イデオン

「イデ」とは何か。イデオンとは。



 ・全高:105m
 ・重量:5650t
 ・出力:12万t/df
 ・武器:150センチ級グレン・キャノン2門、80センチ級グレン・キャノン4門、ミサイル・ポッド、
  レーザー砲、イデオン波導ガン、ミニ・ブラック・ホール砲、イデオン・ソード
  ──公式サイトより

「ようし…ロボットなら立ち上がって戦えってんだ!」

株式会社サンライズが制作し、東京12チャンネル(現・テレビ東京)で放送されたアニメ『伝説巨神イデオン』の主役ロボット。
地球の植民惑星ソロ星から大型の母艦「ソロ・シップ」と共に発掘された巨大ロボットで、
「ソル・アンバー(Aメカ、頭部と両腕)」「ソル・バニアー(Bメカ、胸部と腹部)」「ソル・コンバー(Cメカ、腰部と両脚)」
計3機のメカが合体してイデオンとなる。
また、各メカはイデオ・デルタ、イデオ・ノバ、イデオ・バスタという飛行形態への変形も可能で、宇宙ではこれとイデオンを巧みに使い分けて戦った。
元々は第6文明人が作った古代遺跡であり、未知のエネルギー「無限(ちから)」が秘められている。
この未知で不安定な力の稼働状態は、イデオンの各コクピット及び額と胴体下部に存在する緑色の円形計器「イデゲージ」によって観測でき、
ソロ・シップの艦橋にも同様の計器が設置されている。
乗組員達が解析不能の超エネルギーと困難な状況に振り回されながら奮闘し、物語の盛り上がりに連動するようにイデゲージが点灯、
圧倒的な力で敵を薙ぎ倒すというのが物語の一つのカタルシスとなっている。
なお劇中の科学者シェリルの分析によると、本来の出力では立つ事さえままならないのだそうな
また、設定資料によると第6文明人は平均身長4~5mの巨人種族であったとされており、イデオンが全長105mという巨大さで妙に隙間だらけの構造なのも、
巨人達のスケールで設計されたからである。

「イデオン」の名称は、ソロ・シップに遺されていたデータで唯一解読出来た「IDEON=イデを包むもの」という言葉に由来し、
小説版ではイデゲージに浮かび上がる記号がギリシャ文字の「ΙΔΕΟΝ」に分解出来そうだったからとされている。
ゲージの見方を変えると「TOMINO」に読めたりもする。あと脳人達の世界ではない
メタ的には映画『禁断の惑星』でアルタイル第4惑星の古代遺跡機械で無意識の憎悪が実体化した「イドの怪物」が由来とも。
ソロ星はバッフ・クランからは「惑星ロゴ・ダウ」と呼ばれていたため、バッフ・クラン側からは一貫して「ロゴ・ダウの巨人」と呼ばれ、
地球人も「ロゴ・ダウの異星人」と呼ばれた。
地球人が外宇宙から来た異星人と最初に遭遇したのが火星だったら恐らく「火星人」と呼んでいるだろうし、割と理に適った話である。
逆に前述の「第6文明人」と言うのは「宇宙進出した地球人が遭遇した6番目の文明」と言う意味なので(ただし第1~第6全てが滅亡済であった)、
地球人にとってバッフ・クランは「第7文明人」にあたるが、捕虜にしたカララにより早々と名称が判明したためか、劇中でそう呼ばれた事は無い。
なお作中での設定は不明だが、「クラン」は英語で「氏族(一族)」を意味する
(彼らの持っている翻訳機が「地球」を太陽系の第三惑星ではなく「自分たちの母星」といった意味で翻訳しているので、
 これも固有語ではなく翻訳された言葉という可能性もある)。

起動時にはカメラアイに無数の走査線が走る演出が特徴的で、このギミックは後のガンダムシリーズにおける百式の系譜にて、
IDE(Image Directive Encode)システムとして取り入れられている(向こうも同じく走査線が走る)。

メインパイロットは本作の主人公であるユウキ・コスモ。16歳。担当声優は 塩屋翼 氏。1話でバッフ・クランとの戦いに巻き込まれ、
成り行きで弟分のアフタ・デク(CVは松田辰也氏。なお当時声変わり前の子役だったため、スパロボでは 小桜エツコ 氏が代役している)、
腐れ縁の少女イムホフ・カーシャ(CVは白石冬美氏)、
士官候補生のジョーダン・ベス(CVは 田中秀幸 氏)らと共にイデオンに乗り込み戦う事となる
(ちなみに本作における地球人の名前はもれなく姓・名の順になっており、逆にバッフ・クランの方が姓を最後に名乗る)。
特技はナイフ投げ

