ボール(機動戦士ガンダム)

登録日:2009/08/12 Wed 18:56:59
更新日:2025/01/24 Fri 19:57:13
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「新型は一機だけのようだ。あとはリック・ドムかザクしかいない! やるぞ!!」




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                      ´ T  ̄ ̄ ̄ ”“''*ミ
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                           ̄  ̄


◆型式番号:RB-79
◆全高:12.8m
◆全備重量:25.0t
◆出力:400kW
◆推力:24,000kg
◆武装:180mm低反動キャノン砲/二連装15キャリバーキャノン砲

球体、そして二本の腕とキャノン砲。
それは簡素な作りでありながらロマンを感じさせる……


機動戦士ガンダムに登場する地球連邦軍の機体……戦闘用ポッドである。簡易式モビルスーツ(MS)とか廉価版MSとか言われたりもする。
なおティアンム提督のクルーの発言によると、一年戦争当時の連邦軍はこれを「MS」に分類している。



【基本設計】

見た目は丸い球体に二本のアーム、そして上にザニーにも採用されていた180mm低反動キャノン砲を乗っけただけのシンプルな作り。
「SP-W03 スペースポッド」という作業用ポッドを設計のベースとして、装甲で包みキャノン砲を搭載したもの。
コックピット・ブロック、生命維持装置、制御機器、燃料電池、姿勢制御用ロケット・モーター、基礎OSなどは原型機からほぼそのまま流用。
原型機であるスペースポッドをトラス・フレームで覆って装甲板で強化しており、スラスターも増設されかなり大型化している。

基本的には「人が乗ってる大砲」。いわば現代でいう宇宙用の自走砲(自力で走行できる大砲)である。
ジオンで言うところのマゼラアタックに近い立ち位置といえる。MSの支援用という立ち位置といい、ポンコツぶりといい

構造が簡素で複雑な機構を持たない事から非常に安く量産でき、生産コストはジムの1/4以下だとか。
余談ながら、ガンダムはジムの20倍の高コストとのことなので、単純計算でガンダム一機はボール80~100機分ということになる。
しかし、これがジムの1/4程度もの生産コストがかかるとか正気だろうか…
低コスト化の為にカメラや遠距離探知・航法システムも簡略化されており、熱核反応炉をもたず燃料電池で駆動するため、MS用の冷却設備をもたない艦艇でも運用が可能。
連邦の物量作戦においては製造に手間とコストのかかるジムを支援するべく、遠距離支援としてその一角を担っている。

◇長所

・操縦性

民間の作業用重機がベースなためか、操縦が容易というアドバンテージが最大の魅力。
MSと違いバッテリー駆動なので帰還後の排熱処理もいらず、甲板に繋留しても支障がないのも魅力だった。
また元が元なので整備性も非常に高く、比較的簡単に改修が可能となっている。

・攻撃面

180mと大口径なキャノン砲は、直撃すればMSを一撃で仕留める威力がある。(初期設定ではガンタンクと同系列の120mm。90mm説もあり)
作業用がベースながらセンサー有効半径は4000mとザクⅡ以上の性能を持ち、遠くから敵を認識できる。
そして発射された砲弾を、撃たれてから避けられる人間はそういない。まあガンダムの世界じゃ割りといるけど
一体一体は雑魚だが集団での一斉射撃は敵にとっても恐怖である。この弾幕を越えていけるのは一部のエースパイロット位だろう。
長距離砲としての運用がメインだが、中~短距離などは15(フィフティーン)キャリバー砲装備の僚機による連射弾幕で牽制可能。

・防御面

球状であるため避弾経始により実体弾なら運動エネルギーを分散させられ*1、小型故に全面投影面積が小さく被弾面積が少ない。
また正式採用より以前に造られた作業用試作機である先行量産型は、傾斜装甲もあってかなんと突撃しながらザク・マシンガンの正面直撃数発に耐えて見せた。
ちなみに小説版08小隊によると先行量産型はのちの正規量産型と比較して装甲・プロペラント容量など全てにおいて勝っているらしい。
装甲材質について一部初期書籍で「ルナチタニウム製」という設定があるが……?

