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本項ではVita版『俺達の世界わ終っている。』、PS4/Switch版『JUDGEMENT 7 俺達の世界わ終っている。』の2本を紹介します。~ 判定はすべて「良作」です。 ---- #contents(fromhere) ---- *俺達の世界わ終っている。 【おれたちのせかいわおわっている。】 |ジャンル|新世界ADV|&image(http://ecx.images-amazon.com/images/I/81jWFNxhGPL._SL1500_.jpg, https://www.amazon.co.jp/dp/B073VLNK6V/,width=130)| |対応機種|プレイステーション・ヴィータ |~| |発売元|レッド・エンタテインメント|~| |開発元|ウィザードソフト株式会社|~| |発売日|2017年11月9日|~| |定価|パッケージ版:6,800円&br;DL版:%%6,296円%%→価格改定後:4,612円|~| |セーブデータ|95個+オートセーブ1個+クイックセーブ1個|~| |レーティング|CERO:C(15才以上対象)|~| |備考|小冊子とショートストーリーDLCが付属した&br;Amazon限定版あり|~| |判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~| |ポイント|「終っている」ゲーム会社が紡ぐ&br; 笑いあり涙ありの&br;「終わりと始まり」の物語|~| |>|>|CENTER:''[[レッド・エンタテインメント開発ギャルゲー]]''| ---- #center{{ &font(white,black,20){気を付けて……&br;もうすぐ……世界が始まるから……} }} ---- **概要 -[[サクラ大戦シリーズ]]の製作に携わったレッド・エンタテインメントの7年ぶりの完全新規タイトル。略称は『オレオワ』。 -原案及びディレクターは同シリーズで原案と世界設定を担当した森田直樹氏、シナリオは『[[ぼくらはカセキホリダー]]』でレッドとタッグを組んだ同社元社員でもあるライトノベル作家の阿智太郎氏、キャラクターデザインはライトノベルの挿絵で活躍する白井鋭利氏が担当する。 -架空のゲーム会社「ジャッジメント7」を巡る数奇な運命の物語が、現実世界と仮想世界の2つの浅草を舞台に描かれる。 --レッドの本社はかつて浅草に存在しており、それが本作の製作背景となっている他、過去作のセルフオマージュも盛り込まれている。 -システムはオーソドックスな一本道のアドベンチャーゲーム。選択肢によってノーマルEDと真EDの2つに分かれ、キャラクター毎のエピローグ(個別ED)も用意されている。 --個性的な女性キャラが多数登場する点などでレッドが過去に手掛けた美少女恋愛ゲーム群と共通するが、エピローグを迎えられるキャラのうち2名は男性である。 ---- **あらすじ 2017年、ジャッジメント7の代表である尾張世界は拡張現実プログラム「W.O.R.L.D.プログラム」を開発した。その検証実験に参加していた午前零時は、廃墟と化した浅草と捕えられた仲間達、謎の少女の幻を目撃する。この時すでに、運命の歯車は回り始めていた… ---- **特徴・評価点 ***個性的すぎるキャラクター -ジャッジメント7 --本作は主人公の午前零時の視点を通したジャッジメント7のチームものとしてストーリーが描かれるが、各メンバーが「罪」を背負っているとされており、これがとにかく個性的。 --一般常識から見れば殆ど悪い方向に振り切っており、「終っている」、「社会不適合者」と実際に劇中で指摘されるほどに凄まじいのだが、彼らの個性は欠点であると同時に強力な武器として魅力的に描かれている。 ---以下、各メンバーについて簡単に紹介する。 -尾張世界(CV:杉田智和) --社員番号No.1。メインプログラマーを担当。 --「&color(midnightblue){''変態''}」の罪の持ち主。「警察に捕まらないのが不思議なくらい」とメンバーにすら言わるほど、セクハラまがいの台詞を連発する。ジャッジメント7のリーダー。 ---パッケージイラストでも中心に据えられており、尾張が主人公だと勘違いする人が続出した。 -イルカ2号(CV:松岡禎丞) --社員番号No.2。プランナーを担当。 --「&color(darkviolet){''中二''}」の罪の持ち主。意味不明な脳内設定をわめき散らし、テンションが上がると奇声を発する。「肉ブタ」と罵られる程の巨漢。 -早瀬アサノ(CV:喜多村英梨) --社員番号No.3。サウンドクリエイターを担当。 --「&color(red){''残念''}」の罪の持ち主。物をすぐ壊す、殺人的な音痴など、その残念さは天井知らず。貧乳。 -結城七罪(CV:大西沙織) --社員番号No.4。イラストレーターを担当。 --「&color(black){''混沌''}」の罪の持ち主。引きこもり一歩手前の毒舌家。自称、7つの罪を背負いし混沌の絵師。 -タチアナ(CV:花守ゆみり) --社員番号No.5。サブプログラマーを担当。 --「&color(gold){''幼稚''}」の罪の持ち主。お世話係なしでは食事すらままならない、生活能力皆無の中学生。口癖は「ウンコ」。 -早瀬ユウノ(CV:佐倉綾音) --社員番号No.6。アシスタントアルバイターを担当。アサノの妹。 --「&color(deepskyblue){''天然''}」の罪の持ち主。しっかり者の女子高生だが、異性からの視線には極端に疎く、意識せずにエッチな台詞を吐いてしまう。巨乳。 -午前零時(CV:逢坂良太) --社員番号No.7。アルバイトディレクターを担当。本作の主人公。 --「&color(green){''平凡''}」の罪の持ち主。自分を一般人だと信じているが、思った事をすぐに口走って地雷を踏んだりと、何だかんだで変わり者。ラノベ男。 ***ストーリー&演出 -ギャグとシリアスの絶妙なバランス --奇人変人の域にまで達したメインキャラクターが全力でボケとツッコミを繰り広げるので、ギャグのキレが非常に鋭い。真面目な場面においてもギャグが散りばめられおり、シリアス一辺倒にならずにストーリーが進行するのも大きな特徴。 --かと言ってシリアス要素は疎かにはなっておらず、人間の弱さや醜さをてらいもなく描いている。前述のキャラ造形やギャグ描写もそれに裏打ちされたものである。また、中盤からはプレイヤーの度胆を抜くような事件が起きる他、決して逃れられない重い事実を容赦なく叩きつける展開もある。キャラの何気ない表情や言動にも伏線があり、物語を進める意欲を沸かしてくれる。 --最終的にはこれら2つの要素が折り重なり、笑いと涙、甘さとほろ苦さがないまぜになった結末に辿り着く。 -圧倒的なボリューム --全16章+αでストーリーが構成されているが、[[ボイス収録数で2万ワード>https://www.gamer.ne.jp/news/201711080003/]]、[[文字数で150万>https://twitter.com/J7_oreowa/status/981313176481353729]]を超える分量があり、非常に長く読み応えがある。 -声優の熱演 --主人公を含めてフルボイスを採用。声優は若手を中心に実力派を揃えており、サブキャラクターに至るまで全員の演技が素晴らしく、ギャグとシリアス両方の側面からストーリーを盛り上げる。 ---第十二回声優アワードの主演女優賞と助演女優賞の声優3名全員が''2018年3月の受賞以前に''共演している事実も、本作のキャスティングの確かさの客観的な証明と言える。 ---冒頭で主人公が出会う謎の少女は主演女優賞の黒沢ともよ氏が演じているが、彼女の演技を堪能する為だけに本作を購入したとしても決して損はしないとここに断言出来る((ある事情から、一見するとモブキャラとしか思えない役名で公式HP等で記載されているが、『オレオワ』の物語のカギを握る重要なキャラクターである。))。 --松岡氏が演じるイルカ2号の氏の喉が心配になるような奇声の数々や、歌手として活動しているにもかかわらず「正しく下手糞」な喜多村氏が演じるアサノの歌など、声優の妙技が光る場面がふんだんに用意されている。 ---声優の熱演は後述するオマケ要素にも大きく関係している。 -綿密な世界設定 --現実世界と同じように五感を認識出来るが浅草の限られたエリアのみが再現され、一般人は誰一人いない代わりにジャッジメント7が過去に開発したゲームのキャラクターが登場する、W.O.R.L.D.プログラムのバグの一種と考えられている謎の仮想空間「新世界」。 ---『ドラえもん のび太と鉄人兵団』の鏡面世界や『インセプション』の夢の世界に近いと言えば分かりやすいだろうか。 --真相の究明といった目的で、ジャッジメント7は新世界への侵入と脱出を何度も繰り返す事になるが、1度使った侵入(脱出)方法は基本的に使用不可能、状況に併せて新世界での活動限界時間が大きく変わる、新世界に登場するキャラクターが毎回異なるなど、シナリオにメリハリが出るように丁寧に工夫されている。 --新世界という虚構に説得力を持たせる為に、アンヂェラスやヨシカミ、花やしきといった多くの実在の施設が登場し、背景イラストも資料を基に可能な限り本物を忠実に描いている。