大技は二つあり、一つは手首から発射される巨大なビームである「イデオン・ソード」。
主にイデゲージが最大となった時に使用され、惑星一つを一刀両断してしまう程の威力を見せた。
OP主題歌では「伝説の巨神の力 銀河切り裂く」と歌われているが、よもやその歌詞の通りとは恐れ入るばかりである。
トミーが当時発売していた「サウンドフラッシャー イデオン」のイデオン・ソウドとは無関係
もう一つは「イデオンガン」*1。元々はソロシップの機関室に隠すように備え付けられていたのでエンジンの一部だと思われていたが、後に武器と判明する。
イデオンの腹部シャッター内にある発生装置から生み出した小型ブラックホールを渦巻状の重力嵐に変えて広範囲に放射する武器であり、
大艦隊を瞬く間に攪拌して粉微塵にする様は敵味方双方を震え上がらせた。尤も、互いの生存を賭けた総力戦となってしまった終盤は、
それら超火力を以てしても擦り潰されかねないバッフ・クランの圧倒的物量戦が待ち受けていた訳だが……。
本編での使用は終盤だが、OPやアイキャッチでは先行して登場している。

これらのイデオン本体に元からある装備は発動しなかったり存在を知らなかった事もあって、当初は徒手での格闘か、
機体の空きスペースに後付けで追加したミサイルポッドや、グレンキャノン(ビーム砲塔)などで戦った(劇場版では最初から付いている)。
それら自体は通常の兵器なのだが、無限力は発射されるビームやミサイルにも影響しており、グレンキャノンの出力が突如上がって過負荷で焼き切れたり、
ミサイルですらパワーが上がっている時はあまりにも速すぎて、敵に命中しても爆発する前に貫通してしまう等の現象が起こった
(序盤の有名な山場「カミューラ・ランバンの……(かたき)ィッ!」のシーンなど)。
終盤には一発一発が亜光速にまで加速され、レーザーの如く尾を引いたミサイルを全方位にばらまく有様になっていく。
両腕と脚部の外側にずらりと並ぶミサイル発射口を敵に向け全基開放する姿は、まるで敵に棘を逆立てるヤマアラシか、
相手の暴力に身を竦めて防御する姿にも似ている。

余談だが、カメラにはメインパイロットとしてコクピットにいるコスモやカーシャ達がよく映るが、各砲座やミサイルポッドを撃つために、
カメラにはあまり映らないクルーも何人もイデオンには乗り込んで共に戦っている。
よくネタにされる「グレンキャノンもだ!」「カーシャに撃たせろ!」といったセリフが出るのも、各砲座に無線で射撃指示をしている為である。
ある意味、人型をしていてもイデオンは戦艦ソロ・シップの護衛をする駆逐艦、護衛艦の類であると見る事も出来るだろう。
+ さらに余談・Bメカの左シート
劇中最初から最後までコスモの専用席だったAメカ、多少交代はあるがほぼカーシャの席だったCメカと違い、
Bメカは話の展開の中でかなり頻繁にその搭乗員を変えているのだが、同時にメイン操縦者の死亡率が異常に高い事でも知られる。
波導ガン初使用の際に炎上したコクピットに散ったモエラや、粒子砲の直撃後イデオンソードが星を砕く様を見届けながら息絶えたギジェなど、
印象的な死に方をした者は大体Bメカの左シートにいた為、『宇宙戦艦ヤマト』の第三艦橋勤務になるレベルの死亡フラグとして扱われた
(ヤマトの艦底に存在する第三艦橋は、劇中何度も大破したり丸ごと溶解・消滅等の被害を受け多数の犠牲者を出している。
 リメイク版の『2199』では逆に、本作のヤマトの堅牢さを支える波動防壁(バリア)の制御機関所在地という艦で一番頑丈な箇所になった。
 そのせいで平気で胴体着陸したりなどかえって酷使されている感もあるが)。

なお、サブパイロット席の右シートに座りイデオンのメインエンジンのオペレート等を行っていたマルス・ベントは、
隣席のメインパイロットが何度も死ぬような被害を受けつつも何だかんだで『発動篇』という最終盤で戦死するまで生き延びており、
イデオンファンからは「死神メガネ」(こういうのじゃなくて恐らくサンダース軍曹的な意味)と呼ばれる等の風評被害を受けていたようである。
まあいずれにしろ、ベントも最初にBメカに乗ってたベスもみんなイデの発動で星になってしまったわけだが

また、イデオンとソロ・シップにはバリア機能もあるが無限力由来である為不安定であり、鉄壁な時とそれ程でもない時の落差が大きい。
とはいえイデオンのドッキング時にはバリアが発生している描写があり、ドッキングを妨害されるシーンはほとんど無かった。

