サイヤ人

登録日:2021/03/18 Thu 00:11:26
更新日:2025/04/05 Sat 17:08:29
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貴様はこの星の人間ではない!! 生まれは惑星ベジータ!! 誇り高き全宇宙一の強戦士族、サイヤ人だ!!!



サイヤ人とは、「ドラゴンボール」シリーズおよび関連作品に登場する宇宙人の種族。


【概要】

「宇宙最強の戦闘民族」を自称する宇宙人の種族。
その豪語にたがわず高い戦闘能力・戦闘センスと、戦闘民族にふさわしい凶暴かつ残忍な性格を持ち、破壊や略奪を生業とする。*1
全盛期でも数千人という少数民族でありながら、その狂暴な行いから全宇宙で恐れられ、
作中でもナメック星人の最長老やスラッグ一味など、多くの勢力・宇宙人がその名を知っている。
さらにある時期からは宇宙に覇を唱えたフリーザ軍にも所属し、強大な勢力を誇った。

しかしさまざまな軋轢が関わって、最終的にフリーザによって滅ぼされてしまった。

その滅亡したサイヤ人の数少ない生き残りであるカカロット=孫悟空が、「ドラゴンボール」の主人公として活躍する。


設定としては、原作漫画で明示されたもののほか、アニメ『ドラゴンボールZ』『ドラゴンボールGT』のアニメオリジナルエピソードで描かれたものや、
鳥山明監修の元に描かれた『ドラゴンボール超*2ドラゴンボール超 ブロリー』、それに各種ムック本で原作者から語られた裏設定など多岐にわたる。
加えて、長期連載特有の設定変更・後付け設定もかなり多い。
あえて一例をあげるなら「ベジータはサイヤ人の王子」というのも後付けである。
初登場時点では単に「ナッパと同列のエリート」でしかなく、王子と明示されたのはナメック星編からだった。
そのため、時期や媒体によってサイヤ人の来歴や悟空の父バーダックのキャラクターには差異がある。


【身体的特徴】

見た目は地球人、とりわけ東洋人(モンゴロイド)に近い、黒髪・黒目・黄白肌の持ち主*3
ただし猿のものによく似た細長い尻尾が伸びており、ここが地球人に対する唯一の差異である。

◆尻尾

外見上最大の特徴である尾はサイヤ人でも重要な器官で、いくつかの用途・特質がある。

まず最大の要素は、これが大猿への変身に必要な器官である点。
この世界の月は「ブルーツ波」という特殊な波長の光を発しているのだが、
サイヤ人は目からこのブルーツ波を1700万ゼノ以上吸収すると、尻尾が反応して肉体を大猿に変身させる。
ただし1700万ゼノ以上のブルーツ波はいつでも発せられている訳ではなく、満月の時に限られる。

第二の要素は、これを握られると力が抜ける点。
尾を握り絞められるとサイヤ人は全身の筋肉が弛緩し、立つこともままならなくなる。大猿でもそうなる。
そのため、尻尾はサイヤ人の弱点とされることが多いが、一方でこの特徴はサイヤ人同士の争いにおいて、
尻尾が「握れば相手を無力化させられる」、つまり、「殺し合いになる前に勝敗を付けられる」器官としても作用するのではという推測から、
サイヤ人同士で殺し合いをする機会をなるべく減らすように、言い換えれば種族を存続させるように進化した帰結とも。
ただし、この「握られると力が抜ける」特性は、尻尾を鍛錬することで克服することも可能。

第三の要素は、これが四肢に並ぶ器官でもある点。
本人の意思で器用に動かすことができ、背後のものを持ち上げたり相手を殴ったり、鍛えれば自重を支えて持ち上げることも可能。
ただ、相手に握られると力が抜けるため、普段はベルトのように腰に巻く人も多い。
実際フリーザ配下のサイヤ人は皆こうしていたが、悟空は腰に巻くことは無かったため、惑星ベジータにおける文化と考えられる。

第四の要素は、再生可能な点。
切断されても何年かすれば生え変わるし、触れなくても自分の意志だけで切り落とすことも出来る(尻尾を握られて力が抜けていても可能)。
ただ、ナメック星人のような「自分の意志で再生する」ことはできず、生え変わるにも年数がいるため、出来れば避けたい方法ではある。
また仙豆やフリーザ軍のメディカルマシーン等、傷を完治させる道具や能力を用いても、切断された尻尾だけは再生できず、生え変わりを待つしかない。
そのうえ、ベジータや悟飯など理由もなく*4再生しなかった者も多い。生涯で再生できる回数には限界があるのだろうか。

地球人との混血の例では、悟飯は誕生時は尻尾を持っていたが、悟天、トランクス、パン、ブラは生まれつき尻尾を持っていない。
これについて具体的な説明はなされていないが、悟飯以外は父親のサイヤ人が超サイヤ人への変身能力を得てから生まれたため、
「超サイヤ人に変身できるサイヤ人の子は尻尾を持たずに生まれてくるのではないか」という推測も。

『スーパードラゴンボールヒーローズ』において、古代のサイヤ人とされるカンバーは尻尾を失ったベジータや混血児のトランクスの容姿を見て疑問や差別意識を抱く描写がある。
また、同ゲームのコミカライズ版ではカンバーが尻尾を切断された際に自分の持つ独特な気(「悪の気」)を尻尾の形にして尻部分に宿すという「疑似尻尾」とでも呼ぶべき応急処置を行った。この処置によって戦闘力が上がるという描写も見られる。


◆毛髪

サイヤ人の毛髪の色は黒のみで、髪型も生まれた時から変化しない。
ベジータは、毎日髪が伸び、定期的に整えないと髪型が変化する地球人(の毛髪)に対して「不気味」と発言している。
ただ、新陳代謝で生え変わらないというのではなく、悟空は相手の刀で髪が一部切れたが、やがて元に戻った。
またナッパのようにハゲる場合もあって、事情はいろいろある模様。
髭については地球人と変わらないようで、日々生えるし蓄えもする。

ただ、ベジータ王は茶髪*5で、またベジータ王とともに反逆したサイヤ人の中には青い髪の女性もいる。
これらの理由は不明。ツフル人の混血だったりするのだろうか。

また、髪や眉などは黒だが、尻尾の毛だけは茶色い。
黒髪のサイヤ人でも、大猿に変身するとなぜか全身の毛が茶色くなるなど、考えてみると不思議な生態も多い。

地球人との混血のサイヤ人は、地球人同様に毛髪は伸びるし、地球人側の髪色が遺伝すれば髪色が黒以外になる事もある。


◆顔

作者の裏設定では「サイヤ人は顔の種類が少ない」というものがある。
実際、バーダックの一族やベジータの一族には同じ顔の人物が多く、顔が遺伝することが分かる。
またターレスは「下級戦士は使い捨て故タイプが少ない」と妙な言い回しをしている。
下記の出生率の低さを克服するため、遺伝子操作でも行われていたのかもしれない。やれそうな種族に200年ばかり奴隷扱いされていたらしいし。


