吸血

登録日:2020/09/17 Thu 00:06:00
更新日:2024/01/26 Fri 13:51:00
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   (\ ミ/ノ プーン
    \ヽ//
  (・)(・)ニニニつ ~
   / ハ||
    / / \\

   クククク…はビタミン、ミネラル、タンパク質、そして塩分が含まれている完全食だァ



吸血とは文字通り生物の血を吸うことである。


概要と現実における吸血

我々が住む地球には数えきれないほどの生命が存在し、その食性だけで見ても
なんでも食べる雑食から特定の生物や植物しか食べない偏食家まで数多く存在し、生命の進化とは何かをうかがい知れる。
そんな変わった食性の一つとして、他の生物の体を傷つけて流れ出た血液を吸うものが存在する。
それが吸血である。

を食料とする生物は数多く存在し、メジャーなものだけでもカ、アブ、ハエ(コバエ)、ノミ、シラミ、ダニ、ヒルといったものがいる。
どれも生息している環境や口の形は異なるので血の吸い方は微妙に異なるがこれらの生物に共通するのが命にも関わる病原菌を媒介するという厄介な点である。
中でも蚊は日本脳炎やデング熱、マラリア、ダニはツツガムシ病や日本紅斑熱といった病気の原因にもなり、
行楽のシーズンに山に入ってこれらの生物に噛まれてしまい感染といった例が後を絶たない。

ヒルは対策しないで山に入ってしまったがために、違和感を感じて衣服を捲ったところ、脚や背中にびっしり付いていた……という
想像するだけでもおぞましい事態になることすらあり得る。
何より、吸血する際には大きさもさることながら、牙で皮膚を切り裂いて傷口を作る吸血方法や
吸血の際に特殊な成分の唾液を注入して血が止まりにくいようにしてしまうので
上記で述べた生物以上に流血沙汰にもなりかねない厄介さも持ち合わせている。

が、ヒルに関しては単なる血を吸う害獣ではなく、古代の時代、特に東洋においては不調をきたした体の部分には瘀血(おけつ)という悪い血が溜まるとされ、
それを抜く為にヒルが使われていたと伝わっている。
現代において吸血する際のメカニズムを調べた結果、ヒルは血を吸う際に血管のようなものを形成させ、そこから血を吸うということが明らかになっており、
これを応用することで鬱血等が原因で壊死しかけた指などを復活させるのに使えるのではないかと研究がされているとか。
また、他の吸血生物に比べると生息環境の都合上注意しやすいため、感染症予防の点で警戒度は相対的には低めである。

蚊はメスのみが、それも産卵を控えたときのみに血を吸い、普段はオスの蚊同様花の蜜などを吸ってる。

ちなみに後述する理由から血を吸う動物としてよくイメージされるコウモリは
実は血を吸うものはほとんどおらず、南米大陸にのみ生息するチスイコウモリの仲間に属する3種だけである。
即ち、コウモリと吸血鬼が関連付けられてから南米大陸で本当に血を吸うコウモリが発見されたということであり、全くの偶然だったということなのだ。


伝承と創作における吸血

吸血は古今東西に伝わる伝承とも切っても切り離せない。
何故なら、血を吸うと伝えられる怪物も現実における吸血生物と同じく数えきれないほど存在し、国の数だけいると言っても過言ではないからだ。
古来より血液はそれ自体が生命の源とされており、それを吸われたり失うということは正に死を意味した為、非常に恐れられていたのである。
そんな中で吸血という行為そのものの代名詞ともいえるのがヴァンパイアこと、吸血鬼である。
名前の通り血を吸う魔物である彼らは西洋、特に東欧において広く伝わっており、
現在我々がイメージするような血の気を感じられない青白い肌に鋭い犬歯を持った人型の姿だけでなく、
暫く使っていない農具や収穫しないスイカなどが変化する付喪神のようなタイプなど様々なバリエーションがあったのだという。

上記における吸血鬼の影響からか今日における創作においても吸血鬼と定義されていないながらも
それに準じた能力を持った言わばモンスターですら血を吸うという設定のものが登場する。
血を吸う方法も様々であり、吸血鬼のように鋭い牙を突き立てて吸うのは勿論、現実における蚊のように針のような口を刺したり、
珍しいケースだと舌を伸ばして標的に突き刺してそこから吸い上げたり、極端なものでは手で触れるだけで吸うことが可能というものも存在する。


