エリアゼロには強力な野生ポケモンの他、凶暴なポケモン/メカメカしいポケモンが闊歩しており、主人公たちは協力してこれらを退けつつエリアゼロの深部へと進んでいく。
ゼロラボのロックを解除するため4箇所の観測ユニットに立ち寄るたびに博士は確認の通話を行い通信障害か時折同じ言葉を繰り返す不可解な言動を見せながらも詳細な研究内容を解説してくれる。
その中で博士はなんとタイムマシンを開発し古代のポケモン/未来のポケモンを呼び寄せる事に成功していたことを明らかにした。
コライドン/ミライドンを始めとするエリアゼロに出没する奇怪なポケモンの正体はタイムマシンで連れてこられた古代/未来のポケモンだったのだ。
ちなみにタイムマシンの原理としては、過去/未来に博士のIDを登録したマスターボールを転送し、現地のポケモンを捕獲したら現在に転送し直すというもの。マスターボールをバカスカ使ってたらそら金も消し飛ぶわ
コライドン/ミライドンは初めて別の時間からの転移に成功したポケモンで、博士はまだ幼かったペパーと共に灯台の研究所で世話をしていた。
別の時代から連れてきたポケモンの存在は絶対に秘密であり、ペパーにも周囲に存在を伏せるよう徹底させていたようだ。
が、ある日野生のポケモン相手に騒動を起こし、周囲にその存在が露見しかける。
その事件をきっかけに博士はコライドン/ミライドンを連れペパーを置いてゼロラボへと帰ってしまった。
ペパーがコライドン/ミライドンに対して冷たい態度をとっていたのも「幼少期に親を取られた」と感じてしまった故の反応であったとペパー本人から語られる。
また、観測ユニット内には博士の記したと思われる日記も確認できるが
その内容は……
最深部まで到達した4人だが、ゼロラボのゲートを開くと凶暴な別の時代のポケモンが解放される。
溢れ出したポケモンの群れを相手取る友人達に背を押され、主人公は一人ゼロラボに入り博士と対面するのだが……。
オーリムAI/フトゥーAI
本物の博士は第4観測ユニットで起きた事故で絶命しており、ゼロラボ内で研究を行っていたのは博士の記憶と知識を受け継いだAIロボットだった。
同僚や「あの人」までもがゼロラボから撤退し人手不足に悩まされ、新たな人材も信用できないと悩んだ末に、自分の意識をコピーしたAIを開発したのだった。
現代では到底不可能な技術だが、機械にまでも影響を与えるエリアゼロ内のテラスタルの結晶体の力でそれを実現させていた。
そのため結晶の効力の薄いゼロラボ外でAIは活動できない。これまで頑なに姿を現さなかったのはこのため。
AIは「現代のポケモンと異なる時代のポケモンが仲良く暮らす楽園」を夢見て博士は研究を続け、その夢を実現させるべく生涯をかけてタイムマシンを開発したと再び主人公に告げる。
現代のポケモンと異なる時代のポケモンの共存を夢見た博士だったが、待っていたのは
強大な生命力と力を持つ別の時代のポケモンこと「パラドックスポケモン」が現代のポケモンを脅かす光景だった。
博士は
「それもまた自然の一つの形」と受け入れ研究を続行したが、AIは
「そのような惨劇を受け入れることは合理的ではない」と結論付け博士の思想に賛同できなかった。
そのため、AIは本物の博士亡き後にタイムマシンの停止を画策。しかし自身はあくまでAIであるためシステムに本格的に逆らうことができず、タイムマシンに害を成そうとした瞬間自身がシステムに乗っ取られてしまう運命にあった。
おまけに今も尚タイムマシンは起動しており、
自動的にパラドックスポケモンを捕まえてはエリアゼロに垂れ流しているという状況が続いていた。
一応エリアゼロ内にはバリアが張られており、滅多なことではパラドックスポケモンがエリアゼロ外に出てしまう事は無いのだが、ヌシポケモンとなった
イダイナキバ/
テツノワダチのようにバリアを破って外に出てしまうポケモンが現れてしまったのも事実。
このままタイムマシンを放置すれば
大量のパラドックスポケモン達がエリアゼロを飛び出してパルデア地方全体に蔓延り、地方の豊かな自然や生態系を破壊してしまう。
そのため博士の遺した戦闘AIに乗っ取られた自分を倒し、タイムマシンを止めることのできる優れたポケモントレーナーを待ち侘びていたのだった。
これがAIが本物の博士のふりをして主人公たちを呼び寄せた理由である。
因みにぺパーに対しやたら冷たい態度を取っていた理由は本物の博士が既に亡くなっていることを知らせたくなかったためである。
ペパー自身は薄々感づいているかのような態度を取っていたが。
主人公はAIの依頼に答え、タイムマシンを非常停止する為の鍵である。博士の名前が書かれたスカーレットブック/バイオレットブックをタイムマシンにセットする。
……頼む (主人公)
どうか ワタシ/ボクを 倒してくれ
そして 私/僕の夢ヲ……
……阻厶者ニハ
ゴ退室 イタダコウ!