◆男女比

種族である以上、女性のサイヤ人ももちろんいる。
いるのだが、出生するサイヤ人の男女比は男:80~90%に対して女:10~20%と非常に不均等な格差がある。
(バーダック編など往時のサイヤ人社会が描かれるシーンでも、女性は目に見えて少ない)
当然男のサイヤ人は子供を産めないため、単純計算で一人の女性サイヤ人が五人から十人以上は子供を産まないと、
次の女性サイヤ人が産まれず、サイヤ人全体の人口の維持すらままならない。

そのうえ、サイヤ人は男も女も戦闘に参加することが弊害を生む。
当然、女性のサイヤ人が戦死すればもう彼女は子が産めなくなるし、また戦闘となれば肉体を酷使するため、
妊娠(受精・着床)していたが過剰な運動や被ダメージにより気付かぬうちに流産する、ということも考えられる。
さらにサイヤ人と言えど、女性はやはり男性に比べて筋力や戦闘力が落ちるようで*6、それが前線に出れば戦死の危険性が高くなる。

サイヤ人はもとから少数民族であったが、それはおそらくこの極端なまでの女性の少なさと、女性まで戦うという血の気の多さが原因だろう。

なお劇中世界では、フリーザに惑星ベジータもろとも消し飛ばされた際、女性のサイヤ人が一人残らず死亡している。
そのため、劇中世界(第7宇宙)の純粋サイヤ人は消滅する運命にあり、実質は絶滅状態である。
ただしトランクスとパンが結婚して子供を産み、その子供たちが近親相姦をして子供を成すのを繰り返せば、サイヤ人の血を濃くしていく事は一応可能。

またサイヤ人の女性には気の強い者しかいないとされており、その影響でサイヤ人の男性は気の強い女性を好む傾向がある。
気の強い地球人女性を妻とした悟空とベジータも、例外ではない(まあ悟空の場合はほぼ押しかけ女房だったが)。


◆非戦闘タイプ

基本的にサイヤ人は戦闘を好むが、ごくまれに「非戦闘タイプ」というものも生まれる。
戦闘力は低く、好戦的な性格も持たない。
ほとんどはそうと分かった時点で前線を離されて後方の業務についたり、悪いときには追放されたりする。

悟空とラディッツの母親であるギネはこの非戦闘タイプだが、当初バーダックとチームを組んで前線に出ていたと語られているため、戦闘力次第では非戦闘タイプであってもとりあえず前線に送られるのかもしれない。


【身体能力】

地球の十倍の重力を持つ「惑星ベジータ」でも難なく動ける屈強な肉体を持つ。
地球人の数十倍もの食事を摂取するほど代謝能力も高く、それゆえに回復能力やタフネスも非常に高い。
作中ではベジータやバーダックの治療に当たったフリーザ軍兵士が予想したよりも早く回復した彼らに驚きを見せ、
バーダックはそんな反応に対して「お前らとは出来が違う」と返していた。

さらに瀕死状態から回復すると、戦闘力が大幅に上昇するという特質がある。
与えられたダメージを肉体が学習し、回復期間中に「同じ敵に遭遇しても勝てる」ように強化するのだろう。
そのため、多くの死線を潜り抜けた下級戦士にもエリートクラスやフリーザ軍の幹部に迫る人物も現れている。

生来持つ戦闘に関する才能・センスと、凶暴で好戦的な性格、
そしてこの「戦えば戦うほどに強さを増していく」という特性こそが、サイヤ人が戦闘民族たりえる所以である。

ただしこの「瀕死状態からの回復」は、傷が大きければ瀕死に陥った後、回復できずにそのまま死んでしまう危険性も孕む他、即死してしまえばそれまでであるため、修行などで瀕死→回復→瀕死→回復を繰り返せば劇的に強くなれるが、確実に完全回復できる手段がない限りは極めてリスクが大きい。
前線で戦っている場合、重傷を負った後に帰還して治療を受けるまで持ちこたえられず
瀕死状態から回復して強くなる前にそのまま死んでしまったという者も多かったと推測される。

しかし、サイヤ人の多くはこの特性を利用する以外で自分を強くしようとは考えないようで、
「生きているあいだは戦うだけ。戦いを繰り返し、その都度生き延びられれば強くなるが、死ねばそれで終わり」という、刹那的な生き方が主流であった。
後述するように生後間もなくの戦闘力検査で進路が決まることも考えると、実際には努力に余り期待していないのかも知れない*7

このパワーアップ現象は、ベジータ曰く「自分で自分を痛めつけても意味がない」とし、ナメック星でデンデの治療を当てにしてこれを行おうとした時は、わざわざ戦闘力を限界まで下げてまで、クリリンに自分を攻撃させている。
しかし、悟空はナメック星まで来る間の宇宙船の中での修行にて、かめはめ波を曲げて自分に直撃させ、ダメージを受けて仙豆で回復するという手段でパワーアップをしている。
ベジータが勘違いしていたのか、悟空がやったのは全くの無駄でパワーアップは純粋な修行の成果だったのか、不明。

また、この強化も青天井ではなく、神の域に至るほどの極限まで自らを鍛え上げた『超』時代の悟空やベジータはその状態で瀕死に陥り、その後回復しても現段階以上の肉体的パワーアップはできなくなっている。

なお、地球人との混血のサイヤ人は、純血よりも潜在的戦闘力が高くなるとされるが、
文化の違いもあってか純血種に比べると戦闘を好まず、己の強さにも固執しない傾向があるようだ。


◆老化・寿命

老化現象は非常に遅い。戦闘能力を維持するため、肉体的に若い期間が長くなっているという。
ナッパや『GT』期のベジータは五十代になっても肉体面は壮健なままで、顔についても老化がほとんどない*8

さらに「青年になるまでは幼児体形のままで相手を油断させ、成人相応となると一気に戦闘向けの体形に成長し、以後ほとんど老化しない」という設定もある。
幼少期から壮年期まで描かれた悟空はこれに当てはまり、16歳まではクリリンよりわずかに高い程度だった背丈が、たった三年間でブルマを見下ろすほどに成長した。
混血だと悟飯は悟空と比べれば順当な成長をしていたが、悟天やトランクスの場合は悟空と同じくある一定の年齢を境に一気に背が伸びていた。

寿命に関しては作中で老衰死した人物がおらず、また作者が二種類の完全に矛盾する発言をしており、種族としての限界寿命は不明瞭。

「寿命は地球人と同程度だが、戦闘に適した年齢に達すると老化が鈍り、壮健な時期を長く過ごすが、ある程度の年齢になると急速に衰えがくる」という話と、「寿命そのものは地球人よりもはるかに長いが、その寿命を迎える前に戦死する者がほとんどで、結果として平均寿命は短い」という話があり、
前者の場合は「戦死しなくても寿命は地球人並み」、後者の場合は「戦死しなければ地球人より長く生きる」となり、まったく別の話となる。

