恐竜戦車/キル星人

登録日:2014/11/02 Sun 21:16:37
更新日:2023/11/24 Fri 15:47:14
所要時間:約 5 分で読めます






恐竜戦車、並びにキル星人とは、『ウルトラセブン』第28話「700キロを突っ走れ!」に登場した怪獣とそれを操る宇宙人。



恐竜戦車


【データ】

別名:戦車怪獣
身長:60m
体重:7万t


【概要】

キル星人が操るサイボーグ怪獣。作中では「恐竜タンク」と呼ばれる。
これは第二次世界大戦の敗戦以後、この作品の放送当時に至るまで、「戦車」という言葉を使用する事がはばかられていたためで、当時は自衛隊の戦車も「特車」と呼ばれていた。

スパイナーの実験場から出現し、スパイナーを強奪した。
名前通りドデカい肉食恐竜がドデカい戦車の上に乗っかっただけというインパクトの塊みたいなビジュアルとシンプルながら恐ろしいデザインをしており、意外と人気は高い(後述)。


どう見ても恐竜を戦車にのっけただけにしか見えないが、実は恐竜部分の殆どはサイボーグ009ばりに改造されている。
キル星人が地底基地を建設した時に偶然発掘した太古の恐竜を改造したものとされるが、キル星は医学が大変に発達しているため、このようなサイボーグ怪獣などは簡単に作ることができるという。


恐竜と戦車を合成しただけあって強力なパワーを持ち、特に尻尾での打撃は強力でウルトラセブンとの力比べにも引けはとらない。
武器も豊富で戦車の三門の砲身からミサイルを発射し、目からは黄色いレーザーを発射するという、まさに走る怪獣武器庫。

見た目通りの圧倒的なパワーと火力でセブンの腕を轢くなどして苦しめたが、最期はセブンの機転により強奪したスパイナーを起爆させられ、その爆発に巻き込まれ倒された。


大伴昌司氏が構成を務めた小学館発行『ウルトラ怪獣入門』の「ウルトラ怪獣退治作戦」では、
恐竜戦車に対しての囮戦法として防衛チームが戦車に作り物の恐竜を被せた「にせ恐竜戦車」のイラストが描かれた。


【デザインについて】

恐竜戦車の「戦車に恐竜が乗っかっただけ」という、悪く言えば投げやり気味なデザインになった経歴としては、当時の番組予算の都合によるものが大きい。
予算が逼迫し、怪獣・宇宙人の着ぐるみに使うお金を少しでも節約したいと悩んだ制作陣達は、『大怪獣ガッパ』で使用された61式戦車の模型を日活から態々借用して改造することを思い付く。
そうすれば後は恐竜の上半身の着ぐるみだけ作り、戦車の模型と合体させれば一体の怪獣として完成する。こんな大胆な作戦により、名怪獣「恐竜戦車」は生まれたのだ。


……しかし、そんな予算の都合で出来上がった恐竜戦車に対し、ハッキリと苦言を呈した人物がいた。

そう、美術家にして初代ウルトラマンやセブンのデザイナー・成田亨氏である。

成田氏はかの有名なカラータイマーの一件でも分かる通り、良くも悪くも美術家としての気質がとても高い。
恐竜戦車のデザインを担当したのも成田氏だが、「恐竜と戦車を合体させて」というあまりに安直な注文を聞いて非常に不満を感じたらしい。(それでもあの造形に仕上げたのは流石の手腕である。)
自身の画集でも恐竜戦車に対して「突破なアイデアだが、こういうのをデザインするのはあまり好きではない」とコメントを残している。

同じように「戦艦大和を怪獣にして」と注文されて出来たアイアンロックスに対してもあまり良い感情は抱いておらず、
最終的に「ここ(円谷プロ)には長く居る場所では無いな」と感じた成田氏は、第30話に登場するプラチク星人を最後に番組から降板、ウルトラシリーズから手を引くのであった……。



◆キル星人


【データ】

別名:侵略星人
身長:地球人と同じ
体重:地球人と同じ
演:野島昭生(1号車)*1
  武下哲也(1号車)
  峯千鶴子(16号車)
  瀬里ナツル(16号車)
  池田勝(3号車)
  渡辺弘(3号車)
  船橋竜次(オートバイ)