◆使用ポケモン
それぞれタイムマシンから転送されてきたばかりの
「パラドックスポケモン」を使用。
しかも
レインボーロケット団ボス勢よろしく
全員がマスターボールに入っているという超豪華仕様。何個か寄越せ。
すべての手持ちがレベル60台後半の上にどれも種族値が高いので油断しているとパーティーが壊滅しかねない。どころか、
適正レベルである70台で挑んでも普通に苦戦、或いは負けることさえあるレベル。
更にパラドックスポケモンは元となっているポケモンとは一部タイプが異なっているため、初見ではタイプ相性が分からず混乱すること請け合い。
実際、相手も初見殺しで優位に立とうとしているつもりなのか、弱点を突くと驚いたような発言をする。
幸いどちらもテラスタルは使用してこないので突然属性耐性を変更されるといった事態にはならない。逆にこちらがテラスタルして反撃を仕掛けよう。
本作では貴重な「どうぐを持たせたポケモンを繰り出すトレーナー」でもある。
不安な場合は事前にサンドイッチで「そうぐうパワー:ノーマル」を発動させた上、北3番エリアで
ラッキー狩りをしたり、テラレイドバトルを周回してふしぎなアメやけいけんアメを集め、手持ちのレベルを90以上、可能なら100まで上げておくといい。
素早さの実数値はスカーレットならば270以上、バイオレットならば271以上あれば相手の手持ち全てに対して先手を取れる。
或いは、スター団の
スターモービルと違って
PPは有限であるため、ビークイン、ミカルゲ、マニューラ等のプレッシャー持ちのポケモンを2体以上と可能な限りの大量のげんきのかけらを用意し、何度も復活させながらPPを削り続け、
わるあがきを出させて自滅を誘発するのも手。こちらの方法の場合、レベル上げの必要はない。極端な例を言えば、レベル1の夢特性コマタナでもOK。
どんな手を使おうが最終的には勝てればよかろうなのだ
なお、BGMはテラレイドバトルとエリアゼロのアレンジ。電子音源をメインとした全体的に緊迫感と疾走感の中にどこか悲壮感とケツイを感じさせる、テラスタルの秘密が眠る地での決戦にふさわしいTobyfox節ゼンカイの曲と言えよう。
オーリムAI
スカーレットのオーリムAIは過去から連れてきたポケモンを使用。全員が特性『こだいかっせい』を持っているフルアタ型。
これは天候が晴れの時、またはブーストエナジーを所持している場合に最も高い能力が一段階上昇というもの。
このため迂闊に天候を晴れにするのは危険である。
また切り札として出してくるトドロクツキはブーストエナジーを持っているため登場と同時に攻撃を一段階上昇させてくる。
おまけにトドロクツキ自身がべらぼうに高い攻撃と素早さ、そして鋼対策の「じしん」まで有しているため止めるのに失敗すると冗談抜きで手が付けられなくなるので対策は必須。
フトゥーAI
バイオレットのフトゥーAIは未来から連れてきたポケモンを使用。こちらは手持ち全員が特性『クォークチャージ』となっている。