主な吸血生物

吸血鬼の項目は既に存在するのでここでは割合し、創作におけるものの場合完全な人外、即ちモンスター枠を優先して載せていく。

アニメ

長い髪の毛を刺して血を吸う。「おとろし」の別名の方が一般的だが、血を吸うのは本作独自の設定。
当wiki『首ったけ?妖怪恋物語(ゲゲゲの鬼太郎)』『永遠の命おどろおどろ(ゲゲゲの鬼太郎)』に登場。

特撮

『ウルトラQ』第4話(製作第1話)に登場した巨大植物。
東京に突如出現し、巨大な根で人々から吸血しながら成長する。
後に『ウルトラギャラクシー 大怪獣バトル』第2話にも登場。

初代『ウルトラマン』の「怪獣無法地帯」に登場する吸血植物
長い帯状の葉を触手のように伸ばして獲物を捕え、血液を啜る。人間を楽々捕まえるほどの巨体と怪力を持つ、肉食植物の一種と思われる。
後世のタイトルにも、同種の植物が何度か登場している。

余談だが、現実の食虫植物は主にリンを摂取するために虫を捕食する。
そこへいくと植物が動物の血液など好き好んで摂取しようものなら、十分なリンを得る前にナトリウムの摂りすぎて塩害よろしく枯れるに違いないのだが……あまり細かいことは言いっこなしである。

『ウルトラセブン』第31話に登場した超マイクロ怪獣。肩書は「宇宙細菌」だが、サイズも設定もどちらかと言えば寄生虫の類である。
花びらに擬態した卵の状態で地球に侵入し、人間の体内に入り込んで血液中のフィブリノーゲンを食べる。
寄生された人間は吸血鬼と化した後、極度の貧血状態へと陥って衰弱死する。

『帰ってきたウルトラマン』第36話に登場した宇宙人。
地球上の全ての女性を吸血して殺害し尽くす事で、女性のいなくなった人類を絶滅させるという、気の長すぎる侵略者。

『ウルトラマンタロウ』第11話に登場した怪獣。
死んだ捨て子を弔う「捨て子塚」で死体の養分を吸って成長した吸血植物とされており、全身を覆う蔦を伸ばして人間を捕らえ、耳から吸血する。
赤ん坊のような不気味な鳴き声を上げ、捨てられた子供達の怨念の化身ともされている。
だがこの話では、怪獣以上に恐ろしい人間の悪意を見せつけられる事になる…

『ウルトラマンレオ』第18話に登場した怪獣。
MACに撃滅された、宇宙吸血蝙蝠の大群の生き残りが変身した怪獣。
こうもり少女に変身して、夜な夜な人間の血を吸い、その人間を操っていた。
子供の血は不味いらしい。

ご存じ『ウルトラマン80』屈指の強豪怪獣。
吸血怪獣という肩書きのとおり、枝分かれした長い舌を伸ばして人間の血を吸う怪獣で、
さらに角から発した怪光線で人間含めた生物を眷属として怪獣化させることも可能と、ある意味では吸血鬼のような特性を備えた怪獣である。
後に『タイガ』にも登場するが、こちらでは血ではなく夢を吸い取るという設定になっている。

こちらも『ウルトラマン80』に登場した怪獣。
怒りん坊とボールが由来とふざけた名前とは裏腹に首に食いつくと同時に
心臓と脳に触手を食い込ませるので外科手術が極めて困難という凶悪な特性を持つ。
これまでの吸血怪獣・宇宙人は人間に擬態、或いは人間やその死体に取り憑いて吸うケースがほとんどだったが
こちらは一見無害そうなボールに見えるために警戒する人が少なく、その結果シリーズでも最悪レベルの犠牲を出している。
おまけに戦闘形態もまるで腫瘍が人型になったかのような嫌悪感を覚えそうな外見とトラウマ盛りだくさんな存在である。

