遊戯王R

登録日:2010/12/13(月) 00:01:09
更新日:2025/03/27 Thu 13:08:59
所要時間:約 6 分で読めます




◆概要

2004年から2007年までVジャンプで連載された漫画作品。
遊戯王の外伝作品である。正式な表記はやはり「遊☆戯☆王R」。
原案・監修は高橋和希、漫画は伊藤彰。コミックスは全5巻。

時間軸はバトルシティ編と記憶編の中間。
アニメ(遊戯王デュエルモンスターズ)ではなくあくまで原作の続編であるため、ペガサスは死んでいる。
但し遊戯などのキャラクターはややアニメ寄りの性格。

伊藤氏がパソコンのエキスパートからなのか、登場人物と一部のカード名がCPUの開発時のコードネームから取られている。

なお、3巻には『ジャンプヒーローズ』に掲載された特別読み切り編が収録されている。


◆ストーリー

ペガサスに育てられた孤児、ペガサスミニオンの一人である天馬夜行はペガサスの蘇生と遊戯への復讐を果たすべくR・A計画を実行。
海馬コーポレーションを掌握し、真崎杏子をペガサス復活後の肉体にするために誘拐する。
遊戯達は杏子を助けるために、海馬コーポレーションに集められたカードプロフェッサーを倒していく。
だが、彼らの前に「神のカード」と対をなす「三邪神」が立ちふさがる……!


◆主要登場人物

主人公。学校にデュエルディスクを鞄に入れて持って来ていた。
「おい、勉強しろよ」とツッコみたくなるが、バトルシティ優勝者という遊戯の立場的に道中で私闘を挑まれる事が多いため仕方がないと思われる。
時系列がバトルシティ編後のため、使用デッキは当時の無印のものをベースに新カードやラーを含めた三幻神をすべて投入している。
ただ、どちらかと言えばブラック・マジシャンより冥府の使者ゴーズがエースモンスターになっている。
記憶編に先駆け、今作では表遊戯も自分のデッキで一度だけ戦う。


ヒロイン。健康、非決闘者、遊戯の大切な人物という理由でペガサスの魂の依り代に選ばれる。
長らく「さらわれるのはじーちゃん」という法則に泣かされたヒロインだったが、遂にまともなヒロインになれた。


遊戯と共に海馬コーポレーションへ向かう。
デッキは持って来ていたが、デュエルディスクは敵から借りた。
遊戯同様使用モンスターは無印とほぼ同じ。時系列的には返してもらっているのではないか、と考察される真紅眼も相変わらず行方不明で使用されていない。
遊戯と海馬には10万ドルの懸賞金がかけられていた一方で彼にかかった賞金は僅か10ドル。仮にでも決闘者の王国準優勝、バトルシティベスト4に対してあんまりな扱いである。一応最終的に200ドルまで上がりはしたが。
北森玲子との決闘での一幕は、当時物議を醸していた。(後述)*1


遊戯と(ry
序盤で城之内・本田の2人と遊戯が別行動になるため、城之内のツッコミ、終盤では更にリアルファイト要員という立派な仕事を得た。
今作ではちゃんと存在価値がある。よかったよかった。


ラスベガスから戦闘機で帰ってきたり、リアルファイトしたりと相変わらずの御様子。
青眼の生け贄要因として、磁石の戦士に似た特性を持つ「マテリアルモンスター」を新たに使用する。
夜行に敗北して「うわあああああああ」とか叫んじゃうシーン*2は必見。

夜行とのデュエルにおいて、「しなくて良い究極竜への融合なんてするから負けたんだ」とツッコまれる事があるが、青眼が1体攻撃できない状態かつ原作世界での《青眼の究極竜》には3回攻撃能力と耐性もあるため、明確な悪手だったかは意見が分かれる。

ちなみに最後のデュエルこそ敗北に終わったものの、海馬の真意は別にあり・・・・・・


社長が決闘している間にセキュリティを解除する優秀な子。ちゃんと誉められた。


今作のキーとなる存在「ペガサスミニオン」の1人。
ペガサスを慕うがあまり、彼が創造を躊躇った三邪神のカードを造り、R・A(リバース・オブ・アバター)計画でペガサスの蘇生を試みる。
元々は物静かな性格だったが、邪神を手にして以降狂気(と顔芸)に染まっていった……。
デッキは邪神の召喚に特化した従属神デッキ。
切り札は「邪神アバター」。
また、モンスターのレベルを利用した戦術も得意とする。


