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ウルティマ 恐怖のエクソダス - (2019/03/06 (水) 17:18:55) の編集履歴(バックアップ)
ウルティマ 恐怖のエクソダス
【うるてぃま きょうふのえくそだす】
ジャンル
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RPG
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対応機種
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ファミリーコンピュータ
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発売元
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ポニーキャニオン
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発売日
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1987年10月9日
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定価
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5,900円
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判定
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なし
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Ultimaシリーズリンク
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概要
コンピューターRPG『ウルティマ』シリーズの第3作『Exodus:UltimaIII』のファミコン移植版。
当時のファミコンは、1987年1月に『ドラゴンクエストII 悪霊の神々』が発売されRPGブームが起きていた。その最中発売された作品。
PC版『Ultima III』は、当時のファミコンで主流となりつつあったRPGとはかなり様式の異なるゲームであった。インターネットもない時代で攻略本も不親切なものしかなかったため、複雑なシステムのゲームが市民権を得るのは難しい時代であった。
特徴
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キャラクターメイキングや4人パーティはファミコンでは本作が最初。
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セーブはバッテリーバックアップ。
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また、ステータス一覧表示や、自分の視点内しかフィールドマップを視認できないという、これまでにないシステムを採用している。
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ファミコン版では3作目からの移植となるためか、1や2から引き継がれたエクソダスの正体におけるSF要素は完全に廃され、カードも石版と訳されている。
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ラストはある意味衝撃的。他にない。
システム
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住民や兵士など、誰に対しても戦いを挑める。最初にロードブリティッシュ(この世界の統治者)と一戦を交えて、そのまま全滅するのはお約束。
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そして「王様が最強なら自分で世界救えよ」などとジョークを叩かれるのもお約束。
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街の中で住民を虐殺したり強盗を働くと兵士に囲まれ、弱いとあっという間に全滅させられてしまう。しかし慣れると、この方法で稼ぎを行うプレイヤーもいる。
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宿屋がないかわりに食料の概念がある。
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フィールドで歩きまわる、あるいはBボタン連打で時間を経過させればHPやMPは回復するが、食料を消費する。食料がなくなるとHPが減りはじめ、あっという間に餓死ということもある。
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しかしHPは多めで、食料も非常に安価かつ減りにくい。
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また食料はアイテム保持枠を埋めず、独自のカウンターを有する。
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2DMAP上で視界の概念がある。
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よくある屋内や壁の中がブラックアウトされるだけのものとは異なり、移動にあわせて常に見えない影の範囲も移動していくシステム。
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画期的ではあったが、処理が重くなってしまったのか、移動の際、たまに引っかかるような多少のもっさり感がある。
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そのためか、次回作の『IV』のファミコン移植では、この処理は大幅に簡略化されている。
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風向きの概念があり、船で移動する際、風向きに応じて移動速度が低下する。
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馬を手に入れると、説明書の記載にある自分の移動速度が倍という効果ではなく、フィールドの敵キャラの移動速度が半分になる。
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相対的に倍になっているとはいえるが、おそらくシンボルエンカウントや視界の仕様上、処理速度を保てなかったと思われる。
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仕様を知らないか、単に快適な移動速度を求めるプレイヤーからは、まったくの無駄アイテムとみなされがち。
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ダンジョンに入ると、2Dフィールドから1フロア16マス四方の3Dダンジョンになる。
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ウィザードリィのように壁に厚みがない方眼の仕切り線タイプではなく、壁にも1ブロック分の厚みがある。
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戦闘はタクティカルバトル。
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フィールドではシンボルエンカウント。ダンジョンはランダムエンカウント。
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逃げるコマンドがないという仕様(一応下記にあるハートの磁石という救済アイテムはある)。国産PC版と異なり、これは原典のAppleII版と同様。
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レベルアップのシステムは、一定経験値を貯め、王様に会う必要がある。
