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ASSASSIN'S CREED ROGUE - (2018/08/30 (木) 16:36:41) の1つ前との変更点

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*ASSASSIN'S CREED ROGUE 【あさしん くりーど ろーぐ】 |ジャンル|アクションアドベンチャー|~|~| |対応機種|プレイステーション3&br()Xbox360((海外のみ。国内では未発売))&br()Microsoft Windows&br()プレイステーション4&br()XboxOne|~|~| |発売元|ユービーアイソフト|~|~| |開発元|ユービーアイソフトソフィアスタジオ|~|~| |発売日|【PS3】2014年12月11日&br()【Win】2015年3月10日&br()【PS4/One】2018年3月22日|~|~| |定価|【PS3】7,992円(税込)&br()【Win】2,592円(Steam版定価・税込)&br()【PS4/One】4,298円(税込)|~|~| |レーティング|BGCOLOR(crimson):''&font(#ffffff){CERO:Z(18才以上対象)}''|~|~| |判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~|~| |ポイント|アサシンハンター誕生&br()初のテンプル騎士団側主人公&br()旧世代機の集大成&br()『UNITY』への繋ぎ?|~|~| |>|>|>|CENTER:''[[ASSASSIN'S CREEDシリーズリンク>ASSASSIN'S CREEDシリーズ]]''| ---- #contents(fromhere) ---- **概要 『[[ASSASSIN'S CREED IV BLACK FLAG]](以下『IV』)』に続いて据え置き機で発売された作品。北米では『[[ASSASSIN'S CREED UNITY]](以下『UNITY』)』と同時発売されており、本作との関連要素もある。完全に次世代機向けに開発され、ゲームエンジンも更新された『UNITY』に比べ、本作は旧世代機向けに発売され、エンジンも以前の「Anvil Next」のままとなっている。 2018年3月22日には、PS4/Xbox One向けにリマスター版が発売された。デラックス・エディションに収録されていた追加コンテンツは全て含まれており、新衣装として、最新作『ASSASSIN'S CREED ORIGINS』の主人公・バエクの衣装が追加されている。 本作の舞台は『[[ASSASSIN'S CREED III]](以下『III』)』の少し前((『III』も大きく分けて2つの時代があるが、その最も古い時代を基準にした場合。))、フレンチ・インディアン戦争((オーストリア継承戦争の後、ヨーロッパ列強がほぼ参加した世界規模の戦争「七年戦争」の内、北アメリカで行われた戦いに使われている呼称。実際は国や解釈によって様々な呼び方があり、七年戦争自体も解釈によっては7年間続いたわけでもない。))さなかの北大西洋岸となっている。そのため『III』の前日譚といった一面もあり、同作で舞台となった場所や登場人物も多く登場する。さらに『IV』(および『自由の叫び』)の人物も登場しており、両作を繋げる作品ともなっている。 本作の特徴は、なんといっても主人公がアサシン教団を裏切り、これまで一貫して主人公の敵側だった、テンプル騎士団につくという点である((一応これまでのシリーズ作品でも、一時的にアサシンと敵対したり、騎士団と協力するといった展開はあった。))。本作は、『III』より続いた「ケンウェイ・サーガ」の最終章とも言える作品であるが、本作の主人公はケンウェイ一族ではなく、新キャラの「シェイ・パトリック・コーマック」となっている。ただ、『III』で重要人物だった「ヘイザム・ケンウェイ」が、今作でも中心人物として登場する。 現代編の舞台は『IV』を引き継いだものになっており、引き続き登場する人物もいる一方、新たな人物も登場する。 ---- **ストーリー アブスターゴ・エンターテインメント社はあるトラブルに見舞われ、一時的に業務を停止していた。どうやら、アニムス内で「シェイ・コーマック」なる人物のファイルに接触したことが原因らしい。現代編主人公はトラブル解決に駆り出され、その過程でシェイの数奇な人生を追体験することになる。 1750年代始め、シェイ・パトリック・コーマックはアサシン教団の一員として、北アメリカ植民地で修行と戦いの日々を送っていた。ある日、ダベンポート・ホームステッドの導師アキレスのもとに、伝説的アサシンのアドウェールが訪ねてくる。彼によると、地震により大きな被害を受け、そしてそれに乗じて「秘宝」のありかを示す手稿と箱が、テンプル騎士団に奪われたという。アキレスは手稿と箱の奪還を直ちに指示し、シェイもその任務に加わることとなった。 奪還のための任務は確実に進んでいたものの、その過程で明らかな弱者まで手に掛けていくことにシェイは疑問を持ち始める。仲間からは「それは正しく、必要なことだった」と言われるが、なお気は晴れなかった。探索の末ついに手稿と箱の奪還に成功し、秘宝の在り処も探り当てるシェイ達だったが、その後ついにシェイの人生を大きく変える出来事が発生する。 ---- **ゲーム内容 -本作もこれまでと同じく、ミッションを請けて暗殺を行い進めていくといった形だが、『IV』と同じく海上で船を襲い略奪を行うといった行為も可能となっている。ただし本作では主人公らは海賊ではないため、敵対勢力に対する通商破壊的な行動と言えるものとなる。本作では大きく「北大西洋」、「リヴァーヴァレー」、「ニューヨーク」の3つのマップがある。 -本作でも主人公は二刀流だが、『IV』とは異なり右手に剣、左手にダガーといったスタイルになっている。ピストルは持ち歩けるのは2挺までとなった。 -本作では、前述の通り主人公が途中でアサシン教団からテンプル騎士団に寝返るのだが、それによる操作の変化といった事は特にない。ただ、アサシンと騎士団はそれぞれ異なる国と協力関係にあり((基本的にアサシン教団はフランスと、テンプル騎士団はイギリスと協力関係にある。))