ウイングマン


「チェイング!」

「悪!裂!ウイングマン!!」

週刊少年ジャンプで連載されていた桂正和氏の漫画『ウイングマン』に登場する変身ヒーロー。主人公の広野健太が変身する。
ロックマン』シリーズのボスキャラや『遊☆戯☆王デュエルモンスターズGX』の融合モンスターに居そうな名前だが無関係。
ウインマンならいるが
東映動画制作のアニメ版『夢戦士ウイングマン』における担当声優はベジータ役で知られる 堀川亮(現・堀川りょう) 氏で、同氏の声優デビュー作でもある。
2024年の実写ドラマ版ではまさかの藤岡真威人氏(藤岡弘、氏の長男)が起用された。

ヒーローに憧れる普通の男子中学生であった健太は、ある日学校からの帰宅途中に空から落ちて来た謎の美少女「アオイ」に出会う。
アオイを家に連れて帰り、彼女が持っていたノートに自分で考えたヒーロー「ウイングマン」を描くと、健太は本当に変身してしまう。
そのノートはアオイの父ラークが発明した、書いた事を現実化させるノート「ドリムノート」であった。
本物の変身ヒーローになれる能力を身に付けた健太は本作の舞台の異次元世界「ポドリムス」から来たアオイと共に、
三次元人(ポドリムス人から見た我々人類)の奴隷化とドリムノートの強奪を目論むポドリムスの独裁者・リメルに立ち向かう事となる。
アニメ版は当初の敵であるリメルを倒した所で幕を下ろしたが、原作では新たな侵略者ライエルとの戦いを経て物語は終了した。

(以上、Wikipediaより引用・改変)

恐れないで 人はみんな異次元の天使
今日こそなりたい 君だけのヒーロー

桂正和氏が高校生時代に執筆し、第19回手塚賞佳作を受賞した短編『ツバサ』等を元に、
『週刊少年ジャンプ』(集英社)誌上において1983年5・6合併号から1985年39号まで連載された。
ヒーローオタクの少年が、そのイマジネーションのままに「ぼくのかんがえた最高のヒーロー」を具現化して悪に立ち向かう!という、
当時としては一風変わった設定からヒット作品となり、『夢戦士ウイングマン』のタイトルでアニメ化もされた。
当時のアニメ化の常で設定改変も多かったためファンからの賛否はあったが
(原作者も「思うところはあった」とはした上で、媒体に合わせたアレンジも必要と判断を改めている)、
アニメでは「マッハチェイング(瞬間移動も可能な高速モード)」
「パワーチェイング(瞬間的なパワー増強が出来るハイパワー形態)」といったオリジナル形態が登場した。
……が、いずれも玩具DXウイングマンに対応した販促用フォームだったため、DXウイングマンが販売中止になると共に出番も無くなった。

+ 君にだけ「ウイングマン」の必殺技を教えてあげよう!お友達にはナイショだぞ!
  • クロムレイバー
ウイングマンの腰についている伸縮自在な剣。
開始当初は腰から外して伸びるとしか書いていなかったため、初戦で折れる。折れたぁッ!?
その後バリアを纏ったビームサーベルになる「バリアレイバー」や、ロープ化するクロムロープなどの追加機能が搭載された。
実写版では仮面ライダーBLACK RXのリボルクラッシュをイメージした必殺技「レイバーストレイズ」が追加されている。

  • コンティニパンチ
超高速で数十発のパンチを繰り出す。
ただし実装当初は健太の身体能力が付いていかず、全く制御できなかった。

  • ウイングル・クラッシュ
爪先を鋭く変形させて相手を貫くキック。
当然、実装当初はろくに制御できず、床に突き刺さって行動不能になった。

  • スパイラル・カット
額の飾りをアイスラッガーのように飛ばして敵を切り裂く。
何故か必ず上下逆に戻ってきてしまうため、それを元に戻して再装着する投擲フォームを編み出して対応。

  • ドライバーレイド
クロムレイバーを両手に構えてドリルのように回転して繰り出す体当たり。
貫通力が極めて高いため、地下に潜る時などにも使われた。

  • スプリクトフラッシュ
掌から発射する光線。両手から出せるし連射もできるが、そこまでの威力は無い。
どうやら熱光線らしく、終盤では数を束ねて金属を溶かすなどの活用法が見られた。

  • クロスバーン
両手をクロスさせて放つ打撃技。腕をクロスしてバーンと開くからクロスバーン。

  • ガーダー
プロテクター。緊急対応で用意された追加防具で、変身前やパーツ単位でも装着できる。
活躍自体はするのだが出番は少なく、急場しのぎのせいかしょっちゅう破壊された。
実写版では「フォームチェンジはヒーローの定番」という常識が定着した事で、
急場しのぎではなく明確なパワーアップフォームとして実装された。