夜行の双子の兄。夜行に操られていたが決闘後に遊戯の仲間になる。
ペガサスにパーフェクト・デュエリストと呼ばれるが、「完璧」ではなく成長が「完了」した意味と自覚している。
デッキは強力な効果を持ったエルフ達を駆使した【装備ビート】。
切り札は全てのモンスター効果を無力化する「エンジェルO7(オーセブン)」。ゼロじゃないよ。


邪神の力の実験台として蘇った。
夜行に遊戯がペガサスを殺したと嘘を吹き込んだ張本人。つまり今回の騒動に遊戯や杏子が巻き込まれた元凶。
デッキはトークン作成能力に秀でた機械族のモーターモンスターデッキで、相変わらず機械族とイカサマを愛用している。
切り札(?)は「邪神イレイザー」を持たされているのだが、キース本人はあまり気に行っていない様子。
王国編から長らくデュエルから離れていた事もあり「新ルールには不慣れ」などと言っているが、実力者のリッチーを倒し城之内とも激戦を繰り広げた。

原作だと漫画・アニメともにあんまりいいところがなかっただけに、再登場は驚かれた。
城之内に切った啖呵「ケツの穴穿られてーのか!」はあんまり当時の遊戯王っぽくないすごいセリフである。
なおOCG化した切り札《デモニック・モーター・Ω》は……もう少しなんというか……手心というか……。


カードプロフェッサー

キースに集められた賞金稼ぎ。
杏子が封印されている「魂の牢獄」と先に進むキーカードを懸けて決闘しなければならない。
待機場所はくじ引きで決められるらしい。ルーは「いわば傭兵」と言っていたが、玲子の回想ではここに挙げたメンバー全員が一つのグループらしく、案外フレンドリーな集団。
対戦相手への敬意に関しては欠ける奴も多く、特に城之内の相手は基本的に口が悪い。
ただし原作世界では相手を言葉で挑発して罠に嵌めたり、ブラフを通すのもスキルだとされているフシがあり、決闘での敗北後には基本的に素直にカードキーを渡し談笑を挟む者もいる。
彼らがプロの公式大会に参加し賞金を掻っ攫うことを専門とすることを考えると、決闘における煽りの応酬はパフォーマンスの一種という側面もあるのかもしれない。
実は彼らの名前は純日本名のマイコや玲子も含め、インテル系CPUの開発コードが元ネタ。「プロフェッサー」と「プロッサー」をかけたシャレだろうか。
OCGで切り札が弱体化されることに定評がある。

  • デシューツ・ルー(0.25μm版Pentium II「Deschutes」)
「闘争の階段へようこそ──」

遊戯達に進行のルールを教えてくれた最初の相手。
壁モンスターとコントロール奪取を駆使する。
ブラマジを奪ったうえで「絆なんて脆いもんだな」と煽るなど口は悪いものの、敗北後は紳士的な態度で遊戯と城之内を応援するような言葉をかけていた。
これに加えデュエル中の内心描写や玲子の回想から、実は闇遊戯の性格を分析して心理フェイズをしかけていただけという説もある。
そのまま帰ってしまったためか、ラストシーンでの再登場がなかった。
切り札は「《キャッスル・ゲート》」で、コントロール奪取したモンスターをこいつで射出してバーンダメージを与える。ブラマジを奪った罠カード《強引な取引き》は、自分の場とライフ半分が代償とはいえ相手フィールド全体にコントロール奪取を仕掛けるとんでもないカード。
OCG化されたキャッスル・ゲートは0の攻撃力を攻撃表示で晒さないと効果を発動できなくされてしまった。
何気に遊戯王GXの万丈目が「攻撃力0のカードのみで戦う」という条件で組んだデッキの中にも入っている。どう使うつもりだったんだろう。


