KSDズズについて
2024年10月
- 10/20 『👑KSDズズ「不可能に近い」』
- 【GBCミュージカル編:[転:2]そこに確かにあった熱】
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+ 開く - BMC横の駐車場で起床した途端、リーとばったり出くわした。滑舌が悪いのにツッコまれた。
- バイクに乗り、無線に入る。名前を読み上げ……きいって誰?!
- 無線からパンプキングからの大型報告が聞こえた。マアの挨拶の後、自分も返事をした。続けてパンプキングから、24時に眠るが何かあるか、と問われ、ないと返答した。
- トウユンからリハは何時からやるのかと問われ、1時からと返した。
- ガソリンを入れながら、ミュージカルのテーマ曲が出来ないとぼやき、来ていた着信に折り返すトウユンの、流れ星を見た、という報告から盛り上がる無線に、何が流れ星だ、と悪態をついた。
- ひとりごとを話しているところに車が近付いてきた。誰だと思うか、と問われ、間違えたら轢くと言われてしまった。中尾彬さんですよね、と答えて、間違っていたら轢くと言いながら離れていく彼をしばらく待つ。轢かれた。ダウンした。間違えてたー!……ちなみに、竹森だとは知っていた。
- 通りすがりの、退勤後の元難波がそばに寄り添ってくれた。よつはがじきに到着し、搬送してくれた。彼女に事情を説明したところ、困惑してしまった。治療後、レギオンまで送ってくれた。
- Stateを見た後、歌詞のメモを見ながら“きっとできるさ~”と歌った。ぴん子にコードを教えてもらったのだが、それをウクレレで弾くのは難しい。
- 松葉杖が取れたので、車に乗ってタバコ屋へ行くと、元難波がいた。NEKOを10個頼み、何か楽器を弾けるか、と訊いてみたが、昔アコギを弾いていたことを教えてもらった。コードが分からないんだ、とぼやいたところ、彼女も力になれないとがっくりしていた。ダンスなら出来るというが、それはお断りした。救急隊の学園祭のチラシをもらった。
- タンクローリーにぶつかりながらTwiXの可愛らしい飲食店のポスターを眺め、再び車にぶつかって宙を舞いながら、和菓子喫茶よすがへ向かった。ろぎあが店の前に居たので、彼女と共に店内へ入った。
- 救急隊の紹介で、防音室があると訊いて来たとろぎあに話したところ、カンヅメ部屋があると教えてもらった。事情によっては無償で貸し出すと言われて、歌の練習をしたいのだが街中では邪魔が入る、と話したところ、創作活動においては無償利用が出来るとのことなので、使わせてもらうことにした。せっかくなので飲食物もいただくことにし、秋~!月見~!(※「秋─月見─」である。決して伸ばし棒ではない。)を頼んだ。
- カンヅメ部屋に腰を落ち着け、ウクレレを抱いた。出来るかー!とコードに悲鳴を上げ、練習を続けた。
- ぴん子から、本部の屋上にて練習中とのことで呼び出しを受けた。ろぎあに声をかけて感謝を伝え、店を後にした。
- 癖でFIBへ向かった後、はたと思い出し、無線で場所を再確認したところ、本部の方だったので方向転換した。
- 大声で歌いながらスケスケ屋上へ行くと、ぴん子、トウユン、サトシ、こはる、ダミアンが居た。どうやら、ぴん子はトウユンとダミアンと共にキャバ曲のコードを考えており、サトシとこはるはそれを聞きつつベースの練習をしているようだ。
- ぴん子が前奏を披露してくれて、その進化具合に驚いた。だが、ぴん子から延々とコード名だけ送られてくるため、頭がおかしくなりそうだ。
- サビ部分での転調はどうしようかという話になった。声域を考えた結果、転調はなしになった。そこでトウユンが途中離脱した。
- ミュージカルのテーマ曲に苦戦しているという話をぴん子とダミアンにした。
- 音を聞きながら考えていたところ、こはるとサトシが寄ってきて、キラキラ星を演奏してくれた。拍手した。テーマ曲のベースラインは簡単そうだとこはるに伝えた。
- ズズが歌ったメロディラインを、ぴん子とダミアンが耳コピで音を拾ってくれた。
- ぴん子が一旦打ち込んだものを修正しているところでハイテンションなフラムの声が聞こえて驚いた。どうやらのぼり方が分からなかったらしい。
- じきに屋上に辿り着いたフラムが耳元で囁いてきた。嫌なASMR、と言いつつ、フラムも叩くんだよ、と彼に告げた。楽器隊の一員です。
- 今まさに楽譜が仕上がっているという話をフラムにしていたところ、戻ってきていたトウユンが、すごいやん、と零し、それに対してお前が言うな、言わせるために言ったのか、などの声があがった。トウユンは、誰のために頑張ったと思っているのだと抗議していた。
- 一旦ぴん子が流したものに修正を入れつつ、フラムがフィーリングで合わせる時間が続いた。
- 時間になったのでテントへ行こうと無線で促し、急ぐあまり屋上から飛び降りてダウンした。
- フラムが普通にズズを轢きかけた。皆待っているからと促した。一番の主役が、と言うマアに、オレが居なくても出来るから、と話した。ましろが助けに来たので、現場蘇生にしてもらった。
- サーカステントへ向かうヘリの中で、不安でいっぱいだとぼやいた。時間が足りない。
- 日々が言い回しを変えて良いかという打診をしてきたので、あんな台本変えて良い、と話した。横からは、良い台本なのにそんなことを言うなと聞こえてきた。
- ズズが出る幕をマアに代わってもらえないかと伝えた。せっかくの出番なのだがズズが出なくて良いのか、というマアに、パンクしそうだから出てほしいと話した。助けてあげて、というサトシの後押しもあり、マアに頼むこととなった。だが、マアのリズム感に難がありそうなので、一旦手本を見せてやってもらったところ、何とかリズム感はありそうだった。リズムはフラムにやってもらう予定なので、姿の見えない彼を無線で呼んだ。
- 綱渡りをしていたフラムが降りてきたので、彼に流れを伝えた。ズズが作った台本に驚嘆された。
- ハンバーガーが一人二役のチエリとイオリの代役で、シーン1。再現のため、トウユンがギターを弾き、ズズがデヤンスの代役だ。小学生のいじめっ子のような感じね、と納得したチエリが頷いていた。
- 六法を使ったリハをやりたいとのことで、一旦全部通すことにした。音源技術はまた後日。全員裏手へ行くように促し、ステージを見上げた。
- 通す前に、ハンバーガーにまめもんの代役をやってもらうことにし、ズズがやっていた役を頼んだマアとのシーンをやってもらうことにした。が、フラムがドラムを叩いたところで音声問題が発生。歪んで聞こえない可能性、六法、シンク、など色々な機器の仕組み、人数制限、聴き手側の調整など、あらゆる方法を考える。
- 結局、シンクの様子を見て考える、と結論づけた。今日は六法を使い、音響確認をすることとした。
- ひとまず、フル…フラムにドラムを叩いてもらい、シーン4。マア、採用!
- さて、通そう、というこのタイミングでマックが起床し、思わずため息を吐いた。ハンバーガーに今日居ない人の代役を頼み、サーカステントに合流したマックも一部、音響をやってくれることとなった。天乃進がズズに託してくれた歌から、幕があがった。
【リハの様子は衛星をご覧ください】
- 通しきって、時間は33分。前回サーカスは40分であり、時間に余裕があるため、トウユンの案を採用して事故紹介の時間を作ることとした。ステージ上での立ち位置などのアドバイスをした。音響に少々難があったために、そこだけ指摘しつつ、シーンを辿りながらアドバイスを続けた。
- アイドル曲フルコーラスは長いかもしれないというトウユンの指摘を受け、頷いた。さらに、最後にももこがアイドルになるきっかけと他のキャラとの関わりが薄いというアドバイスを受けて、保留にしている部分で繋ぐこととした。
- 提案が、と挙手するぴん子が言い、ズズが出てくるシーンが唐突だということ、プロデューサー役としてももこを引っ張る役にすれば良いのではと提案された。
- マックに意見を求めると、疲れているか、とマックが皆に問いかけた。パワーが足りない、もっと頑張って届けるつもりでやらないと、自分のものになっていない、自分のシーンについて考えた方が良い、キングスターの問いかけにもう少し答える人が居ても良い、と指摘をした。
「見せましょう、GBCを」
- 個別シーンの指導は投げっぱなしでは良くない、とズズに伝えた上で、自分が口を出すとズズが仕切っている意味が無いから、とマックは続けた。
- 次の稽古の日はデヤンスの誕生日だとのことだった。
- マアが眠るというので、彼女のシーン指導をすることにした。ズズが本来やっていたので、まめもんの代役ハンバーガーと二人で手本を見せることにする。ズズがももこの代役をしたところハンバーガーにツッコまれたので、ももこ当人を呼んだ。ももこ、ズズ、ハンバーガーによりシーン再現をし、マアにアドバイスをした。
- こはるがレンとのドゥエットを録音にするという報告をしてくれた。
- マックはどうやら様子見に起きてくれたようで、この後眠る旨を無線で伝えていた。
- ひろしが寄ってきたのでどうかしたかと問い、彼のシーンについて話した。
- ももこがこの後も起きていた方が良いかと問うので、起きてほしいと伝えた。
- マアに、彼女に求めているクオリティは高いものだから、と笑いかけた。そして一旦眠りについた。
- サーカステントにて再起床。ダミアンに大丈夫かと問われ、大丈夫だと頷いた後、通せたのが大きいと話した。気にかかるのは、音響面だ。技術面に関しては、皆を信じているから。
- 起きている人からやろう、と独り言ち、チエリを見遣る。チエリはイオリと一緒でなければ、と話せば、イオリはチエリに合わせるのが上手いから、とチエリが笑っていた。私じゃだめなのよ、とハンバーガーが隣で言っていた。
- 劇中での“ももこ”の感情、ステージでの立ち位置が知りたい、と言うので、全部やろうと伝えた。
- サトシから、台詞を足したいと打診があり、了承した。
- サトシ、日々、ももこのシーンでは、ももこに夢を与えるような表現にしたい、と三人に話した。日々の解釈に頷き、サトシと日々には“幸せ”を表現してほしい、と伝えた。しかも難しいことに、前回のサーカスと繋がっていることを、言わずに伝えなければならない。
- サトシ日々ももこの3人が揃っているので、そのシーンをやってもらうことにした。彼等の演技を見ながら、空腹に目が霞みながらも、“ももこ”の心情描写も含めて細かく指摘していく。サトシと日々の表現する幸せは大袈裟に分かりやすく。良さげになったので、シーンを区切った。
- 続けて客席を見回し、ダミアンを呼ぶ。ももこに時間は大丈夫か問いかけ、了承を得た後、ぴん子がらみの代役を務める形で公務員のシーンをやってもらうことになった。一度区切って立ち位置の確認をした後、ハンバーガーとぴん子が話し中のようなので、ダミアンとももこのみでもう一度やってもらうことにした。ダミアンが台詞を何度も間違えて突っ伏すのに笑いながらも、“警察官・ダミアン”のトーンのアドバイスをした。
- ぴん子がその場を離れたので、ズズがらみの代役を務め、もう一度。セリフを再考している最中にズズが空腹でダウンした。見かねたのか、ハンバーガーがらみの代役を買って出てくれた。
- 空腹に唸りながらも、ステージの下から指導をしていたところ、サーカステント前に居た面々と共にペティが来てくれた。治してもらった後、ペティがやけに冷たく、何かやったかな、と独り言ちた。
- 気を取り直して公務員のシーンをやってもらい、演技指導を続けた。ダミアンの警察らしさが柔らかすぎるとアドバイスをした。もう一度やってもらい、概ね良くなったところでシーンを区切った。ももこのセリフの間についても指摘したところ、彼女なりの解釈があったらしく、彼女とすり合わせをすることにした。
- トウユンから、ももことの演技感の違いが気になったからオーバーな掛け合いを試したいという申し出があったので、メカニックのシーンをやってもらうことになった。ズズの“メカニック・トウユン”の解釈を再現して伝え、それはトウユンの歌を聴いた上で再考したことを話した。
- もう一度セリフを変えて演じたところ違ったので、二人のアドリブ力に賭けて、台本無しで演じてもらうことにした。見ないで行くか、断然良い、と伝えた。と、後ろから見ていたマックが、随分ブラッシュアップされた、この明るさを皆持たないといけない、と指摘していた。一旦、この二人のシーンは区切ることにした。
- このシーンより劣ってはいけない、と周囲に言うマック。日々とサトシのシーンが気になったと言うマックに、既に指導したことを日々と共に伝えた。
- サトシを呼び、サトシ日々ももこのシーンをマックに見せることにした。サトシの歌にギターがほしく、マックに弾けるか問うたところ、サトシの声色からかメロディラインが掴めていないようで、マックによる歌の指導が入った。ズズが原曲を歌う形でマックにメロディラインを伝えると、キーを変えた方が良いのではという指摘があった。歌いにくい箇所はマックがアレンジを加えていた。
- マックが前奏を弾きはじめ、サトシが再び歌った。合ってた?と問うサトシに、合ってないな、と言うマック。練習をすれば大丈夫、とのことで、シーンは区切った。
- マックがひろしとズズに声をかけ、海岸でのシーンについて話をする。酔っていてもはっきりと歌うように、とひろしに言った上で、立ち振る舞いをキングスターが指導しなければ、と指摘を受けた。景色は見えたから、あとはキングスターの指示を仰ぐように、とマックは言った。
- 街も眠る時刻を迎え、ありがとうございました、と稽古は解散となった。そのままサーカステントで合宿だ、と言うイオリの声を耳に、ヘロヘロになりながら眠りについた。夢の中ではぴん子の作った、ミュージカルのテーマ曲の音源が鳴り響いていた。
- 10/22 『👑KSDズズ「遅くなりました!」』
- 【GBCミュージカル編:[転:3]臆病者の言の葉】
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+ 開く - サーカステントにて起床。無線を入れて挨拶をしたところ、喫茶店に来るように団員達から言われた。原付に乗って急ぎ、ご機嫌に歌いながらFIBにあるトウユンのカフェに向かう。はやく、と急かすハンバーガーの声を耳に、話し合いをしていたであろう団員達の輪に交ざった。真ん中に来て椅子に座るように促され、困惑しながらも座った。
- ミュージカルの話をしていました、とトウユンが切り出した。良いミュージカルを作るには時間が足りない、と言うトウユンに、ズズは現状をどう思っているかと問いかけられた。一旦、ネケが来るのを待つことにするが、彼は所用があるようだ。
- 今のミュージカルについて、このリハーサルを突き詰めていったら前回のサーカスを越えたものを作ることが出来るか、とトウユンに改めて問いかけられる。言葉を選ぼうと口籠もれば、こはるやトウユンからはっきりと言ってほしいと言われて、分かった、と口を開いた。
- 前回よりも、規模は超えられる。見せられるものを作ることも出来る。だが、満足できるものが作れるかと言えば、そうではない。前回のサーカスより、平均的な熱を感じないからだ、と話した。そして、GBCを見せつけようという思いはあるが、自分は“ボス”ではない、と続けた。
- だが、それに対し、熱が足りないと思っているのに何故それを言わないのか、座長でしょ、サーカスで言ってくれたのは何だったの、ズズが迷惑をかけまいと一人で頑張るくらいに優しいのは知っている、でもミュージカルは一人で作るものではないじゃん、とトウユンに畳みかけるように言われた。その通りだと思う、と返す語尾は震えた。
- サーカステントであの日言ってくれた言葉が嬉しかった、と続けるトウユン。現状では難しいから、延期をした方が良いと彼は思ったのだという。しばしの沈黙を挟み、そうだよな、と独り言ち、ごめんね、と零した。上手くいかないね、と。
- 自分は、プロじゃない。それなりに勉強して、こうした方が良いと言うけれど、マクドナルドやトウユンほど自信がないからあまり誰かに何かを言うことが出来ない。そもそも“芸人”だって、自分で勝手に作っただけの職業で、自分は普通の奴だ、と続けた。
- GBCが全員で何かをすることが少ないのがいやだったからこそ、やりましょう、と言ったけれど、正直「座長」はやりたくなかった、と話した。自分に自信がないからだ。例えば、誰かの為にやるのなら十二分に力は発揮できるだろう。だが、ゼロから何かを作り出し、誰かを率いる立場というのは、この街に来る前から苦手だったから。……だから、あの時本当は断りたかった、んだけど。
「オレも、変わんなきゃなって思って」
- 変わるためのってこと、とデヤンスが言うのに返して、変わるために頑張ろうと思っていたんだけれど、とそこで言葉を区切ったところ、トウユンが口を開いた。彼は、これまで理論ではなく感覚で作ってきたズズが、不安だっただろうに作り上げたことを凄いと思う、と言い、このタイミングで言い出したことを申し訳ないと思うと謝罪した。トウユンは、ズズにもっと頼ってほしかった、と話した。
- ありがとう、とトウユンの気持ちを受け取った上で、頼るのは無理なんだ、と零した。どうしてかは分からない。信頼してないとかじゃないよね、とひろしに問われ、信頼…、と言葉に詰まりながら、信頼していないのかもしれない、と思わず零せば、驚きの声。だがそこで、違うでしょ、皆が離れていくのが怖いんでしょ、とダミアンが口を挟んだ。ウザいと思われるのが嫌なんだろう、と彼女は言った。
- そこで日々が口を開く。マックは無茶をしても、それが嫌で辞めていった人はいない、耐えられる程に強い人間が揃って居るから振ってほしい、と言う彼女。それに、分かるよ、と言いながらも、出来ないんだと続けた。これはキングスターにとっての“課題”だ。良くないところだと、自分でも分かっている。
- ポスターを頼ってくれたのが嬉しかった、と言うまめもんに、少しずつ頼るようにはしている、と返した。頼ることが出来なくて自分の中で色々あったのだろう、と言うデヤンスに、一気にはねぇ、と零したひろし。それに続くように、トウユンが口を開く。どうやら、ズズが最近人を頼っているというのは、伝わっていることらしい。その言葉を受け、そっか、頼っているつもりだったんだけど、難しいんだよな、と繰り返した。
- まめもんが、ズズの抱えるタスク量は知っていたから、それに声をかけられていればよかった、と話した。そうだけどさ、と呟けば、トウユンが、人の気質は変えられないが、座長として立ったのだったら、人を使うという仕事を全うすべきだと厳しい言葉をかけた。頼る頼らないではなく、GBCで一緒に作り上げるからこそ、ズズがやらねばやらないことだ。例え変われなくて、それが偽りでも、心を鬼にして、優しさを見せずに、座長としてやってほしい、と続けた。
- フラムが、人に触れないのは気に病むことでは無い、と話す。誰かに仕事を振るというのは、信頼ではなく管理の技術だ、気質ではなく、やってみて練習すれば上手くなることだ、と続けた。だから、今出来なくて思い悩むことではない、と言った。
- レンが、今のままミュージカルを予定通りにやるか否かを問う。ズズとしては、本当は予定通りにやりたい、と言うが、皆が今それほどに思っているかが分からない、と不安な声を零す。それに対し、もし思っていなかったらこんなに起きていない、と言うレンに、起きるようになったよ、とももこも続けた。それは、見ているから分かる、けど、全員がそうなのか、それがズズの気がかりだ。
- ミュージカルに賭ける思いはたくさんある。マックも大変だから何とかしたいと思っていた。だが、余計なおせっかいなのかな、などと過ぎるのだ。それに対し、やるって決めたらやらなきゃいけない、と言うトウユンに、やっていたつもりだった、と返した。迷惑じゃないよ、誰かに迷惑だって言われたの、とトウユンが続けた。
- あの、と切り出すまめもんが、第三者的な立ち位置であるハンバーガーに話を振った。が、ひとまず、ミュージカルの予定はどうか、とトウユンがズズに問う。もし延期をするなら全員の曲を自分が全部やる、そしてズズはももこに曲を作ってほしい、と話した。トウユンの思いを受け、なんで、なんでそこまでしてくれるの、と声が震えた。
- もし時間が取れるなら納得できる良いものを完成させたい、と言う日々。皆で作りましょうよ、主役を意識して頑張りますので、と言うももこ。涙を飲み込み、なんで、そこまで、と問いかける。
「ずっとズズのミュージカルって言ってたけど、皆のミュージカルになるね」
「みんなでやろう」
「お一人で何役もしないでいいんでやんすよ」
- まめもん、ひろし、デヤンスの言葉を受け、分かった、と頷く。「延期しよう」──それは座長として、決めた。めっちゃ良いの作ろう、と続ける。座長として言いたいことを言う。初めてだから不器用かもしれないけれど、頼ることに決めた。皆がズズの脚本でやろうと言っているのだから、と言うデヤンスに、それもさ、と言いかけるが言葉を飲み込んだ。
- 今のGBCでしか出来ない最高のミュージカルは出来る、作れる、とトウユンが言った。作れる、か、と零したズズに、腹を割って話すのは大切だ、と日々が語った。で、気を取り直してハンバーガーに話を振ると、大きな声で一言。
「それでいいんじゃない?!」
- 貴重なご意見をいただき、各々が次の行動を考える。体調が悪い人は別として、体調の良い者については練習しないのは違う、組み替えるなら話し合いをしなければ、とチエリが次を見据えて言った。
- 現状、ズズの考えた曲は活かしたいが、脚本に変更を加えるならそれが済んでからアレンジをする、とトウユンが話した。
- 台本やこれからのミュージカルについてあれこれと話す皆を黙って見つめる。と、今日もし時間があるのなら、一回ストーリーの方向性を話したい、とトウユンが言い出した。
- 延期するとして、いつが良いと思う、と問うた。フラムが、ストーリーの流れから逆算して日付が決まる、か、決め打ちか、と選択肢を示した。あの時間で作るのが無理だったのか、それとも、今日までに熱量を持って行くのが無理だったのか、と問いかけた。今の話が今日、発覚したのか、と。トウユンがそこまで言えなかったのは、何故だろうか。
- ズズのミュージカルだから口出しをすることを迷っていたトウユンは、マックから、言って良いと言葉をもらって、ズズに言うことを決めたのだという。思うところがあったが言えなかった?どうしたら遠慮せずに言ってくれた?と皆に問えば、口々にタイミング、や、思っていたけれど、などと出てくる。つまり、たまたまトウユンがこの場を開いてくれたからこうなっていて、それがなかったら?と問うズズに対し、気を遣って言えなかったのは僕らも悪いこと、とネケが返した。トウユンが続けて、リハで皆が感じた不安を察知して今回言ったのだ、と言う。
- そもそも日程に無理があったということだろうか、と問いかければ、全貌が見えて、自分の役目をやってみて、それが一昨日くらいに判明したのでは、とフラムが言う。事前に全体を通した方が良かったということか、と言えば、未経験だったからこそ難しさに気がつくのが遅れた、とフラムが返した。
- トウユンが、詰めなければならないが不安だけど何とかなるだろう、という演者の意識が生み出したものだと話す。自分達で作り上げる意識の違いが大きい、と続けた。
- お笑いは今まで経験してきたが、ミュージカルは時間をかけて練習できたら、とももこが話した。
- つまりは、熱量でしょ、と結論づける。言葉に詰まるズズに、不満に思っているなら言うようにとトウユンに言われ、人の熱量をどう上げたら良いか、と問いかけた。持ち前のアドリブ力で気合いで行くのだと思っていたのだが、話し合いによって今、熱量が共有されている、とフラムが返した。
- 前回サーカスを振り返るのは日々とデヤンス。1ヶ月で日にちを決め、締め切りに向けてクオリティをどれだけ上げるかを極めていたのが前回だ。
- 今私達に出来るのは台本を開いて話し合い、修正することだ、とチエリが言う。問題の明確化をした方が良いと同意するのはまめもん。今からやる熱量が私達にはある、ズズにはその熱量はなくなったか、とチエリに問われた。
- 早く話し合わなければならないのは分かる。まだすっきりしていない、と言えば、話すように促された。熱量一致が大切なのは分かる、過去のことを忘れていくことも出来る。だが、同じ事を繰り返したくない。どこをどうしたら良かったのかを省みたい、と続けた。
- みんなはズズの為にやってるの?お客さんのためにやってるんでしょ?とトウユンが言う。個々のクオリティの基準がなかったという話も出ていたと日々が共有してくれた。
- 言っていることは分かるし、ベクトルが曖昧だったのも理解している。分かる、と呟けば、ここで話したことで各々が変化する、繰り返すことにはならない、と言うチエリ。だが、今日来られなかった人にこの熱をどう伝えればいい?
