにアムロは「それを頼みたいから僕と寝たんですか!」と叫んでしまう……

このあたりのセイラの葛藤とアムロの恋情は恐ろしいほど濃密な描写となっており、なんというか「必見」である。
そしてこの瞬間から、セイラさんのヒロイン力は急上昇していく。



【コレヒドールの死闘】


その後、シャアの部隊は実戦テストをかねてフロントバックを奇襲。迎撃に出たアムロたちと戦いつつも、十数分でサラミス九隻を落とすという十分な戦果を挙げる。
今回は小手調べのようなものだったのですぐに手を引いた。
しかしエルメスのほうが(最初の本格的な実戦ということもあるが)圧倒されてしまい、のちにクスコ・アルは自信を折られてしまう。
というかシャリア・ブルがものすごく強く、アムロもシャアも「シャア以上のニュータイプ」と直感するほどの腕前を見せつけた。
テレビ版ではララァの前座だったシャリアが、まさかの超大物となっていくきっかけである。


この後、ペガサスジュニアを中核とする127戦隊は、さらに十二機の宇宙戦闘機「トマホーク」からなる戦闘機部隊を補強されているが、「これが正真正銘、最後の補強」とされていた。
ちなみにセイラもスレッガーもトマホークには乗らない。またなぜかその戦闘機部隊の指揮官はマクベリィ少佐で、ブライトよりも階級が高かったりする。

その間にアムロたちは全員昇進したり、ニュータイプの概念について話し合ったり、ブライトとミライの間にフラグが立ったり、スレッガーのフラグが圧し折れたり、アムロとセイラといちゃいちゃしたりしてるけど割愛。
あとフラウ・ボウは落選しました。

シャアのほうではララァでもクスコでもなく、キシリアの秘書のマリガレーテ・リング・ブレアという女性と恋人関係になるのだった。当然ベッド行きですよ!
どうもこっちのシャアはララァをそんなに引きずってないっぽい。というか、ZやCCAのシャアよりも一番平和で幸せなように見えるのは気のせいだろうか……
あ、仕事はしてますよ。
部隊のメンバーのチームワークがかなり良くなり、結束力が高まっている。鼻っ面を折られて落ち込むクスコ・アルをなだめるなど、アフターケアもしていた。
TV版よりもいい上司に見える…



そんな準備を終えて、いよいよ連邦艦隊は月を発して総攻撃を開始した。
ドズル(とテレビ版の視聴者)は、グラナダを落としたのだから次はソロモンに来るはずだ、と予想していたが、連邦軍はソロモンを無視して直接ア・バオア・クーに向かう進路を選択。
ドズル「ソロモンは敵でないというのか! レビルめ、必ず相対してくれる!」
一方キシリアはギレンの要塞のア・バオア・クーが攻められるので密かにほくそえんでいる。
……あんたらもうちょっと自分を押さえろよ……

ともあれ、アムロたちを先鋒とする連邦軍は、途上に展開していたジオン艦隊を逐一撃破しながら着実に前進していった。
だが、そのア・バオア・クーに向かう航路にある「コレヒドール」という暗礁区域にはシャアの300戦隊が待ち伏せて展開していた。

このコレヒドールは文字通り激戦となった。
ララァがややあっさりと戦死した反動なのか、アムロとクスコの戦いはサイコミュの能力とニュータイプの意識が全開の激戦となり、さらにシャアも飛び込んで死闘となった。
艦艇やMS、戦闘機も激しく打ち合い、さらにアムロの意識がオーバーフローしてクスコの人生全てを理解したり、シャアと戦場で交信したりと、テレビ版のララァ戦以上のすさまじいニュータイプの意識となっていった。
そしてそのクスコの人生(存在そのもの?)を理解した瞬間は、アムロのビームライフルがクスコ・アルを打ち抜いたときだった。



“止めたら、シャア! あなたを殺す! 俺はアルテイシア・ソム・ダイクンに頼まれているんだ”
“アルテイシアにだと!”


 アムロは、
 罪を、
 犯したと分かった。
 が、
 すでに、クスコ・アルの身体は焼かれていた。
「……マ、マイ フェア レディ……クスコ・アル……」


“本気なのか、アムロ!”
“嘘が、嘘が伝わるものかっ”



エルメスが沈み、ジオン艦隊は退却した。
旗艦マダガスカルも中破し、六機いたリック・ドムはシャア機を除くと二機だけになった。ガトルも三機だけが残った(これも次の作戦には使えない)。
一方の連邦艦隊も損害がひどく、マクベリィ少佐含めてトマホーク隊が壊滅、アムロの僚機のジム一機とボール四機、サラミス級「グレーデン」が沈んでしまった。

その合間に、アムロはセイラに「伝えた」と言って平手打ちされたりしている。
……重い。あまりにも重すぎる展開である。リア充も楽じゃないとわかるだろうか。



【ギレンの思惑】


この後、レビルが指揮する連邦軍主力艦隊はいよいよコレヒドールからア・バオア・クーに全軍突撃の信号を下す。

迎え撃つア・バオア・クーはランドルフ・ワイゲルマン中将が指揮をとり、次席指揮官にグラナダから落ち延びたキシリア・ザビ少将
さらに、レビル艦隊の後ろからドズルの艦隊が猛烈なスピードが追いかけていた……


……あれ? ギレンは?


実はこのとき、ギレンはサイド3にいた。ア・バオア・クーには出てこないのである。
代わりに一番の側近であるランドルフ中将を置いているのだが……
ギレン自身は(アサクラ大佐ではなく)チャップマン・ジロム大将が管理するソーラ・レイのあるサイド3にいながら、腹心であるランバ・ラル大尉の報告を聞いていた。

さりげなくこんなところでランバ・ラルのお出ましである。
この人もテレビ版とは全然キャラが違う。

そしてギレンだが、この時点で密かにとある計画を練って、ランバやチャップマンにほのめかしていた。
……それはともかくとして、レビル艦隊はついにア・バオア・クーに攻め込んだ。

テレビ版ではア・バオア・クー前にソーラ・レイが打ち込まれているが、小説版ではデギンは和平に動かないし、ソーラ・レイはまだ動いてないし、レビルもドズルもまだ生きているし、ギレンはキシリアと同じ場所にいないしで、もうこの時点で全然違う流れになっている。
「グレートデギン、どこに配備なされたのです?」「出てこんよ。話の都合でな」