  • ソーラーガーダー
ガーダーを発展進化させた追加装甲。
装着するとメタルヒーロー的な外観に変わり、光をエネルギーとした様々な兵器を使用可能になる。
ただ逆に光が無いとパワーを発揮できないため、夜間などは弱体化してしまう。

  • ファイナルビーム
両胸から発射する必殺光線
極めて威力は高いが、逆に三次元での戦いでは二次被害の問題で使用場所に悩まされる
また消費エネルギーも膨大なようで、健太への負担も大きい。

  • デルタエンド
ファイナルビームの反省を踏まえて考案された必殺技。
青、黄、赤の三人に分身し、クロムレイバーで構築したバリア「デプスゾーン」の中に敵を封印。
そして「ショック!」の掛け声と共に親指を下に向ける決めポーズで起爆、バリア内の敵を粉砕する。
バリアの外には一切影響が及ばないため、周辺被害を考慮する必要が無くなった。
弱点は技を発動すると後のモーションは自動で行われるため、発動中に敵に捕まると自分も技にかかって自爆してしまう事。
また変身時間のタイムリミットが近付いて赤くならないと使えない為、逆に変身時間制限が無いポドリムスでは使えなくなってしまった。

  • ヒートショック
デルタエンドの反省を踏まえて開発されたソーラーガーダーの必殺技。
エネルギー充填が完了した時にのみ使用でき、デスボールという光弾を発射して敵をデプスゾーンに封印。
クロムレイバーをソーラーガーダーに装着したヒートレイバーでデスボールごと敵を切り裂き、「ヒートショック!」の掛け声で起爆する。
バリア外に被害がもたらされないのはデルタエンドと同様。
ただし、デスボールが最初に命中したものを封じる特性から、他のものをぶつけられると回避されてしまう弱点がある。
またデスボールと言えどもエネルギーの塊のため、エネルギー吸収能力を持つ相手にはデプスゾーンを無効化されてしまう。

開始当初こそ、
  • 本当は赤いヒーローのつもりだったが、専用アイテム・ドリムペンが黒ペンだったため色が黒くなった
  • 性能を書いていなかったので変身しても強くならなかった(剣もギミックが凝ってるだけの棒きれ)
  • 流石に色々無理があったのか三次元での変身時間は10分のみ
  • 「チェイング!と叫べば変身」としか書いていなかったので、敵も「チェイング!」と叫べば変身出来た
  • 必殺技の威力が高すぎて三次元では気軽に撃てない → 新必殺技はバリア内に敵を閉じ込めて爆殺する形に
    • その新必殺技は体が赤くならないと使えないシステム(三色に分身して敵を包囲)だったため、変身時間の制限が無くなる異次元では使用不可能
  • ドリムノートに書いてある内容を消されると当然能力を失い、最悪変身できなくなる(ただし専用アイテム・ドリムイレーザーが必要)
    • 当然ノートのページを使い切ったら何かを消さない限りそれ以上の強化は出来ない
というように、ミスや設定の練り込み不足等で苦戦する展開もあったものの、
そうした穴を一つひとつ解決しつつ、戦いの激化に合わせて武装や能力を強化していく事で、
健太本人の成長と共にだんだんと本当のヒーローらしくなっていく姿は中々格好いい。
また、戦闘の際には時間が静止し上下も反転した魔空空間異空間「ポドリアルスペース」に移行したり、
状況によりロボット形態「ウイナルド」に変形して支援するハイテクバイク「ウイナア」など、
特撮ヒーロー作品へのオマージュもふんだんに含まれている。後継機の「ウイナアII世(ツー)」? それもアニオリだ
フォームチェンジ自体はアニメオリジナルだったが、ガーダー、ソーラーガーダーと呼ばれる装甲着用形態は原作でも登場しており、
原作後期のライエル戦ではソーラーガーダーが事実上の強化フォームとして活躍している。
まあソーラーガーダーのヒートウォッシャーは対雪男怪人用に後付した温水銃なのをうっかり忘れて他の敵にも撃ったり相変わらずだったけど

