セントリー


アメリカのマーベルコミック作品群に登場するヒーロー。
アメコミの歴史の第2黄金期「シルバー・エイジ」の時期に活躍していた古参のキャラクター。
『サンダーボルツ*』でMCUにも参戦し、その際の日本語吹替声優は 梶裕貴 氏が務めた。

ハルクとは無二の親友であったり、デビュー間もないスパイダーマンに先輩ヒーローとして指導したりと、
マーベルヒーローのコミュニケーションの中心的人物であったが、宿敵「ヴォイド」と相打ちになる形で連載が終了。
長らくマーベルユニバースの歴史から姿を消していた。

ところが、編集部も読者もセントリーの存在をすっかり忘れていた2000年になっていきなり新シリーズがスタート。
数十年の沈黙を破り、マーベルユニバース最強のヒーローがここに帰ってきたのだ!







セントリーは上記の後付け設定を引っ下げ、数十年の積み重ねを持つマーベルユニバースの歴史に突然割り込んできた新キャラクターである。
初出は2000年の『The Sentry #1』。シルバーエイジに連載を持っていたというのは編集部の建前。
実はこれまでの戦いは全て私が影から操っていたのだと突然現れる新登場の悪役キャラは多かれど、
「実はこれまでヒーロー達と一緒に戦っていたんだ」と突然現れる新登場の味方キャラ
(「皆から見えない場所でこっそり支援していた」という話ではない)というのは前代未聞であろう。
なおマーベルはスパイダーマン関連でまた同じような話をやっている。本当に懲りない連中である

……と、登場当時こそ色々と物議を醸したものの、2000年のデビュー後は登場回数もかなり多く、
ヒーロー達との交友関係も広いという設定を持ってデビューしたため様々な作品のクロスオーバーの橋渡しとして登場している。
地球を追放されたハルクが怒り狂って帰還、地球の全ヒーローを叩きのめした大長編作品『ワールド・ウォー・ハルク』においては、
アイアンマンファンタスティックフォーX-MENも全滅する中、怒れるハルクと互角に渡り合う健闘を見せた。

なお、セントリー(Sentry)とは英語で「番兵・歩哨」というような意味で、センチネルと語源は同じ。
キャプテン・マーベルが戦っていたクリー帝国にも同じ名前の兵器がある。
そちらはデコの格ゲー『アベンジャーズ イン ギャラクティックストーム』でクリー側のサポートキャラクターとして登場していた。
勿論、たまたま名前が被っているだけで両者は全くの無関係である。
DCコミックでも前例あるのにおたくらもかい

本名はロバート・レイノルズで愛称は「ボブ」。身長188cm、体重91kg。
地球在住の中年のオッサンだったボブは、ある日突然自分がヒーロー「セントリー」だった事を思い出す
そして同時に強大な敵・ヴォイドが復活しつつある事を悟り、他のヒーロー達に警告を発する。
だが、かつての戦友達1名を除いて誰も彼の事を覚えていなかった。
しかし彼と対話するうちに、ヒーロー達も彼と過ごした日々を思い出していく。
スパイダーマンはセントリーの写真でピュリッツァー賞を獲った事を思い出し、Mr.ファンタスティックも彼と親友だった事を思い出した。
そして皆が記憶を失った原因を調べた結果、セントリーの中には自身のダークサイド(暗黒面)である「ヴォイド」が存在し、
また、誰もがセントリーの事を忘れない限りヴォイドは消えないため、
セントリーは自分を含めた全人類から自分に関する記憶を消した……という後付け真相が判明した。
なお、「全人類」とはそのまま全人類である。
ヒーローもヴィランも一般人も全部含めて、どんなに強い奴もみんなである。

復活しつつあるヴォイドを再び消すため、Mr.ファンタスティックやDr.ストレンジの協力を得て、彼は再び全人類の記憶を封印した。
これにより、ヴォイドは消滅し、セントリーの名前は再び歴史から消えた……

……はずだったのだが、狂人犯罪者刑務所の大脱走事件を機に、彼は再び表舞台へと帰ってきた。
そしてエマ・フロストらの協力によりヴォイドを精神の奥底へ封印する事に成功、ニューアベンジャーズの一員として歩み始める。

私生活では愛妻・リンディがおり、ほぼ順風満帆で充実していたと言える。
だが、自身の強大な力や自身の中のヴォイドについては強い怖れを持っており、そこを衝かれて戦えなくなってしまう事もあるなど、
メンタルの弱い面も強調されていく。

+ セントリーの真実
ヴォイドがセントリーの暗黒面であるというのは厳密には誤りであり、
実はセントリーこそがヴォイドの中のわずかな良心と罪悪感から生まれた存在だった

