僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ユアネクスト

登録日:2024/08/09 Fri 04:20:37
更新日:2024/09/12 Thu 22:31:24
所要時間:約 15 分で読めます





象徴に挑め



象徴を超えろ───

次は僕たちだ!









僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ユアネクスト』とは、2024年8月2日に公開された日本のアニメ映画。
週刊少年ジャンプの同年8月5日発売の36・37号にて完結した堀越耕平の漫画『僕のヒーローアカデミア』の劇場版アニメ第4弾である。




概要


監督は前3作の長崎健司に代わり、『DARKER THAN BLACKシリーズ』でボンズと組んだ岡村天斎に変更。
今作では長崎氏は「アニメーションアドバイザー」の役職に就いている。
テレビシリーズと同じスタッフとして、脚本に黒田洋介、メインキャラクターデザインに馬越嘉彦、音楽に林ゆうきが携わっている。

今作は、本編における最終決戦の直前、具体的にはテレビアニメ第7期中、青山優雅が拘束された後~死柄木弔オール・フォー・ワン一派との第二次決戦の間の出来事に位置付けられる。*1
出久ら1年A組メンバーが決戦への準備を整えつつ周囲の治安維持を強化している中で、予想外の強敵が彼らに立ち塞がる。
その相対するヴィランとは、オールマイトに代わる新たな「象徴」を自称する「ダークマイト」
見た目はそっくりながらも何もかもがオールマイトとは正反対の「力」の化身に出久達は死力を賭して立ち向かう。
そんな中で、ダークマイトに利用される令嬢アンナと、彼女の命を狙う青年ジュリオのドラマも並行して描かれる。

今まさに原作本編が完結しようという時に、1980~2000年代に多く見られたジャンプ系アニメのアニオリ要素を彷彿とさせるダークマイトの登場にファンは色々な意味で恐れおののいた。
「令和の時代にダーク○○が出るなんて!」「オタクの妄想なんじゃないの?」等の意見も寄せられた。
しかし、ダークマイトの登場を提案したのは他でもない堀越先生本人であり、いざ映画が公開されるとそのあまりに強烈なキャラクター性にファンや観客からは賛否両論が寄せられている。*2
更に、時系列面も踏まえると死柄木をはじめとしたヴィランとの最終決戦前の1週間の間に雄英を襲撃するというヒーローと敵側の双方から見ても邪魔でしかないという迷惑極まりないキャラであり、本編で轟が荼毘の正体判明後にエンデヴァーに対して言っていた「後にしてくれ!」の台詞が思い浮かんだファンも多数いるとか。

第2作と第3作の4D版は初公開から少し遅れての上映開始となったのに対し、本作では公開当初から4DX・MX4Dでも同時上映され、更には劇場版シリーズでは初めてIMAXやドルビーシネマでも公開された。

OPはVaundyの「ホムンクルス」。公開前には同曲が主題歌として紹介されてたが、公開日にはEDにしてもう一つの主題歌であるVaundyの「GIFT」の情報が解禁された。
ちなみに「ホムンクルス」はタイトル名が後に記載してあるダークマイトの個性名を示唆しており、歌詞中の「俺が来た」というフレーズから「ダークマイトのテーマソングでは」と囁かれる事も。*1



ストーリー


死柄木弔率いる超常解放戦線とヒーローの全面戦争によるヒーローサイドの事実上の敗北、そしてオール・フォー・ワンの扇動による刑務所の囚人集団脱獄により日本の社会秩序は崩壊した。
しかし、アメリカのヒーロースターアンドストライプ自己犠牲が死柄木に与えたダメージにより、ヒーロー側は第二次決戦のための準備期間を設けられた。
緑谷出久雄英高校ヒーロー科の生徒もまた、荒廃した各地の治安維持をしつつ決戦への準備を進めていた。

そんな中、出久は逃走したダツゴクを追跡していたところ、一人の女性が人質にされているのを目撃する。
そこへ現れる、女性に銃弾を放った眼帯の青年。だが、直後に女性は謎の集団に奪われてしまった。
その集団を指揮していた男───彼の姿はオールマイトと瓜二つであった。
だが男は自らを「新たな象徴」と名乗るものの、自らの力を誇示し、周囲への被害すら厭わない傍若無人さは、あまりにオールマイトからかけ離れていた。
そして、「闇」を象徴する者として「ダークマイト」を名乗る男は、正体不明の“個性”を使って巨大な要塞を創造する。周囲にいた出久達A組の生徒も巻き込まれてしまった。

要塞の中で出久は攫われた女性・アンナを殺そうとした眼帯の青年・ジュリオと出会い、彼に協力を依頼する。
だがジュリオには、アンナ自身の「頼み」を遂行する使命があった。