【ア・バオア・クーの激戦】


そういうわけで始まったア・バオア・クーの戦いだが、なにせ正面のア・バオア・クー防衛線と、そこに攻め込むレビル艦隊追いかけるドズル艦隊、の三つ巴の激戦になった。


このうち、背後からのドズル艦隊は出撃時のごだごだで、ドズルが直卒する戦艦ガンドワを旗艦とする艦隊と、空母ミドロを中核とする艦隊の二手に分かれていた。
このうち、ミドロ艦隊はレビル艦隊左翼の背後を、ガンドワ艦隊は右翼の背後を突くことになった。
もちろん正面にはア・バオア・クーの防衛線があるわけで、前後から討たれた連邦軍、特に左翼は大苦戦する羽目に陥った。
実はレビルは諜報でソーラ・レイのことを知っており、攻略を焦ったのが背後の備えを怠る結果となったのである。


が、右翼部隊にいたアムロたちは、圧倒的な力量でドズルの部隊を撃破してしまった。

アムロのガンダムG3、カイのC108、ハヤトのC109、それにキリア・マハのジム325が、完璧な連携で片っ端からドズルの艦隊を蹴散らしたのである。

ドズルはビグ・ザムをガンドワに曳航していたが、自らも乗り込んで発進させたビグ・ザムさえ大苦戦。なんとジムの一撃で片足を失ってしまう。
突撃してきたガンドワとの一斉攻撃によって、キリアのジムをなんとか撃墜したものの、ガンキャノン二機の攻撃でガンドワもあっさり沈み、ビグ・ザムも映像版からすれば信じられないほどのあっけなさで撃沈してしまった。
ドズルだけはテレビ版と同じようなオーラを放っていたが、どうなるわけでもなく爆砕する。
アムロ「こんな奴がいるから、戦争は終わらんのだよ!」


残ったミドロ艦隊はいまだに連邦軍を圧倒し続けていたが、ここでレビルが「戦力を固めて、ア・バオア・クーの一転に集中して切り込もう」といったのを、幕僚が「いったん後退して立て直す」と勘違いして全軍に発信してしまった。
映像版でキシリアがギレンをブチ殺したレベルの大ポカだったのだが、レビルは指揮系統を混乱させないためにあえて「ミドロ艦隊を殲滅して立て直す」と再命令。前後に敵を迎えて劣勢気味だった司令部に活気を呼び戻すことに成功した。
他方、全軍に襲われたミドロ艦隊は全滅し、ア・バオア・クー守備隊や本国のギレンたちは「ドズルをたやすく殲滅するほどの連邦軍が、なぜ後退したのか」と悩んでしまい追撃を中止。
アムロたちも一息ついた上で、あらためて攻め込むことになった。
……実はこの「一息」のミーティングで、ブライトは「いっそ直接本国に攻め込んでギレンを討つか?」とぶっとんだ事をいっている。
しかしこの冗談のような話は徐々に発展して、アムロは「協力者がいればできるかも知れない。 例えば、シャア・アズナブルとか」とさらにものすごいことを言い出した。

……そして実は、シャアのほうもシャリアたちとの話し合いで同じような結論を出していた。

実は少々前後するが、ギレンの最終目標は「ソーラ・レイで連邦軍に勝つこと」ではなく、戦後を見据えて「連邦軍とキシリア、ドズルを消してしまうこと」にあった。
つまりソーラ・レイの最終目標はキシリアでもあったのだ(ドズルは純粋に戦死した。むしろギレンはドズルの死が予想外だった節もある)。
しかし、その目標は実は思わぬところから漏れていた。
ギレンの腹心であるランバ・ラルの恋人(籍は入れてない)のクラウレ・ハモンにである。
そしてそのハモンだが、その正体はなんとデギン公王とダルシア・バハロ首相のエージェントであった。
さらにはデギンとダルシアは密かにギレンを排除しようと目論んでおり、ギレンがソーラ・レイでなにを狙っているのかを、ハモンを通じてキシリアに漏らしていた。
キシリアはそれを頼りにするシャアに伝え、シャアは信頼するシャリアたちと相談。
結論として、一足飛びにギレンを倒し、革命を起こそう。そのためにアムロと協力できるならなお良い……という結論を導き出していたのである。
さらにはこのあたりで映像版にもあったキシリアがシャアの正体を見破るエピソードも加わる。

ともかく、シャアとアムロはお互い関わらない場所にいながら、「独裁するザビ家を討ち、腐敗した連邦を切り捨てて、新しい『ニュータイプの時代』を作る」という同じ青写真を描いたのである。
だが……



【ソーラ・レイ】


再編成と補給を終えた連邦軍が再びSフィールドより攻め込み、ア・バオア・クーの防衛部隊も再び激しい迎撃を展開した。攻撃はやがて連邦の特攻に近い形となる。
その激戦の中で、アムロはドズルの猛烈なオーラを見た経験から「人々の意識の核」を見つけて、その核=ギレンを討とうと、ニュータイプの意識を磨ぎ澄ましていた。
一方、アムロたちと協調し、新しい世界を作るべきと考えたシャリア・ブルは、ニュータイプ用モビルアーマー「ブラウ・ブロ」を動員し、そのサイコミュの脳波を使ってアムロを見つけて交信しようとしていた。
テレビ版ではララァとエルメスの前座に過ぎず、劇場版では「いらない」といわれて出番そのものをカットされたシャリア・ブルとブラウ・ブロが、まさかの「ストーリーの肝」となった瞬間である。


だが、その乱戦の中、突如サイド3からテストを兼ねたソーラ・レイの第一照射が打ち込まれた。
映像版で、遠くにいたアムロでさえ異変を感じて「憎しみの光だ」と戦慄したソーラ・レイが、戦場で、アムロたちの目の前で炸裂したのである。
その一撃はレビル艦隊を補佐するカラル中将の支援艦隊を消し去った。

間近であっただけに、その衝撃はテレビ版よりもすさまじく、呑み込まれたカラル艦隊のクルーたち数万人の「断末魔の意識」が戦場に炸裂し、アムロのようなニュータイプの意識に目覚め始めていた人間たちに強烈な圧力となって襲いかかった。
文中では「宇宙をも震わせる憎悪」「真空をも揺るがす」「ありえない圧力、ありえない振動。しいて言えば空震」「阿鼻叫喚そのものの奔流」とまがまがしい言葉が羅列されている。
アムロ、カイ、ハヤト、セイラ、ミライ、レビルたち連邦側のニュータイプだけでなく、事前に「来る」と知っていたはずのシャアやシャリア、果ては遠くルナツーにいたはずのフラウ・ボウまで意識が吹っ飛んでしまった。
シャリアに至っては「死んだほうがましだ!」「この恐怖は、死んでも魂に残る……」と内心で絶叫するほどだった。