そもそもボブは元々ただの薬物中毒者であり、学生時代に麻薬を求めてとある研究所へ侵入した際、
そこで発見した特殊な血清「ゴールデン・セントリー血清」を好奇心から飲んだ事がパワーを得たきっかけだったのである
(なお、この血清は何故かボブにのみ作用しており、他者が飲んでもパワーを得られるわけではない)。

後にヴォイドの一部がエマ・フロストの精神を経由してサイクロップスの中に入り込み、彼を支配しようとしたが、
逆にサイクとの精神戦に負け、現在は彼の精神内に完全に封印されてしまっている。
絶対その内何か起こす気だろ…いや、ひょっとしてもう起きているのか?

+ 「心の強さを持たないスーパーマン」の末路
そして、ノーマン・オズボーンがヒーロー社会の実権を握った『ダーク・レイン』において、
オズボーンに件の血清を供給される事によりヴォイドが密かに目覚めてしまい、オズボーンに従うようになった。
そして自身の本質であるヴォイドに引きずられるようにセントリーとしての彼もオズボーン側に付き、
新たに結成されたダーク・アベンジャーズに加わるのだった。
普段はセントリーとして一応ヒーロー活動をしつつも、裏では自身でも気付かない内にヴォイドと化し、
オズボーンの秘密兵器として、そのパワーで他者を従わせるために良いように使われていたのである。

オズボーンはセントリーを手懐けるために麻薬を利用し、セントリーは麻薬欲しさにオズボーンの飼い犬と化していた。
いくら強大なチートパワーを持っていても、心が弱ければいとも容易く悪党の手の内に落ちるという警句と言えよう。
だが、そのような生活は次第にセントリーの精神を蝕んでいき、『シージ』でオズボーンがアスガードに侵攻した際、
とうとう完全にヴォイドと化し、オズボーンの制御も受け付けなくなる
アイアン・パトリオット・スーツを破壊され逮捕されたオズボーンは「セントリーを上手く操れるのは自分だけだ」と豪語し高笑いしていた)。
そして圧倒的なパワーでヒーロー達を追い込むも、アスガードの秘石の力を得たヒーロー達に倒された。

一旦正気に戻った彼は自身の行いを知って死を懇願。
だが、それを拒否されると再びヴォイドと化して襲い掛かり、ソーの一撃を受けて息絶えた。
誤解なきよう言っておくと、生まれた理由はどうあれ、セントリーとしてのロバート・レイノルズは紛れも無く正しい「ヒーローの心」を持っていた。
最期の時も、敢えて攻撃を受けて倒された節がある。

その後はアポカリプスの継承者である双子、アポカリプス・ツインズが従える四騎士の一人として復活する。
アメコミには良くある事

+ その死と連載誌に関する考察
あくまで推測に過ぎないが、上記のぽっと出後付け設定やあからさまに露悪的なスーパーマンのパロディと合わせて、
意図的に読者に反感を持たせるように設定されたキャラである可能性がある。
……というのも、セントリーが登場・活躍した時期は、アヴェンジャーズが解散する事件を発端に、
『ハウス・オブ・M』『シビル・ウォー』『ワールド・ウォー・ハルク』『ダーク・レイン(ダーク・リィンとも)』といった、
悪く言えば偽悪的で斜に構えた、良く言えばヒーローの存在価値を問うようなシリーズが連続的に刊行され続けており、
セントリーはそれら一連の暗黒シリーズを締め括る最大の敵として誕生させられたのではないか?という事である。

実際、セントリーの退場と共にマーベルは王道ヒーロー路線へと回帰していっており、
上記のシリーズのラストを飾る号もセントリー中心(事実上彼がラスボス)であった事から、可能性が無いわけではないだろう。
正義の味方が何の疑いも無く悪党を倒す……そんな当たり前のヒーローストーリーに疑問を投じる試み。
セントリーはその犠牲者だったのかもしれない。

オンラインゲーム『Marvel Super Hero Squad Online』では、
「せっかく食べようと取り出したアイスを、気付かぬ内にヴォイドに食べられてしまい愕然とする」というコミカルな一面も見せている。

+ 能力・強さ
ヒーローとしては、強い。アホのように強い。
ヤケクソ気味に強者設定が盛られまくっており、実際その強さを自他共に認めている。
マーベル世界におけるスーパーマン……と言うか見た目からしてタイツにマント、そして「S」マークと明らかにスーパーマンを意識している。
ポジション的には「暗黒面を抱え、結局はそれに勝てないスーパーマン」と言うべきか。