+ 原作の解説
本作は『機動戦士ガンダム』で有名な富野喜幸(現・富野由悠季)監督が手掛けている。
放送当時は打ち切られてしまった『ガンダム』だが、再放送やガンプラブームの影響で再評価が進む中で、
本作はアニメ雑誌上でも「ポスト・ガンダム」として宣伝されていた。

このジム(『機動戦士ガンダム』の味方側やられメカ)のようなデザインはスポンサーであるトミーから持ち込まれ、
これを見た富野監督はスポンサーへの説明会では王道のロボットアニメのように紹介していたが、
実際には第6文明人の遺跡と設定し、これを巡る壮大なSFドラマが展開された(『機動戦士ガンダムさん』8巻より)。
このように設定したのは、「日常の延長という要素の排除」という意図があったらしく、
富野監督自身も「でなければ、こんな酷いデザイン誰が使います?」と語る程
(デザインが酷いかどうかは置いておくとして、
 同時期に『ガンダム』の後番組として、日常の延長という要素の塊のような『無敵ロボ トライダーG7』が放送されていたため、
 差別化と言う観点でも良い判断だったと思われる)。
後年、富野氏本人による小説版の挿絵ではH・R・ギーガーがデザインしたような異形の巨神になっており、これはこれで酷い
実際、「主役ロボに使用された超エネルギーを狙い襲い来るビックリメカ」「変形合体」など、
王道ロボットアニメの皮を被って繰り広げられる異なった文化の対立、人同士の感情のすれ違いによる不和といった、
ギスギスとして人間の内面を抉るハードなストーリーは子供には受けず、ガンダム同様打ち切られてしまうが、
中高生以上のファンからの後押しで放送出来なかった部分を追加した劇場版が公開された。
ちなみに、そのちょっと前に同じく打ち切られながらも劇場版にまでこぎつけたロボットアニメが公開されており、監督は少し悔しがったという逸話がある
念のため言っておくと、監督も何もスポンサーに悪意があってハードなストーリーを作ったわけでなく、
元々設定に無い玩具オリジナルのギミックを作中で再現するなど販促にも協力的だった。
有名なラストを除いても登場人物に死者がやたら多かったのも、出演声優にギャラが払えないので已む無く……という、
役者の都合で殉職者が出ていたとされるドラマ『太陽にほえろ』じみた事情があったという世知辛い話も聞かれる。

ドラゴンクエスト』で知られるすぎやまこういち氏が作曲した劇伴は作中の世界観やストーリーの雰囲気を表現しており、
本作を扱ったゲームでも度々採用されている。

機動戦士ガンダムUC』の作者である福井晴敏氏は、本作を富野アニメ最高傑作として賞讃している*2

ちなみに、企画段階でのタイトルは『ガンドロワ』で、後にバッフ・クランの宇宙要塞の名前として使われている。

ストーリー

ソロ星に地球人の移民団が入植しつつあった同時期、伝説の無限力である「イデ」を求める異星人バッフ・クランの探索隊がソロ星に接近する。
その一人である高官の娘、カララが些細な冒険心から地上に降り立ち、地球人に接触してしまった事から戦いが始まってしまう。
カララが見知らぬ異星人に囚われたと誤解した兵士の勇み足で戦端は開かれ、交戦の意思がない事を示すために地球人は白旗を振るも、
それはバッフ・クランにとっては「お前達を地上から消す」*3という意味であった。
あらぬ誤解から始まった戦いの激化でソロ星は壊滅、コスモ達はイデオンと共に発掘された宇宙船ソロ・シップに乗り、
壮大な逃走劇(スペースランナウェイ)を繰り広げる事となる。
敵も味方も互いのエゴによる誤解とすれ違いで戦禍はとどまる事を知らず広がっていき、そんな人々の愚行を無限の力は静かに見ていた。
そして、決定的な破綻の時は訪れる……。

+ ネタバレ
「何故だ!? 何故殺す!? 何故戦う!? 何故そっとしておけないんだ!!」

「イデの力が解放したらどうなるか、誰も分かっていないんだぞ!」

「貴様達が…貴様達が責任を取ってくれるのか!? 貴様達がーっ!!」

無限力・イデとは、第6文明人全ての精神が統合された膨大な精神エネルギーの塊であり、
イデオンとソロ・シップこそが第6文明人を滅ぼし、彼ら自身をイデに変えてしまった偉大かつ愚かな発明の産物であった。