『ウルトラマンティガ』第33話「吸血都市」に登場した怪獣。
吸血鬼一族の神と称される魔獣であり、外見は巨大な蝙蝠を思わせる。
ちなみに南米出身だがチスイコウモリが南米にのみ生息していることを意識したためか。
名前の由来もドラキュラ伯爵とノスフェラトゥからとどちらも吸血鬼関連である。

『ウルトラマンダイナ』第24話に登場した怪獣。
宇宙線の影響で突然変異を起こした球状生物。本体は青い体毛に包まれたヒトデ状生物で、体を丸めてマリモのような姿になる。
合体して巨大化する事も可能。

  • 吸血影(怪奇倶楽部)
『怪奇倶楽部(中学生編)』で登場した怪異。
灰色のスライムのような姿をしており、元々は太古の鏡に封印されていた。
サメのごとく獲物の出血に反応して肉体を包み込んで吸血。襲われた犠牲者は瞬時にミイラ化してしまう。
アルコールが弱点であり、劇中でヒロインの1人に襲いかかろうとしたシーンでは床にこぼれた消毒用アルコールに触れた途端に退散していた。

普段は小さな三葉虫の姿だが、人間の血を吸う事で等身大の怪人になる。

小さな血吸い蛭を手足の様に操り、左手の管から人間の生き血を吸う。
吸われた血の代わりに死神博士が開発した緑色の薬液を注入することでショッカーの奴隷人間として操る。

口の針で血液含むあらゆる体液を吸い、吸い取られた人間を白骨化させてしまう。

左腕の針で人間の血を吸い、血を吸われた人間を吸血鬼化して意のままに操る事ができる。

ゲルショッカー大幹部にして最後のゲルショッカー怪人。
体中のヒル状の管を使って人間の血を吸い、その血で倒されたゲルショッカー怪人を復活させる。

  • 吸血マンモス(仮面ライダーV3)
デストロン日本支部の2代目大幹部キバ男爵の怪人態。長い鼻で人間の血を吸う。

  • 死人コウモリ(仮面ライダーV3)
デストロン日本支部3代目大幹部ツバサ大僧正の怪人態。人間に噛み付いて血を吸い、長い舌でデストロンが開発した新型ビールス「ヒマラヤの悪魔」を感染させる。

ブラックサタンの蚊型奇械人。
口吻を人間に突き刺し、吸血と同時に毒液を注入することで相手を操る。

ネオショッカーのマダラカ型サイボーグ。
右手の注射器で人間の血と「マダラカ毒」を入れ換えて殺す。

現代に甦った、吸血蝙蝠の特徴を持つグロンギ族。1日に成人5人分の血液を飲む。
漫画版では、犠牲者をウィルスにより操れるようになっている。

テントウムシに似た性質のワーム
頭部から伸ばす触手を人間に突き刺し、体液を吸い取ってミイラ化させる。

女性の血を吸って、その血で倒された中忍を復活させる。

ゲーム

ゲームでの吸血は、敵のHPを奪い取るという効果がついていることが多い。

モンスターハンターフロンティアZZに登場する海竜種に属するモンスター。
喰血竜という異名を持っており、その名の通りに血を吸う生態なのだが
その吸血方法が長く鋭い舌を伸ばして標的に突き刺し、そこから吸うという恐ろしいもの。
なので上記で述べたギマイラに近い吸血方法と言えるかもしれない。

血を吸うポケモンの代表格。一度に300ccもの血を吸い取るという恐ろしい生態が知られている。
中には吸いすぎて飛べなくなるゴルバットもいるのだとか。
吸血生態についてクローズされるのはゴルバットばかりだが、進化系のクロバットも血を吸う事が明言されているし、
進化前のズバットも嫌というほど技「きゅうけつ」を使っていた。

わざとしての「きゅうけつ」はむしタイプドレイン技の形で存在するが、第6世代までは威力がたったの20と貧弱の一言で、対戦はもちろんストーリーでもほとんど使われていなかった。
しかし第7世代からは威力が以前の4倍の80と大幅に強化され、一躍一戦級のわざに変貌した。
そのため「きゅうけつ」を覚えていたポケモンは軒並み他のわざの「すいとる」を代わりに習得するようになったが、ズバット系統は(大幅に習得が遅くなったといえ)そのままレベルわざに残されており、吸血ポケモンの面目が保たれることに。