  • ティラ・ムーク(0.25μm版MMX Pentium「Tillamook」)
「お前達 ひれ伏しなさい!」

アンデット族を操る、ゴシックファッションに身を包んだ綺麗なお姉さん。
無駄にソリッドビジョンに力を入れている。
切り札はライフと引き換えに何度でも蘇る「《カース・オブ・ヴァンパイア》*3」で、原作世界ではモンスター達を「しもべ」と扱う者が多い*4がティラは彼を「主」と慕う。
OCG化の際にはライフコストは減少したものの蘇生は戦闘破壊時限定となり、攻撃力上昇効果も累積しなくなってしまった。
なお、Vジャンプ掲載時とコミック収録時でカース・オブ・ヴァンパイアに血を吸われている際の表情が異なる。
城之内にデュエルディスクを貸すことになったが、城之内はそのディスクをいつの間にかなくしており、代わりに彼がキースから奪ったブラックデュエルディスクが手元にやってきた。
負けが確定した時や、ブラックデュエルディスクを貰った時の反応が割とかわいい。


  • クラマス・オースラー(0.35μm版Pentium II「Klamath」)
「このクジ運なら、あの武藤遊戯にも勝てるかもしれねェ…」

クジ運が悪く最下層に配置されてしまった、チンケな罠にハマって落っこちてきた城之内の最初の相手。
デュエルもどうにも運による上振れ下振れが激しい模様。
多分装備ビート系の下級昆虫モンスターデッキなのだが、《アリジゴク》*5と《ワームドレイク》の2枚しかモンスターを出せずに短いターンで敗北したため詳細があまり判明していない。
何気に「装備魔法のステータス変化を二倍にする」というトンデモカードを使用している。

単行本おまけコマでは、パワードキャタピラーのラジコンを操るディクソンとアリジゴクのラジコンで遊んでいる(パワードキャタピラーの下敷きにされて涙目ではあるが)様子が描かれている。
また、ラストでは城之内が無くしたデュエルディスクらしきものを持って来てくれており、案外根は良い奴なのかも知れない。


  • カーク・ディクソン(0.25μm版モバイルPentium II「Dixon」)
「残念です。かわいいマジシャンも儚い命でした」

海馬コーポレーションに大量の罠を仕掛けたメガネ。
所謂軍人喋りをするが、本物の軍隊経験者なのか技術のあるミリオタの類なのかは不明。
デッキは機械族中心のマシンナーズ*6で、彼が使用した《パワードキャタピラー》は後に《パワードクロウラー》と名前を変えてOCG化された*7
切り札は4600もの攻撃力を誇る「マシンナーズ・フォース」だが、召喚に実質4体のモンスターが必要だったり色々武装を持っている姿なのに攻撃がぶん殴りだったりとツッコミどころも多い。
因みに「マシンナーズ・フォース」の使用に必要な《督戦官コヴィントン》の由来もIntelのCPU開発コードネーム(0.25μm版Celeron「Covington」)である。

罠に引っ掛かった(そして下層フロアに落下した)城之内を指して「おそらく彼に相応しい場所に行った。例えばゴミ溜めとか」などと言い放つ不遜な奴だが、闇遊戯とのデュエルに敗北後、動揺のあまり自分が仕掛けた罠にひっかかり本当にゴミ溜めに落ちてしまった。しかも上階に行くための階段を上る最中の城之内・本田組とすれ違っている。
最後には脱出に成功したのか遊戯らを敬礼で見送っている。
そこまで重要な人物で無いにもかかわらず、劇中で使用したカードが全てOCG化された実績を持つある意味すごい人。


  • ピート・コパーマイン(0.18μm版Pentium III「Coppermine」)
「いやあそんなに驚いてくれるなんて、ガマンして隠れてた甲斐があったよ」

妙な笑い方をしたり城之内を驚かしたりと掴み所の無い男。
細身の長身で全身黒のぴっちりした服を着ている。
デッキはサイキック族みたいな感じで自身も超能力を持つらしい。連載当時サイキック族は存在しなかったが。
切り札は「《ミュータント・ハイブレイン》」で、攻撃力0ながら相手モンスターを利用して攻撃を行う。
城之内を軽く見る人間が多い中、ピートは城之内を「単純なデュエリスト」と評しながらも警戒は怠っていなかった。
切り札のOCG化では相手モンスターが2体以上存在しなければならない制限が付き、操ったモンスターの直接攻撃を禁止された。


