このページでは移植版を取り扱います。原作であるフリーゲーム版は記述対象外です。
青鬼
【あおおに】
ジャンル
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アドベンチャー
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対応機種
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Nintendo Switch Windows(Steam)
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発売元
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ゲームスタジオ
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開発元
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LiTMUS
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発売日
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2024年7月26日
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定価
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990円
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レーティング
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IRAC:12+
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判定
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なし
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ポイント
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今更感が否めない移植 移植度は良好だが削られた要素も 微妙な追加要素
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概要
2004年に『RPGツクールXP』で作成・配信されたフリーホラーゲーム『青鬼』。
「謎の館で青鬼から逃げながら脱出方法を探す」という極めてシンプルなストーリーながら、練り込まれた謎解き要素と、青鬼の衝撃的なビジュアルから人気を箔した。
小説や映画も公開されるなど、多彩なメディアミックスも為された作品だが、意外なことに商業向けの移植は並べて語られることも多い『ゆめにっき』と比べても遅れに遅れて最初の配信から20年も経った2024年のことであった(スマホアプリとしてはこれ以前に移植されている)。
ベースとしては、フリー版の最終版であるver6.23だがキャラデザインはアプリ版以降に準拠している。
システム
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システムは非常にシンプル。見下ろし型の画面で館の中を探索しながら、脱出方法を探す、というだけである。
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主人公(デフォルトネーム「ひろし」)以外にひろしの友人3人も館の中のどこかにいるため、彼らの探索も目的となる。
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システム自体は2DRPG形式で操作するごく普通のアドベンチャーだが、探索していると時折本作のエネミーである「青鬼」と遭遇する。
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青鬼のビジュアルは角などはなく鬼と言うより人間に近いが、
ブルーベリーのような青紫色の体色に主人公らの背丈の2倍はある大きな体躯、2等身の頭が大きいバランスに顔いっぱいに目や口などのパーツが拡大されている
という強烈な造形である。
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真っ青で真顔の巨大な顔がこちらに向かってくる様子はドットキャラの状態でもかなりのインパクトであり、フリーゲーム時代からこの青鬼の姿の強烈さでプレイヤーの心を掴んできた。
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青鬼は執拗にひろしを追跡してくる。ひろしはごく普通の学生なので、青鬼への対抗手段は一切持ち合わせておらず、捕まったらゲームオーバー。捕まった際にどうなるかは明言はされていないが……。
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追われている間はメニューが開けずセーブできない。部屋を切り替えてもしつこく追って来るが、一定時間逃げ続けるとそのうち振り切ることができる。BGMが通常のものに戻ったら振り切った合図。
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振り切れるタイミングは部屋切り替えの時だけであるため、障害物の周りをグルグル回るなど、ひとところで追いかけっこをし続けているだけでは逃げ切れない。ただし、そのような手段で時間稼ぎをすればその後に部屋から出るだけで逃げ切れるため、安全に振り切る方法としては有力である。
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また、いくつかの部屋にあるクローゼットに隠れるとやりすごすことも可能。ただ、青鬼は決して愚鈍な怪物ではないため、もし隠れるところを見られてしまったら……。
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基本的に青鬼にはある程度探索しているとランダムに遭遇するが、固定エンカウントする場所もある。
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元々がRPGツクールで作られた作品だったため、フリーゲーム版にはステータス画面があったのだが、本作にも特に意味なくステータスがある。
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RPGではないので、成長要素は一切なく、ひろしのレベルとHPは1固定である。
捕まったら即死なのでリアルっちゃリアル。
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実際にはネタではなく終盤の「とある演出」を再現するために、わざわざステータス画面を用意しているものと思われる。
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オマケ要素として「倍速モード」と「藍編」が用意されている。
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倍速モードは、名前の通り2倍〜
最大15倍
までゲームスピードを変更できるモード。
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藍編は、謎の少女、藍を操作して脱出を目指すモード。本編とは違い、館の構造はランダムで、謎解き要素はほぼない。
評価点
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原作譲りの「鬼ごっこホラー」は健在。
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本作のホラーとして見た場合の大きな評価点が敵である青鬼の神出鬼没ぶりである。「このシーンで出てきたら嫌だな」というプレイヤーの予測を
絶妙に外してくる
非常に嫌らしいタイミングで飛び出してくることが多い。
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青鬼の移動速度はプレイヤーと同じであり、まっすぐ逃げる分には追いつかれることはない。しかし、思考ルーチンが賢いため、障害物を利用して撒こうとしても距離を詰められることが多い。その一方で、ちゃんと館の構造を把握して逃げればほぼ全てのシーンで確実に逃げ切れるため、手強さはありながらも不条理さはほぼない。
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青鬼に追跡されているときの独特のBGMは恐怖感を煽ってくる。クローゼットに隠れていると、部屋の中を「探られている」音が聞こえてくるのもリアル。それだけに無事逃げ切った時の安堵感も大きい。
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中盤以降はさらにホラー要素も織り込まれてくる。「ゲーム」であることを活かした最終盤の演出は、かなりゾクッとする。