・運動性

MSと違い燃料電池を採用しており、最高速度マッハ4。大気圏内時速相当として換算すると4240km/h。
なお地球を周回しているスペースデブリは最高で時速28000km/hに及ぶ。
備考として月面に向かったアポロが地球の軌道を離れた時の速度で時速40320km/h以上とされている*2

本機は前進せずとも上下左右に自在に動けるし後退も可能。航宙戦闘機には出来ない芸当であり、位置の微調整もできる。
この機動の利便性が功を奏し、ジム完成までの連邦軍の戦術の幅を大きく広げることに貢献した。
また全方位に高出力バーニアが搭載されており、固形燃料を爆薬並みの推力で噴射することで、宇宙空間では意外な機敏性を確保することも出来た。
メインスラスターを全力噴射しつつバーニアを兼用すれば、見た目よりも小回りがきくとのこと。但し燃費が悪いのが欠点で、あくまでも短距離での瞬発的移動に用途が限られる。
直進スピードに関してはジムとともに最前線に突っ込む場面が多くあり、熱核反応炉で動くMS並みの速度は出せる模様。

◇短所

・防御面

劇中でも散々描写されるが、防御力は低い

まず、ジムでさえ構えた盾ごとザクに破壊される場面があり、チタン系合金製ではいくらぶ厚くとも、堅牢さは見込めなかった。
そのため盾を構えたジムに比べれば装甲厚もまず劣り、被弾=ほぼコックピット直撃のボールでは棺桶扱いされるのも当然である。
ただ、仮にジムと同じチタン系合金製だとしても実はボールの本体はジムの胴体よりも大きい*3
なのでジムよりも装甲が厚い……というわけもなく、そんな設定もないし実際作中でも一際脆い。
他にも積まないといけないものが多々あることもあり、むしろ電装や燃料なども積むので装甲が薄い上に剥がれやすいという設定ならある。
更に後期バリエーションにはよりにもよって正面装甲を特に強化したものがあることからも*4、いずれにせよ装甲自慢ではないことは確実。

しかもボールは運動性が低いために回避運動がとり難く、MSよりは小さいからといって回避面もそれほどアテにはならない。
回避ができず材質も脆いときて、直撃を浴びて砕けるボールは非常に多かった。
あまつさえ、近接白兵・格闘戦に持ち込まれると対処のしようもない。場合によっては敵MSに蹴られることさえあった。
仮に機体が大破しなかったとしても、パイロットが無事では済まない可能性も高い*5
劇中を見る限り、蹴られた時点でアームやキャノンは千切れ飛び、エネルギーが漏出して爆発を起こしているので、結局当たったら死ぬと思っていい。

また防御面のもう一点として、コックピット正面がガラス窓*6ではないか?という点。
もし本当ならエラいことである。

一応正面の緑の部分はジムと同じくメインカメラで、その下は装甲化されている可能性もある。
この疑惑は劇中描写から、少なくとも『08小隊』本編で描かれた先行量産型の正面はガラス窓ではない。
単なる窓ではありえないちらつきが一瞬映っており、少なくとも単なるガラス窓ではありえない事がわかる。
ただ、『ガンダムイボルブ』に登場した通常のボールでは、キャノピーにグリッドなどを表示する描写があり、HUDのような構造になっているのかもしれない。
ちらつきが発生したとの理由で『08小隊』に登場した先行量産型の正面はガラス窓ではないと言っていいのかは疑問がある。
但し先行量産型は明らかに原作のボールからかなり逸脱した性能で描写されているので、あまり参考にならない。

そして2021年にクリア素材で作られた外装と内部フレームを忠実に再現したという触れ込みの「MG 1/100 ガンダムベース限定 ボール」が発売。
…なんとコックピット正面はやっぱり窓(目視用)だった事が判明した*7
ただ、2004年に発売されたMGの時点でキャノピーはクリア素材であったようではある。
更に窓部分は乗降用の上方開閉式正面ハッチでもあるので、これでは重装化できないどころか少しでも歪めば脱出すら不可能である。

ただし装甲という面で言えば、ボールに限らず当時のMS・兵器のほとんどは脆かった
例を挙げると
…など、いわゆる「まともな」MSでも、敵攻撃の直撃に耐えられた機種はほとんどない。
タフネスを発揮するのはガンダムやジオングなどの高価なワンオフ・高級試作機ぐらいである。