そんな混乱の折に、シャリアとアムロは接触する。
シャリアは早速、ブラウ・ブロのサイコミュを利用しつつアムロと交信。
「この近辺はギレンのソーラ・レイに狙われている」「ギレンの独裁を妥当し、新しい社会を作るために協力してほしい」「一緒に脱出してほしい」と必死になって訴えた。
それはある意味でアムロたちも考えていたことなのだが、シャリアは一つ大きなミスを犯していた。

ソーラ・レイによる阿鼻叫喚の意識の渦に飲み込まれて動揺していたアムロに、なまじだれも経験したことのない「サイコミュからの精神波で訴えた」ために、かえってアムロをパニックに追いつめ、逆上させてしまったのだ。
シャリアもシャリアで、次のソーラ・レイ発射まであと二十分もないことから焦っていた。さらに、しょうがないことではあるが、精神波を送りながら、有線式サイコミュ端末で砲撃を加えているので「動揺させて討つつもりだろうが!」とますますアムロを本気にさせてしまう。
加えて、事情を知りえないカイやハヤトはシャリアや続くシャアを撃破しようと猛攻をかける。


訴えながらも迎撃するシャリア、冷静なようでパニックに陥っているアムロ、失敗したのかと焦るシャア、必死に迎撃するカイとハヤト、と全員が混乱に陥っているさなか、ついにアムロのビームライフルがブラウ・ブロのコクピットを狙撃してしまった。
「情緒不安定なパイロットが!」
しかしシャリアの死の瞬間、彼の意識がアムロを直撃。この瞬間、つまりシャリアを殺して、やっとアムロはシャリアの言いたいことを理解したのである。
クスコに続きこのパターンは2度目である。もっとも「わかりあった時には時すでに遅し」なのは御大のガンダムではたまによく出てくるネタではある

一方シャアはシャリアの死に驚愕し、その隙をカイとハヤトに突かれて撃墜されかける。冗談でなく、本当にシャアは殺されそうになった。
しかしシャアが間一髪で反撃、ハヤトのガンキャノンを撃破。ハヤトが戦死する。
シャリアの死の波動を呑み込み、ハヤトの死の波動をこらえて、アムロはカイを制止。さらにペガサスジュニアに飛んで「シャアと協力して、ア・バオア・クーを脱出しろ」と伝えた。


そのために気を逸らした瞬間、シャアの部下ルロイ・ギリアムのリック・ドムが、背後からアムロを撃墜してしまった。



「ルロイ!」


「ガンダムは気付いてくれたのだぞ!」



アムロが、主人公であるアムロ・レイが、まさかの戦死を遂げてしまった。
しかもそれはシャアが決して望まない形で。

しかし、アムロの死にともない飛び散った意識は、ララァやクスコの意識とともに戦場に展開し、残ったペガサスクルーたちやシャア、ルロイ、戦場にいてそれを感じ取れたわずかな人たちへ、そして戦場を離れたルナツーのフラウ・ボウまでへと、広く伝播していった。

「この空域を脱出する。目的はジオン!」
「シャアとの回線を開け! 情報を確認しつつレビル本体にこの空域からの脱出を示唆しろ!」
ブライトの絶叫により、ペガサスジュニアの部隊はシャアのマダガスカルとキシリアの旗艦ズワメルに続きながら、いっせいにア・バオア・クーから離れていった。

しかし、まさに部下たちを抱えてア・バオア・クーに上陸しようとしていたレビル艦隊はいまさら進路変換もできなかった。
また、要塞守備を命じられていたランドルフ中将らの守備隊はなにも知らされておらず、退避もせず、レビルにもさせなかった*6
レビルはさすがに「ギレンは味方に被害が出てもソーラ・レイを撃てる。そういう男だ」とは見抜いていたが、この状態でできることはア・バオア・クーに取り付き、陰に隠れてア・バオア・クーを盾にする、そうして撃たせなくする、ということだけだった*7


だが、「キシリアをレビルもろとも殺す」と考えていたギレンにとって、レビルの決断は最悪の展開だった。
そうして、ついに発射されたソーラ・レイはア・バオア・クーの「柄」の部分を直撃。
レビルとア・バオア・クー要塞の下半分を、自軍の将兵もろともに蒸発させた。
もちろん、直撃しなかった「傘」の部分も下半分を吹き飛ばされたことによる衝撃で激しく振動し、無重力ゆえに資材が高速で右往左往したため、内外にいたほとんどの将兵が壁や物資に叩き付けられ圧死した。
映像版でギレンがいた総司令部もで、総司令官ランドルフ中将は一瞬で床と天井を十数往復して死んだ。

さらに、本国ではギレンがランバ・ラルをソーラ・レイのコントロール艦に派遣。
(ギレンの密命を受けて)ソーラ・レイの斜角をア・バオア・クーに向けるよう工作していた司令官チャップマン大将を殺させている。言うまでもなく口封じである。*8

地球連邦軍宇宙総軍は壊滅。
ジオン軍は半身不随に陥った。
事実上の戦争は集結したのである。

口封じもなされ、ギレンの計画はすべて完了した……と思われた。



【終戦】


だが、すでにハモンの密告とアムロの死によってキシリアとシャア、ペガサスクルーは連携してア・バオア・クーを脱出し、しかもジオン本国へと全速力で向かっていた。
当然、双方の乗組員たちはギレンに殺されかけたことを理解しており、キシリアの「ギレンを討つ」というクーデター宣言にも団結して賛成した。

ペガサスクルーも、シャアと会見。双方の語り合いを経て、映像版では信じられないような和解がなされた。
ちなみにシャアは彼らの前で簡単にマスクを外している。
「あ……これはファッションでな。プロパガンダ用の……」
「申し訳ないが癖というのは外すのを忘れさせる」←言いながら照れる。
セイラとも再会し、和解と、双方ともに精神的な決別を果たしている。
やっぱりどう見てもテレビ番より成熟している……


かくして団結したペガサスクルーとキシリア・シャアの艦隊は、間違いなく「味方」であることを利用してズムシティに入港。
ギレンが完全に油断し切っていたこともあって、コロニーの港を砲撃で突破し、ズワメルとペガサスジュニアがコロニー内部に飛び込んだ。
さらにザクやリック・ドムも出撃。その中に、最後の一人になったカイのガンキャノンも加わった。
またシャアのリック・ドムには予備シートを出してキシリア自らも乗り込んでいた。ギレンを自らの手で討ちたいという執念である。

「よろしいのですか?」
「よい。心配はいらぬ」
(やや違うのだがな……)

そしてアムロ並みに覚醒していたカイが、いち早くギレンの「気」をつかんだ。
事態を悟ったギレンが脱出しようと乗り込んでいた車が見つかったのである。
「判るぞ! 俺にも! アムロ! 間違いないんだな?」
“見事だな。カイ”
「総帥! 出ませい!」