劇場版『ドラゴンボール超 ブロリー』では、髪が白髪になり顔に皺が刻まれるなど、バンパでの過酷な生活が起因するとはいえ明確に老人の風体をしたパラガスが描かれた他、「サイヤ人は80歳まで若者」という発言も劇中であることから、どちらかというと現行は前者の設定が有力なようだ。
ちなみに、混血のサイヤ人では『GT』のパンが110歳まで生きている描写が確認できる。


◆宇宙空間の適応能力

ギャグ描写を除けば宇宙空間で生きる能力は無い……とされているが、ギャグ描写抜きにしても、
バーダックやブロリー、『神と神』における悟空など、成層圏はおろか明らかに宇宙としか思えない場所にまで出張っている場面が多く、
その辺りを踏まえて近年では「長時間は無理だが短時間なら宇宙空間でも活動できる」という設定に落ち着いている。

それを踏まえても、ブロリーなどは明らかに長時間宇宙空間で活動しているとしか思えない描写がされているが、
ベジットやブロリーはバリアを張って自分を包み込むことで、本来なら存在できない空間でも生きていく描写があるため、
宇宙空間と断絶できる空間を作り出せる実力があればある程度は宇宙空間でも活動できる、といった所だろうか。

ちなみに、宇宙空間でも普通に生存できる者はおり、例えば惑星ベジータを滅ぼしたフリーザも宇宙空間で生きていられるとされる。
五体満足どころか、片腕と下半身を失い、脳が露出して意識のない状態で宇宙空間を漂っていても生きている辺り、
少なくとも生命体としては「宇宙の帝王」を名乗るに相応しい生命力を持っていると言えるかもしれない。


◆変身能力

いわゆる「変身型宇宙人」であり、通常形態から肉体を変化させて戦闘力を上げることが可能。
一般には大猿の変身能力が有名で、また作中では超サイヤ人への変身も行われた。
これらの変身能力は純血のサイヤ人だけでなく、その血を引く者も条件を満たせば獲得できる様子。
これに関しては、詳しくは該当項目を参照。


◆食性

非常に大食いで、かつ悪食な面も持つとされる。
地球では概ね地球人が口にするものと同じ食事を口にする場面が多かったが、
地球人として育てられた悟空も、ムカデだの狼だのといったゲテモノを丸焼きにして食べている場面があった他、
ベジータたちは地上げ稼業で滅ぼした星に住んでいた宇宙人の死骸を、特に調理もせず生で口にする場面があった。

ただ、これらは彼らが食材を選んだり、手の込んだ調理をしたりといった余裕の無い状況に置かれているせいもあると推測され、
『ブロリー』等でサイヤ人たちが酒を嗜んだり、ギネが肉を切ったりする場面があったことから、
ゆっくり食事を摂る余裕がある場面では、サイヤ人たちも食事や飲酒を楽しむようである。
また、悟空は劇中でパンやコーヒーを苦手とする場面があったが、他のサイヤ人にも好き嫌いがあるかは不明。

食事量についてはおおよそ体格には見合わない大量の食べ物を平らげる場面が多く描かれ、
大食いであることを知らないキャラクターがサイヤ人(主に悟空)に安易に食事の提供を申し出て後悔したり、
天下一武道会の控室で、試合前にもかかわらず大量の食事を注文する主人公一行に周囲が呆気に取られるのはお約束となっていた。
なお、大食いに関しては地球人とサイヤ人との間に生まれたハーフも同じである。


【戦闘力】

成人した一般的なサイヤ人*9戦闘力は、おおむね1500~10000前後と思われる。
ベジータは地球襲来時点で18000という数値を誇っていたが、この時点で「サイヤ人としても超がつくほどの天才戦士の数値」とされており、
一般的なサイヤ人の戦闘力は、ベジータの戦闘力には到底及ばないとされる。

また、バーダックは10000前後という数値で、これが下級戦士であるにもかかわらずサイヤ人社会で一目置かれるレベルであるため、一般的なサイヤ人は多少前後してもこれぐらいが最高レベルと推定される。

サイヤ人の戦士としては弱いラディッツが1500、エリート層の生まれに誇りを持つナッパが4000~5000*10とあり、
またカードゲームなどではトーマ:5200、パンブーキン:5000、トテッポ:4400、セリパ:2500、という数値もある*11
従って、並の成人サイヤ人の戦闘力は1500~10000のあいだぐらいと思われる。
ただし、ラディッツは曲がりなりにも前線に出ており、アニメではクリリン・ヤムチャ・天津飯・餃子が神様の神殿で修業前に過去の世界でサイヤ人二人と戦い敗北するも、
神様からこの二人は半人前と評されているため、ラディッツよりも下の可能性がある。
ファミコンソフト『強襲サイヤ人』ではこの二人と同型のパンプキン・オニオン・ブロッコというサイヤ人が登場したが、
戦闘力もラディッツ1500に対し400・450・500と高くても三分の一程度である。
尤も、これでも本来ならば地球程度の惑星侵略には十分な数値ではあるのだろう。

参考までに、フリーザ軍の戦闘員としては戦闘力2000もあればフリーザ自身が優秀と認めるほど。
フリーザ直属に抜擢される精鋭でさえラディッツ級の戦闘力1500に驚愕し、その動きを目で追うことも出来ず一撃で倒されていた。
このことからもサイヤ人の多くは並の兵士よりも使える人材だったと分かる。
ただこれは一般兵の話で、軍の幹部クラスを基準にするとエリートサイヤ人でもそこまで突出した戦闘力というわけではない。
フリーザ一族はもとより、彼の側近であるギニュー特戦隊(中堅クラスで40000前後)やザーボン&ドドリア(20000以上)、上級兵士に分類されるキュイ(18000前後)など、一般的なサイヤ人が及びもつかないような相手は結構いた。

しかし、フリーザ親子を含めた彼らはあくまで「種族のなかで突然変異的に超常の戦闘力を持って生まれた個体」に過ぎず、種族全体がこんなに強いわけではない
サイヤ人は「戦闘要員であれば基本的に誰でも1000以上の戦闘力を有する」点で、他の種族とは根本的に異なっているのである。
さらにサイヤ人は単なる戦闘力だけではなく、上述したような戦闘センスやタフネス、回復力などの身体能力で他の宇宙人よりも優れたものを持っており、ベジータ王三世の時代には、団結力や集団戦法まで身につけるようになった。
彼らが「宇宙最強の戦闘民族」を名乗るのも、誇張や傲慢さこそあれ、決して故なきことではない。


【惑星ベジータ】

エイジ550ごろにサイヤ人が漂流・入植した、サイヤ人の第二の母星
旧名は惑星プラントで、先住民としてツフル人が高度な技術を以って繁栄していたが、
サイヤ人はやがて彼らを滅ぼし、その技術力を手に入れるとともに、星の名前を「惑星ベジータ」と改称した

惑星ベジータの重力は地球の十倍もあり、この星で肉体を鍛えていたことも、サイヤ人が屈強に育つ一因。
また、この星で満月になるのは八年に一度だけ。

原作では惑星ベジータについて、宇宙から見た姿しか描かれず詳細不明だったが、アニメ作品や近年のシリーズ展開などで国土が描かれることもある。
やはり断片的ではあるが、フリーザ政権の入植や技術提供によるものか、惑星フリーザの居城やフリーザ軍円盤型宇宙船を思わせる設備・居住区・宮殿などが散見され、
またサイヤ人ではない各宇宙種族も居住、医療区画や宇宙港などに従事していた。