とはいえここらはあくまでも作劇上の都合であって*9、各種作品の描写や設定からもジムも盾を構えればザクマシンガン程度なら本来なら普通に防げる。
ボールは上記でも触れた先行量産型のみザクマシンガンの直撃に真っ向から耐えたが…。
これをして装甲材質について一部初期書籍で「ルナチタニウム製」という設定との関連も考えられる。
劇中ではどう見ても脆過ぎるし、実際には出典のポケット本だけの設定だろう*10
そもそもルナチタニウム合金自体がガンダムのコスト高騰の原因の一つで、かつジムもそこの部分を変更してコストを抑えた設定。
よってジムより廉価量産品設定のボールへの正式採用はそもそも有り得ないと思われる。
小説版では『特殊合金製』とされ性能も全て正式量産機より高い先行量産型ボールは、ガンダムのような試作品の可能性が高い。

・運動性

燃料電池には限界があるため駆動部を激しく動かせず、また手足の振りにより姿勢制御を行うAMBACもできないため運動性は非常に悪い。
「マッハ4」とやらは眉唾として、熱核融合炉を持たないことから*11推力が低く、燃費も悪い。
非常にシンプルなつくりの割に直進性能も速度が乗ればジムと編隊を組みつつ最前線まで突撃できる程度であり、戦闘機動など望むべくもない。
事実、高機動力で活躍したという場面や功績はほぼなく、なんなら簡単に捕捉される場面ばかりなので万全なMSとは比べものにならないと思われる。

つまり、運動性・機動性・回避性全般が悪いということである。
上述した通り、操縦性がいいことと全方位のバーニアを併用することで見た目よりは小回りがきくらしいのだが、それはあくまで目標があまり動かない工事作業的な話でしかない。
相手も目まぐるしく動く接近戦などついていけるはずもなく、バーニア自体の燃費も非常に悪かったそうな。

・攻撃面

180mm低反動キャノン砲による長距離砲撃は十二分に脅威であり、対艦射撃においての戦果は著しい。
……が、逆に中~短距離用と思われる15キャリバーは、左右連射できる以外はほぼ利点がない。
資料によっては2連装機銃と呼ばれていたり、公国軍の識別コードにはショートレンジ・マシン・キャノンと表記されていたりと適当な扱い。
シローが先行試作機で高機動ザクの頭を破壊しているのだが、ワイヤーで自機ごと雁字搦めにした上でのほぼゼロ距離連射という一種の自爆によるもの。
作品によってはスチール製のドラム缶さえ壊せないとかいうあんまりな描写さえある。

・生存性

上記の運動性の劣悪さや防御力の低さが合わさった結果、総合的な防御性能やパイロット生還率は極めて低かった
更にジムに比べると冗談のようなデザインから、「丸い棺桶」「動く棺桶」などといわれたのもむべなるかなではある。




◇運用面

とまあいろいろ言われはしたが、ウッディ大尉の言う通り、戦争とはただ一機で戦うわけではない。
ボールは生産コストや運用設備が小さく済み、パイロットの訓練も短期間で済む*12ことから短期間で凄まじい物量を送り出せる。

想像して欲しい。自在に動ける砲台…つまり宇宙における自走砲が短期間で大量に配備されているという恐ろしさを。
それらが敵の射程圏外、肉眼どころかセンサーに反応すらしない4kmの距離から強力なキャノン砲を乱射するのである。
もちろん陸と宇宙とでは話が違うが、それにしても数の暴力は侮れるものではない。
デブリ(瓦礫)ですら危険な宙域で強力な砲弾が超高速で闇の彼方から隕石群の如く襲ってくるのだから。
肉薄されるとほぼ無力だが、そこから先は相方であるジムの出番
集団で戦う事、そして砲台とその護衛という明確に分けられた役割により安定した戦力となるのだ。
逆に言ってしまえば護衛抜きのボールが単騎で敵MSに肉薄される事を想定しなければならない時点で、その戦線は戦術的に破綻している。
理想通りの運用を考えればそもそもボールにとって「装甲や運動性なんて飾り」なのである。詭弁とか言うな。

この戦術をジオン視点で見ると、特にジャイアント・バズによる一撃離脱戦法を是としていた大型機のリック・ドムは本機との相性が最悪である。
実際、ソロモン等では間合いに入る前に一方的に多数が撃墜されるという憂き目に遭っていた。