ついに包囲されるギレン。キシリアはリック・ドムの左手に乗り移り、シャアに中空まで移動させて、手にしたビームライフルを放った。
ギレン・ザビはあっけなく即死した。

「では……」

そして次の瞬間、リック・ドムの手首が回転した。

「シ……シャアァ!」

キシリアはよりによってギレンの肉片のあたりに墜落死した。
それだけであった……。



ギレンとキシリアが消え、さらに統合本部もシャアたちの手で制圧され、ジオン公国は制圧された。
その後は、デギン公王が退位しダルシア首相を中心として「ジオン共和国」が復活。
そのジオン共和国と、地球連邦政府が講和条約を締結することで戦争は終わった。ルナツーもジオン共和国の管理下に置かれ、連邦政府は完全に「地球だけの政府」となった。
ペガサスジュニアと僚艦二隻も共和国に鹵獲扱いとなり、そのクルーたちも半数はジオン国籍を与えられ、さらに一部はシャアとともに再建のため共和国軍に参加した。



こうして、小説版ガンダムのストーリーは終局する。


最後は、ジオンからもシャアからも離れ、一人で自在に泳げるようになったセイラが地中海に飛び込むあたりで幕を閉じる。



というわけで、徹頭徹尾・最初から最後まで、映像版の面影が欠片もない「小説版ガンダム」である。
ほかにも、一部キャラクターの内面の掘り下げや来歴披露などが頻繁になされる上、映像版以上にSFらしい科学考証が随所に炸裂している。



【登場人物】


+ 地球連邦軍
アムロ・レイ
「生きるも死ぬも、早いか遅いかの違いなら!……神様!」
年齢に関してはU.C.0080で二十歳(テレビ版ではサイド6で十五歳と発言)。
最初から軍人としての道を歩んでいるのと年齢が年齢なので映像版よりもずっと大人。当然、戦いから逃げるなんてところもない。
しかしそれは映像版と比較しての話で、セイラさんと彼の扱いを見る限り「大人」としてはやっぱり不器用な方。「ウブなネンネ」。
映像版ではいまいち曖昧だった「ニュータイプ」についてかなり深くまで理解するようになっている。
セイラさんとヤッた漢。


◇セイラ・マス
「みせて欲しい。人の光明を……!」
映像版ではヒロインなのかどうなのかいまいち曖昧だったが、小説版では正真正銘、まごうことなきヒロイン。
何回もベッドにもつれ込んだり父ジオン・ダイクンの意志を解説したりと大活躍。戦闘機に乗らないので「活躍」はむしろ減っているはずなのだがとてもそうは思えない。
もともと陰のあるキャラクターだが、小説版ではその辺にも深く踏み込まれている。アムロいわく“なぜ、そんなに怯えて生きてきたのです”。
しかし最後はシャアに対して「わたしの男を殺した男!」と意識し、兄への決別という成長を果たす。
最後は彼女の裸で締められる。ちなみに0079に二十歳なのでアムロより一つ年上。


ブライト・ノア
「今はお互いにマシンだと思え! 考えるな! ただ前を見て操艦しろ!」
安定の艦長。映像版との違いがあんまりない貴重な人。意外に順調にミライさんとのフラグを立ててる。
「ヒステリーのブライト」呼ばわりされているが、映像版に比べると「十年ぐらい年を取ったのではないかと思うほどさばけている」。


◇カイ・シデン
「艦長、アルコールてのはないスかね」
アムロたちと同じく最初から軍人。軟弱者ではない。ニュータイプとして覚醒し、アムロ死後は代わって物語を牽引した。
アムロたちの部隊ではただ一人、最初から最後まで生き残ったが、彼の胸に去来するものは……
「なあ……アムロ……これでいいのか?……」


ハヤト・コバヤシ
「ぼくはニュータイプって存在自体、どういうことなのか良く判りませんし……」
出番は多いはずなのだが、カイよりも印象が薄い。しかし、テーマとして据えられているニュータイプについて「突然変異の怪物じゃないのか」と疑念を抱くなど、重要な立ち位置ではある。
そういう彼もまたニュータイプとして覚醒していくが、ア・バオア・クーの乱戦の中でまさかの戦死。


◇リュウ・ホセイ
「……あ、あいつ……ニュータイプかも知れねえな……」
アムロたちとは同期なので完全に対等な口調。ただし年齢は一番高いため、リーダーのような立場だった。
しかしテレビ版で見れた包容力も、みんなが成熟している小説版ではいまいち地味。
最後は「乱戦の中、気付いたら撃墜されていた」という形で、アムロたちに戦場の厳しさと現実のあっけなさを淡々と刻みつけた。


◇スレッガー・ロウ
「ひょっとしたら俺は、ジャブローの密偵かも知れんぜや」
ルナツーに合流してからの補充要因だが、戦闘機に乗らず砲兵の指揮官で終わる。信じられないほど空気。
戦死はしないのだが、ミライやセイラにアプローチをかけるもののことごとく相手にされなかったぶんいいのか悪いのか。
ちなみにリュウの生前から配属されているが絡みはない。


◇キリア・マハ、サーカス・マグガバン
キリア「一週間に二つも三つも戦場を跳びまわるなんて事にはならんでしょうね」
ペガサスジュニアに補充されたジムのパイロット。サーカスが324、キリアが325番機を担当。
サーカスは目だった活躍もなく戦死するが、キリアはア・バオア・クーまで奮闘。
最初は心許なかった彼も急速に腕を挙げ、ドズル戦ではアムロたちとともに多数のMSを撃破。
さらにビグ・ザムにも直撃弾を当てるが、グワジン級ガンドワとビグ・ザムの一斉攻撃を捌き切れず戦死する。
死後も「優秀なパイロットを失った」と全員から悼まれた。


◇マクベリィ
「ラフな神経ではトマホークは勤まらんよ」
ペガサスジュニアに加えられた「トマホーク」宇宙戦闘機部隊の指揮官。少佐。
アムロたちがどこか生温いのに対して、軍人らしい規律とプライドをもった人物。
というと映像版のリードのようなのを連想しがちだが、彼の「男らしい力量」「器の大きさ」はかなり心地よい好漢。
ぶっちゃけスレッガーより目だっている。というよりスレッガーの出番を喰ったのは間違いなくこの人。