現実世界でたった1度しか訪れないような場所も、これらと同等に扱われている。 ---浅草駅から東武線を利用した事がある人になら分かる小ネタなど、細部に至るまで拘って作られている。 -BGM --成田旬氏と塚越雄一朗氏が担当。ジャッジメント7の個性が滲み出た各テーマ曲、タイトル画面の「ジャッジメントカフェ」、ここぞという盛り上がり所で流れる「ジャッジメント・タイム」など、名曲が多い。 ---主題歌は作詞・作曲を164氏、歌をくろくも氏が担当。所謂タイアップ曲だが、ゲームの設定や内容をきちんと踏まえた上で作られており、評価が高い。 ***オマケ要素 -総集編。 --キャラ毎のエピローグを迎えるとED単体を後から閲覧出来るようになるが、イベントを制覇した上でエピローグを迎えた場合、別個に「総集編。」と呼ばれるオマケ要素が解禁される。 --この総集編。では各キャラの本編での名場面が鑑賞出来るのだが、「タチアナのウンコ発言」や「ユウノのエッチな台詞」を列挙したものだったりと、やはりギャグ方向に纏められている。 --これでもまだ大人しい方であり、実際にはその殆どが本編で使用された台詞と立ち絵と背景イラストを入れ替えて作られた''MAD''である。キャラによっては全く原型を留めていないぶっ飛んだ内容もある。元々きわどい台詞が数多くあるが、声優が熱演した大真面目な台詞も本来の意味とは真逆の使い方をしてくる為、それが余計に笑いを誘う事に。 --硬派な作品でこれをやった場合、「悪ノリが過ぎる」、「本編の感動が台無し」といった事態になりかねないが、本作はユルさを内包した作風で作られており、そもそもジャッジメント7自体が「面白いと思った事は悪ノリだろうが何だろうが全力で行う」というスタンスで描かれているので、気兼ねなく爆笑することが出来る。 ---- **賛否両論点 -下ネタが多い --本作で応酬されるギャグは下ネタが大きな割合を占める。女性の裸といった視覚的なものは殆どないのだが、台詞はとにかく下品。 #region(その一例。''ゲーム開始1分程度''で出てくる会話で既にこれである。) >尾張「どこかに行ってたというか、イっちゃってたというか、ある意味、逝きかけてたのだよ、君は。まぁ、それも若さゆえの暴走というものだがね。ムフフ」 >ユウノ「そうそう。勝手にいっちゃったらダメだよ、れーじくん。いくときはちゃんといくっていわないとねー」 #endregion -下ネタの多さは主にジャッジメント7のリーダーである尾張が変態である事に起因するが、彼が過去に設定を担当したゲームキャラクターが登場する2章はこの下ネタが特に露骨。2章を過ぎても、下ネタは事あるごとに挟まれる。 -勿論、下ネタはギャグとして笑える範囲に収まっているが、そもそも下ネタに抵抗がある人には本作は合わないと言い切れるレベルである。 --下ネタ好きも楽しめるかかというと微妙。漫画やラノベで散々使い古された女性の胸に対するネタも長々とやるため、王道と捉えるかマンネリと捉えるかで賛否が分かれる。 -練り込み不足の独自システム --本作では通常の選択肢とは別に、制限時間の中で画面一杯に流れていく多数の選択肢から1つを選ぶ「S.O.S.システム」という独自要素を採用している。サクラ大戦シリーズの「LIPSシステム」とよく似ているが、差別化を図った所為で課題も生じている。 --該当箇所に突入した時点では制限時間と選択肢の全容が不明であり、選択肢を吟味して「やっぱり前の選択肢が良かった」と思っても既にその選択肢は選べないという事態が起きる。 ---バックログやフローチャートからのやり直しは後述の据え置きの完全版で搭載されているが、Vita版には搭載されていない。 --文章が違っていても同じ扱いの選択肢も多い。後述するトロフィーの取得を更に面倒にしている。 --2人の人物が言い争いをしておりどちらか一方の意見を選ばなければならない状況で、制限時間の終了間際に両者の意見を折半した選択肢が表示される、といった感じに演出の一環としても機能しており一概に否定も出来ないのだが、練り込み不足である事は否めない。 -テンプなラノベ設定 --主人公零時は子供の面倒をみたり、仲間をしきったり、女性に、好意を持たれるキャラでありながら平凡と称される。それでいて女性には鈍感で女性の好意には難聴と、使いまわしされているラノベ主人公の設定そのもので、人によってはマンネリと思う人間もいる。ただし、メタ的にラノベ主人公の設定にしているという点もある。 ---- **問題点 -全体のシナリオ運びに関して #region(具体的な言及はなるべく避けるが、一応ネタバレ注意。) -本作のシナリオは「仮想世界に突入→ボスが指定するゲームに挑戦→クリアして現実世界に帰還」という流れを何度も何度も繰り返す構造となっており、冗長な感じがぬぐえない部分がある。 -また、ジャッジメント7が仮想世界でのゲームのクリアにあたる際、「もっと効率の良い方法があるんじゃないの?」と思う事がままある。 --これは「効率の良い方法に気付きつつもあえて面倒な方を選択してメンバーの反応を楽しむ」という尾張の思惑によるものだが、そういった事情を考慮してもややまどろっこしい。 -ボリュームが多い作品であるためか、「主人公達が現在置かれている状況」を確認するようなセリフが定期的に入るのだが、それが結構くどい。プレイヤーの読解力をあまり信頼していない感が垣間見える。 --例えば、ある人物が主人公に事実関係を説明した直後に、その場にいなかった別の人物が主人公を含めたジャッジメント7のメンバーに殆ど同じ話をもう1度する場面があったりする。 #endregion() -分かり辛い真EDの存在 --余程の事がない限り、多くのプレイヤーは初回プレイではノーマルEDを迎える。その理由は、[[1周目の時点では真EDへの条件が厳しく設定されている為である>https://twitter.com/kikaku_RED/status/931171397627293696]]。 --これだけでは問題点とは言えないが、ノーマルEDで真EDを匂わせる情報やアナウンスがなく、しかもノーマルEDでも一応物語が完結していように見える為、普通にプレイしているとその存在に気付きにくい。 ---例えば冒頭に廃墟と化した浅草の光景を主人公が見た理由の説明がノーマルEDではない等、ストーリー上でもヒントが全くない訳ではない。 --真EDの存在に気付いたとしても、上記の設定をプレイヤーが知る由もないので、何故1周目でノーマルEDだったのか分かり辛く不親切な設計となっている。 ---攻略情報なしではトロフィーリストやムービーリストの空欄を見てプレイヤーが自発的に気付くしかなく、後に公式がルート分岐の仕組みや条件を解説した攻略サイトを用意する羽目になった。 -キャラ毎の個別ルートがなく作業的な周回プレイ --上記の真EDは好感度の高かったキャラ毎にエピローグが異なるように作られているが、一方で真EDまでのストーリーの流れはほぼ変化しない。 --これはディレクターの「[[7人でずっと最後まで>https://goziline.com/archives/19517/2]]」という拘りによるもので、個別ルートを作って誰か1人が主役のように活躍する流れにはしたくなかった為だと思われる。 ---このコンセプト及びシナリオ構成はサクラ大戦シリーズと共通している。 --しかしこの結果、全てのキャラのエピローグをコンプリートしようとすると同じ話の繰り返しになり、作業的な周回プレイに陥りやすい構造となっている。 ---一応、いくつかの日常シーンで選択肢による専用イベントと高好感度専用イベントがキャラ毎に用意されているが、全体から見ればごく僅かである。 -かゆいところに手が届かないUI --スキップ((アップデートで次の選択肢や次章まで一気に飛ぶ機能も追加された。))、オート、バックログといった基本的な機能は流石に揃っているが、バックログからのシーンジャンプやシナリオチャートといった便利機能は存在しない。お気に入りの章を好きな時に読むには自力でセーブデータを作るしかない。 --本作の分岐は緩く、オマケ要素もそこまで意識せずに解禁出来るが、「全ての選択肢を選ぶ」トロフィーの取得を目指す場合は話が別。既に選んだ選択肢が色分けされないおかげで、自分でどの選択肢を選んだのか記録を取らなければトロフィー取得は困難となる。 --ゲーム内用語集もない。なくてもストーリーを理解する上で困る事はないが、公式HPには普通に用語集のページがあり何故これをゲームに導入しなかったのか疑問が残る。 ---後述する据え置き完全版では導入された。 -一部のイベントイラストがギャラリーモード未収録 --いずれも絵としては地味だが、中には劇中で発生する事件の変遷を描いたストーリー上重要なものもあり、わざわざギャラリーの対象外とする正当性がない。 -VitaTVに非対応 --背面タッチやモーションセンサーといった機能は使用しないので、非対応は単なる怠慢である。 ---- **総評 バカゲーに片足を突っ込んだギャグ満載の軟派な作風でありながら、要所要所でプレイヤーの心を熱くし、最後にはキッチリ感動させてくれるエンターテインメントのお手本のようなストーリー。~ 問題点も没入感を阻害するような致命的なものではなく、あらゆる要素が一定以上の高いクオリティを維持している。~ 登場人物のクセがかなり強く人を選ぶ一面はあるが、それ故に独特かつ強烈な魅力を放つ名作である。 ---- ---- **余談 -PSstoreにて、4章までプレイ出来る新世界体験版((これとは別に、PlayStationPlus加入者は製品版を240分間限定でプレイする事も可能。))とカスタムテーマが無料配信されている。 --新世界体験版は製品版にセーブデータを引き継ぎ可能であり、下ネタが露骨な2章も体験出来るので、本作に興味がある人はプレイしてみる事をオススメする。 ---ただ、カスタムテーマは本編の軽度のネタバレがある。 -「俺たちの世界は終っている。」や「俺達の世界わ終わっている」といったように、本作のタイトルは表記ゆれを非常に招きやすい。ネットでレビューや感想を調べる際にも、これらの間違ったタイトルで検索しないと出てこないものもある。 -レッド自身がモデルとなった架空のゲーム会社「ジャッジメント7」だが、現実に会社のHPが作られており、ホーム画面のリンクアイコンからサイトにアクセスする事が出来る。 --ゲームの公式HP以上にネタバレ要素を含んでいるので、閲覧する際には注意が必要である。 -また、「ナナイロノセカイ」という楽曲がある事からも分かる通り、ジャッジメント7は虹をモチーフの1つとしている。 --物語は虹の日である7月16日からスタートするが、これは製作者側の意図したものではなく、[[あくまで偶然とのこと>https://twitter.com/J7_oreowa/status/1150988316784730113]]。 -『[[STEINS;GATE]]』を想起させる表層的な要素が多く((本作の導入部をかいつまんで説明すると、「東京の繁華街に拠点を持つオタク集団が自分達が作った発明品をきっかけに巨大な陰謀に巻き込まれていく」となり、『シュタゲ』のそれと非常に似通っている。他にも、主人公のチームの一員がデブなオタクと天然な女子高生で共通している事や、主人公が共に炭酸飲料に拘りがある点(『シュタゲ』はドクターペッパーで『オレオワ』はコーラ)など。))、『OCCULTIC;NINE』のゲーム版が本作と同日発売だった事もあって、5pb.の科学アドベンチャーシリーズが比較対象としてよく話題に挙がった。ただし前述の通りその作風は同シリーズとは大きく異なり、良い意味で似て非なる作品である。 --後述する据え置き完全版では発売元が5pb.となり、科学アドベンチャーファンに向けたプロモーションが行われた。 -[[サクラ大戦シリーズの版権表記はSEGAとREDの連名だったが>https://web.archive.org/web/20161128133541/http://sakura-taisen.com/]]、[[2017年にREDの名前が消滅>https://web.archive.org/web/20170318032319/http://sakura-taisen.com/]]、レッドにとって『サクラ大戦』という偉大な過去が「終わり」を迎えた((事実、2019年にプレイステーション4用ソフト『新サクラ大戦』がセガゲームスから発売予定だが、このゲームの製作にはレッドは関わっていない。))。本作はそれ以降にレッドが発売した「初めて」のゲームである。概要の通り、『オレオワ』は一種のメタフィクション要素を含んでいるが、これらの事実を踏まえてプレイするとストーリーやテーマをさらに深く味わえる、かもしれない。 ---- *JUDGEMENT 7 俺達の世界わ終っている。 【じゃっじめんとせぶん おれたちのせかいわおわっている。】 |ジャンル|新世界ADV|&image(http://ecx.images-amazon.com/images/I/71LGhD8YbZL._SL1500_.jpg, https://www.amazon.co.jp/dp/B07KB83M7T/,width=130)| |対応機種|プレイステーション4&br; Nintendo Switch((ダウンロード版のみ。)) |~| |発売元| 5pb.(MAGES.) |~| |開発元|レッド・エンタテインメント&br;ウィザードソフト株式会社 |~| |発売日|2019年2月28日|~| |定価|パッケージ版:7,800円&br;DL版:7,000円|~| |セーブデータ|90個+オートセーブ1個+クイックセーブ1個|~| |レーティング|CERO:C(15才以上対象)|~| |判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~| |ポイント|シナリオ、ボリューム、UI、&br;全てがパワーアップした完全版|~| |>|>|CENTER:''[[レッド・エンタテインメント開発ギャルゲー]]''| ---- **概要(J7) -Vitaで発売された『俺達の世界わ終っている。』に新キャラクターと後日談を追加し、UIを徹底的にブラッシュアップした移植版にして完全版。 -本作の発売元は[[科学アドベンチャーシリーズ]]の5pb.となっており、「''科学アドベンチャーファンに捧ぐ渾身の1作''」と公式自身がそう宣伝している。 --同シリーズを意識してか、タイトルは物語の主役であるゲーム会社「ジャッジメント7」を英語で表記する形式になった。 ---移植の際に新たにサブタイトルが付くのは良くある話だが、元々のタイトルがサブタイトルに移行するパターンはかなり珍しい。 ---- **特徴・評価点(J7) ***ストーリー&演出(J7) -ファンディスク1本相当の後日談 --今回の目玉。文章量は本編の30%、約50万字にも及びこれだけでもかなりのボリュームがある。 --事前のアナウンスでは5章分とされていたが、実際のシナリオ数は8章まであり、大きく分けて3つのパートで構成される。 --序盤はジャッジメント7のドタバタな日常を描いたドラマCD的なエピソード。 --中盤からはゲーム開発の話に重点を置きつつ、新たなキャラクターが登場し、彼らの日常に徐々に変化が訪れる。 #region(終盤については、一応ネタバレ注意。) -端的に言うと、「まだ事件は終っていなかった。」 --事件の再来は本編の時点で危惧されており、だからこそ真EDのあの結末になった訳だが、恐れていた事態が現実となる。ただし、「真EDでやった事に意味はなかった」という話ではないので、そこは安心して欲しい。 #endregion --『オレオワ』の持ち味であるギャグとシリアスは後日談でも遺憾なく発揮されている。 ---「こいつら何で今まで生活してこられたんだ」と思わずにはいられないジャッジメント7の社会不適合者としての生き様をこれでもかと見せつつ、本編の事件を経験した事による彼らの精神的成長もユーモアを交えながらきっちり描いている。そして、容赦がない展開は相変わらず本当に容赦がない。 --ボリューム的にも内容的にも、本編で使われた言葉を引用すれば「濃縮版」という表現が相応しいシナリオに仕上がっている。この後日談だけでもファンディスク1本分の価値は間違いなくある。 -本編の演出の強化 --本編の幾つかのイベントに新規イラスト、状況と立ち絵が一致していなかったあるシーンに専用の立ち絵が追加された。 --因みに、2018年の暮れ頃から[[ソニーがゲームのセクシャル表現を独自に規制しているという報道>https://www.gamespark.jp/article/2019/04/25/89215.html]]が話題になっているが((ソニー自身は画一的な規定の存在を否定しつつも、グローバル基準を参考にケースバイケースで対応することは認めており、実際にPS4版と他機種版でセクシャル表現に差異が生じているゲームが複数報告されている。))、本作は''Vita版から規制された表現はPS4版でも1つもない''。下着姿のあの人の痴態もそのままである。 ---元々、下ネタを多く盛り込みつつも視覚的表現は最低限に抑えていた事が功を奏した結果となった。 -小ネタ満載の新OP --OPはVita版から一新。新しい主題歌も用意され、164氏とくろくも氏のコンビが続投している。 --主題歌のイントロや歌詞、イルカ2号の紹介パートで何故かアサノが映る事情を知らないと意味がよく分からない描写に至るまで、Vita版や本編をクリアした人に向けた小ネタが多数盛り込まれており、見返す度に新しい発見がある。 ---なお、Vita版のOPも本編クリア後のオマケ要素としてちゃんと収録されている。 ***格段に進化したUI パブリッシャーが5pb.になった事による最大の変化がUIである。~ 5pb.は科学アドベンチャーシリーズをはじめとして幾つものノベルゲームを手掛けており、UIについてはこなれているのが「当たり前」としてユーザーには認識されている。そんな中でVITA版の微妙なUIをそのまま持ってくる事は出来なかったらしく、各段に快適なUIへとブラッシュアップされた。~ その快適さはディレクター自らに「[[便利すぎてオレオワじゃないみたい!!>http://kikakuya-kagyo.jp/?p=751]]」と言わしめる程である。 -選択肢の色分け機能 --通常の選択肢とS.O.S.システム、その両方で選択済みの選択肢に色が付くようになった。 ---PS4版ではVita版から引き続き「全ての選択肢を選ぶ」トロフィーがあるが、後述するフローチャートの存在もあって、今回は誰でも簡単に取得出来る。 -好感度の可視化 --キャラクターの好感度が一定量を超える事がノーマルEDと真EDの分岐、エピローグの条件であり、Vita版は特定のイベントが発生したかどうかでそれを判別するしかなかったが、今回はセーブ&ロード画面で1位、ADVメニューで上位3位までが表示される。 ---エピローグに突入する事が確定していた場合、キャラクターの表情が変化する。 -尋常じゃない作り込みのフローチャート --UIにおける今回の目玉。本編とエピローグ、後日談の「全て」を図式化しており、シーンアイコンを選択する事でシーンジャンプが可能。 --このシーンアイコンだが、総数は何と''800個以上''。アイコンが作られるタイミングは、時間経過により日時が表示された時((オートセーブはこのタイミングで行われる。))、選択肢が表示された時、立ち絵からイベントイラストに切り替わった時、場所を移動した時、新たな人物が現れた時、会話の話題が変わった時、etc...。要するに''物語が何らかの形で動くシーンの殆ど全部''である。 ---これにより、お気に入りのシーンを文字通りピンポイントに何時でも読み返せるようになった。 --膨大な量のシーンアイコンがあるが、本編と追加シナリオは章毎、エピローグはキャラ毎にチャートが分かれており、LRボタンでチャートの切り替えが出来る他、一覧を呼び出して任意のチャートを選択する事も可能。 --更に、選択肢によってどのキャラクターの好感度がどれだけアップするのかが表示される他、シーンアイコン毎にそれまでの好感度の合計が保存されている為、ゲームを攻略する上でも非常に役に立つ。 -用語集 --UIにおけるもう1つの目玉。文字数は約4万字、用語数は150個。 --こちらは分量としては標準的だが、物語の核心に迫る重要な用語から、実在の浅草の観光スポット、尾張が何度か口にしていた「浅草淫獣物語」の詳細といったものまで、実に『オレオワ』らしい内容となっている。 --また、「あいうえお順」や「カテゴリー順」にソート可能、進行状況によって用語の記述が更新される、一部の用語はイラスト付、といった他のADVではあまり見られない機能をいくつか搭載している。 -その他 --バックログジャンプ機能やコントローラーセッティング、3種類から選べるフォントにスキップ速度の高速化((既読シーンでもスキップが止まる不具合があったが、Ver.1.02のアップデートで修正された。))等、細かな部分にも多くの調整が加わった。 ---- **賛否両論点(J7) -後日談の一部の展開 #region(特定のシーンについて、かなり具体的に記載するのでネタバレ注意。) -中盤、主人公が過労で倒れ悪夢を連続して見るという展開がある。悪夢と言っても不条理なギャグが連発する所謂「ギャグシーン」である。 --実は、声優が被っている一部を除き、追加シナリオは''本編のキャラクターが全員登場する''オールスター映画的な側面を持っている。 --事実、もう2度と出番がないと思われていたある人物がこの悪夢で1度だけ登場する。音声は「総集編。」のような本編の使い回しではなく、完全な新録である。 --悪夢で繰り広げられるギャグそれ自体は楽しいが、ギャグとトラブル解決が同時に進行するのが『オレオワ』の特徴であるのに対し、ここでは「主人公が悪夢を見ている」という事で話としては停滞してしまう。 ---「ファンサービス」と捉えるか「冗長」と捉えるかで、この一連の悪夢のシーンは評価が分かれ易い。 -また、イルカ2号の妹である新キャラクターの「くらげ3号」は、「ジャッジメント7の関係者だが事件の関係者ではない中学生」という立ち位置である為、中盤に登場して早々にフェードアウトしエンディングまで出番がない。 --ジャッジメント7との交流はきちんと描かれている他、フェードアウトの仕方も工夫されており空気キャラではないのだが、本編の濃縮版かつオールスター映画的な構成の皺寄せをモロに受けた格好となっている。 #endregion ---- **問題点(J7) -用語集のセルフネタバレ(Ver.1.02のアップデートで修正済) --今回新しく加わった用語集だが、本来は主人公達がまだ知りえない情報が記載されるというセルフネタバレが、よりにもよって物語の核心に迫る重要な用語で起こっていた。 --話の流れ的に何となく想像がつく内容ではあったものの、やはり気持ちが良いものではない。 ---修正は該当する用語の更新タイミングを物語の進行状況に即したものに直す形で行われた。なおこのアップデートの際、その他の一部の用語も追記、改訂が加えられた(勿論セルフネタバレの起きない範囲で)。 -用語集のソート機能が不便 --用語集は「エピソード順」を基準に各用語に番号が振られている。前述した通り、「あいうえお順」や「カテゴリー順」にソート可能だが、ソートしても番号の方が優先される。 --つまり、「あいうえお順」でソートしても「003 尾張世界」「009 浅草」「010 浅草六区」といった順番であ行の用語がひとかたまりに並ぶだけで、正確なあいうえお順にはならない。 ---amazonの商品情報ページ等で確認出来る発売前に公開されていたスクショでは、ごく普通のあいうえお順になっている。何故、わざわざこんな分かり難い仕様にしたのか。 -Vita版の限定DLCが未収録 --Vita版のamazon限定版には、「俺達の旅路は滞っている。」というタイトルのショートストーリーのDLコードが付いていたが、このシナリオは本作には収録されていない。DLCとして配信予定というアナウンスもない。 ---キャラクターの立ち絵も音声もないオマケシナリオだったが、本作は事実上の完全版となっているだけに、何らかの形で入れて欲しかった所である。 -一部のイベントイラストが引き続きギャラリーモード未収録 --今回はフローチャートを使ったシーンジャンプがあるので大分マシだが、ギャラリーモードで閲覧出来た方が手っ取り早いのは言うまでもない。 ---- **総評(J7) 読み応え充分の追加シナリオと徹底的に見直されたUIにより、作品の完成度が更に高まった。~ 特に、フローチャートの便利さは2019年現行のADVトップクラスと言っても過言ではなく、Vita版とは比較にならない程にプレイが快適になった。~ 新しく追加された用語集で没入感を阻害する問題点があったが、それも既にアップデートで修正されている。~ 新規は勿論、Vita版をプレイ済みのユーザーにもオススメのまさに「渾身の1作」である。 ---- ---- **余談(J7) -『オレオワ』では喫茶店「アンヂェラス」がジャッジメント7のメンバーの憩いの場として何度か登場するが、同店舗は『JUDGEMENT 7』発売直後となる2019年3月17日をもって建物の老朽化を理由に閉店を迎えた。 --『オレオワ』はアンヂェラスを描いた唯一のコンピューターゲームであり((レッドが過去に手掛けた『サクラ大戦2 ~君、死にたもうことなかれ~』において、李紅蘭のテーマソングで「浅草のアン''ジェ''ラスでスイーツを」という趣旨の歌詞があるが、実在した浅草の喫茶アン''ヂェ''ラスは昭和21年開業、『サクラ大戦2』は大正をモチーフにした''太正''14年前後の物語で時代が合わない。間違いなく元ネタではあるが別物といえる。))、「現実」でその歴史に幕を下ろしてもゲームという「仮想」の世界でかつての姿を留める形となった。 ---閉店の告知は2月の初めに行われた為、『JUDGEMENT 7』の用語集ではこの閉店に関して言及されている。 -2019年4月(北米地域は5月)に『Our World Is Ended.』というタイトルで『オレオワ』の海外版が発売された。ワールドワイドパブリッシャーはイギリスのPQubeが担当。海外版はPS4とSwitchに加えてPC版がSteamでの配信となり、英語と日本語を同時収録している((音声は日本語のみ。UIと字幕が2か国語に対応。))。 --この海外版はVita版をベースとしており、『JUDGEMENT 7』で追加された後日談および新OP、フローチャートと用語集は未収録となっているが、それ以外のUIは『JUDGEMENT 7』で改善されたものを採用している。 ---同時期の発売でありながら『JUDGEMENT 7』と海外版が同一の内容にならなかったのは、両者のパブリッシャーが異なるが故の契約上の理由であると思われる。