アオイ(三次元では夢あおい)や、健太の思い人である小川美紅とのラブコメやラッキースケベ、
二人に加えて健太の部活(アクションヒーロー部)仲間である森本桃子と、新聞部の布沢久美子が変身した、
美少女四人組の「ウイングガールズ」(美少女推しな見た目だが、おそらく元ネタは宇宙刑事の助手(ヒロイン))、
ウイングマンの存在を知って応援を続ける人気アイドルの美森くるみ、アオイをお姉様と慕う敵側の幼女人造人間リロ、
軟弱な男を嫌う入浴シーンも見せてくれた褐色肌美人悪の天才女博士ドクター・ヴィムなど、様々なタイプの女の子が健太の周りに現れ物語を彩り、
「変身ヒーローと美少女。そしてちょっとしたお色気を含むラブコメ」という桂正和氏のその後の作風がほぼ決定付けられた作品と言える
(ちなみにラブコメ推しは編集者・鳥嶋氏のアドバイスだとか。流石だなマシリト)。

恋愛面では憧れの女の子である美紅ちゃん、突然家に転がり込んできた年上の女性であるアオイさんとの三角関係を主軸にしており、
そこに幼少期から健太を思い続けている桃子、健太に無自覚な恋心を抱きはじめる久美子が加わるといった形になるが、
健太自身はふらふらせず、あくまで美紅一筋ながら、徐々にアオイにもドキドキする事が増え、これじゃいけないと悩んでいく事になる。
そしてヒーローとして戦う健太に惹かれていくアオイもポドリムス人であるため、三次元人的美少女な姿は擬態であり、
物語が進むにつれ健太に恋心を抱いた彼女は、ポドリムス人としての素顔を彼に見られる事を涙を流して嫌がり、
健太もそれを受けて彼女の素顔を決して見なかったため、どのような顔立ちなのかは最後まで明かされなかった。
このあたりもラブコメ推しでありつつ、健太が真摯に真面目に彼女たちと向き合っていった証拠の一つといえる。

とはいえ物語の本筋は、ただのヒーロー好き、ヒーローオタク(授業中にコスプレして騒ぎを起こす、傍目には迷惑ですらある)少年が、
突然現れた美少女アオイの導きを得て、悪の侵略者と戦う内に本当のヒーローとして成長していくといったもので、
序盤こそ今までの延長で周囲からも「いつもより気合の入ったヒーローごっこ」としか見られていなかった健太の戦いも、
中盤から侵略者達の作戦や攻勢が異次元世界から現実世界の周囲の人々に及ぶにつれて過酷さを増していき、
結果として終盤には、名実共に正義のヒーロー「ウイングマン」として人々に周知されていく様は実に胸熱である。
敵側も敵か味方か分からない好敵手キータクラーなど、様々な特撮「あるある」が詰め込まれている。

また、健太自身もヒーローオタクではあるものの、その正義感は幼少期から培ってきた正真正銘本物のそれで、
たとえ敵だろうと困っていたり助けを求められれば躊躇無く応じ、卑怯な真似は一切せず、正々堂々と悪に立ち向かっていく。
拾ったのが死神のノートでも健太なら大丈夫だと思う
子どもの頃には全く無関係な女の子の飼い犬が轢き逃げにあった際に本気で怒り、大人の犯人に食って掛かるも逃げられ、
「犯人を捕まえられなくてごめんなさい」「犬を助けてあげられなくてごめんなさい」と泣いて謝ったという事もある。
そんな健太だが成長するにつれ、それまで一緒に遊んできた周囲の友達から「ヒーローごっこなんてダサい」と言われてしまい、
「ごっこだからダメなんだ」「本当にヒーローにならなきゃいけないんだ」と決意した事で、オリジナルヒーローの「ウイングマン」が生まれた。
つまりドリムノートを手に入れる前から、広野健太は本物のウイングマンだったのだ。

この「現実的なヒーロー路線と特撮のお約束を分かった展開」は極めて評価が高く、
新必殺技デルタエンドの決めポーズ、親指を下に向けて「ショック!」と叫ぶ場面は、他局の「うる星やつら」ですらパロディを行ったほど。
またアニメのOP・EDが「ヒーローになろうとする少年とそれを見守る少女」をそれぞれの視点で描いた歌なのに加え、
劇中歌として流れる『悪!裂!ウイングマン』はまさにヒーローとしてのウイングマンの主題歌という構成になっており、
その他の楽曲も素晴らしいクオリティのものが揃っている事から、音楽面でも評価された作品となっている。