「きゅうけつ」自体はズバット系統以外にもマッシブーンなどのむしタイプのポケモンが自力で習得できる他、わざマシン*1によって虫型以外のポケモンの一部も習得することもできる。
なんと、わざマシンを使えば大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIALでお馴染みのガオガエンもきゅうけつを覚える
ガオガエン「てめえらの血はなに色だーっ!!」

また、「血というより汁だろ」と言いたくなるくさタイプポケモンや、どこに血が流れているのか分からないいわタイプポケモンはがねタイプポケモンなどのように、明らかに血が巡っていなさそうなポケモンが相手でもきゅうけつは問題なく効果を発揮する。

青魔法の一つ。「術者の減少HP÷2」のダメージを吸収する攻撃。吸血鬼やアンデッドではない普通の敵も割と使う傾向にある。
気付きにくいが黒魔法ドレインと異なり、実は術者のHPに依存する固定ダメージ技である。そのためHP潤沢な中盤あたりの敵から使われると結構な損害を受ける。
敵としては最序盤のスティールバットからラーニングするのが手っ取り早い。また、アンデッド化していれば自分自身に吸血してHPを回復できるという小技もある。
移植機種によって仕様変更が何度かあるが、GBA版のものはとりわけ極悪性能で「術者の減少HP分吸収」という????の半上位互換性能であった。
逆に悲惨な性能になったのがiOS/android版。計算式が被ダメージ量半減に戻った挙句、ボス耐性で無効化され、自己吸血も不可能になるという産廃にまで零落してしまった。

漫画

サキュバスというと夢の中に出てくる淫魔が有名だが、こちらは蚊をモチーフとした魔物。
その生態は対象の思考を読み取り、思わずウットリしてしまうような姿に変身して現れて近づき、血を吸うというもの。
血はサキュバスの体内でミルクとして生成され、こちらは栄養満点であり、本来は幼体であるボウフラに分け与えられるが、他の種族も飲用可能
吸血の際に体に注入される麻酔薬は強烈な快楽をもたらす作用もあり、作中では麻薬扱いされ、一部の冒険者からそれ目的で乱獲されたりもする。

戦闘能力こそ低いものの、イヅツミを除くライオス一行をほぼ全壊に陥れた地味ながら恐ろしい魔物。
もっと恐ろしいのは、サキュバス・モスキートが変身した姿によって、パーティメンバーの趣味・性癖・嗜好がモロバレになってしまう点かもしれないが。

その名の通り蚊をモチーフとした女怪人。
膨大な量の蚊を操り人間をはじめとした動物から根こそぎ吸血することでパワーアップする。相手はしぬ。
物語の最序盤、それもメインキャラの1人であるジェノスの初顔回で登場し、その時点でも相当な実力を持っていたジェノスを圧倒など強烈なインパクトを与えた。

そのルックスから読者人気が非常に高い。
ストーリーでの登場は初登場した話以降それきりではあるが、作画担当の村田氏によって個別イラストが描かれるなど、深海王と並んで作者からの扱いも恵まれている怪人の1人である。

忍者帝国一と言われた暗殺の名手で、「影吸雲蚊」という蚊を従え、血を吸った蚊を一匹でも食べて相手の血を取り込むことで自在に姿を変えられる
さらに大量の影吸雲蚊に襲わせて一気に食べ、残りは装備やアイテムに変える「似行写真の術」で姿だけではなく能力・装備・アイテムまでコピーできる。
ちなみに大量の影吸雲蚊に血を吸われたハンゾー曰く「痛くも 痒くもない 」らしい。

原作漫画限定で登場。新たなる侵略者・帝王ライエルの尖兵であるコウモリ怪人。
人間の首筋に噛み付いて血を吸い、吸血人間にして操る事が出来る。
吸血人間に血を吸われた者もまた新たな吸血人間となり、コウモリプラスの支配下に陥る。
なお吸血人間になった者を元に戻すには、コウモリプラス自身の目玉を煎じて飲ませる必要がある。