【概要】

地球防衛軍が開発した、TNTの数千倍の高性能火薬「スパイナー」を盗むためにわざわざやってきた宇宙人
姿形は地球人と同じだが、 書籍『ウルトラ怪獣列伝』によるとこの姿が本来の姿なのか、地球人に擬態しての姿なのかは不明とされる。
医学が大変に発達した宇宙人で、それにより作り上げた怪獣兵器「恐竜戦車」を引き連れている。
死ぬとに包まれ蒸発して消滅してしまう。

スパイナーを輸送する飛行機を襲撃していたが、自分がラリーに参加したかっただけのモロボシ・ダン発案による、
ウルトラ警備隊によるアフリカ大陸横断ラリーを利用しての輸送作戦を察知。
何故か自らもラリーに参加し、輸送の妨害を謀る。『ウルトラ怪獣入門』によると戦争好きな宇宙人とのことなので、趣味と実益を兼ねてのことだろうか。

バイクに乗せた人間型爆弾を突っ込ませたり、コースに地雷を仕掛けたりヘリ二機を使って車ごと強奪を謀るなど息つく暇もなく妨害を行ったが全て失敗。
途中でダンとアマギが功を焦ってキリヤマ隊長に怒られたりしたが、ついにスパイナーは実験場に到着してしまう。

すると、奥の手の怪獣兵器「恐竜戦車」を出現させ、とうとうスパイナーを奪うことに成功する。
単身立ち向かうも生き埋めにされたダンはウルトラセブンに変身、しかし恐竜戦車がスパイナーを咥えているため迂闊に手が出せない。
苦戦するセブンだったが、咥えたスパイナーを落としたチャンスを見逃さず地面に落ちたスパイナーに光線を発射し、その爆発により恐竜戦車も爆発。
星人一味も巻き添えで吹っ飛び、野望は防がれる事になった。
スパイナーも失われたが、あれは元々実験で爆破するために運搬されたものであり、予定とは違えど実験できた上に敵を倒すために役立って一石二鳥と言える。


一峰大二の漫画版はセブンもこの際スパイナーの爆発に巻き添えになっており、
セブンが死んだと思い嘆くウルトラ警備隊の前に現れたダンが「セブンはきっと生きているよ!」と力強く断言する締めとなっている。

名前は「殺す」の英語読みの「Kill」から。なんて物騒な
書籍では便宜上、ヘルメットを被りオートバイに乗った人物がキル星人として紹介されているが、に乗った星人もいるので間違いである。



◆派生作品

キル星人は以降の作品には全く登場しないが、恐竜戦車はその斬新すぎるデザイン故に、数多く客演している。

スーパーヒーロー作戦

ハンターキラー光明寺博士を脅して無理矢理作らせた怪獣として登場。
光明寺博士は裏でキカイダーを作っており、それを隠蔽するためにこんなバカでかいものを造りフーマに臣従したフリをしていただけらしい。


対決!ウルトラヒーロー

エレキングキングジョーといった面々を押し除け、なぜか「セブン」代表怪獣として恐竜戦車が参戦。
戦車に乗っかっている恐竜というビジュアルの通り。他の怪獣に比べて高さが非常に低いのが特徴で、しゃがみながら必殺技が放てるキャラでなければダメージが与えにくい。
恐竜戦車に限らず、このゲームは『帰ってきたウルトラマン』代表でゼットン2代目が参戦しているなど、癖の強い面々が集っている。


ウルトラ警備隊

ステージ4の雑魚として群れで登場。雑魚なのでやや小さめ。


『ウルトラ警備隊 MONSTER ATTACK』

スパイナーを狙うキル星人……ではなくクール星人の手下として登場する他、ノンマルトの手下としても2機出撃する。

ロストヒーローズ2

最初の中ボスとして登場するという大役を貰う。
殆ど技が使えない仮面ライダーウィザードやゼロスラッガーを失ったウルトラマンゼロに襲い掛かった。


ウルトラ怪獣かっとび!ランド

かっとび小学校の新人教諭として赴任してきた。
外見はごついが極度の小心者で、小学生相手にビビりまくり、泣きわめくほどのヘタレであるが、
下半身が戦車なのでパワーはすさまじく、階段を上ると全部轢き潰していた。