- もっと良いミュージカルを作るために延期した、以外になかろうか、と言うトウユンに、その熱量は伝わっている、すごいと思ってもらいたい、と続けた。だが、不器用だから、誰かに熱を伝えることが出来ない、と思う。伝わらない人は辞めたらいい、という意見に口籠もった。
- マアを入れた際に少し疑問に思っていたらしいトウユン。このミュージカルを皆を入れたいために作っているのか、と問われて首肯すれば、それは違う、と言う。極力皆を出してあげたいと思っているのが、それが誤っているということか、と問うと、皆を入れたいのなら熱量を上げなければ、と返された。それはどうすれば熱量が伝わるのか、と問いかけると、気合いを入れるんだよ、とトウユンに返されて、分かんないの!それが!と声を大きくした。
──頑張ろう、と言って、これで頑張れるのなら、変われるのなら、そんなに楽なことはない。
- 一人で出来なければ手伝う、と言うネケ。無線でやろうと言ってくれるだけでも良い、と言うももこ。座長であるズズは全体を引っ張らなければならない、熱量を高めるのがズズの仕事だ、そこは頑張るしかない、とネケは続けた。
- どうしていいか分からないから熱量を当てられないのでは、ふわっとしている部分に道を示すべきだった、とトウユンが言った。
- 延期しなくても作り上げられるならそれで良い、と言うトウユン。チエリが保留の部分を決めたら突き詰められると言っていたことについてだ。それは、皆の努力次第だという。
- ズズは全員を出したいという思いは変わっていないのか、と問われて、ズズが別の役で出るからマアを代役に立てたのだと説明した。
- さらに、トウユンからももいろハートについて、ももこの主演としての楽曲は変えた方が良い、とアドバイスをもらった。
- 延期はするじゃないですか、とフラムがまとめ始める。まずズズがすっきりするのが先だ、とフラムが言うが、くよくよしても仕方がない、やっていくしかないからやる、と吹っ切った。
- 延期をするが、2週間、と言いかけたところで、曲を作るとなるとひと月要る、というトウユンの意見に口籠もる。ミュージカルと銘打っている以上、曲はこだわりたい。納得するものを作るために延期をし、どれほど延ばすかは、明日に答えを出す、と伝えた。色々な意見を聞いたから、今日は一日考えて、明日から台本詰めと曲詰めだ、と話した。ズズは、クオリティチェックに専念することを決めた。
- 日が延びるのならナレーションはパンプキングでどうだというデヤンスに首肯した。
- まめもんが走り書きだがメモの議事録を共有してくれた。共有すべきは、サトシ、らみ、マア、マック、パンプキングだ。
- 日程を1週間や2週間先としようとしていたズズの言葉を、熱量が下がるのが怖いのかもと受け取ったチエリに、熱が冷めることではなく熱が上がらないことが怖いと伝えた。だが、熱を上げるのはズズだけが頑張ることではない、熱量のある人の言葉を聞けば自然と上がる、とチエリが語った。それが出来ない人は外すという選択もある、だが、それも含めて全員でやるのを優先するのなら、それはズズの考えに依るとチエリは続けた。
- 座長としてやります、とズズは宣言する。ただ、結果が出ないと何とも思えない、と続け、熱量に関しては期待していない、ずっとそうだ、けれど、自分なりにやる。ごめん、と話した。
- そう思うのは分かるが、言わなくて良い、とフラムに窘められ、口々に同意の声があがる中、分かるけれども、と口籠もった。チエリにだけは期待してください!ずるいオレにも期待してくれよズズさん!と言うチエリとトウユンに、やってみるわ、と伝えた。
- 言ったからには全力で助ける、と言うトウユンに、きっと出来るさ、とハンバーガーが歌い始めた。
- 家に戻る、と言い残し、FIBを去った。ハンバーガーから電話がかかってきて、FIBの会議室へ行くこととなった。
- えるなから電話があり、クイズ番組の件を出してほしいと言われた。
- 会議室でハンバーガーに、大変でしょ、大丈夫、と問われた。新人に言われるとは。期待が出来ないんだよね、とハンバーガーに言えば、期待しなくていい、と返された。熱量なくてもやることやれば良いし、出来ないならクビ、それでも出したいのなら出番を削るべき、とアドバイスされた。普段だったら、切っている。けど。
──これから先も一緒に居るGBCだからこそ、切ることが出来ないのだ。
- 会議室に起きると、ハンバーガーがグアムのお店よろしくウクレレを掻き鳴らしていた。
- 12月で良いと思うんだけどどう?とハンバーガーが言う。12月末はロックフェスがある。11月にはマックのショーがある。と話している最中に餓死でダウンした。このまま話を聞くことにする。
- 曲は既にあり、アレンジはトウユンに任せればかっこよくしてくれる、それに合わせて歌詞を付ければスムーズだ、とハンバーガーが先の展望を示してくれた。そして、ショーについても30分は長いのでは、と言われたが、前回のショーを参考にしたと話す。短いセリフに全力を注げるという意見を聞き、削ることにした。
- 大変ねぇ、と言われ、大変ではないんだと思う、と呟く。今回のサーカスはGBC全体の意識を高めたかったこともある。マックスタートでアドリブ劇が始まることが多い中で自分がその代わりになれば、と思ったのだが、自分はボスではないから、と過ぎってしまう。GBCに入って良かった、と思ってもらえるように。ももいろハートだって、ずっとあたためていたものだ。ももこにその場をあげたかったのだ。一回プロットを出して高め合えればと良かったのだが、上手く行かなかった。
- トウユンが曲を仕上げてくれるとしても、デモ音源で曲の練習は出来る。脚本については2週間で、と言うハンバーガーに、劇の作り方を問うてみた。
- 劇の流れは起承転結。今のストーリーには転が足りない、とハンバーガーはアドバイスしてくれた。キャバクラと半グレのシーン、公務員のシーンを転として組み合わせることが出来れば、とざっくりながら色々指摘してくれた。そして曲についても、シーン削減のためにシーン切り替えを減らしてメドレー調にすれば聞く側への負担を減らすことが出来る、と言う。長時間見るには演者の技量が必要だ、故に、短くまとめるべきだという意見をもらった。
- ももこの曲の話だが、それはストーリーと絡めなくても良いのではと思っている話をした。演出さえ出来ていれば良いと行ってくれた。
- そして、ここまで詳しい彼に何故詳しいか問えば、愛に溢れた星だからかしらねぇ?!とのことだ。
- さっきの熱量の話に戻す。ズズが思うに、今のミュージカルは学園祭のような形だ。ハングリー精神の溢れる人が集まっているわけではない場で、人を切るのは難しい話である。
- 熱量については、動かす人間だけが持っていればいい、トップが見せたいものを作れば良い、と言うハンバーガー。熱量があるトップでもドライな人は居るし、ドライなトップでも熱量を持つ人が居る。熱量を持っているように演技することも技術としては可能だ。だが、お客さんにそう見えないのならやはり削るべきだ、プロ意識という面で、とハンバーガーは語った。熱量感に合わせて役を振るのがトップの役目だ、ということを理解し、納得した。
- じゃあ、ものすごくやる気があって、でも成果が出ない人はどうしたらいいか、と問う。気がつくのは当人自身だから、伝えるだけ伝えれば良い、と返ってきた。割ける時間は割いて、あとは当人に任せろ、と。
「あなたなら出来るわよ!」
- 自分の作りたいものを作る技術はズズにある。ズズの理想像にどこまで近付くことが出来るか、だ。変われるかな、と呟けば、ハンバーガーは、工程は決まっている、と返した。脚本の修正を2週以内に、曲についてはトウユンに相談、練習はデモ音源で、と続ける。スケジュールを組むといいかも、その方が多分いいわ、とのことだった。相談事があったら呼んで、と言う彼に、何故詳しいのか問う。
「宇宙人だからかしらねぇ?!」
- この街を征服できるのでは、と言えば、市長曰くお金が全てとのことで、100億を目指しているのだとか。これだけ相談に乗ってくれたのなら手伝う、と伝えた。言いたいことを彼に話すことが出来て、すっきりした。
- ハンバーガーに運んでくれるかと頼んだところ、あたしはここに寝てた方が良いと思う、と言われて、困る。玄関口までのタクシー代99億と言われて断ったところ、放っておかれそうになったが、しょうがないわねぇ!と運んでくれた。護送にハマったらしい彼に連れ回された。
- ハンバーガーが大はしゃぎしたはずみか、エレべーターから放り出され、道路に倒れた。通りすがりのねずみさんに事情を説明し、ハンバーガーへの伝言を頼んだ。ノビーとももみに搬送された。治療後にイジられて、帰る!と言い残して病院を後にした。
- 無線に入り直して、生き返った、とハンバーガーに声をかけた。マアに声をかけると彼女は他の皆から話を聞いている最中らしく、明日起きることを確認した。カフェに居るとのことだが、寝ます、と伝えて眠りについた。
- 10/23 『👑KSDズズ「期待なんかしない」』
- 【GBCミュージカル編:[転:4]キングスターダイヤモンドズズという男】
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+ 開く - 病院近くの路地裏で起床。無線に入り、人数を数えた。イベントはまだやっているかと問えば、こはるからサーカステントへ来るように言われた。
- ハンバーガーから稽古中であることを教えられ、話し合いはそれを見てからと返答した。だが、テント内に入るとサトシがももこ役を、日々がこはる役を、チエリがレン役を、というように役が入れ替わっており困惑する。ハンバーガーに事情を問うと、そうすることで新しい気づきが得られるかも知れないと遊んでいるとのことだった。
- 再びテントの中に行くと、自分の格好をした人を見つけて驚く。シーンはどうやらまめもんとマアのシーンであり、らみがまめもん役を、天乃進がズズ(現:マア)役を演じていた。
- 稽古が終わったようで、チエリから本物だ?!と驚かれた。遅くなりました、サーカスについて考えがまとまったから、と話を切り出した。テント外に居たこはる、ぴん子、ハンバーガーも呼んで話し始める。
- ステージに立ち、話し始める。まず、ミュージカルは延期。2日で詰められる面子だと信じているから、このまま行こうとも思った。けれど、音楽はもっと詰められると判断したため、音楽と歌い方を凝り、演技指導はズズがやることとした。延期期間は1ヶ月だ。
- 台本も組み直した、と話す。だが、台本は作ったが、自分の演技しやすいやり方でしてほしい、とも伝えた。練習日程はまだ決め切れていないが、週3日の11時からの稽古をメインに、見てほしいということがあったら飛んでいく、と伝えた。ここで、ひろしがいくらとのイベント練習の為一旦離脱した。
- 音楽については分からないため、こだわりを持っている人に割り振ろうと決めたとも伝えた。トウユンにそれを、キャバクラとひろしとサトシの楽曲を任せようと思っていることも話した。
- ももこのアイドル曲を劇に向けて書いた方が良い、と再度トウユンから言われたので、理由を説明し始めた。ももいろハートは最初に作った楽曲であること、マックに見せた際にもっと大きな舞台で歌うことを勧められたこと、ずっとあたたまっていること、ももこの全力を引き出せる曲であることを語った。
- だが、そこでトウユンが、ズズはももこのプロデューサーであるが、ももこ不在の中彼女を主役とし、そのことについて彼女と向き合って話したか、と問いかけた。2週間ほど前のももことの話を思い出してか、対話をした、とはっきり返答した。彼女が変わってみたいと思って、アイドル曲もやると言っていたから。それに、ももこには力があると思っているから。
- ももこのアイドル曲の部分はこだわりとして、敢えて、ストーリーに媚びない形で見せたかったのだ、と話した。
- DREAM INはこの街での名前そのままで演じている。舞台が、その人のこの街での人生を肉付けするように。だが、ももこに関しては、ももこが本当にこういうことをしたいのか、主役としてこのままで良いのか、主役だったらもっと声をあげてほしい、とトウユンがももこに問いかけた。
- 気になったのが、とももこが切り出す。ミュージカルの主役だと言われたのは、ズズが想ってくれていたと感じて嬉しかった、だから期待に応えたかった。ももいろハートは、あたためていた歌だから、こうやって主役になる機会はもうないと思ったから、歌いたいと思った、と彼女は語った。
- 作中での“ももこ”は全て断っているが、自分は断らず経験してみるタイプだ、と自分のことを話すももこ。経験して、でも駄目だった、という流れ、そして、前向きな方が夢を叶えるロスサントスとしてしっくりくる。台本上では、ズズが見えている人のイメージが見えている。だが、ももいろハートを作った動機が違う、だからちぐはぐに見えてしまうのではないか、とももこは言う。ももいろハートを出せる方が嬉しい、だから、ももいろハートに合うような脚本の流れにしたい、と彼女は語った。
- だから、出来ればももいろハートは使ってあげたい、とキングスターは改めて皆に告げた。インストはこのままで行くのか、とらみに問われ、急に違う曲が入ってきた感覚がする、と指摘された。だが、ズズとしては、ももいろハートは“ミュージカル”の部分ではない。チエリからそこで、お客さんを集めてライブ会場のようにしてみては、と提案があった。何にせよ、皆でやりながら考える必要がありそうだ。
- ダミアンとらみの公務員のシーンはぴん子のピアノだけでやってもらいたい、とぴん子に話した。理由を問われ、ズズが感覚でそうしたいと思った、と伝えた。キャバクラについては色々な楽器があった方が良い、ひろしとサトシはアコギ1本でも良い、と自身の解釈を話した。マアとまめもんのパートはギャグシーンなので、ズズがやると話した。
- 音響については生の音がほしい、と続ける。そこで、脱水でダウンした。天乃進の歌はもう少し考える、と倒れながら話した。ズズさん、と未だズズの格好をしている天乃進に呼びかける皆に、オレ、こっち、と伝えた。個人医にその場で治してもらった。
- 松葉杖をつきながら、サトシにステージ上にあげてもらった。もう一つ、みんなに、ちゃんと言わなければならない。
「あまり、人が信用できない性格で。あまり人に期待が出来ない、性格、なんです」
ぽつり、ぽつり、と語りだす。
- この街に来る前。日本。学生時代、皆で劇を見せるという機会があった。トップになりたくて熱が入り、厳しい言葉をかけた。だが、思い出作りで良い、熱量がウザい、などと言われて、結局一人になった。その時、自分が悪いんだと、それで自分を納得させて終わらせた。
- 何年か後、飲み会の場で店を開業しようという話があがった。過去のことがあるため、熱量を見せないようにしようと思いつつ、あれこれ提案していたが、いつの間にか自分一人がやっている形になった。週一で会議を開こうと言ったのに、会議も来ない人が居た。だが、これで大丈夫なのか、と開業1週間前になって、会議に来ていない人に言われてしまう。その人には、じゃあ会議に来て言え、とは思ったのだが、その思いは自分の中で握り潰した。急ピッチで準備をした。でも、その人は言いたいことだけ言って、会議にはそれ以来来なかった。無事開業したものの、自分の計画に穴があり、店が潰れて借金を抱えた。すると、皆がキングスターのせいにした。
「無駄だなって思って、そっから。期待したりだとか、熱量を合わせるとか。期待するだけ無駄なんだ、ってそっから思って」
- けれど、悔しかった。だからひとりでこの街に来て、スターになることを志した。だが、それも上手く行かなかった。警察に理不尽なことで捕まり、結局犯罪に手を染めて。その時、当時の警察署長に諭され、スターをもう一度志した。一人で我武者羅に頑張って、一人でステージを立てて、一人で稼いで。一人で良いじゃないか、と思った。
- そんな時、マクドナルドに出会った。彼は詐欺師だった。お金も搾り取られた。即興劇にも参加させられた。とても嫌いだった。けれど、彼は自分にないものを持っていた。だからGBCに入った。
- ところがあるときマックに、内緒にしておいてと言ったことをバラされた。ギャングに詰められ、家族とは口だけか、と彼を問い詰めた。GBCを抜けたい、とそう告げればマックは、2週間で街全体を巻き込んだイベントをしよう、と宣言し、前回サーカスの開演に至ったのだった。素晴らしかった。色々な人が集まり、ギャングにも、これがGBCを潰せない理由かとまで言わしめた。その時初めて、
この人 だったら自分が何をやっても許してくれると感じたのだ。 - それから色々な人に出会い、信用してみようかと思った。今回も本当は、あの時のことが過ぎるから、リーダーなんてやりたくなかった。──もしかしたら、変われるかもしれないと思った。けど。
「どうしても、あの時のことが過ぎって。どうしても怖くて。また、言われるんじゃないかなって。またお前の熱量がウザいとか、お前が悪いって言われるんじゃないかなって思って」
「どうしても変われないんだよ。だから、オレは、これからも皆に期待できない」
「だから、教えてほしい。どうしたら皆を信用できるか、どうしたら期待が置けるのか」
キングスターの、涙混じりの独白。その沈黙を破ったのは、日々だった。
「まずは、ズズさんが“出来ない”って思わないことです。出来るかも、って思わないと、出来ないから」
「無理なんだ、過ぎるんだ、どうしても。言葉だけだなって思ってしまう自分が居るんだ。大丈夫、ズズさんのためにとか、ズズさんの熱のためにとか、僕たち全力で頑張るから、っていうのが、どうしても。分かってるんだけど……どうしても。」
「言うわけねぇだろ、バーカ」
ダミアンがそう言うのに息を呑む。
「期待できないって言ってたけど、さっきから話してるのはね、二日あれば皆はそれなりのものを仕上げてくれると思ってる、って、期待してたよ」
レンが続け、サトシが頷く。
「急に信用せんで良いって。見とけって。」
ダミアンが再び、そう告げた。
「だから……教えてほしい。このミュージカルで。」
「チエリ、態度で示すの得意なんで、任せてください!」
「私はズズくんに着いていきたいって思ったから、ミュージカル今すごい楽しんで練習できてるよ」
「正直ミュージカル以外も僕、講演会とかも手伝ってるけど、1ミリも思ったことないし」
チエリ、らみ、サトシも言葉を紡いだ。
「今回のサーカスもむしろ、引っ張ってくれてありがとうございますって思ってますよ」
日々がそう、あたたかく感謝を告げた。
- もし自分がもっと彼等を信用できていたら、延期せずに済んだのではないか。そう弱々しく言うズズに、もう終わったみたいな話してますけど、これからですよね?とチエリが笑う。延期したのは残念だが、だからこそ今よりずっといいものを作れるから、とトウユンも言う。街全部にGBC凄いって知らしめるんやろ、と天乃進が投げかけた。そうしたい。
- 息を吐き、整え、前を見据える。オレっぽくない、ごめん、でも、話しても良いかなと思った、と皆に伝えた。少しずつ変わりたいから、皆手伝ってほしい、と話せば、頷く声がたくさんあがった。自分の見せられる最大限で良いから、良いものを作りたい。
「こんな座長だけど、よろしくお願いします!」
- あちこちから聞こえる拍手に涙を拭った。そしてステージから降りた。だが、1発ギャグ決めてよ!とハンバーガーに言われ、再びステージにあがった。披露したが、笑い声は少なかった。滑るは滑るんだ。
- こはるがそこでステージに駆け上り、拳をキングスターに向けた。殴られ、ダウンする。そして、男らしくないんだよ、と強く言われた。
- ぴん子も追ってステージに登ってくる。GBCを信用したいと思ったからこのミュージカルをやろうと思ったのではないのか。アンタが言い出したんだったら諦めないで、とぴん子も強く告げた。
