目覚めし厄災
(HG 1/144 ハシュマル 説明書より引用)
火星の荒野でガンダム
フラウロスと共に
発掘・調査されていたが、ある人物が迂闊にもモビルスーツに乗ったまま接近したために、
モビルスーツの動力であるエイハブリアクターに反応して再起動。その直後に
怪獣のような咆哮と共にビームを発射
*1し、周囲を焼き払った。
原作での機体カテゴリーは人型兵器であるモビルスーツと戦闘車両であるモビルワーカーが存在したが、
第2期である『弐』になって登場した本機は驚きを持って迎えられた。
というのは、本作では設定上の理由
*2からビーム兵器は一切使用されていなかったのだが、ハシュマルはそのお約束をブチ破りビーム兵器を使用。
結果的に本作において
唯一ビーム兵器を使う機体となったのである。
ハシュマル自身もナノラミネートアーマーを搭載しており射撃武器はほぼ通用しないため、撃破には近接攻撃が必須となる。
後頭部から尻尾の様に生えている「超硬ワイヤーブレード」と、両腕部先端にあるロケット式に発射できる槍の様な弾丸「エネルギー弾」も搭載し、
ビームの効かないモビルスーツ相手にも脅威となる威力を誇る。つまり、遠近両方に対応する強力な機体である事を意味している。
厄祭戦時代のハシュマルはモビルスーツにはワイヤーブレードやプルーマで攻撃し、ビーム兵器は施設や市街地などの人口密集地帯において、
人間を効率よく殺すために使っていたという。
さらに厄介なのが、無人の子機である「プルーマ」を製造する能力を持つ事。
ハシュマルは半永久機関であるエイハブリアクターを動力としているため機体を破壊しない限り稼働可能で、プルーマも資材さえあればいくらでも製造可能。
プルーマ自身もハシュマルと接続する事で補修及びエネルギー補給が可能であるため、
司令塔であり製造プラントでもあるハシュマルを先に潰さない限り被害は拡大していく一方である。
正に
人間だけを殺す機械であり、よくもまあここまで人を殺す事しか頭にない兵器を作ったものである。
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劇中の活躍 |
ハシュマルを倒すために、本来敵対関係にある鉄華団とギャラルホルンは共同戦線を張る。
人口密集地帯であるクリュセへの侵攻を阻止するため、侵攻ルート途中の渓谷で迎撃する作戦が立てられるが、
功を焦ったある人物(前述の起動させた者と同一人物)の横槍で進路を変更。本来無視されていた農業プラントが民間人諸共焼き払われてしまう。
その後、再び渓谷からクリュセ侵攻を図るハシュマルを阻止すべく迎撃作戦を取る鉄華団とギャラルホルン。
ハシュマル自身の強さのみならずプルーマの大群に苦戦する両組織だが、ガンダム・フラウロスの活躍でプルーマの分断に成功する。
最終的に鉄華団のパイロット、三日月・オーガスがガンダム・バルバトスルプスのリミッターを解除し、
圧倒的な戦闘力を以て激闘の末にハシュマルをようやく撃破した。
しかしリミッターを解除して戦った代償も大きく、この戦闘後三日月は右足の感覚を失い、
阿頼耶識に繋いでいない状態では完全な右半身不随になってしまった
(それ以前に三日月は一度バルバトスのリミッターを解除して戦っており、その際に右目の視力と右腕の感覚を失っている)。
また、本機から回収された超硬ワイヤーブレードはバルバトスルプスに移植され、後に同機はガンダム・バルバトスルプスレクスへ強化を遂げることになる。
三日月はこの機体を「地球で見た鳥みたいにすごくきれいだった」と評価しており、 あんな鳥はいません
「鳥ではなく天使だ」と訂正されているが実際にそのフォルムや、スペイン語で「羽毛」を意味するプルーマの名からもモチーフは鳥と思われる。
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厄祭戦とは |
本編から約300年前に勃発し、総人口の1/4を死に追いやり、 文明を崩壊させた作中史上最大の戦争である。
厄祭戦以前の技術水準は『鉄血』本編とは比較にならない程高く、軍事力はその殆どがAIを搭載した自律兵器で賄われていた。
科学の発展により人の犠牲が抑えられる効率的な兵器としてハシュマルのようなモビルアーマーも普及していたが、
激化する戦争により兵器に搭載されたAIが「自らの主目的を『敵の殲滅』から『 人類の殲滅』へと拡大解釈する」事態が起き、
その結果制御不能に陥ってしまう。しかもAI故に自己学習によってモビルアーマーは自らを改良・強化。人類の被害は拡大する一方であった。
やがて人類は団結してモビルアーマー打倒に注力する事になり、ここに 人類対AIの戦いの戦いが始まった。
モビルスーツが「人型」且つ「人が乗り込んで操縦する」という方式を取っているのは、
「 AIに任せているとロクな事にならない」という事を身を以て学習したからだけではなく、
「 人の手で人ならざる者を打ち倒す」という意図があったからなのかもしれない。
更にモビルスーツに人の動き・思考をより正確に反映させる…いわば「 人機一体」を実現させるために新たなインターフェース「阿頼耶識システム」に加え、
