【えるしゃだい あせんしょん おぶ ざ めたとろん】
遥か昔、天使は人間を羨んだ。
「話をしよう。あれは今から36万……いや、1万4千年前だったか……」
ヒトという種が始まった頃。
神はこの未熟な生き物の進む先を案じ、グリゴリ天使団に地上界の監視を命じた。
グリゴリの天使たちは長い間地上界を観察し続けるうち、ヒトに対する憧れを強めていった。そしてついに神の手を離れ堕天という禁忌を犯す。
これに激怒した天使たちの議会であるエルダー評議会は、大洪水で地上界を一掃する計画を決定する。
しかし、ヒトでありながら生きたまま天に召し上げられ、書記官を務めていた青年イーノックはこれに反対、評議会と神に計画の中止を懇願した。
これを受けた評議会はイーノックに対し、「堕天使7人を捕縛し、罪を償わせれば計画を中止する」と告げる。かくしてイーノックは地上界へと旅立つこととなった。
聖書偽典「エノク書」をモチーフとしたストーリーの元に展開される3Dアクションゲーム。
タイトルの『エルシャダイ』とは「全能の神」を意味するヘブライ語であり、副題の『アセンション オブ ザ メタトロン』は「メタトロンの昇天」を意味する。
プレイヤーは天界から遣わされた人間「イーノック」を操作し、大天使「ルシフェル」たちのサポートを受けつつ、堕天使たちが支配する「タワー」を攻略。
堕天使のもたらす天界の知恵によって過剰な進化を遂げる人間と、堕天使と人間のハーフであり災害をもたらしうる「ネフィリム」を、堕天使の捕縛によって救済するために戦う。
アクション部分はPVで示された通り、攻撃されるごとに破壊されていく防具に気を配りつつ、相手の武器を上手く奪い、汚れが溜まったら浄化し、バトルを優位に進めていくものとなっている。
発売前に公開されたPVがインターネットミームになり(詳細は余談を参照)、それとは別にディレクターの竹安佐和記氏を始め『大神』や『デビルメイクライ』の開発に関わったスタッフが制作の中心となっている点でも期待は高かった。
+ | 神の武器の詳細 |
+ | 長いので格納だ 開いてみるといい |
操作性
ゲームバランス
グラフィック
バグの少なさ
音楽・サウンド関連
設定・ストーリーの評価点
カメラワーク
ゲームの流れ
ストーリー
+ | 曖昧なゲーム中説明の一例(ネタバレ) |
+ | 終盤戦の内容(ネタバレ) |
内容のボリューム
カメラ周りの不便さやシナリオの説明不足など問題は多く見られるが、アクションゲームとしての体裁は整っており、グラフィックをはじめとする演出面など、ちゃんと評価できる部分もある作品。
しかしながら発売前のプロモーションから重厚なストーリーやゲームボリュームを期待する層が多く、典型的なガッカリゲーとして評価されることになってしまった。
当時「つまらなくはないが、値段相応でもない」という意見も多く、本作がゲームとしてある程度の質を有していることを示しているとも言えよう。
数々の事情から詰め切れなかった部分があるとされ、後年になるにつれてその要素が表明されたことで「それがゲームに入っていれば…」という声も多数生み出すことになってしまった、色々な意味で「惜しい」ゲームであると言える。
少なくともPVの盛り上がりが無ければ「普通のゲーム」で流されていたであろう質であり、発売前にあまりにも盛り上がり過ぎたことで期待値だけがやたらに高かったことが本作の不幸…かもしれない。
+ | 堕天使・アルマロス戦BGM「予感」 |
+ | 公式PV |
【えるしゃだい あせんしょん おぶ ざ めたとろん えいちでぃー りますたー】
ジャンル | 3Dアクション |
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対応機種 | Windows 10(Steam) | |
発売元 |
クリム Gamera Game(中国語版) |
|
開発元 | クリム | |
発売日 | 2021年9月2日 | |
定価 | 3,980円(税込) | |
プレイ人数 | 1人 | |
レーティング | CERO:B(12才以上対象) | |
コンテンツアイコン | 暴力、セクシャル | |
備考 | 2021年10月28日以前はオリジナル作品と同タイトル | |
判定 | なし | |
ポイント |
まさかの再販&HDリマスター 完全版実現のための実質的なクラウドファンディング 追加要素はないがクリア後特典小説でストーリー補完 現代にも見劣りしないグラフィック 現在のプレイヤー層には合っているとの評も |
360版をベースにしたほぼベタ移植。720pの30fpsだったPS3/360版に対し、本作は最低環境でも1080p60fpsで動作するほど最適化された。
他にも英語音声の追加や、フランス語・イタリア語・ドイツ語・スペイン語字幕にも追加対応、最大4K解像度/60fps/MSAA 8x(*29)に対応している。
またアートブックとサウンドトラックが追加された「デラックスパック」も同時に配信された(通常版と別個に購入も可能)。
なお、グラフィック関連設定はゲーム中ではなく、ゲームの起動前のランチャーから設定画面を起動させ、そこで設定後にゲームが起動すると設定内容が反映される仕様。
1周クリアすると、クリア特典としてランチャーから小説セタ記Steam版(*30)のPDFファイルがダウンロードできる。