  • ミセス・マイコ・カトウ(0.25μm版Pentium III「Katmai」)
「あんまり年寄り扱いするんじゃないよ」

3人の孫を持ち、車椅子に乗ったお婆さん。名前からしておそらく日系人か。
足が不自由なようだが何と車椅子にデュエルディスクが内蔵されており、未だ以て現役。若かりし頃が気になる。
「乗り物と一体化したディスク」という点から、Dホイールの先駆けだとネタにされることも。
恐らくカードプロフェッサー随一の人格者で、闇遊戯が「あなた」呼びで敬意を表した数少ない人物*8
デュエリストとしての力量も高く、「森属性」モンスターとそれを強力に補助するフィールド魔法「深き森」の連携を駆使した戦術で遊戯をあと一歩まで追い詰めた。
切り札は後にOCGでも環境カードの一角となった《森の番人グリーン・バブーン》。あまりに癖のない強さをしていたため、R出身のカードということを知らない人も結構多かった。
しかし後に裁定変更で召喚トリガーが効果破壊に限定され、原作再現が不可能になった上に環境での採用もされなくなってしまった*9


  • メンド・シーノ(0.25μm版2次キャッシュ統合型Celeron「Mendocino」)
「小手試しの相手ごときにそんなマネするかよ」

ターバンに袖無しのシャツにジャケットというアラビアンナイトか昔の海賊かという格好のチンピラ。
やたら城之内をコケにする発言が多く、本田曰くごちゃごちゃうるさい奴。
デッキはカマキリモンスターを主軸に、通常召喚にライフコストを強要する永続魔法とトークンを生み出すフィールド魔法で展開をロックするもの。
態度は非常に悪いが、こいつと城之内のデュエルは回を跨ぐ激戦であり、上記の戦術に加え除去罠もセットしてあるなどやはり実力は高いのだろう。
切り札は他のモンスターを食して攻撃力をその数値分上昇させる《デスサイズ・キラー》。
城之内を完全にナメてかかっていたが、攻守逆転+タイムマシーンコンボでひっくり返され、懸賞金の低さに見合わない実力に呆然としていた。
デスサイズ・キラーはOCGでは生贄モンスターが昆虫族に限定される、攻撃力上昇効果を相手ターンに発動できなくなる、攻撃力上昇値が500固定になる、攻撃力上昇が永続からそのターン限定になる。と、これでもかと長所を潰されている。


  • ウィラー・メット(0.18μm版Pentium 4<初代Pentium4>「Willamette」)
「オレにいわせりゃ青眼の白龍なんて、実戦では使えない単なる観賞用のカードだね」

海馬の最初の相手。
デッキは海馬をメタった【ドラゴン族】。
切り札は青眼を含む一部のモンスターが繰り出す「魔法攻撃」を吸収する能力を持つ「《ホワイト・ホーンズ・ドラゴン》」。
海馬と戦ったのが屋上でありそのまま居座っていたため、海馬VS夜行、続いて最終決戦でもギャラリーとなり遊戯VS夜行のデュエルも観戦することになった。
後者では台詞こそなかったが、何かと出番が多かった。
夜行に突き飛ばされ落下した海馬を受け止めたり、青眼の白龍を挑発する際もクズやゴミと言わず「(見栄えはいい)観賞用」と称したり、負けた時は潔く敗北を認める等、男性プロフェッサーの中ではまだマシな性格である。
ホワイトホーンズの存在から察するに、デュエル中の態度も青眼と海馬に対するライバル心が高じた、といったところだろうか。
OCG化の際も強力な能力を与えられており珍しく恵まれている。
因みに、ビルのセキュリティシステムの設計者であるモクバは自力でキーを解除できるので彼のカードキーは海馬には不要だった。そのため彼とのデュエルは海馬にとっては……「座興に過ぎんな!!」

青眼を「実戦では使えない観賞用」と称した事を度々ネタにされるが、遊戯王R連載当時の青眼のサポートカードと言えば《白竜の聖騎士》《正義の味方 カイバーマン》《滅びの爆裂疾風弾》程度でしかなく、優秀なサポートカードが多数追加され【青眼】が環境で大活躍するのは約10年後の事である。
【変異カオス】【除去ガジェット】【黄泉帝】といった単純なパワーよりも優秀な効果を優先したデッキが流行していた当時のOCG環境としても、素の攻撃力こそ3000に届かなくとも優秀な効果を持つ最上級モンスターが珍しくなくなりつつある遊戯王Rの世界としても、「どこまで行ってもファッティ準バニラ」な青眼と素の攻撃力は多少低くとも比較的軽量かつ自力で大幅パワーアップできる(作中軸なら実質「対魔法モンスター用のオネスト内臓ドラゴン」)のホワイト・ホーンズならどちらが趣味カードかと言えば青眼と言う他なかった。