(設定がそれほど固まっていなかった原作では)更に冒頭のように「リック・ドムとザクⅡぐらいならやれる!」と判断して果敢に攻め込んだ兵士も多い。
また多くの機体が最前線まで突撃したこと、獰猛な「シャークマウス塗装」が人気であったことなど、搭乗する兵士の戦意・熱意も高いものがあった*13
…後方支援向きの性能でそれをやるのが正解かは別として。

近年では「性能が低い」という個性を生かして、搭乗者の操縦技能・戦術眼が優れていることを強調する演出としても用いられている。
パイロットの腕によっては強化されたザクを撃破できたり(ex.シロー・アマダ&先行量産型ボールの組み合わせ)、リック・ドムを6機も撃墜した例もある(ex.ウモン・サモン)。



さて実際の戦果だが、結果を見るに連邦軍の運用は(ある程度は)正解だったと言っていいだろう。
アウトレンジからの弾幕とジムによる連携は当時のジオン兵の質がかなり低迷したこともあってジオンに予想外の打撃を与えている。

ジオンはゲルググなど、単純な性能ではガンタンクはおろかガンダムに匹敵するMSを多く所有していた。
しかし肝心の乗り手の実力が伴っておらず、新型は操縦性の悪さもあって新兵に割り当てられる事も多々あった。
学徒動員等でかき集められた若年兵では「動かすのがやっと」という事も多かったのである。

対してボールは操縦が容易で照準も付けやすく、新兵でも十分な戦力になる。
更にジオンのMSよりも数と集団性に優れていたため、それなりの数の敵機を撃破できた。
また、二機が連携するだけでもガンタンク一機分の火力になるため、大型MAや戦艦など、的が大きく動きが鈍い相手には問題なく火力を発揮できた。

ジムの配備以前もセイバーフィッシュ等と連携したり、ボール単機種で編成されたりと幅広い運用方法で活用されている。
防衛にもサラミス級巡洋艦に搭載されパトロール艦隊を形成したりと、ジムの完成と普及までいろいろな活躍をした意義も大きい。
なお派生機の中にはゼロ距離射撃も可能な短距離連装式機関砲を取り付けた護衛型もあったものの、遠距離砲型と比較して目立った戦果は挙げられていない。

更に、元が作業用重機の改修機のため、補給など雑務の手伝い兵站拠点やソーラ・システムなどの設営などにもそのまま転用できた。


一年戦争中の連邦は、宇宙拠点が実質ルナツーしかなかった時期である。
悠長に工作作業とかはしていられず、速攻を掛けると決めた以上、迅速な作戦展開と攻撃が求められた。
その意味でボールは、求められる以上の「」を「素早く」配備でき、あらゆる作業に「転用」が利き、必要十分なだけの「戦力」も備えていた。
任務に十分適当、むしろあつらえたかのような「間尺に合った兵器」だったといえるだろう。

更に戦場ではなく戦争全体で見た場合、ボール配備により軍の再建が急速に行われたのも大きな成果である。
もちろん連邦は、ボールを生産せずジムだけで揃える戦略も採り得た。しかしその場合、全戦線に必要十分なジムを配備するには相当な時間を要しただろう。
ギレン・ザビが「速攻」と表現した*14連邦の反転攻勢も、少なくとも三ヶ月か半年は延びたはずである。
そうなると、もちろんジオンも軍備を再建する時間が生まれる。ゲルググの量産やガルバルディの開発、統合整備計画による各種効率化、そして新兵や学徒兵の訓練、ベテラン兵士の機種転換訓練といった面で。
レビル将軍の有名な演説「ジオンに兵なし」の通り、本編開始時にはジオン軍の熟練兵は枯渇していた。
実際、ア・バオア・クー防衛線の配備兵士のほとんどは新兵や学徒兵だったし、シャア配下にも新兵が多かったことが描写されている*15
キシリアが言及した「サイド3本国の戦力」も訓練中の新兵であったに違いない。
しかし、新兵でも訓練を積んでいけばいずれは熟達する
実際、戦後のジオン残党軍にはやたら腕利きの兵士も多いが、彼らも皆が皆最初から腕利きだった訳ではないだろう。戦後数年の活動を続ける内に嫌でも習熟していったのだ。
ボールの大量配備による連邦宇宙軍再建の時間短縮は、ジオン公国軍最大の問題にして地球連邦軍がつけいる隙だった「兵士の枯渇」という点をピンポイントで突くものだったのである。
もしボールの性能だけを見てジムの完全配備にこだわっていれば、"一年"戦争は一年では済まなくなり、「ジオン残党の敗残兵」が「ジオン公国軍のベテラン兵士」となって、地球連邦軍への損害も増したであろう。
ジオン残党軍はしばしば「生えてくる」といわれるほど多い。
それらがギレン独裁のジオン公国の元で実力・才能を発揮できなかったのは、ボールの採用によって連邦軍がジオン軍よりも早く再建し、戦争を一年で片付けたからなのである。