「こんなの、こはるが好きになったズズさんじゃないです」
- こんなんだよ、と弱々しく言えば、こはるが好きになったズズは、優しくて皆が大好きで、と彼女が切り返す。GBCの皆が輝けるステージを作ろうと思ったんだろう。引っ張って行くんでしょ、自分なんてって思うなよ。昨日、熱量がない、と言われたことに引っ掛かっているらしいこはるは、頑張ってるわ、と声を張る。
「ちゃんと見ろ、こはるを」
- こはるだけではない。ここに居る皆頑張っている、とぴん子が続けた。その言葉に、ごめん、と繰り返す。頑張っていないとも思っていない、熱量がないとも思っていない。そう言うと、もしそうなら、そんなこと言ってはいけない、と諭された。
- 自分のせいにしたらその言葉がなかったことになるのか、とこはるに叱責される。自分が出来ないから言ってしまった、では通じない。皆が受け取った言葉を、どうやってなかったことにするのか。どういう思いで皆がズズの言葉を聞いていたことか。
- 悪い、と繰り返すも、分からないんだ、と零した。分からなくなったらズズを叩くから、帰ってきて、と言われた。分かった、と約束する。変わるから。
- こはるから昨日言ったことを謝るように言われ、昨日はごめん、と皆に謝罪した。一瞬の沈黙の後、いいよ!と一番に言うのは、ぴん子。だが、その後、私何も言われてなかった!詰めちゃったけど、言われてなかった!と呼吸が浅くなるぴん子が慌てながら笑っていた。
- こはるに運ばれながら皆に、台本を見ておいて、と伝えた。ズズを運びながら、いつ殴ろうかと思っていた、とこはるが言う。キングスターは、全てに自信がない、と再び言うが、こはるが大好きって相当だからね、と彼女は返した。
- 口では信用できないとは言っているけれど、心の奥底で頼りにしている団員もいるだろう、とレンが声をかける。これで許す、と1発蹴りを入れて、彼はその場を去った。
- 不器用でごめん、と零す。思ってないよ、とこはるに繰り返した。ただ──怖かっただけだ。練習してる、頑張ってるじゃん、と言えなかった自分が、怖かっただけだ。それを認めるのが怖かっただけだった。病院から帰ってきたら戻ってきてね、迎えには行かないから、とこはるに言われた。
「こはる」
「どうしたの」
「ありがとう」
- やろう、あっと言わせよう、と言うと、頑張るわ、と返ってきた。一息吐いた。
- こはるが、自分がGBCに入った理由を忘れるな、と言う。ズズと、ボスが居るからだ、と続ける彼女に思わず、プレッシャーだ、と嘆いた。皆がウケてないギャグとか笑ってるから、と言う彼女に、皆がウケてないやめて、とぼやいた。周りがどう思っているかは知らないが、こはるはズズのギャグが好きだという。良いものを作ろうと思っていっぱいいっぱいにならなくていい、ズズなら良い、とこはるはそう言いたかったらしい。
- 期待できないなどと言われたら傷つくことはちゃんと分かった。あの時、飲み込めていなかっただけだった。自分の100%は出すから、出来なかったら蹴落として良い、とこはるは言った。
- デヤンスが、先に眠ると伝えて去って行った。
- ももみが来て、現場で蘇生してもらった。てっきり飲食忘れかと思ったももみがズズの怪我に驚いているので、ズズが自分のことをビンタしたのだ、と説明するこはる。ほれに乗っかり、弱くなっちゃったから、と言えば、意味分かんない、とももみに泣かれた。間違えた、意味分かんないよなそりゃ。強くなって、と言い残し、ももみは去って行った。
- 行こっか、と声をかける。こはるが言うには、次変なこと言ったら殴るどころか、埋められるそうだ。
- もう元気になった?とらみに問われた。彼女に、やる気はあるんだけど、来週から11月中旬まで居ないかも、と言われた。ぴん子も11月上旬まで居ないかも、と続ける。そういう事情もあるだろうから、キツかったら自分が調整するから、と伝えた。
- ズズ先生、とまめもんが呼ぶ。ズズの役をマアがやることになったのだが、セリフを変えて良いか、との打診に頷いた。
- そこで、そもそもマア出るの?と彼女の不安げな声。ピンチヒッターで代役を務めた認識だったマア。自分である必要はあるのか、そもそも自分はミュージカルを見たことがなく見る側に回りたい、という彼女に、そういうことならそうしようと頷いた。練習の代役としては付き合ってほしいと彼女に話し、台本の組み直しを決めた。ちなみに、ミュージカルの経験はみんな、ない。
- やりたいかやりたくないかだ、と話すまめもん。クオリティを高くするには勉強をした方が良いだろうと考えているマアに、それなら客観的に見てほしい、と伝えた。彼女の視点が即ち観客の視点だ。観客が楽しめるかどうか、飽きずに見ていられるか、それが大切だから。
- マアは、同期のお母さんことハンバーガーが出ないのに自分が出るのは、と言うので、やはりマアをサポートに回すことに決定した。
- 台本は読めたかと皆を見回しつつ、ももこの下りをしっかりやりたい、と呟いた。起承転結の結がまだ粗い。
- 一例として聞いてほしいと前置きして日々が切り出す。ひろしのシーンの後にサトシの歌が本来入るが、そこに挟む形でももこの心情を歌ってもらって、それに惹かれてサトシと日々がやってくる、という流れは難しいか、と問いかけられた。前作の主人公を務めた日々が、当時の日々は心情を歌っていたということを教えてくれた。例えば、と言葉を創る日々に、その部分の歌詞を作ってくれないかと頼んだ。
- そこでチエリが言葉を挟み、ももこの心情を歌うのは良いが、ももいろハートを歌うのに終盤にももこの歌を一つ挟むのは適しているのか疑念を呈した。てっきりサトシが歌うのかと思っていたのだが、日々はももこが歌う想定をしていたと知る。続けて、サトシの歌の内容についても少し変え、日々とサトシの話の内容をサトシが歌い、ももこがそれに乗っかる形ではどうか、と提案された。
- “主人公・ももこ”が引っ込み思案すぎる、とトウユンが意見する。ワクワクする気持ちでこの街に来る人が多いだろう、と彼は続けた。彼が示す挑戦と挫折、という流れには頷き、考えてみると返答した。トウユンには、そこを含めてももこと話してほしいと言われた。ももこ自身の気持ちに寄り添うことが出来れば、演りやすくなるだろう、とのこと。一旦、職業体験という案は採用することにする。
- この舞台は喜劇だ、という話に天乃進が、銅鑼姉妹のシーンが意地悪でない方がいいかもしれない、と言うのに、チエリが、台本そのままに無自覚に自信をへし折る女も出来ます、とのことだった。続けて、演じ方で何とでもなる、と彼女は胸を張った。ちなみに、銅鑼姉妹についてはツンデレにしたかったと話した。
- 今居るメンツで演じてみよう、と皆を見回す。“ももこ”も、ももこなりの解釈で良いから出来るか、と今戻って来たばかりの彼女に言うと、どうやら話の流れが掴めなかったらしい。困惑した彼女に話の流れを説明した。
- トウユンが、場面転換の際に一人語りを入れるのはどうかと言うのに対し、変えた台本では場面転換を減らしたという意図を説明した。
- ステージに登ったももこが口を開く。自分は何でも出来ないという性格ではない、覚えてください、とズズを指す彼女に、何、何、と困惑の声を漏らした。どうやら、台本での“ももこ”が暗すぎる故にそう言ったらしいが、"主人公・ももこ"に本来のももこを全部投影しているわけじゃない、ももこが“ももこ”の性格とは思っていない、と伝えた。すると、これから変わるから!何でもやるってGBC入ったから!と言うので、彼女の言葉に、分かった、と笑った。
- 頭がぐるぐるしているももこと即興が苦手なトウユンによるリハは混沌を極めるが、結果的に綺麗な流れに落ち着く。メカニックと次のシーンは場面転換を入れた方が良いだろう、という提案もあり、また、何日経っても夢や友達が出来なくて焦ったというのがももこ自身にもあったから演りやすい、という彼女の意見で、シーン間に日数経過を描写するナレーションを加えることを決めた。
- チエリと日々で演じたキャバクラパートが良かったと言うので、見せてほしいと頼む。二人が演じた際はギャグに振ったが、こはるとレンではキャラが、と言うチエリに、そっちに振れというならやりきる、とレンが後ろから言った。
- 見せて見せて、と言えば、日々とチエリが再演してくれた。チエリすぎるだろ、と思わずツッコんだ。チエリちなみにレンさんなんで、とチエリが言うと、笑いが巻き起こった。ズズが求めるなら、と言うも、まぁ、オレのキャラではない、と思わず零すレン。そこなんだよね。
- この場合、キャバの体験はするのかとももこに解釈を問えば、楽しそうということで体験するとのことで、その方向で行くことにした。レンに話を聞くと、ももこを勧誘するも、自分を褒めるナルシストのような感じで行こうかと思っている、と言うので、大きく頷いた。それならこはるは後輩のよいしょ役が適しているだろう。
- 振付師を担当したいとまめもんから申し出があり、歓迎の声をあげた。
- こはるとレンにシーンを演じてもらうように告げた。こはるにはアホな感じでギャグに振ってと伝えた。途端に歯抜けの口調になるこはるに、口調じゃなくて、と思わずツッコんだ。だが、こはるが演じたアホな感じがしっくり来たので、そのキャラ性に決めた。行け…てはないか。
- 愛嬌のある馬鹿っぽい奴って居るじゃん、と言うと、後ろからマアが、マアアルか?と言うのに笑った。言ってないよ。
- ズズの演じる馬鹿に、歯ないやん、と言うこはる。その後、チャラい感じで演じてくれたこはるに頷き、よいしょポジションということを再確認し、もう一度演じてもらった。こはる、完璧!と拍手し、この感じで台本を作ることにした。
- 頭悪いことに違和感ないってことはつまり、と深淵に触れようとするチエリに、マズいのではと言うぴん子。建設的な話は後でしようね、とこはるがステージから声をかけていた。
- こはるに、腹から声を出すようにとアドバイスをする。ズズのモノマネをすれば良いのではという意見にこはるが、難しいことを言うなぁ、と言うので、ズズがこはるの代役で演じてみることにした。演じ終えた後、愛嬌あるけど馬鹿でしょ、とこはるに言えば、愛嬌はないけど、と返された。そうだとすれば愛嬌のない原因はオレなんだけど。
- ももこに、自分はツッコんだ方が良いかと問われたので、その方が良いと伝えた。再度、こはるに演じてもらうことにした。こはるはこの系統で、と言うが、自由にと話せば台本を見ないと言う。
「滑ったって関係ない。俺がウケていると思えば良い」
「そんなん学ばないで、オレから。滑らないに越したことはないんだから」
- マアが役を降りたため考え直すが、まめもんのシーンをやりたいと思う。ズズはこの場に立てないため、代役を立てる必要がある。他のシーンをやろうかと思うが、公務員は問題なく、ひろしは今別のイベントのリハーサルがあるため出来ない。
- ひとまず、ももこに声をかける。アイドル曲を歌うとして、その直前のセリフの“私は自分に自信がなかった”はグッとこない、と話し、考え直すことにする。
- 天乃進に、出る?と声をかけた。どこに、と問われるので、ズズが本来立っていた場所だと伝えれば、半グレやるの?!と驚かれたので、そうだよな、と意見を引っ込めた。しかし、天乃進からズズの考えを聞かせてほしいと言われたので、孫と犯罪やってもらおうかなと思って、と構想を話した。面白いという意見があがったので、一回その方向で組むことにする。
- まめもんが横でレンに動きの指導をしているのに、笑い声が聞こえたので、思わずその方向を見遣る。まめもんがやる動きに吹き出した。……アクティブすぎるか。
- じゃあねぇ、と台本を見ながら考え込む。台本で悩んでいるのが、最後の部分だ。レンから、唐突にももこの気持ちが変わっているのが気になる、との指摘が入った。どうする、とももこに問い、ももこの気持ち次第だ、と話す。このセリフで行くのなら、他の皆が眩しくて、個性が強くて、だから自分に自信がなくなる、ひろしとの話で落ち込み共感する、という流れなら自然では、とももこは話してくれた。
- ももこのエンディングはこれまでのストーリーをなぞれば良いか、と考えつく。この流れなら自然だと皆が思うのならそれで良い、とももこが言うので、その方向にすることにする。
- エンディングのシーン切り替えで、ももいろハートのイントロからお客さんを皆前に出すことを考えている、と話した。ミュージカルステージからライブステージへ、斬新だが変えてしまおう。それなら、といつものコールをしたいとももこが提案した。
- ひろしのシーンで彼がももこに絡むシーンはどうしようか、と考え込むが、それはひろしに聞くことにする。その後、ズズが出てきて誘導、サトシと日々に繋ぐという流れだ。と話していた所で倒れた音を聞いて、自分ではないことに安堵した。
- 皆から聞いた意見を元に台本を組み直す、と話した。一つ一つシーンを見直し、最後はもう少し考える、と話した。ももこの歌は、ももいろハートのフルかショートかを考えておくと伝えた。そこで稽古は終わった。
- トウユンに呼ばれて話すことになる。1ヶ月先となったのは自分に配慮してとのことか、と問いかけられ、もしそれより早くできたら早く開演させたいか、と訊かれた。それに対し、ミュージカルの日程は確定で、もし曲が早くできたら歌い方の強化に時間を使うことを話した。
- トウユンが、昨日聞いて思うところがあったが、あのような形にした自分にも責任がある、と言う。空気感に戸惑ったことだろう、と謝罪をもらった。ミュージカル成功させよう、というトウユンの言葉に、ね、と同意した。
「いや……悪いね、苦手で」
「何それ、マジで!苦手で、じゃねぇんだよ」
- 笑いながらトウユンが、信じてなくても良い、と言う。行動で示すタイプだからやればいい、と言った。
- 自分の土俵でない場所で挑戦したズズはすごい、とトウユンはズズを褒めた。自分の曲以外は難しいとトウユンが言っていたことが残っていたから、メカニックの曲も作ろうと思っていた。が、トウユンは仕上げてきた。それに、無茶に応えて楽器を始めたり、チャレンジしたり、皆が挑戦していた。そういうことを見て自分も感化され、土俵でない場所で挑戦してみようと思ったのだが、中々変われないものだ。
- ズズにしか出来ないことがたくさんあるからと話すトウユン。いつも卑屈に言うが良くないっす、と言われた。こんなに出来るのに。それに対して、ね!と笑う。皆言ってくれるんだけれど、自信が持てないんだ。何でだろうな。
- 人間は変われないと思っている、だが、人は成長できると思っている、とトウユンが語る。例え嘘や仮面であったとしても、それは“変われた”ことになるから、と。
- 曲を任せたトウユンに、厳しかったら言って、と伝えた。だがトウユンが言うには既に、キャバの曲は構想が見えているらしい。
- ひろしの曲はどうする、と問われて、考え込んだ。アカペラでも良いし、語りだけでも良いし、と提案された。ひろしの演技は凄い、彼に任せても良い。
- それから、サトシの弾き語り。マックの力を借りずに自分達で作り上げたいか、と問われて、首肯するも、マックは元よりBGM担当として入れている。それならマックにアコギを弾いてもらうことを提案されたが、サトシの曲はメロディラインが掴みづらいため難しい。メロディを追うためにデモ音源がほしいと言われたので、明日渡すことにした。頑張ろうね、あと、送ってもらって良い?と爽やかに言われて吹き出した。
- 原付に2ケツで帰路に着く。こはるがあれほど怒るとは思わなかった、と零した。ズズの期待していないという言葉に、皆悲しく思っただろう。トウユンもその一人だという。自分は裏切っても、皆を裏切っちゃだめだよ、と諭された。
- FIBにトウユンを降ろす。FIB前に居た日々やももこ、サトシ達の輪に交ざる彼を見送り、そっと去った。明日待ってるからね、とトウユンに無線で言われ、返事を返した。
「……出来ないんだよ」
出来ないんだ。
出来ないんだよ。分かってるのに。
分かってるのに、出来ないんだ。
そう繰り返す。
夜の街に原付のエンジン音と、無線の賑やかな声。
山肌を登り、エンジンを切る。夜空を見上げた。
ウクレレを鳴らす。静かな街に、風の音とウクレレの音色が響いた。
何故ウクレレを弾けるようになったんだっけ。
GBCに居なかったらウクレレなど手に取ることもなかっただろう。
ずっと、逃げていた。一人が楽だから。
強くないのだ。皆が思うほどに、キングスターは強くない。
自信を持った方が良いと言われても、持つことは出来ない。
全然逃げられない。
全然、逃げられない。
全然、逃がしてくれない。
「だから、ウクレレ、弾けるようになったのかな」
いつも癖のように弾くコードを弾く。
宇宙人に教わったコードもいつの間にか、こんなにも弾けるようになっていた。
変われた、のだろうか。
なれるかな。
「……いつか、なれるかな」
頭に過ぎった彼女の歌を口ずさむ。
誰かに寄り添える人に、誰かに愛される人に。
信用、出来ない。
頑張っているのは分かっているし、見てきてもいるけれど。
怖い。認めるのが。頑張ってるから大丈夫、と思うのが怖い。
──そう簡単には変われない。
要らないとなったら切っても良いと言った彼女の言葉を思い出す。
切れるわけがない。
「……変わるかなぁ」
ウクレレを掻き鳴らす。大変だ、難しいな、と伸びをした。難しい。
熱量がない、なんて思っていない。
みんなすごい。お金も手に入らないのに、何故だろう。
……皆を裏切っちゃいけない。
「一回もない。裏切ったことなんか」
夜が明けていく。ひとつ息を吐く。
皆この街で何をしているのだろうか。
ついにウクレレを持っていなくても弾けるようになってしまった。
GBC、凄すぎる。
詞を紡ぐ。
ああ、僕はこんなにも弱くて
虚勢ばっかり張って生きた
誤魔化し続け逃げた
ああ、だけど見ていた オレ等の仲間は
ああ、殴られた それが痛かった
殴られたのじゃなくて 目が醒めたというか
見えてなかった、皆を まだまだ甘かった
だけど全く変われる気がしない
ああ、どうすればいい。
こんなオレ、どうすればいい。
どうしたら変われるんだろう。
だって分かんないんだ。
やるしかない、だから
信じるしかない、強行で
裏切られたらもうそれは、しょうがないって……
「……また信じろって言うの?」
「もし裏切られたら?またあんな思いすんの?」
「でも今回こそは?大丈夫かな」
「あんなこと言ったけど、何も思っていないかな」
でも、それがキングスターの本音だ。
そうやって生きてきた。
ああ、どうすればいい。僕には無理だ。
でもそんなの思っている暇があったら動けって話だよな。
この音も、誰かに届けとか考えずに。
「動けよ、キングスター!ズズ!」
──よし。帰ろう。くよくよするな。
- 原付に乗り、山肌を降りる。懐かしい、と偶然辿り着いた夏フェスステージを見遣った。そのステージに登り、懐かしい景色を見下ろした。まだGBCに入る前のことだ。キングスタータイム、と歌い始めた。どんなダンスだっただろうか。うろ覚えだが踊り、歌った。
- ぺしょぺしょだ、と呟き、再び原付に乗り込み、街に戻った。
- 自分とマックが居たからGBCに入った、というこはるの言葉を思い出した。そんな大それた者ではないのに、自分は。
- レギオンに原付を仕舞おうとしたところ、タラちゃんにぶつかってしまった。轢かれました、と言いつつ、血溜まり、と地面を指すタラちゃん。タラちゃんが毎日清掃しているから血が落ちているということはタラちゃんの血だ、と紫髪の青年も地面を指した。ズズには見えなかった。
- 何故清掃しているのか、とタラちゃんに問えば、血を啜りたいからと返ってきて、清掃は関係ないではないかとツッコんだ。と、唐突に紫髪の青年が斧を取りだして驚嘆する。ところでこの人誰?!
