雅桐倫具(るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚・北海道編-)

登録日:2021/04/13 (火曜日) 21:26:00
更新日:2021/05/11 Tue 13:20:09
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「雅桐……雅桐倫具……一体何者でござる……ガトーリング」


【概要】

雅桐倫具(がとうりんぐ)とは『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚・北海道編-』の登場人物である。

剣客兵器の一人である霜門寺瑠璃男と協力している謎の武器商人であり、小樽に突如現れ、数打ち(大量生産)に優れた万鉄刀を、「護身用」と称して市中のあちこちに売る事で治安の悪化を招いた張本人でもある(彼の名前と刀の「雅」の文字から、市民からは「雅桐刀」と呼ばれている)。

用心深い人物で、普段は壺の中に隠れ初対面の相手には腕しか見せない。

雅桐刀があらかた出回り売れ行きが落ちてきたタイミングで現れた阿爛の、「この先は剣ではなく剣術を売る」という彼の案を気に入り、剣心達と面会することになり、ついにその正体を明かすことになるが……。

以下単行本4巻以降のネタバレ注意









「武田観柳ー!!」


「緋村抜刀斎ー!!」


「「なんで貴様が小樽にー!?」」



その正体はかつて阿片の密売で私腹を肥やし、高荷恵を阿片生産のために拉致・監禁。剣心と対立し、最終的に回転式機関銃(ガトリングガン)によって隠密御庭番衆のほぼ全員を惨殺した挙げ句剣心に敗北し、死刑となったはずの悪徳商人・武田観柳

阿片密売の主犯であったため逮捕後は本来死刑*1であったが、隠し財産を各所に賄賂としてバラ撒くことでなんとか死刑を免れた。そのため剣心が観柳に言い放った「命乞いなら貴様の好きなお金様に頼んでみろ!!」という台詞が、正にその言葉の通りになってしまったという皮肉な事態に。

無論死刑は免れたとはいえ、そのまま娑婆に出られるほど警察も甘くはなく、収監された樺戸集治監では「力仕事をするだけの体力がない」との理由から肥料作りや便所掃除などの文字通り汚れ仕事をさせられていた。

そこまで落ちぶれながらも商人として再起すること野望をいだき続け、5年間看守用便所の糞をかき分けながら金をかき集めるという執念深さを見せた。そのこともあって、劍客兵器からは糞商人と言われてしまっている。

樺戸集治監壊滅後、逃亡中に霜門寺と遭遇。彼から万鉄刀を無償で渡されるも「タダより高いものはない」とこれを拒否し、5年間集めた金で刀を買い取ることを宣言。

そのスタンスを気に入った霜門寺は100振りもの万鉄刀を売り、彼と結託したことで商人として再起する。


阿片や銃火器の密売によって成した財産が無に帰したことから、「違法行為には二度と手を出さない」と誓っている。だが、その直後に「これからは違法ではなく脱法で稼ぐ」と宣言、その全然改心していない姿に剣心には呆れられ、左之助からはガツンと一撃をもらっていた。

ちなみに「脱獄は違法でござろう」と指摘した剣心に対し、「脱獄じゃあない破壊行為からの緊急避難だ!」「人のこと言えるか、この常習廃刀令違反者!」と正論を返している反論した。正論といえば正論だが、剣心も元麻薬密売人には言われたくないだろう

金儲けに遠慮心を持たない阿爛のことは、「自分に似ている」という理由から本当に気に入っているようで、阿爛が剣心に雅桐を見つけた報酬を要求した際は、「滅私奉公など商人にとっては悪徳の極み」だと彼を後押しした。もっとも阿爛が剣心に「観柳のようになりたいのか?」と問われた際は即座に否定された。


【人物像】

そう確かに買えないモノもあります

例えば、才能 血統 家柄 容姿 肌の色 髪の色

金で買えないモノは差別を生みます

だからこその金なのです

凡庸でも!馬の骨でも!下賤でも!不細工でも!人並に金さえ稼げば人並に!