イデの目的は地球とバッフ・クラン両者が善き人類へ成長する事で、自身の守護者を確立する事であり、
両者の星の誕生、文明の発展、そしてソロ星で両者が出会ったのも、全てはイデの計画であった。
バッフ・クランと戦う為にイデの本体とも言えるイデオンとソロ・シップが動き始めた時点で、
コスモ達もイデの一部と言える状態に、言うなればイデに取り込まれ始めていたのだ。

イデの望む善き人類の条件、もしくはそれに近しい「純粋な防衛本能」に反応しやすいという原則こそあるが、
状況的に追い込まれないと出力が安定しなかったのも、時折唐突に訳の分からない発現のしかたをしたのも、
全ては不特定多数の意思の多数決という名の気まぐれや集団ヒステリーによるものであったという事である。
そして「イデの解放」もしくは「発動」と呼ばれる最終手段を持っており、
「善き人類になり得ない≒地球、バッフ・クラン両者の和解が不可能だとイデが判断した時」に起こるとされているが…。

TV版最終回は上記した打ち切りの煽りにより、和解できないまま二つの勢力が戦い合う選択をした事で突然イデが発動し、
宇宙全てを因果地平の彼方へ消し飛ばして、何もかも消滅という
結末になった。
劇場版『発動篇』では、イデの発動に至る過程がより詳細に描かれており、バッフ・クランとの壮絶な死闘の末相討ちとなった瞬間にイデが発動、
敵味方問わず全ての登場人物達が死後の世界へ転生され(或いは命全てがイデに還元され)、宇宙は再構築の後新たな始まりを迎えている。
設定・ストーリー展開双方の意味で、文字通りのデウスエクスマキナである。
筆舌に尽くしがたい程に壮絶な結末になった理由は富野監督曰く「バカは死ななきゃ治らない」だそうな。何という黒富野
監督自身、人の内面の闇を掘り下げていく物語に多大な心的負担を覚えていたようで、Ζガンダム以降の悲観的ニュータイプ観などに、
その後遺症が長く残り続ける事にもなり、業界においては「皆殺しの富野」と畏怖される事に*4

ただ誤解されがちな点として、劇場版イデオンのラスト自体は決して暗いものではない。
人々は生まれ変わり、わだかまりを捨て、争わなくて良い新世界へと導かれていく様は救済のイメージもあり、全滅エンドである事は事実だが、
決してバッドエンドではない事は記憶にとどめておいてもらいたい。
全ての虚飾、柵(しがらみ)、蟠りを捨て去った象徴として丸裸となった人々がイデによる滅亡後の宇宙を無数に飛び交い、
不幸な別れ方をした男女が人目を憚らず全裸で睦み合い、不俱戴天の敵であった者同士が和気藹々と全裸で談笑する姿は、
これまでの生死のかかった殺伐さとの温度差もあってシリアスな笑いすら起こる場面であった。
最終決戦前にキスしようとしたコスモとカーシャが互いの戦装束のヘルメットに阻まれて適わず、それが今生の別れとなった一幕などは、
纏う衣服すら互いを分断している場面として実に象徴的であり、因果地平の彼方でそれを捨て去った二人がようやく口付けを交わし、
再誕の喜びを歌う「カンタータ・オルビス」の壮大な調べと共に全てのいのちが星へと還る終幕は観る者の胸を打つ。
ある意味、富野由悠季版『火の鳥とも言うべき怪作である。

かなり巻き込まれたであろう人間以外の生命の姿は確認できないので、東方先生はやはり憤慨するかも知れないが
あと、おばはんの全裸とか誰得という理由からか、カミューラ・ランバンとの再会もカットされた

ピンと来た人もいるだろうが、後の『新世紀エヴァンゲリオン』や『魔法少女まどか☆マギカ』に通ずる要素が多い。
また、上記二作品の監督(前者は庵野秀明氏、後者が新房昭之氏)及び前述した福井晴敏氏のコメントがTV版のBlu-ray BOXの特典に掲載されている。

+ 外部出演
+ スーパーロボット大戦
『F』で初参戦。しかし、この時点では続編である『F 完結編』の予告で出るのみで、初参戦は実質『F 完結編』である。
原作同様撃墜されるとイデが発動し、ゲームオーバーとなる。これは後のスパロボでも同じ。
それ以外にもイデシステムにより、イデゲージが溜まりすぎるとパイロットが「イデ」となり暴走するなど、
「システムを理解していないと危険な存在」という傍迷惑な原作再現要素が詰まっている。
それでいてイデゲージが溜まっていないと、耐久力と全方位ミサイルくらいしか強みは無いのももどかしい所。

