福吉の詞・蚕種数の詞


穢多福吉蚕種数(えたふくよしこたねかぞえ)とは、正月などにやってきて福を祈って回る人々の事です。
郭外の記述の中にも『この月(正月)の中穢多福吉蠶種數(ふくよしこたねかぞひ)をいう事を称へ家々に来て歳首を賀す。』という説明があります。
祝詞を披露しながら物を貰う・・・まぁ、物乞いの一種なのですが、そう言ってしまうと彼岸獅子も同じような扱いになるかと。


記述の中に、福吉と蚕種数それそれが披露する詞が載っていたのでここに分けて記載します。

福吉の詞
福の神が祝入候、よにやらふじやうには、宿もかはせ候なり、むらもさかえ候なり、大みかとに、小みかとや、おちうもんの明神、あふとすれはたするや、右大将に三代とは、鎌倉の鳥追、長者様のとり追、さらはおほみきこし、きこしめしは申さん、西田も四千、東田も四千、合候て八千町か壺、中の田のよい所、苗代ところの内や定め候や、一年かその内、算へ算へてまゐ入りて、とつき山にきさらき、臘月をは弟月と定め、正月の月をは、太郎月と祝ひて、祝てかちやうには元三日の朝に歳男まゐらせて、浅い沓をさしわけて、さいのよねを打蒔、若みつを迎へ、おちやうなんとすまし、釜の煙り奉る、こふれおふれ、南百壺の御殿に、こうらい緣のたゝみ、錦緣のたゝみ、千疊やはかり、敷やならへ候なり、御一門に御兄弟、車座に居流し、末廣の折敷に、おりひばを添て、長柄の御銚子、とき羽色のおかはらけ、重盃とあたゝめ、一度まゐれ候や、二度まゐれ候や、五度も十度も、まゐることは御祝ひ、長者様と祝ふたり
      右大将権大納言源頼朝公寵臣
        圑左衛門頼兼 十五代

蚕種数の詞
あら、めてたい、親玉の、とし立戻る、あしたには、植木に花咲、こかねには寶なるそふと、二月きさらき、初午の日をは、よい日もよい日、よい吉日と、ゑらひとうて、上のこかひ、ほめよろこんで、美濃の國のこたね千枚、おはりの国のこたね千枚、吉山口の上子せんまい、合すれは、三千枚の、こたねなとは、よいこのたねよ、白子に黒子、蓬またらに、とりませて、かひめのおやのはばかるやうは、袴たけにかはつやわたる、かひやまうて、ゆんてのわきに三ン日はんや、めてのわきに三ン日はんや、合すれは七日七夜があひた、かほとに暖めたまへ、あたため候へ候へけれ、そらが千丈中飛とりの、八つの風きりあいきやうはねを、手に抜き持てこ紙しら紙、中のはんしはりまたん紙、そよりとしかせ一は子なてれは千貫かこうりよ、二はねなてれは二千貫かこうりよ、三は子なてれは三千貫のこりやうそくをは、かかつめて度候ものに候ひけれは、此御子なとの御育やるはしゆしゆに置きてはしゆんじゅつこかい、船に乗りてはふんだんこがひ、たけにおきてはたかごに增る、庭におきてはにんげんこがい、四度のおきふし、なんなく、くせなく、お育てやるは、うまのとしの女房達が、かうむらかうのたつきをかけさせ、旭さしの桑のもとへ立よりて、秋の方よりさしたる枝を、一枝たゆめ、二枝たゆめ、三枝めには、本からうらへ、うらからもとへ、こきとりてもきとりて、朝桑なとは、露打拂ひに、せんとなづけた、くわなどは露打こめてかんろと名付、御覧すれは此御子などの桑めすやうは、ものによくよくたとふれは、昔源氏の厩に立たる糀くり毛にじんめいひたへ、大笹小笹馬草はんめ、いさんだこまにさても似たり、こまにも似たり、奥山と山、外山かうらのこかやこすすき、もと打休めうらをははやし、まぶしと名付まぶしにのりて、糸とるやうは、春の雨に、七日しくれ、八日めには、板やにはらへ、かややにしとり、しとりはらひいうかんことく、かんもや川の瀬にふし立たる、女石男石、ろんじらことく石の丸さにいしのかたさ、前山つかの尺のゑびら、つんはとつかせ、是より南表拾二けんに、こや家を掛させ、板やをささせ、いと釜と釜、十二の釜を塗ならへ、塗とりて、美濃の國のまゆねり上手に、まゆをねらせ、尾張の國の糸をとらせ、よし山口の錦かけ上手に、綿をかけさせ、とつたる糸と、かけたるわたは、千貫がいとか、萬貫かわたか、このきぬなとは、おりちう姫の都におきて、荘吉荘内小大夫どのの乙御の姫は、綾も上手、にしきも上手、横家に籠り、たつやに籠り、月かた日かた、じやかうの丸ぶし、てうじのふしまて、かつちとおらせ、織たる絹の初をは、みしまへほんちやうくまのみと帳、餘しり絹は、かはつや、皮こにたたみ入て、あひ黒川の眞中町て、紐打しめて、戌亥の角の御寶絹と御名付やるは、春の始にかひめのおやの、御もの参り、先にも家人千人連る、跡にも家人千人立る、合すれは二千人の女房たちは袖口揃へ、妻をはとらせ、着させたまへば、遠くのものは、きえてよろこぶ、近くのものは、見てもよろこぶ、三國一の一福長者と祝ふたり


何を言っているのかちょっと判らないのですが、記録として残っているという事はなんらかの意味があるのでしょうね。

最終更新:2020年02月24日 23:48