レビル
「私は信じたいのだ。ニュータイプの存在を。そして、それを諸君ら自らが試してもらいたい」
連邦軍の総司令官。ティアンムが出てこないしジャブローも舞台にならないしア・バオア・クーには自ら参戦するしで、意外と出番が無かった映像版と違い、一線で指揮をとっている。
映像版では穏やかな初老の人物だったが、本作では意外と興奮しやすい性格であることが示されている。また「ジオンに兵なし」の演説が記載されているが、その文章はかなり過激で、アジテーターっぽい。
ちなみにセイラの正体を調べ上げてペガサスクルーに明かしたのは彼。


◇ワッケイン
「待たせた。諸君」
ルナツーの基地司令官という立場で、階級は大佐。厳格でぶっきらぼうな性格なのは変わらないが、実は詩人で、「ルナツーニュース」という新聞で詩の評論をしているらしい。


◇ラルフ中尉
「ボッとしてるわりには、ご機嫌にかわしてくれたな。歯ぁ食いしばれ! 左右の者、アムロ曹長を固定しろ!」
ペガサスの七人いる正規パイロットの一人。左手が義手になっている。いかにも本物の軍人らしいスパルタ上司で、アムロたち五人のパイロット候補生を厳しく教育していた。
残念ながらガンダムに乗る前に戦死してしまうが、彼ら正規パイロットはいずれも空母トラファルガーにて実戦を経験している猛者ばかりで、コアファイター離着艦も三回の訓練で呑み込んでいた。


マチルダ・アジャン、ウッディ
「じゃ、私を愛してくれて妻という名前をくださるということ?」
「当たり前だろ!」
ルナツー補給部隊と整備部隊のカップル。完全に後方担当なので戦死もしないし、たぶん結婚できた模様。
ちなみにマチルダさんはわざとアムロを話題に出すことでウッディの嫉妬心をあおってプロポーズに追い込んだらしい。


◇フラウ・ボウ、カツ・ハウイン、レツ・コ・ファン、キッカ・キタモト
「体を大事にしてね……でも、兵隊さんにこんなこというの変かしらね」
民間人は全員ルナツーで下船する。よって出番が激減。てか無きに等しい。フラグも何一つ立たない。
ちなみにチビたちは本作でフルネームが設定されている。


◇テム・レイ、カマリア・レイ
アムロの父のテムは著名なコロニー建設者であり、宇宙開拓の偉人であった。
しかし母のカマリアはそれをいいことに「特権階級として」地球の居住権を勝ち取り、しかも愛人を抱え込んでいた(仕事人間のテムはそれを知った上で放置していた)。夫はもとより息子であるアムロにさえ愛情をもっておらず、むしろ邪魔だと疎んでいた。
そうした経緯でアムロは「僕は一人で大きくなったんだ!」「不潔だ!」と叫んでいる。
なおテムは戦前か、もしくは開戦直後に死亡しているとのこと。



+ ジオン公国軍
シャア・アズナブル
「神のみぞ知る、だな?」
ある意味アムロ以上に変わった人物。ライバルというよりもう一人の主人公。
最初はジンバ・ラルのゆがんだ教育のままザビ家への復讐を志していたが、物語開始時点でその思いは薄れており、ララァとの交流で彼の意志は「新しい世の中」へとシフトしていく。
本当の意味で大人で、ヘタレじゃない。ララァやセイラを意識しすぎて道を踏み外すようなことはなく、むしろララァの死もあっさりと乗り越えているし、ほかに心からの恋人もできている。彼女の前ではしどろもどろになったり子を産んでほしいと願ったりする。
仮面はもともと正体を隠すためだったが、いまでは「赤い彗星」という偶像のためのプロパガンダ、ファッションと割り切って着用している。なお額には自分でつけた醜い傷跡がある。
ガルマは謀殺しないしアムロの死を悔しがるしマザコン・ロリコン・シスコン一切無いしでもう完全な別人だが、これがどの作品のシャアよりも生き生きとしていて幸せそうなのがどこか切ない。


◇ドレン、デニム、ジーン、ハマン・トラッム(ムサイ艦長)
ジーン「デニム中尉。蜘蛛の巣です」「降りて触ってみたいものであります」
初期のシャアの部下たち。映像版とは逆にシャアは彼らから露骨に嫌われており、デニムが飛び出したのもその対抗心からだった。ちなみにドレンは艦長ではなくシャアの補佐官。ハマン艦長はなぜか「赤鼻野郎」といわれているがアッガイの赤鼻との関係は不明。


ララァ・スン
「あの少年、ア、ム、ロ、が遅すぎたのではない。私が、早すぎたのだ」
なんと一巻目で退場してしまう最初の本格的ニュータイプ。彼女との関わりがシャアに復讐以上の思いを抱かせるのだが、なにせ出番が短すぎるのと、シャアもアムロもあんまり引きずらずに自らの成長の糧としているので、ちょっと影が薄い。


◇クスコ・アル
「性分は直せない……いえ、直したくはないわね。私は自分が好きだから……」
エルメス二号機のパイロット。かなりの自信家で、ぐいぐい押し込んでいくタイプ。
二巻は彼女の物語と言える。死の間際、アムロは彼女の歩んできた人生そのものを理解してしまう。これが「ニュータイプの交流」「人を理解すること」だった。
ちなみにGジェネにレンタルキャラで出てきたこともあるが、なぜかそっちだとピンク色の髪だった。小説版では栗色って書いてあるのに。


シャリア・ブル
「我々が屈折しすぎているのです。中佐……いえ、キャスバル・ダイクン」
クスコ・アルとともに登場。テレビ版ではララァの前座扱いで、劇場版では「いらない」なんて理由でカットされた悲劇のナイスミドルだが、本作ではなんとシャアの右腕、アムロとシャアを和解させようとする超重要人物。ニュータイプの素質、パイロットの力量もシャアを上回る。
天涯孤独の身の上らしく、それだけにいっそうシャアの理想実現のために意欲を燃やす。ちなみに年齢は驚愕の二十八歳。ありえん。


◇ルロイ・ギリアム
「第三のルネッサンスを人類は迎えつつあると考えて良いわけですね」
シャアの部隊のパイロット。若いがすでに軍艦二隻を沈めた腕利き。ア・バオア・クーの死闘でペガサスを牽制していたところ、アムロがペガサスにシャアの意志を説明しようと飛び出したため、間違えて撃ってしまう。結果、アムロの死という結果を招き……
Gジェネでは、なぜかGジェネオリジナルキャラクターとして登場したことがある*9。シャア専用リック・ドムが最初期からあったゲームだとはいえ、なぜオリキャラ名義で……
能力がやや低めだがニュータイプLv/覚醒値は高いことが多く、ニュータイプLv/覚醒値が高いと能力が低くてもフォローが利くこのシリーズでは作品にもよるが普通に使っていける。
第一作目ではあのイワンと同じ台詞パターンの軽すぎるノリのキャラだったが、以後の作品では真面目な性格に。
なお、GジェネSPIRITS以降、名前が「ルーク・ルザート」に変わった。
「俺は……とりかえしのつかぬことをしてしまった……」