ウルトラマンSTORY 0

暗黒宇宙支配を目論む星間連合幹部・ザラブ配下の無人兵器として無数に登場。
胴体部分は全て戦車となり、大砲もガンタンクのように両肩に付属。更に口からは高熱火炎を吐く。
星間連合加盟を拒んだ植物惑星ギガントを滅ぼすためにザラブによりばらまかれた無人要塞(外観はビルガモ似)から次々に登場するも、
駆け付けたエースによりことごとく破壊に追い込まれる。
残った個体もタロウが旗艦アイアンロックスを消し飛ばしたため根こそぎ消滅したと思われる。


ウルトラマンメビウス外伝 アーマードダークネス』(漫画版)

ジャッカル軍団が率いる怪獣の群れとして、スカイドンキングザウルス三世スノーゴンアンタレスと共に光の国を襲撃する。
キャタピラでモブ戦士を轢いて苦しめたが、駆け付けたウルトラマンメビウスのメビュームシュートで頭を撃ち抜かれて爆死した。


『大怪獣バトル ウルトラアドベンチャー』

ネロンガと共にブルトンが召喚。
主人公・御倉イオの操るゴモラを2対1で苦しめたが、カネゴンが助太刀させたレッドキングが入って2対2に。
ブルトンはゴモラに倒され、残された恐竜戦車もレッドキングに締め上げられて恐竜部分が引き千切られてしまった。
流石にこの惨状にはカネゴンもドン引きしており、半壊した恐竜部分はレッドキングが戻されるとギャグ漫画のような顔で涙を流していた。


『大怪獣ラッシュ』

プラズマ怪獣の一体として登場。
劇場版では「恐竜戦車MK2」が登場し、ラッシュハンターズと戦った。


ウルトラマンオーブ 完全超全集

『ウルトラマンオーブクロニクル〈年代記〉』では、第2章「俺は銀河の渡り鳥」編に登場。
宝石惑星コボルにて天文学者ジグル博士とムルナウによって操られる形でガイジャグラーの前に出現、オーブと戦った。


ウルトラ怪獣擬人化計画

KADOKAWA版にて2018年4月度のラインナップとして擬人化された。
キャラクターデザインはすーぱーそに子で知られる津路参汰氏。
ちなみにこの選定は、2017年10月28日配信のニコニコ生放送「電撃25周年記念特番」アンケート結果で選ばれたものである。


◆余談

初登場エピソードである第28話「700キロを突っ走れ!」は冒頭のアンヌと遊園地デートに始まり、ノリノリでラリーに参加するなど好き放題やっていたダンだったが、
セブンへの変身を解いた後は何故か生き埋めに戻っており、気を失って担架で運ばれるというなんとも言えない退場をしていた。主人公なのに。

スパイナーは『帰ってきたウルトラマン』第6話にも登場。スタッフのお遊びらしい。
こちらでは小型水爆級の威力があり、当たれば怪獣は愚か都市が一つ消し飛ぶというN2地雷級の威力を有するらしい。
TNTの数千倍(とりあえず2000倍と仮定する)とすれば原爆級のエネルギーもたった7.5トン用意すればすむのである!……あんまり効率よくないような。
ちなみに『帰マン』40話では「タバコ箱一つ分で富士山が吹っ飛ぶ」サターンZなるもっと強力な火薬が登場していた。

ウルトラマンオーブ』には「スパイナーR-1」なる露骨なセブンオマージュのネーミングの破壊兵器が登場した。

ちなみに恐竜戦車のコスプレAVが存在するのはその筋では有名な話である。


追記・修正は700キロを突っ走ってからお願いします。

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最終更新:2023年11月24日 15:47

*1 『ウルトラセブン研究読本』(洋泉社、2012年)によると、配役スタッフの台本では1号車の男(キル星人)を演じたのは野島昭生となっているが、実際にこの配役で撮影されたかは不明とされている。