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ファイアーエムブレム 暁の女神 - (2015/10/21 (水) 22:50:43) の最新版との変更点

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-第1部の序盤くらいなら何とかついていけるものの、その中盤以降は前作キャラが登場しだす事もあり、前作での出来事や前作をやっていないと分からない固有名詞が多くなる。 --一応、ストーリー理解の補助として用語集や人物相関図が設けられているが、これらを利用しても十分に理解できない上に、そもそもストーリー上で分からない事は自分で調べなければならないという構成自体が問題である。 --ストーリーを理解しやすくするためか、シリーズ未経験者向けのノーマルではテキストが大幅に削られ、台詞が全体的に説明口調になるが、そのせいでますますストーリーに没頭しづらくなっている。 ***マニアックモードの難易度設定 -前作のマニアックは非常に練り込まれた作りになっていて大好評であったが、今作のマニアックはマップ属性廃止、三すくみ廃止、敵行動範囲表示廃止、取得経験値減少(ボーナスEXも含む、ボーナスEXの消費量増加)という新鮮味がない・手抜きな作りになってしまっている。 --難易度的にも、一部のマップが非常に難しいだけで、全体としては前作のマニアックより下。 ***ゲームデザイン これまでの作品と違い一度加入したキャラでも外れる事が多いので、ユニットの出撃選択の自由度が低く、プレイヤー独自の軍団編成が難しい。 -今作のストーリーは4つの部に分かれており、各部ごとに主人公、そして味方のメンツが異なる。 --第3部以降は、別の部のキャラクターがいきなり加入したり、別の部の主人公達を操作したりすることがあるため、計画的にキャラクターを成長させるのが難しくなっている。 ---特に第1部で加入する本作初登場キャラクターは性能こそ悪くないが、初期レベルが低い上に出撃するマップが少ないので成長させる機会が少なく、効率良く育てないとすぐ2軍落ちする。~ また、支援会話のシステムのために本作からのキャラクターは描写が浅いのが多く、前作から登場したキャラクターは前作プレイヤーからの思い入れもあるため、育てにくさもあってまず使われない。~ 中盤で加入する割には初期ステータスが低く性能も低めなフリーダや、前作から登場・本作では第1部から登場しているのに出撃可能マップが全体を通して極端に少ないトパックとムワリム、そして本作初登場なのにこの二人と同様の待遇なビーゼは悲惨。 ---逆に、前作から登場するキャラクターは概して初期レベルが高い上に出撃機会が多めな者が多いため、成長の機会が多くなってしまっている。 -強制出撃ユニットが多い --どのマップにもいると言っていいくらいで、自由な編成を組みにくいマップが多い。 --第1部8章や第4部序章・3章などでは人数も多いので編成がより困難に。 -また4部になると、''通常ラグズのほぼ上位互換に位置するチート性能''を持った「ラグズ王族」のユニットが沢山加入する。~ その結果、通常ラグズは''相対的に見れば趣味の領域''というユニットになってしまう。その強さはファンからも「王族縛りはデフォ」と言われるほど。 -今までの全ユニットが集合する第4部は終章を除くと計6章あるが、そこでは部隊を固定枠+選択枠で3つに分けて攻略することになる。そのためマップ数としては6章分だが、内訳は各部隊2章ずつである。 --部隊ごとに難易度や育成のしやすさが異なっており、どの部隊でどういうマップを攻略していくかのヒントも無いため、初見ではかなり大変。 ---このためか、本作のマニアックモードはハードモードをクリアしないと選べない仕様になっている。 --今まで一部隊運用だったのが三部隊に分かれることで、最初からレベルが高いユニットばかり育成する初心者の場合は総合的に戦力不足になり、結果的に前述の王族無双をせざるを得ない状況になり、単調で面白くない展開に陥る。 ***シナリオ・キャラクター -上記のように今作はシナリオに重点を置いているが、その肝心のシナリオがゲーム後半を中心に不評を買っている。 -''サインしただけで国民の命を根こそぎ奪う事すら可能な呪いをかける血の誓約''、''第4部で神が降臨しそれまでの流れをリセットする超展開(裁き)が起きる''と言った超設定がある。 --いずれも前作から伏線が貼られていたものの、このような設定で登場するのはいくら何でも唐突すぎる。 -今作の主人公は1部ミカヤ(副主人公としてサザ)、2部エリンシア、3部アイク、4部はアイクが主人公でミカヤが副主人公という具合。ただ、これまでの伝統だとパッケージ絵の中心に位置しているのが主人公であり、今作に於いてはそれがミカヤなので誤解されることに。 --2部のエリンシアは形式上は主人公だが、5マップ中2マップしか出撃機会がないためにファンから見れば残念な仕様。 ''ミカヤ'' -第1部では主人公らしく存在感を発揮するのだが、第3部以降は前作の主人公のアイクに取られていく。 -「私は戦いたくない→でも戦うしかない→本当は戦いたくない→やっぱり戦う」と、目の前の戦いに対する態度をコロコロと変える。 --1部で様々な奇跡を起こしてデインを救ったため、3部以降は兵士たちに崇められる形でデイン王国の将軍となる。 ---立場上、王の命令には従わなければならないので彼女が起こした戦闘自体に非はないが、戦う意味を王に問いただしたりはしない。~ つまり「何故戦うのかは聞いてないけど、王はいい人だから何か考えがあるんだわ」という事で、''その結果が血の誓約である''。 ---その王もまた、血の誓約の事を分かっていながらも黙っており、ミカヤが将軍を降りるか否かの瀬戸際で脅す様に教えるなど、こちらもこちらで不快なキャラである。 -最も問題視されているのが、第3部の終盤。~ 進撃開始前、血の誓約の事を知ったため、ミカヤはデインのために戦うと言う覚悟をはっきりと見せる。~ そしてマップクリア後、神使を乗せた天馬を攻撃しようとした時に、ティバーンがミカヤにとって家族同然のサザを人質にとって脅し、ミカヤは攻撃をやめる様に指示。~ しかし、その直後に降伏を命じられると、「戦う理由(血の誓約)は話せないけど、どんなことがあろうと立ちふさがり続ける(要約)」とサザがまだ人質にとられた状況で言っている。 --デインと言う国のために尽くすと言った直後にあっさりと個人であるサザを優先してしまった事や、言動が二転三転している事、この件に関してのフォロー・ツッコミがどこからもされていない事が問題視されている。 ---この時のミカヤは精神的に大変衰弱しており、未来予知の力も使えなくなるなど相当不安定な状況になっていたが、言動と状況がまったく一致していないのは明らかに変。 --ついでにこの場面では、真っ直ぐな熱血漢というティバーンが人質を取るという卑劣な行為を行ったと思えば、その人質を上空から落として部下に助けさせるなどキャラの軸までもブレており、この展開をやりたかったためにおかしくなったとも見れる。 -第4部では、イベント中は殆どの間別のキャラに憑依された状態となり、ミカヤ自身は相槌を打つ程度しかしない。そのせいでキャラが薄くなるばかりか、第3部でプレイヤーから落としてしまった評判を回復する機会を与えられないままゲームクリアに至ってしまう。 --後日談では''デインの女王となる''という結末が描かれるのだが、ミカヤ本人の意思がほとんど語られなくなるせいでプレイヤーからは「王位を奪い取った」など酷い言われ方をされるようになった。 --一応''二周目以降''では特定の条件を満たす事で終盤にある人物の命を救う事が出来るのだが、''憑依している別キャラの指示で特殊能力を使っただけ''なのでミカヤ本人の名誉回復には至らず、むしろ憑依中の別キャラからは''能力だけしか必要とされてなかった''ように見えなくもない。 ''サザ'' -主要人物である筈なのに冷遇が異常。~ 前作や第1部の伏線(スキル「大器晩成」や漆黒の騎士との会話)は''破棄される''上、シナリオ上では''凡人扱いされる''など、全体的に扱いが酷い。~ 新規キャラの中に混じっている数少ない前作キャラなので、前作キャラVS新規キャラの構図になる第3部では戦闘会話イベントが多いが、自軍が弱すぎてそんなこともやっていられない。 --ミカヤの傍にいる事が多いため出番は多いが、出番は第1部序盤以降これと言って存在しないなど、こちらでも見せ場がない。 -前作でもクラスチェンジ不可などあまり活躍させてもらえる性能ではなかったが、本作でも所謂お助けユニット相当という''脇役ポジション''で登場。 --ステータスが低めな盗賊系ユニットのためお助けユニットとして見ても不安が残るが、その一方で盗賊が必要なマップは中盤以降ほぼ用意されなくなるのに強制出撃が多いという救われなさである。 --本作で新たに登場する女盗賊ユニット・ヘザーはスキルや成長率、マップ構成で盗賊としての存在感を遺憾なく発揮している。 --ミカヤやアイクと同様に''イベントでしかクラスチェンジできない''仕様にもかかわらず、最上級職が汎用職の「密偵(エスピオン)」である。~ 同系統のクラス「暗殺者(アサシン)」と比べると「鍵開け能力は同等」「奥義・上限値などの戦闘能力は下位互換」と散々である。主要人物なのだから兵種、せめて奥義くらい専用にすべきだったと言われている。前述のヘザーが通常通りにアイテムで「密偵(エスピオン)」にCC出来るためにこの短所が更に際立ってしまっている。 ---イベントでしかCC出来なくともタイミングが適切ならばまだ良かったのだが、そのタイミングも遅い。同じくイベントCCであるアイクと比較すると上限値の差は「上級職サザ<最上級職サザ≦上級アイク<最上級職アイク」となっている。~ だのに''CCのタイミングがアイクよりも遅い''事からその異常性がよく分かるだろう。 --''終章で強制出撃''と一見厚遇されている様に見える面もある。しかし上記の性能上お荷物扱いされるどころか、「こいつがいるせいでお気に入りのユニット全員を終章に連れていけなくなった!」とプレイヤーから要らぬ中傷を受ける羽目になってしまった。 ---これらの不遇な性能から、「盗賊が不要」ではなく「サザだけが不要」な印象を植え付けられやすい。 -一応最重要人物との会話で「凡人だからこそ良い」的な発言をするが、それは終章で突然戦闘会話で出てくるもの。そもそも''ストーリー上で凡人故の活躍というものが描かれていない''のでフォローとして成り立っていない。 --更に言ってしまえばこの発言は「あなたのような無能がよくこんな所にいますね(意訳)」と言われた際の返答なので、見ようによっては只の負け惜しみにしか見えず、''サザ本人ですら本音では「凡人(自分)に良い所なんてない」と思ってしまっている''可能性すらある。 -しかし、今作では主人公であるミカヤやアイクを始めとして軸がブレているキャラが多い中、実力が伴っていないのは別として何よりもまずミカヤ優先というように終始キャラが一貫している点は評価しても良いのではないだろうか。~ もっとも、実際に評価してくれるプレイヤーはそれほどいないのだが… ''アイク'' -前作主人公。今作でも第3部主人公になるなど重要人物の一人である。~ だが、中盤から盛大にストーリージャックしてしまう。おまけにラスボスはアイクでしか倒せない。 --あまりにも活躍するため勘違いされやすいが、公式の見解ではアイクは''副主人公''扱いとなっておりあくまで正式な主人公はミカヤである。~ 今までの作品でも『トラキア776』や『烈火の剣』のように前作の主人公が登場するということはあったが、あくまで重要人物の一人でしかなくストーリージャックをするというようなことはない。 --一応フォローしておくと、前作からかなりの伏線を残していたりでアイクがメインになるイベントが集中するのは必然だったと言える。~ 問題なのは、公式が「あくまでミカヤが主役」としていること。前述のストーリーの件と同じでスタッフ発言と実際の製品でズレがあったせいで生じた問題と言える。 -アイクに賛同する人間が多く持ち上げられていると指摘するプレイヤーもいる。いくらアイクが前作でテリウス大陸史上重要な功績があるとはいえ、全体的にアイクに対する態度が甘いキャラクターが多い。前作では厳しい態度を見せたキャラクターも例外ではない。 //シノンとか甘くなってたっけ? --一応第4部終章ではアイクも前作っぽい性格を取り戻すのだが、後日談で唐突に''傭兵団から脱し旅に出る''という結末が描かれる。それに至るまでの経緯には触れられていない。~ 理由の推察こそ可能だが前作プレイ済み前提の推察である上、アイクは父から受け継いだ傭兵団の団長と言う設定があったり、伏線のないあまりの唐突さからとにかく後味が悪い。 -更に問題視されているのが、傭兵団の参謀でアイクの従者同然のセネリオとの絡みである。 --前作で特定の条件を満たしていると発生する会話では、''屈強な外見のアイクがいきなり中性的なセネリオに抱きつく''という明らかに腐女子を狙ったとしか思えないような展開になる。~ しかも、この会話を発生させていると後日談が''傭兵団をやめてセネリオと2人で旅に出る''というものになる。 ---余談だが、ライと言うキャラには特別な会話こそないが彼とも後日談が存在し、ここでも2人で旅に出たと匂わせるメッセージになっている。一応、アイクは前作で女性キャラとフラグを立てているのだが… ''その他の面々'' -今作で新登場したミカヤやラグズ王族を除くキャラクターが従来のシリーズと比べるとバックボーンが薄い。 --拠点会話で最低限のことは把握できるようになっているが、膨大なテキスト量の支援会話による掘り下げが無いことや、ストーリー上での出番の少なさがキャラの薄さに拍車をかけた。 --支援関係を自由に組めるシステムが、結果として支援会話の薄さ・テンプレ化につながった。 --暁の団の面々は[[公式ホームページのバックグラウンド>http://www.nintendo.co.jp/fe/akatsuki_bk/index.html]]、その他はファイアーエムブレム大全で語られている。 -EDも前作に無かった後日談が追加されたが、分岐の幅も数も少ない。 --なんと''第1部で登場する面々は主人公除いて何一つペアエンドが無い(友情エンドすら無い)。''あからさまなフラグも立っていたのに。 --従来シリーズでも組み合わせ一つあたり2~300文字程度のテキストで表現されており、本作でキャラ数が大幅に増えた事を差し引いても十分な数を作成できた筈である。 ***ゲームバランス ゲーム終盤を中心に、ゲームバランスが破綻している。 -過剰な救済措置。 --今作はFE最高のマップ数(紋章は一部と二部が分離しているので別)なので詰まないようになっている、その対策として主に次々と強力なキャラが加入。 --第1部では、この時点では場違いな性能のキャラが合計4人も入る。そのうちの一人は真エンディング(後述)の為に出撃させる必要があり、''それを見たい人にとっては実質強制出撃となっている。'' ---これらも暁の団の面々をはじめとした成長機会の減少につながっている。 //場違いキャラを使っても取得経験値が減って後々苦労するだけ。終章で真エンディングのためにしっこくを出すにしても、一切戦闘をさせなかったり壁役として使ったりすることもできる。 //しっこくに貴重な出撃枠を1人分奪われるのが問題なんじゃないか?書き加えておいた。 --第2部は程々に抑えられておりバランスが取れているのだが、第3部からは後述の通り強いキャラが加入する。特にアイク、シノン、ガトリー、ハールの4人は初期値や成長率が高かったり今作で強化されたクラスだったりするため、彼らだけで殆どの状況を切り抜けられるほど強い。 --第4部に入ると全ての味方ユニットを「ミカヤ隊」「アイク隊」「ティバーン隊」の3つに分けてそれぞれ2章ずつ攻略していくことになるが、リーダーである王族のティバーンは単騎特攻でも余裕で生還できてしまう程強い。 //アイクは魔法で割と簡単に死ぬ。 しかし、ミカヤ隊はリーダーのミカヤのクラスチェンジは終章までお預け、そしてマップそのものの難易度が高めであることから''4部で難関とされるマップは全てミカヤ隊''というなんともいえないことになっている。 ---それに加え、前述したラグズ王族が4人加入する事になっており、ミカヤ隊にも一応王族のネサラが加入するものの、他の隊にいる王族より火力・耐久が低いのでティバーンのような単騎特攻はできない。 -ボーナスEXに関する問題 --前作で闘技場に代わって下級レベルユニットの育成用に導入されたボーナスEXは無限育成によるパワープレイが容易に出来なくなったなど一定の評価はされたものの、セーブとリセットにより多人数のパラメータの吟味が可能になるなど別の意味でパワープレイが出来るという問題があった。 --今作ではその対策にボーナスEXによるレベルアップではパラメータがちょうど3つだけ上がるようになっている。この「ちょうど」というのが曲者で成長率が高かろうが低かろうが、一部分のパラメータがカンストしてようがしてまいが、一律で3つ上がるように設定されているのである。本作のユニットは平均して、1回のレベルアップで3~5つ分パラメータが上がる位の成長率であるため、ボーナスEXによるレベルアップは基本的に損である。 ---一応、既に殆どのステータスがカンストしてしまったユニットを限界まで育てるのには有用である。 --このため、現時点で弱いユニットを使えるようにするという本来のシステムの趣旨から外れてしまっている。 -新要素の「最上級職」と、その特典である「奥義」スキルのバランスが悪い。 --本作では、ベオクは上級職が更にクラスチェンジした「最上級職」になると強制的に奥義を習得する。ラグズ王族は全員習得しており、それ以外の一般のラグズは一定のレベルに達した状態で「悟りの符号」というアイテムを使用することで習得する。 --奥義の発動率は高い上に、効果の大半は「通常の3~5倍のダメージを与える。そして追加効果を与える」となっているが、要するに''結果的に敵を一撃で撃破する''ものばかりで相手に与える追加効果が余り活かされず、味気ない物になっている。 //回復は役に立つ追加効果の中でも最重要だろう。 ---インフレ要素は多数存在するが、「''奥義の性能を(天空の発動率以外)前作の仕様に戻すだけでも結構マシになる''」と言われる始末。 --後半は敵将も奥義を取得しているため、奥義を含めた相手のスキルを封印するスキル『見切り』『能力勝負』がないと少々きびしい。 --さらに進むと、敵将も『見切り』持ちがほとんどとなり、互いに奥義やスキルは発動不可となる。 -あからさまにプレイヤーに無双を強いるようなマップ構成。 --終盤では恒例と化していた高威力である銀系統の武器や強力な魔法を装備した敵が今作では不自然なほど少ない。しかも従来と比べて敵の数が多い。 ---従来では終盤になると起こるHPや守備力及び杖の回復量のインフレへの対抗策であるが、それ以上に激しいインフレを見せている今作では終盤でも中くらいの性能を持つ鋼武器やエル系魔法程度しか登場せず、こちらのユニットはかすり傷しか食らわない。 ---今作では武装解除+盗むで敵の武器を奪えるのでそれを警戒したのかもしれないが、結果として容易に無双が出来るようになってしまっている。 --こちらも終盤のお約束である遠距離魔法や状態異常杖も登場回数が異常に少なく、従来作と比べてマップが平凡かつ単調になりがち。せっかく通常のより強力な状態異常を与える「エルスリープ」や「エルサイレス」のようなファンにとってみれば魅力的な杖が初登場しているのに出番が異様に少ない上にこちらが使うことはできない。 --スキル着脱が自由になった事により、お気に入りのキャラに強力なスキルをフル装備させて突撃させて無双させるという戦法も容易にできるようになっている。キャラゲーとしてなら間違った方向性ではないが、今作のバランス取りが悉く不評なため、ただ大味というだけの印象に終始しがち。 -本作で「設定上強いとされているキャラクター」は、ユニットとしての性能も相応に強い。中でも王族ラグズにあたるユニットは強すぎる。 --過去のFEでは、主にゲームバランスを取る目的で適度に弱めのパラメータが設定されていた。 --一応そのような設定にしたことによる数少ない良点はある(後述)。 -従来は2種だった傷薬系の種類が今作では4種に増加したが、回復量と回数と種類が多い。 --今作は全体的に敵も味方もHPが低め(上級で40くらい)なのだが、最も一般的な傷薬ですら20回復で8回使用可能と、''被ダメージ自体は前作からそれほど変わっていないのに回復量だけ明らかに多すぎる。'' --ただし、回数に関しては「これくらいないとマニアックで第1部と第3部のミカヤ隊ステージが鬼畜化する」との声もある。マニアックでは武器の三竦みが消滅(能力面での不利を覆す要素が減る)し、ダメージが多くなる為である。どちらかと言うと難易度の調整不足の問題かもしれない。 --杖に関しても、需要の代わりに装備しているだけで体力・状態異常回復などの特殊効果が追加されたので、使いやすさは上昇している。 -兵種や武器のバランスにも問題がある。 --短所が埋められて死角がなくなり、単純に強力になった兵種がある。 ---射程1~2である弩(価格は少し高いが)の登場により近接攻撃不可という最大の弱点を克服した弓兵(スナイパー)や、従来の弱点であった速さ・魔防の成長率が大幅に補強された重歩兵(アーマー)、弓による特効がなくなった竜騎士(ドラゴンナイト)などがあげられる。 --その煽りを受け、長所が長所でなくなった兵種がある。 ---魔導士系は「魔法による直接・間接両方の攻撃を行える代わりに守備面に不安がある」というユニットだった。従来作ではその利便性ゆえに最強レベルのクラスとして君臨しており、その結果前作の蒼炎で大幅な調整を施される事となっている(詳しくは蒼炎の記事を参照)。その調整自体は正しい方向性であるとして高く評価されていた。しかし… ---今作ではその調整が改悪されてしまい、「敵の魔法防御を蒼炎よりも更に全体的に底上げ」「物理攻撃系統の兵種の直間両用武器を数・質ともにかなり補強」「魔法に弱い敵があまり登場しない」「遠距離魔法の弱体化」などの理由により、従来作より長所を活かし辛くなった。 --兵種間格差の問題は従来シリーズにも存在したが、以上のような理由から今作でも根強く健在。単に力関係が入れ替わっただけである。 -『トラキア776』以来久しぶりに復活した「指揮システム」であったが、「第1部が異様に難しい」「第3部からのバランスが崩壊している」などと言われる最大の要因とされているほど、バランスがきびしい。 --今作の仕様は、指揮官ユニットの指揮レベルの星の数(最大数5)だけ味方全員の命中回避が+5%されるというもの。指揮官ユニットはシナリオ展開に合わせてマップごとに固定であり、指揮官でないキャラの星の数は意味が無い(製作期間の問題で削除していないと思われる)。 --難易度が高いマップほど味方の指揮官の指揮レベルは低く、逆に敵の指揮レベルは高いという傾向がある。バランスの調整としては機能せず、むしろバランス崩壊を助長している。 ---ただし、ストーリーにおける「敵側の指揮系統の実状」と敵側の指揮レベルの設定値はほぼ一致しており、演出としては良くできている。悪く言うと、演出だけが先走っている。 --四部終章のみ、ある程度進めると敵将の指揮レベルが大幅に高くなり、最終局面らしい歯応えのある難易度となる。 ---前述の見切りスキルもそうだが、余計なインフレが相殺されるシチュエーションの戦闘ほどユーザー側の評価が高い傾向にある。''結局いつものFEが良かった''ということか。 ***初回プレイヤー無視要素 -周回プレイを推奨(というか要求)する謎仕様。 --上記の仕様も含めこれだけ周回プレイをする気力を失わせておきながら、最低でも二周目以降のプレイ中にある条件を満たさなければ真エンドにたどり着けないという面倒なシステム。 ---更に2周目ではとある選択肢と新キャラが追加される。魅力的ではあるがなぜ最初から選ばせてくれなかったのかという意見も強い。 --『烈火の剣』や『聖魔の光石』でも周回プレイ推奨の仕様だったが、1周目とは異なる主人公・ストーリー・マップ構成でプレイ出来たため十分楽しむ事ができた。 ***その他 他に欠点として、以下のものがある。 -個性の無いユニット。 --最近の作品では好きなユニットを使うことに重点を置いているのか、極端に成長率が低いユニットがあまりいなくなった(一極化しているなどバランスの悪いユニットもいるが)。更に今作は最上級職が追加されレベルUP・クラスチェンジボーナスの機会が増え、必ず3つのパラメータが上昇する拠点育成もあってほぼ全てのユニットが全パラメータMAXに出来るようになったため、さらに個性が薄まっている。 --この仕様により第一部のユニットが更に冷遇されてしまうことに(高成長率が意味の薄いものに)。 -第3部以降、中立軍と友軍のフェイズがやたら長い場面が多く、プレイヤーフェイズが周って来るまで時間がかかる。 --第3部3章の馬は数が多い上、柵の中にいても動き回りカメラも動かすためにプレイしていて酔いやすいと邪魔なキャラ。 --さらに他の章ではPCとなるキャラが章の設定上友軍となる場合があるが、その際は''以前に所持させていた貴重な武器を勝手に使用してしまう。'' -ムービーにおける声優陣の演技力の低さ(棒読みではない)。声の演じ分けがナレーターと一部のキャラを除いて不完全で、誰が誰だか分からなくなることがある。 --第四部における重要キャラ達の回想シーンは最たる例。この場面では顔グラなどの人物を確認する要素が殆んど無いため本当にわからなくなる。 --一番頑張った声優で真っ先に候補にあがるのがナレーター役というのは正直どうなのだろうか。 ---ちなみにその御方は長嶝高士氏。前作でもアイクの父グレイル役兼ナレーターであった。 --声の演じ分けという点を除けば演技自体は好評を得ている。 --ムービーの存在自体は長すぎず、ロードの快適さ(後述)もあって高い評価を得ている。もちろんスキップも可能。 -初期verによるフリーズ。 --徹底防御育成で戦闘アニメーションオン状態のまま遊んだ後、敵に攻撃すると戦闘アニメーションがオンなのにオフ状態に変わる。既にカンストしたパラメータが上がるなどの細かいバグがある。特にフリーズは中断機能がリセットでパーになる今作では回避不可能。 --前作でもフリーズはあったのだが、こちらは回避が非常に容易であるため問題は特に無い。 --バグは初期verだけなので後から出荷されたものはフリーズだけ修正がかかっている。 ---しかし、前作でジルが寝返ったデータを引き継ごうとするとフリーズするバグだけは治っていない。 ---- ***海外版の追加要素 北米版には様々な要素が追加されている。しかしその追加された要素が単なる海外版向けの追加要素で終わらせ難いものばかりであったため、熱心なファンの神経を逆撫でさせた。~ 以下その要素の一部(Wikiから抜粋、ネタばれ要素は改変)。目に見えるだけでもこれだけの要素が追加・改善されている。 #region(海外版における変更点) ''特に非難されている追加要素'' -第3部と第4部で会話が追加。