株式道場 実践編
【かぶしきどうじょう じっせんへん】
| ジャンル | シミュレーション |  | 
| 対応機種 | ファミリーコンピュータ | 
| 発売元 | ヘクト | 
| 開発元 | ヘクト アクシズアートアミューズ
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| 発売日 | 1989年5月2日 | 
| 定価 | 9,800円(税別) | 
| プレイ人数 | 1人 | 
| 判定 | クソゲー | 
| ポイント | 予想らしい予想もできずやみくもに買って売っての運ゲー 株式市場の構造ができておらず「道場」になっていない
 元ネタがわかればゲームじゃない
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概要
1989年5月にヘクトから発売されたファミコンソフトで株式投資のシミュレーションゲーム。
株式投資で資本金を目標金額まで増やすことを目的とする。
内容
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株取引で資産を増やし特定の期間内に目標額まで増やすこと。
| コース | 期間 | 初期資金 | 目標金額 | 
| 初級 | 1年6ヶ月(78週) | 1000万円 | 1200万円 | 
| 中級 | 1年3ヶ月(65週) | 2000万円 | 2600万円 | 
| 上級 | 1年(52週) | 3000万円 | 4200万円 | 
| セミプロ級 | 9ヶ月(39週) | 4000万円 | 6000万円 | 
| プロ級 | 6ヶ月(26週) | 5000万円 | 9000万円 | 
 
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プロ級以外から始めた場合、クリアしたら次はその1つ上位の級に移る。
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メイン画面内では、「持ち株」と「現金(所持金)」が確認できる。
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銘柄と平均高値、終値、持株数が表示されており、その総額が「株券」の額で、それと「現金」の合計が「残高」となる。
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この「残高」を目標金額まで増やすのが目的。
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ただしもう1つクリア条件として3銘柄以上の取引をする必要があり、それを満たさないと目標金額に到達しただけではクリアにはならない。
 
 
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取引は現物のみで信用取引はできない。
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また普通の株式取引と違って秒単位での変動はなく株価はその日(その週)で固定。
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取引単位は1000株で固定。
 
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ゲーム開始と同時に取引する10社分が提示され、その中から株式を売買する会社を選んで取引を行う。
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ゲーム内の企業データは「Aかがく」「Dきかい」「Hほけん」などいかにも架空候な名前だが、実在の企業をモデルとしており東証一部上場企業200社のデータを流用している(1985年11月~1988年10月の3年間)。
 
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ゲーム中では取引手数料は一律で1%となっている。売却時はさらに有価証券取引税として売却額の0.5%がマイナスされる。
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つまり購入時は「購入金額×1.01」が必要になり、売却時は売却価格から手数料と上記の税金が引かれ「売却金額×0.985」となる。
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購入時に金額不足だと係員が怒りだし態度がどんどん辛辣になる。
 
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株の購入と取引は週単位で行う。
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その週の取引を終えたら「次のしゅうへ」で1週分送る。すると所持株の値動きが見られ「残高」と「株券」の額がそれに合わせて自動計算される。
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ゲームスタート時に提示されるコースでは年月単位でしか表示されないがゲーム内では週数の方が時間の指標となる。
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4週(1ヶ月)経過するごとに師匠が株の理論を述べる。
 
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BGMはバッハのクラシック5曲が取り入れられている。
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管弦楽組曲第2番より「バディネリ」
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管弦楽組曲第3番第2楽章より「G線上のアリア」
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インヴェンション1番ハ長調
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インヴェンション8番ヘ長調
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アンナ・マグダレーナのためのクラヴィア曲集より「メヌエット」
 
問題点
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やることは単に買ったり売ったりするだけの単純作業。
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元々株式投資とは様々の情報の上に成り立つものであるはずなのに、そのような情報の要素はないも同然。
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一応情報はチャートや予想PERなど簡素ながらあるにはあるが贔屓目に言っても参考程度にしかならず、リアルでの株価の予測は社会情勢にも左右されるので、本作のゲーム内で見られる程度の情報で成り立つようなものではない。
 
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ほとんど同じ画面を見ているだけ。
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師匠との対話(タイトル・モード選択)、資産表、会社データ、チャート、取引所とこれだけ。
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クリアーしても「祝合格」と札束が積み上げられた一枚絵(初級からプロ級まで同じ絵面)の後はお馴染みの師匠との対話。
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こんな調子で動くキャラクターすらほとんどない。
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1989年のファミコンソフトでこれでは退屈でやってられない。
 