サイヤ人が惑星ベジータ(プラント)に流れ着く前は惑星サダラに居住していたが、激しい内紛の結果、消滅してしまったらしい。
プラントに到来した際の様子も非常に原始的で、とても宇宙船を開発できる様子ではなくプラント時代も何者かに使役されていた可能性もある。

また、パラガスは惑星シャモから連れてこられた奴隷どもに建設させた立派な宮殿や、
銀河のいたる所から集めたならず者たちが従ぅ僕としてお待ちする「新惑星ベジータ」を作り上げ、
王家の生き残りであるベジータを迎えて「サイヤ人の宇宙帝国」を復活させる…としていた。
だがこれは完全な欺瞞であり、グモリー彗星が激突すると分かったからこそ荒廃した惑星を環境の良い星に見せかけた上でおびき寄せ、
ベジータを含めたZ戦士たちを新惑星もろとも葬り去る計画であった。
現に新惑星ベジータはその後グモリー彗星によって消滅している。


【社会】

サイヤ人の国家・社会は、生まれによる階級制となっている。
大きく分けて「王族」「エリート」「下級戦士」の三階層に分かれており、先天的な素質によって分けられ、後天的要素では覆らない。
その区分けは生後間もない調査で決まるとされ、生まれた時点の戦闘力の数値によって決められるという。ただし、戦闘力以外の要素も関係している模様。
なお悟飯(四歳)の戦闘力数値が710と計算された際、ラディッツのみならずベジータやナッパも「サイヤ人としてもあり得ないほど高い」と語っており、
生後の測定でも、少なくとも幼少期のサイヤ人はそんな数百という数値にはならないとみられる。

こうした「出自時点での強さが一生を決定づける社会構造」の中で異常なまでの戦闘力を伴って誕生したブロリーは、ベジータ王に「サイヤ人王家の支配をも揺るがす存在」と危惧され、処刑(DBZ)/流刑(DB超)を宣告されてしまった。


◆王族

劇中ではベジータ王家のみが存在する。
この王家では、当主=王となる人物は代々「ベジータ」の名を世襲することが決まっており、
作中で活躍するベジータは正式には「ベジータ四世」*12、その父親である先代ベジータ王は「ベジータ三世」である。

しかしサイヤ人は古代から(少なくともツフル人と接触した200年前から)王家によってまとめられていたという。
するとベジータ一世(ベジータの曽祖父?*13)より以前から王家が存在したと思われるほか、
ベジータ王(三世)は「サイヤ人を統一した」と言われることも多いことから、
元はサイヤ人も複数の部族に分かれ、それぞれに王家もあって、ベジータ王家はそのうち新興の王家だったが、
ベジータ王三世の時代に統一され、他の王家は滅びた、というのが一番近いだろうか。

ちなみに、(アニオリであるが)ベジータの弟であるターブルも王族でありそれなりの戦闘力を持つが、
非戦闘タイプであり戦いを好まない性格であるために飛ばし子にされている。
また、ターブルの命名規則は不明だが、ベジータが地球に移住してからは、
王族特有の命名規則は(末裔のベジータJr.を除いて)崩れており、ブルマが命名した衣装由来の名前となっている。


◆エリート

この階級については確定しているのがナッパ一人しかいないため詳細不明だが、
ナッパは自らを「名門出のエリート戦士」と名乗っていること=血統に由来する名門があるということと、自分の生まれに誇りを持っていることから、
やはり王族と同様の、血統によって、生まれる前から決まっている要素があるのだろう。

王族とエリートサイヤ人は大猿になっても理性を失わないという特徴がある。
ターレスとバーダックはエリート戦士と同等以上の戦闘力を後天的に築き上げたが、大猿に変身すると理性を失う。
しかしこの両名より弱いはずのナッパは大猿に化けても理性を失わず、これがエリートに受け継がれる特性ならば「名門出」という発言とも合致する。
また王族は同じく大猿化しても理性を失わないが、もしかしたらナッパたち名門は、王族を祖先とする分家の末裔かもしれない。

確定ではないが諸々の描写から、パラガスもエリート階級の可能性が高い。
このパラガスも、ベジータ王に対する敬虔な態度や、(ベジータを騙すための演技とは言え)ベジータに見せた紳士らしく洗練された振る舞い、
およびそれに対して違和感を覚えないベジータの様子などから、「名門」という表現にふさわしい貴族的な教養がエリート階級にはあるものと推測できる。

なおパラガスの息子ブロリーもエリートと推測されるが、彼は大猿化すると理性を失うという、ナッパとは異なる姿を見せている。
もっともブロリーの場合、サイヤ人の中でも突然変異というかかなりイレギュラーな人物なので、この様子を以って断定はしがたい。


◆下級戦士

サイヤ人の大多数を占める階級。
一般国民に当たるが、やはり全員が兵士という扱いで、全員が戦うことを当然と考えている。下級戦士ではないサイヤ人はほぼいない。
下級戦士であっても戦闘力が高くなれば、主力として抜擢されて激戦区に投じられたり、サイヤ人内部でも知られた存在となれるが、
他方でベジータやナッパが強く見下していたように、エリート層のような扱いは受けられない。
上述した通り、大猿に変身すると理性を失い暴走することが先天的に決まっており、こればかりはいくら戦闘力を上げても克服できない。

全体的な下級戦士は王族・エリートよりも粗野な部分がより強く、良くも悪くもサイヤ人らしい。
戦闘服も使い込んでいる様子が見られる。

また生後間もない調査で、戦闘力が極端に低いとみなされた場合、サイヤ人社会からは半ば切り捨てられ、辺境域の強敵がいないであろう星へと飛ばされる。
これは過酷なサイヤ人社会では強くなる前に死ぬことが予測されるため、そんな強敵のいない星に送って育たせるためでもあるが、乳幼児のうちに飛ばすため結局は死ぬ可能性も低くない。
しかし生き抜くことができれば、サイヤ人の本能と、送っている途中での宇宙船内部におけるサイヤ人らしさの教育*14
そして大猿に変身するゆえの現地社会からの切り離し*15によって、辺境でも強いサイヤ人が育っていく事となる。
こうした「飛ばし子」となるのは下級戦士が多い。ただ、稀にエリートや王族でも先天的に数値の低い個体が産まれることもあり、その場合は彼らも飛ばし子となる。

戦闘力1500のラディッツが弱虫扱いされているのは、一定以上の戦闘力をキープし飛ばし子扱いを免れたサイヤ人の中で、
そしてともにエリート以上の階級であるベジータ・ナッパと比べてということである。
映画『ドラゴンボール超 ブロリー』に登場した飛ばし子のビーツは成人しても戦闘力が1000未満であった。