- 自己紹介が遅れました、と紫髪の青年に名乗りながら言うと、高橋滅論だ、と彼は名乗った。彼が構える斧はバーバリアン田中からもらった斧だと言う。
- 違いない、血が無いだけにね、と言いつつ、こんなに綺麗に落ちる?とタラちゃんが自画自賛するが、何も綺麗に落ちていない。滅論は拍手をしている。そこでズズのウクレレがポロンと一音鳴り、それに対しても、そんな綺麗な落ち付けてくれる?とタラちゃんが言う。何もオチではない。同じ言葉を繰り返すタラちゃんに、何かしらの用語でも狙っているのか、とツッコんだところで、街ごと眠りについた。
- 10/25 『👑KSDズズ「風」』
- 【GBCミュージカル編:[転:5]軋み始めた
歯車 】 -
+ 開く - レギオン駐車場にて起床。タラちゃんと初心者バッジをつけた人の会話を聞きながら体調を整えた。そこで、タラちゃんから声をかけられ、自己紹介を求められたので自己紹介ギャグを披露した。光乃あびすです、と何事もなかったかのように名乗る彼女に驚嘆した。……あれ?やってなかった?
- 何をしているのかと問われたので、気を取り直して自己紹介“ギャグ”をもう一度。少女時代?と訊かれた後、何やってるの?とひたすらに困惑され、ようやくそこで自身を芸人だと紹介。だが、これで笑っているのかなどと言われてしまった。見かねたのだろうか、何を思ったかタラちゃんも自己紹介ギャグをしてくれた。
- 大道芸人である旨を話し、それならばとおひねりを渡そうとする彼女を止めた。笑ってないし、とどこかしょんぼりしてしまったズズを見てか、元気出してね、とあびすに言われた。お前のせいじゃ!
- 怒号を響かせればタラちゃんに止められ、あびすに怖いと言われながらも笑われた。タラちゃんが必死に止める中、あびすに、初心者マーク外れたら覚えとけよ、と怖いセリフを吐く。タラちゃんが彼女を連れてその場を後にした。
- 久しぶり、と言われながら黒い車にズズのチャリを轢かれた。頼みたいことがあったはずだが忘れたとのことで、そのまま去って行った。
- ようやく無線を入れた。台本を再度組んだことを無線で伝え、今からぴん子が向かっていると返された。じきに、ぴん子から着信があり、昨日何かがあったらしく、彼女と二人で話をすることになった。レギオンで待ち合わせることにした。彼女のテンション的に良い予感はしない。
- レギオン駐車場を家と言うズズにあれは家と言わない、と言われた。頑張ればどこでも家だ。屋根あるし。
- 夏フェスのステージに二人で行く。昨日マックから、皆は優しすぎる、優しすぎて残酷だ、駄目な点があるのに何故言わないのか、と言われたらしい。それを受けて皆で話し合ったそうだ。
- ここからは自分の伝えたいことだと前置きし、ぴん子は話し始めた。ズズは劇に対して今どう思っているのか問われ、意図に首を傾げる。座長として進める劇をやることに対して、座長としてどうしていきたいか、現状をどう思っているか、問い直された。
- 大失敗だと思っている、と言われて、ひとまず飲み込む。何故なら、台本も微妙だし、言ってはいけない一言も言ったから、とのこと。じゃあ辞めよう、と返したところ、簡単に諦めたことを咎められ、逆張りですわよね、と言われた。
- ぴん子が大失敗だと言うのなら、そこから頑張るのは無理だと言うと、勝手に諦めるな、と強く返される。だが、言ってはいけないことを言ったことに対しての説明はしたはずだし、それが伝わっていないのならもう無理だ、と話す。台本が微妙だったことも、もっと早く言えたはずだ。
- ぴん子の言う“完璧な台本”というのはどういう意味か問いかける。話し合いのあったあの段階で、トントンと進んでいた状況で、完璧だったわけがない。それとも、練習初回時点で完璧を求めていたのか、と問えば、その通りだと首肯された。
- けれど、出来なかったじゃないか、決まってなかったじゃないですの、と言われて、どこが決まっていなかったのかと問う。すると、そもそも詰めながら決めるのが間に合わないことに気がつくべきだった、と。ズズや、自分達さえ気がついていなかった、マックしか気がついていなかった、と続けた。それから、ズズを信じていたから言えなかった、とも。だとしたら、何故今言うのだろうか。
- 自分も詰められなかった原因だろう。みんな自覚が足りなかったと言う彼女に、その言い方ではズズのやり方が間違えていると言っているように聞こえる、と言えば、そうだと返ってきた。全ての進行を出来るかどうか定めるのが座長であり、それにズズは役不足だ、とぴん子は言う。つまりは、向いていないということだ。
- じゃあやったのか?とズズは問う。もしも、台本を組んでと彼女に頼んだのなら、出来たのだろうか。音楽のひとつも詰められないのに出来ないだろう、と言う。私だけでは無理だと返す彼女に、自分の担当箇所が完璧ならまだしも、あの段階で完璧に出来ていない人に協力を仰ぐことはできない、と続けた。それなら何でも出来るマックに頼れば良かったんじゃないか、それではマックの舞台になるがそれで良いのか、と強く言われ、論点がずれたと返した。
- 例え完璧でなくとも皆で協力すれば出来たはずだと主張をする彼女に、今の言い方では言っていることが分からず何も伝わらないと返した。出来なかったことを早く認めて延期したり、頼ったり、こだわりを捨てたりすれば良かったと言われて、言ったよな?と問いかける。あと三日あれば作れると思っていたんだと、そう言ったはずだ。だが、ぴん子には、全員が台本を直した方が言っていると返された。
- 彼女の言い方だと、ズズの見極める力が足りず、リーダーとしての素質がないと言われているようだ、と言えば、そうだと返ってきた。ズズだけが悪いというわけではないとのことなので、自分だけが悪いと言われているように感じるといえば、そうでもいいと言う。それぐらいに責任が重い役だったらしい。サーカスをやろうと言ったからには、それを我々の熱量のせいにしてはならない。努力がスッカスカになっちゃう、その一言で。そう言い募る彼女に考え込む。きっと、まだぴん子の本当に言いたいを理解し切れていないんだ。
- さて、出来ていないことを皆の熱量のせいにしていると思われているのかと問えば、違うらしい。先程の言い方ではそう言っているように思えたので、思わず頭を抱えた。埒があかないため、結論を言うように促した。
- 台本を書き直します、もっと、大きく、とぴん子が言う。ズズの得意なことをやればいい、皆に任せて分担して、とぴん子は続けた。彼女曰く、ズズは台本のプロットは得意ではないだろう、シーンの出来を上げることに関してはピカイチだ、とのこと。プロットは誰が、と問えば、ぴん子と他の人が協力して書くらしい。音楽はトウユン、舞台のサポートはハンバーガー、役者については話し合いが必要そうだ。ズズが座長のミュージカルではない、グッバイカンパニーのミュージカルだ、と彼女は言った。全員が責任を持ち、各々がやるべきことを出来るだけの範囲でやるミュージカル。
- それは全員が言ったことか、と確認すれば、頷くぴん子。ぴん子とその周辺だけではなく、全員でまとまった話だな、と再三確認すれば、マックから話を聞いた人は総じて、とのこと。プロットを書くという話はぴん子の気持ちの部分だが、それ以外は総意らしい。
- もう一つ。プロットが出来た時点でこれまでの話は分かったことだ。それを言わなかったのは何故か、と問われ、ぴん子の意見であることを前置きして、ズズの手伝いをしたいと言ったからサポートをすれば良いと甘えていたのだ、いつもの即興劇だとレベルを下げていたからだ、と彼女は言った。本気で向き合えていなかった、と謝罪する彼女に、じゃあ熱量はなかったじゃないか、と返した。言っていることが分からない。熱量があったらそんな言葉は出てこない。
- 熱量という言葉を使うと齟齬が出るから、とやるべきだろうと思ったことを認識できる範囲で全力でやったのだ、とぴん子は言う。それはズズとて見ていて分かっていることだ。だが、ぴん子は、ズズが引っ張ってくれるからと過信していた、過大評価していた、こんなものだったのか、と続けた。
- なるほどね、そっか、と言い、考え込む。こんなもんだよ、オレは、と言えば、それも逆張りで、悔しいけれど悔しくないフリをしているだろう、となおも詰められた。皆覚悟を持ってやっている、逃がさない、と言われて思わず苦笑が零れた。
- 今日自分に言ったことをもう少し早く言えなかったのか、といえば、気がついていなかった、と返ってくる。話を聞くと、マックが練習を見に来た際、ちゃんと弾けと指摘され、ピアノをちゃんと弾くことの難しさにやっと気がついたのだとか。次に、昨日マックの前でももこの代役を務めた際、何て酷い台本だと気がついたらしい。
- じゃあ、マックが居なかったら気がつけなかったんだ、と言えば、そうだとぴん子が言い、それの何が悪いのか、と返ってきた。ズズはそれが悪いとは言っていないが、そう聞こえると言うぴん子に、自分がさっき感じたのはそういうことだ、と返した。
- あなたが全部悪いですわよ、と言われて、おー、と返す。だって“座長”だったから。だから失敗だって言っている、一回大失敗した責任は座長なのだから取るべきだ、と言われた。
- そこまで言うのなら完璧な“座長”というものを見せて、と言うと、私が出来るとは言っていないと言うぴん子。ズズとて出来ると思って座長を引き受けたわけではない、挑戦として引き受けたのだ。けれど、全員が言うのなら失敗は失敗だ。なら、そう言うぴん子がやってみてほしい、と。
- だが、彼女は、自分の実力を自覚しているからやらないと言う。逆張りや見栄で引き受けたズズとは違う、と言われて黙り込む。でも仕上げたい、そのきっかけを作ったズズの言葉が嬉しかったから、だから皆でやれば良いのではないか、という彼女の主張を聞き、笑いを零した。
- 何を笑っているのかと言われて、難しいな、と返した。一人でやってきた自分が座長をなんて難しいことは、分かっている。納得させるように何度も頷いた。
- 台本は皆で作り上げる、ズズにはプロットの才はなかった、ということだ、とこの話を結論づけた。ぴん子はそれに対し、プロットだけなら多分出来たが、ミュージカルの座長というのは思ったよりもタスクが多かったのだ、と返した。才能がないとは一言も言っていない、と言う彼女に、それは言っていた、と反論した。じゃあ言っていたかもしれない、ごめんなさい、とぴん子は返した。
- ズズは土台ではなく肉付けが得意だと言うぴん子に、どこを見ての言葉かと問えば、ボートレース、漫才、キモキモオライブ、全てを見てきたと返ってくる。だが、それら全てはズズが土台から仕上げたものだ。すると、ミュージカルとは違い短かったり演者が決まっていたり全てお笑いだったりする。じゃあ、台本の肉付けは向いていないのでは?