特に''ミカヤとセネリオ台詞やアイクの性格、日本版で批判が大きかった血の誓約関連が大幅に変更'' --すこぶる評判の悪い本作のシナリオにおいて、殊更に批判されていた部分の変更とあっては、''日本での反応を見てから修正した''とみられても仕方がない話である。 --アイクについては、特別イベントに修正が加えられている。 -前作『蒼炎の軌跡』でも実装されていたソフトリセット --全コントローラー対応。Wiiリモコンではホームボタンを押すとできる。 -ギャラリーモード --これも前作にはあったもので、日本版『暁の女神』には無く、海外版に追加。 --''味方全員と一部の脇役や敵対キャラクターのイラストが見れ''、イラスト数が''85枚''なので流石にキャラクターファンからの非難度が最も大きかった。(そのイラストは[[こちら>http://serenesforest.net/gallery/fe10j.html]]) --2010年に相次いで『ファイアーエムブレム アートワーク・セレクション』と『20th Anniversary ファイアーエムブレム大全』が出版されたが、『暁の女神』については既出のイラストやCGイラストの使用が目立つ。未だに公開されないイラストが多いことに日本ユーザーは不満を募らせている。 -日本版では最上級職へのクラスチェンジにはアイテムが必須であったが、海外版ではレベルアップのみでクラスチェンジできる仕様になった。 --アイテム不要のイベントクラスチェンジや、アイテムが自分専用でそれに準ずる待遇のミストを除いても、アイテムを必要とするキャラは35人。 --日本版でのマスタークラウンはノーヒントだと7個、全部見つけたとしても13個しか手に入らず、''22~28人が後半戦で使い物にならない''。 -それ以外の追加要素は[[こちら>http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%82%A8%E3%83%A0%E3%83%96%E3%83%AC%E3%83%A0_%E6%9A%81%E3%81%AE%E5%A5%B3%E7%A5%9E#.E6.97.A5.E6.9C.AC.E5.9B.BD.E5.A4.96.E7.89.88.E3.81.AE.E9.81.95.E3.81.84]]。 ''その他の劣化点'' -台詞と口パクが目立つくらいずれている。 #region(ネタバレ追加要素動画、忙しい人のためギャラリー以外総まとめ) &nicovideo2(http://www.nicovideo.jp/watch/sm11208454) #endregion #endregion 改良したものを海外で売るというのは実際海外展開を視野に入れたゲームではどこにでもある商法である。だが追加要素や救済措置だけではなく''物語の核心・キャラクター・ゲームの仕様''といった極めて大きな部分に変更が加わっているため、日本版を買ったプレイヤーが怒るのは当然だろう。~ ''過去にGBA作品でもこのやり方で売っていて批判されていたのにまた同じような事をした''こともあって、「ユーザーはテストプレイヤーとして見られている」との批判も後を絶たない。~ なお、海外版仕様の国内完全版を求めるユーザーもいるが、その販売は任天堂の方針上絶望視されており、日本版ユーザーへの救済はないと思われる。 ---- **評価点 -前作より大幅にクオリティの向上した音楽。GBA時代を髣髴とさせる印象深い旋律を奏でる楽曲が中心となった。 --戦争の壮大なスケールを感じさせる曲が多く、どれもが非常に高い完成度を誇っている。演出面でもトップクラス。 --特に人気の高い「絆永久に」は『[[大乱闘スマッシュブラザーズX>http://www26.atwiki.jp/gcmatome/pages/382.html]]』に「アイクのテーマ」という曲名で採用された。 -シリーズでも随一のボリューム。 -前作で未回収だった伏線はほぼ全部回収している。 -前作より格段とクオリティの向上したグラフィック。戦闘シーンのアニメパターンが多彩になり、躍動感溢れるアクションを見せてくれる。また、キャラの固有グラフィックが非常に多くなった。 --画面が切り替わるリアルの戦闘シーンもさることながら、マップ戦闘のアニメパターンも非常に良く作りこまれている。マップ戦闘に関しては他のFEシリーズをはるかに上回る。 --ロンチタイトルでありながらいまだにWiiトップレベルのグラフィックと音楽は非常に高い評価を得ている。 --ただし、奥義ヒット時のエフェクトと効果音が前作と比べて地味になったために躍動感が失われており、そこは惜しかった点として指摘されている(一応、前作の甲高い音が不評だったかららしいが…)。 -前作と同じ、デジタルフロンティア制作によるアニメーションムービーも更にクオリティが高くなっている。 --なんとムービーの量は''蒼炎の軌跡のおよそ倍。''しかもそのどれもどれもが非常に高い完成度。 --特に2部終章のムービーは多くの前作ファンを感激させたことでも有名。 --今作は''美術スタッフが全スタッフの半分を占めている''ことやロンチタイトルということでWiiの性能を見せるということもあり、グラフィックに重点を置いた作りになっている。&br() #region(←その製作スタッフ達のこだわり具合。一見の価値大いにあり。) &youtube(http://www.youtube.com/watch?v=JmiXso8qtCI) #endregion -破綻しきっているゲームバランスではあるものの、なぜか第2部だけはやたらとバランスがいい。それどころか全体的にやり応えもずば抜けている。 --特に作中一の完成度を誇る第2部終章のMAPはシチュエーションやBGM、難易度や戦略の幅の広さもあって他のMAPと比べ評価は高くここだけが浮いているほどの出来。 ---新要素である高低差も上手く活用しており、FEの新たな可能性を感じるマップである。 --また同じく第4部終章area3。ボスを設定どおりの強さにしていることによる数少ない良点であり、その非常に高いステータスから威厳を出すことに成功している。 ---周りの雑魚敵も大陸最強種族の設定どおり強い敵ばかりで歯ごたえがあるためなかなか好評。 --バランスブレイカーをまだ得ていない第1部や第3部の前半も、従来の作品と同様に楽しめる。 --武器の三すくみはバランスが取れている。前作では槍を持った騎兵や重装歩兵が非常に多く「斧優遇剣不遇」だったが、今作では剣の威力を高く是正され、剣騎兵や斧重装歩兵などが豊富に登場するのでバランスがよくなった。 -MAPクリア条件がバラエティ豊かになった。従来作では「制圧」「敵将撃破」がほとんどだったが、今作では「2人を指定位置に進軍させる」「所定人数の撃破」など新しいものが多い。 -ディスクメディアだと感じさせない、快適なゲームテンポ。 --ロード時間はほとんど無く、レベルアップ時のステータスアップ、経験値取得と言ったシーンまでボタンでスキップ可能となり、個々の展開がよりスピーディに。 --全40章強の大ボリュームを思わせない、テンポの良いストーリー展開も評価に値する部分である。 --更に2周目以降になると戦闘アニメ完全オフ(マップでの動きすらない)などが追加され更にテンポが良くなる。 -Wiiらしさを撤廃した、ゲーム性重視の操作性 --リモコンを振るなどWii独特の操作を必要とされることもなく、旧シリーズと同じ感覚でゲームを楽しむことができる。 --蒼炎の軌跡で手に馴染んだGCコンが引き続き使えるほか、リモコンなど多くの操作法に対応しており大変良心的である。 --クラシックコントーラを用いる場合、VCのFEと殆ど同じボタン配置でプレイできる。 --ちなみにHORIのデジタルコントローラにも対応している。 -ムービーでの声優の演技力の低さが嘆かれる一方で、主人公の一人であるアイクを担当する声優の演技は前作と違いキャラクターにあった渋めのもの(前作の三年後というのもあるが)となっており好評だった。後に『大乱闘スマッシュブラザーズX』で前作の姿で登場したアイクを担当した際も今作寄りの声質を用いている。 -前作で死んだはずなのに何故か続投のオリヴァー。 --これに対しては専用戦闘BGMや戦闘会話などでかなり優遇されているが、今回は本筋に一切かかわらないキャラである上、加入が最終盤だということもあるのか、「綺麗な贔屓」と言われるなどファンからは喜んで受け入れられた。 --ちなみに、前作のトライアルマップでは条件を満たせば使用可能になるユニットだった。 -毀誉褒貶著しいシナリオではあるが、見せ場自体は過去作に劣らない。 --第1部では、FEの王道とも言える国家再興が描かれる。義賊に過ぎない主人公たちが、旧臣たちとの出会いなどを経て徐々に勢力を拡大していく様子が、収容所襲撃・ミカヤ奇襲などの劇的な場面を交えて表現されている。また、敵大将は民を虐げてきた卑劣漢だが、一方で部下から絶大な信頼を寄せられる程軍人としての優れた気概を持っており、なかなか憎めない相手となっている。 --第2部では、前作を単純な大団円では済まさない、クリミア王国の内紛が描かれる。