これはエレキフィールド展開時、最も高い能力が一段階上昇というもの。
晴れと違い、エレキフィールドは展開できるポケモンが少ないため敵に塩を送る展開にはなりにくいがそれでも注意すべし。
ラストに出してくるテツノブジンもやはりブーストエナジーを持っているので登場と同時に攻撃を一段階上昇させてくる。
こちらも素の攻撃力と素早さが高い上に技範囲も広いので対策は怠らないこと。
機械的な外見な上に、元となった種族とはタイプが変わっていることもあり初見ではタイプを見抜き辛い。
なお、補助技はテツノツツミが使う「ゆきげしき」のみで、「ちょうはつ」を仕掛ける意味はあまりない。
主人公に敗北し戦闘プログラムから解放されたAIは、駆け付けたペパーに謝罪と親としての言葉を送ろうとするが…
博士の夢にかける執念は狂気染みており、AIすらも気付いていなかったセキュリティが仕組まれていた。
AIは息子とその友人達に逃げるように懇願するが……
楽園防衛プログラム
オリジナルのオーリム博士/フトゥー博士がAIに仕組んでいたタイムマシンの最終セキュリティ。
画面にノイズが走り、対戦者名もAIの「戦いたくない」という想いも「楽園防衛プログラム」として書き換えられてしまうという演出がなされている。
更には手足がテラスタルしたかのように結晶化、バグったような話し方になり、更には白かった部屋も真っ赤/紫一色に染め上げられるなど暴走ぶりがこれでもかと強調されている。
また正体判明以降○○AIに変化していた博士の名前が、この戦闘中の会話時のみオーリム/フトゥーに戻っている。楽園防衛プログラムに宿る人格は博士の妄念そのものと見ていいだろう。
◆使用ポケモン(2)
スカーレット
バイオレット
- 楽園の守護竜 ミライドン:Lv72@グランドコート
かつて主人公のコライドン/ミライドンとの縄張り争いに勝利し、エリアゼロから脱走する原因となった冷徹かつ凶暴な性格のもう一匹のコライドン/ミライドン。
ボタンもハッキングを試みたようだが、電波に妨害されてうまくいかないという。
モンスターボールを封じられ手持ちのポケモンを出すこともできず、どうぐを使う事もできず、かと言って逃げたら仲間達にも危険が及ぶ。
まさに絶体絶命、もはやこちらになす術は───
あった。
そう、手持ちのモンスターボールは普段バトルで使用している6つだけではない。
主人公は共に旅した7匹目のポケモン、ペパーから預かった
コライドン/
ミライドンのボールに手を伸ばす。(少し時間をかけると選択画面で、振動機能でこちらに7番目が促してくる!)
封じられているのはあくまで
博士が管理していたもの以外のボールであり、
元々博士が管理していたコライドン/ミライドンのボールにはロックが掛けられていなかったのだ。
楽園の守護竜と対峙した
コライドン/
ミライドンは主人公の信頼に応えるように戦闘用のフォルムを取り戻し、
かつて自身を打ちのめした強敵に挑む。
BGMはメインテーマのアレンジ。負ける気がしない!