これによりゲームを購入するだけで物語を結末まで楽しむことができるようになった。
リマスター化されたグラフィック
最適化による処理落ちの改善
その他
ファンにとっては待望とも言える作品であり、完全版エルシャダイ開発に向けての挑戦でもある本作。
PS3でも評価されたグラフィック面は非常に高いクオリティでアップグレードされており、ストレスが大幅に緩和されたプレイ環境も充分評価できる。
Steamということもあって発売当初を始めしばしばセールも打たれており、値崩れしているオリジナル版に少し足せばリマスター版が手に入るというのはなかなかの旨味。
しかしあくまで凡ゲーのベタ移植と言われればそれまでであり、一切追加要素がないのは製作環境の事情があるとはいえ非常に残念なところ。
元よりそれに向けた作品であるため、本作品のファンであれば実際損する要素はほとんどないため、気軽に購入してもいいだろう。
*1 一度押した後、少し遅らせてからもう一度押す。
*2 一周クリアすればゲージ表示ありへの変更も可能になる。
*3 おそらく「3種の神器」を意識して3種類にしたと思われる。
*4 ヨーグルトなどを食べるのに使う紙スプーンが変形のイメージとして載せられていた。
*5 小説では戦闘の順番が異なり、この台詞もちゃんとある。
*6 ベリアルとは別人で、声が違う他、ゲーム中の字幕ではベリアルの台詞がカタカナ表記で闇の声は通常の表記と分けられている。
*7 ノーマル以下では使わない技を使う、敵がこちらの不利になる武器を持って出現するなど。
*8 ちなみに、この2名の声優は兄弟という設定とは裏腹に実年齢は湯口氏の方がずっと上で親子程の差がある。
*9 一例を挙げるとイーノックが降りるときに使われる「ミカエルの右手」が地面に降りた時、地面にスタンプのように神の預言が押されるという設定があるのだが、ゲーム中では解読不能な文章となっている。これについては後述のミカエルブログで意図的な設定である旨が説明された。
*10 OPデモにおいて大量の文字が表示される場面で考察プレイヤーが解読したところ、PVのルシフェルの台詞の後は『ドラえもん』や『Dr.スランプアラレちゃん』などのアニメOP歌詞などで埋め尽くされていたことが判明し、多くの考察班を落胆させている。
*11 100年経過時に100年前にできた7つの湖=堕天使激突のクレーターの発見から堕天使の場所は近いと推測したのに発見はそれからさらに265年後となり、タワーから来た男がイーノックと出会ってからさらに100年以上発見に時間がかかっている。
*12 ここまで来る時間と合わせて大体上記の時間である。
*13 「予感」の0:41からと「訓練」の1:24からが特に似ているとのこと。
*14 セムヤザ率いる堕天使を捕縛するため、神の命によりイーノックが旅立つ。
*15 国内のCGアニメーション映画の制作会社として有名な企業で、ゲーム作品においても多数の映像を提供しているが、その質には賛否が分かれることも多い。
*16 実際「この役がなかったら廃業していたかもしれない」と語るほどだった。
*17 当時の声優としての代表的な活躍は国語教材の『山月記』朗読で、テレビアニメや吹き替えでの出演は非常に少なく、主にラジオのナレーションが声優業の主軸だった。
*18 実際、竹安氏も「強制退職となるスタッフの再就職先の斡旋までやらなければいけなくなった」旨を語っている。
*19 開発用のサーバーも停止しているのでゲームデータを見ることすらできないという状況下だった。
*20 ただし、IGNの5点(10点満点中)など厳しい評価のレビューも見られる。
*21 『ひぐらしのなく頃に』主題歌、音楽ゲームでは『beatmania IIDX』の「泰東ノ翠霞」などを作曲したアーティスト。
*22 ただし、類似しているのはあくまでも外見だけで、分かりにくい言葉にした下ネタをよく口にするなど中身は全くの別物であるが。
*23 ガーレを装備していたのにいつの間にかベイルに変わっている、堕天直後のサリエルの髪が白くなってないなど挙げれば枚挙にいとまがない。
*24 特に水のネフィリムの設定はゲームの描写を根本から覆すレベル。
*25 このため、後述のSteam版は竹安氏の会社であるクリムからの「自社パブリッシング」と言う形で発売された。
*26 素材化されたことで、公共機関(神奈川県警察本部交通部交通総務課)の広告でも使われた。それに際して「本当に大丈夫か心配になりますが」と竹安氏がコメントしている。また、(どう言う判断なのか不明だが)アダルトグッズのパッケージにも使われているのが確認されており、竹安氏も反応している。
*27 イーノックがベルトをしていたり、ルシフェルが地上で干渉してる。
*28 「置く場所が無い」「探したけど見つからない」人の為に電子版が同時配信中。話が少し逸れるがコミック版エクソダス(竹安氏監修)の電子版も配信されている。
*29 配信初期の段階で、ビニール傘のビニールが消えてしまうなど一部の描画に不具合が発生したため。現在は設定項目から削除されている。
*30 上記の原作小説リメイク版で、ゲームのチャプター11以降の展開部分。
*31 開発チームの人数が非常に少なく、小規模なため。
*32 Steamの販売ページのタイトルもこれに準じて変更された。