アンナを利用し、暴虐の限りを尽くすダークマイト。彼の狙いは、遂にオールマイト自身へと向かう。
そして、オールマイトが託した真の「次なる象徴」───出久、爆豪、轟らA組の生徒は、偽りの象徴打倒へと動き出すのだった。



登場人物


雄英高校1年A組


ご存知主人公。オールマイトに後継者と見初められ、「オールマイトが笑顔で人々を救ける姿」に憧れた少年。
ワン・フォー・オールの“個性”は2ndを除いて全て使いこなせており、戦闘面では既に完成されつつある。
ダークマイトの語る、身勝手な次代の象徴論を真っ向から否定し、彼に全力で立ち向かう。
その中で、人質になったアンナと複雑な関係を持つジュリオに真摯に向き合い、彼の本当の想いを引き出そうとする。


ご存知大・爆・殺・神。出久のライバルにして、「オールマイトがどんな敵にでも勝つ姿」に憧れた少年。
しかし、今は「ただ勝つだけでは駄目だ」と自覚し、幼馴染との関係も含めて少しずつ成長していった。
入学当初は大雑把だったクラスメイトへの指示も、今作ではより的確で分かりやすいものとなっている。


ご存知二刀流ヒーロー。ヒーロー・エンデヴァーの息子にして、「なりたい自分としてのオールマイト」に憧れた少年。
冷凍・燃焼の“個性”の精度を上げており、最終決戦前の今作では爆豪とのコンビネーションも併せて自在に活用していた。
デボラが見せた夢では燈矢を含めた家族と団欒を過ごしていた。


出久と同じAチームのメンバー。
ジャングルのステージに入り込み、その後一人迷った出久を追ううちにデボラと遭遇、昏睡状態にさせられた。


爆豪と同じBチームのメンバー。
粗暴ながらも的確な爆豪の指示に従い、地道に敵の罠を突破していった。


轟と同じCチームのメンバー。
A組内では真っ先にデボラに遭遇してしまい、全員夢を見せられた。飯田と障子の夢が哀愁漂う。
ちなみに峰田と上鳴の夢は煩悩丸出し、梅雨ちゃんの夢は癒し。

ヒーローサイド


神野での戦いで全ての力を使い果たし、出久や次代のヒーロー達に「象徴」を託した元No.1ヒーロー。
だが、突如現れた自分の後継を名乗る男、ダークマイトに困惑。
通信での会話も全く的外れな御託ばかり喚かれ、彼を全否定した。
そして、ダークマイトから「古い世代」として排除の対象と扱われ、雄英高校ごと命を狙われる。

公開時に配布された入場者特典『Vol.Next』一問一答コーナーにてこれまで女性経験なしだったことが明かされている。


オールマイト引退後のNo.1で、現在は贖罪のために戦っている。
移動する巨大要塞の足止め役を買って出、最大火力を使って侵攻を止めようとする。


司令部にて対ダークマイトの作戦の指揮を執るヒーロー。
巨大要塞侵攻を止めるために現場にも出撃する。


根津校長が派遣した巨大要塞への斥候。
透過の“個性”を活用して要塞に侵入し、避難民の誘導にあたる。


  • 根津校長
雄英高校の司令塔。
向かってくる巨大要塞への対策を講じる。


  • シンリンカムイ
  • エッジショット
  • Mt.レディ
  • リューキュウ
  • ミルコ
  • バーニン
  • セメントス
巨大要塞戦の応援に駆け付けたヒーロー達。
主に避難民の救助や要塞内の巨大生物と戦う。


  • 歴代OFA継承者
OFAの意思として、出久の中で彼を見守る存在。
出久の夢の中に現れ、彼を現実に引き戻した。



ヴィランサイド


  • オール・フォー・ワン
  • 死柄木弔
今回の騒動は彼らの関与しているものではない。
この事実が判明したおかげでダークマイトの面倒臭さと傍迷惑さが更に上がった。
しかし彼らは虎視眈々と動く時を見計らっている……。


ゲストキャラ


  • ジュリオ・ガンディーニ
貴方達はお嬢様の“個性”がどういうものか
まるでわかっていません

CV:宮野真守
本作のもう1人の主人公。
出久が知り合った、右目の眼帯に燕尾服を身に纏い、身体の半分がサポートメカで構成されている謎の青年。ギザ歯。
口調こそ執事然とした慇懃なものだが、時折素の粗暴な口調が垣間見える。ヒーローのガキ様ですね
爆豪からのあだ名は「イケモブ」。
多数のギミックが内蔵された大型バイクを愛用し、他にも右腕内蔵の銃やマシンガン、小銃といった現代兵器を使いこなしている。
ダークマイトが利用するアンナを執拗に殺害しようとしているが、出久から彼の気持ちに迷いがあると見抜かれ阻止される。