楽園の守護竜の初手は「ちょうはつ」固定。完全にこちらのコライドン/ミライドンを見下している。
共に旅した友たちの声援を力に変え、楽園の守護竜と戦う
コライドン/
ミライドンだが後一歩及ばない。
そうこうしているうちに、これで終わりだと言わんばかりに必殺の
ギガインパクト/
はかいこうせんが放たれてしまう…が、こちらの
コライドン/
ミライドンも主人公を
悲しませまいと持ち堪える。
何か対抗策はないのかと悩んでいたその時、主人公の持つテラスタルオーブにエネルギーが満ち、ドラゴンテラスタルが発動。
起死回生のテラバーストの一撃が、楽園の守護竜を打ち破った。
相手トレーナーの立ち位置は「スターダスト★ストリート」、敵の肩書きとHP表記は「レジェンドルート」、ラス1でBGMを盛り上げる演出は「チャンピオンロード」、そして楽園防衛プログラムの撃破演出はテラスタルポケモンの撃破を踏襲しており、一つの集大成となっている。
楽園の守護竜が敗れたことで楽園防衛プログラムも解除され、正気を取り戻したAIだが、AIがゼロラボ内に存在する限り何度機能停止させてもタイムマシンが修復されてしまうことに気付いてしまう。
解決出来る手段はただ一つ。AI自身をタイムマシンで別の時代に飛ばすことだけ。
テラスタル結晶で機能を底上げされたゼロラボ外では活動不可能なAIは、悲観する子供達に「調査の為に調べていた自由な君たちに憧れを持っていた」「自分自身が夢見ていた古代/未来の世界に君たちの様に冒険をしたい」と伝え、ペパーにオリジナルの博士は確かに息子を愛していたことを語り、遥か古代/未来に旅立つのだった。
残されたもう1体のコライドン/ミライドンはエンディング後にゼロラボの後ろにある坂の上に鎮座しており、そちらで捕獲可能。
余談
博士が目指していた
「別の時代の生物と現代に生きる生物との共存」という考えは、やり方こそは違えど
ジュラシック・パークの思想にも似ているだろう。
こちらの方も最終的には
現代に生きる生物(人間含めて)を脅かす結果になってしまったのも言うまでも無い。別の時代に生きる生物は
現代に生きる全ての生物(人類含めて)にとっては外来種に過ぎないのだ。
事実、
外来種を連れて固有の生態を破壊するというケースは実際の生物でも起きており、有名所ではペットとしてもよく好まれる
アメリカザリガニ(甲殻類)も日本固有の生態系を脅かす存在であるとして規制すべきではないかと多くの有識者が指摘している。
また、日本固有の生物が逆に海外の固有生態系を荒らしている例としてナミアゲハや葛、イタドリなどが有名である。
オーリム博士もフトゥー博士も、明らかに在来のポケモンよりも強いと認識しているパラドックスポケモンたちを現在の生態系に放つというのは、AIが指摘する通り生態系を壊す懸念は否定できず、「合理的ではない」と断じられても無理も無いだろう。
それに
違う時代から連れて来たポケモン達がいた元の時代にも少なからず影響が出る可能性も否めない。こちらも映画『サウンド・オブ・サンダー』を見た人なら同じ事態を招く可能性も予見されるだろう。
オリジナル博士の
リアリストイカれっぷりは過去のボスキャラ(特に悪の組織の)の中でも最上位クラスであり、特に戦闘AIでのポケモンバトルで敗北した時用の楽園防衛プログラムに至っては完全に人としての一線を超えている。
ポケモン世界では(ゲーム的な都合はあるにせよ)信念をかけたポケモンバトルに負ければ少なくとも自分自身の敗北であり、最低でもその場は相手の要求をのむなりその場から撤退するものだが、
博士の場合最後の悪あがきとして相手のモンスターボールを使用不能してから凶暴なポケモンを解き放つという
ポケモンバトルを全否定した行為を事前に仕込んでいた。
現実世界でいえば丸腰の人間の前に軍用獣を解き放つようなもので、
どう考えても防衛プログラムの対象になった相手が死亡する可能性がある。
ということは歴代でも滅多にみない「ポケモンによる殺人を許容している」キャラクターであり、狂気のほどをうかがわせる。
そんな博士が防衛プログラム用…即ち殺人を許可していた守護竜の起こした事故で殺害されるのはなんとも示唆的である。
しかし何故非情な手を使う悪の組織のボスですら負ければ言うことを聞くのかといえば、矜持の場合もあるかもしれないが
身もふたもない言い方をすると保身のためである。
手持ち、すなわち今自分が動かせる戦力がない状況で負けるというのは同じく“死”を意味することであり、仮に歴代主人公が負けて動けるポケモンもいない状態でなおも抵抗を続けようものなら……