本項ではPSV版『俺達の世界わ終っている。』と、PS4/Switch版『JUDGEMENT 7 俺達の世界わ終っている。』の2本を紹介します。~ 判定はすべて「良作」です。 ---- #contents ---- *俺達の世界わ終っている。 【おれたちのせかいわおわっている。】 |ジャンル|新世界ADV|&amazon(B073VLNK6V)| |対応機種|プレイステーション・ヴィータ |~| |発売元|レッド・エンタテインメント|~| |開発元|ウィザードソフト株式会社|~| |発売日|2017年11月9日|~| |定価|パッケージ版:6,800円&br;DL版:%%6,296円%%→価格改定後:4,612円|~| |セーブデータ|95個+オートセーブ1個+クイックセーブ1個|~| |レーティング|CERO:C(15才以上対象)|~| |備考|小冊子とショートストーリーDLCが付属した&br;Amazon限定版あり|~| |判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~| |ポイント|「終っている」ゲーム会社が紡ぐ&br; 笑いあり涙ありの&br;「終わりと始まり」の物語|~| |>|>|CENTER:''[[レッド・エンタテインメント開発ギャルゲー]]''| ---- #center{{ &font(white,black,20){気を付けて……&br;もうすぐ……世界が始まるから……} }} ---- **概要 レッド・エンタテインメントの7年ぶりの完全新規タイトル。略称は『オレオワ』。~ 原案及びディレクターは[[サクラ大戦シリーズ]]で原案と世界設定を担当した森田直樹氏、シナリオは『[[ぼくらはカセキホリダー]]』でレッドとタッグを組んだ同社元社員でもあるライトノベル作家の阿智太郎氏、キャラクターデザインはライトノベルの挿絵で活躍する白井鋭利氏が担当する。 架空のゲーム会社「ジャッジメント7」を巡る数奇な運命の物語が、現実世界と仮想世界の2つの浅草を舞台に描かれる。~ レッドの本社はかつて浅草に存在しており、それが本作の製作背景となっている他、セルフオマージュも含まれている((例えば、劇中では「ジャスティスオージ」というヒーロー番組が流行しているが、これはレッドの創業者である広井王子氏が元ネタと考えられている。広井氏とレッドは2006年に『魔弾戦記リュウケンドー』というヒーロー番組を実際に手掛けている。))。~ ジャッジメント7の本社は[[ひさご通り商店街の一角>https://red-entertainment.co.jp/red_oreowa/oreowa_ss.html]]、浅草にあったレッドの本社は[[鷲(おおとり)神社の敷地内>https://game-creators.jp/media/column/131/]]、というように両者の間には当然ながら差異があり、メタフィクション要素はあくまで副次的な面白さに留められている。 システムはオーソドックスな一本道のアドベンチャーゲーム。選択肢によってノーマルEDと真EDの2つに分かれ、キャラクター毎のエピローグ(個別ED)も用意されている。~ 個性的な女性キャラが多数登場する点などでレッドが過去に手掛けた美少女恋愛ゲーム群と共通するが、エピローグを迎えられるキャラのうち2名は男性である。 ---- **あらすじ 2017年、ジャッジメント7の代表である尾張世界は拡張現実プログラム「W.O.R.L.D.プログラム」を開発した。その検証実験に参加していた午前零時は、廃墟と化した浅草と捕えられた仲間達、謎の少女の幻を目撃する。この時すでに、運命の歯車は回り始めていた… ---- **特徴・評価点 ***個性的すぎるキャラクター -ジャッジメント7 --本作は主人公の午前零時の視点を通したジャッジメント7のチームものとしてストーリーが描かれるが、各メンバーが「罪」を背負っているとされており、これがとにかく個性的。 --一般常識から見れば殆ど悪い方向に振り切っており、「人として終わっている」「社会不適合者」と実際に劇中で指摘されるほどに凄まじいのだが、彼らの個性は欠点であると同時に強力な武器として魅力的に描かれている。 ---以下、各メンバーについて簡単に紹介する。 -尾張世界(CV:杉田智和) --社員番号No.1。メインプログラマーを担当。 --「COLOR(midnightblue){''変態''}」の罪の持ち主。「警察に捕まらないのが不思議なくらい」とメンバーにすら言わるほど、セクハラまがいの台詞を連発する。ジャッジメント7のリーダー。 ---パッケージイラストでも中心に据えられており、尾張が主人公だと勘違いする人が続出した。 -イルカ2号(CV:松岡禎丞) --社員番号No.2。プランナーを担当。 --「COLOR(darkviolet){''中二''}」の罪の持ち主。意味不明な脳内設定をわめき散らし、テンションが上がると奇声を発する。「肉ブタ」と罵られる程の巨漢。 -早瀬アサノ(CV:喜多村英梨) --社員番号No.3。サウンドクリエイターを担当。 --「COLOR(red){''残念''}」の罪の持ち主。物をすぐ壊す、殺人的な音痴など、その残念さは天井知らず。貧乳。 -結城七罪(CV:大西沙織) --社員番号No.4。イラストレーターを担当。 --「COLOR(black){''混沌''}」の罪の持ち主。引きこもり一歩手前の毒舌家。自称、7つの罪を背負いし混沌の絵師。 -タチアナ(CV:花守ゆみり) --社員番号No.5。サブプログラマーを担当。 --「COLOR(gold){''幼稚''}」の罪の持ち主。お世話係なしでは食事すらままならない、生活能力皆無の中学生。口癖は「ウンコ」であり、まさに幼稚そのもの。 -早瀬ユウノ(CV:佐倉綾音) --社員番号No.6。アシスタントアルバイターを担当。アサノの妹。 --「COLOR(deepskyblue){''天然''}」の罪の持ち主。しっかり者の女子高生だが、異性からの視線には極端に疎く、意識せずにエッチな台詞を吐いてしまう。巨乳。 -午前零時(CV:逢坂良太) --社員番号No.7。アルバイトディレクターを担当。本作の主人公。 --「COLOR(green){''平凡''}」の罪の持ち主。自分を一般人だと信じているが、思った事をすぐに口走って地雷を踏んだりと、何だかんだで変わり者。ラノベ男。 ***ストーリー&演出 -ギャグとシリアスの絶妙なバランス --奇人変人の域にまで達したメインキャラクターがボケとツッコミを繰り広げるので、ギャグのキレが非常に鋭い。真面目な場面においてもギャグが散りばめられおり、シリアス一辺倒にならずにストーリーが進行するのも大きな特徴。 --かと言ってシリアス要素は疎かにはなっておらず、人間の弱さや醜さをてらいもなく描いている。前述のキャラ造形やギャグ描写もそれに裏打ちされたものである。 --また、中盤からはプレイヤーの度胆を抜くような事件が起きる他、決して逃れられない重い事実を容赦なく叩きつける展開もある。キャラの何気ない表情や言動にも伏線があり、物語を進める意欲を沸かしてくれる。 --最終的にはこれら2つの要素が折り重なり、笑いと涙、甘さとほろ苦さがないまぜになった結末に辿り着く。 -圧倒的なボリューム --全16章+αでストーリーが構成されているが、[[ボイス収録数で2万ワード>https://www.gamer.ne.jp/news/201711080003/]]、[[文字数で150万>https://twitter.com/J7_oreowa/status/981313176481353729]]を超える分量があり、非常に長く読み応えがある。 -声優の熱演 --主人公の零時を含めてフルボイスを採用。声優は若手を中心に実力派を揃えており、サブキャラクターに至るまで全員の演技が素晴らしく、ギャグとシリアス両方の側面からストーリーを盛り上げる。 ---第十二回声優アワードの主演女優賞と助演女優賞の声優3名全員が''2018年3月の受賞以前に''共演している事実も、本作のキャスティングの確かさの客観的な証明と言える。 //---冒頭で零時が出会う謎の人物「少女A」は主演女優賞の黒沢ともよ氏が演じているが、彼女の演技を堪能する為だけに本作を購入したとしても決して損はしないとここに断言出来る((役名だけを見るとモブキャラとしか思えないかもしれないが、この少女Aは『オレオワ』の物語のカギを握る非常に重要なキャラクターである。))。 //単に黒沢ともよが好きな人が書いたようにしか見えないのでCO。プレイしたが特筆に値するとも思えない。 --松岡氏が演じるイルカ2号の氏の喉が心配になるような奇声の数々や、歌手として活動しているにもかかわらず「正しく下手糞」な喜多村氏が演じるアサノの歌など、声優の妙技が光る場面がふんだんに用意されている。 ---声優の熱演は後述するオマケ要素にも大きく関係している。 -綿密な世界設定 --現実世界と同じように五感を認識出来るが浅草の限られたエリアのみが再現され、一般人は誰一人いない代わりにジャッジメント7が過去に開発したゲームのキャラクターが登場する、W.O.R.L.D.プログラムのバグの一種と考えられている謎の仮想空間「新世界」。 ---『[[ドラゴンクエストVI 幻の大地]]』の夢の世界や『ドラえもん のび太と鉄人兵団』の鏡面世界に近いと言えば分かりやすいだろうか。 --真相の究明といった目的で、ジャッジメント7は新世界への侵入と脱出を何度も繰り返す事になるが、1度使った侵入(脱出)方法は基本的に使用不可能、状況に併せて新世界での活動限界時間が大きく変わる、新世界に登場するキャラクターが毎回異なるなど、シナリオにメリハリが出るように丁寧に工夫されている。 ---ゲーム開発を巡る日常的な人間ドラマと新世界を巡るSFファンタジー要素、この2つが前述したギャクとシリアスを両立したシナリオの背骨となっている。 --新世界という虚構に説得力を持たせる為に、アンヂェラスやヨシカミ、花やしきといった多くの実在の施設が登場し、背景イラストも資料を基に可能な限り本物を忠実に描いている。現実世界でたった1度しか訪れないような場所も、これらと同等に扱われている。 ---浅草駅から東武線を利用した事がある人になら分かる小ネタなど、細部に至るまで拘って作られている。 -BGM --成田旬氏と塚越雄一朗氏が担当。ジャッジメント7の個性が滲み出た各テーマ曲、タイトル画面の「ジャッジメントカフェ」、ここぞという盛り上がり所で流れる「ジャッジメント・タイム」など、名曲が多い。 ---主題歌は作詞・作曲を164氏、歌をくろくも氏が担当。