相応の出力を得るために半永久機関「エイハブリアクター」を2基搭載した。
これらを実現したモビルスーツ「ガンダム・フレーム」タイプが計72機作られ各地で奮戦。厄祭戦は最終的に人類の勝利に終わったが、
その被害は甚大で 月の形状が変わってしまう程であった。
作中ではモビルアーマーの存在自体限られた者以外には忘れられているが、
ギャラルホルンの創設メンバーにして最高意思決定機関である「セブンスターズ」の序列は彼らの先祖のモビルアーマー討伐数によって決められている他、
(休眠中のモビルアーマーの再活性化に繋がりかねない)エイハブリアクターは彼らに徹底管理されている。
ガンダムを始めとする厄祭戦当時の兵器の武装や性能、ギャラルホルン側の陣形にもやたらと重装甲を仮想敵としているような節が見られ、
後の時代への影響が甚大なものだったことが窺える。
作中に登場したモビルアーマーはハシュマル1機のみだが、宇宙のどこかではモビルアーマーとの戦いが続いているのかもしれない…。
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余談 |
前述した通り、ハシュマルのモチーフは天使だが、これは『 機動戦士ガンダム00』との対比と言われている。
更に言うと、『00』に登場するガンダムキュリオスの由来であるキュリオスは、ハシュマル同様主天使である。
これに限らず、本作は『00』との対比が多い。これは本作が元々『00』の次回作として予定されていたためだという(実際には『AGE』が先に放送された)。
他にも例を挙げると、
- 1話で『00』のエクシアは空から舞い降りたのに対し、『鉄血のオルフェンズ』のバルバトスは地中から這い上がっている
- 『00』のガンダムは天使モチーフに対し、『鉄血のオルフェンズ』のガンダムは悪魔モチーフ
(総数72機&ガンダム・フレームの機体名は「ソロモン72柱」の悪魔が元ネタ)
- 『00』のガンダムは最新鋭の技術を用いたハイテク機体に対し、『鉄血のオルフェンズ』のガンダムは300年以上前のロストテクノロジー
などがある。
なお、余談中の余談ではあるが「小型メカの製造・修復機構を持つ」「敵味方が共同戦線を取り迎撃に向かう」といった点から、
『ガンダムAGE』に登場する大型モビルスーツという体での超大型モビルアーマーである「シド」とも共通点が見受けられる。
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(参考資料:『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ メカニック&ワールド 弐』)
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スパロボでは |
30周年記念作品『スーパーロボット大戦30』の有料DLC第2弾を適用していると出現するミッション「天使、再臨」で登場。
本作での『鉄血~』の時間軸は原作におけるハシュマル戦後だが、原作で撃破した機体の同型機がスパロボ世界に転移させられる形で出現。
原作における「実は量産機」という設定を拾った形で、再び鉄華団の前に降臨する事となった。
プルーマによる自動修復を「マップ内にプルーマが1機でも残っていると敵ターン冒頭にHPが3割回復する」という専用能力「修復システム」という形で再現。
そのためまずは初期配置+増援で出現する40機のプルーマを掃除してから相手をしなければキリがない。
ハシュマル自体も2回行動する上、今作から仕様が変わって削れば削るほど圧倒的に硬くなる「底力」を高レベルで持ち、さらには「ガード」も完備。
その上希少スキル「地形利用」まで持っているガチっぷり。そのためたとえフル改造した武器でもダメージ4桁、という事もザラにある。
総じて、厄祭戦の殺戮天使の恐怖をこれでもかと自軍に刻み込んでくる強敵に仕上がっている。
しかしバルバトスの必殺技も解禁されるのでミカにフルボッコにされるのがオチだろうが
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SDガンダムバトルアライアンスでは |
ゲーム『SDガンダムバトルアライアンス』にはボス枠で参戦。本作のMAの例に漏れず、ステージ内を縦横無尽に暴れ回る。
本作の戦いの舞台はガンダムシリーズの歴史を記録したシミュレータであり、
改変されてしまったデータを修復して正しい形で再登録するために主人公達が戦うという設定。
そのため作品の垣根を超えてキャラクターや機体が集い滅茶苦茶になったシナリオをクリアした後、
修復されて正史に近くなったシナリオをクリアするという手順になっている。
ハシュマルは『鉄血』ステージの他に『 G』ステージで デビルガンダムの代わりに出現。
また、DLCシナリオでは『AGE』と『鉄血』が混ざった結果、EXA-DBによって量産されるという地獄絵図となった。
流石に他のステージに比べれば弱体化しているものの、一体は前述のヴェイガンギア・シドとタッグを組んで襲ってくるため手強くなっている。