- すると、ズズなら出来る、やんなさいよ、と言われて思わず、それはおかしな話だとストップをかける。出来ないことに対して見栄を張って出来ると言うのは良くないと先程ぴん子は言ったはずだ。それをズズが出来ないと言っていることに対して言った彼女を止める。そこで、ぴん子は、出来なかったということに早く気がついてほしかった、という主張に訂正した。最初と言っていることが違う。そもそも彼女の話は、才能が無いのに挑戦すること、出来ないことに出来ると逆張りしてやることを咎めたことから始まったはずだ。だが、今の彼女の言い分は、出来ないと言ったズズにやりなさいと言っている。では諦めるのかと言うぴん子に首を横に振り、ぴん子の言いたいことが分からないのだと返した。
- 出来るからやりなさい、と言う彼女の主張に、出来ない、と返せば、じゃあやらないで良い、と去りかけるぴん子。あなた何も出来ないですわ、この劇で、とズズに背を向けて言う彼女に、会話がゴリ押しだ、と声をかけた。
- いやいや、と再びステージに戻るぴん子に、自分の意見が飲まれるとそれで良いって拗ねるのこそ逆張りでは、と言う。ズズの自信がないということに納得したんだと言う彼女に、自信がないのではなくやらなきゃと思ったからやってみたんだと話した。すると、出来ないのならやるなとぴん子が言ったのだ。出来ると思ってやったのに出来なかったんでしょう?と訊ねられ、プロットが出来ていないことなど自分で気がつけるものではない、と返した。自分が作ったものが良いか悪いかなど、人前に出して初めて分かるものだ。ところが、完成していないのにそういうことを言うな、とぴん子が返してきて、思わず、はぁ?と困惑する。
- 途中段階で分かるものはあるだろう。現に、ズズの台本とて未完だというのに、今こうしてぴん子は話している。自分で気づいたって言いたいんです?と問われて、そうは言っていないと返した。
- 混乱しているであろうぴん子に、ひとつひとつ紐解くことにする。まず、作品の出来については自分では気がつけず、言ってもらわなければ分からないものだ。絵や曲、漫画のアシスタントについてを例に交えて彼女に話した。それを自分で早く気がつくべきだと言うのは無茶だ、と話す。
- 舞台が完成するまで脚本を書く人に任せすぎたのが悪いということだろう、と彼女は言う。何かおかしい。脚本家としてのズズ、座長としてのズズと分ける必要がある、と言う彼女。両方の役割を持つとしたら責任を持つべきだと言うので、まだ発表もしていないのに何をもって責任と言うのかを問いかけた。
- 劇の善し悪しは客の評価で決まるからと言えば、この時点で演者からNOと言われているのに、と言うぴん子。話がごちゃついてどこから話せば良いのかと頭を悩ませ、一旦、気を取り直してこの話をはじめからすることにする。ズズがはじめからこの話を追って行く。
+ 《ここまでのお話~KSDまとめ~》 - 《ここまでのお話~KSDまとめ~》
- ぴん子のやりたいことについて(プロットを書くことなど)は省略する。
- 「大失敗です」──大失敗とは。今回の劇が途中段階で上手くいっていないことに気がつくべきだった、その時点で完成していなかったことに気がつき、延長を見極めるべきだった。それが座長の責任。だが、キングスターはあの段階で、あと3日で詰められると信用していた。
- 音楽について──自分に音楽の才はないが、ぴん子が弾くピアノは好きだしあのBGMがかっこいいと思っていた。だが、それは別の音楽性がある人の視点では詰めるべきという意見だった。音楽が悪いかどうか、自分は「良いものだ」と思っていたが故に分からなかった。
- 劇について──一回通し練習をしたし、1日2日あれば詰められると思っていた。自分が作ったプロットであり、頭の中のストーリーとして問題ないと思っていた。10/20の段階で、「劇を詰めれば何とかなる」と思っていた。(※その時点での話なので過去形としている)
- 10/22。トウユンから「このままで行けると思っているのか」──トウユンが納得できていないことを知った。音楽の部分が甘いのだと思っていたが、台本が良くないという意見も出てきた。そこで、トウユンから出てきた「頼るべき」という言葉。キングスターは「頼っていたつもりだった」。頼んでいたつもりがまだ変われていなかった。
- 「何故ズズは信用しないのか」というトウユンの問いかけに、「オレはあまり人を信用出来ない」「皆の熱量に期待が出来ない人間なんだ」と話した。黙って見ていろ、と皆そう言ったのだ。そして10/20時点で、纏まっていると思っていた。だから、今日、キングスターは台本を組み上げてきたのだ。皆の意見を取り入れたものを。
- ぴん子が居なかった時の話も合わせて共有した。もう一度チャレンジしたいと思っているんです?と言う彼女。そのつもりで来ていたのだが、今日ぴん子の話を聞いてみれば、ズズに台本の才がないとダメ出しをしている。だが、キングスターは、今までの台本が良くなかったという意見は誰からも聞いていない。もっと詰めた方が良い、という意見だった。決して、作るなと言われていない。ぴん子の言う“出来ていない台本”についてはいつの台本のことだ、と問いかけた。
- ぴん子が話を挟む。座長だったり色々な立場をやっているのがタスクオーバーだったのでは、延期になった事実が失敗だった、責任を持っていくつかの役割を降りるように、とそれが彼女の主張らしい。クビにしたい、と。
- 話がずれているため戻す。10/20の段階で皆に、台本を変えてくる、と伝えたはずだ。それを書き直したのだが、今の話ではそれ以前にズズは座長として全体的に駄目ということだろう。それを言ってくれなかったのは何故か、と問いかければ、再び、気がつけなかったのだと返ってきた。
- 皆が優しいから、と言うので、そうなら皆優しいのだから変わらないだろうと返せば、ぴん子含め皆が変わろうとしているという。昨日マックに優しすぎる、優しすぎることは残酷だと教わったからだ。だが、そうなのだとしたら、ズズに対する言い方が違う。
「私達はちゃんとはっきり言えていなかった部分がある。はっきり言うと、この台本は駄目だから、もっと台本が出来る人に回した方が良いと思う、で良いんじゃないの」
- そう、静かに問うた。彼女の言い方では、座長に向いていないから降りろ、に聞こえる。だが、座長を降りた方が良い、というのは“ぴん子の意見”だそうだ。では代役は誰か、と問えば、座長は要らない、と彼女は言った。強く言いすぎたことは認める、とぴん子は謝罪した。
- 座長が要らない、か、とふと考え込む。やってみても良い。良いよ、そういうの言ってよ、とぴん子に言った。
- 今の言い方だと難しく捉えてしまう、と言えば、言い方って難しいですわね、と言うので、だろ?と返した。ぴん子は、これくらい言わないと、と思ったらしい。
- 「適材適所をやるべきだ」と言っているんだな、とようやく彼女の言いたかった本来のことを理解した。しっかり役割分担をすれば座長など要らない、というのがぴん子の意見だ。リーダーが要らないということか?と問えば、座長とは何なのかの定義から考えることになる。
- 座長とは、タスクを振る人間のことだ。座長が居ないということは、進捗具合はどう確認すればいい。どうだろうな、と考え込むぴん子に、無しでやってみるか?と問うた。皆に聞く必要はあるが、ぴん子の意見を大切にしたい。ひとまず、皆の居る場所に行こう、と言われた。
- もうひとつ。自分で作ったものは自分でレビュー出来ない。だから、途中段階でマズいとストップすることは誰かからのレビューを受けなければ出来ないものだ。そのために大切なものは、皆が腹を割って意見すること。ズズはマックにも言ってきた。大喜利の司会だってそうだ。それをやってくれると期待していたのだ。
- 出来ることは言っていたが、全体的なものは管轄外だと思っていたとぴん子は言う。もし、このまま進めたら間に合っていたか、と問えば、間に合っていたと返ってきて、信じて良かったと思う。妥協ではあるが、見せられるところまでは持って行けたらしい。ぴん子に関しては、判断は間違えていなかったということだ。ただ他の人の部分は分からない。トウユンが意見を出した時点で、もう少し言ってほしかったと思った自分も悪い、と零した。気がつけなかったのは“全員”だ。
- ズズが出来なかったことが悪いのではなく、座長として責任を取らなければならない、とぴん子が言う。次は役割分担をしてやり方を変えなければというのと、と言われて、まだやっていないように見えるか、と問いかけた。まだ座長のつもりだったでしょうと言われ、そりゃそうだと返した。責任があるのだから。
- 延期したということの責任をとってほしかった、と言われたので、責任とは何かを問う。座長を降りることが責任だと思った、とぴん子が言うので、座長を降りることが責任だと思わない、と意見を異にした。座長を最後までやりきることが、“責任”だと思った。だから、今まで言われた指摘をひとつひとつ熟してやる、それでも出来なかったその時が“失敗”なのだと。これは逆張りなどではなかった。
- 座長にもう一度挑戦したいか、と問われた。続けたい。延長は失敗だと思っていない。逆張りでも強がりでもない。あの話し合いがあったからこそ、延長というものを使って、より良いものを作ることが出来ると思ったから。次は絶対成功させましょう、とぴん子が言った。
- ぴん子の意見では、台本についてもタスク分担をするべきだということだなと確認する。ぴん子の視点で、誰がプロットが得意だと思う、と問いかけた。まずぴん子がプロットを作ってきている、ダミアンも作ってきている、とのことだ。作ろうという意思のある者と、支えられる環境は、整った。
- もう一つ。プロットは、20人中18人が良いと言って2人が駄目ならどうする、と問うた。2人に合わせた結果、先程まで賛成していた2人が反対したとしたら。
- ぴん子に電話がかかってくる。どうやら団員達に急かされたそうなので、帰りながら話すことにした。
- ヘリを待ちながら、割り振りをしっかりした方が良いということだ、まだズズがタスクを持ちすぎている、とそういうことだ、とぴん子の言い分を理解した。……って言ってよ、と言えば、それは言葉が悪かった、とぴん子が言う。ズズの熱量に関する言葉も悪かった。お互い様だ。でも、これできっと、上手く行く。今回のミュージカルだけでなく、これから先のGBCにとって大きな財産になった、とぴん子は言った。だが、それは危ない考えだ。このミュージカルはまだ終わっていない。
- こはるの迎えが来たので、ヘリに乗り込んだ。足りないか、とこはるに言われ、まぁ話そう、と言う。時間を保たせると言う彼女の気遣いに感謝した。だがズズが居ないと他の団員達の話も進まないのだ。
- FIBに辿り着き、会議室へ向かう。この劇を演れたことは良かったとぴん子は言う。“家族”であるGBCに居て、こうして言い合えているのが、嬉しいそうだ。やかましい、と笑みを零した。
- 会議室には既にたくさんの団員がいた。暖炉側に腰掛けたズズの正面向かって右からこはる、ひろ、マック、らみ、レン。ズズの右側奥からフラム、パンプキング、日々、ぴん子、チエリ。ズズの左側奥からサトシ、まめもん、ダミアン。ソファの陰にカムとマア、そしてズズと逆側にももこ、ネケが座った。
- 大変だったみたいだな、とマックが言うので、申し訳ないと謝罪すれば、君らしくないと驚かれてしまった。
- 難しいです、と零し、マックに事情を話し始めた。最初、マックに言われて座長をやろうと思った。正直すごく嬉しかった。だが、心の中では向いていないし出来ないと思っていた。けれど、やってみようと思った。台本組んだり曲を作ったり、色々やってみたし、色々な人にタスクを振ってみた。大丈夫かな、という思いもありながら、楽曲、歌詞、ポスター、など色々と振り分けた。けれど、まだ足りなかったみたいだった。台本も作ったことがないから、良いものが出来たと思っていたし、延長しなくとも、信じていたから出来ると思っていた。トウユンの指摘で初めて、台本が良くなかったことに気がつかされた。
- 頼らないの、とトウユンに言われた。頼れていない、信頼し切れていないと思い、何故信用出来ないのかを言ってしまった。色々な感情が合わさり、言ってしまった言葉に激励ももらった。そして、変わりたいから教えてほしいと皆に伝えた。
- 過去は伝えで聞いたが、もう一度話してくれ、とマックが言うので、話し始めた。話途中で、皆と熱量を合わせるべきだと本当にそう思うか、とマックに問われ、誰かが離れていくのが怖くて自分に、自分が悪いのだと言い聞かせた、と話した。
GBC なら信頼できるかな、と思った。けれど、まだ誰かに頼ろうとすると、過ぎってしまう。台本についても、頼ることに対しても、出来ていると思っていたが出来ていなかった。そうキングスターが話すと、頼る頼らないはたいした問題ではない、とマックは言った。全て人を頼らなければならないこともなければ、熱量についても人に合わせて下げる必要はない、とマックは言った。- 熱量については自分自身を高める熱量、それを感染させる熱量の二つある、と。キングスターは個人の熱量はあったが、感染させる力が無かっただけだ、とマックは言う。本当に周りに対して与えようと思ったことはないだろう、自分がやっていれば分かるだろうというムーブでやって来たわけだ、と彼は続けた。熱量を感染させるために、叶えたいもののために、強引に火を付ける必要がある。放火魔のようなものだ。
- だが、キングスターの、嫌われたくないという思いがそれを邪魔をしているのだ、とマックは話した。嫌われたくないんだ、昔からも同じだと思うぞ、と。──本当に厳しいことを言えるか。私と君の違いはそこにある。大切な存在である君達にでも、言葉のナイフを胸に何本も突き刺すことが出来る。
「それは何故か?その先に居る笑顔溢れる君達が、私の頭の中には見えているからです。」
「刺さなきゃ、その先に行けないんだ。想像力の扉というのはその先にあるわけだ。」
そこには、家族に対する絶大な思いがあった。
- 過去がなければ今の君はいない、否定する必要は無い、とマックは続けた。殴り合って刺激し合ったって良い。全てを信用することなど出来ない。疑うことは悪いことではない。言葉を何度も交わして、その人を知ることが出来る。もっと皆で話し合うべきだ、後にそれは頼ること、頼られることに繋がる、とマックは話した。
- 皆、嫌われたくない、傷つけたくない、そんな優しい人だ。だが、皆を感動させるものは、皆が持っているものだけでは足りない。一味超えたものを表現できなければ、歓喜、涙、そして抑えきれない笑顔を出すことは出来ない。マックはそう語り、言っていることが分かるか、と皆に問いかけた。
- 優しさを持って、現状を皆で楽しむことは出来る。だが、キングスターが演ろうとしているステージは乗り越えないといけないコミュニケーションがある、それを待っている、とマックは続けた。
- キングスターの元の台本に肉付けをして完成させようという話をしていたという。だがそれは根本的に台本が何を伝えたいのかがちぐはぐだった、と。キングスターが作ってくれたから、という優しさが先行している。だが、その関係値で本当に良いのか、とマックは問うた。
- マックはキングスターに厳しいことを投げかけて欲しいと思ったそうだ。それはキングスターが避けてきたことだからこそ、それを待っていたという。だからこそ今回ミュージカルの座長を任せた、と言うので、面倒なことを、と心中で嘆息した。そしてマックは、主役のももこにも優しく接しているが、それでは本当に良い主演は出来ない、と続けた。
- ももちゃん、とマックが彼女に声をかける。自分が今、主役としてふさわしいと思うか、と。じっくり考え込むももこ。マックのかけた問いかけに思わず、そこから?と心の中で呟いた。答えられるだろうか、彼女に。
- 私の感情、と口籠もるももこに、レンが、さっき話したことも踏まえて話したら良い、と促した。それを聞いてマックは、アイドルについても思うことがあるだろうから、今ここで言った方がいい、と声をかけた。
- 自分の感情を言うと、誰かを傷つけたり責めているようになるのでは、とずっと考えないようにしていたももこ。良いこともあったけれど、嫌なこともあった、と。台本について、最初、“ももこ”役のももこと思っていたために頑張ろうと思っていたが、“ももこ”という名前だから当人らしい方が良いという意見が出て、それなら明るい方が良いと思ったそうだ。ぴん子が台本のプロットを見せてきた際、前提として、ももこはかわいい、という所を置いていた。彼女から見えるももこは“かわいい”ということを知り、その一方で、今のズズの書いた台本を見た時に、ももこを投影している訳ではないとは思うけれど、“ももこ”がネガティブだったため、少し寂しくなった、とももこは話した。そして、2月から作ってもらった曲や、ズズとのことを考えたときに、関わってきた時間が少なかったため、ももこもズズも、互いが見えていなかったのでは、と思い、寂しくなったそうだ。
「私は、色んな話がしたかったです。もっと知ってほしかったです」
- やってほしいばかりでは良くない、けれど、とももこの声が震えた。アイドル活動について一番寄り添ってくれたのは、レンだったり、フラムだったりした。そんなももこが台本を改めて見た時に、主役に選んでくれたり、最後に歌を歌ったりするのは嬉しかったと言う。一方で、プロデュースのことを宿題として終わらせたくて、今ある歌を最後にねじ込んだのだったら、悲しいな、と彼女は続けた。一生懸命歌っていたからという理由もあるのかもしれないが、もうズズは私に興味が無くなったのでは、作るのがしんどくなったのでは、とさらに続けるももこ。あまりにネガティブだ、と思わず心の声が大きくなった。
- 一番寂しかったところは、と話し始めるももこ。大学の話の時に、眠る前にズズが、ちょっと寝るの待って、と言ったことがある。明日歌を作ってくるから歌ってくれないか、と話した時──8/20のことだ。その時ももこは嬉しかったらしいが、次の日、ズズは居なかった。そして、ズズが起きてこないことをももこは他の団員達の言葉から知った。ももこだけに伝えるのを忘れていたズズにショックを受けた彼女は、その場ではすごく悲しかったのだが、取り繕ったらしい。そして、トークショーのイベントでは、仕事を振る際、結局歌が要らなくなったために、日々と共に案内人を務めていた。
「ズズさんにとって私ってあんまり、心に響いていない存在だな、と思ったらちょっと、すごく、とても悲しくて、難しい気持ちが出ました」
- そしてひとつき寝ていたそんな時、ミュージカルが決まり、嫌われている訳ではない、覚えて貰っているということを実感して嬉しかったそうだ。だが、内容については皆の言う通り、GBCのためなのか、アイドルのことなのか分からない、結論部分が出来ていない、という話し合いが続いている。そんな今の雰囲気も悲しいというももこは、皆で笑って、家族旅行がしたい、と震える声で締めた。
- マックは、楽しいことを皆でしたいのは当たり前だ、と言う。だが、暗い話、重い話は皆にとって辛いかも知れない、だけど、こういうことがあった後に行く旅行は、普段楽しいことをやるのとは違う。それがカタルシス、とマックは言った。
- ももこはキングスターと共にアイドル活動を始めたのだから、やるのなら互いが互いに責任を持たねばならない、コミュニケーションが足りなかったのはその通りだ、とマックは言う。だが、ももことしてもキングスターにアプローチが出来なかった、自信を持てないところはももこの弱さだ、と話した。勢いで、やったことのないアイドルPに挑戦しているキングスター、それが上手く行かないこともある。ももこ自身が自分を磨くためにこの街で何かしたか、とマックはももこに問うた。
- 街の人、新規住民にアイドルをやっていることを話したり、シャノールのイベントに出たり、大学の受付でアイドルの話をしたり、コミュニケーションを多くして名前を売ろうとしていた、とももこは話した。それぐらいしか、と言うももこに、マックは、まだまだやれることはたくさんある、と返した。自分が100%でやりきったと思ったときに、本当の絶望を味わえる、絶望を味わうのに君達は足りなさすぎる、とマックは声を張った。その優しさは決して失わないでほしい、その優しさの上で進化してほしい、と彼は続けた。鞭を持って互いを叩き、それを癒やすために全力で動く。その後、手を取り合って笑いあうために。
- まだやれることはあると思っている、とマックは言う。すぐに目の前にあるものを見て答えを出そうとする、答えを出してもらおうとする。もったいない。マックはそう言った。
- 出来なかったと言ったよな、と問いかけられて頷いた。一年前のステージは確かに短期間で仕上げられたが、キングスターとマックは違う。マクドナルドは厳しい。日々が主役をやっていたこと、彼女に厳しく指導したこと、マックはももこにそれを説明した。本番では不器用なりにも良いステージを見せてくれた。未だにこの街であのミュージカルを超えるものは公演されていません、とマックは言った。
- それを踏まえ、キングスターがそろそろやらなきゃいけないのではと言ったことに対して、マックはそんなこともないと思ったらしい。確かに時間は経っているが、自信を持って言える、良い公演だった、と。
- 第九、というものがあるだろう、とマックは話し始めた。今も語り継がれている有名なクラシック楽曲。それを作曲するのに10年かかっている。それが200年経った今でも聞かれている。クラシックというのは、その時代に全力で生き抜いた人間の証だ。それと同じように、キングスターが本当に最高のミュージカルをしたいのならどれだけ時間をかけたっていい、本当にやりたい人選でやったっていい、とマックは続けた。ポスターを描いてくれたまめもんに頭を下げたり、彼女に叱られたって良い、と言う。
- 戦は良いよ、とマックは言う。戦争というのは、なくならない。人間というものが生きている限り。だが、戦争があることで、平和の大切さを皆が知ることが出来る。言葉の言い合いもそうだ、喧嘩をしたとて、仲良く楽しいことが出来る。その喜びを、「幸せだ」と皆が言える。
- 皆は優しいから争うことを恐れている。本当にステージに立ちたければ、厳しいことを乗り越えなければならない。良いものを魅せたいから。
「朗読劇を超えたいから、素晴らしいミュージカルを見せたいからこのミュージカルをやるんだろ?この根本を皆は忘れている!」
- ももこがどうとか、職業紹介がどうとか、そこじゃない!とマックは言う。皆が感動する、沸くものをやりたいから。この街の本物を見せたいから、ミュージカルを、キングスターがやるのではないか。そこを理解しないまま話し合ったとして、無駄だ、とマックは強く言った。肉付けをする?そもそもが違う。皆は何に感動するんだ。何に沸くのか。
- 欲望を出して良い、とマックはももこに声をかけた。こっちから願い下げ、それくらい言ったって良い。ももちゃんは可愛いですのよ。こんなんじゃ皆を感動させることは出来ないわ!そうですわね、もう一度皆で考えなければいけないですわね。例えばこんな、ぴん子とももこのやりとりがあったって良いのだ。配役が変わったって良い。
- 今できる料理をしようとするように、出せるものを作ったのがキングスターの今のたたきの台本だ、とマックは言った。それを皆が超えなければ感動に繋がらないということを皆は気がついていない、とマックは言った。キングスターが言うように、試されているわけだ、もっとプラスアルファがほしい、それはステージに立つ皆が見せていかなければならない。それが出来ないのなら降りるべきだ、とマックは続けた。降りることは恥ずべきことではなく、良いものを作る上で大切なことだ。今の台本のままに配役を全て変えて完成させることは今直ぐ出来る、だが、それを皆が話し合ってやるべきじゃないか、とマックは問いかけた。
- がんばります、頑張りたいと思っています、と口々に言うのはこはるとぴん子。そこでマックはこはるに、キャバクラのシーンでは、こはるは別の場所の方が合っており、レンだけに任せるべきだった、と話した。そして、ダミアンとらみの公務員のシーンは、日常で警察に対して銃を撃っている者がその配役で良いのか、その二人がそれに対して物申さなかったのはどういうことだ、と二人に向けて話しかけた。もったいない!と声を張り上げる。ステージに立つのなら、自分が一番この場所に合っている動きをするべきだ、そうでなければ人は感動しない、とマックは語った。
- キングスターは何となく、皆がミュージカルに慣れるように、場を用意した。皆が互いに意見を言うことが大切であり、集まらなければそれが出来ないのは変だ、とマックは言った。そして、日々が凜として話していることに驚愕を隠せないマクドナルドは、昨日を知らない人からすると日々の変わり方に驚くだろう、とフラム、パンプキング、マアに声をかけた。
- 難しいかもしれないが、皆だったら出来る。GBCはこの街で唯一無二だ。自信を持って良い、そうだよな、キングスター、と声をかけられ、うん、と曖昧な返事を返した。
- 話の続きをどうぞ、と促され、口火を切ったのは日々だった。新しく書いてきたズズの台本を、ズズとぴん子を待っている間に読み合わせしていたのだとか。この物語で何を見せたいのか、正直分からなかった、と言う日々。仮定の話として、ももこをアイドルにして大団円とすると、そこまでの軸が見えない、軸が見えないからアイドルになった際に一緒に感動できない、と彼女は話した。大筋として見せたいものを逆算して、大筋を1本決めた方が良い、と彼女は話した。
- ズズが口を開きかけたところで、マックはそこで、大筋とは何ですか、と日々に問いかけた。アイドルが終着点ではなく、夢を目指すことが終着点、なのだが、それを日々は理解しているのか、と思いながら彼女の話を聞く。アイドルを目指すももこを見て、夢を叶えたいと共感してくれるストーリーに出来たら、と共感できたら、と日々は話した。
- それを踏まえて、第一回のミュージカルとどう違うのか、と日々は問うた。第一回のと筋は似ている、と呟いた日々にマックは息を吸う。
「打ち首じゃー!!!!!」
- 大声を出したマックに困惑の声のあがる中、日々が打ち首になった、とだけマックが言った。そもそも考えていることが違うよな、似たようなことをやったって感動するのか、とマックは問うた。仮定の話だったのだが、と言う日々に、そんなふわふわとした話を伝えて、と食いかかった。
- らみが声をあげたので、マックは、戦だ!と声を張り上げた。煩い。
- らみが、前回のミュージカルと違う点は、一人のシーンが日々主演の第一回とは違って少ない、ももこの内心はどう思っているのだろうと思った、とらみは話した。
- そもそも大前提として何を伝えたいのか、という話であり、今のは細かい話になっている、とぴん子がらみの言葉に対して伝えた上で、ぴん子が話し始めた。仮のプロットを考えてきた、メッセージだけ考えてあり、夢が叶うこの街に希望を持ってほしい、というメッセージを込めたい、と彼女は話した。まだ彼女は前回ミュージカルを見ていないため、これは前回と一緒か、と問いかけた。
- そこでキングスターが口を開いたところ、らみとぴん子の話だから入らないようにとマックに言われたが、前回ミュージカルを知っている人に対しての問いかけだったから、と返すぴん子。だが、らみもそれは知っていることだろうということで、マックは、らみとぴん子に「戦」を促した。
- いざゆかんですわ、戦いですわ、と言うぴん子に、受けますと返したらみ。確かに……と呟くらみと、それに、確かに?!と叫んだマックに、思わず心の中で笑いを零した。二人に噛みつきます、三つ巴の抗争です、と結局マックが間に入った。なんで、するんかい、お前。
- キングスターが以前ぽろっと話した話がある、これは一回目のミュージカルの続きだと、とマックは話し始めた。そもそも皆が頭からその話をしなければならない。夢が叶う街というのは、一回目にやっている。そこから離れないといけない。──キングスターの言葉を覚えていてくれたのだ、マクドナルドは。
- ももこの本質の話がほしいとか、それでいいのか、とか、そういう話は大事だが、最終的な景色は見えているか?と全体に問う。ももこがそもそも主人公として舞台に立ちたいか?皆がそれを知らないままももこを引っ張っているだけだ。今、キングスターが引っ張ってきたアイドルを、知らないままに使っているだけだ。本当にそれで良いのか?!打ち首じゃー!!とマックは声を張り上げた。……打ち首って、何?
