府城の西北に当り行程6里。
家数8軒、東西2町10間・南北24間。
北は山に倚り三方田圃にて南は揚川に近し。
東は
吹矢村と境界相接して町数詳ならず。
西1町
利田村の界に至る。その村は戌（西北西）に当り8町。
南4町
河沼郡野沢組漆窪村に界ひ揚川を限りとす。
北2町10間
吹矢村の界に至る。その村まで6町30間余。
この村もと下濕の地にて、蘆・荻生茂れるに田畝を開きし故名くという。
山川
揚川
村西4町にあり。
吹矢村の境内より来り、未申（南西）の方に流るること9町
利田村の界に入る。
岩窟
村西にあり。
横6尺・高5尺計・深5尺余。
昔この所に観音堂あり。相伝て、大同中（806年～810年）の草創という。慶長中（1596年～1615年）火災に罹り
烏有す。柱礎なお遺れり。その名残とて今も
窟中に千手観音と正観音とを安ず。
（
野沢組漆窪村の境内揚川の辺この堂に向えるところを馬下という。その地を馬上にて過ぎれば必ず落馬すといい伝う。漆窪村の条下と併せ見るべし）
古蹟
館跡
村中にあり。
何の頃にか武藤出雲員綱という者住し、天正の頃（1573年～1593年）その子右馬允與綱住すという。
馬場・的場の跡あり。今は共に田圃となる。
駒清水跡
村より辰（東南東）の方7町余にあり。
武藤が乗馬を洗し故この名ありという。
この辺に大清水というあり。
共に慶長16年（1611年）の地震に塞がりて、今田畠となりその形わずかに存す。
旧家
武藤平大夫
この村の肝煎なり。家系を詳にせず。武藤出雲員綱が後裔なりという。
寛永の頃（1624年～1645年）蔵人某という者あり。村長となり相続いて今の平大夫まで8世なりという。
鎗1本と加藤氏の時与えし文書を蔵む。因て左に載す。
山之郡小布瀬郷荻野村諸役 當年ゟ
三ヶ年許置候 但當年
御上洛の夫銀は可出候 此外は去年迄許
來候ことく仕間敷者也
寛永十一年
卯月朔日 守岡主馬
山之郡荻野村
武藤蔵人主
追記。
とんりすんがりさんより岩窟観音堂について情報いただきました。
荻野駅の北にあるお堂は風土記の記述にある岩窟の観音様のお堂でした。この観音様は岩屋観音と言っていたそうで、乳の出が悪い女の人がが乳袋に見立てた米を入れた袋をお供えし、その米を炊いて食べると乳が出るようになると評判でかつては参詣者も多かったようです。が、現地に行ってみるとご覧のようにかなり荒れ果てていました。
お堂を覗いてみると本尊の観音様もいらっしゃらないようでした…。途中の参道も地面がフカフカで相当人が足を踏み入れていない感じでしたが、実際近所の方に話を伺うともう何年も手入れをしていないとの事で、御本尊もどこにあるのかわからないとの事でした。
若い方はそもそも観音堂の存在すら知りませんでした。今もそれなりに人が住んでいる集落で平安時代から続いていた信仰がここまで廃れてしまっているのというのは寂しいを通り越して不可解なものを感じました。
旧高郷村の文化財目録を見ると個人所有の千手観音立像があり、もしかするとこれがかつての御本尊かもしれませんが…。岩屋も残っており、観音堂ははそれを塞ぐ形で立っている感じでした。
最終更新：2020年09月21日 09:45