小説

「直結相互循環」という右手かメンポのニードルを相手に突き刺し吸血、同時に汚染血液を注入することで殺害する攻撃手段を好む。

  • イレーネ・ウルサイス(学戦都市アスタリスク)
レヴォルフ黒学院会長のディルク・エーベルヴァインから大鎌純星煌式武装(オーガルクス)覇潰の血鎌(グラヴィシーズ)」を得ており、重力操作で相手の動きを封じることが可能。
その反動でイレーネは吸血衝動に見舞われてしまい、以後「吸血暴姫」という異名がつけられた。
鳳凰星武祭(フェネクス)では回復能力を持つ妹・プリシラとコンビを組んで出場するが、最終的にグラヴィシーズは天霧綾斗の「セル=ベレスタ」により打ち砕かれ、吸血衝動を失う。


現実

現実世界でも、人間を含む動物の血を吸って生きている生物が数多く存在している。
さすがにフィクションよろしく自分より大物を相手に死ぬまで血を吸い上げるなんてことをやってのける生物は確認できておらず、殆どの場合は自分よりはるかに大きな動物から相手の生命に関わらない程度でこっそり血を吸い取る行動を取る。
自分より小さな生き物を獲物にするなら血だけ貰うなんてさもしいことをせずに捕えて可食部を食べたほうが遥かに効率が良いしね!

ただし、血を出すには大なり小なり相手の体表を傷つける必要があり、相手が痛みや痒みを感じれば、それを追い払うべく攻撃される可能性もある。
そういったリスクを冒してまで吸血生物が血を吸う理由は、血液が植物の汁などに比べて遥かに高タンパクであること、かつ大型の生物からなら大量に摂取することが出来るためと考えられている。

この行動を行う代表的なのは双翅目(いわゆるハエ目)と呼ばれる昆虫類で、この目の虫は北極や南極などでもない限り地球上のどこにでも存在している。それだけ吸血というのは人間にとって身近なモノなのだ。

後述の各生き物の項目で詳しく説明があるが、吸血の際に自分の体液を相手に注入したり、傷口に接触したりする生き物もいる。それをされると、感染症や寄生虫のリスクが発生することも珍しくない。血管に直接介入されるということは、単に血を吸われるということ以上に危険なことなのである。

血を吸う生物の代名詞にして、われわれ日本人にもなじみ深い昆虫。
吸われると痒くなることでおなじみだが、これは吸血の際血が固まらないようにする成分に人体の免疫機能が反応するため。
上でもチラっと述べたがメスのみ、それも産卵を控えた時期にだけ血を吸い、普段はオスと同様に花の蜜を吸っている。
が、その生態からマラリアや日本脳炎など蚊が媒介する病気も数多く存在する。
実は地球上で最も人を殺した生物として上位に入るのだ。

  • ハエ
ネット上で誤解している人を割りと見かけるが、イエバエの吸血種が比較的少ないだけで吸血バエも結構存在する。
もちろん感染症リスクなども据え置きで、繁殖環境などから家畜にとってはカよりもハエの方が脅威である場合も多い。
日本で分布している種でも、雌雄どちらも吸血し刺されると痛みとかゆみの両方を与えるサシバエや、
小さいので網戸も簡単にすり抜けて衣服の中に潜り込んで刺すことも珍しくなく、かゆみと腫れも長時間持続するヌカカなどが存在する。
また、アフリカ諸国にはツェツェバエという吸血性のハエが生息しており、眠り病という病気の原因となっている。

  • アブ
蚊と同じく吸血昆虫の代名詞ともいえる昆虫。
こちらも一部の種、それもメスのみが人間を含めた哺乳類の血を吸う食性だが蚊と違い、
標的に突き刺す針状の口が太いので刺される瞬間も痛みを伴い、刺された後も痛痒くなるという。
ちなみに、花畑などでよく見かけるハナアブは吸血を行わない。ついでにハナアブはアブ(直縫短角群)ではなくハエ(環縫短角群)の仲間だったりする。

  • ブユ
ブヨとも言う。
山に入ると遭遇することが多く、皮膚を食いちぎって吸血するため痛みもかゆみも酷いことになり、見た目も傷(水ぶくれ)そのものなので美容にも悪い。
また刺されてから時間が経ってから大きく腫れたりかゆみが生じるため、気付いた時には酷いことになっていることが往々にしてある。
なお、幼虫は水質汚染にとても弱く綺麗な水でしか生息できないため、都市部で見ることはほとんどない。
暑い昼間にはあまり活動しないが、川辺や朝方や夕方ごろは特に要警戒。