…もちろん、これらの運用と戦果はパイロットの犠牲を考慮していない事は留意すべきである
すさまじい物量を投入した上で未帰還となった機体は60%に達したという説もあり*16数多の命を湯水のように散らせて成り立つ兵器なのである
「間尺に合った兵器」とはあくまで書類上や軍官僚的な考え方なので現場からすればたまったものではない。
実際、様々な作品において現場の連邦兵からの評価は描写されている範囲では設定通りほぼ全員から(生存性の低さから)「丸い棺桶(コフィン・ボール)」「一つ目のマト(ワンアイズ・ターゲット)」「決戦兵器が聞いて呆れる超安上がりメカ」などと底辺の評価を受けている。
勿論これはジオン側も変わらず、同じような兵器であるオッゴが「ボールよりかは強い」と言う台詞に対して「比較をするならジムとしろ」と返すシーンもある。

連邦上層部としても「主力兵器として扱うのは一年戦争限定」と見ていたようで、終戦2年後の0083年ではアームを増設し、作業用として重んじている。
一方、ジムⅡを改修・増産あわせて10000機も配備。その後もジム系を主力とし、ボールの配備は長らくしなくなっていた。
……それから50年も経った0133年に、高コストのMSを量産した埋め合わせで3連キャノン砲付きのボールが登場するのはまた別の話。



◇バリエーション

RB-79ボールのバリエーションを参照。
シンプルな設計ゆえにバリエーションの豊富さは作中随一と言っていいだろう。



◇余談

アニメによくある都合で他のほぼ全ての作品・機体に言えることだが、本機が宇宙で主砲を撃っても反動の描写はほぼ無い。あっても真後ろに少し飛ぶ程度である。
胴体と主砲の位置関係からして他の機体以上に凄くグルングルン回りそうだが、そうはならない驚異の技術力が施されている。
ここらはまともに描写すると宇宙で白兵戦なんて完全に成り立たなくなるので仕方ないところだろう。

ゲーム中の活躍として、シミュレーションでは安価で大量生産出来るので物量作戦で力押し出来たり、アクションでは最新機VSボールといった感じで戦うことも………。

デザインは大河原邦夫氏だが、モデルとなった富野監督のラフスケッチの時点でほとんどデザインは完成していた模様。
まあこれはファーストに登場するメカニック全般に言える事ではあるが。

また、不朽の名作SF映画『2001年宇宙の旅』に登場するスペースポッドはボールと非常によく似ており、ボールの元ネタではないかと噂されているとか。*17



◇ゲームでのボール


本作ではMAに区分されている。両軍を問わず宇宙戦で大量に登場。設定通りザコ敵以外の何者でもない。
シャア編の追加ミッション「ハードコア」ではシャア専用ザクIIで文字通り蹴り倒すというネタのようなものがある。
だが、その分ザクマシンガンの使用に制限があり、撃墜数以上を発射すると作戦失敗になるルールが設けられている。
性質上、キャンペーン限定で制作された特別版『角川書店連合企画 特別編』では機体を変更しただけで作戦失敗になってしまう。
メインウェポン2は制限されないため、スキルで弾数を増やしたバズーカを持っていけば容易にクリアできるのは内緒。

ユニットとしては宇宙戦のチュートリアルをSランクでクリアすることで使用可能。
全ユニット中最高を誇る入手経験値補正500%が最大の特徴で、通常の5倍という効率で簡単に経験値を稼げる。
しかしながら性能面は本作ワースト級もいいところ。
原作通り耐久力も機動力も貧弱で、低レベルのクリスだと誇張なしで信じられないほど遅く、当然ながら直撃すればLv.30であっても即死は免れない。
とはいえ、パイロットの技量次第ではドムやゲルググとも渡り合うことも可能で、中にはG-3すら倒した猛者もいる模様。