最強ジャンプに載った鳥山明のコメントでは、
ラディッツのように「一定以上の戦闘力を持ち王族やエリートの直属の部下に選ばれた一般サイヤ人」のことを「上級戦士」とも表現している。
別の場では「上級戦士=王族」、「中級戦士=エリート」と扱っていて言葉の定義に混乱も見られるが


【文化】

とにかく「戦闘」が文化の根底にある
破壊や殺戮を楽しみとし、強いことが誇りとなり、社会的なステータスともなる。

ただし「正々堂々とした戦いぶり」などの名誉意識は持ち合わせておらず、基本的に勝てばいい、それが全てだ!という気質を持つ。
逃げることや命乞いも恥と思わず、騙し討ちや集団による袋叩きも平気で、スカウターなどで「勝てそうにない相手」を確認すると無理をせず引き上げる分別もある。
(バーダックは自分と同等以上の相手にも勇んで襲い掛かるが、これはサイヤ人の中でもイレギュラーな気質で、なればこそ他のサイヤ人も彼に一目置いていた)
ベジータもナメック星編で敵が分散した機会を狙ったり、人造人間編で敵の強さ(と悟空の体調)を図るべく悟空戦を隠れて観戦し、
19号を倒した後は消耗を隠しわざと余裕がある様子を見せてゲロに一時撤退を選択させたりと、それなりに狡猾に立ち回っていた。

『ドラゴンボール レジェンズ』ではサイヤ人の過去に善悪論で揉めた際に結局互いに潰し合ったという歴史から「サイヤ人は正しかろうが悪かろうが闘って滅ぼし合う方法しか取れん」と語っていた。



プライドも高く、サイヤ人という種族について強力な誇りやアイデンティティを持つ一方、
同じサイヤ人でも弱い人物や、血統・階級が低い相手を見下すなど、サイヤ人内部での差別意識も強い。

異種族に対しては差別意識・断絶意識がさらに強く、他種族とは全く融和しようとしない。それどころか露骨に見下げる言動も数多い。
フリーザ軍に所属した時期も顕著で、フリーザ軍は原則として多種族の混成部隊であるのだが、
サイヤ人だけはサイヤ人のみで軍団を組織しており*16
そのために戦力不足となっても他の種族を仲間に組み込むことはせず、往復二年間も費やして飛ばし子(カカロット)の回収を選択したほど。
これは度重なる不手際を糾弾されかけたラディッツが冷却期間を求めた側面もあるが、ベジータたちもこの戦力的にはさほど期待できない増員案を認めている。

さらに、「宇宙の帝王」と呼ばれるほどに隔絶した戦闘能力を有するフリーザを総帥とし、
サイヤ人最強のベジータと同等以上に強いギニュー特戦隊・ドドリア・ザーボン・キュイetcを擁するフリーザ軍にありながら、
サイヤ人たちは「サイヤ人こそ宇宙最強の戦闘民族」と公言してはばからない始末
バーダックも病み上がりの身を案ずる医療担当兵に「お前らとは出来が違うんだ」とあしらい、話しかけてきた宇宙港兵士を相手にしないなど、
同胞以外の異種族に対してはまともなコミュニケーションを取ろうとしていなかった。
これでは周囲の宇宙人から疎まれていたことは想像に難くなく、キュイもベジータが苦戦しナッパやラディッツも死んだ事に対し、
「無敵のはずのサイヤ人さまを苦しめたのはどなたさまで?」と普段の言動に対する皮肉もたっぷり込めてなじっている。
(サイヤ人は大猿化が戦力となるが、理性を失った場合は大猿以外の味方は巻き込んでしまうため、他の種族とは組めない、というのも一因だろうが)

雇用主でありサイヤ人に詳しいフリーザも「サイヤ人というのはバカなほど頑固」と表現している。


さらにサイヤ人は「これはサイヤ人として持っていて当たり前の情愛」というものがない
たとえ同族だろうがそれこそ親子兄弟だろうが、個人的な付き合いがなければ「他人」と見做し、あっさり見捨てたり殺したりする。
「子供が親を殺す、それがサイヤ人だ!」「自分の息子に殺されるとは、これもサイヤ人の定めか……」

ただ、これに関しては「個人的な繋がりがあれば別だが、なければ同族でも他人」というもので、個人として長く付き合っていれば情愛や仲間意識を抱くこともある
例えばバーダックは、息子生誕の報告を受けても「ほっとけ」と吐き捨て、実際に見ても戦闘力の低さだけで「クズか」と吐き捨てたが*17
チームを長らく組んできたサイヤ人の仲間が殺された際には激怒し、フリーザへの造反まで決めている。
バーダックの仲間たちも、バーダックが倒れた際には慌てて心配の声を掛けたりしていた。
「息子よりも仲間が大事」というよりも、この時点での息子には触れたこともないため情を培っておらず、
一方の仲間たちとは長らく生活を共にしてきたため深い友情を持っていた、ということだろう。
情愛の基準が「家族」「同族」といった社会性や関係ではなく、個人の付き合いだけで生まれるのだろう*18

ベジータは、再起不能になったナッパを長い付き合いがあったにもかかわらず「動けないサイヤ人は必要ない」と切り捨て処刑しているが、
ナッパの側は自分が殺されるとは夢にも思っておらず、本気で驚愕していた。
ドラゴンボールの話を聞いて、その話題をベジータが初めて振った際にも、ナッパは「ラディッツを生き返らせるもの」と常識として考えていたようで、
やはりサイヤ人と言えども独自の発展による仲間意識や情愛を持っている。
なんだかんだでベジータもナッパにアドバイスを幾度となく送ってサポートしており、本格的に切り捨てたのは悟空に倒されて動けなくなってからなので、
本人が思っているほど仲間意識が全くなかったわけではないと思われる。


個人的な縁がなくても、サイヤ人同士、親族同士といった縁を強調する場合もある
一例はラディッツで、悟飯をさらう際に「俺にとっても甥だ、できれば傷つけたくない」と語ったり、
カカロット(悟空)に尻尾を掴まれて絶体絶命となった際に「実の兄弟であること」を強調して動揺させたりしており、「骨肉の情の概念」自体はよく分かっている模様。
ただし、実際に動揺して尻尾を離した悟空を嘲笑して攻撃していることから、情に流されること自体は侮蔑していることが窺える。
またあるゲームでは、悟飯の素質を見抜いたラディッツが、彼を連れて行って狂暴なサイヤ人として養育する場合もあった。

ターレスもカカロットや悟飯を「生き残ったサイヤ人のわずかな仲間」と呼んで親近感を抱き、幾度となく仲間になるよう勧誘している。
ついに悟空が仲間にならないと悟った際には、失望と自戒混じりに「カカロットのガキを連れて行こうとした俺が柄にもなく甘かったのだ!」と叫んでいたが、
このセリフからすると、ターレスは本気で悟空たちを仲間にしたかったものと思われる。

そしてパラガスも、息子を抹殺しようとするベジータ王に必死に諌言したり、
暴走のまま星を破壊するブロリーを羽交い締めにして止めようとするなど、父親の愛情混じりの行動を見せている。