  • テッド・バニアス(0.13μm版Pentium M/Celeron M「Banias」)
「手札事故か?」

月行が遊戯の代わりに戦う事になった相手。
天使の施しの連続使用を手札事故と認識した*10せいで連載が終了してもずっとネタにされ続けている不憫な男。
原作ルールでは魔法カードは手札からは1ターンに1枚しか使えないので、天使の施し2連発を奇妙に思うのは無理からぬことだったりする。
デッキは獣族。ストレートに攻撃力で押していくタイプ。
切り札は★7通常モンスターとしては標準的なスペックの《アサルト・リオン》。
結果的にはコイツを召喚しなければ月行に勝てていたのだが原作では「バトルステップの巻き戻し」が存在していないので、大型モンスターの不意の召喚で返り討ちにあう*11可能性を考慮すると軽量モンスター2体を最上級モンスター1体にしたことも単純なプレミとも言い切れないところがある。
ちなみに使用カードの1枚《薬食い》は、生贄召喚に使用されたモンスターの効果と攻守の半分を生贄召喚されたモンスターに与える魔法カードで、いわば「なんでも《The tyrant NEPTUNE》」である。ただでさえネプチューンが禁止カードなのに、さらに召喚先の効果を併せ持つ合体魔改造モンスターを作れてしまう。ロマンには溢れているがそれ以上にOCG化は絶望的なカードといえるだろう。
セリフによると、キースにイカサマギャンブルで負けて借金があるらしい。


  • 北森玲子(0.13μm版Pentium 4 Extreme Edition「Northwood」)
「デュエリストの方ってちょっと怖いので…」

M&Wを初めてわずか一ヶ月の新人メガネっ娘。可愛い
プロフェッサーは大体そうだがカラー絵で描かれた事が一度も無いため、ファンアートでは茶髪で描かれがちだが実際の所は不明。
城之内の迫力に怯えまくり、手札をよく確認したいという理由で先行を譲るなど、城之内と本田が「闘争心0!」「オーラが全く無ぇ!」と呆れ気味に衝撃を受ける程にオドオドしている、かつM&Wに不慣れも不慣れという初代DM世界のデュエリストとしては珍しいタイプの人物。
これでも実力はギルド内でもかなり買われているらしく、新人ながらこんな所に駆り出されたのは彼女曰く「(自分には無理だと言ったのに)皆やれと言うので仕方なく」
その際の回想に登場した他のプロフェッサー達の様子を見るに彼らからは可愛がられていた、もしくは信頼・期待されていた様子。
彼女としても新人ながらカード・プロフェッサーの一員としての仲間・帰属意識はあるようで、本田から「(他と違って)話が通じそうだから」とカードキーを渡すよう頼まれた際も「あなた方の事情は知らないが仲間との約束だから」と毅然と断っている。

使用デッキやカードはチェスをモチーフとしている。元は名うてのチェスプレイヤーとかだったのだろうか。おまけページでもチェスボードが乗ったテーブルにもたれている。
攻撃するなんて考えたこともない」レベルのデュエリスト恐怖症で、その結果守備偏重の戦術になっていた*12が、城之内の説得で攻める事を知る(口車に乗せられたともいう)。
ちなみにこの時の城之内の言葉は賛否両論で本田からもツッコまれていた*13が、玲子に対して「デュエルの楽しさ」を知らしめた点ではおそらく間違えてはいない。

実は先に進むためのカードキーを持たされておらず、何故こんな場違いな所にいたのか経緯や経歴が全く不明*14

ちなみに城之内は原作でリシド相手に待ち(・・)の戦術を非難した事があるが、その際は臆病者などそれなりに強い言葉を使い*15対してリシドは冷静にターン進行を促すのみで、アニメ版では更にれっきとした戦術と揺るがぬ信念を見せた。そんな高潔だからマリクじゃないってバレるんですよリシドさん
その場面とこのシーンを比較すれば、あくまで心情を慮り問いかけるに留めた城之内の成長があり、玲子や守備戦術を糾弾するような意図はないことがわかるだろう。
使用デッキは自身の性格からか、守備を固めつつ戦わずして勝つデッキ破壊。
キーカードの永続魔法「《戦場の惨劇》」は「バトルフェイズで戦闘を行ったプレイヤーはデッキから5枚墓地に送る」というもの。ロックを考えずに使う時の《墓守の使い魔》みたいなもの。
デッキ破壊としては当時としてもちょっと遅いのだが、現環境なら墓地肥やしを見込まれて悪用間違いなしである。
上記の様にデッキ破壊が主戦術だが、攻撃力の高い「《パペット・キング》」という切り札も仕込まれている。
パペットモンスターやそのサポートカードは概ね強化を受けてOCG化されており、プロフェッサーの中では恵まれた部類。