しかし、イデシステムを理解してしまうと評価は一変。
自軍のマップ兵器を浴びせ続けて、切りの良い所で手を止めればENは「無限力」の∞となり、
射程無限・攻撃力9999カンストのマップ兵器2種を能動的に使えるようになる。
精神コマンドも「魂」(ダメージ3倍)、「必中」(攻撃が100%当たる)が使えるため、上記のMAP兵器の一つ、
扇状に範囲が無限に広がるイデオンガンを端から撃てば雑魚もボスも一撃で倒せるなど、ゲームバランスを因果地平の果てにぶっ飛ばせる。
なお予告版ではイデバリアを使っていたが、本編では使用していない(強化パーツでビームコートを付ければ台詞は再現可能)。
今作のバッフ・クランはソロシップと共に一部の戦力がタイムスリップしてきたという設定で、原作程の規模ではない。
そして、果てしない闘争の原因の一つの「理解しあえないきょうだい」が完全和解を果たし、
最終的にイデが地球の危機を収め、イデオンの登場人物達は元の時代に戻っていった。

αシリーズ完結編である『第3次α 終焉の銀河へ』でも参戦。
今作は「無限力」と「善き人類への成長と試練」というイデオンと同じテーマでイデ以外の無限力、
バッフ・クラン以外の成長と試練の場が用意されている。
その大元のイデ、イデオンももちろん重要な存在として、いわば裏主人公とも言える扱いとなっており、
敵となるバッフ・クランの規模も再現されており、『トップをねらえ!』の宇宙怪獣に並ぶ巨大勢力として立ち塞がる。

終盤では、共通の敵である宇宙怪獣や霊帝という滅びの運命を相手に地球人・キャンベル星人・プロトデビルン、
そして母星を失い、αナンバーズとの死闘の後に自らの意思で共に戦う事を選んだバッフ・クランの名も無き兵士達が種族を超えて団結。
宇宙怪獣の巣があった銀河系の中心から飛ばされた先で最終決戦を迎え、
無限力と対になる力の持ち主にして全ての元凶たる霊帝の圧倒的な力を前にしてなおも戦い続けるαナンバーズ、そしてコスモは叫ぶ。

「俺たちは、生きたいんだ!」

その生命の叫びに遂に伝説の巨神は応え、その雄叫びが銀河を切り裂く一撃を呼び起こす。
11:54~

そして壮絶な戦いの果て、暴走する霊帝によって全てが飲み込まれかけたその時、イデオンはコスモ達を放逐して突撃。
イデの最後の力を振り絞って霊帝の力を打ち消し、トドメを各主人公が刺す熱いストーリーが繰り広げられる。
EDムービーのラストには、役目を終えて宇宙を漂うイデオンが映し出されて終わる事からも、これがイデオンの物語であった事が窺い知れる。

クォヴレー編においては更に重要な立ち位置を与えられており、
主人公機のディス・アストラナガンのディス・レヴが「負の無限力」であり、それに対するイデが「正の無限力」という設定となっている。
本来ぶつかり合うはずの互いの無限力が協力する事により霊帝を撃ち滅ぼし、
アカシックレコードにより定められたアポカリュブシスの滅びの運命を乗り越え、
正であるイデがαナンバーズとともに元の世界へと戻り均衡を保ち、負であるディス・アストラナガンは因果律の番人として崩壊を鎮める役に回った。

特定の条件を満たして隠し最終話に分岐した場合は霊帝が無限力への怨嗟の言葉を遺して爆散し、
イデがもはや帰還の叶わぬはるか未来に放逐されたαナンバーズを元の世界に送り返す役目を担う事になる。
二つの最終話をトウマ編とクォヴレー編で比較

一方で、原作通りイデの発動で終わるバッドエンドも用意されており、2周目以降に見る事が可能。
このエンディングはしっかりクリアしたとみなされるため、スペシャルモード解放の前提となるEXモードをクリアする際に、
最終ステージ付近の高難易度マップを省略できるため、最短攻略としてこのルートが選択されやすい
(むしろEXモード攻略の救済処置で用意された節がある)。