、立場が変わることで友好と敵対関係が入れ替わるといったことが起こる。 -本作のシステムは基本的に『IV』のものをほぼ引き継いでおり、以降では主に変更点を記述する。 ***追加・変更点 -新武器として「エアライフル」と「グレネードランチャー」が登場。 --エアライフルは、一見普通の銃だが発砲音がしない。弾は各種ダートを使用し、つまりはこれまでも登場した「吹き矢」の発展系と言えるものである。一時的に眠らせる「スリープダート」と発狂して周囲に襲いかかる「バーサークダート」は同じだが、新たに「爆竹ダート」が登場し((単なる「爆竹」なら『自由の叫び』にも登場しているが、そこでは道具の一種だった。))、誘き出しや火薬の爆破に活用できる。 --グレネードランチャーは、爆発する榴弾(グレネード)を射出する。「スリープ」と「バーサーク」はダートの範囲攻撃版といったものだが、単純に爆発して攻撃する「榴散」も存在し、扉などを吹き飛ばし道を開いたりもできる。 -今作でも『IV』と同じく武器ホイールが無く、十字キーで武器と道具を選ぶという方式になっているが((正確には、かつてのように一時的に画面が停止し、左右スティックで選ぶといったものが無くなった。作中では十字キーで選ぶものにも、一応「武器ホイール」という言葉が使われている。))、『IV』では上下で武器、左右で道具という方式だったのに対し、今作では左方向が武器、右方向が道具となった。上方向はエアライフルのダート、下方向にはグレネード弾が充てられている。 -潜んだ敵との戦い --作中では主人公が身を隠せる場所などに敵が潜んでいることがあり、彼らはタカの眼でも見えない上に、近づくと不意打ちされて瀕死になるほどのダメージを受ける。 --ただし対抗策はある。潜んだ敵の近くでは囁き声のようなものが聞こえ、画面端に霞がかかったようなエフェクトがかかり、敵の存在を知らせる。その状態でタカの眼を使うと、主人公を中心にドーナツ状の「デンジャーコンパス」が出現し、敵の方向を光って知らせる((シリーズ経験者なら気づいた人も多いだろうが、これは以前の本シリーズでのオンラインプレイのシステムを流用したものと言える。))。敵に近づくと光の幅が広がり、全周を覆う状態になると敵を探り出すことができるようになり、逆に誘き出したり不意打ちが行える。 -船関連 --本作では序盤から船を入手し利用することができるが、南のカリブ海が舞台だった『IV』と異なり、一転して氷山が浮かぶような寒々とした北大西洋が舞台となる。「砕氷衝角」を装着することで海上の氷を砕きながら進めるようになる。さらに浮かぶ氷山も単なる背景ではなく砲撃することで破壊でき、崩壊の衝撃を周囲に伝え、小型船程度なら沈められる。 --船の武装は基本的には同じだが、時代の変化などもあってか変化したものもある。 ---前方を向いた際の「連鎖弾」が「カロネード砲」に変わっているが、速度を落とすという効果自体は特に変化がない。 ---後方を向いた際の「樽爆弾」が「燃える油」になり、文字通り海上に燃えながら漂い、接触した船を燃やしてダメージを与える。 ---新たな兵器として「パックルガン((リボルバーのような弾倉を持つ砲で、「ジェイムズ・パックル(James Puckle)」という人物が開発したことに由来する。ベルトなどのバックル(buckle)ではないので注意。余談だが、ベルトのバックルに弾丸を仕込んだ「バックルガン」などと呼ばれる武器も実際に開発されており、知っていると余計混乱しやすい。))」が登場し、これは以前の「旋回砲」の位置にあるものだが、使用感は大分異なる。初使用時にはボタンの変更よりその連射速度に戸惑うだろう。ある程度自動でロックしつつ自由にも撃てるという、『III』と『IV』の中間のような性能となっている。乗り込み時にも使用できるが、今作では乗り込みが始まっても撃ち続けることができ、さらにかなり仰角がとれるため、マストの上にいる敵を直接撃ち落としたりもできる。 --「真後ろを向く」ボタンが追加された。これはかつての旋回砲のボタンで、旋回砲にあたるパックルガンは望遠鏡だったボタンに、望遠鏡は十字キーの上にそれぞれボタンが変更されている。 -今作でも敵船への乗り込みが行えるが、逆に敵の方からも乗り込んでくるようになった。敵船が突っ込んできた後に、煙幕がたかれたようになって一時的に行動不能になり、その後自船上で戦闘が始まる。ただその後は敵船にも移れるなど、乗り込んだ時とほぼ同じ展開となる。 -各地のギャングの拠点に侵入すると、「ボスを倒す」、「旗を燃やす」などの条件が提示され、全て達成すると拠点を乗っ取ることができ、収入がアップする。 -本作には「アサシンの迎撃」といったものがある。これは各地のハトから暗殺の指令を手に入れ、先に見つけた標的を殺されないように、逆にアサシン達を見つけ出して倒していくといったものである。早いうちに倒すとボーナスがある。 -今作にも「交易艦隊」が存在し、基本的には『IV』と同じだが、進めるに従い七年戦争の進行具合も連動して語られる。戦闘場面がスキップできるようになったほか、修理などで「宝石」といった独自のものを消費していたのが、普通の金を使うようになった。 -海の砦との戦いは今作にもあるが、最後に司令官を倒す必要が無くなっている((もっとも、『IV』では司令官のいる部屋に行けるようになった時点で敵は降伏し、司令官も無抵抗でほぼ意味が無かったので、こうなるのも妥当と言える。))。 -本作にも銛漁があり基本的には同じだが、地域上獲物に「イッカク((鯨類の一種だが、頭部から歯が角のように長く伸びている独特の姿を持つ。))」が加わり、さらに海上に氷が浮かんでおり、引き回されている場面でぶつかるため、ボートに捕まり衝撃に耐える必要がある。 -冷たい水に浸かっていると寒さでダメージを受け続けるようになった((水に飛び込んだ際も、「船長が冷たい海に!」などと船員の声が変化する。))。 -『IV』の「伝説の船」ではないが、「伝説の戦い」という高難度のミッションがある。 -口笛を吹いた際に、音の広がりが視覚的に表示されるようになった。 -本作にはオンラインプレイは存在しない。 ***復活した要素 -『IV』での1つの大きなマップから3つのマップに分割され、この点は『III』に近い。 -一定時間ごとに収入があり、一杯になる前に回収するという、エツィオサーガにあったようなシステムが加わった。各地にある建物を「改築」という形で修復し、その度に収入も増えていくというのも共通している。 ---- **評価点 -旧ハード一つの集大成 --完全に次世代機向けの『UNITY』に対し、実質旧ハードで発売された最後とも言える本作は、これまでのシリーズの様々なシステムやミッションを集めた、正に集大成と言える内容となっている。このあたりは「単調」と批判された1作目と比べ隔世の感がある。 -より便利・快適になった内容 --船関連 ---『IV』では後ろを向くのに少し時間がかかったため、樽爆弾を使うのが少し面倒だった。今作では即向ける用になったことで、後方確認もしやすくなった。望遠鏡が十字キーの上になったのは、操船しながらの使用がやや難しくなったが、そこまで大きな問題でもない。 ---燃える油も、性質上樽爆弾に比べ小分けにして使用できることで、より柔軟に活用できる。 ---パックルガンも、旋回砲に比べより自由に使えるようになり、慣れればほぼ上位互換の武装と言っていい。 --各地の小島などではすぐ船に戻れるボートがより多くなり、本作では結構船を置いて歩き回れるが、船を呼ぶ鐘なども各地に存在する。交易艦隊の戦闘の早送りや、普通の金が使えるようになったのは、最初からこれでよかったとも思える改善である。 -キャラとストーリー --『III』と『IV』をプレイした者にとっては、それらに登場したキャラや場所が再登場するのは、やはり嬉しくもある。しかも時代の違いにより、それらの作品に登場した時とはまた違った姿を見られるのも興味深い。 --『III』につながる流れや、アサシンを裏切り騎士団に加わる主人公といった展開も、そこまで無理無くうまく描かれている。 -以前よりは多彩になったロケーション --時代や地域的に、歴史ある巨大建造物が無いというのはもう仕方がないだろうが、『III』や『IV』に比べればかなり多彩にはなっている。氷山の浮かぶ寒々とした北大西洋に、山や川といった自然あふれるリヴァーヴァレー、『III』とはまた違ったニューヨークなど、それぞれに違った特色があり、さらに季節による変化もある。マップが広いようで上陸できる場所は少なく、自由に移動できる場所が点在している感じだった『IV』に比べると、かなり広い範囲を移動できるようにもなっている。 -シリーズおなじみの収集要素だが、本作は特に充実したものになっている。 --定番のアニムスの断片は、今作では集めていくと何者かのメッセージが徐々に増えていく。 --断片に似ているが色の違う「プロスペリティー」といったものもあり、集めていくと入手できる色々な物にボーナスが加わる。 --各地の先住民の柱は、たどり着くまでも少し手間がかかるが、柱のパズルを解くことで「先住民のトーテム」が手に入り、ある場所で装備品が開放される。他にも「テンプル騎士の秘宝」や「バイキングの剣」といった物も、集めると装備品が開放される。 --各地にある「洞窟画」は、タカの眼で見るとまた違った絵が浮かび上がり、ある者たちの物語を描いたものになっている。 --各地で「戦時の手紙」が入手できる。これは何らかの理由で届かなかった手紙で、大抵はアサシンかテンプル騎士の連絡や報告といったものである。その中には、本シリーズの近い時代に登場していた人物も多く、ゲーム本編で語られなかった話など、ストーリーを補完するような内容のものも多い。 --現代編でも、放置されたコミュニケーターやパソコンから様々な情報が収集できる。音声データは、本作の現代編登場人物の過去が語られ、本編内容を補完するものとなる。 ---- **賛否両論点 -ほとんど『IV』そのままのシステム --前述の通り、本作は『IV』のシステムの多くを引き継いでいる。しかし、引き継ぐというかほとんどそのままで、メニューのグラフィックまでそっくりである。今から本作をプレイする場合、『IV』と続けてやる人も多いかもしれないが、その場合さらによく分かることだろう。 ---一応少しは変化している部分もあり、改良されてもいるのだが、逆にそれが使い回し感を強調させたり、プレイに混乱をもたらす一面もある。特に武器と道具の配置の変化は、『IV』の感覚に慣れていると混乱しやすい。 --似ているということは同じ感覚でプレイできるということでもあり、『IV』自体は十分良作と言っていい作品で、システム自体に大きな問題も無く、それ自体が悪いわけではない。変えたら変えたで文句が出るはずで、これは多くの続編が出ているゲームに共通するジレンマとも言える。 --システムを丸ごと使いまわしたがゆえに、宝箱の開け方が主人公のキャラに合っていない、そもそも海賊行為の必要性があるのか?といった不整合も僅かながら生じている。 -アサシンハンターの悲哀 --前述した通り、本作の主人公シェイはアサシン教団を抜け、これまでのシリーズでは敵側だったテンプル騎士団に加わり、「アサシンハンター」としてアサシン達を始末してゆくことになる。これは本作最大の特徴でもありウリと言っていい点だが、やはり釈然としない人も多いかもしれない。 --テンプル騎士団自体は悪というわけでもなく((ただしかなり悪役的、というか完全な悪人が多かったのも確かだが。))、あくまでアサシン教団とは理念や手段が異なるだけで、最終的に世界の平和を目指していることはこれまでの作品でも語られている。シェイの離反や騎士団への協力といった流れも、それなりに納得のいくものになっており、騎士団側にもちゃんと正義や仲間との絆があることが描かれるのも新鮮である。 --しかしそれでも、最初は仮にも仲間だった者たちを次々に手に掛けていくのは辛く、心が痛くもなってくる。こちらにも理由があるとはいえ、当然アサシンからは裏切り者と罵られ、恨みの言葉やこちらを否定する言葉を残して息絶えていく。 #region(さらなる衝撃) --本作から登場するアサシンのみならず、なんと『IV』では主人公の副官として活躍し、『自由の叫び』では主人公まで努めたアドウェールすらも、中盤で始末することになる。『IV』をプレイした者なら、ここばかりはさすがに驚き、戸惑ったのではないだろうか。 ---もっともシェイにとってはそんなことは関係ない話ではある。