初期の作品では、セイバーフィッシュやトリアーエズ等の航宙機より高価だったため、
原作のようなコスト面での利点が無く、微妙極まりない機体だった(ボール2部隊分のお値段でジムが1部隊作れてしまう)。
しかしタイトルが進むに従って、性能は据え置きで生産コストが下落していき、昨今では正しく数合わせユニットとして評価を上げてきている。
主な使用法はひたすら大量に生産し、射程2の砲撃を活かしてひたすら数で押す、という原作さながらの物量戦術である。
連邦軍に多い優秀な艦長達の指揮エリア内で運用できればなおよい。
当然MSに射程1まで近づかれるとボロクズのようにされるのも原作どおり。足が遅いので逃げることもままならない。
61式戦車なみの使い捨て前提ユニットなので、パイロットは絶対に乗せないように。


第4次』にて初登場。NPCのみ。
第4次のリメイク作とでもいうべき『F完結編』では自軍での運用が可能になったが、使用する意味は趣味を通り越して苦行の領域。

GC』(とリメイク作の『XO』)ではサイズSなので部位破壊要員として意外と使える。
08小隊1話のシローVSアイナも再現されているが、K型ではなく普通のボールで代用されている。


基本スペックは非常に低いが、主砲である180mmキャノン砲の射程が異常に長く、ザクやリック・ドム、ゲルググなどの射程圏外から一方的に砲撃できる。
もちろん、前衛の支援攻撃として使っても有効。射程が長いので大抵の味方で火力支援が可能なので便利。
また性能が低い分レベルアップのための必要経験値も少ないため、改造していくととんでもない破壊力をたたき出す機動要塞ともなる。
但し移動力そのものは低く、宇宙しか使えない(地上MAPでは出撃不可能)のもネック。要約すると61式戦車の宇宙版といったところ。
初期のシリーズでは最強レベル機体であるハロシリーズの設計元となった。

一方、設計でボールを作ろうとするとウイングゼロカスタムゴッドガンダムガンダムDXなどの最強クラス機体が必要であった。どこに技術が使われてるのだろう?



ボールとボールK型が実装。
○ボール
コスト120。宇宙空間専用。
ゲーム中最低コストの遠距離砲撃型である。
浮遊型。

メインは120mm低反動キャノン砲。AとBがある。
Aはコストが+30される。
Bはコストが加算されないがロック距離が短くなる(但しノーロックでの着弾位置は変わらない)

サブはワイヤーランチャー。ABCとある。
Aは敵の動きを制限させるが、威力は非常に低い。
Bはダメージが上がっているが、誘導性能が非常に低い。アップデートでコストは撤廃された。
Cはコストが10上がりダメージはA以上B以下だが、その誘導性能の高さから、自衛力の向上が計れる。
しかし、射出して戻るまでの間に隙が生じるため、くれぐれも外さないように。アップデートでコストが10減少された。

格闘はマジックハンド、もしくは追加弾A・B。
マジックハンドは純粋な格闘兵器。
追加弾は自衛が難しくなるかわりにMS戦をこなす事ができるようになる。

ダッシュ速度はコスト相応だが、ジャンプ力が高い

○ボールK型
コスト120の格闘機。宇宙空間専用。
陸戦型ジムよりダッシュ力が低いが、ジャンプ力は高い。

メインは連装機関砲A・B、もしくは180mmキャノン砲。
Aは威力が低いが、低バランサー機へのよろけが取りやすい。
Bは威力が多少上がっているものの、よろけは取り辛くなっている。
キャノン砲はザクⅠのバズーカ程度の性能。

サブはハンド・グレネイド、もしくは・ワイヤーランチャー。
ハンド・グレネイドは一発ダウンで自衛に向いている。
ワイヤーランチャーは機動低下の効果があるが、誘導せずコスト+20であるためか使用率は低い。