性能的には全方位ミサイルがイデゲージ解禁技になり、「魂」が使えなくなるなど『F』に比べ大人しくなっているものの、
イデゲージに加えイデオンのHPが一定以下でないと全方位ミサイル、イデオンソード、イデオンガンが解禁されなくなった以外、
暴走も無くなったりと『F』よりも格段使いやすく大幅強化された。
ただしダメージ計算式の変更、敵のHPのインフレに伴い、「ボスでも一撃必殺」は難しくなっているが。
上記反則MAP兵器2種に通常攻撃版も追加され、それぞれ単体、全体と、小隊システムに合わせた調整がされている。
またイデオンの性能自体もイデゲージで強化され、今回はイデバリアも発現、
敵撃墜によるゲージ低下を抑えればイデオンソードもイデオンガンも暴走無しで使い放題(勿論ENは∞)。
特に隣接機の攻撃に追加で攻撃できる「援護攻撃」技能をコスモに養成すると、
1ターンにイデオンソード5連発(あるいは5発目をイデオンガン)という恐ろしいことも可能になり、
硬いボスへ連発できる切り札となるほか、無限増援ステージにて反撃ガンでの無限稼ぎなどでも猛威を振るう。
加えてサブパイロットが精神コマンド「てかげん」(攻撃側の技量が敵より上回っている場合、撃墜するダメージを与えてもHPが10残る)を覚えるため、
ゲージ減少を抑える以外にも圧倒的な攻撃力で瀕死に追い込む→育てたい味方に倒させるといった動きまでこなせたりと、戦術の幅が広くなっている。
なお、全力で戦うにはどうしてもHPを30%ほどまで削る必要があるので、
実は序盤の間はイデオンのHPや装甲を改造しまくったり、コスモを養成しまくると逆に全力を出しにくくなるという落とし穴があったりする。
元々避けるタイプでもない事から手加減MAPWで追い込んでHP10で戦場に放り込む戦法も取りにくいので、改造や養成には注意を払う必要がある。

また、ダイターン3(120m)やガンバスター(250m)といったイデオン以上のサイズのユニットに対し、
バッフ・クラン兵が「奴も巨神なのか!」「巨神はいったい何体いるんだ!」と驚く特殊セリフがある。
逆に重機動メカより小さいバルキリーには「あんな小さな奴なんて蹴散らしてしまえ!」とイキる

その後、スマホアプリである『X-Ω』へイベント期間限定として15年ぶりに参戦。
こちらでは同じく期間限定参戦となる主役機に乗ると死ぬ『ぼくらの』とよりにもよって共演。
『ぼくらの』のストーリーの主軸である「平行世界同士の戦い」にイデが介入し、
戦いの支配者達がイデを恐れている事が語られているなどのクロスオーバーが描かれた。
なお、参戦発表時にはさらに主人公が交通事故で死ぬ『魔法のプリンセンス ミンキーモモ』も並んでいたため、ユーザーから慄かれた。
そしてこんな連中の先頭に並んだため、一周回って一番マシ扱いされた『牙狼-GARO-』
でもってその5ヶ月後に『X-Ω』がサ終したためアプリごと因果地平の彼方へと消し去られるというオチがついた

+ 戦闘デモまとめ
『F完結編』版
『第3次α』版
『X-Ω』版

+ 機動戦士VS伝説巨神
バンダイの『サイバーコミックス』に掲載された長谷川裕一氏の漫画『機動戦士VS伝説巨神 逆襲のギガンティス』では、
宇宙世紀(ガンダム世界)において木星圏でネオ・ジオンが開発中の大型MSを破壊する作戦にジュドーが参加した所、
それは発掘された巨神であったというクロスオーバーとなっている。
後発の『UC』共々ミネバ・ザビが重要な役割を担うヒロインとなっているのは、興味深い共通点である。
またこの作品では、木星船団に参加した所謂「木星帰り」に強力なニュータイプが散見するのは木星に眠る巨神の影響であり、
アムロシャア、ジュドーの三人はコスモの欠片を継ぐ者達だとされた(ジュドーが一番コスモに近いらしい)。
オフィシャルではございませんぞー!てかシャアはギジェあたりの方が良くね?
物語は最後、『Ζ』や『ΖΖ』終盤の死者の魂を薪にくべて打ち勝つオカルト展開をジュドー自らに否定させ、生ある者達自身の力で幕を閉じる。

一部のファンからは、本作の出来が良かったからこそ、
富野氏が原作を務めた『機動戦士クロスボーンガンダム』の作画担当に抜擢されたとも噂されている
(なお2作目『鋼鉄の七人』以降は富野氏が関わっていない長谷川氏のオリジナル作品)。

この他「ROBOT魂」*5化されたロボット達が戦う『バトルロボット魂』(PSP)では、「超合金魂」からのゲスト出演として参戦。
実際の玩具同様のスケールとなっており、ROBOT魂を凌駕する大きさとなっている。

