四方山商会ブース(一般学生向け対応)
展示の目玉はYMY-BXS14「投擲用光学戦輪」
デモムービーでは、投擲したフリスビー状の装備が空中で光の刃を展開、試験用の模擬標的を両断する映像が流されている。
既製品である使い捨てビームダガー「YMY-BXS13 蓄電式小型ビームカッター」、機体内部から展開するフォトンセイバー「YMY-BX-B12 炉心直結式ビームカッター」と共に展示される、同系統の新作である。
学生からの人気は――微妙。
威力そのものは十分に高出力だが、撃ち落とされれば終わりの投擲兵器である。
何より高い。とても高い。そして使い捨てである。
ならばそれこそ的が小さいビームダガーや、或いはプラズマグレネードの類を採用した方がコストパフォーマンスが良い。
そんなわけで、綺麗に整えられたブースはあまり賑わってはいなかった。
四方山商会ブース(企業関係者向け対応)
特筆すべきところがあるとすれば、一部の委員を含めた、企業の関係者やスタッフが訪れた時の対応。
スタッフは挨拶されるまでもなく、自分からにこやかに近付いてきて名刺を差し出し、和やかに会話を持ちかける。
客の入りを聞けば、こんな風に答えるだろう。
「いやあ、我々はキャバリアの兵器開発には門外漢ですから。なかなか――さんのようにはいきませんね」
「我々がアピールしたいのは、あくまで『エネルギーインゴット動力を効率的に小型バッテリーに蓄電し、瞬時に大出力を展開する』技術なのです」
「もちろん、他のリアクターにも応用可能な技術だと考えておりますよ。何もないところから湧いてきてくれるオブリビオンマシンが典型ですが、ああした不規則な動力をエネルギー源として安定利用するのが我が社の目指すところですから」
「ああ、未知のリアクターといえば御社のキャバリア『――』、面白いですね。よろしければぜひ共同研究を――」
無論。
「特に関心のある企業」のブースには、
四方山商会スタッフの側から挨拶周りに訪れていることだろう。
YMY-BXS14 投擲用光学戦輪
形状としては中央に穴の開いたドーナツ状のフリスビー。
簡易センサーが搭載されており、セーフティ解除後に一定以上のサイズの目標に接近すると外周部に3本のビームダガーを自動展開する。
展開時間は1秒に満たないが瞬間的な出力は通常のフォトンセイバーを上回り、生半可な装甲の量産型キャバリアは十分に両断し得る。
兵装としてはビームダガーの形状を改良し、より投擲時の軌道安定化と攻撃力の確保に特化させたものといえる。
バッテリーを内蔵しており、キャバリアからのエネルギー供給を要求しない。
が、販売後のバッテリーの交換を想定して設計されておらず、そもそも大抵衝突で本体が砕け散るので使い捨て。
設定された市場小売価格は一般的なフォトンソード数本分で、投擲用のサブ兵装としては大分高価。
YMY-BX-B12 炉心直結式ビームカッター(既製品)
文例:キャバリアの動力炉に接続し、装甲内側から直接展開する光の刃。本来は作業用カッター(分類:BXフォースセイバー)
量産型農業用キャバリア『金雀枝』用に開発された作業用カッターの出力を向上させ、兵器に転用したもの。
ノーモーションで高出力の刃を形成するため、非常に奇襲性が高い。
なお、同機の場合はカッター展開部の装甲を極端に薄くした上でバイオニウム・カーボンを利用し、内側から焼き切ってから自己修復する仕様。
当然ながら、通常の機体で利用するためには、カッター展開用のスロットを増設するなりの改修を伴うのが現実的であるが、商会は特にそうしたサポートは行っていない。
YMY-BXS13 蓄電式小型ビームカッター(既製品)
文例:刃渡1mほどの小型光剣。使い捨てのバッテリーを内蔵し、トラップ用の設置も可能(分類:BXSビームダガー)
BX-B12に小型化を加え、バッテリーを搭載した改良型。
短時間ながら単体で動作することから機体性能を問わず使用でき、投擲や、うまく使えばトラップ等の機体から離した状態での使用も可能。銃器にアタッチメントとして取り付けることで、「ビーム銃剣」のように運用することも想定されている。
四方山商会製品としては珍しく汎用性のある装備……と見せかけて、小型格闘武器としては非常に高価かつ使い捨てでコストパフォーマンスは劣悪。複数本を投げる等の運用に向かないのは難点といえるだろう。
小型バッテリーへのエネルギーインゴット動力の蓄電を研究する過程で開発された装備、とのこと。
最終更新:2020年12月05日 21:48