それに海外のゲームでは、過去のシリーズ作品でメインキャラや主人公だったキャラですら、敵対させたりあっさり死なせたりすることが結構ある。 --『III』をプレイした者なら、アドウェールが登場しないので、死なせるのもしょうがないとも思える。しかしこれも仕方ない話だが、『III』にも登場していたアキレスは、どうせ死なないのだろうとわかってプレイすることになる。 #endregion -潜んだ敵の面倒さ --本作の特徴と言える潜んだ敵だが、不意打ちされると瀕死のダメージを受けるため、無視して行ける場合はそれでもいいが、そうもいかない場合面倒でも戦うしかない。 --ただ、一撃死であったら間違いなく理不尽に感じるだろうし、そう思わせない範囲で、危機感も持たせるギリギリの調整だとも言える。 -いずれも厄介なアサシン戦 --本作では途中から次々にアサシンと戦うことになるが、そのどれもが厄介な相手ばかりである。確かにハイライトと言えるボス戦であり、アサシンが弱ければそれはそれで納得いかないであろう。しかしそうは言っても、ついていくのがやっとなほどの速さで駆け回り、攻撃は入らずダメージは多大であったり、多くの戦いで面倒な仕掛けやギミックがある。 --主人公はもうアサシンでないとはいえ、最初から追いかけっこのような展開になったり、正面からの戦いになることが多く、アサシンらしく密かに接近して不意打ちで仕留める、といった戦いはできない。 --挙げ句にそこで提示されるサブ目標が、どれもさらに厄介な縛りを加えるものばかりである。これはやらなくてもいいとはいえ、さらに面倒になるのは確かである。アサシン戦はハイライト故にミッションも長めで、やり直すにしても面倒である。 -マルチプレイが無い --本作には前述のようにマルチプレイが搭載されていない。本作の舞台でプレイできないのは残念に思う人もいるだろうが、元々マルチプレイに興味のない人には問題とは言えない。 ---同時発売された『UNITY』にはより進んだマルチプレイが搭載されており、そちらの方に注力したのかもしれない。 ---- **問題点 -漂うマンネリ、使い回し、繋ぎ感 --本作は前述のように、『UNITY』と同時期に発売され、『IV』のシステムを引き継ぎつつ、これまでのシリーズの様々な要素をかき集めた内容になっている。それ自体は悪いことだけでもないが、さすがにもうマンネリは隠せない。次世代機の登場から短いため、完全な次世代機向けに『UNITY』、旧世代機でもプレイできる作品として、これまでの資産を生かしてもう一作作ったようにも思える。『UNITY』との関連要素にしても、システムが一新され進化したマルチプレイの搭載された『UNITY』の方が本命で、本作はそのプロモーションや繋ぎのようにも感じられる。 -ストーリーの短さ --本作は他のシリーズ作品と比べても、明らかにストーリーが短い。豊富なサイドミッションをこなしていれば気づきにくいが、単純にシークエンス数で比べれば『IV』の半分程度しかない。 ---一応ストーリー自体は本作でまとめられており、極端に短いとか描写不足というわけでもない。 ---とはいえ、話を理解するうえで最小限の描写しかなく、全編を通してダイジェスト気味である。例えばシェイが騎士団の幹部達の正体を知り、入団し、打ち解けていく過程などはバッサリ省略されており、章が進むといつの間にか事態が進展している、の繰り返しである。ミッションもシェイの人生で重要な部分だけを抜粋したといった感じで、従来のような細かく丁寧な過程の描写を期待するとガッカリする。 -どんどんおざなりになる現代編 --本シリーズは、「遺伝子記憶」やそれを読み取り追体験させる「アニムス」といった独自の設定を活かし、現代と記憶の2つの舞台を行き来する独特の展開が特徴である。現代編は『III』で一旦決着し、本作は『IV』で一新された舞台を引き継いでいる。 --しかし『IV』からの現代編は、主人公が外見や素性がほとんどわからない人物であり、さらに一般社員とあまり変わらない立場であり、よくわからないまま事件に巻き込まれている、というような内容であった。本作はその続きといったものでもあるのだが、最初からまたよくわからない新キャラが登場し、実質本編と言える記憶編の合間に、少し作業を行うのを繰り返すだけと、さらに味気ない内容になっている。ストーリーを進め新事実が明らかになる度に、新キャラ達が驚き興奮する様子が描かれるが、まるで主人公そっちのけで、自分達だけで勝手に盛り上がっているように感じられる。 --その新キャラ達にしても、単に進めるだけでは何か只者ではない雰囲気を感じるだけで、各所のパソコンから手に入る音声データで少しずつ素性が明かされていく。むしろそうやって情報を補完していくのが、現代編のメインとすら思えてくる。 --また、現代編で指示された場所になかなか行かないと、「~に行ってって言わなかった?」などと急かされるのだが、それでも行かないとどんどん口調がきつくなり、最後は強烈な皮肉や罵倒と言っていいものになる。元々そういうキャラであって、次に行く場所を忘れないような配慮とも取れ、実際そういう台詞が出てくる頃には相当寄り道しているのも確かだろうが、もう少し落ち着いて探索させてくれとも言いたくなる。 --現代編は単調な内容の繰り返しなのだが、最後は最後でまた唐突な展開を迎える。 ---- **総評 かつての敵に加わり、かつての仲間たちを手にかけてゆくという、アサシンクリードシリーズの中でも最も闇深い作品であり、旧世代ハードの集大成にして、新世代への橋渡しでもあり、様々な意味で特別な作品である。 一方で、やはりマンネリが出てきているのも確かで、繋ぎとして作られた感も否めない。しかしケンウェイサーガを繋ぐ物語でもあり、一つのゲームとしてはさすがに洗練されてまとまっており、十分良作としてプレイする価値はある。 ---- **余談 -本シリーズのパッケージは、主人公中心のシンプルな構図ながら、作品の内容や雰囲気を端的に表したものになっていたが、今作においては手前で対峙した人物の手からアサシンブレードが見えるという、実に本作を表したものになっている。 -ロード画面等で毎回現れる水滴のようなアサシンのシンボルも、作品によって独自のデザインになっているが、本作ではひび割れたようになっており、やはり本作の内容を表している。さらにオープニング画面では、アサシンのシンボルが割れてテンプル騎士団の十字になるといった演出もある。