+ パロディ
ちなみに『ドラえもん』にはイデオンのパロディと思われる『建設巨神イエオン』が登場している。
ただし「のび太がひみつ道具をつかって作ったグッズ」として一コマだけ登場したのみである。
まぁ「アカンベーダータイトーのは『あっかんべぇだぁ〜』)」「ザンダクロス(色違いの百式)」や、
「少年ジャブン」「少年ヨンデー」とかやっている『ドラえもん』では平常運転と言えよう。
小学館的には「少年サンデー」はそのままでも良かったんじゃ?
生憎2020年のアニメ版では、元ネタが古すぎる(なにせ40年前の作品なので子供どころか父親でさえ知らない可能性がある)
と考えられたのか『測量戦隊キラメジャー』に取って代わられた。
元ネタは2020年戦隊の『魔進戦隊キラメイジャー』だろう。同じテレビ朝日系列だから安心だね。

また『ONE PIECE』にも「破壊砲イデオ」というイデオンみたいな肩をしたキャラクターが存在する。
こちらに関しては作者の尾田栄一郎氏自身認めており、何でイデオンなのかと言うと、子供の頃に初めて買ってもらったプラモがイデオンだったからだそうな。

「研ぎ澄まされた適当、磨き抜かれたいい加減」を標榜するスペースオペラコメディ『スペース☆ダンディ』においては、
作中に登場するジャイクロ帝国の切り札として「伝説巨大兵器アレー」なる五体合体の巨大ロボット兵器が登場するが、
名前通りデザインが完全にアレ(イデオン)である。どの位アレかは、OP終盤にばっちり映ってるので各自確かめて欲しい。
多分とんでもない威力らしい主砲を撃つ時には胸部ハッチを解放し、中から飛び出すライオンヘッドから発射する模様。
ちなみにメカデザインを担当したのはサブマリン時代に『伝説巨神イデオン』を手がけた樋口雄一氏ご本人
ガチの人を連れて来てアホな話を作らせるのがスペ☆ダンのノリ故致し方無し

アニメ制作現場を舞台にしたアニメ『SHIROBAKO』には『伝説巨大ロボット イデポン』という名前で登場。
元々SHIROBAKO自体が実在作品のパロディが非常に多い作品なのだが、
イデポンはその中でもストーリーに絡んでくる上にサブタイトルにもなっているという破格の扱いを受けている。
さらに劇中、イデポンのファンだった人物がその魅力を語るシーンでは作画が『イデオン』っぽくなるという演出まで行われている。
すごく…湖川顔です…*6

実は公式も劇場版の公開にあたり、『機動戦士ガンダム』と比較して一般の盛り上がりに欠けるのを危惧して公式によるセルフパロディイベント、
『明るいイデオン』を企画。当時のアニメ雑誌の執筆陣や編集者達も半ばスタッフのような形で参加した。
公式スタッフの協力による本編のシリアスさを吹き飛ばすはっちゃけたパロディの数々は大変カオスなので、気になった人は「明るいイデオン」
「アジバ3」などで動画を検索してみるといいだろう。


MUGENにおけるイデオン

狂改変のガンダムキャラを多数製作しているSTG氏によるものが存在する。
ロックマン風の手描きドットで描かれているちびキャラである。
イデゲージによってランクが変わり、1でも狂上位となる。
なお、改変・転載は自由との事。

出場大会



*1
元々は「波動ガン」だったが、プラモでは「イデオン波導ガン」と表記された。
しかし『宇宙戦艦ヤマト』の「波動砲」のパクリにしか見えなかった事もあり、現在では「イデオンガン」が正式名称扱いされている。
そもそも富野監督は前作『機動戦士ガンダム』をアンチヤマトとして創ったわけだし
尤も今のオタク業界では波動拳波動砲は一般名詞化してしまっているが。

*2
このためか、『UC』のOVA版ep7や外伝「不死鳥狩り」を元にした映画『機動戦士ガンダムNT』ではイデオン・ソードのSEが使われている。
また公式イベントなどでの福井晴敏氏の発言によれば、サイコフレームはイデオナイトというイデオンを構成する精神的金属と同一物質との事。
(ただこれは宇宙世紀の公式設定ではない事に留意)。

*3
お前 を真っ白に塗り潰す=皆殺し」という解釈から、バッフ・クランでは「徹底抗戦」の意味と捉えられる。
要は主語が逆転しているのだろう(地球人にとっては「 私は 貴方色に染まります=無条件降伏」と言う意味である)。
逆にバッフ・クランで降伏の意思を示す際は、赤い(オレンジに近い。というかぶっちゃけイデオンの体色)旗を振る。
なおこの時は直後にカララからこの事を聞かされたため、急いでオレンジ旗を作って出したことで取りあえずは事なきを得ている
(もっとも「異星人の船にカララが乗り込んでいる」という状況は変わらないため、引き続き追われることにはなるが)。