男女間・家族間の意識というものも、一般には乏しい。
基本的には男女個人同士の一夜限り・快楽のみの肉体関係に過ぎず、それが長い愛情となることは少ないらしい(特に下級戦士は顕著)。
そのため「家族」という形態そのものが存在せず、例えばバーダックにも兄弟は一応いるのだが、
それが誰なのかはバーダック自身にもわからず、意識すらしていない。

一方で、トーマが自然に「息子の誕生祝い」という言葉を発したり、セリパが「凱旋ついでに会ってきたらどうなんだい」と勧めたりと、親子関係の概念があることは示唆している。
とはいえ、そんな誘いをバーダックが「くだらねえ冗談だ」「どうにでもしろ」と吐き捨てた際には、
トーマもセリパもこれといって気分を害した様子もなく、それが当然の反応を返している。


唯一「超」でのみ、バーダックが妻的なサイヤ人・ギネと繁殖関係以上の絆で結ばれていたが、これは稀有な例。
さらにバーダック自身「ギネの甘ったるい病気が移った」とぼやいており、サイヤ人の社会・文化として、こうした恋愛感情は否定的に扱われている模様。

ベジータは魔人ブウ編にて、家族を持って丸くなった自分に違和感と嫌悪を抱き、バビディの魔術を誘発するほど追い込まれてしまうが、
これも「家族を愛し、地球を愛するような人間像」がサイヤ人として好ましくないものであることを示している。


◆文明

ツフル人やフリーザ軍から得た技術により、高度な機械文明に暮らしている。
フリーザ軍の戦闘ジャケットを日常生活でも着ている者が多い。
ベジータによれば肩アーマーがないものは旧タイプとのこと。カラーバリエーションも多いが王族以外のサイヤ人は黒が殆ど。
前述の妊娠出産に予想される困難を補うためか、カプセル状の保育器が使われている。
TVSPでは病院に多数並んでいたが、『DB-』ではバーダックの自宅に置かれていた。
傷の治療には酸素マスクを着けて水槽に浸かるメディカルマシーンが用いられる。
携帯できない上に回復速度ではデンデ仙豆に劣るため本編での活躍は少ないが、悟空曰く気持ちが良いとのこと。


【歴史】

『Z』『GT』


◆前史

かつて「伝説の超サイヤ人」が出現したという。

もともとの母星は「惑星サダラ」だったが、サイヤ人同士の内紛の果てに星を消し飛ばしてしまう

その際に脱出したのか、それとも別の宇宙人に囚われた一団があったのかは不明だが、
エイジ550頃、大勢のサイヤ人を乗せた「謎の宇宙船*19」が惑星プラントに漂着、現地の支配民族ツフル人と接触する。
この時のサイヤ人は、獣皮だけの粗雑な衣類をまとった、粗野で原始的な狩猟民族で、「欲しいものは奪い取る」だけのものだった。
ただ、いちおう当時から王とエリートがサイヤ人をまとめる、という形式はあったようだ。

このツフル人との関係はやや不明瞭で、住むところもないサイヤ人をツフル人が寛大な心で迎え入れ、高度な知識を与えたにもかかわらず、
サイヤ人は狂暴性を増してツフル人から略奪するばかりであったとするものもあれば、
ツフル人はサイヤ人の屈強さに目をつけ、技術力を駆使して奴隷として扱ったが、やがてサイヤ人の側もツフル人の技術を盗み取っていき成長していった、とする者もある。

ともかく、サイヤ人は高度な技術力と文明・社会性を獲得していったが、いつしかサイヤ人とツフル人の関係は険悪なものとなっていった


◆ベジータ王の進出

そしてあるとき、サイヤ人の王族に一人の傑物が現れる。
ベジータ三世、のちのベジータの父にして一般にベジータ王と呼ばれる人物である。
彼は王家の権威を補強し、これまでばらばらだったサイヤ人をまとめ上げ、統率の取れた一団に仕立て上げる。

そしてエイジ720~730頃、ベジータ王はサイヤ人全員を束ねてツフル人に対する全面戦争を開始。
さらにベジータ王は惑星プラントにおいて八年に一度だけ迎える満月の夜を計算に入れており、一斉に大猿化したサイヤ人軍団は、その圧倒的な戦力でツフル人を絶滅させた。
以後ベジータ王は、制圧した惑星プラントを「惑星ベジータ」と改称して支配
ベジータ王家の世襲による専制国家を作り上げた。

エイジ731頃からは、ベジータ王は宇宙進出を企画。
さらなる略奪と戦闘欲求を満たすため、他の異星人に対する軍事力の提供を考える。
しかし外宇宙への航行技術は持っていなかったため、コルド大王フリーザ親子の組織と接触。
彼らの経営する宇宙の地上げ屋稼業に協力することを決め、「友好同盟」を結んだ。

宇宙にはフリーザ一族のみならず裕福な種族や難民種族も多くあり、それら種族に対する別荘用、もしくは移住用の星として、
環境の良い星を探しだし、現地住民を絶滅させたうえで、その星を求める種族に売り渡し、巨額の報奨金や各種惑星の文明を獲得していった。
さらにこれら暴力的な地上げ行為は、サイヤ人の戦闘欲求を満たすもので、いろいろな面で満足のいくものだった。

他方、サイヤ人の戦闘力と手際の良さなどはフリーザにとっても満足のいくもので、傭兵・精鋭部隊として大いに重宝された。
フリーザの側もサイヤ人および惑星ベジータにそれなり以上に投資しており、スカウターや戦闘服、メディカルマシーンや宇宙船などを支給している。

また宇宙進出開始時期と被るエイジ731頃には、ベジータ王は王妃を迎えたとのこと。


◆フリーザとの対立

しかしフリーザと組んで程ないエイジ735頃には、サイヤ人側で早くも不協和音が流れ出していた。

まずこのころには、惑星ベジータにおいてサイヤ人同士の内乱が多発。
さらにベジータ王もフリーザへの嫌悪感を強めている。

フリーザはサイヤ人を「部下」として扱ったが、ベジータ王は「対等な同盟者」と考えていたらしく、
その意識の違いが、やがてサイヤ人たちがフリーザに「俺たちを奴隷として扱っている」と強烈な反感を抱く原因となっている。
ただし、フリーザを弁護するわけではないが、フリーザの頭の中には「対等な同盟者」なるものは存在せず、
いかなる他人も「部下」か「敵」、さもなければ「商売相手」としか思っていなかったはずで、サイヤ人に対する「奴隷扱い」も配下全ての宇宙人と同列な扱いをしていただけだろう。
フリーザ一族の側が同盟と明言しながら下に扱っていたとしても、露骨に他種族より冷遇していない以上は「奴隷扱い」との自己評価が的確とは言い難い。
フリーザが悪辣だったというよりも、ベジータ王が高望みをしすぎた、というほうが正しそうである。