何一つ持たざる身に生まれても!!それ以上に稼げばそれ以上に成れる!!



金こそがこの世で最も平等で公平!!

それこそが金の価値なのです!!

商談の際や気に入った相手に対しては敬語で話して丁寧な物腰を装うが、卑劣、狡猾、利己的で守銭奴な部分はかつてのまま。

それでも過去の苦い経験や月日の流れによって、精神的に成熟した部分を見せており、言動の端々から商人としての美学やプライドが垣間見える。

前述の便所の糞をかき分けながら集めた金を「汚い」と言った霜門寺に対しては「あなた商人の才能ありませんね。金に綺麗も汚いもありません」と言い返し、上述の「金で買えないものは差別を生む」「人並みに金さえ稼げば人並みに それ以上に稼げばそれ以上になれる」「金こそがこの世で最も平等で公平でそれこそが金の価値」といった言葉は、異人とのハーフである阿爛の心を動かした。

良くも悪くも剣心や左之助と言った主要人物とは別ベクトルの信念を持った人間として描かれている。


【活躍】

剣心一行との合流後も因縁の相手ということもあって頑なに非協力的な態度を崩さなかったが、「雅桐銃」といった自身に見の覚えのない武器が出回り始めたことを契機に行動を開始。

もはや用済みと見做されたことで放たれた剣客兵器の刺客から逃れた後は、「貴様らや剣客兵器や小樽の街なんて心底どうでもいい」とうそぶきつつも、自分で作った「雅桐」のブランド名を勝手に使うどころか、奪い取ろうとする行為を「許すまじ」と判断。阿爛に「自慢の頭脳と理論で劍客兵器の居所を推察してみせろ」と推理を任せる。

剣客兵器の拠点を発見した後は「このままだと雅桐紋は剣客兵器の紋印になってしまい、自分もその一味と見做されてしまう。

そうなると銃の販売や各種破壊行為などにも自分が関わっていることになるので、「雅桐倫具は何一つ違法なことをしていないということを示すために、連中に一筆書かせる」と決断。

明日郎・阿爛の二人に協力の対価として「小樽での報酬の1/3ずつを支払う」と約束し、3人だけで剣客兵器の拠点にカチコミをかける。

作戦は首尾よく進み、小銃を手にしたところで幹部らしき人物に一筆書けと要求したところまではよかったが、その人物は剣客兵器の記號、本多雨読だった。

戦型・書裏剣によって手傷を負わされ、一転窮地に追い詰められるが……。


以下本誌ネタバレ注意










周辺に火薬をばらまく阿爛の策も封じられ、追い詰められた観柳は本田に対してあっさり土下座で命乞い。

その場に駆けつけた剣心に「五年前とまるで変ってござらんな」「通じぬ相手とわかれば恥も外聞もなく へつらい保身に走る」「これが金の亡者の惨めな成れの果て」と
あからさまに侮蔑される。

しかしーー。





「うるせええ!!!」


「こちとら生まれた時から貧乏人! 明治になっても貧乏人!」


「てめえら土で作った粥を喰ったコトあるか? 雑草だけの鍋を喰ったコトあるか?」

「どっちも目から垂れる塩気がなけりゃあ喰えたもんじゃねえって知ってるか!?」

「維新の英雄様に分かるか!? 御典医の愛娘に分かるか!? 御庭番の天才跡取りに分かるか!?」

「つーかてめえら全員美男美女じゃねえか! 分かられてたまるか!!」

「何一つ天から与えられなかった"持たざる者"が人並み以上になるには金しかねえ!!!」

「金の亡者!? 結構結構! 金の亡者で大結構!!」



ここにきて今まで抑えてきた心の叫びが大爆発。美男美女の下りは只のやっかみだろとか言ってはいけないその迫力と、よく見ると地面に手をついていない(=「金は差し上げますから どうか命だけはお助けを」といったのは嘘で、実際は屈服した振りをして逃げる隙を窺っていた)事に気がついた阿爛は、観柳の意志に応えんと、駆けつけた明日郎に「無限刃を抜け!!」と叫ぶ。