このようにバッフ・クランは単なる「悪の宇宙人」ではなく、我々と似て非なる文化を持った異星の「人類」として徹底して描かれている。
彼らが自分達の故郷を「地球」と呼び、コスモ達を始めとする地球人類を「ロゴ・ダウの異星人」と呼ぶのもそのためである。
バッフ・クラン視点では(諸々の登場人物の思惑はあるものの)外宇宙で遭遇した異星人が、超兵器を手にして「貴様らを皆殺しだ」と宣言してきた状況なのだ。
そしてこの『イデオン』の世界、宇宙において、「人類」と呼び得る生命体は地球人とバッフ・クランの二種類しか存在しない。
上記の通り、イデが(恐らくは第6文明人の遺伝子的なものをベースに)ソロ星からそれぞれ250万光年の距離にある両惑星に生み出したため、
生物学的な特徴も一致しており混血も可能、細かい文化は違えど善悪の判断基準等もそう変わらず、
適切な交流さえ持てれば良い隣人になるのも決して難しくは無い。
にも拘らず彼らが和解への僅かな可能性や希望を踏み躙り、捨て去り、互いに絶滅するまで争う道を選んでしまった事が、イデの絶望と発動を招いてしまったのだ。

これを踏まえてか、『スパロボ』シリーズのイデは(殺し合いによる進化を求める)ゲッター線と仲が悪い描写もある。
一方で(強引なやり方とは言え)人類を一つにする『新世紀エヴァンゲリオン』の人類補完計画に対しては肯定的な姿勢を見せていた。
…これだけ言うとゲッター線があまりに過激派なのでイデと仲が悪いようにに見えなくもないが、
スパロボでは「融和による進化を求める」というイデと比較的近い考えである『戦国魔神ゴーショーグン』のビムラーは、
スパロボのゲッター線が漫画版より有情な事もあって)相反する思想のはずのゲッター線と仲良くしており、イデの思想を認めていない節がある辺り、
(実際に宇宙を滅ぼした実績もある事から)どちらかと言うと「イデの方が過激思想」と見られている模様。
そもそも大概の作品ではイデの思想(及び人類補完計画)は個を認めない悪役の思想扱いである。
所謂「自分が『悪』だと気付いていない、最もドス黒い『悪』」

とはいえコスモ達もより無限力を引き出そうと、赤ん坊を無理やり戦場に引きずり出して恐怖させイデの防衛本能を呼び覚ますという無茶をやっている。
生き延びるために仕方がないとはいえ和解の努力よりも戦う事を優先し、
そして僅かに芽生えた平和の芽さえ踏み躙っていく人類とバッフ・クランの姿と、そのために犠牲となる子供達。
その全てを目の当たりにしたイデが発動という選択を選んだのも無理からぬ事であった、というのは理解して頂きたい。
そしてだからこそ、一致団結して滅びに立ち向かう人々の姿を目の当たりにしたイデが、
コスモの「生きたいんだ!」という叫びに応えて伝説巨神として復活の時を迎える展開は、正にスパロボマジックと言えるのだ。

*4
尤も、この展開は先述の通り輪廻転生や魂の浄化の側面もあるものの、
監督本人としては「登場人物を殺せば劇的に見える事により、それだけで安直に作品として成立してしまう」という事もあり、
作家としてのタブーでもあるとして、必ずしも好き好んでキャラを殺す展開を入れている訳では無い。
事実、同時期においては『無敵鋼人ダイターン3』や『戦闘メカ ザブングル』といった明るい展開かつ登場人物が殆ど死なない作品も手掛けており、
後年の『ブレンパワード』以降は本作のように悲惨な展開が繰り広げられる作品を手掛けていない。
『オーバーマン キングゲイナー』の脚本を手掛けた大河内一楼氏からは「富野さんなんだからもっと人を殺しましょう」と提案され、
「もうそういう話はいいよ」と返したりも

この作風の落差から「黒富野」「白富野」「激しいツンデレ」と称されてもいるのだが。

*5
バンダイから発売されている可動フィギュアブランド。その名の通り、ロボットをフィギュア化している。

*6
この「湖川」とは『イデオン』のキャラクターデザイン及び作画監督を手掛けた湖川友謙氏の事であり、
富野監督作品では他にも『無敵鋼人ダイターン3』(敵キャラのみ。主人公側は塩山紀生氏)や『戦闘メカザブングル』『聖戦士ダンバイン』でも担当。
キャラが顎をあげて上を見上げる「あおり」の作画に定評があり、別名義でキャラデザインで参加した
宇宙の騎士テッカマンブレード』でも、自身が作画監督を担当した回やEDではその個性的画風がこれでもかと発揮されている。



「グレンキャノンもだ!」



最終更新:2024年02月25日 01:53