所謂タイアップ曲だが、ゲームの設定や内容をきちんと踏まえた上で作られており、評価が高い。 ***オマケ要素 -総集編。 --キャラ毎のエピローグを迎えるとそれを後から閲覧出来るようになるが、イベントを制覇した上でエピローグを迎えた場合、別個に「総集編。」と呼ばれるオマケ要素が解禁される。 --この総集編。では各キャラの本編での名場面が鑑賞出来るのだが、「タチアナのウンコ発言」や「ユウノのエッチな台詞」を列挙したものだったりと、やはりギャグ方向に纏められている。 --これでもまだ大人しい方であり、実際にはその殆どが本編で使用された台詞と立ち絵と背景イラストを入れ替えて作られた''MAD''である。キャラによっては全く原型を留めていないぶっ飛んだ内容もある。元々きわどい台詞が数多くあるが、声優が熱演した大真面目な台詞を本来の意図とは正反対に使っている場合もあり、それが余計に笑いを誘う。 --硬派な作品でこれをやった場合、「悪ノリが過ぎる」「本編の感動が台無し」といった事態になりかねないが、本作はユルさを内包した作風で作られており、そもそもジャッジメント7自体が「面白いと思った事は悪ノリだろうが何だろうが全力で行う」というスタンスで描かれているので、気兼ねなく爆笑することが出来る。 ---- **賛否両論点 -下ネタが多い --本作で応酬されるギャグは下ネタが大きな割合を占める。女性の裸といった視覚的なものは殆どないのだが、台詞はとにかく下品。 #region(その一例。''ゲーム開始1分程度''で出てくる会話で既にこれである。) >尾張「どこかに行ってたというか、イっちゃってたというか、ある意味、逝きかけてたのだよ、君は。まぁ、それも若さゆえの暴走というものだがね。ムフフ」 >ユウノ「そうそう。勝手にいっちゃったらダメだよ、れーじくん。いくときはちゃんといくっていわないとねー」 #endregion -下ネタの多さは主にジャッジメント7のリーダーである尾張が変態である事に起因するが、彼が過去に設定を担当したゲームキャラクターが登場する2章はこの下ネタが特に露骨。2章を過ぎても、下ネタは事あるごとに挟まれる。 -勿論、下ネタはギャグとして笑える範囲に収まっているが、そもそも下ネタに抵抗がある人には本作は合わないと言い切れるレベルである。 --漫画やラノベで散々使い古された女性の胸に対するネタも長々とやるため、下ネタ好きでもその全てを楽しめるかと言うと人による。 --こうした下ネタ要素はレッドが過去に手掛けた『アガレスト戦記』でも見受けられたが、本作にもそのテイストが持ち込まれてしまっていると言える。 -典型的なラノベ主人公 --主人公の零時は「平凡」でありながら、子供の面倒見が良く、一見頼りないようでリーダーシップを発揮し、多くの女性に好意を持たれながら本人にその自覚がないという典型的なラノベ主人公そのもの。特定の台詞を聞き逃す「難聴ネタ」まで完備しており、それらを食傷気味に感じるプレイヤーもいる。 ---また女性キャラ同士で零時の取り合いになる場面がある等、彼自身だけでなくそれを取り巻く環境もかなりラノベ的となっている。 --ただし、「ラノベ男」というあだ名の通り製作者側は意図して零時をそのようなキャラに設定しており、特に終盤における展開でこの設定が一種の皮肉として効果的に作用している。 -練り込み不足の独自システム --本作では通常の選択肢とは別に、制限時間の中で画面一杯に流れていく多数の選択肢から1つを選ぶ「S.O.S.システム」という独自要素を採用している。時間切れも選択肢の1つとして扱われる点を含め、サクラ大戦シリーズの「LIPSシステム」とよく似ているが、差別化を図った所為で課題も生じている。 --該当箇所に突入した時点では制限時間と選択肢の全容が不明であり、選択肢を吟味して「やっぱり前の選択肢が良かった」と思っても既にその選択肢は選べないという事態が起きる。選び直すとしても、直近のセーブデータをロードしてさかのぼるという方法しかない。 --文章が違っていても同じ扱いの選択肢も多い。後述するトロフィーの取得を更に面倒にしている。 --2人の人物が言い争いをしておりどちらか一方の意見を選ばなければならない状況で、制限時間の終了間際に両者の意見を折半した選択肢が表示される、といった感じに演出の一環としても機能しており一概に否定も出来ないのだが、練り込み不足である事は否めない。 ---- **問題点 -全体のシナリオ運びに関して #region(具体的な言及はなるべく避けるが、一応ネタバレ注意。) -本作のシナリオは「仮想世界に突入→ボスが指定するゲームに挑戦→クリアして現実世界に帰還」という流れを何度も何度も繰り返す構造となっており、冗長な感じがぬぐえない部分がある。 -また、ジャッジメント7が仮想世界でのゲームのクリアにあたる際、「もっと効率の良い方法があるんじゃないの?」と思う事がままある。 --これは「効率の良い方法に気付きつつもあえて面倒な方を選択してメンバーの反応を楽しむ」という尾張の思惑によるものだが、そういった事情を考慮してもややまどろっこしい。 -ボリュームが多い作品であるためか、「零時達が現在置かれている状況」を確認するようなセリフが定期的に入るのだが、それが結構くどい。プレイヤーの読解力をあまり信頼していない感が垣間見える。 --例を挙げると、ある人物が零時に事実関係を説明した直後に、その場にいなかった別の人物が零時を含めたジャッジメント7のメンバーに殆ど同じ話をもう1度する場面があったりする。 #endregion() -分かり辛い真EDの存在 --余程の事がない限り、多くのプレイヤーは初回プレイではノーマルEDを迎える。その理由は、1周目の時点では真EDへの条件が厳しく設定されている為である([[参照>https://twitter.com/kikaku_RED/status/931171397627293696]])。 --これだけでは問題点とは言えないが、ノーマルEDで真EDを匂わせる情報やアナウンスがなく、しかもノーマルEDでも一応物語が完結していように見える為、普通にプレイしているとその存在に気付きにくい。だが、ヒントがないわけでなく廃墟と化した浅草の光景を零時が冒頭に見た理由の説明がノーマルEDではない等、ストーリー上でもヒントが全くない訳ではない。 --真EDの存在に気付いたとしても、上記の設定をプレイヤーが知る由もないので、何故1周目でノーマルEDだったのか分かり辛く不親切な設計となっている。 ---攻略情報なしではトロフィーリストやムービーリストの空欄を見てプレイヤーが自発的に気付くしかなく、後に公式がルート分岐の仕組みや条件を解説した攻略サイトを用意する羽目になった。 -キャラ毎の個別ルートがなく作業的な周回プレイ --上記の真EDは好感度の高かったキャラ毎にエピローグが異なるように作られているが、一方で真EDまでのストーリーの流れはほぼ変化しない。 --これはディレクターに「[[7人でずっと最後まで>https://goziline.com/archives/19517/2]]」という拘りがあり、個別ルートを作って誰か1人が主役のように活躍する流れにはしたくなかった為だと思われる。 ---このコンセプト及びシナリオ構成はサクラ大戦シリーズでも見受けられたものである。 --しかしこの結果、全てのキャラのエピローグをコンプリートしようとすると同じ話の繰り返しになり、作業的な周回プレイに陥りやすい構造となっている。 ---一応、いくつかの日常シーンで選択肢による専用イベントと高好感度専用イベントがキャラ毎に用意されているが、全体から見ればごく僅かである。 ---せめて、ノーマルEDと真EDのルート分岐直前にエピローグを迎えるキャラをプレイヤーが自主的に選択出来るイベントでもあれば良かったのだが、実際には好感度第1位のキャラが自動的に選ばれる仕組みになっており、効率重視でも早くて中盤のセーブデータからの周回プレイとなる。 -かゆいところに手が届かないUI --スキップ((アップデートで次の選択肢や次章まで一気に飛ぶ機能も追加された。))、オート、バックログといった基本的な機能は流石に揃っているが、バックログからのシーンジャンプやシナリオチャートといった便利機能は存在しない。お気に入りの章を好きな時に読むには自力でセーブデータを作るしかない。 --本作の分岐は緩く、オマケ要素もそこまで意識せずに解禁出来るが、「全ての選択肢を選ぶ」トロフィーの取得を目指す場合は話が別。既に選んだ選択肢が色分けされないおかげで、自分でどの選択肢を選んだのか記録を取らなければトロフィー取得は困難となる。 --ゲーム内用語集もない。なくてもストーリーを理解する上で困る事はないが、公式HPには普通に用語集のページがあり何故これをゲームに導入しなかったのか疑問が残る。 -一部のイベントイラストがギャラリー未収録 --いずれも絵としては地味だが、中には劇中で発生する事件の変遷を描いたストーリー上重要なものもあり、わざわざギャラリーの対象外とする正当性がない。 -VITA TVに非対応 --背面タッチやモーションセンサーといった機能は使用しないので、対応に支障はなかったと思われる。しかし、発売時点で既に出荷終了していたので仕方ない面もある。 //表現を修正しました。 ---- **総評 バカゲーに片足を突っ込んだギャグ満載の軟派な作風でありながら、要所要所でプレイヤーの心を熱くし、最後にはキッチリ感動させてくれるエンターテインメントのお手本のようなストーリー。