  • ノミ
吸血する虫の中では上で述べたカやダニと並んで有名なザ・吸血生物。
かなり小さい上に凄まじい跳躍力を持っているので目に見えづらい厄介な特性を持っている。
主にヒトノミやネコノミがいるが後者は名前とは裏腹に哺乳類なら何でもいいようで
猫だけではなく犬や人間からも吸血するので注意。

  • ダニ
ノミと並んで血を吸う生物と言えばと言われて答える声が多いであろう節足動物。
家の中に生息しているイエダニや野山の草原に生息しているマダニやツツガムシが吸血性で、
特にマダニとツツガムシの二種はそれぞれライム病や日本紅斑熱、ツツガムシ病といった命にも関わる危険な病気の原因になる病原体を媒介する事で知られ、
現代においても行楽シーズンで山に入った際に刺されたというケースが出ている。

また、犬や猫を外飼いしていると、家の中に小豆や麦チョコのような粒が落ちていることがあるが、これは犬や猫から血を吸ってパンパンに膨れたマダニである。*2
特に草むらでくっついてくることが多いので、時期によっては散歩コースから外したり、家に入れる前にブラッシングで払い落としてやると良い。
場合によっては血を吸ってないマダニが家の中で落ちて、飼い主である人間が室内でマダニ被害に遭うことも時々ある。

  • シラミ
ノミと並ぶ代表的な吸血性の昆虫。
様々な種類がいるが人間の頭部に寄生するアタマジラミがよく知られている。
全種類が人間を含めた哺乳類から血を吸う食性で、こちらもダニやノミ同様非常に小さい上、人間へ寄生した場合は頭髪の間に潜り込む様にして張り付くので、発見は非常に困難という厄介な一面がある。

  • ヒル
ご存じ血を吸う生物の一種。
上で述べたこれらの生物よりも体が大きい上、気持ち悪さでもかなり上位に入ると思われる。
他の生物と違って刺すのではなく牙で皮膚を切り裂き、そこから流れ出た血を吸う。
しかも血を吸う際に血が止まりにくくなる唾液も分泌するため、流血沙汰になりがちなのも厄介な所である。
しかしながら近年においては生態や吸血の仕組みが解明されつつあり、その能力を利用して医学に応用したり*3、実際に使用できるのではないかと研究もされているらしい。
川などの水の中にいるチスイビルと陸で這いずり回るヤマビルがいる。

  • チスイコウモリ
南米大陸に生息しているコウモリ。
主に家畜や野生動物に牙で皮膚を切り裂いて血を吸う生態であり、稀ではあるが寝ている人間も血を吸われるケースがある。
恐ろしいことに狂犬病などの危険な病気の原因になる病原菌を媒介する危険な動物でもあり、ある意味では吸血鬼のイメージに最も近い生物である。
しかし彼らの生息地は南米、即ち大航海時代以降に発見された新大陸であり、吸血鬼との関連は実は全くと言っていいほどない(吸血鬼の伝承が生まれたのは移民以前の東欧地域だからである)。
古来から吸血鬼の眷属や吸血鬼のシンボルとも言われ、その影響から創作においても吸血するモンスターのモチーフとしてもよく使われるコウモリだが
上で述べたように血を吸うコウモリは実は南米に生息する彼ら三種のみである。
つまり、大航海時代で南米大陸が発見されてから本当に血を吸うコウモリが発見されたということであり、全くの偶然だったということなのだ。
因みに、ターゲットになる生き物にとっては恐ろしい腹の満たし方をしているチスイコウモリだが、一方で「飢えた仲間が居ると自分が飢えてでも栄養を分け与える」「以前に助けてくれた仲間を恩人として記憶している」という極めて献身的な特徴を持つことでも知られる。