*ASSASSIN'S CREED ROGUE 【あさしん くりーど ろーぐ】 |ジャンル|アクションアドベンチャー|~|~| |対応機種|プレイステーション3&br()Xbox360((海外のみ。国内では未発売))&br()Microsoft Windows&br()プレイステーション4&br()XboxOne|~|~| |発売元|ユービーアイソフト|~|~| |開発元|ユービーアイソフトソフィアスタジオ|~|~| |発売日|【PS3】2014年12月11日&br()【Win】2015年3月10日&br()【PS4/One】2018年3月22日|~|~| |定価|【PS3】7,992円(税込)&br()【Win】2,592円(Steam版定価・税込)&br()【PS4/One】4,298円(税込)|~|~| |レーティング|BGCOLOR(crimson):''&font(#ffffff){CERO:Z(18才以上対象)}''|~|~| |判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~|~| |ポイント|アサシンハンター誕生&br()初のテンプル騎士団側主人公&br()旧世代機の集大成&br()『UNITY』への繋ぎ?|~|~| |>|>|>|CENTER:''[[ASSASSIN'S CREEDシリーズリンク>ASSASSIN'S CREEDシリーズ]]''| ---- #contents(fromhere) ---- **概要 『[[ASSASSIN'S CREED IV BLACK FLAG]](以下『IV』)』に続いて据え置き機で発売された作品。北米では『[[ASSASSIN'S CREED UNITY]](以下『UNITY』)』と同時発売されており、本作との関連要素もある。完全に次世代機向けに開発され、ゲームエンジンも更新された『UNITY』に比べ、本作は旧世代機向けに発売され、エンジンも以前の「Anvil Next」のままとなっている。 2018年3月22日には、PS4/Xbox One向けにリマスター版が発売された。デラックス・エディションに収録されていた追加コンテンツは全て含まれており、新衣装として、最新作『ASSASSIN'S CREED ORIGINS』の主人公・バエクの衣装が追加されている。 本作の舞台は『[[ASSASSIN'S CREED III]](以下『III』)』の少し前((『III』も大きく分けて2つの時代があるが、その最も古い時代を基準にした場合。))、フレンチ・インディアン戦争((オーストリア継承戦争の後、ヨーロッパ列強がほぼ参加した世界規模の戦争「七年戦争」の内、北アメリカで行われた戦いに使われている呼称。実際は国や解釈によって様々な呼び方があり、七年戦争自体も解釈によっては7年間続いたわけでもない。))さなかの北大西洋岸となっている。そのため『III』の前日譚といった一面もあり、同作で舞台となった場所や登場人物も多く登場する。さらに『IV』(および『自由の叫び』)の人物も登場しており、両作を繋げる作品ともなっている。 本作の特徴は、なんといっても主人公がアサシン教団を裏切り、これまで一貫して主人公の敵側だった、テンプル騎士団につくという点である((一応これまでのシリーズ作品でも、一時的にアサシンと敵対したり、騎士団と協力するといった展開はあった。))。本作は、『III』より続いた「ケンウェイ・サーガ」の最終章とも言える作品であるが、本作の主人公はケンウェイ一族ではなく、新キャラの「シェイ・パトリック・コーマック」となっている。ただ、『III』で重要人物だった「ヘイザム・ケンウェイ」が、今作でも中心人物として登場する。 現代編の舞台は『IV』を引き継いだものになっており、引き続き登場する人物もいる一方、新たな人物も登場する。 ---- **ストーリー アブスターゴ・エンターテインメント社はあるトラブルに見舞われ、一時的に業務を停止していた。どうやら、アニムス内で「シェイ・コーマック」なる人物のファイルに接触したことが原因らしい。現代編主人公はトラブル解決に駆り出され、その過程でシェイの数奇な人生を追体験することになる。 1750年代始め、シェイ・パトリック・コーマックはアサシン教団の一員として、北アメリカ植民地で修行と戦いの日々を送っていた。ある日、ダベンポート・ホームステッドの導師アキレスのもとに、伝説的アサシンのアドウェールが訪ねてくる。彼によると、地震により大きな被害を受け、そしてそれに乗じて「秘宝」のありかを示す手稿と箱が、テンプル騎士団に奪われたという。アキレスは手稿と箱の奪還を直ちに指示し、シェイもその任務に加わることとなった。 奪還のための任務は確実に進んでいたものの、その過程で明らかな弱者まで手に掛けていくことにシェイは疑問を持ち始める。仲間からは「それは正しく、必要なことだった」と言われるが、なお気は晴れなかった。探索の末ついに手稿と箱の奪還に成功し、秘宝の在り処も探り当てるシェイ達だったが、その後ついにシェイの人生を大きく変える出来事が発生する。 ---- **ゲーム内容 -本作もこれまでと同じく、ミッションを請けて暗殺を行い進めていくといった形だが、『IV』と同じく海上で船を襲い略奪を行うといった行為も可能となっている。ただし本作では主人公らは海賊ではないため、敵対勢力に対する通商破壊的な行動と言えるものとなる。本作では大きく「北大西洋」、「リヴァーヴァレー」、「ニューヨーク」の3つのマップがある。 -本作でも主人公は二刀流だが、『IV』とは異なり右手に剣、左手にダガーといったスタイルになっている。ピストルは持ち歩けるのは2挺までとなった。 -本作では、前述の通り主人公が途中でアサシン教団からテンプル騎士団に寝返るのだが、それによる操作の変化といった事は特にない。ただ、アサシンと騎士団はそれぞれ異なる国と協力関係にあり((基本的にアサシン教団はフランスと、テンプル騎士団はイギリスと協力関係にある。))、立場が変わることで友好と敵対関係が入れ替わるといったことが起こる。 -本作のシステムは基本的に『IV』のものをほぼ引き継いでおり、以降では主に変更点を記述する。 ***追加・変更点 -新武器として「エアライフル」と「グレネードランチャー」が登場。 --エアライフルは、一見普通の銃だが発砲音がしない。弾は各種ダートを使用し、つまりはこれまでも登場した「吹き矢」の発展系と言えるものである。一時的に眠らせる「スリープダート」と発狂して周囲に襲いかかる「バーサークダート」は同じだが、新たに「爆竹ダート」が登場し((単なる「爆竹」なら『自由の叫び』にも登場しているが、そこでは道具の一種だった。))、誘き出しや火薬の爆破に活用できる。 --グレネードランチャーは、爆発する榴弾(グレネード)を射出する。「スリープ」と「バーサーク」はダートの範囲攻撃版といったものだが、単純に爆発して攻撃する「榴散」も存在し、扉などを吹き飛ばし道を開いたりもできる。 -今作でも『IV』と同じく武器ホイールが無く、十字キーで武器と道具を選ぶという方式になっているが((正確には、かつてのように一時的に画面が停止し、左右スティックで選ぶといったものが無くなった。作中では十字キーで選ぶものにも、一応「武器ホイール」という言葉が使われている。))、『IV』では上下で武器、左右で道具という方式だったのに対し、今作では左方向が武器、右方向が道具となった。上方向はエアライフルのダート、下方向にはグレネード弾が充てられている。 -潜んだ敵との戦い --作中では主人公が身を隠せる場所などに敵が潜んでいることがあり、彼らはタカの眼でも見えない上に、近づくと不意打ちされて瀕死になるほどのダメージを受ける。 --ただし対抗策はある。潜んだ敵の近くでは囁き声のようなものが聞こえ、画面端に霞がかかったようなエフェクトがかかり、敵の存在を知らせる。その状態でタカの眼を使うと、主人公を中心にドーナツ状の「デンジャーコンパス」が出現し、敵の方向を光って知らせる((シリーズ経験者なら気づいた人も多いだろうが、これは以前の本シリーズでのオンラインプレイのシステムを流用したものと言える。))。敵に近づくと光の幅が広がり、全周を覆う状態になると敵を探り出すことができるようになり、逆に誘き出したり不意打ちが行える。 -船関連 --本作では序盤から船を入手し利用することができるが、南のカリブ海が舞台だった『IV』と異なり、一転して氷山が浮かぶような寒々とした北大西洋が舞台となる。「砕氷衝角」を装着することで海上の氷を砕きながら進めるようになる。さらに浮かぶ氷山も単なる背景ではなく砲撃することで破壊でき、崩壊の衝撃を周囲に伝え、小型船程度なら沈められる。 --船の武装は基本的には同じだが、時代の変化などもあってか変化したものもある。 ---前方を向いた際の「連鎖弾」が「カロネード砲」に変わっているが、速度を落とすという効果自体は特に変化がない。 ---後方を向いた際の「樽爆弾」が「燃える油」になり、文字通り海上に燃えながら漂い、接触した船を燃やしてダメージを与える。 ---新たな兵器として「パックルガン((リボルバーのような弾倉を持つ砲で、「ジェイムズ・パックル(James Puckle)」という人物が開発したことに由来する。ベルトなどのバックル(buckle)ではないので注意。余談だが、ベルトのバックルに弾丸を仕込んだ「バックルガン」などと呼ばれる武器も実際に開発されており、知っていると余計混乱しやすい。))」が登場し、これは以前の「旋回砲」の位置にあるものだが、使用感は大分異なる。初使用時にはボタンの変更よりその連射速度に戸惑うだろう。ある程度自動でロックしつつ自由にも撃てるという、『III』と『IV』の中間のような性能となっている。乗り込み時にも使用できるが、今作では乗り込みが始まっても撃ち続けることができ、さらにかなり仰角がとれるため、マストの上にいる敵を直接撃ち落としたりもできる。 --「真後ろを向く」ボタンが追加された。これはかつての旋回砲のボタンで、旋回砲にあたるパックルガンは望遠鏡だったボタンに、望遠鏡は十字キーの上にそれぞれボタンが変更されている。 -今作でも敵船への乗り込みが行えるが、逆に敵の方からも乗り込んでくるようになった。敵船が突っ込んできた後に、煙幕がたかれたようになって一時的に行動不能になり、その後自船上で戦闘が始まる。ただその後は敵船にも移れるなど、乗り込んだ時とほぼ同じ展開となる。 -各地のギャングの拠点に侵入すると、「ボスを倒す」、「旗を燃やす」などの条件が提示され、全て達成すると拠点を乗っ取ることができ、収入がアップする。 -本作には「アサシンの迎撃」といったものがある。これは各地のハトから暗殺の指令を手に入れ、先に見つけた標的を殺されないように、逆にアサシン達を見つけ出して倒していくといったものである。早いうちに倒すとボーナスがある。 -今作にも「交易艦隊」が存在し、基本的には『IV』と同じだが、進めるに従い七年戦争の進行具合も連動して語られる。戦闘場面がスキップできるようになったほか、修理などで「宝石」といった独自のものを消費していたのが、普通の金を使うようになった。 -海の砦との戦いは今作にもあるが、最後に司令官を倒す必要が無くなっている((もっとも、『IV』では司令官のいる部屋に行けるようになった時点で敵は降伏し、司令官も無抵抗でほぼ意味が無かったので、こうなるのも妥当と言える。))。 -本作にも銛漁があり基本的には同じだが、地域上獲物に「イッカク((鯨類の一種だが、頭部から歯が角のように長く伸びている独特の姿を持つ。))」が加わり、さらに海上に氷が浮かんでおり、引き回されている場面でぶつかるため、ボートに捕まり衝撃に耐える必要がある。 -冷たい水に浸かっていると寒さでダメージを受け続けるようになった((水に飛び込んだ際も、「船長が冷たい海に!」などと船員の声が変化する。))。 -『IV』の「伝説の船」ではないが、「伝説の戦い」という高難度のミッションがある。 -口笛を吹いた際に、音の広がりが視覚的に表示されるようになった。 -本作にはオンラインプレイは存在しない。 ***復活した要素 -『IV』での1つの大きなマップから3つのマップに分割され、この点は『III』に近い。 -一定時間ごとに収入があり、一杯になる前に回収するという、エツィオサーガにあったようなシステムが加わった。各地にある建物を「改築」という形で修復し、その度に収入も増えていくというのも共通している。 ---- **評価点 -旧ハード一つの集大成 --完全に次世代機向けの『UNITY』に対し、実質旧ハードで発売された最後とも言える本作は、これまでのシリーズの様々なシステムやミッションを集めた、正に集大成と言える内容となっている。このあたりは「単調」と批判された1作目と比べ隔世の感がある。 -より便利・快適になった内容 --船関連 ---『IV』では後ろを向くのに少し時間がかかったため、樽爆弾を使うのが少し面倒だった。今作では即向ける用になったことで、後方確認もしやすくなった。望遠鏡が十字キーの上になったのは、操船しながらの使用がやや難しくなったが、そこまで大きな問題でもない。 ---燃える油も、性質上樽爆弾に比べ小分けにして使用できることで、より柔軟に活用できる。 ---パックルガンも、旋回砲に比べより自由に使えるようになり、慣れればほぼ上位互換の武装と言っていい。 --各地の小島などではすぐ船に戻れるボートがより多くなり、本作では結構船を置いて歩き回れるが、船を呼ぶ鐘なども各地に存在する。交易艦隊の戦闘の早送りや、普通の金が使えるようになったのは、最初からこれでよかったとも思える改善である。 -キャラとストーリー --『III』と『IV』をプレイした者にとっては、それらに登場したキャラや場所が再登場するのは、やはり嬉しくもある。しかも時代の違いにより、それらの作品に登場した時とはまた違った姿を見られるのも興味深い。 --『III』につながる流れや、アサシンを裏切り騎士団に加わる主人公といった展開も、そこまで無理無くうまく描かれている。 -以前よりは多彩になったロケーション --時代や地域的に、歴史ある巨大建造物が無いというのはもう仕方がないだろうが、『III』や『IV』に比べればかなり多彩にはなっている。氷山の浮かぶ寒々とした北大西洋に、山や川といった自然あふれるリヴァーヴァレー、『III』とはまた違ったニューヨークなど、それぞれに違った特色があり、さらに季節による変化もある。マップが広いようで上陸できる場所は少なく、自由に移動できる場所が点在している感じだった『IV』に比べると、かなり広い範囲を移動できるようにもなっている。 -シリーズおなじみの収集要素だが、本作は特に充実したものになっている。 --定番のアニムスの断片は、今作では集めていくと何者かのメッセージが徐々に増えていく。 --断片に似ているが色の違う「プロスペリティー」といったものもあり、集めていくと入手できる色々な物にボーナスが加わる。 --各地の先住民の柱は、たどり着くまでも少し手間がかかるが、柱のパズルを解くことで「先住民のトーテム」が手に入り、ある場所で装備品が開放される。他にも「テンプル騎士の秘宝」や「バイキングの剣」といった物も、集めると装備品が開放される。 --各地にある「洞窟画」は、タカの眼で見るとまた違った絵が浮かび上がり、ある者たちの物語を描いたものになっている。 --各地で「戦時の手紙」が入手できる。これは何らかの理由で届かなかった手紙で、大抵はアサシンかテンプル騎士の連絡や報告といったものである。その中には、本シリーズの近い時代に登場していた人物も多く、ゲーム本編で語られなかった話など、ストーリーを補完するような内容のものも多い。 --現代編でも、放置されたコミュニケーターやパソコンから様々な情報が収集できる。音声データは、本作の現代編登場人物の過去が語られ、本編内容を補完するものとなる。 ---- **賛否両論点 -ほとんど『IV』そのままのシステム --前述の通り、本作は『IV』のシステムの多くを引き継いでいる。しかし、引き継ぐというかほとんどそのままで、メニューのグラフィックまでそっくりである。今から本作をプレイする場合、『IV』と続けてやる人も多いかもしれないが、その場合さらによく分かることだろう。 ---一応少しは変化している部分もあり、改良されてもいるのだが、逆にそれが使い回し感を強調させたり、プレイに混乱をもたらす一面もある。特に武器と道具の配置の変化は、『IV』の感覚に慣れていると混乱しやすい。 --似ているということは同じ感覚でプレイできるということでもあり、『IV』自体は十分良作と言っていい作品で、システム自体に大きな問題も無く、それ自体が悪いわけではない。変えたら変えたで文句が出るはずで、これは多くの続編が出ているゲームに共通するジレンマとも言える。 --海賊を題材とした前作のシステムを丸ごと使いまわしたがゆえに、宝箱の開け方が主人公のキャラに合っていない、海賊行為が不自然、そもそも海が主体である必要性が薄いストーリーといった不整合も生じている。 -アサシンハンターの悲哀 --前述した通り、本作の主人公シェイはアサシン教団を抜け、これまでのシリーズでは敵側だったテンプル騎士団に加わり、「アサシンハンター」としてアサシン達を始末してゆくことになる。これは本作最大の特徴でもありウリと言っていい点だが、やはり釈然としない人も多いかもしれない。 --テンプル騎士団自体は悪というわけでもなく((ただしかなり悪役的、というか完全な悪人が多かったのも確かだが。))、あくまでアサシン教団とは理念や手段が異なるだけで、最終的に世界の平和を目指していることはこれまでの作品でも語られている。シェイの離反や騎士団への協力といった流れも、それなりに納得のいくものになっており、騎士団側にもちゃんと正義や仲間との絆があることが描かれるのも新鮮である。 --しかしそれでも、最初は仮にも仲間だった者たちを次々に手に掛けていくのは辛く、心が痛くもなってくる。こちらにも理由があるとはいえ、当然アサシンからは裏切り者と罵られ、恨みの言葉やこちらを否定する言葉を残して息絶えていく。 #region(さらなる衝撃) --本作から登場するアサシンのみならず、なんと『IV』では主人公の副官として活躍し、『自由の叫び』では主人公まで努めたアドウェールすらも、中盤で始末することになる。『IV』をプレイした者なら、ここばかりはさすがに驚き、戸惑ったのではないだろうか。 ---もっともシェイにとってはそんなことは関係ない話ではある。それに海外のゲームでは、過去のシリーズ作品でメインキャラや主人公だったキャラですら、敵対させたりあっさり死なせたりすることが結構ある。 --『III』をプレイした者なら、アドウェールが登場しないので、死なせるのもしょうがないとも思える。