本当に目の前がまっくらになりかねない。
一昔前では人がポケモンにより傷つけられ滅ぼされることが容易に起こりうると示され、ポケモンと戦える人材が一般的ではない時代でも平気で人にポケモンをけしかける様子が描かれた後ならばなおさら荒唐無稽な話ではあるまい。
また一度負け手持ちが潰えた状況で挑んでくるボスにも前例がある。
ではどうして博士が今回こういった手段を用いたかといえば、ひとえに「できたから」とも言えるのではないだろうか。
そもそもタイムマシンであれ高性能AIであれ博士をもってしても「現代の技術では不可能」であり、可能にしたのはテラスタル結晶の効力。
ボールロック機能もあくまで研究所内のみのもので結晶の恩恵である可能性は高い。
歴代ボスは
しなかったのではなく、
できなかっただけではないだろうか。
加えて博士自身の心境はどうであれ、タイムマシンがもしより大きな悪意をもって利用されるようなことがあれば世界に甚大な影響を与えかねない代物なのは間違いなく、
無理に動かそうとしたり悪用を阻止しようとしたAIが敗れた場合に備え、その防衛プログラムを事実上突破不可能なものにすること自体は頷ける節はある。
とにもかくにも
そうなる前にプログラム自体を止められる博士がいなくなってしまったのが事態をややこしくしているのだ。
元々博士は地上で研究していて、問題を起こしたライドンを穏便に匿うためにはエリアゼロに引きこもらざるを得なかった。
後々バリアすら突破するパラドックスポケモンが出てき始めていたことを踏まえると、自分がいない間に強大なライドンがもし地上に出たらヌシポケモンよりひどい被害が出かねない。
エリアゼロにはまだまだ詳細不明の未知の存在■■■■がいて、ライドンですらひょっとすればペパーの
マフィティフのような被害に遭うかもしれない。
博士がエリアゼロから出られるのはどういう形であれ研究が終わったその瞬間である。
一応ライドンを元の時代に返せば解決はする……しかしペパーはマフィティフ(当時オラチフ)をとても大事にする子であり、
ライドンもまた短い期間であったがペパー曰く「世話手伝わせてもらってて」という間柄だったので、ペパーのことを思えばこそ軽率な行動は取れなかったのかもしれない。
(本当にマフィティフに比肩するかはともかく)仮にペパーに「あの子はもういなくなった」とでも言えば、どんな思いをするだろうかという親心だろうか。
まさかあんな危険地帯に幼いペパーを連れて行くわけにも遊びに来させるわけにもいかない。
息子を心配し一緒にいたい気持ちは、より「早く研究を完成させなくては」という思いを強めたのではないだろうか。
そして時間が経つごとに愛する人に会えない辛さは膨らんでいき、一人になった環境もより心を摩耗させる。
大人の博士と結びつかないつたない字で名前が書いてあるほど幼少期からの憧れであったスカーレット/バイオレットブックの世界への憧れもまた煮凝った感情に押されるように加速。
「力ないものが脅かされてもそれもまた自然の摂理」との思想を持ちながら、危険を熟知してなお庇ったのは“弱い”ライドンだった。
振り返ってみればどちらのライドンからも恐れられたり嫌がられる様子はなく、むしろ気弱なほうは博士の研究所を目指し画面越しでも反応してボールから出るなど懐いている様子であったほか、
凶暴なほうでさえラボの扉が開くと目の前の縄張りを侵す同種に目もくれず中に入っていき、素直に博士AIのボールに収まったあたり、
性格の別なく慕われていたと見て間違いないだろう。また、主人公たちを守るために奮起し、凶暴な同種に立ち向かいはしたが最後まで博士への敵意をライドンは示さなかった。
ああも敵対したにも関わらず別れの会話では4人が語られた後「自分も忘れるな」とばかりにギャオギャオスし、消えたあとは悲しそうな声で「ギャス……!」。
早期からボタンを気に入ったようにペロペロしていたのも“ボタンは悪い人物ではない”ことを伝えていたのかと思うと、つまりライドンに好かれる人物は……
当時のペパーの心境を知る由もないが、博士にとって最初のライドンはペパーと共に家族のように過ごし、ペパーがお世話していた大切な個体だったことは間違いない。
そう考えると、博士が目指す異なる時間軸のポケモン達が共存する「楽園」とは、世間から秘匿せずとも家族とライドンが共に暮らしていける世界…とも言える。
宝探しに奔走する主人公たちを「自由な若者」と称していたが、