◇マルガレーテ・リング・ブレア
「決して偽名ではありませんよ」
キシリアの秘書官の一人。出番は少ないがシャアの恋人となり、彼に平凡で人間らしい幸せを教えることに。


ギレン・ザビ
「それが終われば私は隠居しよう」「私は権勢欲だけで動いているのではない」
ジオン最高指導者にして史上最大の虐殺魔にしてアジテーター。
しかし本作では彼は彼なりに清廉かつまじめな政治家であると描写されている。銀河の流れを眺め、宇宙の不気味さと美しさを感じるのが好きという彼の様子は哲学者のようでさえある。
ジオン・ダイクンの革命からジオン公国にいたるまでの二十年の過去や、そこで感じた思いなども点描されており、一度は「革命家」ジオンやその理想を具現化するデギンを心の底から尊敬したという。
しかしジオンについて「アジテーターでしかなかった」と幻滅。自らが信じる理想のための独裁に切り替える。しかしその思想は根本的に古く、その結果が史上類を見ない計画的虐殺であった。


◇キシリア・ザビ
「参ったな……妙な士官とは思っていたのだが、キャスバル坊やか……」
なんとソロモンではなくグラナダが狙われる関係で、大会戦の司令官として采配を振るう……が、結果は見事な完敗。指揮官としての能力はぶっちゃけ低かった。もっとも映像版でもギレンから指揮を引き継いでから一気に戦況を悪化させたぐらいなので当然とも言える。
ニュータイプに関する理解が映像版よりもある感じだったが、結局は古いタイプの人間とシャアから見限られていたらしく、隙を見せたために「掌を返される」結果に。
ギレンはキシリアとシャアがクーデターを起こしたと知ったときに「体制の変革そのものが起きている」と理解するとともに「キシリアも埒外ではないな」と直感していたが、的中する形となった。
ちなみに「幼い頃のキャスバル坊やと遊んであげた」仲なのは変わらないが、その頃はあまりにかわいい金髪の子供たちを見て「自分も金髪の男性と巡り会って、こんな子供を生みたい」とか考えていたらしい。ドン引きである。


◇ドズル・ザビ
「ニュータイプが存在するなどという戯言はきけん! パイロットなぞパイロット・スーツに小便を垂らすのが仕事よ!」
ソロモンの司令官というのは変わらないが、そのソロモンが戦場にならない。また映像版ではグラナダからもア・バオア・クーからも援軍を回してもらえず*10孤立無援のまま戦っていたが、こっちでは逆にキシリアからの援軍要請を「グラナダ方面は囮」と見なして黙殺してしまう。
しかもレビルに「無視」されたという理由で意地になって追撃をかけるなど、戦略性や協調性は薄い。
しかし攻撃のタイミングとしてはほぼベストに近く、連邦軍の背後を突いて大きなダメージを与えることに成功している。彼にとって唯一誤算があったとすれば、ドズルとぶつかったアムロたちの力量が映像版よりさらにすさまじかったことだろう。ちなみに本作のビグ・ザムによる撃墜スコアはジム一機。
ルウム戦役ではザクに乗って自ら最前線に飛び出したという。この時ギレンはたしなめながらも、珍しく苦笑したとか。


ガルマ・ザビ
「さすが、首席でいた男だ。私に華をもたせてくれるというのか?」
シャアの親友。シャアが若くして少佐にまでなれたのは彼の引き立てがあったかららしい。シャアからは「坊ちゃん」「ガルマがあんなのだからジオンは戦争に勝てない」などと散々に言われているが、友情は本物で、シャアも彼を謀殺しない。
ちなみにシャアにソーラ・レイのことを話していたらしい。


◇デギン・ソド・ザビ、ダルシア・バハロ
「あやつは、儂の汚点だ。好きにやってよい」
映像版とは逆にギレンとキシリアを死に追い込んだ二人。しかもデギンはザビ家一党で唯一生き残っている。デギンは理論家だったジオン・ダイクンの理想を具現化させる役割を果たしてきたという。ダルシアは「若手の秀才」「ニュータイプというなら彼のような人間」ということらしい。


◇マ・クベ
「ザクは、ロアム大尉とゼリュロス大尉だったな?」「二人の働きを有り難いと思うのだ、私は!」
キシリアに拾われたシャアのことを快く思っておらず、「男妾だ」「尻で成り上がった」などと陰湿な陰口を流したらしい。もっとも、シャアもシャアで「女(キシリア)の尻を追いかけているのがお似合いだ」などといっているのでお互い様。
テキサスの激戦ではテレビ版と逆にシャアに対して出撃を要請するが、なんと無視されてしまう。かろうじてワッケインのマゼランを撃沈させるものの、自らのチベも大破。直後にハヤトのガンキャノンに沈められた。
壺だけでなく観音菩薩の像もコレクションしているらしい。


◇ランドルフ・ワイゲルマン
「両雄、という言い方はあいませんが、キシリア様は鋭利すぎます」
ギレンの腹心の将校で階級は中将。ア・バオア・クー攻防戦にて要塞に赴任し、全指揮を執った。裏表のない若い将校だが、秀才。
ギレンは自分の増長を諫める意味も兼ねて彼のことを重用しており、曰く「諌言を得る友として信頼し、置いてある」とのこと。
ギレンがキシリアを殺すと決意したのも、上記の通り彼の発言がきっかけ*11。しかしそれによってランドルフもまた殺されることになってしまった。


ランバ・ラル
「総帥から直命を受けております」
ドズル配下ではなくギレン直属の突撃隊(S・S)の指揮官。主に内地の統率と情報収集、監察業務を行なう政治的な将校で、シャアの素性も調べ上げてギレンに密告。ギレンがシャアを殺せと命じるなら従うしかあるまいと考えるなど、ギレンに絶対の忠誠心を抱いている。
しかし、同時に恋人であるクラウレ・ハモンのことについて内心で劣等感も抱いており、ギレンに対して忠誠と嫌悪を同時に抱えている。そのためハモンのある行動を見逃しており、それが巡り巡ってギレンとキシリアの死を招くことになる。
……とまあこんな感じで映像版からは180度違うキャラ付けがなされている。アムロとの接触は本当にゼロ。グフとかにも乗らない。戦闘シーンはギレンに唆されてフレンドリーファイヤーをかましたソーラ・レイ主任を銃殺したときのみ。