実写ドラマ版ではリブート版という事もあり、令和の時代に合わせたアレンジが導入され、健太の年齢も高校生に引き上げられた。
本作も東映が製作に関わっているので、自社の特撮作品について言及されたり、健太が前述のポドリアルスペースに「魔空空間!?」などと反応したり、
過去に発売された超合金などの玩具も健太のコレクションとして登場しており(原作でのコレクションはソフビが中心だった)、
健太は1980年戦隊であるデンジマン推しという2024年の高校生としてはかなりの濃い趣味をしている。デンジマン見てないとか本当人生損してるぞ!
コレクションの内訳はほとんどがスーパー戦隊関連であり、仮面ライダー関連の玩具はディケイドライバーのみと少ない。
メタ的には桂正和氏がコスプレ衣装を自作するほどに『電子戦隊デンジマン』の大ファンな事と、
連載当時の仮面ライダーシリーズは雑誌企画である『ZX』(映像化は1回だけ)ぐらいしかなかったのが理由なんだとか。
加えて余談ながらデンジマンに関わっていた特撮スタッフが本作でもスタッフとして参加しているなどの縁もある。
ただ、原作で幼少期の健太が好んでいたのは「ウルトラライダー」なる仮面ライダーの格好をしたウルトラマンとでも言うべきヒーローであったりする。
他、主人公が高校生なのに加え、当時に比べてコスプレ衣装制作技術が向上した事を受けて、
原作およびアニメでは「工作」感の強かったお手製ウイングマンスーツのクオリティもアップしている。
というか、当時原作者ご本人が自腹で製作したウイングマンスーツにそっくりなので、これも原作者監修済っぽい
また健太がウイングマンのアイデアをドリムノートに描き込む際、
アニメ版のOPだった『異次元ストーリー』のインスト版がBGMとして流れるというファンサービスも行われている。
ちなみにドラマ本編では「魔空空間」の単語の出典元のギャバンもヒーローショーの場面で登場している。
時代設定を考えると健太は彼の幼少期の現役戦隊への出演から『ギャバン』や『デンジマン』に興味を持ったのだろうか。

他にも変わった所では声優の緑川光氏が本作の大ファンである事で知られており、
青二プロダクション養成所時代のオーディションで、自由課題を「絶対に緊張するから慣れ親しんだ事をやろう」と決意し、
先輩たちの反対を押し切って「自己紹介の最中に見えない敵に襲われるも『チェイング!』と叫んで変身して敵を倒す」というものを実行。
その演技力と当時堀川亮氏が青二プロに所属していた事もあり、同席していた青二プロ社長や専務からは好評だったとの事。

ただ、連載後半のお色気描写増強には苦言を呈される事もあったようで、本作の終了後に連載された『超機動員ヴァンダー』は、
同じ変身ヒーロー物ながら、お色気描写が過剰気味だったためか、全二巻で打ち切りとなってしまった。
「胸に下げた変身アイテムを味方から専用の銃で撃たれる事で変身」「体の特定の箇所に剣を自ら突き刺す事で必殺技発動」など、
やたら自滅っぽい手順が組み込まれたギミックはこれはこれで面白かったのだが…。
と言うか、逆に変身ヒーロー要素を排除した恋愛漫画『I"s』や『電影少女(ビデオガール)』の方がヒットしていたりする*1
そしてその後は逆にお色気要素を排したヒーロー作品である『ZETMAN』や『TIGER&BUNNY』(ただし後者を桂作品と呼ぶには些か語弊があるが)などに関わっているため、
本作は『お色気や可愛い女の子』と『ヒーローもの』のバランスが奇跡的に保たれた、作者の魅力がいっぱいに詰まった傑作となっている。




MUGENにおけるウイングマン

K-Z氏による手描きキャラが公開されていたが、現在は氏のサイトの閉鎖により入手不可。
最終的な完成度は「??%」となっており、大ポトレカンフーマンのまま、
多くの技でSEが出ないといった難点があるが、必須スプライトは揃っており使用には問題無い。
操作方法は6ボタン方式で、「クロムレイバー」「スパイラル・カット」「デルタエンド」など、原作の技が一通り再現されている。
AIもデフォルトで搭載済み。

また、詳細は不明だが、改変版が複数確認されている。
ジャンプ漫画の主人公でトーナメントに出場したのもその内の一体で、
大ポトレがウイングマン本人に差し替えられ、アニメ版からのボイスが多数追加されている。
参考動画(2:10~)

出場大会



*1
今では信じられないかもしれないが
努力友情勝利」がキャッチフレーズだった当時の男臭い「週刊少年ジャンプ」で恋愛をメインに据えた漫画を描く事が許されたのは、
桂氏と『きまぐれオレンジ☆ロード』のまつもと泉氏だけだった
コメディの一環とか、添え物扱いで良ければ、他の作者も描いてはいるが。
 一方でサンデーマガジン、同じジャンプでも「月刊少年ジャンプ」なら当時からラブコメOK。チャンピオン?ジャンプ以上に男臭かったよ!)。
なお、既に『ウイングマン』で実績のある桂氏はともかく、新人のまつもと氏が例外判定された理由は不明。
最初は超能力ものという事で売り込んだのだろうか?


最終更新:2025年01月22日 05:11
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