さらにベジータ王には「自らによる全宇宙の支配」という野心も芽生えており、現時点における宇宙の支配者・フリーザへの憎悪は日に日に増していった。

他方でフリーザの側も、サイヤ人に対する疑念があった。
特に近年は、
  • サイヤ人の中に際限なく強くなっていくものが現れ、しかもそれがひとりふたりではなく全体として増え始めたこと
    • (フリーザ軍の傭兵として各星系の最前線で戦うにつれ、ツフル人とは比較にならない強敵と交戦し、「死の縁まで追い込まれたが回復してパワーアップしたサイヤ人」が増えたものと推測される)
  • サイヤ人同士での団結力を強めていったこと
    • (ベジータ王がツフル人殲滅時に集団戦法・戦術を組み込んだものが、より発展・普及したものと思われる)
  • 伝説とされる超サイヤ人に対する懸念
    • (当のサイヤ人でも伝説扱いするぐらいだったのだが、フリーザには何か感じるものがあった模様)
  • ベジータ王の不遜な態度と不穏な動きを探知していたこと
など様々な要因があって、フリーザ側もベジータ王の粛清のみならず、サイヤ人全体の処分も考慮するようになる。

そしてエイジ737、ついにベジータ王がフリーザへの反旗を翻す
当時フリーザは少年時代のベジータ王子に特別な関心を寄せており、彼を部下(かつ人質)として招聘していた。
ベジータ王はそれに乗じ、「王子ベジータを引き渡す」という名目で惑星ベジータ近くまで来ていたフリーザの母船に乗り込むと、エリート級サイヤ人からなる部隊を率いて反乱と攻撃を開始した。
しかしフリーザとの実力の差はあまりに大きく、しかも率いたエリート部隊もいざフリーザを前にしては委縮してしまう。
憤慨したベジータ王はそれでもフリーザに襲い掛かったが、指一本触れることも出来ず一撃で敗死
直後にエリート部隊も一掃され、フリーザは惑星ベジータの破壊とサイヤ人絶滅を決意した。

その後は各地のサイヤ人に惑星ベジータへの招集命令を出したり、ドドリアの部隊に暗殺させたりしたのち、満を持してフリーザ自らの手で惑星ベジータを「花火」にした。
この時点で女性のサイヤ人は一人残らず死亡し、種族としてのサイヤ人は実質滅亡する

生き残ったサイヤ人はフリーザ軍在籍のベジータ、ナッパ、ラディッツ、ターレスの四名と、
フリーザが把握していなかったカカロット(孫悟空)、ブロリー、パラガス、ターブルなどの、男性数名だけとなった。
一方、ベジータ達についてはフリーザは引き続き重用するつもりだったため、彼らの心証を不必要に悪化させないためにも「巨大隕石の衝突で滅んだ」と伝達した。
(ただし、ナッパは惑星ベジータ消滅の真相を独自に調べていたようで、のちにベジータとラディッツにも伝えている)

以後はフリーザ軍の一角を占めながら活動するが、本編劇中に至って生き残ったサイヤ人もほとんどが死亡。
生き返った悟空とベジータや、生き残ったターブル、ブロリーの4人はそれぞれ現地へと帰化していき、
悟空とベジータは地球で得た妻子を育みながら*20、サイヤ人の血脈は地球人の遺伝子の中に消えていく事となる。

かくして、宇宙最強の民族であるサイヤ人は滅ぶ。
突然味方であったはずのフリーザに星ごと虐殺されてしまうという末路は、その経緯を知る由もない多くのサイヤ人にとっては理不尽な悲劇としか言いようがない。


えらそうなことをいいやがって……
きさまらサイヤ人は罪のない者を殺さなかったとでもいうのか?

だから滅びた……


だがサイヤ人は、その多くが己の力に驕り高ぶり、罪のない者達への破壊と略奪を繰り返してきた者たちである。
そんな彼らがより強い者によって滅ぼされたのは、悟空がフリーザに言った通り「因果応報」だったのだろう。
しかしかつてのサイヤ人の功罪を是としながら、かけがえのない親友であったクリリンの命を奪った
フリーザに悟空は逃れ得ぬ「因果応報」を突きつける。

悪行が己の身を焼き滅ぼすに至ったサイヤ人と変わらぬ結末は、悟空の怒りと決意を示す言を機として迎えられようとしていた...




オレが滅ぼしたんだ
サイヤ人はなんとなく気に入らないんでね……

こんどはこのオレがきさまを滅ぼす


『超』

超サイヤ人ゴッド、破壊神などの設定が追加され、映画『ドラゴンボール超 ブロリー』にて悟空の父バーダックなどのキャラクターや最期が変更された。


◇前史

1000年前に「伝説の超サイヤ人」が出現、恐るべき殺戮と破壊を行い宇宙を震え上がらせたという。
これについて、
ヤモシなるサイヤ人が正義の心を持ち、五人の仲間と共に反旗をひるがえした」
「他の戦闘員たちに追い詰められたヤモシは初めて超サイヤ人になったが、その変化と恐ろしいまでの戦いぶりに他のサイヤ人たちは恐れおののいた」
「やがてヤモシは多勢に無勢で倒されたが、これが伝説の超サイヤ人」
と作者が詳細を明かした。
ただこの場合、作中で語られた「伝説の超サイヤ人」像と異なる。伝説が千年も口伝されるうち曲がったとも思えるが。

サイヤ人が栄えたとある時期、上述のヤモシと似たような経緯で善良なサイヤ人の中から超サイヤ人ゴッドが出現し、邪悪なサイヤ人に挑む。
善良なサイヤ人は後一歩のところで力及ばずに敗れ去り、サイヤ人ゴッドの伝説はサイヤ人の歴史から抹消された。
このサイヤ人ゴッドとなった善良なサイヤ人とヤモシの二人は鳥山明曰く「ある意味同一人物」とのことで、関連性が示唆されている。
……が、原作の前日譚である『DRAGON BALL- 放たれた運命の子供』では、フリーザが「サイヤ人にサイヤ人ゴッドですか…」と、
伝説のサイヤ人とサイヤ人ゴッドは別物であるかのように捉えているので結局は不明のままである。

上述の騒動と同一の事件なのかは不明だが、ゲーム『ドラゴンボール レジェンズ』で語られた歴史によると、
正しい心を持っていた超サイヤ人ゴッドの一族は「悪のサイヤ人」と呼ばれるサイヤ人に敗れ去ったという。
それ以降はサイヤ人ゴッドの一族から発生したサイヤ人は「敗北者の血統」と呼ばれ、一方で勝ち残った悪のサイヤ人の子孫が一般的に知られているサイヤ人とのこと。
サイヤ人ゴッドを撃破した悪のサイヤ人とは何者なのかという事に関しては現在まで明確には明かされてはいないが、
『スーパードラゴンボールヒーローズ』に登場する太古のサイヤ人、カンバーは「悪のサイヤ人」の異名を持ち、サイヤ人ゴッドを見て明確に敵意を示す描写があり、
彼こそが太古のサイヤ人ゴッドと戦った悪のサイヤ人ではないかと示唆されている。
ターレスはカンバーについて「伝説の悪のサイヤ人」と呼んでおり、少なくともカンバーがサイヤ人の歴史において伝説的な存在であることが推測できる。