- 次どうぞ、と促され、マアがおずおずと口を開いた。所々分からない話があったが、マアとしては、皆で作り上げるものか、GBCの力を見せつけるのか分かっていなかったという。GBCの力を見せつけることに主軸があると思っているのだが、その理解で合っているのか、と問われた。
- それに対し、レンが、座長のズズがどう思っているのか訊きたい、と言ったが、そこで、ズズと話していたことを話したい、とぴん子が切り出した。彼女の言語化に不安を覚えつつ、聞く。
- キングスターに仕事を背負わせすぎた。座長として、脚本家として、気がつくべき所に気がつけないほど余裕がなかった、と話すぴん子に、先程までの話と言葉を変えたことに驚きの声をあげた。自分達にも責任があり、座長として責任を取ってもらいたいと言ったことを彼女は話す。ぴん子としては座長を降りるべきだと提案したが、ズズは脚本も座長ももう一度挑戦したい、まだ続けたい、その代わり成功させる、と言っている、と続けた。今一度、このミュージカルの座長を続ける意志があるのなら宣言してほしい、とズズに声をかけた。
- 随分侮られている、キングスターはこんなことでいっぱいいっぱいになる奴じゃない、とマックは言い、キングスターの言葉を促したので、口を開いた。
- まずは、軸の話だ。マアの「どういう思いでミュージカルに取り組めば良いのか」という問いかけに対し、「GBCがまだこの街に存在しているということを見せつけたい」と話す。前回ミュージカルの演者はごく少数のメンバーであるため、今のメンバーにもミュージカルというものを経験してもらいたい。そして、現メンバーもGBCだということを見せたくて、サーカスをやりたかった、これが思いだ。マックもその言葉に頷いた。
- 次は、ぴん子の話について。ズズは、座長としての責任、というところに、まだ納得がいっていない。失敗した、と言っているが、失敗はしていない。何故なら、まだやっていないのだから。延期して、より良いものが出来るのなら、それは「失敗」ではなく「過程」だろう。だから「責任」がよく分かっていない。ぴん子は、責任の取り方として座長を降りることだと言ったが、それは絶対に違う。最後まで皆を導くことが責任だろう。
- そして、台本も頑張りたいと言ったものの、台本があまり良くないらしい。なら台本が得意な人に回せば良いと思った。キングスターは、座長が組んだ台本に対して皆が意見するものだと思っていたが、そうでないのなら、台本をイチから書いてくれる人に書いてもらおうという考えに至った、と話した。
- 台本に対して日々が色々言っていたが、軸の説明は最初にしている。前回は「夢を叶えるストーリー」だが、今回は「夢が見つからない子の話」だ。だから、夢など分からない、とおどおどしている子を主役にしたかった。どうすれば良いのだろうか、どっちつかず、やろうと思っても自分に出来るのか、そんな子を。そして、きっと夢を叶えるさ、という話にしたかったのだった。
- アイドル曲に関しては、今回のストーリーと無関係であることも話を何度もした。最後については、ももこのアイドルとしての宣伝もあり、また、ストーリーとして「夢を見つける」だけでは寂しいため、前回サーカスの「夢を叶える」ストーリーを省き、「夢が叶った後」を描いたのだ。
- ももこはおどおどしている子ではないし、と言いかけた日々に、ももこはおどおどしている子です、と言い切ると、日々、ぴん子、ひろし、レンが声をあげた。違う、違います、ももこをもっと見てほしい、と。だが、キングスターは彼女と二人きりで話す中、人のことを思い、悩んでいる彼女の姿を見てきたから、そう感じているのだ。すると、ももこのことをズズが決定づけるな、とぴん子に強く言われた。
- もっと良い部分を見ろ、駄目な部分を曝け出す必要が何故あるのか、と言われたので、良い部分だけ見て成長できると思っているのか、と声を張った。いいところだけ見て、その人間の本質が分かるわけがない、と。だが、ぴん子は、このミュージカルではももこの良さが出ていない、と言う。
「このミュージカルのももこ様のどこが良いんです?なよなよして全然挑戦してない、明るくもない。全然ももこ様じゃないですわ。もっと可愛くて優しくて、挑戦しまくる子ですわ、この子は!」
- そこに、ネガティブな部分があるのは分かる、と口を開いたのはダミアン。ももこの悪い部分ではないと思っている、慎重なだけだ、と彼女は言った。
- さらにチエリが、ズズはそういう女の子が夢を叶える話にしたいと言ったが、ももこからは夢を叶えたキラキラした感じは感じられないと言う。そういう人が、「夢を叶えた」という劇をやるのは、マックが先程話した「本心でぶつかること」にはならないのではないか、とチエリは問うた。
- 台本の前に訊きたいのは、ズズが続けるということで良いのかということだ、とぴん子は言う。失敗ではないと言うことは理解したから、と。
- だが、ここで、マックが噛みついた。そもそも君達はキングスターに台本を作ってもらって、台本の中で輝けなかったわけだ。だからこそキングスターに、期待はできないと、そんな厳しい言葉を言わせてしまったわけだ、と。君達は、今の目線でキングスターに、続けたいのかなどと問えるのか?君達は完璧なことをやってきたのか?とマックは問い詰める。まずは、キングスターに「座長をやってほしいか否か」を意見するべきだ、と彼は言った。台本を書き上げて、指示をして、もしかしたら実力はなかったかもしれない。ズズが座長としてやっていたことへの感謝はあるのか。それで、キングスターに続けたいのかを問うのか、と。
- ズズには感謝していると言った上で、もっとズズが活かされる役割をやるべきだと話すぴん子に、キングスターが降りた後の座長は、と問うマック。座長は要らないと思うとぴん子が言うと、座長は要らない?!とマックは驚愕の声をあげた。そこに疑問を抱えたひろし、噛みつきます、とマックが彼に振った。
- ひろしが、皆が座長で、皆が意見を出し合うという認識で良いのか、と確認する。肯定するぴん子に、それは、と口籠もったひろしに、同意するように、まとまらない、と零したまめもん。やはり否定的な意見が出ると予測していたのだろう、ぴん子はまぁそうですわね、と言い、だが、実際他に誰も出来る人が居ないと思う、と話した。マックが、こんなに人数が居るのに?!とさらに驚き、キングスターもまた、既に聞いてはいるものの、彼女の無茶苦茶な意見に、心の中で笑いを零した。
- マックがそこで、日々に話を振る。ズズのタスクを心配していた日々だが、ズズが座長を降りないままに、演出助手をつけたいと考えていた、と話す。ズズが見ることの出来ない分をサポートする人を増やす、という主張だ。それは誰が、と問うマックに直ぐ、私が立候補しようと思っていた、と返す日々。びーちゃんが?!?!と一層驚くマックに思わず内心で吹き出した。要らないと言われたらそれまでだが、スケジュール管理などを含めて自分がやろうと思っていた、と話した日々に、たっぷり間を開けて、それだけ?と問いかけるマック。それだけではないが、見切れない部分がたくさんあると思うから、と言いかけた日々の言葉を遮り、見切れるよな、とマックは見渡して言った。こんなにも人数が居て、そんなことも出来ないのか?と。各々の意識が少し変わればそんなことはできる。
- キングスターの大変なタスクというのはなんだ、とマックが日々に問い、台本を一人で見ているのは本当か、と皆を問い詰めた。最初は一人で見ていた、と言うぴん子に、演出家にどこまで口を出して良いのか分からなかった、と続けるチエリ。口出しについてはマックが促したことで出来ることになった。これでキングスターの重荷を下ろすことが出来る。他は?
- 日々が、全シーンを見たり、拘束時間が長かったり、動けない時に回す人が必要だと感じた。フリーな人が分かれば良いと思った。当日のスタッフ周り、やるべきことがあると思い、それをやれたら、と言った。分からないのに言ってるんですか?打ち首じゃー!
- こんなことは一人でやらなくても良い、とマックは言う。ワンシーンもキングスターを唸らすことの出来なかった日々が、そういうことを言ったとて届かないことを分かった方が良い、言い方を考えなければならない、とマックは日々に強く言った。1シーンも完成させることの出来なかった人物だぞ、それがキングスターに届くか?とマックは日々に問うた。
- 今だとキングスターが手一杯で全てを仕切っていると聞こえる。キングスター抜きで話し合いをしたという過程を忘れたのか、と。キングスターが言わない部分に意見した人も居た。休憩についても、もっとミュージカルを知った方が良い、見た方が良い、と話す。そして、1シーンも完成させることの出来なかった君がだ、助監督になって出来るのか?実力を見せてから言え、とマックは日々を強く詰めた。その光景を見て苦しさを覚えるズズは、マックに促されて口を開く。
- 日々が助監督をやってくれると言ってくれたことは嬉しかった、日々がシーンを完成させてないまま言っているとうことに対しても疑問を覚えた。でも、全員そうだ、と話す。だから、助監督も何も、と呟く。自分がやってみて、引っ掛かるところがあって、それを直していくものだと思っていた。だが、行動が伴っていないものに、自信を持って信用して頼むことは出来ない、と続けた。
- 要らないと言われたら何も言えない、と日々が静かに言う。本当にそう思うか、と日々にマックが問うた。だが、そこで、ズズさんは信用してって言っても信用してくれないんです、とチエリが口を挟んだ。けれど、今からコミュニケーションを重ねていけば、互いに信用出来る、とマックは話した。すぐに信用してもらうことはできない、と。その語り合いの裏で、言葉の難しさを実感したキングスターだった。
頭が、回らない。
何せ、構図はまるで、1対20だ。
- フラムがそこで口を開いた。練習に参加できていなかったこと、ズズに意見を言えなかったこと、それは申し訳なく思う、と言った上で、ズズの言い方だと、お前等が言ってくれなかったからじゃん、と聞こえてしまう。それは熱量が下がる、と彼は言った。ズズも相談出来なかったことを申し訳ないと思ってほしい、と言う。
- ズズの言葉のどこにそう思ったのかと問いかけた。訊くと、話の軸について何度も言った、と言ったことに対してだそうで、マックもそれを補足したが、その言葉の真意はあくまで「事実」であり、その言葉ひとつを取って、皆のせいにしているとは受け取ってほしくない、と返した。日々が言った話の組立て、軸が分からなかったという話について、何度も言ったことを伝えたのだ。そう受け取ってしまった、言い方は大事だとフラムは主張した。
- もう一点、ズズが相談出来なかったことについて、ズズは頼っているつもりだったのだが、どう訊くのが一番良かったのか、と問う。すると、皆に投げかけるのではなく、個々に投げるのはどうかと返ってきた。確かに全体に投げかけたこともあったが、シーンごとに個々に問いかけたこともある。それでは良くないのか、と問い返した。それなら良いと思うが、そこで数人で話して意見が返ってこなかったということか、と問われ、返ってきたものもあり修正をしたものもあるが、台本全体が良くないという意見があがった、と説明した。それこそ、なあなあにやっているのだと見えてしまう、と話した。
- ネケがそこで話を挟む。つまり、どちらも歩み寄れなかったという話だったということですよね、と言うネケに、その通りだと頷く。それは皆理解していると思っているから、この話は置いておいて良いのでは、と彼は言った。だが、大事な話ですよ、とマックが言う。ゆっくりでもフラムとキングスターは考えながら話をしていた、良い話だった、とマックはネケに伝えた。
- トゲのある言葉が出てきていることもあるが、ぴん子と話した際も彼女の言葉そのままを受け取らず、彼女の言いたいことを探った。それは彼女が悪口を言うつもりでズズに話しているのではないと信じたからだ。
- ズズの言葉の受け取り方も悪かったかもしれないが、自分の真意を受け取ってほしかった、と話す。上手くいっていると思っていたことに対して意見されて、言葉が出てこなかったことに対して、気がついてほしかった、と話した。もし、全てがズズの言い方が悪い故なのであれば、自分は、ああいう場で腹を割って話す前に、黙り込んでしまう、と続ける。何故なら、“本音”でなくなってしまうからだ。
- フラムが、全体の場では本音というのは出にくい、と話す。ぴん子と二人で話して本音を言い合ったことから分かるように、全員と個人面談をするくらいが良いとフラムは意見した。座長、副座長、というように分担すればいいとのこと。まめもんも同意を示していた。
「もっと話したいです、ズズさんと」
- 密にコミュニケーションを取れば、誤解というものも解けるものだ。それほど、座長というのはメンバーひとりひとりに時間をかけてほしい、とフラムは締めた。
- まめもんが、全体の場で意見するのは難しく、言ったとしても独り言になってしまう、と言った。ズズに伝えたら良かったという話も後から出てくる、と彼女は続けた。
- 一旦聴くように、とマックが口を挟み、これは良い会話だ、と話を続けた。キングスターに足りなかったのはひとりひとりに厳しく色々なことを言うこと、いわゆるコミュニケーションだ。それが足りなかったのは事実だろう、と問われ、首肯した。GBCの皆を知ってもらって素晴らしいものをしたい、とキングスターは言っていたよな、とマックは改めて繰り返した。決して、ミュージカルを自主的にやりたい人だけを集めているのではない、だから難しいものも生まれてしまう、と。慣れていなくて、良いものなのか自分自身に対して問いかけながらミュージカルに参加している者もいる。
- そんな中、キングスター対全員になってしまった構図というのは、お互い様だ、とマックは言った。これからは下手なプライドを捨てて言い合っても良い、と言われて、思わず、やだよ、と心中で嘆いた。──本音を言ったら、ああなるのだから。
- ネケが、腹を割って話せて良かった、と話した。そこで、まめもんが、ポスターで頼ってくれて嬉しかった、全体だと伝えきれない、と続けた。
- 本来ミュージカルは時間をかけてやるものだ、とマックは話す。初回のミュージカルが特例なのだ。とても難しいことであり、日々も泣くほど苦労したのだ、と語った。今回は十人十色の団員達をステージにあげなければならない点で一層難しい。適材適所、ちゃんと発揮されているか、考えてみると、今回のことは仕方なかったと思わないか、とマックは問うた。そこで、トウユンが会議に合流し、ズズの向かって左、ダミアン、カムに続く席に腰を下ろした。
- 日々の成長についてマックは話した。ここまで大きく発言した日々は見たことないだろう、普段の優しさが日々を成長させたのだ、と彼は続けた。良くも、悪くもだ。日々が助監督になろうと言うまで、皆はこのミュージカルを優しく撫でていたわけだ、とマックは語った。彼女の熱量は十分、届いている。
- けれど、日々が言わざるを得なかった状況を作ったのは今の環境だ。ひろ、とマックが声をかけた。日々の心情の変化に気がついたか、と。それに対し、強い子だとは思っていたが、昨日まで気がつかなかった、とひろしは話した。そこでマックがこはるに声をかけたが、寝ていたそうな。
- 話の区切りでトウユンがズズに声をかける。腹を割って話せる場ということで、数日起こったことを含めて、ミュージカルを成功させたい一心で貯めておいたことを話す、と言うので、彼からの言葉を受け止めるために気合いを入れた。ズズのミュージカルに賭ける思いを、何故ミュージカルをやりたいか、言うように言われて、「GBCがこの街に居ることを見せつけるため」、と何度も話した理由を伝える。だが。
「違うよね?」
- トウユンから返ってきたのは、それを否定する言葉。全部、ズズがやりたいから、やってるんだよね、と。GBCが、ではなく、と彼は言う。──ももこを勝手に主役をしたのもそうだ。
「あんたが!……やりたいからでしょ?違うの?」
焚き火の音が静寂に響く。
- ここ数日、ずっと思っていた、とユンが続けた。サーカスでのズズの言葉を聞いて、本当に熱くなった。GBCとして以前のサーカスを超える最高のミュージカルをやりたい、という思いだ。こんな熱い男だったのだと、ユンは嬉しく思ったそうだ。だが、この数日トウユンは、ズズが言った言葉を聞いて、ただ自己満足でやろうとしていたことだったんだ、とそう思ったそうだ。
- 未完の脚本を渡されたことに気がつけず、それを言えなかった自分も皆も悪い。だが、監督であるズズが皆に未完であるものを渡し、かつ熱量の話をしている、それは言っていることがおかしい、と彼は言った。そもそも、本来なら監督であるズズが完成されたものを演者に渡して、それを演じるだけで良いものが作れるところまでしなければならなかった。だが、ミュージカルに不慣れな自分達は、皆で作り上げるという形を取るしかなかった、それに対しての時間が足りなかっただけだ、とトウユンは続けた。
- そもそもズズがその事実に気がつけなかったのに、出てきた言葉が、皆に期待していないだとか、熱量だとかだった。そんなことじゃない、ものづくりは信用などという感情ではない、とトウユンは言う。やることをやらなければならない。それが全うできていない。と、語るトウユンに、どこかズレを覚えた。
- 待て、とマックが止めにかかる。話す前に、君達のターンだ、とキングスター以外に話すよう促した。──そもそも、皆に熱量が無いだとかそういう話を、キングスターはしていない。ここまでのキングスターの話を聞いていた人なら分かるはずだ。彼は、認めるのが怖かっただけだということを。
- 何も出ないのか、と黙り込む団員を見回してマックは言った。皆、何も出ないのか、と。キングスターにターンを譲って良いですか、という言葉でようやくぴん子が口を開く。彼女は、自分がズズに伝えたことと近しい意見を持っている、と同意した。続けてチエリが、台本が良くないということをマックに言われるまで気がつかなかった、熱量などに関しての意見はない、と話した。さらに、台本に関しては同じ、台本に軸がないという点では同意見だ、と日々が言った。サトシが、キャパが手一杯で自分のことに集中しすぎた、100%同意ではないが、台本については少なからずある、と肯定した。
「全て総意でよろしいですか?」
- 台本以外に色々話していたが全てに同意か、ということを皆に確認するマック。そこでマアが、そもそも皆で楽しむ劇だと勘違いしており、また、こういう劇に詳しくないために皆の演技に凄いという感想を抱き、おかしな点には気がつけなかった、と意見した。そこでマックは、彼女の力強さを良いと思ったのか、何故かキングスターの隣に座るようにマアを促した。
- ネケが、概ね同意だが、ズズの見えない努力もあるため、分かるけれど半々、と中立を取った。
- レンが続けて挙手し、ユンの意見に同意であると主張した。GBCの皆を信用出来ていないことや、熱量という言葉に関してはショックだったと言った。そして、キングスターの過去の話も聞き、その話も分かった一方で、謝罪がはじめにあったのなら心も晴れていただろう、と話した。ズズに対しては、エンターテイメントとしてのプロとして尊敬しており、面白いと思っている。だが、アイドルプロデュースや座長としては、キャパオーバーであり、向いていないと思っている、とレンは続けた。ミュージカルに対してのズズの、失敗していない、ということに関しては、もし告知していなければ内々のことなので失敗ではないが、告知した上で延期となったことは失敗だと感じている、と意見を異にした。
──人間というのは恐ろしいものだ。
ひとりが、ぽつり、と話せば、次々に出てくるのだから。
- なるほど、キングスターも言われたものだな、まだ待ってくれ、とキングスターに伝え、マックが他の団員に意見を促した。
- ひろしが口を開く。台本として、最終場面に自分が居なかったこと、忘れられるような役だったのかと悲しく感じたと彼の感情を吐露した。