多くの宝物を持ちながら、その全てを保とうとした結果宝物がひとつ、またひとつ零れ落ち、ひとりぼっちで穴蔵の底に束縛されてしまったのが博士だったのかもしれない。
実際観測ユニット内の狂気に陥る前に作ったであろう資料を見る限り「楽園」が完成した暁には3人(配偶者とペパーだろう)で暮したいと考えていたようだ。
少なくとも完全にペパーも博士も捨ててどこかへいってしまった配偶者よりはずっとペパーのことを愛している。
ペパーも、クリア後の会話では「タイムマシンなんて作ろうとしたら家族へのコミュニケーションが少なくなるのも仕方ない」と諦めも混ざった理解を示している。
ペパーも目的のためなら学校の単位を落としても一切構わないような行動をするあたり似たもの親子で、我々の一般的な感覚と比べるとズレてはいるが言うほど親子関係が壊滅的とは言えないだろう。
また、完全に人格と記憶をコピーしているはずのAIとオリジナルの思想がズレているように思えるが、推測ではあるが「狂気にとらわれる前の人格をコピーしている」か「博士自身がこうだと認識している自分をコピーしている」のだろうか?
高度な演算・思考能力を有し博士自身が思い出や感情を入力したAIでさえ楽園防衛システムは予期できなかった。それはつまり、自然な状態ではあり得ないほど博士の精神が変質していたとも取れる。
ブックに記された明らかに記憶……どころか記録にまで干渉している謎の存在の影響等は?
違いに関して将来的に語られることを期待したい。
楽園防衛プログラム戦でAIが繰り出してくるコライドン/ミライドン(以下2号と呼称)だが、主人公と共に旅をした個体(以下1号)と比較すると非常に技構成が悲惨なことになっている。
コライドン:ギガインパクト/ビルドアップ/ちょうはつ/かえんほうしゃ
ミライドン:
はかいこうせん/じゅうでん/ちょうはつ/パワージェム
こう見えて「ビルドアップ」「ちょうはつ」「パワージェム」といった完全な技マシン由来技や、レベルをかなり上げないと覚えられない「ギガインパクト/はかいこうせん」が含まれている。
しかしタイプ一致の技を一切覚えておらず、ポケモンシリーズ初心者でもここまできたら見習わないような技構成になっている。
おかげで
ミライドンは「じゅうでん」の後に「はかいこうせん」をぶっ放す珍妙な行動に出る
し、コライドンに至っては仮にもらいびソウブレイズと相対すれば完封されてしまう始末。
もしかしてこのための楽園防衛プログラムだった…?
恐らく、2号は凶暴/冷酷な性格が災いしてロクに育成ができなかったのだろう。オリジナル博士の死亡後もAIが技構成を調整しなかった(できなかった?)辺り相当である。
実際、穏やかな性質の1号は技構成が整えられており、象徴となる専用技や、技マシンを使用しなければ覚えられない「テラバースト」も使用できる。
今まで散々1号をいたぶっていた2号が1号に敗北したのは、ひとえに自身の性格が引き起こした自業自得だったのかもしれない。
なお、技構成こそ酷いものだが楽園防衛プログラム本来の役割である「タイムマシンを害する邪魔者の排除」は問題なく行えるはずである。
Pokémon LEGENDS アルセウスで示されたように、人間はモンスターボールや手持ちのポケモンが使えなければ基本的にポケモンに抗う術は無い。ましてや相手が伝説のポケモンならば尚更である。
オリジナル博士の作戦は確かに完璧だったが、1号によって危機を脱されたのはイレギュラーとしか言いようがないだろう。
……とはいえ博士にとっても自分が事故でいなくなり、動きっぱなしで停止キーすら手元にない状況でAIだけが残ったのは完全にアクシデントであり、止めるものも止められなくなってしまったのはそれこそイレギュラーであったはず。
終盤まで正体や事情が明かされなかったためなんとなく“博士の思惑”や誘導として印象に残りやすいが、AIは最高峰の実力を持ち、
タイムマシンや強力なポケモンといったともすれば貴重かも、利用できるかも……と揺らぎそうな存在と対面しても余計なことを考えず手遅れになる前に自分ごと止めてくれる人材と合理的に判断し招いたのみであり、
博士はなにも子どもの学生がエリアゼロを踏破し研究を止めに来るのを想定していたわけではまるでない。ましてや息子が、である。
そもそもAIの助言がなければブックが停止キーであると知る手段すらない=防衛プログラムは破壊活動でもしない限りおそらく起動もしないのだから、今回の騒動はあらゆる面で博士の思惑から外れていたのではないだろうか?