 
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上記の通り、実際の200社ものデータが3年分蓄積されたものだが、結果が分かっているものをそのまま流しているだけでしかない。
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ゲームとして成り立たせるためにクリアするまでは企業名は伏せているのだが、そもそもゲームになっているとすら言えないレベル。
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もちろん銘柄の正体を明かしてしまえばゲームにならなくなるのだが、いかにもインチキな変名にしか見えないのでリアル感がまったく感じられない。
 
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ゲームではその日が終わるまで価格が変わらないので本来秒単位で変動する株式取引の感覚とは全く異なる。
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もっともこれは既存の結果をそのまま流しているだけなのでこうなるのはある意味当然と言えば当然ではあるが。
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他に株式投資のスタイルとして、その日のうちに安値を見計らって買ったり高値を見計らって売るのも大事なのだが、このようなシステムではそれすらできない。
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信用取引に関しても説明書にはその内容が記載されているがゲームではそれを取り込んですらいないのは手抜きにすら感じられる。
 
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しかも取引できる銘柄はたったの10社だけ。実際は数千社にも及ぶだけに実践感覚とは到底言えないレベル。
 
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ランクに応じたコースが5段階用意されているものの結局やることは同じ。
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元々ただ実際の結果をなぞるだけなので、こうならざるを得ないのかもしれないが。
 
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実はクリア条件の「3銘柄の取引」というのは、一度でも買ってしまえばそれで「1銘柄取引した」とみなされている。
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つまり、都合のいい1銘柄を買ってノルマ+αぐらいまで増やしたら、あとは適当に安い銘柄2つを1000株ずつ買うだけであっさり達成と認められるなど、かなりヌルイ基準だったりする。
 
評価点
残念ながらまったくなし。
総評
株式投資とは元々買って待って売ってを繰り返す地味なものだが、それは会社の詳細な事業情報や社会情勢など様々な知識の上で予想が成り立っているものであって、そのような情報要素がないも同然あれば結局運ゲーにしかならない。
一応データそのものは200社もの過去の株価データ3年分と膨大なものを取り込んでいるのだが、このようなゲームである以上実史の再現などさして重要ではなく、もちろん知っていればゲームですらない。
また株式取引で重要な「秒単位での変動」もないなど株式取引のシステムが満足に構築されておらず、極めつけはただ数字を見ているだけでビジュアル的な面白味はまったくなく、ネタ的な面白さやピンポイントで褒められる部分すらない。
その後も含めてクソゲーは数多くあれどもここまで良さや面白さを徹底排除したものは歴代屈指だろう。それでいてとどめと言わんばかりに価格まで9,800円と光栄ソフトクラスの高額。
余談
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説明書には子供向けに株式そのものの仕組みがわかるよう説明漫画「株の基礎知識Q&A」が掲載されている。
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この漫画の作者である大野克彦氏は他にゲーム関連では徳間書店の「わんぱっくコミック」で『ジャイロダイン』『ソンソン』『じゃじゃ丸の大冒険』『花のスター街道』などを連載していた。
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それに反してゲームそのものは全然子供に向いていないが。
 
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株式投資のシミュレーションはファミコンでもこれ以前にイマジニアから『松本亨の株式必勝学』(1988年2月発売)『松本亨の株式必勝学II』(1989年3月発売)、ソフエルから『ザ・マネーゲーム』(1988年8月発売)が発売されている。
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これら作品はちゃんと秒単位での変動なども取り入れられている。特に後者は登場企業は架空のため、その架空企業の四季報などまで同梱しているなど、かなり本格的。
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前例があるのに、その内容は劣化版で価格までこれらより高いときたもんだでは救いようがないだろう。
 
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タイトルに「実践編」とあるように続編出す気マンマンなタイトルである。
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実は後に『株式道場2 投資顧問株価予想編』なるものが予定されていたが結局出ないまま終わった。
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ヘクトは同年12月に野球シミュレーションの『エモやんの10倍プロ野球 セリーグ編』を発売しており、こちらも「パリーグ編」なるものも想定されていそうなタイトルではある。しかし「パリーグ編」を出す予定は元々なかったらしい。
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だが、こちらもゲームボーイで『エモやんの20倍プロ野球』なるものを予定していたが出さずじまいに終わっている。「~編」とハナから続編やスピンオフ出す気マンマンなタイトル同士がどちらもクソゲー1作品限りで終焉する皮肉な結果になった。
 
 
最終更新:2025年07月31日 00:37