なお元ネタのチェスでは「引き分け(ステイルメイト)に持ち込む」というのが立派な戦術として扱われており、
特に終盤に不利な状況に陥った時に相手を頓死させるべくうまく逃げること(およびそういう相手を逃がさないこと)はチェスプレイヤーの必須技巧。
当時の時勢では遊戯王に限らず「攻めない戦術」が卑劣漢の戦術とされやすかったため、作者がそこに一石を投じてみたかったのかもしれない。


  • デプレ・スコット(0.09μm版Pentium 4「Prescott」)
「キサマのような弱者が生き延びるには……クク、厳しい世界だな」

カードプロフェッサーギルドランキング2位でペガサスミニオン。服装が黒い。表遊戯と決闘して敗れる。
インベーダーら宇宙をイメージしたカードや、レベル分のターンしか生存できないフィールド魔法「《コズミック・スペース》」を使う。今のOCGじゃ考えられないほど遅い……
切り札はモンスターを倒す毎にそのレベルを得、貪欲にパワーアップを遂げる「《グリード・クエーサー》」。
使用カードの1つ《ゼータ・レティキュラント》が生成するイーバトークンが後に《イーバ》の登場でにわかに話題になったりした。
精神的に不安定らしく、台詞のほとんどが古印体*16で書かれており、テンションが上がると「ギャギャハハハハハ!!」というリッチーが呆気にとられる程の妙な笑い方で高笑いし始めた一方で負けてしまった時には子供のように泣きじゃくっていた。


  • リッチー・マーセッド(64ビットCPU 初代Itanium「Merced」)
「奪われた大切な人を取り戻す! ただそれだけだ!!」

カードプロフェッサー・ギルドのランキング1位でペガサスミニオン。
ペガサス復活に協力しない月行を裏切り者と罵り、デュエルでは激戦の末撃破し実力を示した。
1位の証明としてブラックデュエルディスクを持っていたがキースに取られ、城之内に取られ、最終的にティラ・ムークの手に渡る。
デッキは本人曰く月行と同じく効果モンスターを主体としたガンマンデッキ。本作を含む原作世界としては珍しく切り札と言える大型モンスターを使用していない。
実はこの人のカード、2023年現在1枚もOCG化されていない


  • シーダー・ミール(65nm版Pentium 4「CedarMill」)
シーダー「敗者復活戦があるとは聞いていないが…辿り着いたのなら無視出来んな!」
王様「どけ!!」「オシリスの天空竜!!!」
シーダー「うわあああ……」

遊戯に(尺の都合で)登場したページを捲ったら既に負けていた人。
モクバがコントロールルームを掌握したため「先に進む為にプロフェッサーを倒してキーを奪う」必要が無くなっていたのと、事態の進行で最早一刻の猶予も無くなっていた事もあって、
ハンドレス状態のオシリスの超電導波サンダーフォースで吹き飛ばされた。おそらくデュエル内容を完全に省略されただけなのだが、絵面からリアルダイレクトアタックをされたみたいだとよく言われる。二十代じゃあるまいし…
名前は作中には出て来ず最終巻のおまけページで判明し、それによるとデッキはハイテックマリオネットデッキ。中々美しい戦闘ロボ娘が描かれているのだが……。


オマケ

3巻の特別読み切り編に登場したストア・ブレーカー。

彼が劇中で使用した切り札《テュアラティン》もプロフェッサーと同じくIntelのCPUの開発コードネーム(0.13µm版Pentium III「Tualatin」)に因んでいる。
詳しくはリンク先を参照。


◆余談

本作以降、漫画遊戯王シリーズの単行本には遊戯王オフィシャルカードゲームのカードが付属する、というのが定例となった。
強力なカードが付属していると「カードが本体」のように言われてしまうこともしばしばある。