楽園防衛プログラムを仕込んだ段階で狂気じみた執念があったのは恐らく間違いないが、子どもであろうと問答無用で仕留めにかかりプログラムを止めない人物であったかは明らかではない。
+
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もう一つの未来 |
「藍の円盤」終盤では、テラパゴスが眠る「ゼロの大空洞」入り口に、タイムマシンの完成前に博士が研究を行っていたスペースがある。
デスクの上に置かれていた本には、「霧に包まれた東方と思しき場所に飛ばされ、そこにいた子供に白い本を―――」と言う覚書があった。
そしてシナリオクリア後、テラパゴスが手持ちかボックスにいる状態でキタカミの里のてらす池に行くと、「ザ・ホームウェイ」の真エンディングと言うべきサブイベントが用意されている。
テラパゴスが飛び出して池の中のテラスタル結晶を励起させ、何と生前の博士をその場に呼び出したのである。
博士の姿を見たコライドン/ミライドンもボールから飛び出すが、これを見た博士は「ツバサノオウ/テツノオロチ」が目の前にいることに驚きを見せる。
周囲の状況から自分がパルデアではない別の場所にいることを推察し、居合わせた主人公としばし語らうが、そこで主人公が持っていた白い本……すなわち、ブライアが「SV」本編から「藍の円盤」まで、エリアゼロにおける全ての顛末を記した本「ゼロの秘宝」を見て、自分が持っていたサイン入りのスカーレット/バイオレットブックと交換。
そして、「久々に帰って読書でもしてみるか」と言い残し、霧の向こうに去って行った。
ここで登場した博士だが、会話の内容を見る限り、
- 「子供」は既に生まれている。(実はペパーとは明言していないため、「子供」の性別すら違う可能性もある。配偶者も明言されていないためなおのこと)また「寂しい思いをさせている」という言及から、物心つく年齢と思われる
- コライドン/ミライドンと出会っていない。主人公の連れていたライドンを見て反射的に出てきたのがパラドックスとしての仮名だったことから、タイムマシン自体作っていないか、未完成と思われる
- タイムマシンの制御キーであるサイン入りのブックを手放している
と言った違いがある。
AIのオリジナルとなった方の博士は、ペパーを授かると同時期にタイムマシンを稼働させ、ライドンを転移させているため、このイベントで登場した博士はタイムマシン関連の研究の遅れ具合から見て並行世界の別人である可能性が高い。
一方で大空洞に残されていたメモを見る限り、本編の博士もこの博士と同じ経験をしたようだが、状況的に「ゼロの秘宝」を受け取る前に時間切れで送還されたと思われる。
このイベントの博士は、異なる世界とは言えタイムマシンを完成させた自身に関する顛末を「ゼロの秘宝」を通じて知ったはずだが、その上で博士がどんな道を選んだのかは想像するほかない。
ちなみにこのイベントでまたスタート画面が変わる。
あと博士の本は前述の通りタイムマシンのパーツの一つだが、この時点でタイムマシンの部屋には入れないし、管理人も兼ねた博士のAIもいないため、タイムマシンは起動できないと思われる。
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