~ 問題点も没入感を阻害するような致命的なものではなく、あらゆる要素が一定以上の高いクオリティを維持している。~ 登場人物のクセがかなり強く人を選ぶ一面はあるが、それ故に独特かつ強烈な魅力を放つ名作である。 ---- **余談 -PS Storeにて、4章までプレイ出来る新世界体験版((これとは別に、PS+加入者は製品版を240分間限定でプレイする事も可能。))とカスタムテーマが無料配信されている。 --新世界体験版は製品版にセーブデータを引き継ぎ可能であり、下ネタが露骨な2章も体験出来るので、本作に興味がある人はプレイしてみる事をオススメする。 ---ただ、カスタムテーマは本編の軽度のネタバレがある。 -「俺たちの世界は終っている。」や「俺達の世界わ終わっている」といったように、本作のタイトルは表記ゆれを非常に招きやすい。ネットでレビューや感想を調べる際にも、これらの間違ったタイトルで検索しないと出てこないものもある。 -レッド自身がモデルとなった架空のゲーム会社「ジャッジメント7」だが、現実に会社のHPが作られており、ホーム画面のリンクアイコンからサイトにアクセスする事が出来る。 --ゲームの公式HP以上にネタバレ要素を含んでいるので、閲覧する際には注意が必要である。 -また、「ナナイロノセカイ」という楽曲がある事からも分かる通り、ジャッジメント7は虹をモチーフの1つとしている。 --物語は虹の日である7月16日からスタートするが、これは製作者側の意図したものではなく、あくまで偶然とのこと([[参照>https://twitter.com/J7_oreowa/status/1150988316784730113]])。 -『[[STEINS;GATE]]』を想起させる表層的な要素が多く((本作の導入部をかいつまんで説明すると、「東京の繁華街に拠点を持つオタク集団が自分達が作った発明品をきっかけに巨大な陰謀に巻き込まれていく」となり、『シュタゲ』のそれと非常に似通っている。他にも、主人公チームの一員がデブなオタク男子と天然な女子高生で共通している事や、主人公が共に炭酸飲料に拘りがある点(『シュタゲ』はドクターペッパーで『オレオワ』はコーラ)など。))、『OCCULTIC;NINE』のゲーム版が本作と同日発売だった事もあって、5pb.の科学アドベンチャーシリーズが比較対象としてよく話題に挙がった。ただし前述の通りその作風は同シリーズとは大きく異なり、良い意味で似て非なる作品である。 --後述する据え置き完全版では発売元が5pb.となり、科学アドベンチャーファンに向けたプロモーションが行われた。 -ディレクターの森田氏は、「それまでのレッドは『サクラ大戦』やセガに寄りかかっており、サクラが自分たちの手を離れたあの時がチャンスだった。苦労しないと自分たちの財産にならない。今のレッドでそんな体験をしたかった」と本作の開発動機を[[インタビュー>https://web.archive.org/web/20210926163345/https://illab.jp/pioneer/special_vol001/]]で説明している。 --実際、2017年からサクラ大戦シリーズの版権表記がREDの名前が外れSEGA単独になっている。『[[新サクラ大戦]]』以降のシリーズにもレッドは関与していない([[参照>https://twitter.com/kikaku_RED/status/984998385030545408]])。 //オレオワはサクラ大戦の精神的続編というわけではないので、一部変更しました。 ---- *JUDGEMENT 7 俺達の世界わ終っている。 【じゃっじめんとせぶん おれたちのせかいわおわっている。】 |ジャンル|新世界ADV|&amazon(B07KB83M7T)| |対応機種|プレイステーション4&br; Nintendo Switch((ダウンロード版のみ。)) |~| |発売元|5pb.(MAGES.) |~| |開発元|レッド・エンタテインメント&br;ウィザードソフト株式会社 |~| |発売日|2019年2月28日|~| |定価|パッケージ版:7,800円&br;DL版:7,000円|~| |セーブデータ|90個+オートセーブ1個+クイックセーブ1個|~| |レーティング|CERO:C(15才以上対象)|~| |判定|BGCOLOR(lightgreen):''良作''|~| |ポイント|シナリオ、ボリューム、UI、&br;全てがパワーアップした完全版|~| |>|>|CENTER:''[[レッド・エンタテインメント開発ギャルゲー]]''| ---- **概要(J7) PSVで発売された『俺達の世界わ終っている。』に新キャラクターと後日談を追加し、UIを徹底的にブラッシュアップした移植版にして完全版。~ 本作の発売元は『[[科学アドベンチャーシリーズ]]』の5pb.となっており、「''科学アドベンチャーファンに捧ぐ渾身の1作''」と公式自身がそう宣伝している。~ 同シリーズを意識してか、タイトルは物語の主役であるゲーム会社「ジャッジメント7」を英語で表記する形式になった。~ 移植の際に新たにサブタイトルが付くのは良くある話だが、元々のタイトルがサブタイトルに移行するパターンはかなり珍しい。 ---- **特徴・評価点(J7) ***ストーリー&演出(J7) -ファンディスク1本相当の後日談 --今回の目玉。文章量は本編の30%、約50万字にも及びこれだけでもかなりのボリュームがある。 --事前のアナウンスでは5章分とされていたが、実際のシナリオ数は8章まであり、大きく分けて3つのパートで構成される。 --序盤はジャッジメント7のドタバタな日常を描いたドラマCD的なエピソード。 --中盤からはゲーム開発の話に重点を置きつつ、新たなキャラクターが登場し、彼らの日常に徐々に変化が訪れる。 #region(終盤については、一応ネタバレ注意。) -端的に言うと、「まだ事件は終っていなかった。」 --事件の再来は本編の時点で危惧されており、だからこそ真EDがあの結末になった訳だが、恐れていた事態が現実となる。ただし、「真EDでやった事に意味はなかった」という話ではないので、そこは安心して欲しい。 #endregion --『オレオワ』の持ち味であるギャグとシリアスは後日談でも遺憾なく発揮されている。 ---「こいつら何で今まで生活してこられたんだ」と思わずにはいられないジャッジメント7の社会不適合者としての生き様をこれでもかと見せつつ、本編の事件を経験した事による彼らの精神的成長もユーモアを交えながらキッチリ描いている。そして、容赦がない展開は相変わらず本当に容赦がない。 --ボリューム的にも内容的にも、本編で使われた言葉を引用すれば「濃縮版」という表現が相応しいシナリオに仕上がっている。この後日談だけでもファンディスク1本分の価値は間違いなくある。 -本編の演出の強化 --本編の幾つかのイベントに新規イラスト、状況と立ち絵が一致していなかったあるシーンに専用の立ち絵が追加された。 --ちなみに、2018年の暮れ頃からソニーがゲームのセクシャル表現を独自に規制しているという報道が話題になっている([[参照>https://www.gamespark.jp/article/2019/04/25/89215.html]])((ソニー自身は画一的な規定の存在を否定しつつも、グローバル基準を参考にケースバイケースで対応することは認めており、実際にPS4版と他機種版でセクシャル表現に差異が生じているゲームが複数報告されている。))が、本作は''PSV版から規制された表現はPS4版でも1つもない。''下着姿のあの人の痴態もそのままである。 ---元々、下ネタを多く盛り込みつつも視覚的表現は最低限に抑えていた事が功を奏した結果となった。 -小ネタ満載の新OP --OPはPSV版から一新。新しい主題歌も用意され、164氏とくろくも氏のコンビが続投している。 --主題歌のイントロや歌詞、イルカ2号の紹介パートで何故かアサノが映る事情を知らないと意味がよく分からない描写に至るまで、PSV版や本編をクリアした人に向けた小ネタが多数盛り込まれており、見返す度に新しい発見がある。 ---なお、PSV版のOPも本編クリア後のオマケ要素としてちゃんと収録されている。 ***格段に進化したUI パブリッシャーが5pb.になった事による最大の変化がUIである。~ 5pb.は科学アドベンチャーシリーズをはじめとして幾つものノベルゲームを手掛けており、UIについてはこなれているのが「当たり前」としてユーザーには認識されている。そんな中でPSV版の微妙なUIをそのまま持ってくる事は出来なかったらしく、各段に快適なUIへとブラッシュアップされた。~ その快適さはディレクター自らに「[[便利すぎてオレオワじゃないみたい!!>http://kikakuya-kagyo.jp/?p=751]]」と言わしめる程である。 -選択肢の色分け機能 --通常の選択肢とS.O.S.システム、その両方で選択済みの選択肢に色が付くようになった。 ---PS4版ではPSV版から引き続き「全ての選択肢を選ぶ」トロフィーがあるが、後述するフローチャートの存在もあって、今回は誰でも簡単に取得出来る。 -好感度の可視化 --キャラクターの好感度が一定量を超える事がノーマルEDと真EDの分岐、エピローグの条件であり、PSV版は特定のイベントが発生したかどうかでそれを判別するしかなかったが、今回はセーブ&ロード画面で第1位、ADVメニューで上位3位までが表示される。 ---エピローグに突入する事が確定していた場合、キャラクターの表情が変化する。 -尋常じゃない作り込みのフローチャート --UIにおける今回の目玉。本編とエピローグ、後日談の「全て」を図式化しており、シーンアイコンを選択する事でシーンジャンプが可能。 --このシーンアイコンだが、総数は何と''800個以上''。アイコンが作られるタイミングは、時間経過により日時が表示された時((オートセーブはこのタイミングで行われる。))、選択肢が表示された時、立ち絵からイベントイラストに切り替わった時、場所を移動した時、新たな人物が現れた時、会話の話題が変わった時、etc…。要するに''物語が何らかの形で動くシーンの殆ど全部''である。 ---これにより、お気に入りのシーンを文字通りピンポイントに何時でも読み返せるようになった。 --膨大な量のシーンアイコンがあるが、本編と追加シナリオは章毎、エピローグはキャラ毎にチャートが分かれており、LRボタンでチャートの切り替えが出来る他、一覧を呼び出して任意のチャートを選択する事も可能。 --更に、選択肢によってどのキャラクターの好感度がどれだけアップするのかが表示される他、シーンアイコン毎にそれまでの好感度の合計が保存されている為、ゲームを攻略する上でも非常に役に立つ。 -用語集 --UIにおけるもう1つの目玉。文字数は約4万字、用語数は150個。 --こちらは分量としては標準的だが、物語の核心に迫る重要な用語から、実在の浅草の観光スポット、尾張が何度か口にしていた「浅草淫獣物語」の詳細といったものまで、実に『オレオワ』らしい内容となっている。 --また、「あいうえお順」や「カテゴリー順」にソート可能、進行状況によって用語の記述が更新される、一部の用語はイラスト付、といった他のADVではあまり見られない機能をいくつか搭載している。 -その他 --バックログジャンプ機能やコントローラーセッティング、3種類から選べるフォントにスキップ速度の高速化((既読シーンでもスキップが止まる不具合があったが、Ver.1.02のアップデートで修正された。))等、細かな部分にも多くの調整が加わった。 ---- **賛否両論点(J7) -後日談の一部の展開 #region(特定のシーンについて、かなり具体的に記載するのでネタバレ注意。) -中盤、零時が過労で倒れ悪夢を連続して見るという展開がある。悪夢と言ってもブラックジョークが連発する所謂「ギャグシーン」である。 --実は、声優が被っている一部を除き、追加シナリオは''本編のキャラクターが全員登場する''オールスター映画的な側面を持っている。 --事実、もう2度と出番がないと思われていたある人物がこの悪夢で1度だけ登場する。音声は「総集編。」のような本編の使い回しではなく、完全な新録である。 --悪夢で繰り広げられるギャグそれ自体は楽しいが、ギャグとトラブル解決が同時に進行するのが『オレオワ』の特徴であるのに対し、ここでは「零時が悪夢を見ている」という事で話としては停滞してしまう。一応、終盤の展開に対するちょっとした伏線があるにはあるのだが、無かったとしても話としては成立する。 ---「ファンサービス」と捉えるか「不必要」と捉えるかで、この一連のシーンは評価が分かれ易い。 -また、イルカ2号の妹である新キャラクターの「くらげ3号」は、「ジャッジメント7の関係者だが事件の関係者ではない中学生」という立ち位置である為、中盤に登場して早々にフェードアウトしエンディングまで出番がない。 --ジャッジメント7との交流はきちんと描かれている他、フェードアウトの仕方も工夫されており空気キャラではないのだが、本編の濃縮版かつオールスター映画的な構成の皺寄せをモロに受けた格好となっている。 #endregion ---- **問題点(J7) -用語集のセルフネタバレ(Ver.1.02のアップデートで修正済)。 --今回新しく加わった用語集だが、本来は零時達がまだ知りえない情報が記載されるというセルフネタバレが、よりにもよって物語の核心に迫る重要な用語で起こっていた。 --話の流れ的に何となく想像がつく内容ではあったものの、やはり気持ちが良いものではない。 ---修正は該当する用語の更新タイミングを物語の進行状況に即したものに直す形で行われた。なおこのアップデートの際、その他の一部の用語も追記、改訂が加えられた((もちろん、セルフネタバレの起きない範囲での修正である。))。 -用語集のソート機能が不便 --用語集は「エピソード順」を基準に各用語に番号が振られている。前述した通り、「あいうえお順」や「カテゴリー順」にソート可能だが、ソートしても番号の方が優先される。 --つまり、「あいうえお順」でソートしても「003 尾張世界」「009 浅草」「010 浅草六区」といった順番であ行の用語がひとかたまりに並ぶだけで、正確なあいうえお順にはならない。 ---Amazonの商品情報ページ等で確認出来る発売前に公開されていたスクショでは、ごく普通のあいうえお順になっている。何故、わざわざこんな分かり難い仕様にしたのか。 -PSV版の限定DLCが未収録 --PSV版のAmazon限定版には、「俺達の旅路は滞っている。」というタイトルのショートストーリーのDLコードが付いていたが、このシナリオは本作には収録されていない。DLCとして配信予定というアナウンスもない。 ---キャラクターの立ち絵も音声もないオマケシナリオだったが、本作は事実上の完全版となっているだけに、何らかの形で入れて欲しかった所である。 -ギャラリーの利便性の低下 --ミュージックのページがVita版から大きく変わり、楽曲の選択項目がレコードのジャケット風になり、ボタンを押すとレコードが回転してBGMが再生されるという仕様になった。 ---遊び心と洒落っ気に溢れてはいるものの、ボタンを押してからBGMが再生されるまで1~2秒間のインターバルが発生するようになり、ギャラリーとしての利便性はPSV版に比べて低下した。 --また、PSV版ではOPやEDといった各種ムービーを再生してからギャラリーに戻っても常に「ジャッジメントカフェ」がBGMとして再生されていたが、本作では1度無音状態になってしまう((ギャラリーとは別扱いで、エピローグと「総集編。」を閲覧出来る「スペシャル」が存在するがこちらも同様。))。これは単純に改悪である。 --ちなみに、PSV版のギャラリーで未収録だったイベントイラストは今回もそのまま。 ---フローチャートを使ったシーンジャンプがあるので大分マシだが、ギャラリーで閲覧出来た方が手っ取り早いのは言うまでもない。 ---- **総評(J7) 読み応え充分の追加シナリオと徹底的に見直されたUIにより、作品の完成度がさらに高まった。~ 特に、フローチャートの便利さは2019年現行のADVトップクラスと言っても過言ではなく、PSV版とは比較にならない程にプレイが快適になった。~ 新しく追加された用語集で没入感を阻害する問題点があったが、それも既にアップデートで修正されている。~ 新規はもちろん、PSV版をプレイ済みのユーザーにもオススメのまさに「渾身の1作」である。 ---- **余談(J7) -『オレオワ』では喫茶店「アンヂェラス」がジャッジメント7のメンバーの憩いの場として何度か登場するが、同店舗は『JUDGEMENT 7』発売直後となる2019年3月17日をもって建物の老朽化を理由に閉店を迎えた。 --『オレオワ』はアンヂェラスを描いた唯一のコンピューターゲームであり((レッドが過去に手掛けた『サクラ大戦2 ~君、死にたもうことなかれ~』において、李紅蘭のテーマソングで「浅草のアン''ジェ''ラスでスイーツを」という趣旨の歌詞があるが、実在した浅草の喫茶アン''ヂェ''ラスは昭和21年開業、『サクラ大戦2』は大正をモチーフにした''太正''14年前後の物語で時代が合わない。間違いなく元ネタではあるが別物といえる。))、「現実」でその歴史に幕を下ろしてもゲームという「仮想」の世界でかつての姿を留める形となった。 ---閉店の告知は2月の初めに行われた為、『JUDGEMENT 7』の用語集ではこの閉店に関して言及されている。 -2019年4月(北米地域は5月)に『Our World Is Ended.』というタイトルで『オレオワ』の海外版が発売された。ワールドワイドパブリッシャーはイギリスのPQubeが担当。海外版はPS4/Switchに加えてWin版がSteamでの配信となり、英語と日本語を同時収録している((音声は日本語のみ。UIと字幕が2か国語に対応。))。 --この海外版はPSV版をベースとしており、『JUDGEMENT 7』で追加された後日談および新OP、フローチャートと用語集は未収録となっているが、それ以外のUIは『JUDGEMENT 7』で改善されたものを採用している。 ---同時期の発売でありながら『JUDGEMENT 7』と海外版が同一の内容にならなかったのは、両者のパブリッシャーが異なるが故の契約上の理由であると思われる。 ---Steam版は日本でも配信されているのだが、上述通りVita版の移植である点には注意。

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