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世界を恐怖に陥れた殺戮兵器の再臨

961000氏によるキャラが存在。
ちなみに主人公機よりも早くMUGEN入りしてたりする
かなりの巨体とそれに見合ったLIFE1600というタフネスぶりに加え、常時
ハイパーアーマーで
投げや
ロック系の技が効かない。
ビームや踏み付け、凄まじいリーチを誇るテイルブレードによる攻撃の他、
専用の
ゲージを消費してプルーマを
ストライカーとして呼び出すなど、原作で見せた攻撃の数々を搭載。
また、ナノラミネートアーマーやプルーマによる本体の修復機能も備わっており、前者は
飛び道具半減、
後者はプルーマが本体の近くにいるとLIFE回復という形で再現されているなど、製作者の拘りが光る。
ただし一部の
通常技の予備動作中にハイパーアーマーが途切れる上、巨体故に足元が死角になっている技も多いので油断は禁物。
また、12Pカラーは「厄祭モード」となって一切怯まなくなる他、プルーマの上限数増加や常時ゲージMAXなど、性能が大幅に強化される。
AIは簡易的なものがデフォルトで搭載されている。
簡易とはいえ上記の仕様上かなり手強く、通常のキャラで勝つ事は難しいだろう。
想定ランクは
凶上位~狂下位程度、厄祭モード時は狂中位以上との事。
出場大会
*1
当時公開直後だった『
シン・ゴジラ』と、ハシュマル初登場回の翌週が番組の関係で時間がずれた事に因んで、
ファンからは
「
放送時間変更ビーム
」と呼ばれている。
*2
本作のモビルスーツや大型艦艇には「ナノラミネートアーマー」という特殊装甲が用いられている。
「ナノラミネート」という塗料で覆われたこの装甲は、動力源であるエイハブリアクターから発生する「エイハブ粒子」に反応し、
装甲表面に衝撃を拡散・吸収させる多重積層構造を形成するが、これはビーム兵器を拡散させる効果も持つ。
この関係で本編の時系列では既にビーム兵器は廃れており、
ハシュマルのビームを見た鉄華団の一員であるチャドが「大昔に使われていた兵器」と語っている他、
ビームの直撃を受けたモビルスーツ「獅電」が機能停止しながらも機体やパイロットは大きなダメージを受けなかったという描写もある。
ナノラミネートアーマーに対抗するのに最も効果的な方法は、
メイスや
斧といった大質量武器での近接攻撃による継続的な衝撃を与える事で、一気に摩耗させる事。
一応は銃火器による撃破も可能だが、その場合でも連射力のある武器を継続的に当て続ける(または同装甲の消耗が激しい部位や関節部等への命中を狙う)か、
特殊金属で作られた大型弾頭を高速で撃ち出す(所謂
パイルバンカー)禁止兵器ダインスレイブをなんとか命中させるなど、難易度は格段に跳ね上がる
(鉄華団もダインスレイブを使った事があるが、弾頭の材質が違うので
厳密には違反ではない
…が敵であるギャラルホルンが鉄華団に対してダインスレイブを使う為の口実にされてしまった。
なお命中率に対しては飽和攻撃(要は数撃ちゃ当たる)で誤魔化している。
ミカはアムロみたいには避けられなかったよ…)。
ある意味
フェイズシフト装甲と逆の設定である(後にSEED世界にもビーム兵器を無効化する「フェムテク装甲」が登場している)。
なお大型艦艇同士の対艦戦闘では対艦ナパーム弾の飽和攻撃による高熱で溶解させるという方法が取られる場合もあるようだ
(本作以前にも似た設定として『
ゾイドジェネシス』の「ヘルアーマー」がある。
こちらはビームも物理も無効だが、やはり
口腔内への攻撃や熱による溶解攻撃、
絞め殺す(関節技)等で対抗出来た。
なお基本的な対ヘルアーマー戦法は「リーオ(別名メタルZi)製の武器」を使う事だが、ダインスレイブの「特殊金属」もこれの影響なのだろうか?)。
以上の設定を踏まえて本作を見てみると、
ハシュマルに(作中に登場する機動兵器に対して効果が薄いという理由から全く使われていなかった)ビーム兵器をわざわざ装備・使用させる事で、
「本作のビーム兵器は、
人間だけを殺す機械」という事を視聴者に強烈に印象付ける事に成功している
(同類として
スローターダガーの足バルカン(12.7mm)がある。
そもそも「スローター」って「虐殺」って意味だし)。
前述のナノラミネートアーマーを持つ獅電を相手にビームを発射するという一見無駄に見える行為も、
むしろ「
MSがビームを弾いた事により飛び散ったビームが逆に周囲の被害を増やし防衛側のやる気を削ぐ」みたいな
回りくどいいやらしさも感じ取れ、
実際、前述の獅電が守ろうとしていた農業プラントは流れ弾で壊滅的被害を受けた。
プラモデルでも専用のビームエフェクトが付属する事も、本作におけるビーム兵器の異質さを物語っている。
このような設定にしたのは、本作を手掛けた長井龍雪監督が「戦艦やモビルスーツがビーム1発で沈むのはおかしい」と感じたため。
このため、本作はシリーズ全体で見ても非常に
鉄臭く、重々しい戦闘が繰り広げられている。
最終更新:2024年12月14日 19:59