  • アンナ・シェルビーノ
助けてくださってありがとうございます……

CV:生見愛瑠
ヨーロッパの財閥・シェルビーノ家の令嬢。かわいい。
ダークマイト率いるゴリーニファミリーに囚われの身となっており、その脱走中に出久達に発見され、今回の騒動に発展した。
デボラの“個性”で洗脳され、ダークマイトの言いなりになっており、彼らの思うがまま、ファミリーメンバーの“個性”を増幅させている。



  • アンナの父
CV:宇垣秀成
ジュリオの雇い主。能力が暴走してしまうアンナを不安に思っていたが、彼の働きに感謝していた。
しかし、本編前にゴリーニファミリーの襲撃によって殺されてしまう。


ゴリーニファミリー


  • ダークマイト
この俺が貴方を……象徴を引き継ぐ…!!

CV:三宅健太(二役)
本作のメインヴィラン。
オールマイトと瓜二つの外見をした謎の男で、ゴリーニファミリーの「ボス」と呼ばれている。
姿形はオールマイトそっくり。だが顔の陰影が微妙に異なる他、高級感のある白スーツを纏い指には金の指輪を複数はめており絶妙にパチモノ感や成金感が漂う。

熱狂的かつ偏執的なオールマイトフォロワーであり*3、オールマイトの「次は君だ」の宣言をテレビで見て曲解した結果「新しい象徴」を自称しだした傍迷惑な後継者気取りだが、粗暴、ナルシスト、傍若無人の3つが合わさった自己顕示欲の塊な内面は何一つとしてオールマイトと重ならない。
部下への容赦もなく、失敗した者には非情な粛清を下す。
「エンターテイナー」も自称しており、一挙一動が全て芝居じみ、あらゆる挙動をショーのように見せびらかすのが癖。
おまけにオールマイトの象徴性を「誰にも負けることの無い力」だと偏見に満ちた浅い解釈をしており、「力ある者は弱者を蹂躙して構わない」と歪んだ倫理観と合わせて如何なる非道にも手を染める生粋のヴィランだが、一方でオールマイトのことを尊敬・リスペクトする意志だけはブレないのがタチが悪い。

劇中でその人間性から「お前の持つ象徴は『闇』だ」とオールマイトから痛烈に批判されたことにテンションが上がり、自分からノリノリでダークマイト」と名乗るようになった。
その後は力を失ったオールマイトとオールマイトが積み上げてきた全てを破壊して、自分が新たな平和の象徴として君臨して日本を平定することを目論み、超巨大要塞を駆り雄英高校襲撃を敢行した。

投げた金貨から器物や巨大要塞を作り上げるという奇怪な“個性”を持っているが……?



  • デボラ・ゴリーニ
CV:寿美菜子
ゴリーニファミリーの幹部。唯一の女性メンバー。
帽子を被った高慢ちきな女性で、アンナを意のままに操っている。

個性:『ブレイン・リモード』
目で見た人間に自在な夢を見せ、感情・行動を操作する。
素の実力では一度に一人が限界だったが、アンナの“個性”による増強でその制限を撤廃している。


  • ブルーノ・ゴリーニ
CV:てらそままさき
ゴリーニファミリーの幹部。紳士風の中年男性。
知恵に長け紳士的な振る舞いを取りつつも慇懃無礼な口調が特徴。

個性:『ドレイン・スポット』
自分の周囲の物体の時間を遅延させる。ただし、自分と自分が触れたものには効果がなく自在に動いたり動かしたりできる。
弾丸ですら亀のように遅くすることが出来るが、あくまで動きを遅くするだけで止めることは出来ない。


  • パウロ・ゴリーニ
CV:小林裕介
ゴリーニファミリーの幹部。若い異形種の青年。
実はギンジに出し抜かれてアンナを取り逃してしまった張本人。
そのため、血気盛んな性格も相まって汚名返上するべく成果を上げようと必死になっている。

個性:『アン・イデオロギー』
特定の地点にいる人間の“個性”を消滅させる。対象地点は自在に操作可能。
そのため自身の周囲数メートルだけ“個性”が発動できる空間が存在しており、パウロ及び彼の仲間だけが一方的に“個性”を使って敵を嬲るという理不尽極まりない戦術を使用する。
ただし自身が移動してしまえば“個性”が発動できる空間も移動してしまうため、パウロ自身仲間との連携がとりづらいという欠点がある。
また、彼自身他に能力を持たないため、護衛となる仲間がいない状態で接近されれば脆い。