◇クラウレ・ハモン
「とにかくこれをキシリア閣下に渡すようにと命じられたのです」
映像版ではラルと大人っぽい夫婦みたいな感じだったが、こっちでは元ジオン・ダイクンの愛人で、のちにギレンの愛人に移され、あげくランバに「与えられた」というものすっごい経歴となっている。しかしてその正体はダルシア首相の手駒、スパイ。
そんなこんなでギレンに憎悪があったらしく、ランバから漏れた話(ギレンはランバの前で口を滑らせてしまった)をダルシア首相に伝えた。さらにその後、デギンとダルシアの画策によってキシリアのもとに派遣され、キシリアがア・バオア・クーから脱出してギレンを殺す直接的な原因となる。
ある意味、小説版終盤の展開を作り上げたキーパーソンと言える。
ラルとは戦後結婚できたのだろうか。


◇セシリア・アイリーン
「いつもより……雄弁でいらっしゃいます。好きではありません」
ギレンの秘書で愛人。ギレンに対して破滅願望スレスレの競争心と忠誠心を抱いており、磨き抜いた才能と技量はギレンからも寵愛を受けるにいたっている。
ギレンからは「キシリアのいうニュータイプかも知れん」といわれていたが、最終版に本当にニュータイプ的な覚醒を果たし、キシリアの襲来を察知してしまう。
彼女は「ギレンが破滅するときは自分が生きる目標を失うときだ」と思っていたが……


◇ジオン・ダイクン、ジンバ・ラル
「宇宙の民よ。今こそ、己の眠れる力を宇宙という環境の中で目覚めさせよ。その時に、人は革新する!」
ジオン共和国建設の功労者たち。
ジオンについてギレンは「スターであった。二枚目であって情熱家。若い女性に一目惚れさせる」とのちのシャアに似た評価を下している。
ジオンのかつての演説も一部載せられており、宇宙移民者への希望、ジオンの言う「新しい社会の人類」ニュータイプ論の一端もうかがい知れる。
この演説やテーゼを聞いた若き日のギレンは感激し、そのジオンの理想を資金面・政治面で実現しようとする父デギンを心から尊敬し、その運動に全身全霊を尽くした。
しかし、ギレンとデギンはやがて「ジオンはアジテーターでしかなかった」と気づいてしまい、幻滅してしまう。ジオンの死もその辺が遠因らしい。
ジオン死後、残された遺児二人を預かったのがジンバ・ラルだが、その人格はかなり偏執的で、幼い子供に復讐を説き続けたことからセイラから嫌われており、ついには手放すことになった。この辺りは後にORIGIN版に吸収される。
ちなみにジンバはア・バオア・クーあたりになっても地球で生きているらしい。




【メカニック】


人物もストーリーも違うと、当然メカニックも違ってくる。
なおほとんどのモビルスーツにも共通する変更点として、本作で登場するものは16メートルくらい、と頭頂高が映像作品のものよりも一回り小さい。

+ 地球連邦軍
◇ガンダム
二号機三号機が登場。
アムロが最初に乗った二号機はテキサスコロニー内部でのエルメスとシャアザクの戦いで失われ、以後はマグネットコーティングを施された三号機、コード「G3」に乗る。
最終的に、ア・バオア・クーの乱戦の中で撃墜されてしまう。
プロトタイプガンダム(一号機)は出ません。ハブられました*12


ガンキャノン
全部で三機登場。小説版ではガンタンクが出てこないため、ペガサスに運用されるのも最初からガンキャノン二機となっている。ガンダムと同じ盾をもつ。
当初は残った二機のキャノンにリュウ、カイ、ハヤトがローテーションで乗っていたが、リュウが乗っていたときのキャノンが撃墜され、一機喪失。
その後もう一機が補充され、生き残りをあわせて「C108」「C109」コードを与えられる。ハヤトの109は撃墜されたが、カイの108は戦後まで生き延びた。


ペガサス、ペガサスジュニア
最初の母艦だったペガサスはテキサスコロニーでザンジバルと差し違えて沈み、代わりに二番艦のペガサスジュニアが配属される。
ちなみに「ホワイトベース・タイプ」といわれているのだが、ネームシップのはずのホワイトベースがなぜか存在しない。


ジム(GM)
連邦の主力量産機。無名兵士に加えて、ペガサスジュニアにもサーカス・マグガバンの324とキリア・マハの325が配備され、アムロたちとチームを組んだ。
どうもガンダムとは平行して開発されていたらしく、サイド7を出たペガサスがルナツーに来たときにはすでに実戦配備されていた。
よく「小説版のジムはガンダムよりも強い正当な量産機!」という情報が出ているが、実際はそうでもなく「カメラが単眼だから、近接戦ではジムのほうが照準をつけやすい」「ビームライフルを運用できるので攻撃力はガンダムと互角」程度しかメリットはなく、推進力はガンダムのほうが完全に上。
ほかの基本性能もガンダムやガンキャノンに及ばず、むしろブライトから「ひどい出来」呼ばわりされている。
しかしやはり腕次第で、キリアのジムはアムロたちとともに多数のMSを撃破し「天敵」のビグ・ザムにも痛撃を与えた。


ミスター・ボール
上の主砲はハイパーバズーカで、マニピュレーターは完全なモビルスーツ向きなのでビームライフルを運用できる。
その上やろうと思えば殴りつけることもできる、という魔改造ボール。
でもやっぱりボールはボール。活躍は本当にない。ちなみに名前は「ミスター」付きで公式


◇トマホーク
オリジナルの宇宙戦闘機(コスモファイター)。「槍のような形」らしい。
ミノフスキー粒子の時代にいまさら戦闘機かといわれるシーンもあるが、艦隊支援には戦闘機のほうがMSよりも有力。特に直進スピードに関してはMSよりずっと上で、機動力のMSのアドバンテージは小回りが利くことだけらしい。


◇ミデア、フライ・マンタ
映像版では地上用だが、こっちだと宇宙で運用できるようになっている。でもマチルダさんは途中からコロンブスに乗ってくるので影は薄い。



+ ジオン公国軍
ザク
白褐色という以外はあまり変わらないが、小説版に出てくるジオンのモビルスーツはザクとリック・ドムしかいない関係でかなり活躍している。アムロも油断した隙に苦戦することが多く、角突きは割と手強い。
シャアのザクはテキサスコロニーまで続投してガンダムと戦っているが、機体性能に格差がありすぎて防戦一方になってしまった*13
ザクに限った話ではないが、指の先には低出力ながらレーザー砲も仕込まれている。