  • ハシボソガラパゴスフィンチ
ガラパゴス諸島に生息する、世にも珍しい血液を吸う鳥。
目(もく)でいえばスズメの仲間で、より大型の鳥の羽に忍び込み、そこをくちばしで突いて傷つけて血を飲む。
吸血蝙蝠と同様に鉄分や塩分を消化する腸内細菌を保持しており、生き物の血液を食事として摂取できるのである。

ただし、この種が行う吸血行動は食糧難時に限定される。哺乳類や鳥類のような恒温動物にとって吸血行動自体は栄養効率の悪い食事であり*4、フィンチが血液を吸うのは生存競争に負けた結果の妥協策であるという説が有力。

  • ウスエグリバの亜種
2000年頃にロシアで発見され、現在進行形で研究がおこなわれている吸血を行う。俗称はヴァンパイアモス
大型の哺乳類にくっついて口吻から血を吸う行動が確認され、人間の血を吸うこともあるという。

もともとウスエグリバは果物の果汁を好む種だが、それが何かしらのきっかけで進化して血液食になったとのでは提唱されている。
ちなみに吸血を行うのは蚊とは真逆で全てオス。理由はまだ分かっていないが、蚊と同様に産卵時の栄養分に関わっているのでは、という方向で研究が進んでいる。

項目には亜種と書かせていただいたが、遺伝子的な差異は研究中の為、分類が変わる可能性あり。
東南アジアでも同種に吸血を行うウスエグリバに似た蛾が見つかっている。

  • オオサシガメなど
人や動物を刺す亀……ではなくカメムシの仲間。
多くのサシガメは主に昆虫に口針から消化液を注入し体外消化した体組織を吸入するが、
オオサシガメはネズミ類から吸血し、人間によってネズミ類が駆除されるなどするとヒト(生物)からも吸血する。中南米には吸血性サシガメが多く、感染症の媒介も行う。
ちなみに「殺して食う」ための針のためか、吸血性でないサシガメの方が刺されると痛い。
なお同じ半翅目のタガメやタイコウチ、ミズカマキリやアメンボもライトな資料では吸血性とされていることがあるが、正確には上記と同じ体外消化である。
あと、樹液や草の汁を吸う草食性の半翅目のヨコバイも、なぜか人間の血を吸うことがあるとか。

  • トコジラミ
主に床や布団などに隠れていることが多く、これが名前の由来となっている昆虫。
幸い媒介する病気は確認されていないものの刺されると激しいかゆみに襲われる上に多くの吸血昆虫に共通して非常に小さいので発見し辛いという厄介な特徴を持つ。
もともと日本にはいなかった外来生物であることが示唆されており、別名を南京虫とも。
日本では1960年代まで被害も凄まじかったようだが1970年代に入ってから殺虫剤が一般に流通するようになり被害は減った。
…かに思われたが何故か近年において刺されるケースが増加しているとも言われている。
ちなみにシラミとは名ばかりでカメムシの仲間であり、上記のサシガメに近い種類である。


現実?

アメリカ合衆国プエルトリコで家畜を襲い血を吸ったと言われる謎の生物。
詳細は項目参照。

  • 間寛平
吉本興業所属の芸人。「血ぃ吸うたろか!」のギャグで知られる。
このギャグは息子の慎太郎が蚊にキレて言い放った一言を貰ったものだという。


現実の人間が血液を摂取するケース

豊かな食生活と医学の文明を持つ人間にとって、血をゴクゴク飲むという行為は一般的ではない。
しかし、文化として動物の血液を摂取する行為が公に行われているケースも現実に存在している。

人間がそれを行う場合、どちらかというと飲血あるいは血液の加工のため、血とも言い難い。
能動的に血液を摂取するという意味合いについての一例を、以下にコラムとして記載する。
+ 以下、人間が血液を飲む例
  • 食文化
吸血鬼でなくとも血液を好んで食料・飲料として扱うことがある。
代表的なものはブラッドソーセージ。元は家畜から採れる素材を余すことなく使うのが目的だが、これらは古くから加工法が伝わっており、血液を安全に加工する方法が確立された下で現在も生産されている。
また、モンゴルの遊牧民の中には大地に血液を零す行為をタブーとする民族もおり、羊の解体時には内臓や血液も全て食料として活用する術を持っている。
一方、発展途上国などでは医学的観点でのリスクなどを十分に考慮せずに血液を食料扱いしている場合もある。