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しかしレベルアップではHPしか上がらず、ステータスを上げ高度な魔法を覚えるには、別世界を探索した先にある神殿に寄付する必要があるという面倒な仕様。
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魔法の習得は、対象魔法の消費MPまで最大MPが上がれば、自動的に習得する。
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このため、終盤に覚える強力な上位魔法は、習得してもほぼ1度使うだけで、大半のMPを消費してしまうということになる。
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レベルを上げると、地上で出現する敵が強くなっていく。
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敵の強さは「PTの4人のうちの最大レベル」で決まるため、レベル最大のキャラは引っ込めておかなければ詰みかねない(キャラは最大20キャラ作ることが可能で、ウィザードリィなどと同様、ある程度のフラグは他PTにも引き継がれる)。
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このため、レベル上げは最低限にとどめ、以降はレベルを上げることなく、ステータスのみを上げるのがクリアへの近道となる。
評価点
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オリジナルの「Exodus:Ultima III」は名作である。移植時の様々な問題に目をつぶり、国産RPGとはやや異なるプレイスタイルに慣れれば、名作の面白さの一端を垣間見られるかもしれない。
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メッセージや固有名詞のアレンジのおかげで隠れがちだが、キャラメイキングが多少簡略化された程度で、システムやゲーム内容に関しては比較的忠実に移植されている。
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バッテリーバックアップシステムが当時のゲームとしては驚異的な強固さな上、3つセーブ可能。意図せずに消えてしまうようなことはまずないと言っても良い。
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その強固さは「2階から落としても消えない」「分解して電池を外そうとしたが溶接されていた」という、ユーザーからの報告もあるほど。
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同時期(前後1ヶ月以内)に発売された、女神転生(パスワード40文字)・破邪の封印(119文字)・桃太郎伝説(38文字)などと比べても先進的。
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パッケージやCMで描かれている日本製西洋ファンタジー風のキャラクターは好みの問題もあるが、悪くない。
賛否両論点
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クリアへのパターンは非常に自由度が高く、必須フラグや聞く必要のあるNPCの情報(イベント)は少ないため、プレイヤーによってプレイ時間には大きく幅が出る。
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主流となりつつあった、次の行き先や行動を自然に誘導してくれる親切なRPGに慣れている場合、何をしていいかわからなくなることがある。
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システムをよく理解しないと、ほぼ確実に自爆するハメになる。そのいっぽうで、ステータスが上がればレベル1でも最強魔法が使えたりと、簡単にクリアすることも可能。
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戦闘バランスは、HPがダメージに対して膨大であるなど、きわめて易しい。
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ただし、TRPGの判定バランスを引き継いでしまったのか、命中率が低く設定されており、もっさりとしたキャラの動きとあいまってストレスが溜まる。
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BGMは全曲、オリジナル曲に差し替え。
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原作ではこの作品よりBGMが初めて用意され、後のシリーズでも受け継がれるシリーズの代表的な曲が多数用意されているのだが…。
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後藤次利氏によるオリジナル曲の評価はそれほど悪くないが、やはりPC版の曲が好きだった人には違和感が残ってしまうのは、仕方ないだろう。
問題点
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食糧システムは、見落とした初心者には致命的なトラップになるいっぽう、理解した人間にとってはストレスにすらならないほど空気と両極端。
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そのためか、次回作のファミコン版『IV』では割愛されている。
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逃げるコマンドがない。
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フィールドではシンボルエンカウントなので事前に避けることはできるが、3Dダンジョン内ではランダムエンカウントであり、いかんともしがたい。
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多彩なシステムを持っているわりに、ゲーム的に意味のあるものは少なく、その多くはただの空気か、初心者へのトラップとしてしか機能していない。
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操作性も快適とはお世辞にもいいがたく、大多数のユーザーからクソゲー評価をされたのもやむなしか。
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キャラメイクにおいて、ネタにもならない死に職業が半数ちかくもある。
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魔法が使えるかどうかが死活問題となるため、全部の武器防具を装備できても魔法が全く使えない「せんし」は使い勝手が悪く、「きし」の劣化扱いになってしまう。
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同様に「さんぞく」も使い勝手が悪すぎ、縛りプレイでもない限り入れる価値はない。
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宝箱を安全に開けることのできる魔法「ウネム」の使い勝手が良すぎるため、宝箱の罠解除技能しか取り柄がなく、魔法も全然使えない「とうぞく」は正直なところ、入れる価値が見当たらない。
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「まじょ」はあまりにも使用能力が中途半端で、「きし」の劣化版でしかない。「かがくしゃ」も劣化「まじゅつし」でしかない。
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幸い、本作の最強近接武器である「てんのつるぎ」と、最強防具である「てんのよろい」は誰でも装備できるため、一応どんな職業の組み合わせでもクリアできる可能性は残っているとは思うが…