リック・ドム
ザクの後継機。大出力バーニアによるスピードはザクの二倍を誇り、保有するビームバズーカの威力はムサイの主砲並み。ビーム攻撃には意味はないが装甲の厚さも優秀。
という映像版のやられっぷりからは考えられないほどの高性能機。アムロも初見では驚愕するほどの性能を誇る。
しかし完成して間もないため数は少なく、ニュータイプ部隊に優先的に回された。
不本意とはいえ、アムロを討ち取ったMS。


エルメス
二機まで登場。三番機以降も作ろうとはしていたようだが間に合わなかった。
二巻までに全滅してしまうが、サイコミュの干渉はアムロやシャアを成長させていった。


ビグ・ザム
映像版とは逆にドズル主導のもとソロモンで研究されていた。しかし映像版と違ってメガ粒子砲の数が少なく(26門→16門)、Iフィールドもないのでビームライフルで簡単に穴が空く。
本当にいいとこなしのまま簡単に撃墜されて終わった。


ブラウ・ブロ
シャリア最後の搭乗機。もうエルメスとジオングの役割を足して二倍したような活躍を見せ、あえなく撃墜された後も、シャリアとブラウ・ブロの意志はストーリーそのものを終局に導いた。ワイヤーの長さは一キロとも二キロとも書いてある。
テレビ版同様の脱出機能もあったのだが、コクピットを狙撃するアムロの前では意味をなさなかった。


ザンジバル
ネームシップのザンジバルはテキサスで撃沈するが、二番艦マダガスカルは生き残ったらしい。
ちなみにキシリアの母船のズワメルは最初「ザンジバル級」として出てくるが、なぜか途中からグワジン級に変わってしまった。


ムサイ
防御能力には問題はあるが、エンジンが離れているためフットワークは軽いと評判らしい。


◇ガウ、ドップ
なんと宇宙空母と宇宙戦闘機として登場。ドップのあのすさまじいデザインは地上では難儀するが、宇宙ではむしろ小回りの利く優秀な戦闘機となっている。


◇ソーラ・レイ
ギレンの陰謀に利用されて、すさまじく盛大なフレンドリーファイヤーをかました、戦勝の功労者にして最大の戦犯兵器。
レーザー(光)なのでサイド3本国からア・バオア・クーまで一瞬で届き、直径六キロの口径を掃射することで広い範囲を薙ぎ払える超兵器。威力はア・バオア・クーの下半分を消し飛ばしてしまった。



【その他】


  • ストーリーも設定も全然違うはずなのだが、なぜか角川スニーカー文庫版における各巻冒頭の挿絵はテレビ版の設定をアレンジしたのが描いてあり、完全な挿絵詐偽となっている。
    巻頭挿絵に出てくるガンタンクグフドムゴッグズゴッグビグロギャンゲルググジオング登場しません。
    登場人物紹介もかなりいい加減で、映像版の設定と小説本文の設定が混ざってる(ペガサス呼びとホワイトベース呼びが混ざっている)。
    登場人物のほとんども映像版より大人びているのに、挿絵もことごとくテレビ版の少年風な姿なので違和感が半端ない。

  • 一部誤字があり、アムロたちが「チベ二隻、サラミス四隻、ザク三機を撃破した」などと書いてあるシーンもある。「C108」なども表記の仕方がけっこう揺れている。

  • ジオン・ダイクンやデギン・ギレン親子の革命期のエピソードやルウム戦役の詳細(コロニー落とし作業を兼ねた決戦がザクの運用に不利であった)、レビルの「ジオンに兵なし」の演説など、映像作品では長らく描かれなかった設定も多い。
    また「アジテーターに過ぎない」というジオン・ダイクンや「偏執狂」ジンバ・ラルの設定など、THE ORIGINに与えた影響も少なくない。

  • シャアの設定も、いくつかはフル・フロンタルにオマージュされた部分がある*14。「ファッションに過ぎない」として仮面を外すくだりなどは本作にも同様のセリフがあるのは(発言の意味合いはともかく)上述の通りである。
    また、UCの原作者である福井晴敏氏の『ガンダム』とのファーストコンタクトは本作であったと語っており、フロンタルの他、アンジェロ・ザウパーマリーダ・クルスにも本作の要素*15が取り入れられたのはこれも大きいのだろう。

  • アムロの母であるカマリア・レイの名前や、ギレンのもう一人の弟サスロ・ザビ、セシリア・アイリーンの存在などが設定されたのも本作から。カマリアのヤバすぎる設定はさすがに本作のみだが……
    もちろん劇場版におけるガンキャノンのコードナンバーも本作由来のものである。

  • SF考証も随所でなされており、特にビーム兵器はかすめただけでも目に見えない粒子ビームが突き刺さり、装甲やシールドを融解する強力な兵器となっている。
    しかし強烈な光を発するので常に移動しながら撃たないと相手の反撃は必至な上、エンジンに直撃させないと爆発しない=手足や頭を撃っても撃墜にはなりにくいなどのデメリットもある。

  • 連邦政府はテレビ版以上に腐敗と堕落の組織とされており、ギレンの次に叩くべき、あるいは宇宙世紀という流れの中で切り捨てるべき組織とされている。とはいえ、作中では地上の様子がほとんど描かれないためピンと来ない。
    一方、連邦軍は人員のほとんどが、コロニー潰しで殺された人々の遺族や生き残りで構成されているため、ジオンに対する猛烈な戦意に満ちているとされる。

  • どうも科学技術は映像版よりも進歩しているらしく、「産毛まである義手(ただし硬さは金属そのまま)」や「マリリン・モンローそっくりのロボット」なんてのもいる。

  • 『ギレンの野望』のネオ・ジオン軍シナリオ、『GジェネDS』のifルート、『スパロボA』の「あちらの世界」におけるアムロの末路などゲーム作品のシナリオにも影響を与えている。
    中には逆シャアのアムロに対して「パツキンさんとよろしくやった」とおちょくって困惑させるというのものもあるけど(因みにアムロ曰く「一年戦争の時の俺に関するトンデモ本」とのこと)

  • ギャグ漫画『トニーたけざきのガンダム漫画』においても、オチで本作のネタが使われたことがある。

  • 実は小説版『機動戦士ガンダム』は二種類存在する。もう片方は朝日ソノラマから発売され、著者は中根真明氏。こちらも全三巻だが、内容はテレビ版とほぼ同じである。




「目の前の項目なんて飾りなんだ。鍵盤(キーボード)がなけりゃあ、追記も修正もできねえからついてんだ。
 頼りになるのは、眼だ! 眼え! わかるか? 眼ェ!
 手前ら、どいつもこいつも節穴だけの穴ぼこつけやがって、よくもWiki籠もりになろうってもんだ」


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