少ない話数ながら、前作では陰に隠れがちだったエリンシア女王の芯の強さや、身を持って彼女を支える臣下の忠義をはっきりと感じられる。また、敵大将は野心こそ秘めているが、単なる奸臣ではなく国を思っている面もある。そして従来は保護の対象であることが多かった自国民に刃を向けられることもあるなど、敵の描写も単純ではない。 --第3部前半では、前作からの重要なテーマであるベオクとラグズの対立が国家間戦争という規模で描かれており、その中で章ごとにプレイヤーの視点が変わるという群像劇のような演出を採用している。 //従来は一方の視点が重視されることがほとんどだったFEに、正義VS正義という新しい構図が持ち込まれた。 //↑その直接の原因が血の契約である以上、評価はできない。その上、正義VS正義の構図はカミュやトラバント、シハラムのように以前からある。 --第3部後半からは、前述の血の契約や裁きによってストーリーが破綻してしまっているものの、隠されたテリウス大陸史が明かされていくなど、見所もある。 --シナリオは賛否両論を巻き起こしており、全く評価できない、二部まではよかった、最後まで楽しめたなど人によって評価は様々。 ---- **総評 シリーズでは初めて、ハードの発売から間もなくリリースされたFEで、プロモーションも多数のCMを用意するなど、新規ユーザー獲得の為の試みが成されていた。~ しかし、実際は新規ユーザーを置いてきぼりにするどころか、FC~SFC時代、GBA時代のファン双方にすら、主にゲームシステムを含めて違和感を与える内容で、賛否両論を巻き起こす結果になった。~ 評価されているファクターのほとんどが、ゲームシステム以外、しかもゲーム性とほとんど関連しない部分に集中していることから、今作のゲームとしての作りの甘さ、底の浅さが伺える。~ 前作蒼炎のファンディスクとしても、シナリオの出来からして微妙どころかむしろファンの神経を逆なでするような代物であり、結局、誰に対して売るのか、そして誰が得するのかすら分からぬ作品と言える。~ だが操作性、テンポ、やり込み要素、キャラの多さも含め、十分に遊べる出来で、''決してクソゲーではない''。~ 実際ストーリーの不評をカバーしきっている素晴らしい演出や美麗なグラフィックに惹かれた新規ユーザーやファンが多くいることは紛れも無い事実である。~ 総括すると、「''SRPGのゲーム性を求めるユーザーには不向き。グラフィックで勝負''」という類を見ないゲームとなった。~ なお、このゲームの登場で、マイナーだった前作『蒼炎の軌跡』にスポットライトが当たることとなった。~ これは、隠れた名作と言える前作を再評価するきっかけを作ると同時に、それが比較対象となった事で以降の作品の評価を不必要なまでに厳しくしてしまったと言う、この作品の隠れた功罪である。
*ファイアーエムブレム 暁の女神 【ふぁいあーえむぶれむ あかつきのめがみ】 |ジャンル|ロールプレイングシミュレーション|CENTER:&amazon(B000IUCWAS)[[高解像度で見る>https://img.atwikiimg.com/www26.atwiki.jp/gcmatome/attach/2501/2735/Akatsuki01.jpg]] [[裏を見る>https://img.atwikiimg.com/www26.atwiki.jp/gcmatome/attach/2501/2736/Akatsuki02.jpg]]| |対応機種|Wii|~| |発売元|任天堂|~| |開発元|インテリジェントシステムズ|~| |発売日|2007年2月22日|~| |定価|6,800円(税5%込)|~| |判定|なし|~| |ポイント|『蒼炎の軌跡』の完結編&br;シナリオ重視の結果、育成や編成の自由度が低め&br;序盤、終盤は高評価ながら、中盤のシナリオは強引・ご都合主義的|~| |>|>|CENTER:''[[ファイアーエムブレムシリーズ]]''| ---- #contents() ---- **概要 ファイアーエムブレムシリーズの第10作目で、2005年4月20日、GC専用ソフトとして発売された『[[ファイアーエムブレム 蒼炎の軌跡]]』(以下前作)の続編。~ 前作の3年後の世界を舞台としており、前作の主要な登場キャラはほぼ全員引き続き再登場する。~ 全四部構成の壮大なボリュームを誇り、部・章ごとに主人公や視点人物が頻繁に変わり、群像劇的に物語が描かれる点が特徴である。 ---- **新要素・変更点 -高低差 --他のSRPGでは用いられていることが多い定番の要素だが、FEシリーズでは初導入。高い位置と低い位置のユニットが戦闘する際、攻撃力や命中率に高い位置のユニットが有利な補正がかかる。 ---高低差の補正は、基本的に「段差」という進入可能だが待機は不可能な地形1マスを挟んだ場所で発生する。また騎馬ユニットは段差を登り降りすることができない。 -最上級職 --従来の下級職→上級職の流れに加えて、上級職ユニットが「マスタークラウン」というアイテムを使用することにより、さらに「最上級職」にクラスチェンジできるようになった。また一部のユニットはイベントで最上級職になる。 --マスタークラウンは非売品で入手できる個数は限られている((ノーヒントだと7個、全部見つけた場合は13個。))。 --もっとも2部以降に登場するユニットは基本的に初期状態で上級職なので、「最上級職が追加された」というよりは、「1部のユニット用に下級職が用意された」という方が実情に近い。 --ちなみに本作のクラス名は「剣士(ブレイド)」「槍騎将(グローリーナイト)」など、いずれも日本語にカタカナの読み仮名が振られた形式に統一されている。 -魔法の3すくみ --炎・風・雷をまとめて理魔法とし、「理→光→闇→理」GBA版と同じ3すくみが復活。前作の「炎→風→雷→炎」と合わせて2種類の魔法3すくみが共存する仕様となった。 -新武器「弩」 --新たな武器として「弩(ボウガン)」が登場。弓と同じく飛行特効を持ち、狙撃手・勇士系統のクラスが裝備できる。いずれも1-2射程で武器威力がそのまま攻撃力になる(力が影響しない)という特徴を持つ。 -ラグズの仕様 --前作ではラグズは化身ゲージが満タンになると自動で化身していたが、本作では化身ゲージが満タン時にコマンドで「化身」を選ぶことで好きなタイミングで化身することが出来るようになった。 --また化身時にコマンドで能動的に化身を解除することも可能になった。ただしこの場合、化身ゲージは0に戻ってしまう。 -スキル --前作ではユニットのスキルキャパシティに空きを作りたい場合は習得しているスキルを忘れる(削除する)必要があったが、本作ではスキルを忘れると「~の書」というアイテムに変換され、再び書を使うことで再習得できるようになった。 --これによりマップによってスキル構成を変えたり、他のユニットの初期スキルを自由に付け替えることが可能になった。 --またユニットが初期状態で所持しているスキル(体当たりなどの汎用スキルを除く)はキャパシティが消費されないようになった。ただし一度書に戻して再習得するとキャパシティが消費されるようになる。 -支援 --今作ではすべてのユニット同士の組み合わせで支援を組むことが可能になった。 ---GBA~前作と異なり、支援を組めるのは1ユニットにつき1人相手のみ。また支援はいつでも解消して組み直せる。 --また自由に付けられる支援とは別に「絆支援」として、肉親や関係が深いユニット同士に最初から付いている固有の支援も存在する。こちらは『トラキア』以前の支援システムに近い形である。 -錬成 --武器の錬成には「ポイント」が必要になった。ポイントを溜めるには該当の武器種を売り買いする必要がある。 -前作との連動 --前作『蒼炎の軌跡』のクリアデータがあるGCのメモリーカードをWiiに挿すことで連動が可能。『蒼炎』でユニットが育っている場合、そのユニットが『暁』で登場する際に初期ステータスが強化されるなどの特典がある。 -その他 --特効の倍率が前作の2倍から従来の3倍に戻った。 --兵種ごとの必殺補正が復活した。クラスチェンジすると「必殺+○○」というスキルを習得する形。 --鳥翼族のラグズは再移動が可能になった。 --マップ上でユニットのHPゲージを表示できるようになった。 --杖を武器扱いで裝備できるようになった。ただし威力は一律ゼロ。 ---- **評価点 ***ゲーム性 -序盤~中盤は比較的整ったバランスになっている。 --特に第2部はいずれも出撃ユニットが固定されており、バランスブレイカーと言えるほど強力なユニットもいないため、どの章も力押しではなく戦術性が試される構成になっている。 ---中でも防衛マップである第2部終章は新要素である高低差も利用した戦略性の高さが評価されており、シチュエーションやBGMも相まって本作屈指の人気を誇っている((後の続編『if』ではDLCとしてこのマップがリメイクされた面が配信された。))。 --他には第4部終章Area3は、ボスもザコ敵もシナリオ上の設定通りの強さであり、その非常に高いステータスから威厳と緊張感を演出することに成功している。 -武器の3すくみはバランスが取れている。 --前作では槍を持った騎兵や重装歩兵が非常に多く「斧優遇剣不遇」だったが、今作では剣の威力を高く是正され、剣騎兵や斧重装歩兵などが豊富に登場するのでバランスがよくなった。 -短所が埋められて死角がなくなり、強力になった兵種が存在。 --射程1~2である弩(価格は少し高いが)の登場により近接攻撃不可という最大の弱点を克服した弓兵(スナイパー)や、従来の弱点であった速さ・魔防の成長率が大幅に補強された重歩兵(アーマーナイト)、弓による特効がなくなった竜騎士(ドラゴンナイト)などがあげられる。 -ディスクメディアだと感じさせない、快適なゲームテンポ --ロード時間はほとんど無く、レベルアップ時のステータスアップ、経験値取得と言った細かい部分もボタンでスキップ可能となり、全体的なゲームテンポは前作から向上した。 --また2周目以降は戦闘アニメをオフ(マップ上でのアニメも行わない)に設定できるようになり、戦闘が一瞬で終わるため更にテンポが良くなる。 -従来通り操作性重視のインターフェース --操作はすべて既存のシリーズと同じくボタンで行う。モーションセンサーやポインティングなどWii独特の操作を強いられることは一切無い。 --コントローラーはWiiリモコン横持ちの他、クラシックコントローラーやゲームキューブコントローラにも対応している。 ***ストーリー -前作で未回収だった伏線はほぼすべて回収している。 -毀誉褒貶著しいシナリオではあるが、個別の見せ場自体は決して過去作に劣らない。 --第1部では、FEの王道とも言える国家再興が描かれる。 ---デインの義賊に過ぎなかった主人公たちが、旧臣たちとの出会いなどを経て徐々に勢力を拡大していく様子が、収容所襲撃・ミカヤ奇襲などの劇的な場面を交えて描かれる。 ---一方で、ミカヤ達の参謀でありながら卑劣な手段を使おうとするイズカとの対立など、単純な善悪の関係にとどまらない構造が描かれている。 ---また、敵大将は民を虐げてきた卑劣漢だが、一方で部下から絶大な信頼を寄せられる程軍人としての優れた気概を持っており、なかなか憎めない相手となっている。 --第2部では、前作を単純な大団円では済まさない、クリミア王国の内紛が描かれる。 ---少ない話数ながら、前作では陰に隠れがちだったエリンシア女王の芯の強さや、身をもって彼女を支える臣下の忠義をはっきりと感じられる。 ---また、敵大将は野心こそ秘めているが、単なる奸臣ではなく国を思っている面もある。そして従来は保護の対象であることが多かった自国民に刃を向けられることもあるなど、敵の描写も単純ではない。第1部同様、同じ国家・陣営内での権力争いや反乱がテーマになっていると言える。 --第3部前半では、前作からの重要なテーマであるベオクとラグズの対立が国家間戦争という規模で描かれており、その中で章ごとにプレイヤーの視点が変わるという群像劇のような演出を採用している。 --第3部後半~第4部は、前述の「血の契約」や裁きによってストーリーが大味なものになってしまっているが、終章は隠されたテリウス大陸史が明かされていったり、強力な敵と味方がぶつかり合うなどの見所が存在する。 --これらのことから、第1部、第2部は前作「蒼炎」に匹敵する高評価を得ていると言える。 ***キャラクター -前作で加入したユニットは、一部を除いてほぼ全員が加入。また、前作ではヒロインの一人でありながらNPCだったサナキや、彼女の親衛隊長であるシグルーンも新たに加入するようになったなど、豪華な設計となっている。後述するようにバランスにこそ問題があるものの、カイネギスやティバーン、ネサラ、クルトナーガなど、各国の国王も最終的には味方ユニットとして同行する。すべての国の国主が同時に仲間になるのは、シリーズを通しても本作のみとなっている。 -前作で死んだはずなのに何故か再登場したオリヴァーも再登場。 --もともと脇役なのに専用曲があるなどなぜか優遇されているキャラだが、プレイヤーからもネタキャラとして一定の人気があり、更に条件を満たすと仲間に加入する((ちなみに、前作のトライアルマップでは条件を満たせば使用可能になるユニットだった。))という二重のサプライズで一部のファンを喜ばせた。 ***グラフィック、演出 -グラフィックのクオリティ向上 --特に戦闘シーンのアニメパターンが非常に多彩になり、躍動感溢れるアクションを見せてくれる。キャラの固有グラフィックも大きく増えた。 --今作は''美術スタッフが全スタッフの半分を占めている''ことやWii登場初期の作品ということでWiiの性能を見せるということもあり、グラフィックに重点を置いた作りになっている。 -デジタルフロンティア制作によるアニメーションムービーも更にクオリティが高くなっている。 --ムービーの量は『蒼炎の軌跡』のおよそ倍に増加。特に2部終章のムービーはシチュエーションも相まって評価が高い。 -評価の高い音楽 --前作はBGMの音量が小さいこともあり印象に残りにくかったが、本作は前作のオーケストラ風の曲調を引き継ぎながらGBA時代を髣髴とさせる印象深い旋律を奏でる楽曲が多くなり、全体的に評価が高い。 --特に本作のメインテーマ的な存在であり人気も高い「絆永久に」は『[[大乱闘スマッシュブラザーズX]]』に「アイクのテーマ」という曲名で採用された。 ---- **賛否両論点 -ストーリー・演出重視のゲームデザイン --今作は全4部構成であり、部ごと(場合によっては同じ部の中でも章ごと)に主人公やメインとなる部隊、出撃メンバーが大きく異なる。 ---従来のシリーズでも『[[外伝>ファイアーエムブレム 外伝]]』のように複数の隊を同時進行で操作したり、『[[烈火の剣>ファイアーエムブレム 烈火の剣]]』のように部ごとに主人公が変わるという試みはなされていたが、本作はそれらを混ぜ合わせたような形式になっている。 ---具体的には、第1部はミカヤをリーダーとする「暁の団」の面々を操作する。 ---一方、第2部は全5章のうち一章毎に出撃メンバーが大きく異なり、かつ固定。 ---第3部では前作の主人公であるアイクをリーダーとする「グレイル傭兵団」をメインに進めていくが、章によってはミカヤ隊や他の隊を操作することになる。 ---そして第4部では結集したすべてのユニットを3つの隊に振り分け(一部ユニットは配属が固定)て別々にマップを攻略。その後、再び合流し終章突入メンバーを選ぶというのが大まかな流れ。 --ストーリーの展開によりマップごとに出撃できるユニットが大きく入れ替わり、強制出撃枠や死亡するとゲームオーバーになるユニットの数も多いため、編成や育成の自由度は過去作に比べて低め。 --その他、ストーリー上の展開や演出がそのままマップやユニットの能力に反映されている点が多い。 ---ラグズ王族など「設定上強い」ユニットは実際の能力も高く、軍隊を引き連れて戦うマップではNPCとして同盟軍(黄色ユニット)が大量に登場し、足手まといではなくちゃんと戦力として戦ってくれる等。 ---クリア条件も「2人を指定位置に進軍させる」「所定人数の撃破」など斬新なものが追加されている。 --後述するようにゲームバランスを崩す一因にもなっているが、良くも悪くもこれまでのシリーズにはない新たな表現を試みていると言える。 -支援の仕様変更 --前述の通りすべてのユニットと支援を組めるようになったので戦略上の自由度は広がった。 --だがその代償として、戦場で隣接した際に「会話」コマンドを選ぶことで発生する支援会話の内容が、''会話とすら言えないような簡単なコメント(基本的に相手によらず内容はテンプレート)の応答のみ''に大きく簡略化されてしまった。 --これは支援の組み合わせが膨大になったがゆえの措置だとスタッフも公式サイトのQ&A([[BACKGROUND>https://www.nintendo.co.jp/fe/akatsuki_bk/post/answer03.html]])で弁明している((この反省を生かしてか、後の続編『覚醒』では、(ほぼ)総当りの膨大なパターンの支援会話が網羅されている。))。 -拠点成長の仕様変更 --前作同様、マップをクリアすると得られるボーナスEXPを拠点でユニットに与えて育成できるが、本作ではボーナスEXPでレベルを上げると''必ずパラメーターが3つだけ上がる''という仕様になった。成長率が高かろうが低かろうが、一部分のパラメータがカンストしてようがしてまいが、一律で3つ上がるように設定されている。 --しかし本作のユニットは平均して1回のレベルアップで3~5つ分パラメータが上がる位の成長率であるため、拠点でレベルを上げると普通にマップでレベルを上げるよりも損になりやすい。これにより、拠点で成長吟味するかマップで普通に育てるかという選択肢が生まれた。 --またこの仕様を逆手に取り、既に複数のステータスがカンストしてしまったユニットを拠点成長させればカンストしていないステータスを確実に3つ伸ばせる、という活用法もある。 -指揮システム --『トラキア776』以来久しぶりに復活した「指揮システム」だが、今作の仕様は、指揮官ユニットの指揮レベルの星の数(最大数5)だけ味方全員の命中回避が+5%されるというもの。