- パンプキングが手をあげた。物語をナビゲートするナレーションという役割だからこそ、気がつくこともあった、そういう点をズズと二人で話す機会があった、と彼は話した。なかなか出来ない経験だという点では人一倍、前のめりな姿勢を取っており、ユンからこのままでいいのかという話を聞いた際、一歩踏み込んで視野を広く見るべきだったと自責の念を抱いた、とパンプキングは言う。一方で、皆に期待をしていないという言葉は、混濁していた状況下で出た言葉とはいえ、強いものだった。場に居なかった彼は伝えで聞いたそうだが、その言葉に寂しい感情を覚えたのだそうだ。それでも心境として、ネケが言った通り、半々だろうと彼は中立に落ち着いた。そんな彼にマックは、優しいねと声をかけた。──パンプキングは、キングスターにとっても、意見を言ってくれていたと感じる人だった。
- らみはマックに促されてまず、ズズに、脚本を作ってくれた感謝を述べ、ズズに全てを任せていたのは良くなかったと謝罪した。彼女は伝で熱量の話を聞いたのだが、もし自分がその場に居たとしたら嫌な気持ちになってしまう、間違いなく皆を傷つけた言葉だ、だから謝罪は皆のためにも言ってほしい、と彼女は言った。らみは、自分の意見できる点は意見をしていたつもりだと話した。
- ユンが話し始めようとすると止められ、他を促した。ずっと気になるところがあるが、誰もそれに触れない、と言ったところで、フラムにマックは声をかけた。今までのことに関してはズズと話した通りであり、ズズの言葉に対して嫌だと思ったことに対して、もう一度話せば誤解が解けた、もっと話そうというのが結論だった、と彼は話した。ユンが話したことについては、とマックが問いかけ、それに対しては咀嚼し切れていない、と返答した。
- 次に、マックはももこに声をかけた。上手く咀嚼できていなくて、と言った上で、先程話したこと以上では、ぴん子と日々が自分を明るいと言ってくれたことが嬉しかった、と話した。
- ユンが話したことでひとつ気になったことがある、とマックは言う。「キングスターが、自分がやりたいミュージカルをやっているんだろう」ということだ。自分のためのミュージカル、それは皆そうだと思っているのか、と問う。
- そこに関しては違うかもしれない、と日々が口を挟むと、何故言わなかったのか、とマックは問い返した。ズズのためではなく、演じている皆のためにズズがやったのではということは理解していた、と話す日々。皆を良く見せたいという気持ちで出させてくれたのではないか、と彼女は解釈していた。ユンが違うことを言っていると思っているということか、とマックが問い、それに対しては、トウユンが違うということではなく自分がそう思っただけだ、と日々が返答した。
- フラムが、個人的には皆を出したいという気持ちがあったからキャスティングしたのだろうけれども、まず自分がミュージカルをやりたいというのが原動力だったのでは、と発言した。
- 同意を示そうとするフラムに、ユンがさっき言っていることは違うだろう、まるでミュージカルをやることが自分のエゴみたいな言い回しをしていただろうとマックは指摘する。それに皆は、一言も触れなかった、と。すると、ももこのアイドル曲の件を出し、エゴは出ているのでは、とレンが同意した。マックはレンに、キングスターにその事柄を変えるように意見したのか、などと色々問うているが、耳には入らなかった。
GBCのために動いていたことだった。
“エゴ”だと思われていた。
伝わらなかった。
- キングスターがどのような言動を取ったのか、何となく理解したというマック。悲しかったんだろうね、だけど、悲しいことも乗り越えていかなければならない、とマックは静かに言う。
「今、ユンが言ったことは、キングスターを非常に悲しませるようなことだったよ。そして君達も同調しているということは、キングスター、対、皆だ。寄ってたかってキングスターに対して言っているって、それも理解した方が良い」
- 来てくれ、と覚悟を決める。キングスターのターンです、どうぞ、と言われ、口をようやく開いた。
- 皆の熱量がないということなど、キングスターは一言も言っていない。どうして人を信用出来ないのか、頼らないのか、と問われ、頼れていないことを自覚し、過去が過ぎった。そして、腹を割って話せと言ったため、人を信用出来ないということを話した。人の熱量に対して信頼を置くことが出来ない、どうしても、過去が過ぎるからだ。皆がどれほど努力しているのかは分かっているが、それを信頼することが出来ないと話した。100%自信が持てないという話が、曲がって聞こえたのかもしれない、と謝罪する。ああいう言葉の選択しか出来ないほどに、冷静な判断が出来なかった。
「皆のことは信じてるよ」
- だからこそ、ミュージカルは皆でやろうと提案したし、本番数日前にストップもかけなかった。でももう、そういう言葉だけを受け取って、伝えで聞いて、そう思うのならそれで良い。トウユン、レン、フラムが言った、或いは同意した、“ズズは自分のためにやりたいのだ”という言葉。
ショックだった。
「オレ、やりたくないよ、座長なんか」
「でも皆のためになるんだったら!このGBCが大きくなるんだったら!」
「オレも一歩進んでみようかなって!オレも一歩、やってないことやってみようかなって!」
「過去と戦ってみようかなってッ!!!」
キングスターの慟哭が、耳を劈くように響く。
今まで表出することのなかった“怒り”が露わになった瞬間だった。
座長など、やりたくない。台本など組んだこともないのだから。
今まで“アイドル”を、ももこと一緒に作ってきた。彼女とたくさん話してきたつもりだ。
彼女の弱いところも見せて良いと思ったから。ももこが変わりたいと言ったから。
だから慣れない手付きで、ひとつひとつ文章を考えた。
けれど。
「それが全てオレの“エゴ”?」
皆のためを、思っていたはずだった。
「もういいよ。やらない。サーカスなんか、やんない。皆のためになんか動かねぇ、もう」
もういい。
静かに、諦観と絶望を滲ませるキングスターに、トウユンが声をかける。
「ふて腐れているところ悪いけど、ちょっと喋らせてもらっていいかな」
「ユン、ストップだ」
「駄目ですか?!オレは喋りたい!」
「他の子が喋る。他の子が喋らなきゃいけないんだ、ここは!君が喋ってどうなる!」
そんな、マックとユンの言い合いを余所に、キングスターは引っ掛かりを覚えた。
彼の放った、ふて腐れている、という言葉は確かな違和となり、キングスターの心に残る。
「お前、ふて腐れているだと?こんだけオレが腹を割って話してんのに、ふて腐れているだと?!」
「ものづくりに腹を割る必要なんてないんだ」
「お前が腹割れっつったんだろうがよ!お前が腹割って喋れっつったからオレは、今までずっと押し殺していた、静かな心を開いてやったんだろうがよ!!そしたらこのざまか、てめぇ!!!」
マックが宥めるように止めようとするが、キングスターの叫びは止まらなかった。
「オレを落とすだけの、ただの、」
「お前そんなさ、オレを落とすためとか」
「そうだろうがよ!今の、ふて腐れてるのが悪いだと、てめぇ。お前こそ言葉を選べ、ガキが」
待ちなさい、とマックが制し、ようやく二人の言い合いが止まった。
- 口火を切ったのはレンだ。エゴと言った部分については、物語の終盤に関する点で、ストーリーについては納得できる肉付けが出来れば良いと思っていると言う。ももいろハートを使うことに対して、エゴ──ここでは“こだわり”と言い換えた方が彼の意図が伝わるだろう──と思っていた、とレンは話した。今その話は必要か、とマックに問われ、レンは引いた。
- キングスターとユンに対しては言いたいことはないのか、とレンに、アンダーボスとして問うた。正直両方意見は分かる、ぶつかるべきしてぶつかった、とレンは話した。殴り合ってぶつかり合って、戦をした先に見えるものがある、とレンは言った。
- 戦を続けてほしいと思うのか、と問うマックに、真っ先に否定の声をあげるダミアン。ひろし、まめもんなどからも、やめるように思う声があがり、続けて、ネケが口を開いた。戦の仕方はちゃんとしないと、と彼は言った。
- 話を割り込んで申し訳ない、と幼い声が響く。カムだった。先程まで黙って聞いていた彼がここで口を開いたことに驚きを隠せない。カムは、こんな形になると思っていなくて、関わっていなかったからこそ耐えられない、と言った。このミュージカルを楽しみにしていたカム。良い衝突ではない、腹を割って話し合うというのは良いこともあるけれど、皆冷静じゃないと思う。聞くのが辛い、とカムは呟いた。
- マックはカムの言葉に頷いた。みなさん、と彼は団員を見渡す。言い合うことは悪くない、どうしても相手に分かってほしいことがあるものだ。言いたいことがあるのは分かる。
「私は正直、キングスターがごもっともだと思ってる」
……。
(え~~~~~~ッ?!?!?!?)
- まさかマックからそういう言葉が飛び出すなどと思って居らず、心の中でしばらく驚愕が隠せなかった。マックは、そもそもキングスターに、座長をやったらどうだと提案したのは自分だから、と話す。その過程を忘れているかもしれないが、キングスターは任されているわけだ、と。マックが座長をやるものだとキングスターは思っていたはずだった。けれど、キングスターに敢えて任せた、とマックは語った。そして、どういう意図があってキングスターに任せたのかも話している、と。
- 物語というのは、作り手は必ず結末を考えている、とマックは言う。確かに、キングスターはこのミュージカルの話を、突発的に受けて、やらねばならなかった。そして、皆を出してあげたいという気持ちから筆を執り、作り上げた。確かに、結末は弱かったかもしれない、けれど、初めてやるものなのだから、上手く出来ないのは仕方ない。それを皆で、上手く作り上げれば良いと、キングスターは言っていた、とマックは続けた。
- キングスターはちゃんと言ってるんだよ、とマックは強く言った。涙が零れそうだ。続けて、もちろん体はひとつしか無い、だからこそ対応できる人も出来ない人もいる、と彼は言う。
- どうすれば良いか、マックに頼った人も居るが、頼らない選択をした人も居る、とマックが話す。と、ダミアンがその点に関して言葉を発した。マックに頼らなかったのは、座長としてズズが任された以上、ズズの想ったことをやりたかったからだ、と彼女は話した。迷わないために、マックに意見を聞かなかったのだ、と。ちゃんと考えてるじゃないか、とマックはダミアンを褒めた。他の子達は、と問いかける。
- キングスターは多くのタスクを熟してきた。完璧ではない部分が目立つ、例えば、キングスターが発した言葉。だが、もっと拾うべき言葉がある、とマックは言った。
- トウユンは確かに、しっかり仕上げてきた。だから声をあげるのも分かる、だが、キングスターだけの責任ではない、とマックは言った。私は第三者です、ミュージカルには正直あまり関わっていないに近い、口出しをしていない、と言うマックに、ふと思う。……口出しは、してるけどなぁ。
- マックは、喧嘩をしたその後に素晴らしいものを完成させるその瞬間が見たい、と言った。辛いのは分かる、だけど最高のスパイスだ、なかなか手に入らない、と彼は恍惚とした声をあげた。
「この後、最終ラウンドに入ります!」
(魂:「寝るって!!!」)
- マックの宣言に魂が悲鳴をあげるのを余所に、チエリに声をかけるマック。眠いかと問われた彼女は、まだまだいけますよ、と返した。続いて、行けます、と口にする人が居る一方で、マア、パンプキング、が眠る中、オレも寝たいという悲痛な心の叫びと共に、意識を失った。
- 会議室にて意識を取り戻すと、降りないでくれ、というまめもんの声が聞こえた。彼女に魂からの相談をすると、とりあえず最悪飛び出せば、駄目なら僕が拾うしか、などと相談に乗ってくれた。そういうロールプレイ?何のことでしょうか。
- よく来たな、とマックに言われ、逃げるわけないじゃないすか、と返す。そのまま、幾分人の減った会議室の、先程と同じ位置に腰を下ろした。おはよう、と言う面々に挨拶を返した。カムが、眠ると言うタイミングを逃したから、と起きて来た。
- 日々がなかなか起きてこないのを、彼女が折れるはずがない、と言うマック。どうやら日々の脳が弱まっているそうで、起きるまでに時間がかかるそうだ。
- そうしている間にまめもんから電話がかかってきた。電話をしていると、声が大きすぎて内容が丸聞こえであることをツッコまれて吹き出した。心配なく、と彼女に伝え、電話を切った。
- 日々にも聞いてほしい話ではあるが、待っていても仕方がない、とマックは話し始めた。キングスターもユンもまだ言いたいことがあるだろうが、他の皆も分かってほしいことがある、と。何を目的とした会話なのか、見据えていなければ怖いだけである。結末の意識さえあれば。と、マックがふとこちらに向かい、ここで一応言っておきます、と口を開いた。
「キングスター、君は今、ひとりぼっちと思っているかもしれない」
「大丈夫だ、君の味方は私が居るから」
- キングスターのターンから、とマックは促した。言いたいことがあるなら思うことが言った方が良い、とマックは言った。この会話の結末はどうなっていくか、頭の中で想像力の扉を開き、このGBCを神秘なる未知の世界へ、連れて行きましょう。
- よく分かった、とキングスターは話し始めた。皆の本音、思っていることを聞くことができたから。皆のためにやろうと思ってやったことだったが、違ったようだ、と零す。見え方も、やり方も。新しいことにチャレンジしようと今までやってきたが、今回は失敗だったようだ。ミュージカルは、否、ミュージカルどころじゃない。何に置いても、仕切るのは、オレじゃない、と呟く。
- 自分が変わって、試行錯誤すれば良いとも思うが、今この心境でやろうとは思えない。だが、皆がかけてくれた厳し言葉をそのまま受け取るのではなく、皆の真意を汲み取って、ちゃんと信じて受け取った。皆を信じて受け取ることにした、と伝えた。
- ぴん子がそこで間に入った。そもそも当初、この会議はミュージカルを作っていこうという会議であり、皆の本心はミュージカルをやりたいという思いだっただろう。だが、自分は会議の前に、私情だけで、自身の気持ちを伝えるために、ズズに罵詈雑言を浴びせてしまった、と謝罪した。この会議が長引いた理由はそれだ、と。
- 言わなくても良い以上の酷い言葉をたくさん言ったから、ズズはぴん子のことを信用出来なくなって、もういいとふて腐れたくなってしまったのだろう、と彼女は言う。それ故に、危うくミュージカル自体もなくなりそうになっていた。ミュージカルをやりたいかやりたくないかなど一目瞭然であり、皆ミュージカルをやりたいという思いは同じだ、と彼女は言うが、キングスターはその言葉に内心で怪訝な表情を浮かべた。
- こんなところで止まっていたくない、自分が謝るから自分に免じて舞台の話をしたい、と言う彼女に、それは無理だよ、と返した。ぴん子はむしろ悪くない。説教と怒りは違う、意味のある暴言だったと思うか、と彼女が問うのに、意味のある暴言だよ、と返す。
「あれが“人間”だろ」
- ぴん子に、溜めさせてしまった。そういうところまで汲み取った。言いたかったことが言えなかったことが手に取るように伝わった。ももこもそうだった。あれが良くないこととは思わない。それも大切だ、と返した。
やっと分かったんだ。
心割ったのは、大声を出したのは、この会議が初めてだった。
ずっと蓋をしていた。怒りも、他の感情は別の人格に任せていたから。
- それなら、どうして出来ないのか、と問われて、静かに返す。「皆の本音を知ってしまったから」──“みんな”に自分自身のためにやっていたと思われていたから、と言いかけると、それを言ったのはトウユンであり皆でまとめないでほしい、と、トウユン自身も含め、口々に声があがった。ごめん、とそんな皆に返し、皆からも否定の声の広がる中、マックの声が、しかし!と響いた。
「しかしだ!私は何度も訊いた。同意なんだな、と。ユンの意見と同意なんだなって。ユンが言っていたのは、明らかにそういう口調でキングスターに伝わる言い方をしていた。それは皆、分かっているはずだ」
- 今、そんな心境のキングスターの意見をひっくり返すのに、質問を投げかけるような甘噛みではだめだ、とマックはぴん子に強い言葉を投げる。続けて、キングスターも彼女にそっと声をかけた。だからオレは、ああいう場で腹を割って話そうと言う時に、私は言っていないと言ったけれど、あの場でそういう意見が出なかった時点でオレは、そう思うしかないよね、と。これは、熱量、という言葉を使った時と同じ事だ、と。
- 確かにそうだ、とフラムが口を開く。エゴという誤った言葉を出したことは、元々気が進んでいなかったがやってみようとズズが言っていたことを、その言葉を発した後で思い出してしまったからだ、と話す。さっき、ズズが言葉を間違えたことを修正して理解した。同じように、自分も間違って言ってしまった、こういうすれ違いを解消するために話し合おう、とフラムは自身が出した意見を繰り返した。そして、絶対にミュージカルに座長は必要であり、出来る人もズズしか居ないと思っている、と彼は主張した。ズズの言っていたことに対する誤解は理解した、だから自分達も誤りを修正させてほしい、と言った上で、もっと話しましょう、と言葉を締めくくった。
- ミュージカルのみならず、これから先GBCとして付き合って行く中で、もっと話すべきであることは分かる、とズズは話す。大型の話──過去にGBC内で同様のすれ違いが起こっているのだが──も、あるだろう。だが、話し合いを皆やってこなかった。避けた結果が如実にこのミュージカルの一件で出てしまった。
- ただ、座長がズズしかいないという意見は、軽すぎる、と続ける。本当に自分で良いのか、今までの皆の意見を聞いて、思えない。台本、プロットもままならず、皆の意見を引き出せない。追い詰められた時に誤解の生まれる言葉を発し、延長しなければならないという見極めさえ出来なかった。こんな大量の言葉をもらった中で、ズズしか居ない、などとそんな言葉、響くわけがないだろう。
- 理由はある、一番場数を踏んでいる、とまめもんが言うが、ミュージカルの場数など踏んでいない、と返す。それが今この末路だ。
- トウユンが、自己満足かどうかと聞いたよね、とズズに確認する。ズズがやりたくないと思ったことが嫌だった、そして、「自己満足だ」と言ってほしかった、と彼は言った。皆を出してあげたいということも、ズズが“やりたい”と思っているからじゃないのか、と。エゴイズムは作り手に必要なことであり、悪いことだとは思っていない、と彼は続けた。
- 今回のモチベーションは、と、嘘偽り無く話すことに決める。「こいつら全員、オレが所属しているGBCの面子なんだぜ」ということを訴えかけたかっただけだった。そのために何でもやるつもりだった。それが、ズズがこのミュージカルでやりたかったことか、とぴん子に問われ、これはミュージカルそのものの目的であり台本とは別だと説明した。
- ダミアンが口を開く。台本に関して、重きを置いているのはなるべく多くの人が出られるようにしていることであり、内容については考えきれておらず、力量もないから自分で精一杯だったと話した。即興でやって来たからこそ、それで乗り越えられるのではという甘い考えを持っていた、無責任だった、と続けた。ズズが言った言葉に関しては、ズズに「自信がないから」やりたくない、と解釈していたそうだ。ミュージカルをやりたい、ズズが座長で、とダミアンは震える声で話す。尊敬するマックの意見を聞かなかったのは、ズズを信じていたからだ。やめるなんて言ってほしくない。そう、涙が溢れそうになりながら訴えかけるダミアンに、でも、こんなに言われたんだよ?と問いかけた。
「一人じゃないじゃん。何回も言ってんじゃん。綺麗事に聞こえるかもしれないけど、うちは離れないよって言ったじゃん」
