耶麻郡吉田組滑沢村

陸奥国 耶麻郡 吉田組 滑沢(なめさは)
大日本地誌大系第32巻 162コマ目

府城の西北に当り行程9里30町。
家数27軒、東西3町・南北2町、山間に住す。

東10町4間樟山村の界に至る。その村まで11町50間。
西6町26間滝坂村の界に至る。その村まで14町50間余。
南7町45間柴崎村の界に至る。その村まで19町40間余。
北20町計下町村の山に界ふ。

山川

城越山(しやうのこしやま)

村東3町にあり。
高60丈。
相伝ふ。昔中野三十坊とてこの山麓に巨刹あり。佐原義連と相拒て楯篭りし所なりと。

取上石山(とりあけいしやま)

村より辰巳(南東)の方5町にあり。
高60丈計。
ここを越て柴崎村に行く径路あり。

明礬岩(みやうはんいわ)

村東4町、樟山村にゆく路の左にあり。
高1丈計。
石間往々白礬(はくばん)*1 を吹出す。故に名くという。

笹川

村西南1町にあり。
樟山村の境内より来り、西に流るること17町滝坂村の界に入る。

大滑沢(おほなめさわ)

村東にあり。
下町村との境内より来り、南に流るること20町計笹川に入る。
水中の石面極めて滑らかなり。故に名くという。

関梁

三本木橋(さんほんきはし)

村東4町、柴崎村の通路にあり。
長8間・幅1間、笹川に架す。

神社

天王神社

祭神 天王神?
鎮座
村東8町10間余、山腰にあり。
相伝て、昔この村の山中に魑魅(ちみ)ありて災いをなせし故、村民相計て尾張国海部郡よりこの神を勧請せりという。
正源寺これを司る。

寺院

正源寺

天王神社の丑寅(北東)の方1町余にあり。
真言宗なり。昔天王神社を勧請せし時より社務を司りし故に天王山と號すという。
文禄元年(1593年)幸照が時、府下道場小路観音寺の末寺となる。
旧今の地より辰巳(南東)の方にあり。いつの頃にかここに移すという。
本尊大日客殿に安ず。
また鐘楼あり。鐘、径2尺、『享保三年施主當寺第八世季傳』と彫付けあり(享保3年:1718年)。

古蹟

寺跡

村東4町計、樟山村にゆく道の右にある原野なり。
佐原義連の為に滅されし中野三十坊の跡なりという。
今その地に菜圃(さいほ)を闢く。
圃中より往々古瓦を得ることあり。


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    • 滑沢地区
    • 城越山? -正確な場所は不明ですが、正源寺は中野三十坊の1つだったそうなので大滑沢の東側にあるどこかの山なのでしょう。
    • 取上石山? - 大正の頃の地理院地図にはこの辺りに標高207.8mの山の頂があると記されていますが、現在は送電線等の関係で削られてしまったのか記載がありません。村の南東に県道338号線が通っており、この山の東の山間の道を石坂峠と呼ぶそうですが、昔はもっと西側に柴崎方面へと抜ける山道があったようです。その山道は滑沢村の中を通り滝坂村の北東の山中へと続いていたようですがこちらの道も今は地図に載っていません。
    • 明礬岩?
    • 大滑沢
    • 三本木橋?
    • 氷川神社(旧天王神社)
    • 正源寺
    • 寺跡(中野) - 中野三十坊の中心地だった所です。
    • 熊野神社
  • 向山のお薬師今昔物語(PDF。にしあいづ物語100選 その29)
    • 中野三十坊について記載あり。

滑沢付近の古地図
※地理院地図(大正2年測図/昭和6年要部修正)


余談。
天王神社の祭神は素戔嗚尊(すさのおのみこと)です。会津地方では牛頭天王の方が通りが良いかもしれません。魑魅を掃うには良い神様かと。なお氷川神社の祭神の1柱も素戔嗚尊です。
ちなみに尾張国海部郡の神社とは津島神社かと。
最終更新:2024年02月16日 17:27
添付ファイル

*1 明礬(みょうばん)とも。明礬石を加工精製してできた結晶です。