しかしこれも仕方ない話だが、『III』にも登場していたアキレスは、どうせ死なないのだろうとわかってプレイすることになる。 #endregion -潜んだ敵の面倒さ --本作の特徴と言える潜んだ敵だが、不意打ちされると瀕死のダメージを受けるため、無視して行ける場合はそれでもいいが、そうもいかない場合面倒でも戦うしかない。 --ただ、一撃死であったら間違いなく理不尽に感じるだろうし、そう思わせない範囲で、危機感も持たせるギリギリの調整だとも言える。 -いずれも厄介なアサシン戦 --本作では途中から次々にアサシンと戦うことになるが、そのどれもが厄介な相手ばかりである。確かにハイライトと言えるボス戦であり、アサシンが弱ければそれはそれで納得いかないであろう。しかしそうは言っても、ついていくのがやっとなほどの速さで駆け回り、攻撃は入らずダメージは多大であったり、多くの戦いで面倒な仕掛けやギミックがある。 --主人公はもうアサシンでないとはいえ、最初から追いかけっこのような展開になったり、正面からの戦いになることが多く、アサシンらしく密かに接近して不意打ちで仕留める、といった戦いはできない。 --挙げ句にそこで提示されるサブ目標が、どれもさらに厄介な縛りを加えるものばかりである。これはやらなくてもいいとはいえ、さらに面倒になるのは確かである。アサシン戦はハイライト故にミッションも長めで、やり直すにしても面倒である。 -マルチプレイが無い --本作には前述のようにマルチプレイが搭載されていない。本作の舞台でプレイできないのは残念に思う人もいるだろうが、元々マルチプレイに興味のない人には問題とは言えない。 ---同時発売された『UNITY』にはより進んだマルチプレイが搭載されており、そちらの方に注力したのかもしれない。 ---- **問題点 -漂うマンネリ、使い回し、繋ぎ感 --本作は前述のように、『UNITY』と同時期に発売され、『IV』のシステムを引き継ぎつつ、これまでのシリーズの様々な要素をかき集めた内容になっている。それ自体は悪いことだけでもないが、さすがにもうマンネリは隠せない。次世代機の登場から短いため、完全な次世代機向けに『UNITY』、旧世代機でもプレイできる作品として、これまでの資産を生かしてもう一作作ったようにも思える。『UNITY』との関連要素にしても、システムが一新され進化したマルチプレイの搭載された『UNITY』の方が本命で、本作はそのプロモーションや繋ぎのようにも感じられる。 -ストーリーの短さ --本作は他のシリーズ作品と比べても、明らかにストーリーが短い。豊富なサイドミッションをこなしていれば気づきにくいが、単純にシークエンス数で比べれば『IV』の半分程度しかない。 ---一応ストーリー自体は本作でまとめられており、極端に短いとか描写不足というわけでもない。 ---従来のような丁寧な追体験ではなく、シェイの人生の重要な部分だけをピックアップしたダイジェスト進行になっている(現代編の人物曰く『データが断片化している』)。 ---例えば、シェイが騎士団の幹部達と正体を知らぬまま出会ってから、入団するまでの過程が省略。入団後のストーリーは教団幹部の暗殺と秘宝の捜索に関わる部分のみが抽出され、騎士団ならではのミッションも少なくテンプル騎士団として活動している実感がやや薄い。 -どんどんおざなりになる現代編 --本シリーズは、「遺伝子記憶」やそれを読み取り追体験させる「アニムス」といった独自の設定を活かし、現代と記憶の2つの舞台を行き来する独特の展開が特徴である。現代編は『III』で一旦決着し、本作は『IV』で一新された舞台を引き継いでいる。 --しかし『IV』からの現代編は、主人公が外見や素性がほとんどわからない人物であり、さらに一般社員とあまり変わらない立場であり、よくわからないまま事件に巻き込まれている、というような内容であった。本作はその続きといったものでもあるのだが、最初からまたよくわからない新キャラが登場し、実質本編と言える記憶編の合間に、少し作業を行うのを繰り返すだけと、さらに味気ない内容になっている。ストーリーを進め新事実が明らかになる度に、新キャラ達が驚き興奮する様子が描かれるが、まるで主人公そっちのけで、自分達だけで勝手に盛り上がっているように感じられる。 --その新キャラ達にしても、単に進めるだけでは何か只者ではない雰囲気を感じるだけで、各所のパソコンから手に入る音声データで少しずつ素性が明かされていく。むしろそうやって情報を補完していくのが、現代編のメインとすら思えてくる。 --また、現代編で指示された場所になかなか行かないと、「~に行ってって言わなかった?」などと急かされるのだが、それでも行かないとどんどん口調がきつくなり、最後は強烈な皮肉や罵倒と言っていいものになる。元々そういうキャラであって、次に行く場所を忘れないような配慮とも取れ、実際そういう台詞が出てくる頃には相当寄り道しているのも確かだろうが、もう少し落ち着いて探索させてくれとも言いたくなる。 --現代編は単調な内容の繰り返しなのだが、最後は最後でまた唐突な展開を迎える。 ---- **総評 かつての敵に加わり、かつての仲間たちを手にかけてゆくという、アサシンクリードシリーズの中でも最も闇深い作品であり、旧世代ハードの集大成にして、新世代への橋渡しでもあり、様々な意味で特別な作品である。 一方で、やはりマンネリが出てきているのも確かで、繋ぎとして作られた感も否めない。しかしケンウェイサーガを繋ぐ物語でもあり、一つのゲームとしてはさすがに洗練されてまとまっており、十分良作としてプレイする価値はある。 ---- **余談 -本シリーズのパッケージは、主人公中心のシンプルな構図ながら、作品の内容や雰囲気を端的に表したものになっていたが、今作においては手前で対峙した人物の手からアサシンブレードが見えるという、実に本作を表したものになっている。 -ロード画面等で毎回現れる水滴のようなアサシンのシンボルも、作品によって独自のデザインになっているが、本作ではひび割れたようになっており、やはり本作の内容を表している。さらにオープニング画面では、アサシンのシンボルが割れてテンプル騎士団の十字になるといった演出もある。

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