- 一度キングスターの心の骨をおるまで、キングスターを諦めさせるまで、手を放そうとしたことを忘れてはならない、とマックは告げた。
- トウユンが怒るのも分かるが、自分達も反省しなければならないことがたくさんあるから、ズズが悪いとは思っていない。悪いと言うのなら、全員だ、とダミアンは呟いた。
- キングスター、
Andante .とマックは言葉を促した。そのままゆっくりと口を開くキングスターは、ダミアンに感謝を告げる。ずっと彼女は、離れることはないと言ってくれていた。ダミアンからその言葉を聞けたのは良かった。でも、ダミアンだけじゃないから。皆で作らなければならないから。 - 皆、と言うならズズも必要だ、と言うダミアンに、見ただろ?と問いかける。座長が要らないとまでなってしまった。解釈が下手なのかもしれないが、これほどたくさんの人に、言い方は悪くなってしまうが、「責められた」ら、オレが悪いのかな、となってしまう。皆集まっていたからもしかしたら、と、そういう解釈しか出来なくなってしまう。
- ユンが、ズズに対して言いたかったことは、熱量に関する言葉だけだったと言う。ズズが頑張っているのは分かっている、ズズが頼ってくれたからあのクオリティのものをトウユンは仕上げてきた。ズズとここに居る皆でミュージカルをしたいと思った。ズズの言葉でミュージカルをやりたいと思ったからこそ、ズズの言葉に引っ掛かってしまったのだと言う。ただズズに、やりたいと、言ってほしかったのだ。このミュージカルというものは、ズズが言わなければ起こり得なかったことだ。もし自分ならやれなかった、やると言ったズズは凄いし、それを皆で支えなければならなかった、と話す。ズズのやりたくないことをやりたいと思えないからこそ、ズズの本意を知りたかったのだ、と彼は明かした。
- 表現者として、見せる人のためにやるものだと思っているとトウユンは話す。衝突したとしても、全力を尽くす。そうでなければ観客に失礼だから。見せるには、根底に、自分達がやりたいか否かが必要だ。ズズがあの時聞いた熱量で“やりたい”と思っているのかどうか、知りたかった。
- キングスターに何を望む、とマックに問われ、ユンが口を開く。自分の気持ちだけをぶつけてごめん、と、ようやく謝罪の言葉が飛びだした。自分の気持ちで傷つけた、ズズの言葉で傷ついた。
「ズズさんが座長で、ここに居る皆と、本当にミュージカルを作りたい。GBCは、ここに居る皆一人一人がいるからこそGBCで、それをこの街に居る皆に示したいって、心から思っているから」
- うん、と咀嚼するように頷くと、分かるよな、とマックに問われた。ユンは知らないなりに、選ばれたからこのミュージカルに向けて闇雲に、やるからにはやるんだと、やって来た。延期したとしても良い、皆生き急いでいる、とマックはいつも言う言葉を放った。ただ、延期の仕方が問題であり、手を放したように見えてしまった。
「キングスターはね、皆さんに嫌われたくないのが分からないか、皆?」
「そもそも皆のことを好きだから、嫌われたくないわけですよ」
- だからももこにもキツいことを言わない、とマックは言う。キングスターがそういうことを物怖じせずに言えたらと願い、敢えてももこをキングスターに任せたのだ、と続けた。ももこも乗り越えなければならない、引っ張られるだけでなく自分が引っ張らなければ、と彼女にも声をかけた。
- 話すようにマックから促され、ユンが言っていることは分かっている、と言いかけた声が届かず、マックのターンが続いた。
- どうぞ、と再び促され、ミュージカルの話は分かった、ずっと伝わっている、と話し始めた。分かっている、けど、難しい。やりたくないならやりたくないと言って、と訊かれたので、「今は」やりたくないと返した。熱量の話をしたあの日まではやりたかった。
- いつものペースと同じだったから分からなかった、トウユンに言われてマズいことを知った、と話す。マズかったのは台本が未完だったことだと言うトウユンに、それについて、台本は合ってないようなものだと考えていた、前回サーカスもそういう面があった、と説明した。稽古が出来ている状態じゃなかった、台本に精一杯だった、台本通り熟すだけじゃいけない、このまま稽古を進めるには時間が足りないと、トウユンは思ったのだそうだ。だが、キングスターは出来ると思ってしまった。過信していた。
- そこでマックは、そこで言うキングスターの“出来る”というのは、これまでの“何となく”だろう、と言う。素晴らしい理想的なものが出来るとは思っておらず、日程も出し、ポスターも書いてもらった手前、何とかなれの精神だっただろう、とマックが言うのに、うん、と頷いた。だが。
- 本当にうんって思ってる?とまめもんが突然声をあげた。どうした?と困惑の声をあげるマックだったが、まめもんが話し続けるのを見ると、その話をじっと聞いていた。同じ話をずっとやってる、とまめもんは嘆くように言った。ポスターも言ってくれたら描き直す、直前で変わることなど当たり前だ、と彼女は続けた。
- 同じ議題が出て、何度もズズが同じ事で謝って、ズズが何回も虐められているように見えてしまう、とまめもんは悲しそうに言った。皆優しいからそんなつもりはないのかもしれない、だが、彼女にはそう見えてしまったのだろう。ダミアンだって、チエリだって、こんなにあたたかい言葉をズズにかけているのに、でも、だってとズズが言うのはおかしいじゃないか、と畳みかけるように言う。
「助けてよ……」
悲痛な声が響いた。
- 分かるよ、とマックは言う。もう少し待ってほしい、とマックはまめもんに声をかけた。黙っていたこと即ち同調ではないと主張するまめもんに対し、ユンに同調したと捉えられてしまうということを分からなければならない、キングスターは今そう捉えてしまったんだ、この事実を変えなければならない、とマックは語った。
- 他の子どうぞ、と言うマックの合図と共に、チエリが口を開いた。台本についてチエリはあのままで行けると彼女が言ったことはちゃんと覚えている。そして彼女も、ズズが皆あのままで行けると信じていたことを覚えてくれていた。でも、そこからマックの話を聞いて、チエリは演劇は本当の心を伝えなければならないということを知った。もっともっと良いものを作るにはこの台本では駄目なのだと思ったそうだ。もう一度伝えたかったと言う彼女に、ちゃんと覚えていると返した。
- これでもういいや、としたら、これまでと一緒だ、とチエリは言った。過去、どちらも裏切られて終わった話だった。ズズが悲しくなり諦めてしまうことが多かった。
「絶対にチエリ裏切らないぞって言ったよね?」
- 一緒に作っていきたいという気持ちは変わっていない。いっしょにやろう、と言うチエリ。続けてマックが、昨日、ズズの台本の軸を一番そのままに肉付けしていたのは彼女だと教えてくれた。肉付けすれば良いものになると思う、とちゃんと台本を読んでいたそうだ。ももこが主役でないという解釈をしたのも彼女だけだった、と。ズズの台本の理解は、チエリが一番していたという。
- トウユンが口を開きかけたが、チエリに一言言って良いかと了承を得る。ありがとう、と伝えると、ごめんね上手く言葉に出来なくて、と返すチエリだったが、彼女の思いは十分ズズに伝わっていた。分かるから、全部。
- トウユンの言葉を待つと、言葉で家族とか信用信頼ということは難しいと思う、と話し始めた。だから自分は行動で示した、と言うので、分かるよ、と返す。俺の気持ちはズズにちゃんと伝わっているか、どう思っている、と問われた。敵だと思ってる?と訊かれ、敵とか味方とかそういうものはない、と返した。
- 俺のことはどう思ってる?と再度訊ねられたので、凄く熱があって、トウユンが自分以外の曲を作るのは苦手だと知っていたのに、ちゃんと仕上げてきて、その分応えなければと思った、と話す。アレに追いついてやろうと思った。凄く楽しかった、と。
- トウユンが全てきっかけをくれた。彼が本音を話せと言ったから、本音を話したのだ。もう少し、深いところまであの言葉を知ってほしかった、と言いながらも、トウユンも思うところがあって瞬間的に使った言葉もあるだろう、と話す。彼に、ミュージカルに熱い思いがあるということはちゃんと伝わっている、と伝えたのだが。
「違うね」
- 違うらしい。ミュージカルに対しての思いは当たり前にあるのだが、それ以上に、ズズが言ったからここまで頑張っているのだ、ズズのために、という思いが根底にある、と彼は言った。ズズじゃなければやらなかった。自分が出来る精一杯をやろうと思ったから、とその一心だったそうだ。だからこそ、ズズに言われた言葉が刺さってしまったのだ。だが、ズズの本心を知り、再びミュージカルをやりたいと思ったのだそうだ。
- 君がきっかけを与えて開花させたということだ、とマックが付け加える。花咲かせたのなら花瓶に入れろとそういうことらしい。それには気がつかなかった、と話すと、トウユンに、今でも届かない?と問われる。分からない、と返せばそれに、これほど言っても分からないのかと驚愕するトウユン。俺のこと嫌いだろ、嫌いでも良いけどさ、と呟いていた。それに対しマックは、嫌いなどではなく、分かってるけれど、すぐに折れた骨は治らないから待つことも大切だと窘めていた。
- ぴん子が話し始めた。ズズに座長を辞めろ、と言い始めたのは自分だと話す。そんな自分が言った言葉で信じられるかは分からないが、このミュージカルを通じて改めて家族になれていると思っている、と話す。このミュージカルだけでなく色々なときに助けてくれて、きっかけを作ってくれて、ズズには感謝していると彼女は言った。ズズと何かを成し遂げるのは楽しいし、それを目指して、ズズの元で学びたいと感じていると言う。今までズズに任せきりだった部分があったからこそ乗り越えられなかった部分も、今の自分達なら乗り越えられると思ったそうだ。そして、座長を頑張ってもらえないか、と言われたが、響かないよ、と返した。
- 願望を言うのでは違う、折れた心を元に戻し強くするのであれば、キングスターの気持ちを考えるべきだ、とマックはぴん子に伝えた。
- 他の子、と言われてひろしが声を発した。寄り添えていなかったことに謝罪し、今こうして本音で話し合うことで先が見えてきたと言う。台本については別の舞台で書いているため、力を貸すことが出来ると彼は話した。ズズきっかけで始まったミュージカルだから、ズズ無しでは、そしてズズが率いる以外はあり得ない、このミュージカルを成し遂げてほしい、とそう締めくくった。
- キングスターどうぞ、とマックに促され、ズズが座長であることについてひろしはどう思っていたのか、と問うた。ズズだったらやるんだろうなという一心であり、信頼しきっていた、と彼は言う。座長を降りた方が良いとか、エゴだとか、そういう話についてはどう思っていたのかと問いかける。アイドル曲について、こだわりはあるのだろう、GBCの凄さを伝えるためだと考えたら流れも納得する、と話した。だが、ももこの曲についてはそこまでこだわりはないだろう、とマックが指摘した。ももこが最後に歌っているからそこを際立てているように見えるかもしれないが、と続けた。
- 座長はオレじゃなくても良くないか、と問いかける。厳しい意見が出て、それに特に思うところはなかったのだろう、と。確かに、と彼は、場に出た意見に納得していた。座長として良くないという意見に納得している時点で、ズズが座長では良くないという考えに至るのが自然だろう。
- トウユンがそこで口を開き、時間の足りなさだけを指摘したのであり、座長としてふさわしくないとは思っていない、と話した。だが、トウユンの話は十分聞いた。今は、ひろしの意見が聞きたい。
- マックが、もしひろしが脚本を書く立場だったとしたのなら、ももこや他の人に何をやらせるか問いかけた。主人公を設定しない群像劇にするとひろしは答えたが、マックが訊きたいのはそうではないらしい。するとひろしは黙って考え込んでしまうが、タイムオーバーだ。彼が答えられなかったこの質問に、キングスターは宛て役だが割り振った、と話す。全員を混ぜることは難しいことを踏まえた上で、台本の話はもういいと言う。皆をまとめるという難しいことをやろうとしたキングスターは挑戦しているし、そこに感謝だろ、とマックは言った。
- 皆は座長を降りた方が良いという意見に沈黙という名の同意をした。キングスターもキツい言葉をかけたかもしれない。だが、キツいことをキングスターに言ってしまったのなら、謝罪が先であり、やってほしいと伝えるだけでは駄目だ、とマックは言った。泣かせた子にどういう手を差し伸べるのか。
- すぐに庇えなくてごめん、と真っ先にまめもんが謝罪をした。そして、皆はどうなの、とまめもんはサトシに振り、サトシが涙声で謝罪と感謝の言葉から話し始めた。
- こういった場面で発言出来ないから、そう思わせたのはごめん、と彼はゆっくりと話した。ズズと出会って、サトシこれやって、とイベントで無茶を言われて、出来ないと言ってもサトシなら出来ると何度も言われて、それが凄く嬉しくて、と語るサトシ。色々なことがズズが発端となって。歌えなくても出来るよと言ってくれて。自分が出来る限りの全力を尽くしてやろうと思って。本当に、ごめん、と、彼は泣きながら謝罪をした。
- これまでは話せる人が話してそれに乗っかっていたが、皆話せる魅力的な人だ。喋って良い、皆の声が何かを変える、とマックは言った。他の子は、とマックはキングスターに待つように促した。
- レンが挙手をして話し始めた。正直、今回の件は互いが悪いと思っており、謝ることは謝り、感謝を伝える部分は伝えるのも分かる。だが、レンの引っ掛かっているのは、ももいろハートの件だそうだ。だが、あたためていたというよりも、放置されているように思えた、ももこに謝ってほしいと思っている、と思いを吐露した。
- そして、ミュージカルについては、ぴん子の意見に同調した、とレンは言い切った。失敗については価値観がある、とマックは補足する。ズズが、披露していないのなら失敗と言わないと考えているのに対し、レンは、期日までに仕上げられなかったことを失敗としている。それがオレのエゴだ、とレンは締めくくった。
- ももちゃん、とマックは声をかけた。キングスターにももこのアイドルプロデュースを振ったのもマックだ。キングスターが乗り越えなければならない、その先の境地に至らせるために。
「彼自身が見たことのない世界へ連れて行くのが団長としての仕事だと思っています」
- ももこのアイドル活動は、才能を買っているキングスターだけでなく、ももこにも課題があった。家族になりたいからGBCに入ったももこ。だが、彼女自身、心の開かない部分があった、それが開けるようになるためにアイドルという仕事を振ったのだ、と。放置されて寂しかったことも話して良い、とマックは彼女に言った。色々なことをキングスターはやっているから、放置されているように思えるかもしれないが。
- レンの、ももこに関する話は彼女自身と話すことにした。また話そう、とももこにも声をかける。本音を聞いて、言って、それでもまだ話したいと思ってくれるのなら、話してくれないかな、と、問いかけた。ももこがやりやすいプロデューサーを選んでいい。
「さいごぐらい、ちょっと話そう」
- ももこの小さな、うん、という返事を聞いた。よろしくお願いします、と彼女は言った。
- どうしても何か言いたい人は居るか、とマックが見渡せば、ネケが話し始めた。ネケ、オレ、盛岡。
- ネケは、ズズの脚本なら今回も大丈夫かと思っていたという。ズズも完璧でなく、難しいこともあり、頼りっぱなしだったのが良くなかったと気がついたそうだ。次作るミュージカルはもっと良いものになる、だから皆で頑張りたい、と彼はそう話した。
- ひとつ良いですか、とユンが切り出した。問題提起をし、脚本が良くないと思うのなら改善案を出すべきだと言った。元々ミュージカルをやっていたのなら全て頼るべきだが。座長に必要なのは道を示すことだが、精一杯自分の出来ることはやるべきだと彼は言う。無責任になってはならない、とユンは話した。
- 他にはないか、と見回すマック。疲れたか、と問えば、まめもんが、疲れたけど話せて良かった、と返していた。悲しさを知ったから、より大きな喜びを感じる。こんなに悲しい気持ちを分かち合い、繋げようと試行錯誤するのは、この街で私達以外にどこにもない、とマックは声を張り上げた。唯一無二だ、と。
「キングスターをねぇ、皆さん。アンダーボスに今日、任命します」
やだ!やだやだやだ!!
やだ!!!!!!!!!
- やだ、やだ、と心の中は大騒ぎ。無理無理、と混乱の中、マックの話は耳を右から左へ。折れた心を戻すのは難しいかもしれないが、頑張って治せ、出来るか、と問いかけられ、困惑の声をあげた。アンダーボス?嫌、いや、嫌です、と訴える。ただでさえまとめられてなかったのに。待ってよ。今の流れでアンダーボスはおかしいじゃないか、と言えば、アンダーボスはまとめ役になる必要はなく、鎖だ、とマックは言った。
- 嫌だと主張するも、ズズなら出来る、信じてる、お願いします、ありがとう、と皆聞く耳を持たない。アンダーボスになれば偉いこと言えるから、とマックに言われたが、いいです、と遠慮した。決定事項だから、と言われて、思わず席を立ち、嫌だ!と大声を上げた。
- 皆に、アンダーボスをやりたくない、という自分の声が届かない。だっこしてあげなさい、とひろしに言うマックの声を聞くなり、無言で会議室から逃げ出す。マジで無理。絶対やだ、絶対やだ!!
- FIB外まで駆け、アンダーボスになるくらいなら死ぬ、と、追ってくるひろしを撒くため走る。続いてこはる、まめもんも追ってきた。
- ずっとやりたくなかったから!避けてきたのに!と悲鳴をあげるも、まめもんに手錠をかけられた。そのまま、やるよ、いぇーい捕まえた、とルンルンになるこはるに連れられ、FIBに戻された。
- 遅れて出てきたマックにアンダーボスをやりたくない旨を必死に訴えるが、頑張れよ、とあえなくかえされてしまった。頑張れよ、じゃねぇ!言ってんだぞ部下が!尊重して!
- ユン、ひろし、レン、まめもんも、ズズがアンダーボスとなったことに頷いている。ズズは団員の心を揺さぶった実績がある、これはアンダーボスに値する、素晴らしかった、とマックに褒められるが、嫌なものは嫌!だが、聞き入れられることはなく、頑張ってな、と一輪車で去る彼の背に、クソピエロ!と叫ぶこととなった。
- 出来ません、と何度も主張するも、ダミアンにも頑張ってねと言われ、聞き入れてもらえない。何の話し合いだったの?!個々で話そう?!ユンにも、ズズにしかアンダーボスはできない、ズズにしか出来ないことがある、と言われた。出来ない!やだ!
- カムにも、マックなりのオチなのだと言われた。カムに、今日に限って起きて、とぼやき、お前も家族だろ!関係あるんだよ!と、もっと発言するようにカムに伝えた。だが、手を挙げてくれたことが嬉しかった、と感謝を伝えた。それはアンダーボスとして言ってるの?とこはるに言われ、違う!と否定するが、口々に好きなだけ言えだの言われてしまった。
- トウユンに、ズズは優しすぎる、オレには何を言ってもいいから、向き合うから、と言われた。出た、と言えば、なんだよ、と返ってきた。
- 手錠したまま寝たら手錠したまま起きるのかな、とこはるに言われたが、外れて起きることは身をもって知っている。何度も手錠をかけられたまま寝たことがあるのだ。
- アンダーボスの歌を作って、とこはるに言われた。こはるも参加する、と言うので、暇ならやると答えた。暇だよね、と言われて、暇ではないと答える。このせいで魂は寝ずに始発だ。
- トウユンに、好きなだけ思っていることを吐けと言われたので、発狂する。てめぇのせいで、と言いかけたが、ちょっと良かったじゃねぇか、と返せば、大笑いされ、あんた好きだよ!と返ってきた。
- 深くため息をつく。ゆっくりやってこう、と皆に話し、そのままFIB前で眠りについた。
★ キングスターダイヤモンド ズズ/エピソード19 に続く。