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謎解き要素はしっかり練られており、アドベンチャーとしての骨子も出来はいい。
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トラップアイテムのようなものはなく、取り返しがつかない要素もない。青鬼以外のゲームオーバーも基本的になく、アドベンチャーとしてはじっくり考えて進められる。
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中盤以降は館の別館に移動することになるが、謎解きが本館と別館にまたがることもなく、それぞれで完結しているのもわかりやすい。
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日本のプレイヤーにはほぼ関係ないが、多言語対応している。
問題点
原作と共通の問題点
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中盤以降の謎解きがやや不条理気味かもしれない。
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基本的にヒントと呼べるヒントはほぼ皆無。アイテムやオブジェクトの利用方法をしっかりと考えて、適切な場面で適切なアイテムを使わないといけないのだが、そのためにあちこちをうろついていると当然のように青鬼とエンカウントしてしまう。
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文章でのヒントはほぼないが完全なノーヒントではなく、アイテムの形などをじっくり観察して頭を捻れば解けないことはないのだが、救済措置などは一切ないため、キツい人には厳しいだろう。
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良くも悪くも、グラフィックは原作そのまま。
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原作のグラフィックはフリーゲームとしてはそこそこは凝っているのだが、流石に商業用ゲームとして見ると単調さや貧相さは否めないところ。良く言えば、原作を尊重しているのだが……。
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セーブがどこでもできてしまい、回数制限もないため、緊張感に欠けるという意見もある。
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青鬼出現時以外のセーブ制限はなく、「少し進んだらセーブ」の繰り返しでもクリアはできてしまう。どこでも青鬼とエンカウントしうることを考えると、セーブ制限があると難易度的に厳しくなってしまうことが懸念されたのだろうか。
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シナリオの真相や世界観設定などはほぼ説明されず、ストーリー分岐などもない。「あえて」多くを語らないことで余韻を残すストーリーとも言えるが……。
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隠し要素もほとんどなく、説明不足感が残ってしまう。
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一応、歩数などを元にハイスコアを記録してくれる機能こそあるが、再プレイのモチベーションとしてはやや弱いか。
移植版の問題点
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まとまったボリュームの追加要素はない。
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ほぼ原作のベタ移植であり、倍速モードと藍編以外の追加要素はない。後述のように、どちらも問題点が多いため、フリーゲーム版と比較してボリューム面での拡充はほとんどない。
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原作は迷う時間を考慮しても3〜4時間程度でクリアできてしまうため、この価格帯のゲームとしてはボリュームはかなり寂しい。
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フリーゲーム版、スマホ版と比較して削られた要素がある。
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フリーゲーム版と比べると、隠し要素が減らされている。
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まぁ、隠し要素の一部は
世界観ぶち壊しかつ著作権的にもアウト
な代物なので、削除は致し方ないところだろうが……。
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スマホ版と比較すると、鬼マスクガチャと「謎の男編」「少女編」のアナザーストーリーがなくなっている。
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ガチャは、商業ゲームにわざわざ入れるものではないだろうことは察せられるため、削除されても仕方ないところか。
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アナザーストーリーの削除についての理由は不明。本編にはボリューム面で劣るとはいえ、それなりの量があるオマケなので、そのまま収録してくれても良かっただろうに……。
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倍速モードはネタに近い。
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5倍速ぐらいまでなら高難易度モードとしてプレイできなくもないが、15倍速はほぼ一発ネタ。速すぎてまともな探索も困難である。
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藍編はローグライク系ホラーとしても不条理気味であり、ボリュームも薄い。
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ぶっちゃけかなり運ゲーであり、「キーアイテムをどれだけ運良く見つけられるか」「青鬼とどれだけエンカウントせずに済むか」というだけのゲームと化しており、戦略性はほぼない。ボリューム的にも10分足らずでクリアできてしまう。
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部屋に入った瞬間眼の前に青鬼出現、袋小路になっている場所に青鬼出現
など、本編では操作ミスしない限り遭遇しないだろう理不尽極まりないエンカウントが頻発する。
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幸い、このモードもセーブ制限はないため、セーブの繰り返しでクリアは可能。……それはそれでローグライクとしての緊張感もへったくれもないが。
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本編と同様にスコアアタック要素もあるが、隠しアイテムを手に入れるだけでSランク確定という大味極まりない点数換算であるため、あまり盛り上がらない。
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一応エンディングだけはホラーっぽいため、このあたりの雰囲気はなかなか。とはいえ、説明不足感は否めず、理解しがたいところもあるが。
総評
原作がフリーゲームとしては高く評価されていた作品であり、極端な劣化点がない本作も一本のゲームとしては破綻しておらず、十分楽しめる作品である。
ただ、移植についてはiOS/Androidで既に展開されており、地続きとなる媒体作やソーシャルゲームが展開されている最中で今更感が否めない。
評価できる点がほぼ原作で評価されていた部分だけであり、改善された要素は皆無に近く、追加要素も微妙
という「フリーゲームの商業移植としてどうなの?」と言わざるを得ないクオリティなのも間違いない事実。
対応ハードが異なるSwitch版はともかく、Steam版についてはあえてフリー版ではなくこちらを選ぶ理由に乏しいのも難点。
本作しかない独自要素は一応あるので、ホラーゲーム及び『青鬼』ファンは購入してもいいかもしれない。
余談
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本作に合わせて、3D版青鬼と呼べる『最恐 〜青鬼〜』が配信された。
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舞台が洋館なのは共通するが登場人物、設定は別物の原作と接点が無いスピンオフ作品。
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続編『青鬼 ブルーベリー温泉の怪異』も2025年4月25日にSwitchで販売された。
最終更新:2025年04月25日 12:07