格闘はマニピュレーター。
陸戦型ジムと同様、格闘の射程が他の機体より5m長い。




タクティクスからユニバースまでで初代、先行量産型、改の計3機が参戦。

だが、例に漏れず機体性能は…先行量産型以外は『仲間召喚』を持ち、SP攻撃はボールが画面一杯にワラワラ出てきて敵を蜂の巣にしてくれる。
実は魔改造を施すと格闘の威力がガンダムMk-Ⅴを上回る。

後継作に当たるバトルアライアンスでは非プレイアブルになった。
だが一部のステージに残骸が転がっていたり、ジムのSPAで地上ステージだろうがお構いなしで呼び出される形で出演している。
呼ぶ側が呼ばれる側になったようだ。

DLCで登場。
このゲームは機体の性能がすべて同じで、元々の装甲や運動性能の低さは一切枷になることはない。
また、(関連パーツがないと簡略化されるが)必殺技を任意に設定できるので、サテライトキャノンを放つボールや月光蝶を放つボールなども可能。
パーツバリエーションとして、キャノン砲・ボール(頭部)・ボール(胴体)・ボール(脚部)が存在している。
ボール系を装着すると、その箇所がそっくりボールになる。ボール三兄弟とかも可能。他にも、サブのパーツとして腕部がある。
ちなみにキャノン砲は頭部扱いで、別MSでも頭部が丸々キャノン砲になる。ガンプラだからこその暴挙である。
難点は、腕部とバックパックが構成パーツとして存在せず、いずれかのボール1つでボールという形になってしまっているので、純粋なボールが構築不可能な点。
どうあがいてもボールの中からMSが突き破っている絵面にしかならない

その後、悪名高き次回作『Newガンダムブレイカー』では完全なボールを再現可能なパーツ構成に変更。
こちらでは頭部はキャノン固定、脚部は簡素なブースターだけというこれはこれで中々衝撃的な仕様に。
更にその後、「『3』の正統進化」を謳って発売された『ガンダムブレイカー4』でもボールに関しては『New』の方式が採用されている。
より自由度の増したアセンブル仕様から、脚部を丸々無視できるボール脚はヘンな作例を編み出し続ける一部の変態ネタビルダー御用達と専らの噂



◇SDガンダムでのボール

  • SDガンダム外伝
MSが意志を持ち「モビルスーツ族」という一つの種族、もしくはモンスターとして扱われている世界。
そんな世界でのボールは…なんとペット
聖機兵物語編では何と犬の鳴き声で吠えるシーンも確認されている。
デザインもカメラアイに黒目がついて丸っこい足が生えただけ。以上。カードにもなってない。
MS族でもモンスターでもない特異な存在だが、それが何かに影響したかはわからない。(「凶暴でないモンスター」の可能性もあるが)

  • SD戦国伝
下忍、もしくは足軽として「暴留」が登場。
人名というよりは種族名らしく、大量に存在する。

なお、ライバルは一頭身のザクという衝撃的すぎるビジュアルの足軽軍団「雑魚」。名は体を表しすぎである。



◇立体化

ガンプラ
放映当時は1/144と1/250の二機セットで売られた。
またLMで08小隊版が出ていた。
MGは、0083版、08小隊版、Ver.Ka、プロショップ限定版のバリエーションが発売されている。

HGUCは二個セットで販売された。
ちなみに武装は無反動砲と2連キャノン砲のコンパチ仕様。
これでファーストのTV版に登場したMSはHGUCでコンプリートされたことになる。
そろそろアッグシリーズ(アッグ、ジュアッグ、アッグガイ、ゾゴック)辺りが来てもおかしくない。
……とか言っていたらUC効果で本当にジュアッグとゾゴックがHGUCで発売

ちなみに、プレミアムバンダイの通販限定で0083版のHGUCボールが発売されていた。
なんと通常版とは成型色(Igloo)とマニピュレーター周りのパーツが異なる上におまけとして赤/水色のHGUCジム改が付属している。
はっきり言ってボールだけでも一般発売して貰いたい。
更にまたプレミアムバンダイ限定で「ガンダムビルドダイバーズ GIMM&BALL’s World Challenge」に登場する『ポリポッドボール』がなぜかMGで発売された。