特に本作の第3巻には制限カードにもなった強力なカードである冥府の使者ゴーズが付属されており、
ゴーズの強さに魅了された決闘者によって多くが買い占められ、遊戯王単行本売上の最高記録を達成し、売り切れする書店が続出することになった。
そのため、今もなお第3巻だけは書店に置かれてないという場合が結構あるので購入の際には注意が必要。
逆に当時の古本店、特にブックオフでは「遊戯王Rの3巻」がたいへんな過剰在庫となり、それにちなんだジョークがよく聞かれたものである。ゴースのインパクトが強いが以降の「R」単行本も付録カードの性能問わず売り上げは好調でゴース抜きにしてもカード付録が単行本売上に影響を与えている。
このことが古本屋や中古ゲーム店でバイトしている非カードプレイヤーのオタクと、そういう場所でのバイト経験のないカードゲームプレイヤー(遊戯王に限らない)をつなぐ架け橋にもなった。そういう素朴な時代もあったのだ。

なお全5巻中、第2巻だけにはカードが付属していないという謎の仕様になっている。
その2巻の売上がよろしくなかった事に加え、原作漫画としての遊戯王が記憶編から単行本売り上げが伸び悩んでいた*17事へのテコ入れもありこれ以降漫画版GX、漫画版5D's漫画版ZEXAL漫画版ARC-Vと、全ての漫画版遊戯王作品のコミックスには付属カードが付くようになった。
更にその2巻の次に出たのがゴーズが付いている3巻である為、際立って付録の重要性を見せつける結果になっている。

かつては漫画版のカードのOCG化機会はアニメのものより遥かに少なく、コレクターからは喜ばれていた。

遊戯王Rでプレイされているものは「デュエルモンスターズ(OCG)」ではなく「マジック&ウィザーズ(原作)」、
つまり商品展開を前提にして作られたものではなく、あくまでも商品の元ネタの提供という立ち位置なので、
カード化されたものには当時のOCGでも珍しい効果のカードが多く、中には非常にクセが強いカードもある。
当時のアニメGXやOCGオリジナルテーマとはまったく挙動や目論見の違うカードが多かった。悪い言い方をすれば「浮いている」、良い言い方をすれば「他に類を見ない」。
当時はまだテーマ化が著しくなる前の時期だったため、これらのカードを軸にしたデッキというのもハマるとこれがなかなか強く、様々なカードが試されていた。

現代のプレイヤーには《冥府の使者ゴーズ》《森の番人グリーン・バブーン》(旧裁定)のように制限カードになるほど大暴れしたカードの印象が強いだろうが、
レダメが来る前のもっさりしがちだった当時のドラゴン族に「比較的軽く打点の高い優良モンスター」という枠で収まった《ホワイト・ホーンズ・ドラゴン》、
パーミッションデッキの切り札として愛用された《冥王竜ヴァンダルギオン》、癖は非常に強いのだがハマると激烈に気持ちいい《テュアラティン》、
布陣を整えるのに便利な《召喚僧サモンプリースト》(シンクロ召喚登場前)、当時は珍しかった「魔法・罠ゾーンにセットできるモンスター」《トイ・マジシャン》、
スキドレ系のデッキでたびたび用いられた《神獣王バルバロス》《獣神機王バルバロスUr》などなど、
全体的に「派手さはないが渋い活躍をしてくれるカード」が多く、これが当時のビルダー気質の環境にたいへん合致していた。
現代ではガジェットや帝やモグラの印象しかないだろうが、何も遊戯王OCGはガチ勢だけが遊ぶゲームではない。
この世代のカジュアルなデュエリストは、癖の強いじゃじゃ馬を使いこなす時にしか得られない栄養素を濃密に摂取していたのだ。

まぁ中には《デモニック・モーター・Ω》《デスサイズ・キラー》《キャッスル・ゲート》や旧マシンナーズみたいに「これでどうやって戦えばいいんだ!」したくなるカードもあったわけだが……。
あと「武装転生」を皮切りに自由度が高すぎて全然OCG化できない問題児というのも結構いる。後の《サイバー・ダイナソー》《フォッシル・ダイナ パキケファロ》《ダークエンド・ドラゴン》じゃないけど、原型のないカード化ってのはいくら強くても結構物議をかもすので、「なりきりグッズ」の路線を覚えた最近のKONAMIには「一応眠れる鉱脈だが正直掘りづらい」ってところではないだろうか。


漫画版遊戯王GXの作者、影山なおゆき氏がモンスター全般と背景を描いたとか。

影山「こ…この海馬のうしろの白い空間はなんだ!?」
伊藤『それブルーアイズ3体』
影山「オ…オマエ書けよ……(怒)」

このことは漫画版GXのスタッフ4コマに描かれているので興味があるなら参照されたし。



いい加減この項目追記修正しやがれアニヲタ!
ケツの穴穿られてーのか!


