モデルは中国清代に実在した中国近代史上最大の英雄である武術家「 黄飛鴻」。
(知らない人も ジャッキー・チェンが主演した 『酔拳』の主人公と言えば分かるだろう)
というか彼をモデルにしたカンフー映画の金字塔『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』シリーズの
主演・李連杰(リー・リンチェイ。ハリウッドでも活躍するアクション俳優ジェット・リーの本名)。
更に正確に言うなら、その第二作であり最高傑作と評される『天地大乱』における李連杰が演じる黄飛鴻がモデルである。
何故かくも細かく説明したかといえば、その再現度の高さ故である。
「月華の剣士」はSNK末期の錯乱により、 他のキャラクターも大概な事で知られるが、 彼は次元が違う。
李烈火は『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ 天地大乱』における李連杰のモーションを、
異常なまでに正確に再現しているのである。
黄飛鴻の代名詞である 『無影脚』の寸分違わぬモーションを筆頭に、基本動作から 必殺技、
ガードモーションから 挑発、勝ちポーズに至るまで、映画の李連杰が行った動作をモデルに構成しており、
ほぼ完璧に黄飛鴻をゲームキャラクターとしているのである。
断言してもいい。このキャラを作った人間は間違いなくワンチャイ好きであると。
キャラが浮かばなかったから適当にパクッてきたという意見は、このキャラには不適当である。
安易なパクリなら小足や技の細かな繋がりまで寸分違わず再現しないだろう。というか、 まず辮髪を再現しない。
そう。かくも恐るべき再現の為に、その広々とした額が眩しい頭髪までも再現してしまったのである。
同社の サムライスピリッツですら「月代を剃ったキャラクターは居ない」と言うのにである。
…え、ポリサム新章にはいた? ん~、聞こえんなぁ~
いくら原作が素晴らしかろうと、師父が格好良かろうと、当時は辮髪にしないと反逆罪で死刑であろうとも、
知らない人にとっては「 ハゲ」以外の何物でもない。
実際、SNKを支えた淑女の皆様方には見向きもされなかった。
他のキャラクターの多くが今風の美形である事から、おそらくスタッフも人気が出よう筈が無い事は百も承知であっただろう。
それでもあえて辮髪を貫き通したスタッフに敬意を表したい。
辮髪でない師父は師父ではない。辮髪だからこそ師父なのだ。
むしろ士道とか言ってる割には髷すら結ってない こいつは士道不覚悟で切腹すべきである。
(なお、武士が月代を剃っているのは当時の兜の構造では頭頂の髪が邪魔だった為(兜をかぶるときは髷を解く)。
平時でも剃っているのは「何時でも 戦場に出る覚悟がある」と言う意味である(それを粋だとして町人がまねたりした)。
逆に時代劇等で浪人が剃っていないのは「仕える主が居ない=戦場に出る機会が無い」と言う意味。
まぁ創作作品じゃ(せっかくの美顔を隠しかねない)兜をかぶっている主人公は少数派だけどね。)
『李烈火』という名の黄飛鴻の再現度は、熱狂的なワンチャイ好きが思わず「師父!」と叫んでしまう程で、
全国のワンチャイファンが感涙にむせび泣いた。ワンチャイをこよなく愛する李使いにとって、
『天地大乱』を見ている最中にコマンドが頭に浮かぶことは珍しい事ではない。
原作ファンからも(というか彼の場合は主に原作ファンから)受け入れられたという点では K9999の先駆けと言える。
その高すぎる再現度は、多分李連杰が本気で訴えたら負けていただろう。
幸い、その当時にはハリウッドスターとして人間凶器リーサルウェポンと戦っていた李連杰が
この作品に気づく事は無く(もしくは眼中に無く)、『二幕』まで堂々と出場している。
ある意味、末期SNKが生んだ奇跡である。
造詣にはそこまで拘っているにも関わらず、残念ながらネーミングは安易なものが多く、
「龍槌旋」「龍翔旋」など何故か 飛天御剣スタイルを習得していたり、
名前の烈火繋がりなのか「火影」「焔群」など漫画『 烈火の炎』のネーミングをそのまま使用。
(年代的には微妙だが、97年末に稼動した月華に対して96年頃には「焔群」が作中で登場している)
乱舞奥義の「天地黎明脚」に至っては映画第一作サブタイトル『天地黎明』まんまである。
ちなみに李烈火の本名は李成龍。李は勿論モデルの李連杰からであり、成龍は先に記したように
黄飛鴻を演じた ジャッキー・チェンの中国名・成龍からである事は疑いようが無い。
少しは捻れ。
|