  • 生活上で欠乏する栄養を摂取する目的
寒冷地など厳しい環境で暮らす人々の例。そういった環境では入手できる食料が限られており、十分に満たせない栄養分を血液から摂取している。
例えば、カナダ北部のイヌイットの人々は、ビタミンDを補うために狩猟したアザラシの血液を飲む。
(別にとっ捕まえて噛みついて血を吸うわけではなく、食肉加工の工程で血液を捨てずに保管しておくのである)

また、海上遭難した際に魚の血を飲んで脱水症状を免れたという話もある。
中には、子供と母親が生き埋めになって、母親が苦肉の策で自分の血液を子供に飲ませて母子ともに救助までに生きながらえた、というレア中のレアの生存劇もあったりする。
※この時は医学的に功を奏したそうだが、両者死んでもおかしくない話であったそうである。真似しないように!

  • 民間療法
生き物の血液を薬として摂取する行為を民間療法として広めているケースがある。
文明が発展していない地域の話かと思いきや、先進国内でもこれら民間療法の根が根絶されていないことは珍しくない。日本国内でも怪しい宗教がこれを斡旋していたりすることも……。
本当に薬としての効用がある場合もあるだろうが、多くの場合は誤りか、加工された薬など比にならないリスクを伴うことがほとんど。
とはいえ、スッポンの生き血など、科学的に効用を証明されたうえで商品として販売され「迷信」を脱却しているものもある。しかし、これも寄生虫の危険などがあるため、アルコールで割るなど殺菌が必須。

  • 儀式的な意味合い
数多の呪術文化において、生物の血液に特殊な力を見出し利用するケースは多い。特にゲルマンの呪術文化ではそれが顕著。
それの延長上として、儀式として血液を飲むという行為を行う場合がある。もちろん科学的には何の意味もない行為。このあたりは吸血鬼伝説などにも足を突っ込むが、そのあたりは割愛。
春秋戦国時代の中国において諸侯が盟約を結ぶときには、盟主となる人物が生け贄の牛の耳を切りその血をすする「執牛耳(牛耳を執る)」という儀式があった。
現代の日本でも皆の中心人物となり、思い通りに動かすことを「牛耳る」というのはこの言葉を夏目漱石が縮めたのが由来であるという説もある。
また、血を見たり飲んだりすることで性的興奮を得る血液性愛(ヘマトフィリア)や、
血を吸うことで性的興奮を得る吸血性愛(ヴァンパイアフィリア)という性的倒錯も。
それにしても、他の生物からすれば生命に全く関係のない理由でを飲むというのもなかなかにぶっ飛んだ行動である。

人間が血液を飲むケースをいくつか挙げていったが、基本的に人間は例え吸血鬼みたいな昼夜逆転生活をしていようとも無暗に血液を飲んではいけない。(フィクションによっては完全食と評する作品もあるが、あくまでフィクションである)
例えば、鼻血を呑み込んでしまって気分が悪くなった、なんて経験をしたことがある人もいるだろう。
あれは、血液に過剰な鉄分が含まれているために胃腸が荒れて嘔吐感が発生しているのだ。血液は、毒とまでは行かないが、安全に呑み込める液体ではないのである。

また、衛生面にも大きな問題があり、生き血かどうかに関わらず病原菌や感染症の危険があるし、他の動物の血であれば寄生虫などのリスクも存在しているのだ。
この項目で挙げた吸血生物たちは、みなその辺りの対策を十分にとったうえで吸血を行っている、いわば吸血ライセンス持ちの生物なのである。
よって、人間は吸血行動を行ってはいけません




追記・修正は血を吸ってミイラにしてからお願いします。

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最終更新:2024年01月26日 13:51

*1 ポケモンに任意の技を覚えさせる道具

*2 近づいてよく見ると足が生えているのでわかりやすい。推奨はしないが、実物を見たければ「マダニ パンパン」で画像検索。

*3 例えば四肢や指などをつなげる手術をした後、血が凝固しない様、ヒルに吸わせて血の巡りを良くする療法がある。

*4 血液は鉄分・ナトリウムが多すぎる上、水溶性ビタミンがほとんど補えないため