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最終更新:2025年03月27日 13:08

*1 「遊戯王Rの3巻」というゴーズ需要で買われた巻で収録されてしまったため、原作に興味がない層にもカードのオマケ感覚で読まれたことも原因のひとつ。そういう層には後述の深い考察なんて無縁なので、風評が広がったというところがある。

*2 直接対決した事で邪神の悪影響を受けていたとも思われるが

*3 既に《ヴァンパイア・ロード》などは登場していたが、当時はまだ「ヴァンパイア」はカテゴリ化されていなかった

*4 城之内もその一人である。

*5 相手モンスターを弱体化する効果を持つ

*6 後の強力機械族テーマだが、当時はまだ《マシンナーズ・フォートレス》ら強力な札は登場していない。この時代は「磁力の戦士」を専用の融合モンスターでまとめて《マシンナーズ・フォース》を出すといった趣のテーマ。この時期のマシンナーズは後に《マシンナーズ・フォース》のみが「手札コストとして」採用されるというもので、当時のマシンナーズを知る人には「超絶強化!」というよりも「テセウスの船」のように見られていたことも付記しておく。それくらい原型がない。

*7 戦車の無限軌道を指す「キャタピラー」は一般名詞と思われがちだが、実は商標登録。その関係でやむを得なかったと思われる。

*8 闇遊戯は基本的に年上だろうが「キサマ」「お前」「あんた」呼びをする。これは「遊☆戯☆王」に登場する大人がじーちゃん以外ほぼ悪者であり、闇のゲームの頃から悪者相手が多いから仕方ないのかも知れない

*9 これに関しては、当時のバブーンの裁定が類似の誘発条件を持つカードと比べて「特例」状態だったのがやっと正常な状態に戻ったとみなすべきである。

*10 これは原作の城之内もレア・ハンター戦で同じことを言っていたため、この世界における共通認識のようなものだと思われる。

*11 迎撃で1体、返しの攻撃で全滅してしまう

*12 デッキを削られるリスクがあったとはいえ、城之内をピンチに追い込める攻撃のチャンスを棒に振ってまで守りを固めるのを優先するほど

*13 この城之内の「説得」は当時ロック系のデッキを使うプレイヤーを否定するためにたびたび用いられ、ひどい場合は《プロミネンス・ドラゴン》を使う当時一般的だった炎属性デッキさえこの言葉でツッコミを入れられたことさえあった。当時は《サイクロン》さえ制限カードであり、ガチデッキ以外ではロックを抜けるための手段がほとんどなかったことが原因。他にも特定の戦術を否定するという描写は当時までのアニメ・漫画でたまに見られたが、プレイヤー間の対立を深めるだけであんまりいいもんじゃなかったため、遊戯王5D's以降はクロウ・ホーガンのブラックフェザーを皮切りに「環境デッキを人気キャラが握る」ということでプレイヤーの文化を刷新し、「デュエルの楽しさ」をプレイヤーに教えてしていくようになる。

*14 クラマスの発言からして各員の配置はくじ引きだった様だが、経験のない彼女は特例としてギルドの活動に参加させつつ危険の少なそうな僻所に配置したのかもしれない。ただし彼女は純然たる足止め要員な割にクラマスらとは異なり上層に近い位置なので、逆上した相手に暴行される可能性を鑑みると却って危なそうでもある(遊戯らの人柄を見越してならその限りではないが)。

*15 これは相手を卑劣な洗脳術を使うマリクだと思い込んでいたこともあるだろうが

*16 掠れ声やおどろおどろしい声色の表現によく用いられるフォント。遊戯王原作ではカード名や、アニメDMでも各話サブタイトルがこのフォントで書かれている。

*17 原作は37巻では初版20万部を割っており最終巻の38巻の集英社初版発行部数は15位でジャンプ漫画では下の方であった。