  • カミル・ゴリーニ
CV:小野友樹
ゴリーニファミリーの幹部。鼻長で背の低い男。
ダークマイトの側近として常に側に控えている。

個性:『回遊(エクスカーション)
任意の物体を自在に動かせる。
似たような“個性”を持つウーゴとは違って生物にも適用可能。
実は作中でダークマイトが生み出した巨大要塞が移動していたのは彼の“個性”によるものである。
勿論、元々はこんな大規模に行使できる“個性”ではなかったがアンナの強化によって広範囲に“個性”を行使できるようになった。


  • ウーゴ・ゴリーニ
CV:魚健
ゴリーニファミリーの幹部。小柄で手の長い猿のような老人。
ジルの肩に乗りながら敵を小馬鹿にしつつ挑発しながら戦い、翻弄する。

個性:『念動力(テレキネシス)
触れずに物体を動かす。ただし生物には適用できない。
作中では大量の瓦礫をぶつけるように操って攻撃を仕掛けていた。
どうやら一度に操れる物質の総量は決まっているらしいが、アンナの強化を受けることでその総量が大幅に増加した。


  • ジル・ゴリーニ
CV:なし
ゴリーニファミリーの幹部。ゴリラのような大男。
寡黙で、殆ど喋らない。

個性:『任意移動(エニー・テレポ)
自分の立ち位置を自在に瞬間移動できる。ただし目視できる場所でなければならない。
アンナの強化によって移動速度が大幅に上がっているらしく、これによって事実上の瞬間移動が可能になった。


  • サイモン・ゴリーニ
CV:菊池通武
ゴリーニファミリーの幹部。眼鏡をかけた中年男性。
ムードに合わせた衣装を用意し、何故かノリがいい。

個性:『怪物召喚(モンスター・サモン)
異形の怪物を召喚し、操る。一体一体の耐久性は低い。
アンナの強化によって一度に召喚できるモンスターの数が増えた。


  • 喰有銀次(ギンジ)
CV:堀井茶渡
ダツゴクの一人。アンナの“個性”に適合し、ゴリーニファミリーに加わっていた。
欲を出してアンナを奪い逃走したが、A組やジュリオと乱戦になり、最後はダークマイトに粛清された。

個性:『暴食』
腹から生えた大口で、あらゆる物体を捕食する。
アンナの“個性”の影響か、両肩からも口の生えた触手が飛び出していた。



用語集


  • ダークマイトの要塞
ダークマイトが自分の“個性”で創り出した超巨大な要塞。
当初は大量の電飾で彩られたクルーザー型飛行船だったが周囲の建物や自動車を取り込み、巨大な建造物へと成長した。
自己修復が著しく速く、外壁を破壊してもすぐ元通りになる。
内部は張りぼてではあるが、街や遊園地、ジャングルに山岳地帯など様々なロケーションで構成されている。
また外見には多数のダークマイトの彫刻像が立ち並んでおり、デザインセンスは若干悪趣味。


  • ジュリオのサポートメカ
ジュリオの肉体の半分を構成している機械。
様々な武器を内蔵している義手の右腕、スコープとなっている右目、そしてブースターが内蔵されている左足がある。
また、本人が気絶しても自動で活動する仕組みとなっている。


  • ゴリーニファミリー
ダークマイトが率いるヨーロッパ圏最大の犯罪組織。
構成員は当初2万人いたと言われるが、アンナの個性に適合するか否かの選別が行われ、現在ではダークマイトを含めて8人のみになった。
ただし、全員切り捨てられたようではなく、4人程名無しの構成員が事件の時に着いてきている。


  • 錬金兵
ダークマイトの個性によって作り出された怪物の兵隊。
マフィアさながらのスーツを身に包んでおり、顔に奇妙なマスクを付けている。
終盤では、数体ほどが融合し不気味に蠢くサンゴの様な物体となった。





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最終更新:2024年09月12日 22:31

*1 故に今作には1年A組のクラスメイトで唯一、青山は登場しない。ちなみにOPの「ホムンクルス」、TOHOシネマズで本作公開までの期間限定で流れた映画マナー講座の映像には登場している。

*2 ちなみに、当初今作はジュリオとアンナの2人の関係に焦点を当てた物語として考案されていたが、堀越先生の発案でダークマイトが物語に組み込まれ、現行のストーリーとなった経緯がある。

*3 自室には無数ものオールマイトの写真が部屋中に貼り付けられている。

*4 ただし、最終決戦においてデクたちによって素顔を晒され「俺の顔がぁぁぁ!!」と動揺し発狂していた事から変装時の顔はかなり気に入っていた模様。