友の願いをしかと聞いた明日郎の無限刃によって、火薬に引火、大爆発を起こすのであった。

観柳本人が一番驚いてた? 気のせいです


阿爛と共に天幕に飛び込んでなんとか爆発から逃れた観柳は、爆発に巻き込まれて怒髪天状態の本田に対処するために、武器を探す。

そんな彼の目に飛び込んできたのは一際どでかい木箱。その中を覗いた観柳はーー。






以下衝撃のネタバレ注意。






「神の悪戯か? 魔の囁きか? 仏の気紛れか? 鬼の誘いか?」


「否! これは惹かれ合う運命! 5年の時を経てこの最果ての地に再び!」


「参ッ上!」

「武田観柳 with 回転式機関砲」(ガトリングガン)


そう、観柳が阿爛と共に見つけたのは、かつて剣心と御庭番衆に対抗するために使った兵器、回転式機関砲(ガトリングガン)だった。

かつて北越戦争において官軍の大いな驚異となった兵器を前にしても本田は一切怯むことなく(曰く、『箱館戦争の際に鹵獲したものの使いみちがなく死蔵されていた旧型の骨董品』らしい)、赫力(せきりょく)を発動。書裏剣 乱読(ショリケン ランドク)回転式機関砲(ガトリングガン)の弾幕に真正面から立ち向かう。

「新旧? そんなのは些細なこと」


「この私の腕の中に回転式機関砲(ガトリングガン)があることが!! 最重要なのです!!!」



「ガトガトガトガトガトガトガトガトガトガトガトガトガトガトガトガトガトガトガトガトガトガトガトガトガトガトガトガトガト!!!」

「ショショショショショショショショショショショショショショショショショショショショショショショショショショショショショショショショショ!!!」



凄まじい3カメガトガトラッシュの末に、観柳はかつて剣心と御庭番衆に敗北した時と同じ、弾切れ寸前の状況に陥る。本田は5年前と同じ轍を踏んだとあざ笑いながら、観柳にとどめを刺そうとする。しかしーー。

「弟子ィーーーーッ!!」

「ハイーーーーーッ!!」


「弾倉 交換!!」


「武田観柳 with 回転式機関砲(ガトリングガン) and 弟子 阿爛

完璧(パーフェクト)です! もはや私に死角なぁ―し!」


かつて剣心たちに負けたときとは違い、今の観柳には頼れる弟子がいた。阿爛の助けでリロードを行った観柳は、その圧倒的弾幕量で次第に本田を追い詰めていく。

そしてーー。

「ッ武田 糞観柳ー!!」

「『様』をつけんか 無礼者ォ!!」


ガキン!!

「ぐあっ」


完了(フィニッシュ)です!」


なんと非戦闘員の立場でありながら、剣客兵器の一角を下すという大金星を上げることに成功。

その後、再び味わった「最強」の感覚に酔いしれるかのような、邪悪な笑みを浮かべる観柳。危険を感じた剣心が逆刃刀を抜いて駆け寄るがーー。


回転式機関砲(これ)は違法ーー……これが最後。これでお終いです」


観柳は自らの意志で 回転式機関砲(ガトリングガン)から手を放す。「(違法からは手を引くというのは)本気だったか」と驚く剣心を尻目に、己の過去を振り返る観柳。


阿片や武器といった犯罪行為で金を稼ぎ、極貧生活から成り上がったこと。

しかし、どんなに贅沢三昧したところで、「劣等」の味は舌に性根に染み付いていたこと。

それでももっと成り上がれば……と金を稼ぐことに躍起になっていた頃。


(あの日あの時あの場所で 君と巡り合ったーー……)