指揮官ユニットはシナリオ展開に合わせてマップごとに固定であり、『トラキア』とは異なり指揮官でないキャラの星の数には意味が無い。 --基本的にマップ自体の難易度が高い面ほど味方の指揮官の指揮レベルは低く、逆に敵の指揮レベルは高いという傾向がある。つまり、面の難易度をマイルドに調整するのではなく、むしろ極端にする役割を果たしている。 --特に1部のリーダーであるミカヤは指揮レベルが0のため、ゲームに不慣れな序盤から全体的に不利な戦いを強いられることになる。 -隠しアイテム --これまでのシリーズでは基本的に砂漠だけだった「特定の場所で待機するとアイテムが手に入る」発掘要素だが、本作ではほとんどのマップで存在する。 --どこにアイテムが埋まっているかは基本的にノーヒント((一部マップ上に目印がある物も存在する。))であり、該当するマスに待機しても入手できるかは運次第であるため、虱潰しに調べようとすると多大な手間がかかる。 ---- **問題点 ***シナリオ・キャラクター ''強引な中盤のストーリー'' -上記のように今作はストーリーに重点を置いており、1部~2部は評価が高いのだが、逆に3部から4部にかけての展開の強引さは批判されることが多い。 --特にやり玉に上がるのが、第3部後半で登場する''サインしただけで国民の命を根こそぎ奪う事すら可能な呪いをかける「血の誓約」''や、第4部で''文字通りの「神」が降臨し、それまでの流れをリセットする「裁き」を行う''といったご都合主義的展開((ただし、いずれも前作からある程度の設定や伏線は存在していた。))。 --特に「血の誓約」は散々第3部で登場人物を苦しめたにもかかわらず、上記の裁きが起きた後の第4部ではまるで思い出したかのように軽く触れられるだけ。 ---第4部は世界が特殊な状態になっているものの誓約の効力自体は残っており、誓約を結ばせた人物も敵側について生き残っているため、言うまでも無くすぐにでも発動されておかしくない状態である。しかし作中ではそのあたりが完全にスルー((後に発動できる状態ではなかったことが説明されるが、終章の、しかも特定のキャラの戦闘前会話のため気づかないことがほとんど。一応そのキャラは第3部で苦しんだデイン側に同行している))。 -ただし終章になると、前作からの伏線の回収に終始されており、盛り上がりにも長ける。こちらは1~2部ほどではないが、一定の評価を得ている。 ''不遇気味な新キャラクター'' -主人公であるミカヤは、第1部では主人公らしく存在感を発揮しているが、第3部では王に命じられるまま望まない戦いを指揮する受け身な態度になってしまう。さらに第4部では、イベント中は殆どの間別のキャラに憑依された状態となり、ミカヤ自身の出番は相槌を打つ程度しかなくなってしまうため見せ場に乏しい。 --単に不遇というだけでなく、行動自体にもややおかし面が目立つ。3部終盤でミカヤは前述の血の誓約の事を知り、デインのために戦う覚悟をはっきりと定める。しかし直後のマップクリア後、サザが相手に人質に取られるとあっさり攻撃をやめるように指示してしまう。そこで敵将が現れて会話が始まるのだが、降伏を命じられるときっぱりと断り、話し合いを求められても無言で返し、戦から手を引けば見逃すという提案にも「どんなことがあろうと立ちふさがり続ける」と返すなど、''サザがまだ人質に取られている状況''とは思えないやり取りを行う。 ---言動が一貫していないように見えるが、サザを助けるためにその場は咄嗟に攻撃をやめさせたものの、戦いをやめてしまえばデインの人々が犠牲になってしまうため、どちらも助けたいミカヤとしては他に対応の仕方がなかったとも言える((一国の軍を指揮する立場としてはお粗末な対応と断じられても仕方がないが、ミカヤは生粋の軍人ではなく、一方を助けるためにもう一方を見捨てる判断ができる性格でもない))。 //--キャラ性能もやや癖があり、同じ主人公であるエリンシアやアイクと比べると若干使いづらい。最上級職へのクラスチェンジが遅い、専用武器が無限に使用できないなどの点も向かい風となっている。 //シナリオ・キャラクターであるうえ、アイクやエリンシアよりは弱いが全体的には強い方なのでとりあえずCO。 //''サザ'' //-前作には端役の味方ユニットとして登場。本作ではパッケージにもミカヤと共に描かれている主要人物の筈なのだが、ゲームの能力的には妙に冷遇されている。 //-第1部では序盤に上級職で登場。他のキャラより一回り高いステータスを誇る序盤お助けユニットとして順当な活躍を見せてくれる。成長率も悪くない。 //--しかし第1部後半からは、ニケや漆黒の騎士と言った桁外れの能力を誇るユニットが登場するため、お助けユニットとしての影は薄くなっていく。また再登場する第3部の中盤からは敵が強くなることもあり、前線で戦うのは段々と苦しくなってくる。それでもミカヤを操作するマップは自軍の戦力が乏しく、強制出撃なことも含め活躍の機会はある。 //--だが第4部になるとラグズ王族を始めとする超強力ユニットが続々登場、他の隊の主戦力とも合流するため、意図的に育てていないと戦力として使うのは厳しい。 //--そして第4部1章クリア時にはイベントによって強制的に最上級職にクラスチェンジするのだが、そのクラスは''汎用職''の「密偵(エスピオン)」。専用の武器や奥義等も無い。更にもう一人の同クラスのキャラクターの方がスキル的に見ても使い勝手が良い。 //--極めつきに第4部5章で条件を満たすと仲間に加入するフォルカは''専用職の「暗殺者(アサシン)」であり、性能的にもほとんどの面でサザの上位互換''((汎用職の密偵の奥義は「瞬殺」で内容は「相手の体力を必ず1にする」という効果なのだが後一撃で倒せるという場面でも発動してしまうとHPを1だけ残してしまう。逆にフォルカの奥義「滅殺」は発動すれば相手のHPを強制的に0にするという密偵の使いにくさに拍車をかけてしまっている。とはいえ密偵の瞬殺は1だけHPを残すのでその他のメンバーに倒させて経験値を与えると言う使い方もあるので完全上位互換とは言い難い。))というあんまりな仕様。 //-にもかかわらず終章突入メンバーには強制選出となる(ただし実際のマップに出撃させるかどうかは任意)。このせいでお荷物扱いされたり、ストーリー上の立ち位置や言動と実際の能力が釣り合っていないことをネタにされてしまうことが多い。 //--ただしサザはあくまで特別な血筋や飛び抜けた能力を持たない「凡人」というキャラ付け((終章のボスとの戦闘会話でもその旨が言及される。))のため、あえて控えめな性能に止めたと捉えることもできなくはない。 //ほぼ性能面の問題になっているのでCO。また、主役級にもかかわらず弱いユニットはエリウッドなど過去作にもいくつかいるので、問題点とは言えないかと。 -後述のように支援会話システムが実質的に削除されたことや、ストーリー上での出番の少なさも相まって、今作初登場のキャラのバックボーンの描写が薄い。 --暁の団の面々は[[公式ホームページのバックグラウンド>https://www.nintendo.co.jp/fe/akatsuki_bk/]]、その他はファイアーエムブレム大全で語られている。また、後述のように海外版ではフォローがなされている模様。 //-EDには前作に無かった後日談が追加されたが、ペアエンドの数がGBA3作と比べてかなり少なく、アイクを含め存在すらしないキャラが多数。 //少ないか?少なくともロイ周りしかない封印よりは多い。 ***ゲームバランス ''強力すぎる救済ユニットが多い'' -第1部と第4部で加入する救済ユニットの中に、「漆黒の騎士」やラグズ王族など、強力すぎるユニットがいる。 --普通のラグズは、化身ゲージと呼ばれるパラメータを上昇させることで化身状態になり、戦闘が可能になるという特性を持つ。しかし、ラグズ王族は「''王者''」という''常時化身が可能で人状態に戻ることがない''という反則級の固有スキルを所持しているため、通常のラグズと使い勝手が大きく変わってくる。もっともラグズはいずれも間接攻撃ができず、いずれも何らかの被特効を持つなど弱点が皆無というわけではない。 -そのため、これらのユニットが加入する第1部終盤と第4部は、ほかの部分と比べて簡単すぎるという意見が見られた。 //最初から最後まで、とあるが、1部終盤と4部以外はラグズ王族は加入しません。 ''強すぎる最上級職と奥義'' -本作では、ベオクは上級職が更にクラスチェンジした「最上級職」になると強制的に「奥義」を習得する。 --ラグズ王族は全員習得しており、それ以外の一般のラグズは一定のレベルに達した状態で「悟りの符号」というアイテムを使用することで習得する。 --奥義の発動率は全体的に高い上に、効果の大半は「通常の3~5倍のダメージ+追加効果を与える」となっている。しかし大抵は3倍ダメージの時点で敵は倒れてしまうため追加効果の殆どが形骸化してしまっており、要するにどれも「''発動すると相手は死ぬ''」というなんとも大味なバランスになっている。 ---ただしHP回復効果がある「天空」「太陽」「陽光」あたりは数少ない追加効果の恩恵が受けられる性能であるため、奥義の中では一段階高い評価を受けている。 //↑天空と太陽は発動率が技/2なのでそもそも他の奥義より明らかに発動率が低い。天空なんか吸収量からしても事実上太陽の下位互換。陽光は発動率高+間接攻撃でも発動するが威力が物理系程じゃない。 --後半は敵将も奥義を取得しているため、奥義を含めた相手のスキルを封印するスキル『見切り』『能力勝負』がないと少々きびしい。 ''終盤になるにつれて大味になるマップ構成'' -今作では総じて敵の火力が低めで、終盤では恒例と化していた高威力である銀系統の武器や強力な魔法を装備した敵が非常に少ない。一方で敵の数自体は増援を含めてかなり多い。 --さらに、こちらも終盤のお約束である遠距離魔法や状態異常杖を持った敵も少数なため、搦め手による戦術が少なく、特に4部~終章はシンプルな地形に大量の敵が物量で押しつぶしてくるというマップが多い。 -対して自軍は、固いユニットを最上級職まで育てると、雑兵からの攻撃はかすり傷程度しか食らわなくなるまでパラメーターがインフレする。攻撃面も前述の奥義や必殺・スキルによりほぼ1戦闘で敵を倒せるほどまで強くなる。 --以上を考慮すると、終盤になるにつれて細かい戦略性よりも「強いユニットを突っ込ませて敵を殲滅する」のが最も単純でお手軽な攻略法として通用してしまう大味なバランスになってしまっている。 -また今作はHP回復アイテムが豊富で、今作は全体的に敵も味方もHPが低め(上級で40くらい)なのだが、最も低価格な「傷薬」ですら20回復で8回も使用可能と性能が高い。 --ゆえに回復役の杖ユニットを無理に出撃させなくても、敵陣の真っ只中でひたすら薬を使い続けることで回復が間に合ってしまうことも多く、単騎無双の推奨に拍車をかけている。 -またスキルの着脱が自由になったことも、「2軍や1.5軍のユニットからスキルを剥がし、少数の主力を特化して強化」という無双戦術の追い風になっている。 ***その他の問題点 -マニアックモードの雑な調整 --前作のマニアックモードは非常に練り込まれた作りになっていて大好評であったが、今作のマニアックは敵能力値の単純な上昇の他、「マップ属性の廃止」、「3すくみ廃止」、「敵行動範囲表示の廃止」、「取得経験値の減少(ボーナスEXも含む、ボーナスEXの消費量増加)」と、既存のシステムを削除・弱体化させただけに留まっている。 --難易度的にも、一部のマップが非常に難しいものの、全体としては前作のマニアックよりは低い。ただし、難易度の変更ができないトラキア776以外のSFC作品や、聖魔の最高難易度であるハードよりは難しい。 -ノーマルモード時のテキストの簡略化 --難易度ノーマルと、ハード・マニアックでは章間のシナリオのテキストが変化する。大筋の内容は同じだが、ノーマルだと表現が単純化・簡略化されていたり、前作未プレイだと理解し難い話題が省略されていたりする。 --前作未経験のプレイヤーへの配慮と思われるが、表現を簡略化しすぎて味気ない内容になっていたり、情報を省略しすぎてシナリオ間の繋がりがむしろ分かりにくくなっていたりと弊害が大きい。 -初回プレイではすべての要素を解禁できない --クリア済のセーブデータを引き継いだ2周目でないと仲間にできないユニットや、観ることができないイベントが存在する。 --『烈火の剣』や『聖魔の光石』でも周回プレイ推奨の仕様だったが、そちらは1周目とは異なる主人公・ストーリー・マップ構成でプレイ出来た。しかし本作は追加要素以外に異なる点は無い。 -中立軍・友軍フェイズが長い --救済処置としての役割も果たしているのか、味方となるNPCユニットの中立軍・友軍(緑・黄色ユニット)が登場するマップが多く、数も多いため、マップによってはプレイヤーフェイズが回ってくるまでにかなり時間がかかりテンポが悪い。近作と違いフェイズスキップが存在しないため、面倒なことになっている。 --特に第3部3章の友軍である「馬」は数が多い上、柵の中で動き回るためカメラが動いて酔いやすい。 --また自軍ユニットとして使っていたキャラが、他の章で友軍として登場する場合があるが、その際に貴重な武器を持たせていると、勝手に使われて使用回数が減ってしまうという一種の罠がある。 -ムービーにおける声の演じ分けが分かりにくい --第四部における重要キャラ達の回想シーンは最たる例。この場面では顔グラなどの人物を確認する要素が殆んど無いため、誰が喋っているのかわからなくなる可能性が高い((それも含めて演出の内とも言えるが……。))。 ---余談だが、この回想シーンで本作における重要キャラを演じている間島淳司氏は本作では4役掛け持ちである。 -初期Verにおけるフリーズ・バグの存在 --徹底防御育成で戦闘アニメーションオン状態のまま遊んだ後、敵に攻撃すると戦闘アニメーションがオンなのにオフ状態に変わる、既にカンストしたパラメータが上がるなどの細かいバグがある。特にフリーズは中断機能がリセットでパーになる今作では回避不可能。 --バグは初期Verだけなので後から出荷されたものはフリーズだけ修正がかかっている。 ---しかし、前作でジルが寝返ったデータを引き継ごうとするとフリーズするバグだけは治っていない。 ---- **総評 全4部構成というシリーズ最大級のボリュームを誇り、前作『蒼炎の軌跡』から引き継いだ壮大なシナリオを描くために演出面を重視した本作。~ しかしシナリオに縛られる代償としてユニット選出や育成の自由度が下がってしまい、大量に登場するバランスブレイカーなお助けユニットや強力すぎる最上級職・奥義の影響もあり、戦略シミュレーションとしてのゲームバランスは大味な方向に崩れ気味であり、ゲーム性の優れたバランスが評価された前作『蒼炎の軌跡』と比べると、全体的に不安定な面は否めない。~ しかし一方で2部を中心とした一部のマップは評価されており、グラフィックや音楽も進化している。良くも悪くもクセの強い要素をどれほど許容できるかが本作を楽しむ際のポイントになるだろう。 ---- **余談 ***海外版の追加要素 -2007年11月5日に北米版が発売((その後、2008年3月14日に欧州版が発売。))されたが、かなり多くの要素が追加されており、実質的な完全版と言っていいほどの内容になっている。 //あまりに客観性に欠ける表現が多かったので無難なものに編集しました。 #region(海外版における主な変更点) -システム面 --ワイド画面(16:9)に対応。 --『蒼炎の軌跡』にはあったが日本版『暁の女神』には無かったギャラリーモードが追加。 ---味方全員と一部の脇役や敵対キャラクターのイラスト(85枚)が閲覧可能(そのイラストは[[こちら>https://serenesforest.net/gallery/radiant-dawn/]])。 -ストーリー面 --第3部と第4部に会話イベントが追加。特にミカヤとセネリオの台詞やアイクの性格、日本版で批判が大きかった血の誓約関連が大幅に変更されている。アイクのイベントにも修正が加えられている。 --難易度にかかわらず、テキストは日本版のノーマルに相当する簡略化されたものになっている。 -攻略面 --エディとレオナルドの初期レベル・パラメーターが上昇。 --エディ・レオナルド・ノイスにそれぞれ専用武器が追加、第3部で入手できる。 --上級職→最上級職へレベルアップのみでクラスチェンジできるようになった。 --錬成時にポイントが必要なくなった。 --化身をコマンドで解除した際、化身ゲージが0にならずそのままの値で保持されるようになった。 --一部のスキルの発動条件が調整された。 -それ以外の追加要素は[[こちら>https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%82%A8%E3%83%A0%E3%83%96%E3%83%AC%E3%83%A0_%E6%9A%81%E3%81%AE%E5%A5%B3%E7%A5%9E#.E6.97.A5.E6.9C.AC.E5.9B.BD.E5.A4.96.E7.89.88.E3.81.AE.E9.81.95.E3.81.84]]を参照。 #region(追加要素をまとめた動画) &nicovideo2(http://www.nicovideo.jp/watch/sm11208454) #endregion #endregion -ソーシャルゲーム「ファイアーエムブレムヒーローズ」では主人公枠のミカヤとサザに至ってはリリースから一年後に遅れて登場するといった不遇な扱いにされてしまう((当時、本人以外に登場していない作品の主人公もいるが…))。 --しかし現在ではペアと組んだ特別版やサイファで逆輸入された衣装が実装するなど本作より優遇な立ち位置にいる。 //17.08.11 全体的な構成を整理、冗長な表現を再構成、主観的・感情的な表現をニュートラルなものに校正、他全体的に加筆・編集を施しました。

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