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『苦労したくない、楽にクリアしたい』というなら、「きし」「シスター」「まじゅつし」「レンジャー」から組み合わせてパーティーを構成することをオススメする。
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システムを理解していれば、ステータスの配分も決まりきってしまう。
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もっとも、ゴリ押しでどうにでもなる戦闘バランスのため、問題になることは少ない。
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問題点の目立つFC版独自アレンジ。
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本作はPC版『Ultima III』と比べると、固有名詞・セリフ・登場キャラなどに大きなアレンジがなされている。アレンジの監修を担当したのは秋元康。
しかしその奇妙なアレンジは、オリジナル版を知るプレイヤーからすると受け入れ難いものがほとんどであった。つまり「数少ない擁護者を敵にまわしてしまった」わけであり、これがより一層評価を微妙にしてしまっている点である。
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セーブする場所は、ずばりセーブデパート。
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「あなたがたは ロトのしそんですか?」など、ウルティマの世界観をぶちこわしにするセリフ多数。
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メタ発言をする人物は原作でもそれなりにいるが、数が多くなりすぎた。
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さらに、本作のイメージソングを歌っている声優の日高のり子がゲーム中に登場し、レコードを宣伝する。
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ある行為をすると、PC版にないアイテム「ハートの磁石」をくれる。イメージソングの曲名でもある。
ちなみにこのアイテム、その場の状況を一切問わず、使った瞬間にロードブリティッシュ城に帰還できるという便利なもの。使い捨て、かつひとり1個しか持てない(じつは「わたす」コマンドによって、簡単に複数所持が可能だが、個数が表示されない)という難点はあるものの、戦闘中でも使えるため、非常に重宝する。(本作には「逃げる」コマンドがないため、いったん戦闘が始まって以降、回避するにはこのアイテムを使うしかない)
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なお、他の住民と同じように戦いを挑めるが、彼女はロードブリティッシュと異なり、普通に倒せてしまうので、その点をバカゲー要素として評価するプレイヤーもいる(余談だが、ガードや兵士を除く非戦闘系NPCにしてはやや強いが、初期PTでも普通に倒せる程度)。
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パーティーメンバーが縦列になって歩く、いわゆるドラクエ歩きを採用。FCのスペックでシンボルエンカウントや視界などのシステムを再現した代償か、妙にモタつくキャラの動きと相まって、後列にモンスターシンボルがぶつかり戦闘を強制される事故が起きる。ステータス画面を開くと全員が先頭に集まる小技を駆使する必要があるなど神経を使う。
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状態異常に「風邪」が追加。毒に比べるとダメージ量は低いが、呪文では直せず、街などの施設に行くしかないうえ、ほかのパーティメンバーにうつる場合がある。
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PC版で僧侶にあった「MP回復力2倍」というメリットが、FC版ではカットされている。
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このためほぼ同様の特性を持ち、さらに遠距離武器が使え盗賊技能もあるレンジャーと比較すると、MPを早く成長させられる程度のメリットしかなく、わざわざ選択する意味がなくなってしまった。
総評
オリジナルの内容を知るユーザーにとっては妙な独自色がネックとなり、ウルティマを本作で最初に触った人には、一風変わった難解で不可解な仕様がネックとなる。その結果、どちらのプレイヤーからも歓迎されないまま終わってしまった、不遇の一作である。
しかし、時代背景を鑑みてみれば必ずしも全てがつまらないというわけではなく、所々に光る点も持ち合わせている。何より、オリジナルのPC版は米国で1983年(日本版は1985年11月)発売という点を考えてみれば、当時としてはハイクオリティーで先進性があった、という点は認めざるを得ないだろう。ある意味では「評価されなかった名作」というべきなのかもしれない。
その後の展開
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本作の反省からか、UltimaIVの移植作『ウルティマ 聖者への道』では、かなり遊びやすく無難なアレンジに改善されている。
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オリジナルでは女性だったジュリアが、なぜかファミコン版ではヒゲのマッチョの男に性転換しているなどのツッコミどころはあるが。
余談
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海外でもNES(北米版ファミコン)で発売されている。
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こちらは日高のり子→シェリーというキャラ名の変更などを除けば、ほぼ日本版と同一。
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UltimaVI以降ではシェリーという名のネズミが登場するが、超重要な役を演じることになる。
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基本的に評価はそれなりに高いが、日本語版から逆輸入する形になっているせいか、「厳しい文字制限のため略称が分かりにくい」ことに加え、あからさまな誤植や文法ミス、不自然だったり意味のとおらない文章があちこちに存在する。問題の奇妙なアレンジは少なくなっている(ロトの子孫>リンクの子孫 など、やめておけばいいのに、わざわざ形を変えて残しているものもある)ので、その点にさえ目をつぶれば名作ではある。
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ついでにスタッフロールでも、翻訳・再構成についての言及はいっさいなし。元のチームで作業を行ったのだろうか?エンディングは日本語版と完全に同一である(泣
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超余談として、ログイン誌上で原作シリーズをウルティマと書いたことに対して「アルティマだろ」とツッコミが入っており、「英語読みのアルティマではなくラテン語読みのウルティマと原作者も言っている」と答えていたのだが収まらず、当作品の正式名がウルティマとなった事で、やっと沈静化したという話がある。
(参考)ウィザードリィ 狂王の試練場
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1987年12月に、ウルティマシリーズと並ぶ有名RPGであるウィザードリィシリーズの『ウィザードリィ 狂王の試練場』がファミコンで発売された。
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この作品の出来が非常に良く、つねづね本作と対比されたことも、本作の評判を落とす一因となった。
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ちなみに本作の開発現場は、のちにゲームスタジオの入ったビルの隣にあるビルだったという(ソースは狂王の試練場の開発に携わった遠藤雅伸氏)。