すべてを破壊し尽くす圧倒的な「力」である回転式機関砲(ガトリングガン)。生まれてはじめて味わった無敵の味は、ほんのひと時とはいえ自分には金はあっても「力」はないという観柳の「劣等」を鮮明に打ち砕いていた。



(今でも君は最高です 今一度会えて本当に良かった)


(けれどもう君と私は住む世界が違う これ以上は一緒にいられない)


(君への想い雅桐倫具の名と紋に刻み 私は堂々胸を張って再起を図ります)



「ガトリングの名は武田観柳と共にーー……」



「さらばわが愛しの回転式機関砲(ガトリングガン)ーー……」





BGM:ラブ・ストーリーは突然に
あと観柳の話を聞いている回転式機関砲(ガトリングガン)の角度が完全にヒロインのそれ。




その後、阿爛を商売仲間として誘ったが、旭と明日郎は用無しと言ったことから、彼には「お金を儲けて美味しいものを食べるなら僕たちは3人で」と丁重に断られる。

それに対して観柳は餞別として、樺戸集治監の便所の底で手に入れた最初の貨幣(臭い付き)を渡す。


「先々3人仲良く残飯を漁るほど落ちぶれたときは、それを持って大商人雅桐倫具の元を訪れるが良いでしょう。後悔という香辛料(スパイス)が効いた、極上の御馳走を恵んであげます」

おさらば(グッバイ)です 我が弟子よ」


去りゆく阿爛の背中にさみしげにつぶやく観柳の前に現れたのは、剣心だった。

彼に「今回は見逃してやるから気が変わらないうちに消え失せろ(意訳)」と告げられた観柳は、「全てお偉い維新志士様の胸三寸か!? どれだけ正義なんだよ!!」と激高する。

それに対して剣心は自分が正義など持てる身ではないこと、咎を問うなら観柳の比ではないこと、人を守る剣は振るうが、裁く剣は振るえないことを語る。


「それに 土の粥はないが雑草の鍋の味なら 拙者も知ってるでござる」


同じく昔は極貧の生活をしていたものとして歩み寄りの姿勢を見せる。決して薫の料理のことではないからな!
しばしの沈黙の後、剣心は観柳に対してある事実を告げる。


「そう遠くないうちに北海道に、四乃森蒼紫が来る」



当然観柳は驚愕する。御庭番衆を惨殺した自分が蒼紫と出くわせば、言い訳も出来ないまま斬り捨てられるのは必至。蒼紫自身は京都編で剣心との戦いなどを通して自分の中でケリはつけているのだが、当時は獄中にいた観柳がそのことなど知る由もない。

結果、凄まじい顔芸を披露した後、剣心も驚くほどの速さでその場から逃げ去るのであった。












夜の河原に、蒼紫への恐怖に突き動かされるがまままに逃げ続ける観柳の姿があった。

よろけて転んでしまった拍子に、観柳はとあるアイデアを思いつく。

只の大商人ではなく「大政商」になって、法律そのものを変えてしまえば……!!

回転式機関砲(ガトリングガン)を合法にする これですッ!!」



雅桐倫具の名は武田観柳と共に……いつかまた再び愛しの回転式機関砲(ガトリングガン)よーー……


勇み走る観柳の上空では、彼を励ますかのごとくガトリング座が光り輝くのであった。

ガトリング座ってなんだよとか、手段と目的が入れ替わってるじゃねえかとかいった突っ込みは野暮……かもしれない


追記・修正はいつかまた再び愛しの回転式機関砲(ガトリングガン)と巡り会えたときにお願いします。

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最終更新:2021年05月11日 13:20

*1 現実の明治初期の刑法では阿片の密造や取扱いだけでは死刑にならない…というか当時死刑になった人間は大久保利通を「暗殺」した不逞浪人達だけなのだが、そこを厳密に突っ込むと高荷恵のストーリーが台無しになってしまうので…。