オリジンに関わる広範な記憶操作能力の他、満遍なく高い身体能力や五感、光を操作し熱線を投射する、死んでも復活するなど、
能力の範囲が広い上にどれもとんでもなくレベルが高い(保有するエネルギー量だけでも太陽100万個の爆発に等しいとか)。
具体的には、例えばパワーだと、惑星バージの支配者だったテラックスを難なく倒し、彼の武器である斧の柄を破壊したほど。
ちなみにテラックスの斧は惑星をぶった斬れる
知性レベルも天才的とされるがメンタルは豆腐
他にも、
  • ほぼ一瞬で土星まで移動できる超スピードでの飛行
  • プロフェッサーXが認めるほど強力なサイオニクス能力
  • ローグのミュータント・タッチを受けても平気
  • 老化の遅延
  • 宇宙空間でも平気な上に太陽に入ってもOK
  • 分子操作
  • 無から物質を作る
  • あらゆる物質や源からエネルギーを吸収し無限に供給する
  • 軽く触るだけで死人を蘇生させる
……と、ここまでムチャクチャなのはマーベルユニバースではシルバーサーファーやソーぐらいである。
全能な連中やギャラクタスみたいな規格外を除けば、ヴィランを含めてもトップレベルであろう。
ちなみにウルヴァリン曰く、ギャラクタスとほぼ互角かあるいはそれ以上の強さだとか。

しかし、上記の通り精神を病んでいるためフルパワーで戦える機会は少なく、
むしろ余裕で勝てるはずの敵を前にして想定外の事態にパニックを起こしたり、敵の精神攻撃を受けて無力化
果ては戦闘中に敵前逃亡したり戦いそのものを拒んだりとダメダメな面が多かった。
本来の力を発揮できるようになったのは、オズボーンに利用され良心のタガが外れた後であった。
なので彼の強者設定は盛られれば盛られるほど却って哀愁を感じさせるものとなっており、
強い強い言われるのに比例してメンタルの弱さが浮き彫りになり、情けなさを醸し出すキャラとして扱われる。
例えば上記の「死者を蘇らせる能力」はウルトロンに殺された奥さんを生き返らせるのに使ったのだが、
「かつての宿敵の暗躍により自分で自分の妻を殺した」と思い込まされるやショックで立ち直れなくなり、
自ら刑務所に引きこもってしまったほど。その後は刑務所の外でどれだけヴィランが暴れようが関与しようとせず、
ひたすら引きこもり続け、折角のチートパワーが宝の持ち腐れであった。

……とはいえ、その「弱い心」こそがセントリーを人間たらしめているのも事実であり、
むしろ躊躇い無くチートパワーを振るって思いのままに虐殺に興じるヒーローの方が異常である事を忘れないで頂きたい。
泥臭く血と汗にまみれ、努力と苦闘の末に勝利を勝ち取るヒーローが理想とされてきたのは、
強すぎるヒーローという存在がこのセントリーのような歪な怪物を生み出してしまう事をライターが理解していたからに他ならないのだ。


MUGENにおけるセントリー

     
アメコミキャラでお馴染み、「Infinity mugen team」のAcey氏が製作したMUGEN1.0以降専用キャラが公開されている。
ドットはマグニートー(もしくはそれを改変したスーパーマン)をベースとしている模様。

操作方法は『MVC』風の6ボタン方式で、チェーンコンボやエリアルレイヴ、アドバンシングガードが可能。
削り効果のあるパワフルな通常技や、光を使用した派手な必殺技超必殺技を所持しており、
技数こそ少ないものの、飛び道具や対空技など基本的な所は押さえている。
とはいえ火力は一般キャラ並であり、必殺技が『MVC』系では珍しいタメコマンドなのを始め、
ジャンプはかなりのティッシュ気味(上方向にキーを押しっぱなしにする事で降下速度を調節可能)、
エリアルレイヴで異様に高く跳ぶので叩き落とした相手が受け身を取った場合先に動かれてしまい、状況によっては反確
ヴォイドが実体化して突撃する超必殺技「The Void」は発動中無敵だが発生が遅すぎる等、中々に癖のある性能。
まぁ原作の超絶チート性能を完全再現したら試合にならないので仕方ない。きっとセントリーなりに手加減してくれているのだろう。
なお、MUGEN1.1で上記のThe Voidを使用した場合、終了後も無敵が長時間(5~6秒ほど)持続するという不具合(?)が発生するので注意。
AIはデフォルトで搭載されているが、簡易的なものなのか強さは程度。
紹介動画(公開サイトへのリンク有り)

出場大会

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最終更新:2025年08月17日 10:37