また、『ドラゴンボール レジェンズ』ではベジータが「サイヤ人も善だの悪だのでその在り方について争った過去があった」「穏やかな話し合いなどではない派閥同士の潰し合い」とサイヤ人の過去の歴史を解説している。


フリーザによるサイヤ人絶滅計画について、破壊神ビルスがベジータ王を しょうもない理由で 嫌い、フリーザに惑星ベジータ消滅を指示した一幕もある。
尤も、これがなくてもフリーザの行動は変わらなかったと思われる。



【個別のサイヤ人】

当wikiに項目のあるサイヤ人のみを記す。
×印は開始時には既に故人であった者
▼印は作中で死亡してそのまま生き返らなかった者







【第六宇宙のサイヤ人】

ドラゴンボール超』では、本編世界とは別次元の「第六宇宙」が登場。
悟空達がいる第七宇宙と対になるその宇宙にも「サイヤ人」が存在する。
惑星サダラに居住し、高い戦闘能力や地球人黄色人種に似た容姿などは共通しているが、猿のような尻尾が退化しているという相違点もある。
男女比率の極端な傾斜など、他の特性はどうなのか不明。

もっとも異なる点は「気性」で、基本的に善良な性格を持ち、戦闘能力も他の惑星などに雇われての悪党退治に活用するという。
民族の辿った歴史も大きく異なり惑星サダラが健在で今でも居住を続けている。
根が善良で穏やか、悪党退治で戦闘機会も多いので、むしろ覚醒機会は多いと思われるのだが超サイヤ人の存在が伝わっていなかった。
しかしその存在を知ってしまえば最初のキャベにつづきカリフラ・ケールと立て続けに覚醒している。
漫画版『超』では「伝説のサイヤ人」或いは「悪のサイヤ人」という存在が伝わっていたことをキャベが発言している。
1000年に一度現れ、一度覚醒すれば増幅する自身の力に飲み込まれ自滅するまで暴れ回るという。

第七宇宙のサイヤ人とは異なるデザインの剣道の胴と垂のような防具を着けているが、
ベジータ曰くフリーザ軍に取り込まれる前のサイヤ人の民族衣装に似ているという。


【余談・その他】

純血のサイヤ人の名前は、全て野菜に由来する。
作者曰く「戦闘民族なら肉だろうというのを逆手に取って、野菜由来」とのこと。





「新項目、『サイヤ人』の追記・修正をしていただきたく、お迎えに参りました」
「なに!? 新項目『サイヤ人』……?」
「もう一度! 最強の戦闘民族サイヤ人の優秀さを、全宇宙に知らしめてやろうではありませんか!! あなたの手で、最高の種族項目を築き上げるのです!!」

「……ちっ(くだらん……)」
「どこへ行くんだあ?」
「ふおおっ?!?」
「お前が項目を追記・修正する意思を見せなければ、俺はこのWikiを破壊し尽くすだけだぁ!!」
「もう駄目だ、おしまいだあ……!」
「さ、ベジータ王。↙項目変更ボタンです。何なりと追記・修正ください」

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最終更新:2025年04月05日 17:08

*1 ラディッツからこの事情を聞かされたクリリン曰く「ピッコロが可愛く見えらあ」。ピッコロ大魔王はただ正義を否定し、悪を増長する支配者であり、サイヤ人のそれとは方向性がまるで違う。

*2 フリーザやベジータ王は、破壊神ビルスと関わりがあったと描かれた。

*3 肌に関しては、パラガスは茶褐色、ターレスは灰色に近い黒ずんだ色、と例外がある。

*4 悟空は神様に再生しないよう処置を受けた。

*5 アニメ初登場時のベジータも茶髪だったが、原作者の指摘があって黒髪に変更された。しかしベジータ王はベジータが黒髪に変わってだいぶ経ってから登場したにもかかわらず茶髪だった。近年では茶色がかった黒髪とも取れるような色合いになっているが茶系統の色をしているのは現在でも変わっていない。

*6 唯一戦闘力が確認された女性サイヤ人・セリパは、バーダックチームで最も弱い。

*7 フリーザ軍では戦闘力がコントロールできることを「技術」ではなく「宇宙人のタイプ」と認識している場面があるので、サイヤ人の特異性というよりフリーザ軍全般に「後天的に強くなる」ことの軽視傾向があるのかもしれない。一応フリーザ軍医療兵の会話(キュイからベジータへの伝言)で「トレーニングルーム」と言う単語は出ているから、訓練自体はあるようだが。

*8 ナッパの顔は五十代相当と思いきや、二十代のころからあんな顔だった。体型はやや変わったが。

*9 フリーザ戦以降の悟空やベジータなど、百万や億を超えるようなものは「一般的なサイヤ人」としては扱わない。

*10 ただし有り余るタフネスや防御力、格闘技術や大技などで8000以上の悟空とも渡りあえるレベル

*11 全員下級戦士だが、バーダックとともに最前線で鍛えられているため、男性陣はナッパ並みの数値を持つ。もっともナッパのように8000クラスの格上と渡り合えるかまでは不明瞭。

*12 即位していれば、ということだろう。即位していないからかベジータは、自分のことを「サイヤ人の王子」と表現することが多い。

*13 王位が祖父から孫に次がれる場合や、クーデターなどで兄から弟に次がれる場合も考えられるため、一世が曾祖父とも直系尊属とも限らない。

*14 ラディッツはこれを「命令」と言っている。「頭を打たず命令さえ覚えていれば今頃はカカロットもサイヤ人らしくなっていたはずだ」とのこと。

*15 すでにカカロットが大猿の変身能力を失ったと知った際、ラディッツは「道理でこの星の奴らが貴様と仲良くできるわけだ」と呻いている。逆説的に、大猿に変身して暴走するサイヤ人を現地社会は決して受け入れずに迫害し、そんなところにサイヤ人の「同胞」が来ればすぐになびくだろう、という計算が見える。

*16 例外はターレスの部隊のみ。それも組むサイヤ人がいなくなってからである。

*17 これに関しては仲間のトーマたちの様子では生まれた子の顔を見に行くくらいの情緒はサイヤ人下級戦士としても普通で、バーダックの方が異端と見て取れる。もっとも、そんな反応をしたバーダックを、セリパたちが咎める様子もなかったが。

*18 現実の哺乳類でも種の生態や文化としては我が子に興味を示さない父と言うのは別に普通だったりする。人間自身が父親が子育てに参加する例外である他に、イヌ科の動物やライオンと言った身近な種や認知度の高い種に父親と子供が家族を作る種が偏重しているのであまり意識され辛い。逆に、哺乳類とは両生類時点で別れた鳥類では雄の子育て参加は珍しくない。

*19 ベビー(DBGT)の回想によれば、雨霰と降り注ぐ一人用のポッド

*20 ターブルも妻はいるが種族差が違い過ぎるせいか子供はいない模様。

*21 悟空やベジータといったサイヤ人特有の細胞を持って誕生し、「瀕死からの復活による大幅なパワーアップ」といった種族特性を発揮していたこと、その復活時に見られた超サイヤ人2由来のオーラやスパークが発生していたことなどから