◎SDガンダム
暴留は単独のキット化こそしていないが、年代を跨ぎ複数のキットにオマケとして付属しているため立体化自体には恵まれている。

◎その他
バンプレストのガンダム一番くじの脱戦士編には、ほぼ1/144スケールのボールの形をしたボールペン+メモホルダー…その名も「ボール・ペン」が存在した。
因みにキャノン砲が黒色のボールペンとなっている。
塗装は二種でTV版塗装とIgloo塗装があった。
当然A賞B賞などではないいわゆる『ハズレ賞品』なため、くじを何回もやると嫌でもこのボール・ペンが大量に当たった。
幸い見た目のクオリティはガンプラにひけを取らないため、ジムと一緒にたくさん並べて原作再現という楽しみ方はある。そして虚しくなること請け合い

◇パロディ

Dr.スランプ』の劇場版作品「ほよよ!宇宙大冒険」でマシリト軍との決戦でガッちゃんがボール型の小型宇宙船で出撃している。
もちろん中身がガッちゃんなので強いなんてもんじゃなく、アラレといっしょにマシリト軍の宇宙戦闘機を相手に無双状態。
この映画ではドムをパロった「リブギゴ」というモビルスーツも登場し、他にも様々なパロディに当時のヤマトやガンダム、スターウォーズなどの影響力の強さをうかがうことができる。




追記・修正はボールで一年戦争を生き抜いてからお願いします。

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最終更新:2025年01月24日 19:57

*1 ついでに言うと当時のジオンMSの武装はほとんどが実弾兵器。

*2 だが宇宙用のこの機体で、加速すればするほどあっという間に速くなる宇宙でマッハ4と言われてもよく分からないのが実情。

*3 ボールはジムと比較すると、人間で言えばちょうどバランスボールぐらいのサイズになる……はずなのだが、あからさまに小さくジムの胴体幅とほとんど同じようなのも作画の都合なのかたまにいる。

*4 正面装甲は最も厚くしてしかるべきなのにそこを重点的に強化したのだからお察しということである

*5 FGのセイラやアムロなど、コックピットの圧力に苦しむ例はある。彼らは死んでいないが、作品によっては莫大な推進による圧力でパイロット死亡しているケースや言及もよくされている。

*6 ガラスかガラスの様な可視光透過素材かは不明だが、いずれにせよ金属のような重装甲にはなり得ず衝撃で砕け散っている。

*7 しかもコクピット内部はほとんど余裕がなく、左右や後ろを確認するモニターらしき物も、それを設置するスペースさえもない。

*8 テレビ版ではバルカンはあくまでドムのカメラアイだけを破壊していた……のだが、劇場版では「Gファイターのビーム砲撃による撃破」シーンを流用したため、この描写が産まれた。なおテレビ版では黒い三連星のドムにバルカンが効かない描写もある。

*9 例えば原作のTV版では勝利の最大の立役者のはずなのにジムの活躍場面がほぼ無い

*10 ポケット本(1982年)には、ジムも含めた地球連邦軍の新兵器すべてが「ルナチタニウム製」だった。しかしジムが「生産コストの観点からチタン系合金で作られた」という設定に変わったこと、後のボール派生機がすべてチタン合金製となっていることから、通常のボールも設定が変わったとみるのが妥当か。

*11 熱核融合炉を持たないため、MSの使用する熱核ロケットの様に推進剤に高熱を添付し高温高圧にできないことから、推進剤の噴射速度が上がらず、推力が低下する、ということ。

*12 例えばコロニー出身で作業ポッド搭乗経験が有るなら軍用機としての相違点と武器の操作を覚えるだけでほぼ完全に扱える

*13 人口の半分を殺し、コロニーの大半を破壊し、地球にコロニー落としを仕掛け、故郷と家族を奪ったジオンに対する連邦兵の憎悪がそれほどまでに激しかったということでもある

*14 ドズルとの通信における発言「地球連邦は、ソロモンに速攻をかけてくる確立の方が高い」より。

*15 明確に新兵と言われたジーンやスレンダー、素人の対空砲火におののくクラウンなど。

*16 この手の情報は連邦軍の被害を誇張しがちであるが。例えばア・バオア・クー攻略戦での連邦軍の損害は4800機中4000機、とほぼ全滅か相打ちのように言われているが、実際の各作品の描写・設定ではそんな感じは見受けられない。

*17 特にマニュピレーターの形状が似ており、その中でも腕が二股に分かれた先行量産型はモロにスペースポッド似。